【実施例1】
【0023】
まず、実施例1に係るレゾルバ1の構成について、
図1〜
図8を参照して説明する。実施例1に係るレゾルバ1は、大別して、
図7に示す磁気系及び機械系により構成するレゾルバ本体部M1と、
図8に示す電気系により構成する信号処理部M2を備える。
【0024】
レゾルバ本体部M1は、
図7に示すように、ケーシング21の内部に固定状態に取付ける励磁ユニット22と、このケーシング21の中心に、不図示の軸受部により回動自在に支持される回動軸11を有する回動体4r(受動体4)を備える。回動体4rは、回動軸11を中心位置に固定した円板部25を備え、この円板部25における、励磁ユニット22に対向する面には、当該励磁ユニット22に対面する検出ユニット23を取付ける。また、励磁ユニット22は、全体がリング状となり、その内側空間には、出力トランス24の二次巻線24sを配設するとともに、検出ユニット23も、全体がリング状となり、その内側における円板部25には、二次巻線24sに対面する、出力トランス24の一次巻線24fを配設する。以上が、レゾルバ本体部M1全体の基本構成となる。
【0025】
次に、実施例1に係るレゾルバ1の要部構成、即ち、レゾルバ本体部M1に備える励磁ユニット22及び検出ユニット23の構成について、
図1〜
図8を参照して具体的に説明する。
【0026】
励磁ユニット22は、
図1及び
図2に示すように、磁気コア5と位相を異ならせた二つのシートコイルユニット27,27を備える。
【0027】
磁気コア5は、
図2に示すように、例えば、フェライト等の磁性体により一体成形した所定の厚さを有するリング状に形成する。そして、磁気コア5の長手方向(周方向)Dmへ所定間隔Ld…置きに配し、かつ当該磁気コア5のコア面5fに長手方向Dmに対して直角方向(径方向)Dsに複数のコイル収容溝部7…を形成する。
【0028】
例示の場合、周方向Dmに沿って、計十二のコイル収容溝部7…を順次形成するため、所定間隔Ld…は角度30〔゜〕間隔となる。このコイル収容溝部7…には、各シートコイルCxa…,Cya…の少なくとも二個所の部位のコイル部分Cp…,Cq…を収容する機能を有する。したがって、コイル収容溝部7…は、断面を矩形に形成し、かつ深さは、
図2(
図7)に示すように、厚さ方向における中央付近が底部7d…となるように選定する。なお、この底部7d…は、厚さ方向における中央付近が望ましいが、収容するシートコイルCxa…,Cya…の数量等に応じて任意に選定可能である。これにより、各コイル収容溝部7…同士の間には突起状部P…が形成される。また、実施例1に係るレゾルバ1は、直径が5〔mm〕前後の超小型レゾルバである。このため、磁気コア5の直径は4〔mm〕前後となり、コイル収容溝部7の深さは0.5〔mm〕程度となる。
【0029】
一方、励磁ユニット22は、実施例1の場合、
図8に示すように、変調された励磁信号Sxが付与されるsin相側の励磁巻線2xを有する一方のシートコイルユニット27と、変調された励磁信号Syが付与されるcos相側の励磁巻線2yを有する他方のシートコイルユニット27を備える。そして、
図2に示すように、一方のシートコイルユニット27は、二つのシートコイルCxa,Cxbにより構成するとともに、他方のシートコイルユニット27は、二つのシートコイルCya,Cybにより構成する。
【0030】
一つのシートコイルCxaの基本的な構成は、基板を構成するシート部12とこのシート部12の表面12f及び裏面12rにそれぞれ設けたコイル部13f,13rを備え、全体をフレキシブルプリント回路基板(FPCB)として構成する。この場合、コイル部13fと13rは、同一に形成してもよいし、異ならせて形成してもよい。このように、シートコイルCxaを構成するに際し、基板を構成するシート部12の表面12f及び裏面12rに設けた各コイル部13f,13rを同一に又は異ならせて形成すれば、シートコイルCxaのターン数の増加のみならず、磁束分布の分布パターンを矯正するなど、シートコイルCxaの多機能化及び多様化を図ることができる。シートコイルCxaについて説明したが、他のシートコイルCxb,Cya,Cybも基本的な構成はシートコイルCxaと同じである。なお、各励磁巻線2x,2yには、リード線の導出機能を有する端子シートJx,Jyを備え、この端子シートJx,Jyは、各シートコイルCxa…のシート部12と同一形状に形成する。この端子シートJx,Jyは、コイル部は設けていないが、必要によりコイル部を設けることも可能である。
【0031】
以下、各シートコイルCxa…の具体的な構成について説明する。なお、
図1は、シートコイルCxa,Cxb,及び端子シートJxの巻線パターンを示し、図中の左側が表面12fを示し、右側が対応する裏面12rを示す。各シートコイルCxa…及び端子シートJxのシート部12…の形状は同一であり、
図1に示すように、小リング部12s,大リング部12m,及び小リング部12sと大リング部12m間に形成した複数のブリッジ部12b…からなる。例示の場合、各ブリッジ部12b…は、一定間隔置きに計十二設けている。これにより、各ブリッジ部12b…同士の間には、刳り貫き部H…が形成され、この刳り貫き部H…に、前述した磁気コア5の突起状部P…が挿通する。
【0032】
そして、
図1に示すように、二つのシートコイルCxa,Cxbにおけるシート部12…の二つの表面12f,12fと二つの裏面12r,12rの計四面を利用し、かつ一面、例えば表面12fに、二つのコイル部13f,13fを配し、合計八つのコイル部13f…を形成した。例示の場合、八つのコイル部13f…は、三種類のコイル、即ち、第一コイルC1,第二コイルC2,第三コイルC3のいずれかにより形成した。
【0033】
各シートコイルCxa…において、まず、シートコイルCxaは、
図1に示すように、シート部12の表面12fにおける120〔゜〕の位置関係にあるブリッジ部12b,12b及びこのブリッジ部12b,12b間における大リング部12mと小リング部12sを利用して第二コイルC2を形成する。この際、同図に示すように、180〔゜〕対称となる位置にそれぞれ配することにより一対の第二コイルC2,C2を形成するとともに、裏面12rも表面12fと同様に一対の第二コイルC2,C2を形成する。なお、例示する第二コイルC2のターン数は2となるが、このターン数は設計事項として任意に選択できる。
【0034】
シートコイルCxbは、
図1に示すように、シート部12の表面12fにおける180〔゜〕の位置関係にあるブリッジ部12b,12b及びこのブリッジ部12b,12b間における大リング部12mと小リング部12sを利用して第一コイルC1を形成するとともに、この第一コイルC1に対して、180〔゜〕対称となる位置には、60〔゜〕の位置関係にあるブリッジ部12b,12b及びこのブリッジ部12b,12b間における大リング部12mと小リング部12sを利用して第三コイルC3を形成する。さらに、裏面12rにも第一コイルC1と第三コイルC3を同様に形成するが、その位置は表面12fに対して反対の位置関係となる。
【0035】
したがって、第一コイルC1,C1、第二コイルC2,C2、第三コイルC3,C3は、それぞれ一対ずつ設けられ、一方側がS極、他方側がN極となるように結線する。なお、
図1に示すシートコイルCxa,Cxb,Jxにおける黒丸部t…は、スルーホールを示しており、シートコイルCxa,Cxb,Jxの表面12f…を磁気コア5側に向け、シートコイルCxa,Cxb,Jxの順に積層することによりシートコイルユニット27(励磁巻線2x)が構成される。
【0036】
以上、励磁巻線2xについて説明したが、励磁巻線2yも同様に構成することができる。したがって、二つのシートコイルユニット27,27を用意し、一方を励磁巻線2xとして用いるとともに、他方を励磁巻線2yとして用いればよい。この場合、組付けに際しては、
図2に示すように、磁気コア5に対して、最初に、一方のシートコイルユニット27(励磁巻線2x)の組付けを行い、この後、空間的に電気角で90〔゜〕位相を異ならせることにより、他方のシートコイルユニット27(励磁巻線2y)の組付けを行えばよい。
図2がこの位置関係を示したものであり、また、一対のシートコイルユニット27,27を含む励磁ユニット22をケーシング21に組付けた構造が
図7となる。
【0037】
ところで、励磁巻線2x,2yにおいて、複数の異なる第一コイルC1…,第二コイルC2…及び第三コイルC3…を設けて組合わせる理由は、磁束分布を矯正する磁束矯正機能部Fsとして機能させるためである。この磁束矯正機能部Fsの機能について、
図5及び
図6を参照して説明する。励磁巻線2x,2yによる磁束分布は、
図5に実線及び点線で示す正弦波によるsinカーブUx及びcosカーブUyになることが理想的であるが、シートコイルCxa…,Cya…を単純な平面形態により形成した場合、
図5に仮想線Uxrで示すような台形状になる。このため、
図6に示すように、第一コイルC1,第二コイルC2,第三コイルC3による各磁束分布を組合わせることにより、正弦波状の磁束分布になるように矯正する磁束矯正機能部Fsを設けたものである。
【0038】
このように、シートコイルCxa…,Cya…を構成するに際し、基板を構成するシート部12の表面12f及び裏面12rに設けた各コイル部13f,13rを同一に又は異ならせて形成すれば、シートコイルCxa…,Cya…のターン数の増加のみならず、磁束分布の分布パターンを矯正するなど、シートコイルCxa…,Cya…の多機能化及び多様化を図ることができる。即ち、各コイル部13f,13rを同一に形成すれば、ターン数の増加を図れるとともに、異ならせて形成すれば、励磁巻線2x,2yにおける必要なターン数を確保しつつ、磁束分布の台形化を矯正できる磁束矯正機能部Fsを容易に設けることができる。なお、励磁巻線2x,2yにおける各コイル部13f,13rを同一に形成し、ターン数の増加を図った場合、後述する検出巻線3側に、磁束矯正機能部Fsを設ければよい。
【0039】
他方、検出ユニット23は、
図3及び
図4に示すように、磁気コア6とシートコイルユニット28により構成する。磁気コア6は、
図4に示すように、例えば、フェライト等の磁性材により所定の厚さを有するリング状に形成する。この場合、後述するシートコイルCo…を付設するコア面6fは平坦形成とし、磁気コア5側のようなコイル収容溝部7…は形成しない。
【0040】
また、シートコイルユニット28は、
図3に示すように、実施例1の場合、変調信号Smoが出力する検出巻線3を備える。そして、
図4に示すように、検出巻線3は、一つのシートコイルCoにより構成する。シートコイルCoの基本的な構成は、基板を構成するシート部12とこのシート部12の表面12f及び裏面12rにそれぞれ設けたコイル部13f,13rを備え、全体をフレキシブルプリント回路基板(FPCB)として構成する。この場合、励磁巻線2x側と同様、コイル部13fと13rは、同一に形成してもよいし、異ならせて形成してもよい。このように、シートコイルCoを構成するに際し、基板を構成するシート部12の表面12f及び裏面12rに設けた各コイル部13f,13rを同一に又は異ならせて形成すれば、シートコイルCxaのターン数の増加のみならず、磁束分布の分布パターンを矯正するなど、シートコイルCxaの多機能化及び多様化を図ることができる。なお、励磁巻線3には、リード線の導出機能を有する端子シートJoを備え、この端子シートJoは、シートコイルCoのシート部12と同一形状に形成する。この端子シートJoは、コイル部は設けていないが、必要によりコイル部を設けることも可能である。
【0041】
図3は、シートコイルCo及び端子シートJoの巻線パターンを示し、図中の左側が表面12fを示し、右側が対応する裏面12rを示す。各シートコイルCo及び端子シートJoのシート部12…の形状は同一のリング状となる。そして、シート部12の表面12fには、180〔゜〕対称となる位置関係により、一対のコイル部13f,13fを形成する。例示の場合、シート部12を中央線により二分割した半円形状の表面における外郭形状に沿って、一対のコイル部13f,13fをそれぞれ形成した。なお、例示するコイル部13f,13fのターン数は2であるが、このターン数は設計事項として任意に選択できる。また、シート部12の裏面12rには、180〔゜〕対称となる位置関係により、一対のコイル部13r,13rを、表面12f側と同様に形成するが、表面12f側に対しては、周方向Dmの角度を所定角度Qsだけ位置(角度)をズラして位相を異ならせた。この構成は磁束補正機能部Faとして機能する。表面12fにおける一対のコイル部13f,13f及び裏面12rにおける一対のコイル部13r,13rは、それぞれS極とN極を構成する。
【0042】
裏面12rのコイル部13r,13rを所定角度Qsだけズラしたのは次の理由による。通常、コイル部13f…,13r…により発生する磁束分布には多くの高調波成分が含まれ、この高調波成分は検出誤差として影響する。このため、シート部12の表面12f側と裏面12r側のコイル部13f…をズラすことにより、不要な高調波成分を打ち消す磁束補正機能部Faとして機能させるようにした。この場合、所定角度Qsの大きさを選定することにより、打ち消す高調波成分の周波数を選定することができる。このように、検出巻線3に、複数のコイル部13f,13rを組合わせることにより、検出巻線3による磁束分布の不要成分を打ち消す磁束補正機能部Faを設ければ、本来の検出機能に対して、磁束補正機能部Faを付加することができるため、ノイズや誤差の低減を図ることにより、検出精度の更なる向上に寄与できる利点がある。
【0043】
なお、
図3に示すシートコイルCo及び端子シートJoにおける黒丸部t…は、スルーホールを示しており、シートコイルCo及び端子シートJoの表面12f…を磁気コア6側に向け、シートコイルCo,端子シートJoの順に積層することにより、検出巻線3を有するシートコイルユニット28を構成することができる。
図4がこの位置関係を示したものであり、また、シートコイルユニット28を磁気コア6に組付ける(貼付ける)ことにより構成される検出ユニット23を円板部25に取付け、更にケーシング21に組付けた構造が
図7となる。
【0044】
次に、このように構成するレゾルバ本体部M1に接続して使用する信号処理部M2の構成について、
図8を参照して説明する。
【0045】
図8中、M1はレゾルバ本体部示し、
図1〜
図7と同一部分には同一符号を付してその構成を明確にした。このレゾルバ本体部M1に接続する信号処理部M2は、入力側回路M2iを備え、この入力側回路M2iは、発振部31により生成したクロック信号に基づいてカウンタパルスを生成するカウンタパルス回路32、このカウンタパルスに基づいて周波数が1〔MHz〕程度の高周波信号を生成する高周波信号生成回路33、この高周波信号に基づいて励磁信号Sx(V・sinωt),Sy(V・cosωt)を生成する励磁信号生成回路34、一方の励磁信号Sxが入力し、かつ励磁信号Sxの極性反転位置で、高周波信号の極性を反転させて出力する極性反転回路35、この極性反転回路35から出力する高周波信号により励磁信号Sxを振幅変調する変調回路36、この変調回路36から出力する変調信号Smx、即ち、振幅変調された励磁信号Sxを一方の励磁巻線2xに供給する励磁回路37を備えるとともに、他方の励磁信号Syが入力し、かつ励磁信号Syの極性反転位置で、高周波信号の極性を反転させて出力する極性反転回路38、この極性反転回路38から出力する高周波信号により励磁信号Syを振幅変調する変調回路39、この変調回路39から出力する変調信号Smy、即ち、振幅変調された励磁信号Syを他方の励磁巻線2yに供給する励磁回路40を備える。
【0046】
また、M2oは出力側回路であり、この出力側回路M2oは、出力トランス24の二次巻線24sに接続することにより当該二次巻線24sから出力する変調信号Smoを復調して検出信号Soを出力する出力処理回路51、この出力処理回路51から得た検出信号Soが付与される角度検出回路52を備える。なお、出力トランス24の一次巻線24fは検出巻線3に接続される。
【0047】
他方、M2sは、励磁信号Sx,Syと検出信号So間に生じる位相誤差を補正する位相補正回路であり、この位相補正回路M2sは、温度ドリフトに基づく補正信号を生成する温度補正信号生成部53、この温度補正信号生成部53から出力する補正信号によりカウンタパルス回路32から出力したカウンタパルスを補正する補正回路54、この補正回路54から出力する補正されたカウンタパルスに基づいて高周波信号を生成する高周波信号生成回路58、この高周波信号生成回路58から出力する高周波信号に基づいて参照信号を生成する参照信号生成回路59を備え、この参照信号生成回路59により生成された参照信号は角度検出回路52に付与される。なお、温度補正信号生成部53は、出力処理回路51を経由して得る変調信号Smoから高周波信号成分を分離し、得られた高周波信号成分とカウンタパルス回路32から出力するカウンタパルスと高周波信号生成回路58から出力する高周波信号に基づいて当該高周波信号成分の温度ドリフトによる誤差成分を検出する温度ドリフト検出機能を備え、この温度ドリフト検出機能から得られる誤差成分に基づいて上記補正信号を生成する補正信号生成機能を備える。
【0048】
このように、励磁巻線2x,2yに対して、高周波信号Shにより励磁信号Sx,Syを振幅変調し、かつ当該高周波信号Shの極性を励磁信号Sx,Syの極性反転位置で反転させた変調信号Smx,Smyを入力し、検出巻線3から出力する変調信号Smoを復調して検出信号Soを得るようにすれば、シートコイルCxa…,Cya…,Co…のターン数を少なくした場合であっても、十分な誘起電圧(検出信号So)を得ることができるため、結果的に、レゾルバ1の超小型化,軽量化,低コスト化に寄与できるとともに、復調処理後における信号処理の容易化と安定化により、検出精度の高度化を実現できる利点がある。
【0049】
次に、このような構成を有する実施例1に係るレゾルバ1の動作について、各図を参照して説明する。
【0050】
まず、
図8に示す発振部31から出力するクロック信号はカウンタパルス回路32に付与されることにより、カウンタパルスが生成される。このカウンタパルスは高周波信号生成回路33の入力側,温度補正信号生成部53及び補正回路54の入力側にそれぞれ付与される。高周波信号生成回路33ではカウンタパルスに基づいて周波数が1〔MHz〕程度の高周波信号が生成され、この高周波信号は励磁信号生成回路34の入力側に付与され励磁信号Sx,Syが生成される。
【0051】
そして、一方の励磁信号Sxは変調回路36及び極性反転回路35にそれぞれ付与され、変調回路36では、極性反転回路35から付与される高周波信号により、励磁信号生成回路34から付与される励磁信号Sxが振幅変調され、これより得る変調信号Smxは励磁回路37を介して励磁巻線2xに付与される。この際、極性反転回路35により高周波信号の極性は、励磁信号Sxの極性反転位置毎に反転せしめられる。これにより、励磁巻線2xは変調信号Smxにより励磁され、励磁巻線2xには変調信号Smxによる高周波電流が流れる。
【0052】
また、他方の励磁信号Syは変調回路39及び極性反転回路38にそれぞれ付与され、変調回路39では極性反転回路38から付与される高周波信号により、励磁信号生成回路34から付与される励磁信号Syが振幅変調され、これより得る変調信号Smyは励磁回路40を介して励磁巻線2yに付与される。この際、極性反転回路38により高周波信号生成回路33から付与される高周波信号の極性は、励磁信号Syの極性反転位置毎に反転せしめられる。これにより、励磁巻線2yは変調信号Smyにより励磁され、励磁巻線2yには変調信号Smyによる高周波電流が流れる。
【0053】
他方、検出巻線3からは励磁信号Sxに基づいて誘起する電圧と励磁信号Syに基づいて誘起する電圧が加算され、加算された合成電圧が変調信号Smoとして出力し、変調信号Smoに基づく高周波電流が流れる。この変調信号Smoは出力処理回路51に付与され、変調信号Smoが復調される。これにより、検出信号Soが得られ、角度検出回路52に付与される。また、出力処理回路51では、変調信号Smoから高周波信号成分が分離され、分離された高周波信号成分は温度ドリフト検出機能を備える温度補正信号生成部53に付与される。これにより、温度補正信号生成部53では、高周波信号分離機能により分離された高周波信号成分とカウンタパルス回路32から得るカウンタパルスと高周波信号生成回路58から得る高周波信号に基づいて当該高周波信号成分の温度ドリフトによる誤差成分が検出され、この誤差成分に基づいて補正信号が生成され、この補正信号は補正回路54に付与される。そして、補正回路54ではカウンタパルス回路32から付与されるカウタパルスが、当該補正信号により補正される。即ち、温度ドリフトによる誤差成分が排除される。
【0054】
一方、補正回路54から得る補正されたカウンタパルスは、高周波信号生成回路58に付与され、当該カウンタパルスに基づいて高周波信号が生成される。高周波信号生成回路58から得る高周波信号は、温度補正信号生成部53に付与され、温度補正信号生成部53における参照信号生成機能では、当該高周波信号に基づいて参照信号が生成される。この参照信号は角度検出回路52に付与され、角度検出回路52では参照信号から参照パルスを生成するとともに、検出信号Soから検出パルスを生成する。そして、この参照パルスの立上がりと検出パルスの立上がり間でカウンタパルスをカウントし、このカウント値を角度に変換して回動軸11の回動角を求める。具体的には、カウント値と回動角の関係を予めデータベース化し、データベースからカウント値に対応する回転角を読み出してもよいし、予め設定した関数式を用いることにより演算により求めてもよい。
【0055】
このように、実施例1に係るレゾルバ1によれば、基本的な構成として、少なくとも励磁巻線2x,2yを、二以上の刳り貫き部H…を有する二以上のシートコイルCxa…,Cya…の組合わせにより構成するとともに、当該シートコイルCxa…,Cya…を付設する磁気コア5の長手方向Dmへ所定間隔Ld…置きに配し、かつ当該磁気コア5のコア面5fに長手方向Dmに対して直角方向Dsに形成した複数のコイル収容溝部7…を設け、このコイル収容溝部7…に、各シートコイルCxa…,Cya…の少なくとも二個所の部位のコイル部分Cp…,Cq…を収容してなるため、特に、レゾルバ1の超小型化を図る場合におけるインダクタンスを高めることができ、十分な出力と検出精度を確保できるとともに、漏れ磁束の低減及びノイズの影響防止を図ることができる。
【0056】
また、受動体4を、回動軸11を有する回動体4rとして構成するとともに、シートコイルCxa…,Cya…及び磁気コア5を、回動軸11に対して同軸となるリング形に形成すれば、超小型機器における回動変位部の角度検出等に最適な変調波レゾルバ1として提供することができる。
【実施例2】
【0057】
次に、本発明の実施例2に係るレゾルバ1について、
図9〜
図13を参照して説明する。実施例2における、前述した
図1〜
図7に示した実施例1との異なる点は、まず、励磁巻線2x,2yにおいて、磁気コア5の形態を変更した。即ち、
図9に示すように、コイル収容溝部7…を形成するに際し、底部7d…側の内壁から長手方向Dmに切欠き形成した広幅となる主収容溝部7m…を設けた。したがって、
図9に示すように、主収容溝部7mを含むコイル収容溝部7の径方向(Ds)から見た形状は逆T形となる。コイル収容溝部7を、このように構成すれば、より幅の広いフレキシブルなシートコイルCxa,Cyaを収容できるため、シートコイルCxa,Cyaの一枚当たりのターン数を増加させることが可能となり、インダクタンスをより高めることができ、レゾルバの更なる性能向上に寄与できる。
【0058】
また、
図11及び
図12に示すように、励磁巻線2x,2yに、それぞれ一つのシートコイルCxaを使用した。実施例2では、より幅の広いフレキシブルなシートコイルCxa,Cyaを使用できるため、一つのシートコイルCxaであってもターン数を増やすことができるため、その分、使用(積層)するシートコイルCxaの数量を減らすことができる。例示の場合、
図11に示すように、リング形状のシート部12を二分割した形状の半シート部12pを使用し、半シート部12pの表面12fに、外縁部に沿ったコイル部13fを形成するとともに、半シート部12pの裏面に、外縁部に沿ったコイル部13r(図示を省略)を形成する。なお、二つの刳り貫き部H…を設けることにより、半シート部12pの両端位置と中央位置に計三つのブリッジ部12b,12b,12bを設けている。そして、四つの半シート部12p…を用意し、
図12に示すように、二つの半シート部12p…を円形に組合わせることにより励磁巻線2xとして使用し、他の二つの半シート部12p…を円形に組合わせることにより励磁巻線2yとして使用する。
【0059】
実施例2に示す励磁巻線2x,2yは、細部の構成を省略したが、基本的な構成は、
図1〜
図7に示した実施例1と同様に形成することができる。なお、例示の場合、二つの半シート部12p,12pを突き合わせて組付ける形態を示したが、一部を重ね合わせる形態により組合わせることも可能である。この場合には、重ね合わせた部位にスルーホールを設けることにより、二つの半シート部12p,12pの各コイル部13f…,13r…間の接続を行うことができる。実施例2における励磁巻線2x,2yでは、前述したように、磁束分布に台形化を生じるが、この励磁巻線2x,2yには前述した磁束矯正機能部Fsを設けていない。このため、磁束矯正機能部Fsは後述する検出巻線3に設けた。
【0060】
一方、検出巻線3は、
図13に示すように、一つのシートコイルCoを使用した。シートコイルCoは、リング状のシート部12を二分割した二つのエリアの表面12fp,12fpに、一対のコイル部Cor,Corを形成した。この場合、一方のコイル部Corは、径方向Dsに沿ったワイヤ部Wr…を、90〔゜〕進んだ位置まで、漸次狭い間隔になるように周方向Dmへ形成するとともに、この後、さらに、180〔゜〕進んだ位置まで、漸次広い間隔になるように周方向Dmへ形成する巻線パターンPwを180〔゜〕対称となる位置にそれぞれ形成する。したがって、巻線パターンPwは、一筆書き状に形成される。同様の巻線パターンPwは、裏面にも形成する。この巻線パターンPwにより、磁束分布を正弦波状に矯正する波形矯正機能部Fsが設けられる。
【0061】
このように、検出巻線3に、巻線パターンPwにより、磁束分布を正弦波状に矯正する磁束矯正機能部Fsを設ければ、シートコイルCo…を単純な平面形態により形成した場合に生じる磁束分布の台形化を、巻線パターンPwの変更のみにより容易に矯正できるため、実施の容易化及びレゾルバ1全体の更なる小型化に寄与できる。
【0062】
また、
図10は、このような実施例2により構成されたレゾルバ1における励磁巻線2x,2yを有する励磁ユニット22及び検出巻線3を有する励磁ユニット23の側面断面図を示す。その他、
図9〜
図13において、
図1〜
図7と同一部分には同一符号を付してその構成を明確にするとともに、その詳細な説明は省略する。
【実施例3】
【0063】
次に、本発明の実施例3に係るレゾルバ1について、
図14〜
図19を参照して説明する。実施例3における、前述した
図9〜
図13に示した実施例2との異なる点は、実施例2の場合、シートコイルCxa,Cya,Coを、リング形状(偏平円筒形状)に形成した磁気コア5,6の端面位置に配設したが、実施例3では、シートコイルCxa,Cya,Coを、リング形状(偏平円筒形状)に形成した磁気コア5,6の周面位置に配設した点が異なる。
【0064】
このため、励磁側の磁気コア5は、
図14及び
図15に示すように、内周面5iに、十二のコイル収容溝部7…を等間隔により形成するとともに、コイル収容溝部7…の底部7d…側の内壁から周方向Dmに切欠き形成した広幅となる主収容溝部7m…を設けた。したがって、
図14に示すように、主収容溝部7mを含むコイル収容溝部7の軸平行方向Dcから見た形状はT形となり、基本形状は、実施例2と同じになるが、形成する面が異なることになる。一方、検出側の磁気コア6は、
図14及び
図15に示すように、磁気コア5の内方の空間に配し、磁気コア5の内周面5i(コア面5f)に対して、磁気コア6の外周面6o(コア面6f)が所定の隙間を介して対面する。
【0065】
また、
図17は、磁気コア5に使用するシートコイルCxa,Cyaを示す。
図17(b)は、sin相側の励磁巻線2xを有するシートコイルCxaを示すとともに、
図17(c)は、cos相側の励磁巻線2yを有するシートコイルCyaを示す。各シートコイルCxa,Cyaの巻線パターンは、基本的に、全体では、実施例1における励磁巻線2x,2yの巻線パターンと同様になるように選定する。これにより、正弦波に近似する
図7(a)に示す磁束分布を得ることができる。なお、各シートコイルCxa,Cyaの巻線パターンは表裏面に形成されている。
【0066】
そして、シートコイルCxa,Cybを、磁気コア5に組付けるに際しては、まず、
図17(b)に示すシートコイルCxaの端部P1に位置するブリッジ部12bを、
図14に示す磁気コア5の位置P1のコイル収容溝部7に収容し、この後、磁気コア5の内周面5iにおいて、
図14中の時計方向に沿ったコイル収容溝部7…に、シートコイルCxaのブリッジ部12b…を順次収容することにより組付けることができる。次いで、
図17(c)に示すシートコイルCyaの端部P4に位置するブリッジ部12bが、
図14に示す磁気コア5の位置P4のコイル収容溝部7に収容し、この後、磁気コア5の内周面5iにおいて、
図14中の時計方向に沿ったコイル収容溝部7…に、シートコイルCyaのブリッジ部12b…を順次収容することにより組付けることができる。これにより、シートコイルCxa,Cyaは、電気角で90゜位相を異ならせた空間位置に配設される。これにより、
図16に示す励磁ユニット61を得ることができる。この励磁ユニット61は、実施例1における励磁ユニット22と同様の機能を有する。
【0067】
さらに、磁気コア6の外周面6oには、実施例1における
図3に示した検出巻線3を有するシートコイルCo(円形)と同様に形成したシートコイルCo(直線形)を貼着することにより、
図16に示す検出ユニット62を得ることができる。この検出ユニット62は、実施例1における検出ユニット23と同様の機能を有する。なお、検出巻線3を有するシートコイルCoの巻線パターンは表裏面に形成されている。
【0068】
また、
図16は、レゾルバ本体部M1を示す。図示のレゾルバ本体部M1は、全体のケーシング及びこのケーシングに支持される回動シャフトは除かれており、レゾルバ本体部M1の基本構成のみを示す。同図において、65は、大径円筒状に形成した外側に配する固定側となるアウタベース部を示すとともに、66は、小径円筒状に形成した内側に配する回動側となるインナベース部を示す。そして、アウタベース部65における内周面の一端側寄りに励磁ユニット61に備える磁気コア5の外周面を固定するとともに、インナベース部66における外周面の一端側寄りに検出ユニット62に備える磁気コア6の内周面を固定する。また、インナベース部66における外周面の他端側寄りに一次巻線71fの一次コア72fを固定するとともに、アウタベース部65における内周面の他端側寄りに二次巻線71sの二次コア72sを固定することにより出力トランス71を構成する。
【0069】
他方、
図18は、
図14に示した磁気コア6の変更例を示す。
図18に示す磁気コア6は、外周面6oに、十二のコイル収容凹部75…を周方向Dmに沿って等間隔に形成したものである。したがって、この変更例では、使用する検出巻線3は、
図17に示したシートコイルCxaと同一形状となる
図19(b)に示すシートコイルCoを用いることができる。なお、シートコイルCoの巻線パターンは、実施例1における
図3に示した検出巻線3を有するシートコイルCo(円形)と同様に形成したシートコイルCo(直線形)を用いればよい。これにより、
図16に示す検出ユニット62と同様の機能を有する検出ユニットを得ることができる。この場合もシートコイルCoの巻線パターンは表裏面に形成されている。また、
図19(a)は、検出巻線3側で得られる正弦波に近似する磁束分布を示す。その他、
図14〜
図19において、
図1〜
図13と同一部分には同一符号を付してその構成を明確にするとともに、その詳細な説明は省略する。
【0070】
以上、好適実施形態(実施例1〜実施例3)について詳細に説明したが、本発明は、このような実施形態(実施例)に限定されるものではなく、細部の構成,形状,素材,数量,数値等において、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、任意に変更,追加,削除することができる。
【0071】
例えば、励磁巻線2x,2yには、高周波信号Shにより励磁信号Sx,Syを振幅変調し、かつ当該高周波信号Shの極性を励磁信号Sx,Syの極性反転位置で反転させた変調信号Smx,Smyを入力し、検出巻線3から出力する変調信号Smoを復調して検出信号Soを得る実施例を示したが、変調することなく、励磁信号Sx,Syを励磁巻線2x,2yに入力し、かつ検出巻線3から出力する検出信号Soに基づいて励磁巻線2x,2y又は検出巻線3を設けた受動体4の変位量を検出する場合を排除するものではない。また、受動体4を、回動軸11を有する回動体4rとして構成するとともに、シートコイルCxa…,Cya…,Co…及び磁気コア5,6を、回動軸11に対して同軸となるリング形に形成するいわゆるロータリタイプとして構成する場合を示したが、受動体4が直進方向に変位する、いわゆるリニアタイプとして構成してもよい。さらに、コイル収容溝部7…を、磁気コア5に設けた場合を示したが、磁気コア6に設けてもよいし、磁気コア5と6の双方に設けてもよい。一方、シートコイルCxa…,Cya…,Co…は、基板を構成するシート部12の表面12f及び裏面12rに設けた場合を示したが、表面12f又は裏面12rの一方にのみ設ける場合を排除するものではない。なお、変調信号Smx,Smyは、励磁信号Sx,Syを振幅変調した場合を示したが、位相変調等の他の変調方式の採用を妨げるものではない。