(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステル金属塩(C)が、アルキル基の炭素原子数が10〜16であるポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステル金属塩を含む請求項1から3のいずれか一項に記載の砂鋳型造型用添加剤。
前記アルキルスルホン酸金属塩(A)の含有割合が、前記アルキルスルホン酸金属塩(A)、前記アルキル硫酸金属塩(B)、前記ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステル金属塩(C)及び前記アルキルベンゼンスルホン酸金属塩(D)の合計を100質量%とした場合に、80〜96質量%である請求項1から4のいずれか一項に記載の砂鋳型造型用添加剤。
前記アルキル硫酸金属塩(B)及び前記ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステル金属塩(C)を含有し、前記アルキルスルホン酸金属塩(A)、前記アルキル硫酸金属塩(B)及び前記アルキルエーテル硫酸エステル金属塩(C)の含有割合が、これらの合計を100質量%とした場合に、それぞれ、80〜96質量%、2〜10質量%及び2〜10質量%である請求項1から4のいずれか一項に記載の砂鋳型造型用添加剤。
前記製造方法が、前記砂鋳型造型用砂組成物を撹拌して該砂鋳型造形用組成物を発泡させる工程と、得られた発泡組成物を鋳型造型用空間に充填する工程と、前記鋳型造型用空間内の充填物を固化させる工程と、を備える請求項8に記載の砂鋳型の製造方法。
前記製造方法が、前記砂鋳型造型用添加剤を発泡させて泡状物を生成し、生成した前記泡状物と前記砂とを撹拌することにより前記砂鋳型造型用砂組成物を発泡させる工程と、得られた発泡組成物を鋳型造型用空間に充填する工程と、前記鋳型造型用空間内の充填物を固化させる工程と、を備える請求項8に記載の砂鋳型の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の砂鋳型造型用添加剤(以下、「本発明の添加剤」という)は、発泡させて砂鋳型の造型に用いる砂組成物(砂鋳型造型用砂組成物)に配合される添加剤であり、成分(A)を含む添加剤である。
【0010】
上記成分(A)は、アルキル基の炭素原子数が9〜22のアルキルスルホン酸金属塩である。アルキル基は、好ましくは脂肪族炭化水素に由来する炭化水素基である。
炭素原子数が9〜22のアルキルスルホン酸としては、ノニルスルホン酸、デシルスルホン酸、ウンデシルスルホン酸、ドデシルスルホン酸、トリデシルスルホン酸、テトラデシルスルホン酸、ペンタデシルスルホン酸、ヘキサデシルスルホン酸、ヘプタデシルスルホン酸、オクタデシルスルホン酸、ノナデシルスルホン酸、エイコシルスルホン酸、ヘンエイコシルスルホン酸及びドコシルスルホン酸が挙げられ、その金属塩は、1価金属塩及び多価金属塩のいずれでもよい。
上記成分(A)は、1価金属塩が好ましく、砂鋳型造型用砂組成物の発泡性の観点から、水溶性を有するアルカリ金属塩(ナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩等)がより好ましい。特に好ましくは、ナトリウム塩である。
また、アルキルスルホン酸金属塩は、一般的に、第一級アルキルスルホン酸金属塩、第二級アルキルスルホン酸金属塩等があるが、第一級アルキルスルホン酸金属塩が好ましい。
【0011】
上記成分(A)としては、具体的には、ノニルスルホン酸ナトリウム、デシルスルホン酸ナトリウム、ウンデシルスルホン酸ナトリウム、ドデシルスルホン酸ナトリウム、ドデシルスルホン酸リチウム、トリデシルスルホン酸ナトリウム、トリデシルスルホン酸リチウム、テトラデシルスルホン酸ナトリウム、テトラデシルスルホン酸リチウム、ペンタデシルスルホン酸ナトリウム、ペンタデシルスルホン酸リチウム、ヘキサデシルスルホン酸ナトリウム、ヘキサデシルスルホン酸リチウム、ヘプタデシルスルホン酸ナトリウム、ヘプタデシルスルホン酸リチウム、オクタデシルスルホン酸ナトリウム、オクタデシルスルホン酸リチウム、ノナデシルスルホン酸ナトリウム、エイコシルスルホン酸ナトリウム、エイコシルスルホン酸カリウム、ヘンエイコシルスルホン酸ナトリウム、ドコシルスルホン酸ナトリウム、ドコシルスルホン酸カリウム等が挙げられる。上記成分(A)は、本発明の効果がより顕著であることから、アルキル基の炭素原子数が9〜18のアルキルスルホン酸アルカリ金属塩が特に好ましい。
本発明の添加剤に含まれる成分(A)は、1種のみであってよいし、2種以上であってもよい。複数の成分(A)を用いる場合、少なくとも、炭素原子数が9〜18から選ばれたアルキル基を有するアルキルスルホン酸金属塩を含むことが好ましい。
【0012】
本発明の添加剤は、上記成分(A)と併用することにより、本発明の効果を向上させる成分として、アルキル硫酸金属塩(以下、「成分(B)」という)、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステル金属塩(以下、「成分(C)」という)、及び、アルキルベンゼンスルホン酸金属塩(以下、「成分(D)」という)
から選ばれた少なくとも1種を含有する。
【0013】
上記成分(A)の含有割合は、成分(A)、(B)、(C)及び(D)の合計を100質量%とした場合に、好ましくは80〜96質量%、より好ましくは92〜96質量%である。
【0014】
上記成分(B)は、アルキル硫酸金属塩であり、R
1−O−SO
3M
1(R
1は、アルキル基であり、M
1は金属原子である)で表される。この一般式において、R
1は、好ましくは、炭素原子数が8以上の、脂肪族炭化水素に由来する炭化水素基である。M
1は、1価金属原子及び多価金属原子のいずれでもよいが、好ましくはアルカリ金属原子であり、より好ましくは、Li、Na及びKであり、特に好ましくはNaである。
また、アルキル硫酸金属塩は、一般的に、第一級アルキル硫酸金属塩、第二級アルキル硫酸金属塩等があるが、第一級アルキル硫酸金属塩が好ましい。
【0015】
上記成分(B)としては、具体的には、オクチル硫酸ナトリウム、ノニル硫酸ナトリウム、デシル硫酸ナトリウム、デシル硫酸カリウム、ウンデシル硫酸ナトリウム、ドデシル硫酸ナトリウム、ドデシル硫酸リチウム、トリデシル硫酸ナトリウム、テトラデシル硫酸ナトリウム、ペンタデシル硫酸ナトリウム、ヘキサデシル硫酸ナトリウム、ヘプタデシル硫酸ナトリウム、オクタデシル硫酸ナトリウム等が挙げられる。上記成分(B)は、本発明の効果をより向上させることが可能であることから、アルキル基R
1の炭素原子数が8〜18のアルキル硫酸アルカリ金属塩が好ましく、アルキル基R
1の炭素原子数が8〜14のアルキル硫酸アルカリ金属塩が更に好ましい。
本発明の添加剤に含まれる成分(B)は、1種のみであってよいし、2種以上であってもよい。
【0016】
上記成分(C)は、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステル金属塩であり、R
2−O−(R
3−O)
n−SO
3M
2(R
2は、アルキル基であり、R
3は、アルキレン基であり、M
2は金属原子であり、nは2〜5である)で表される。この一般式において、R
2は、直鎖状又は分岐状の炭化水素基であり、好ましくは、炭素原子数が10以上の、脂肪族炭化水素に由来する炭化水素基である。R
3は、好ましくは、炭素原子数が2以上のアルキレン基であり、より好ましくは炭素原子数が2〜4のアルキレン基(エチレン基、プロピレン基又はブチレン基)である。M
2は、1価金属原子及び多価金属原子のいずれでもよいが、好ましくはアルカリ金属原子であり、より好ましくは、Li、Na及びKであり、特に好ましくはNaである。また、複数のR
3は、1種のみでもよいし、2種以上でもよい。
上記ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステル金属塩としては、上記一般式におけるR
2が第一級アルキル基であるポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステル金属塩が好ましい。
【0017】
上記成分(C)としては、ポリオキシエチレンデシルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシプロピレンデシルエーテル硫酸カリウム、ポリオキシエチレンウンデシルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンドデシルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンドデシルエーテル硫酸リチウム、ポリオキシエチレントリデシルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンテトラデシルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンペンタデシルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンヘキサデシルエーテル硫酸ナトリウム等が挙げられる。上記成分(C)は、本発明の効果をより向上させることが可能であることから、アルキル基R
2の炭素原子数が10〜16のポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステルアルカリ金属塩が好ましく、アルキル基R
2の炭素原子数が10〜14のポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステルアルカリ金属塩が更に好ましい。また、付加しているアルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、1,2−ブチレンオキサイド、1,4−ブチレンオキサイド等が挙げられるが、中でもエチレンオキサイドが好ましい。エチレンオキサイドのモル付加数としては、2〜5モルが好ましく、3〜4モルがより好ましい。
本発明の添加剤に含まれる成分(C)は、1種のみであってよいし、2種以上であってもよい。
【0018】
上記成分(D)は、アルキルベンゼンスルホン酸金属塩であり、R
4−O−SO
3M
3(R
4は、アルキルフェニル基であり、M
3は金属原子である)で表される。この一般式において、R
4は、好ましくは、炭素原子数が7以上の、芳香環を含む炭化水素に由来する炭化水素基である。M
3は、1価金属原子及び多価金属原子のいずれでもよいが、好ましくはアルカリ金属原子であり、より好ましくは、Li、Na及びKであり、特に好ましくはNaである。
また、アルキルベンゼンスルホン酸金属塩は、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸金属塩及び分岐アルキルベンゼンスルホン酸金属塩のいずれでもよい。
【0019】
上記成分(D)としては、デシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、デシルベンゼンスルホン酸カリウム、ウンデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、トリデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、テトラデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ペンタデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ヘキサデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等が挙げられる。上記成分(D)は、本発明の効果をより向上させることが可能であることから、アルキルフェニル基R
4の炭素原子数が16〜22のアルキルベンゼンスルホン酸金属塩が好ましい。
本発明の添加剤に含まれる成分(D)は、1種のみであってよいし、2種以上であってもよい。
【0020】
本発明の添加剤の組み合わせは以下に例示される。
(1)成分(A)及び(B)の組み合わせ
(2)成分(A)、(B)及び(C)の組み合わせ
(3)成分(A)、(B)及び(D)の組み合わせ
(4)成分(A)、(B)、(C)及び(D)の組み合わせ
(5)成分(A)及び(C)の組み合わせ
(6)成分(A)、(C)及び(D)の組み合わせ
(7)成分(A)及び(D)の組み合わせ
これらのうち、(1)、(2)及び(5)が好ましく、(2)が特に好ましい。
【0021】
本発明の添加剤が、成分(A)と、成分(B)、(C)及び(D)から選ばれた1種とを含有する場合、即ち、上記(1)、(5)及び(7)の場合、成分(A)の含有割合は、成分(A)、並びに、成分(B)、(C)及び(D)から選ばれた1種の合計を100質量%とした場合に、好ましくは80〜96質量%、より好ましくは92〜96質量%である。
【0022】
本発明の添加剤が、成分(A)と、成分(B)、(C)及び(D)から選ばれた2種とを含有する場合、即ち、上記(2)、(3)及び(6)の場合、成分(A)の含有割合は、成分(A)、並びに、成分(B)、(C)及び(D)から選ばれた2種の合計を100質量%とした場合に、好ましくは80〜96質量%、より好ましくは92〜96質量%である。
【0023】
特に、上記(2)において、成分(A)、(B)及び(C)の含有割合は、砂鋳型の製造時間を効果的に短縮する砂組成物が得られることから、成分(A)、(B)及び(C)の合計を100質量%とした場合に、それぞれ、好ましくは80〜96質量%、2〜10質量%及び2〜10質量%、より好ましくは92〜96質量%、2〜4質量%及び2〜4質量%である。
【0024】
本発明の添加剤は、
発泡させて砂鋳型の造型に用いる、砂とアルカリ珪酸塩を含むバインダーとを含む砂組成物に配合される添加剤であって、目的、用途等に応じて、砂と
バインダーとを除く更に他の成分を含有することができる。
本発明の添加剤が含有することのできる更に他の成分としては、液状媒体、発泡剤等が挙げられる。
【0025】
上記液状媒体は、好ましくは水であり、必要により、有機溶剤を併含してもよい。
本発明の添加剤が水を含有する場合には、水が上記の成分(A)、(B)、(C)及び(D)を溶解するため、水溶液として取り扱いが容易である。本発明の添加剤が水及び水溶性バインダーを含有する場合にも同様に、取り扱いが容易となる。
【0026】
本発明の添加剤は、成分(A)と、成分(B)、(C)及び(D)から選ばれた少なくとも1種との組み合わせにより、得られる砂組成物を十分に発泡させることができるが、別途、発泡剤を含有してもよい。このような発泡剤としては、成分(A)、(B)、(C)及び(D)を除く界面活性剤(成分(A)を除くアルキルスルホン酸金属塩等)、サポニン、デンプン又はその誘導体、他の糖類(セルロース、フルクトース、アカルボース、ラフィノース、マルトトリオース、マルトース、スクラトース、トレハロース、ブドウ糖、果糖、オリゴ糖等)等が挙げられる。
【0027】
本発明の添加剤は、上記のように、
砂とアルカリ珪酸塩を含むバインダーとを含む砂組成物に配合される添加剤である。このバインダーは、液状媒体(通常、水)に溶解する成分であることが好ましく、例えば、珪酸リチウム、珪酸ナトリウム、珪酸カリウム等のアルカリ珪酸塩;珪酸アンモニウム、オルソリン酸塩、ピロリン酸塩、トリメタリン酸塩、ポリメタリン酸塩、コロイダルシリカ、コロイダルアルミナ、アルキルシリケート等が挙げられる。これらのうち、
本発明の添加剤が配合される砂組成物に用いられるバインダーとしては、アルカリ珪酸塩
である。
【0028】
上記アルカリ珪酸塩としては、珪酸ナトリウム(水ガラス)が好ましく、モル比(SiO
2及びNa
2Oの分子比)は、好ましくは1.2以上3.8以下、より好ましくは2.0以上3.3以下である。上記モル比が上記範囲にあると、アルカリ珪酸塩を含む添加剤を低温で長期保管した場合に、珪酸ナトリウムが変質しないため、好ましい。
【0029】
本発明の添加剤
を添加する砂組成物におけるバインダーの含有割合は、以下の通りである。
本発明の添加剤
における成分(A)、成分(B)、(C)及び(D)の合計含有量を100質量部とすると、バインダーの割合は、好ましくは20〜5000質量部、より好ましくは50〜1500質量部である。
【0030】
次に、本発明の砂鋳型造型用砂組成物(以下、「本発明の砂組成物」ともいう)について、説明する。
本発明の砂組成物は、上記本発明の添加剤と、砂と
、アルカリ珪酸塩を含むバインダーと、を含有することを特徴とする組成物である。
【0031】
上記砂は、砂粒子を意味し、その構成材料は、特に限定されず、従来、公知のものを用いることができる。例えば、硅砂、アルミナ砂、オリビン砂、クロマイト砂、ジルコン砂、ムライト砂、人工砂等が挙げられる。本発明の砂組成物に含まれる砂の構成材料は、1種のみであってよいし、2種以上であってもよい。これらの中で、人工砂を用いると、バインダーの添加量を低減しても、得られる砂鋳型に十分な強度を付与できることがある。
【0032】
上記砂の粒度指数(JIS Z2601−1993に準拠)は、JIS;631(AFS;300)以下JIS;5(AFS;3)以上が好ましく、JIS;355(AFS;200)以下JIS;31(AFS;20)以上が更に好ましい。粒度指数が上記範囲にあることにより、砂組成物の流動性に優れ、砂鋳型を造型する際の、砂組成物の金型への充填性が向上する。また、得られる砂鋳型の通気性が良好となる。
【0033】
上記砂の形状は、特に限定されるものではなく、丸形、角丸形、多角形、尖扁角形等、いかなる形状であってもよい。尚、砂組成物の流動性に優れ、砂鋳型を造型する際の、砂組成物の金型への充填性が向上し、また、得られる砂鋳型の通気性が良好であることから、特に丸形が好ましい。
【0034】
本発明の砂組成物は、触媒、酸化促進剤等、従来公知の成分を含有することができる。
【0035】
本発明の砂組成物は、成分(A)と、
(B)アルキル硫酸金属塩、(C)ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステル金属塩、及び、(D)アルキルベンゼンスルホン酸金属塩から選ばれた少なくとも1種と、アルカリ珪酸塩を含むバインダーと、砂とを含有する組成物である。
本発明の砂組成物において、成分(A)、(B)、(C)及び(D)の合計量の砂に対する含有割合は、砂100質量部に対して、好ましくは0.005〜2.0質量部、更に好ましくは0.005〜1.0質量部である。
本発明の砂組成物において、バインダー及び砂の含有割合は、バインダーの種類並びに砂の種類及び性状によって、設定されたものとすることができる。本発明の砂組成物では、バインダーの含有割合が、砂100質量部に対して、好ましくは0.1〜20質量部、更に好ましくは0.1〜10質量部となるように、バインダー及び砂が配合されている。
【0036】
本発明の砂組成物は、砂鋳型の製造原料として好ましく用いられる。
本発明の砂鋳型製造方法は、上記本発明の砂組成物を成形することを特徴とする方法である。好ましい製造方法は、発泡させた砂組成物(以下、「発泡組成物」という)を用いる方法である。
【0037】
上記発泡組成物は、以下の方法により調製することができる。
(i)成分(A)
並びに成分(B)、(C)及び(D)から選ばれた少なくとも1種を含
む本発明の添加剤と、バインダーと、液状媒体と、砂とを混合し発泡する方法
(ii)成分(A)
並びに成分(B)、(C)及び(D)から選ばれた少なくとも1種と、液状媒体
とを含
む本発明の添加剤と、バインダーと、砂とを混合し発泡する方法
また、以下の方法により発泡組成物を製造することもできる。
(
iii)成分(A)
並びに成分(B)、(C)及び(D)から選ばれた少なくとも1種を含
む本発明の添加剤を予め発泡させて、生成した泡状物と、バインダーと、液状媒体と、砂とを混合し発泡する方法
(
iv)成分(A)
並びに成分(B)、(C)及び(D)から選ばれた少なくとも1種と、液状媒体
とを含
む本発明の添加剤を予め発泡させて、生成した泡状物と、バインダーと、砂とを混合し発泡する方法
【0038】
(
iii)〜(
iv)において、本発明の添加剤を混ぜてから発泡させて泡状物を生成する方法としては、例えば、複数の細孔が形成された多孔体に、添加剤とバインダーを混ぜてエアと共に通過させる方法が挙げられる。
(i)〜(
iv)において、混合撹拌して砂組成物を発泡させる装置としては、従来、公知の混合装置又は混練装置を用いることができる。混合装置又は混練装置としては、例えば、愛工舎製作所社製「卓上ミキサー」、日本アイリッヒ社製「インテンシブ・ミキサー」、新東工業社製「シンプソン・ミックスマラー」等を用いることができる。
【0039】
本発明において、砂鋳型の造型に好適な発泡組成物の粘度は、好ましくは0.5〜10Pa・s、より好ましくは0.5〜8Pa・sである。尚、この粘度の測定方法は、後述の〔実施例〕に記載される。
【0040】
本発明の砂組成物を用いた成形工程では、上記発泡組成物を鋳型造型用の金型(加熱された金型)の空間に充填して、これを固化させることが好ましい。
【0041】
発泡組成物を用いた砂鋳型の造型方法は、特に限定されず、造型機による造型方法及び手込めによる造型方法のいずれでもよい。前者の方法で用いる造型機としては、例えば、ジョルト造型機、スクイズ造型機、ジョルトスクイズ造型機、サンドストリンガ造型機、ブロー造型機、プランジャー圧入造型機、三次元造型機等が挙げられる。
【0042】
上記発泡組成物を金型の空間に充填する方法は、特に限定されないが、通常、圧入法が適用される。また、用いる金型の温度は、特に限定されないが、通常、100℃〜400℃、好ましくは200℃〜300℃である。その後、金型に充填した発泡組成物を固化させる場合、金型の温度を一定としておいてよいし、変化させてもよい。発泡組成物が固化した後、金型から砂鋳型を取り出す場合、砂鋳型は、加熱状態及び冷却状態のいずれでもよい。
【0043】
本発明の砂鋳型を、金属又は合金の溶湯とともに用いることにより、所期の形状を有する鋳造品を容易に製造することができる。
【実施例】
【0044】
以下、本発明の構成及び効果をより具体的にするため、実施例等を挙げるが、本発明がこれらの実施例に限定されるというものではない。尚、以下の実施例及び比較例において、「%」は質量%を意味することがある。
【0045】
1.試験区分1(砂鋳型造型用添加剤(I)の製造)
砂鋳型造型用添加剤(I)の製造原料を以下に示す。
【0046】
1−1.成分(A)
A−1:アルキル基の炭素原子数が14〜18のアルキルスルホン酸ナトリウムの混合物(5種の化合物の混合物、即ち、アルキル基の炭素原子数が14のテトラデシルスルホン酸ナトリウム、アルキル基の炭素原子数が15のペンタデシルスルホン酸ナトリウム、アルキル基の炭素原子数が16のヘキサデシルスルホン酸ナトリウム、アルキル基の炭素原子数が17のヘプタデシルスルホン酸ナトリウム、及び、アルキル基の炭素原子数が18のオクタデシルスルホン酸ナトリウムの混合物である。以下も同様である。)
A−2:アルキル基の炭素原子数が9〜13のアルキルスルホン酸ナトリウムの混合物(5種の化合物の混合物)
A−3:アルキル基の炭素原子数が19〜22のアルキルスルホン酸カリウムの混合物(4種の化合物の混合物)
A−4:アルキル基の炭素原子数が19〜22のアルキルスルホン酸リチウムの混合物(4種の化合物の混合物)
A−5:アルキル基の炭素原子数が19〜22のアルキルスルホン酸ナトリウムの混合物(4種の化合物の混合物)
【0047】
1−2.成分(B)
B−1:アルキル基の炭素原子数が8〜10のアルキル硫酸ナトリウムの混合物(3種の化合物の混合物)
B−2:アルキル基の炭素原子数が10〜14のアルキル硫酸ナトリウムの混合物(5種の化合物の混合物)
B−3:アルキル基の炭素原子数が14〜18のアルキル硫酸ナトリウムの混合物(5種の化合物の混合物)
【0048】
1−3.成分(C)
C−1:アルキル基の炭素原子数が12〜14のポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム(エチレンオキサイド3〜4モル付加)の混合物(3種の化合物の混合物)
C−2:アルキル基の炭素原子数が10〜12のポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム(エチレンオキサイド3〜4モル付加)の混合物(3種の化合物の混合物)
C−3:アルキル基の炭素原子数が12〜16のポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸カリウム(エチレンオキサイド2〜5モル付加)の混合物(5種の化合物の混合物)
C−4:アルキル基の炭素原子数が12〜16のポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸リチウム(エチレンオキサイド2〜5モル付加)の混合物(5種の化合物の混合物)
【0049】
1−4.成分(D)
D−1:アルキル基の炭素原子数が10〜16の直鎖アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウムの混合物(7種の化合物の混合物)
【0050】
1−5.その他の成分
a−1:ドデシルエーテルホスフェートカリウム(エチレンオキサイド5モル付加)
【0051】
次に、上記の原料を用いて砂鋳型造型用添加剤を調製した例を示す。
【0052】
実施例1−1
アルキルスルホン酸金属塩A−1と、アルキル硫酸金属塩B−1と、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステル金属塩C−1とを、表1に示す割合で用いて、これらを均一混合し、砂鋳型造型用添加剤H−1を調製した。
【0053】
実施例1−2〜1−
10及び比較例1−1〜1−
5
表1に示す成分を、所定の割合で用いて、実施例1−1と同様にして、H−2〜H−12及びh−1〜h−3を調製した。
【0054】
【表1】
【0055】
2.試験区分2(バインダーを含む砂鋳型造型用添加剤(II)の製造及びその安定性評価)
実施例2−1〜2−
10及び比較例2−1〜2−
5
珪酸ナトリウム100質量部と、試験区分1で得られた砂鋳型造型用添加剤(I)8質量部と、水240質量部とを、ビーカーに入れ、これらをスターラーにより撹拌、混合し、表2に示す砂鋳型造型用添加剤J−1〜J−12及びj−1〜j−3を調製した。次いで、これらの砂鋳型造型用添加剤(II)を20℃で24時間静置した後の状態を目視で観察し、以下の基準で砂鋳型造型用添加剤(II)の安定性を評価した。その結果を表2にまとめて示した。
<安定性の判定基準>
1:沈殿及び分離が生じなかった
2:わずかに沈殿が生じたが、撹拌によって再分散した
3:分離及び沈殿が生じたが、撹拌による再分散が不可能であった
【0056】
【表2】
【0057】
表2から、以下のことが分かる。即ち、実施例2−1〜2−
10は、本発明の砂鋳型造型用添加剤の例であり、これらの水分散組成物は、安定性に優れることが分かる。
【0058】
3.試験区分3(発泡させた砂鋳型造型用砂組成物の調製及びその生産性の評価)
実施例3−1〜3−
10及び比較例3−1〜3−
5
試験区分1で得られた砂鋳型造型用添加剤(I)と、下記3−1.のバインダーと、下記3−2.の砂と、水とを、表3に示す割合で用い、下記3−3.の4種類の調製手順により、発泡状態の砂鋳型造型用砂組成物(以下、「発泡組成物」ともいう)をそれぞれ調製した。砂鋳型の製造に用いられる発泡組成物の生産性は、砂鋳型の生産性に影響を与えるため、下記3−4.の方法により発泡組成物の粘度測定を行い、得られた発泡組成物の生産性を、下記3−5.の判定基準により評価した(表4参照)。
【0059】
3−1.バインダー
珪酸ナトリウムを用いた。
3−2.砂
S−1:キンセイマテック社製人工砂「グリーンビーズ AFS;90」(商品名)
S−2:山川産業社製人工砂「エスパール #60L」(商品名)
【0060】
【表3】
【0061】
3−3.調製手順
(1)調製手順1
試験区分1で得られた砂鋳型造型用添加物(I)と、バインダーと、砂と、水とを、表3に示す割合で用い、これらの合計2000グラムを卓上ミキサーにより、発泡状態になるまで撹拌、混合して、砂鋳型造型用砂組成物N−1〜N−12及びn−1〜n−3からなる発泡組成物を得た。
(2)調製手順2
試験区分1で得られた砂鋳型造型用添加物(I)と、バインダーと、水とを、表3に示す割合で、これらを500mlビーカーに入れた。次いで、これらをスターラーにより撹拌、混合し、混合物を密閉容器に移して、20℃で1週間静置した。その後、表3に示す量の砂と上記混合物とを、合計2000グラムとして卓上ミキサーにより、発泡状態になるまで撹拌、混合して、砂鋳型造型用砂組成物N−1〜N−12及びn−1〜n−3からなる発泡組成物を得た。
(3)調製手順3
試験区分1で得られた砂鋳型造型用添加物(I)と、バインダーと、水とを、表3に示す割合で、これらを500mlビーカーに入れた。次いで、これらをスターラーにより撹拌、混合し、混合物を密閉容器に移して、20℃で1週間静置した。その後、この混合物を、本多プラス社製ポンプフォーマーボトルを用いて発泡させた。そして、表3に示す量の砂と発泡物とを、合計2000グラムとして卓上ミキサーにより、発泡状態になるまで撹拌、混合して、砂鋳型造型用砂組成物N−1〜N−12及びn−1〜n−3からなる発泡組成物を得た。
(4)調製手順4
試験区分1で得られた砂鋳型造型用添加物(I)と、バインダーと、砂と、水とを、表3に示す割合で用い、これらの合計2000グラムを卓上ミキサーにより、発泡状態になるまで撹拌、混合した。次いで、これらの組成物を、別々の密閉容器に移して、20℃で1週間静置した。その後、これらの組成物を再度、卓上ミキサーに投入し、発泡状態になるまで撹拌、混合して、砂鋳型造型用砂組成物N−1〜N−12及びn−1〜n−3からなる発泡組成物を得た。
【0062】
3−4.発泡状態の砂鋳型造型用砂組成物の粘度測定
発泡状態の砂鋳型造型用砂組成物(発泡組成物)の粘度を、粘度測定装置として自社製の測定治具を用いて測定した。
まず、底部に直径6mmの細孔を有する内径42mmの円筒容器に発泡組成物を投入し、重量1kg、直径40mmの円柱状おもりにて、おもりの自重で加圧することで細孔より発泡組成物を排出させた。このとき、おもりが50mm移動するのに要した時間を計測し、下記式により粘度μ(Pa・s)を算出した。粘度測定時の温度は25℃である。
μ=πD
4P
pt/(128L
1L
2S)
(式中、Dは、底部細孔の直径(m)、P
pは、おもりの加圧力(Pa)、tは、おもりが50mm移動するのに要した時間(s)、L
1は、おもりの移動距離(=50mm)、L
2は、底部細孔の板厚(m)、Sは、円柱状おもりと円筒の面積の平均値(m
2)である)
【0063】
3−5.発泡状態の砂鋳型造型用砂組成物の生産性評価
全原料の混合を開始してから30秒ごとに発泡状態の砂鋳型造型用砂組成物(発泡組成物)の粘度μを測定し、粘度μが10Pa・s以下になるまでの調製時間を決定することにより、発泡組成物の生産性を下記の判定基準により評価した。尚、調製手順1〜3においては卓上ミキサーにより混合を開始してから粘度が10Pa・s以下になるまでの時間を、「撹拌・混合時間」として測定し、調製手順4においては1週間静置した後に再度、卓上ミキサーにより混合を開始してから粘度が10Pa・s以下になるまでの時間を、「撹拌・混合時間」として測定した。
<生産性の判定基準>
1:粘度が10Pa・s以下になる撹拌・混合時間が60秒未満であった
2:粘度が10Pa・s以下になる撹拌・混合時間が60秒以上120秒未満であった
3:粘度が10Pa・s以下になる撹拌・混合時間が120秒以上180秒未満であった
4:粘度が10Pa・s以下になる撹拌・混合時間が180秒以上300秒未満であった
5:粘度が10Pa・s以下になる撹拌・混合時間が300秒を超えた
【0064】
【表4】
【0065】
表4から、以下のことが分かる。即ち、実施例3−1〜3−
10は本発明の砂鋳型造型用砂組成物の例であり、一液材料として安定性に優れるだけでなく、一液材料を発泡させて用いることで、砂鋳型の製造に好適な組成物の製造時間を短縮することができた。また、一旦、調製した砂鋳型造型用砂組成物を静置した後であっても、再撹拌することで、好適な組成物が得られることが分かった。
【0066】
4.試験区分4(砂鋳型の生産性評価)
実施例4−1〜4−
10及び比較例4−1〜4−
5
試験区分3の調製手順1で得られた発泡状態の砂鋳型造型用砂組成物(粘度が10Pa・s以下になるまで発泡させたもの)を用いて、下記(X)及び(Y)の実験を行い、砂鋳型の生産性を評価した。
【0067】
(X)砂鋳型造型用砂組成物の充填性
発泡状態の砂鋳型造型用砂組成物(発泡組成物)を、250℃に熱した金型におけるテストピース造型用の空間(サイズ:30mm×30mm×150mm)に充填し、発泡組成物が固化するまで焼成して、テストピースを作製し、その質量を測定した。
テストピースの質量から、発泡組成物の充填性を以下の基準で評価した。その結果を表5に示す。
<発泡組成物の充填性の判定基準>
1:テストピースの質量が225g以上227g未満であった
2:テストピースの質量が220g以上225g未満又は227g以上235g未満であった
3:テストピースの質量が235g以上であった
4:テストピースの質量が210g以上220g未満であった
5:テストピースの質量が210g未満であった
【0068】
(Y)砂鋳型の製造時間
発泡状態の砂鋳型造型用砂組成物(発泡組成物)を、250℃に熱した金型における鋳型造型用の空間(内容積:約250cm
3)に充填し、発泡組成物が固化するまでの時間(製造時間)を測定した。下記基準に基づく結果を表5に示す。
<砂鋳型の製造時間>
1:比較例4−1に対し、製造時間が10%を超えて短縮した
2:比較例4−1に対し、製造時間が5〜10%短縮した
3:比較例4−1と同程度の製造時間であった
【0069】
【表5】
【0070】
表5から以下のことが分かる。即ち、実施例4−1〜4−
10は、本発明の砂鋳型造型用砂組成物を用いた例であり、比較例4−1〜4−
5に比べて、砂鋳型の製造時間を短縮することができた。特に、実施例4−1〜4−3では、砂鋳型造型用砂組成物の金型への充填性に優れ、砂鋳型の生産性に優れていた。
【0071】
5.試験区分5
試験区分3の調製手順2〜4で得られた発泡状態の砂鋳型造型用砂組成物(粘度が10Pa・s以下になるまで発泡させたもの)について、試験区分4と同様にして、砂鋳型の生産性を評価した。その結果、調製手順2〜4の砂鋳型造型用砂組成物(発泡組成物)を用いて得られたすべての砂鋳型においても試験区分4と同じ結果が得られた。