【実施例1】
【0018】
図1は本発明に係る繊維強化樹脂材の成形品製造装置(プレス機)の全体構成を説明する模式図、
図2は
図1に示した本発明に係る繊維強化樹脂材の成形品製造装置の上面図である。
図3は本発明に係る繊維強化樹脂材の成形品製造装置を構成する上側ユニットの上金型を除いた構造の説明図、そして
図4は本発明に係る繊維強化樹脂材の成形品製造装置を構成する下側ユニットの上金型を除いた構造の説明図である。
図1は、本発明に係る繊維強化樹脂材の成形品製造装置の一実施例を示し、プレス機のベース13に設置されて、キャビティ1aを有する上金型1とコア2aを有する下金型2からなる上下一対の金型を用いたプレス成形装置である。なお、本実施例では、上金型1側に形成される雌(凹)形状をキャビティ1aとし、下金型2に形成される雄(凸)形状をコア2aとして説明しているが、キャビティ1a及びコア2aは、上下金型のいずれに形成されてもよく、特に限定するものではない。
【0019】
この成形品製造装置は、金型の加熱と冷却を行うヒートアンドクール成形に好適な装置であり、上下一対の金型(上金型1、下金型2)に熱エネルギーを供給する加熱プレート(上加熱プレート5、下加熱プレート6)を備える。また、上金型1と下金型2には、それぞれ、冷却手段(上冷却手段20、下冷却手段21)を備える。
加熱プレート(5、6)は当該一対の金型(1、2)の各背面に設置すると共に、加熱プレート(5、6)は金型(1、2)とは接離可能に配置している。なお、背面とは、金型の繊維強化樹脂材が接している側ではなく、それとは反対側の面をいう。
【0020】
図2の上面図(上加熱プレート5の平面を示す)に示したように、本実施例の成形品製造装置は、矩形の上下金型に積層された上下加熱プレート(5、6)を積層した構造である。
上加熱プレート5の四隅に穿設された上側ピン溝(ピン挿通穴)8a〜8dには、
図3に詳しく示したように、上側ユニットピン7a〜7d(7c〜7dは不図示)が上下移動可能かつ抜け出しが制限された状態で挿通している(
図1参照)。
また、下加熱プレート6についても同様の構造となっていて、四隅に穿設された下側ピン溝(ピン挿通穴)10a〜10dには、下側ユニットピン9a〜9dが上下移動可能し、横ずれを抑制した状態で挿通している。下側ユニットピン9a〜9dも、抜け出し可能になるように設置することができる。
【0021】
このように、上金型1は、上金型1内に配置される上冷却手段20と、上金型1に対して接離可能に熱的接触配置された上加熱プレート5とで構成した上側ユニット100を有する。
また、下金型2は、下金型2内に配置される下冷却手段21と、下金型2に対して接離可能に熱的接触配置された下加熱プレート6とで構成した下側ユニット200を有する。ここで、「金型内に配置される冷却手段」とは、金型の外側から冷却するものではなく、金型に内部に冷却手段を配置して、内部から金型及び繊維強化樹脂材を冷却する手段をいう。
【0022】
上金型1のキャビティ1aと下金型2のコア2aの間に挿置したプリプレグ等の繊維強化樹脂素材14aを、上加熱プレート5と下加熱プレート6による加熱と、上金型1と下金型2との圧縮押圧でプレスし、上加熱プレート5と下加熱プレート6との接触を解除した状態で、かつ上下の金型はプレス状態を維持するようにロックした状態(中間ロック)で上冷却手段20と下冷却手段21とで上金型1と下金型2を冷却して繊維強化樹脂材を成形加工品とする。
【0023】
図3と
図4を参照して本実施例における繊維強化樹脂材の成形品製造装置を構成する上側ユニット100と下側ユニット200を説明する。
なお、上側ユニット100と下側ユニット200は上下を反転した状態では同じ構造であるので、主として上側ユニット100について説明する。
【0024】
図1で説明したように、上側ユニット100は、
図1に示した上金型1のキャビティ1aとは反対側である背面に接離可能に熱的接触配置される上加熱プレート5とで構成される。同様に、下金型2は、コア2aとは反対側である背面に接離可能に熱的接触配置される下加熱プレート6とで構成される。
【0025】
上下の金型(1、2)と上下の加熱プレート(5、6)が“熱的接合で配置”されるとは、上下の金型(1、2)と上下の加熱プレート(5、6)とが良好な熱伝導するような一体的結合がなされていることを意味する。
ここで、上下の金型(1、2)は、それぞれ冷却手段(21、22)を備えており、冷却手段(21、22)により、上下の金型(1、2)は、冷却がスムーズに行うことができる。
また、上下金型(1、2)と加熱プレート(5、6)とが“熱的接触配置”されるとは、上記の“熱的接合で配置”の状態を作るが、その接触が解除可能とされるように構成されていることを意味する。
【0026】
プレスの開始時には、図示しないスライドによって上加熱プレート5は、伸縮部材である上側ユニットバネ11a〜11d(11c、11dの位置は
図2参照)に抗して上金型1に接触して一体となって下側ユニット200に載置された繊維強化樹脂素材14aを圧縮するように下降する。
【0027】
上側ユニットバネ11a〜11dは、上加熱プレート5が上金型1と圧接した状態ではバネ収容部18(上加熱プレートにのみ符号を付してある)に収容されるようになっている。
上加熱プレート5は、上側ユニットピン7a〜7d(7c、7dは図示せず)が上下距離制限のための段差のある上側ピン溝8aを滑動することによって、上金型1と接離するようになっている。
なお、上加熱プレート5と上金型1との間隔をD1、上側ユニットピン7a〜7dの上面と上加熱プレート5の背面(スライドで押される面)との距離d1は、D1≦d1で、例えば1mm≦D1≦30mmである(本実施例では5mm)。
【0028】
図5は、本発明に係る繊維強化樹脂材の成形品製造装置を構成する冷却手段の一例を説明する断面模式図、
図6は本発明に係る繊維強化樹脂材の成形品製造装置を構成する加熱プレートの一例を説明する断面模式図である。
図5において、金属バルク材からなる上下冷却手段21、22として蛇管(冷却媒体流路)が形成されており、本実施例ではこの中を冷却媒体として冷水を流す。なお、冷却媒体は冷却できるものであれば、特に限定されず、例えば、油であってもよい。
この冷却媒体は、冷却媒体源/開閉手段28から冷却媒体流路を通り回収手段30に流通することで上下の金型(1、2)の温度を下げる。
なお、
図5においては、上金型の断面を示しているが、明確性のため、上側ユニットピン7a〜7d等の記載は省略する。
【0029】
図6において、上下の加熱プレート(5、6)には、複数本のカートリッジヒーター(26、27)が設置されて加熱プレート(5、6)を加熱している。
加熱プレート(5、6)が上下の金型(1、2)に熱エネルギーを供給している期間では冷却媒体の供給を停止する。
カートリッジヒーター(26、27)は、制御手段などで発熱コントロールとオン・オフが制御される。
【0030】
カートリッジヒーター(26、27)はジュール熱を熱源とするが、これに代えて高周波加熱コイルを用いた高周波電源等を用いることができる。すなわち、熱エネルギーを供給する手段は、加熱することができる加熱機器等、特に限定されるものではない。また、加熱油や、加熱蒸気を上記した冷却媒体流路と同様の蛇管に流して加熱をすることもできる。
【0031】
次に、上記した本発明にかかる成形品製造装置を用いた繊維強化樹脂素材からその成形品を製造する方法のプロセスの一実施例を説明する。
【0032】
図7Aは、本発明に係る繊維強化樹脂材の成形品製造工程を説明する模式図、
図7Bは
図7Aに続く成形品製造工程を説明する模式図である。そして、
図8は本発明に係る繊維強化樹脂材の成形品製造手順の一例を記述する流れ図である。
以下、
図7Aと
図7B及び
図8を参照して本発明に係る製造方法の1実施例を説明する。
【0033】
初期状態では、図示しないスライドは待機位置に停止しており、上側ユニット100と下側ユニット200は、
図1に示したように上金型1のキャビティ1aと下金型2のコア2aとが離間した状態となっている。
上金型1の背面には、上加熱プレート5が上側ユニットバネ11a〜11d(11c〜11dは不図示)の伸張で離間された状態で設置されている。
【0034】
なお、下金型2についても同様に、下金型1の背面に下加熱プレート6が伸縮部材である下側ユニットバネ12a〜12d(12c〜12dは不図示)の伸張で離間した状態で設置されている。この状態で上下ユニット(100、200)がスタンバイしている(
図8のプロセス1(以下、P1のように記す))。
【0035】
そして、次のプロセスで、スタンバイ状態にある上下の金型(1、2)の間隙(キャビティ1aとコア2aの間)に加工素材(繊維強化樹脂素材14a)を挿置する(
図8のP2)。
【0036】
次に、図示しないスライドを動作させ、スライドを全降下する。降下の途上は、一段降下で上下加熱プレート(5、6)を上下金型(1、2)に接触させ、最終的な降下で上下の金型(1、2)に対して互いに押圧する力を与える。これにより、加工素材(繊維強化樹脂素材14a)を挟み、圧縮する(
図7Aの(a))。(
図8のP3)。
【0037】
そして、上下の加熱プレート(5、6)の加熱手段(カートリッジヒーター)に電流を流して加熱し、加工素材(繊維強化樹脂素材14a)を高温処理する(
図7Aの(b):ヒート工程)。(
図8のP4)。
【0038】
なお、前記P3からP4のプロセスに入る時点で、加熱手段(カートリッジヒーター)の事前加熱を行って上下金型(1、2)の温度を予め上昇させておくのが望ましい。
【0039】
加工素材の成形に必要とされる所要の時間の経過後、スライドを一段戻して(すなわち、上下ユニット(100、200)が互いに少し離れる)、上下加熱プレート(5、6)への電流を遮断し、上下加熱プレート(5、6)を上下金型(1、2)との接触を断ち、離間させ、上下冷却手段(21、22)に冷却媒体(例えば、0℃〜10℃の冷水)を流して加工素材(繊維強化樹脂素材14a)の温度を下げる(
図7Bの(c):クール工程)。(
図8のP5)。
【0040】
前記“スライドを一段戻す”とは、それによってユニットバネが伸びて上下の加熱プレート(5、6)は、上下の金型(1、2)との接触が解除されるが、上下の金型(1、2)は、加工素材を挟み込む状態で保持している状態を意味する。
すなわち、上下の金型(1、2)は、依然として加工素材(繊維強化樹脂素材14a)を挟み込んでいる状態を保持している。P5の段階では、加工素材(繊維強化樹脂素材14a)は、挟み込まれた状態であり、その成形状態を保持される。
【0041】
上下の冷却手段(21、22)による冷却により、上下の金型(1、2)の温度が所要値(例えば80℃等)に低下した時点で、上下冷却手段(21、22)への冷却媒体の供給を遮断し、スライドを初期位置に戻す。
これにより、上下の金型(1、2)が開き、成形された加工品、すなわち繊維強化樹脂材14が取り出される(脱型される)(
図7Bの(d))。(
図8のP6)。
【0042】
上記したプロセスを経ることで、加熱圧縮して加工した繊維強化樹脂素材の熱処理(加熱→冷却)に要するサイクルタイムを大幅に短縮することができ、ハイサイクルの生産を実現できる。
これにより、成形品の単価を削減することが可能となり、全体のコスト低減に寄与することができる。
【0043】
上記の製造プロセスを工程の概念でさらに説明すると以下のようになる。すなわち、本実施例に係る繊維強化樹脂成形品の製造は、次の工程を含む。
【0044】
(1)上側ユニット100を構成する上金型1のキャビティ1aと下側ユニット200を構成する下金型2のコア2aの間で当該下金型2の前記コア2aの上に繊維強化樹脂素材14aを挿置する素材挿置工程と、
(2)上側ユニット100を構成する上金型1の背面に接して設けられた上加熱プレート5および下金型2の背面に接して設けられた下加熱プレート6により、上金型1及び前記下金型2へ熱エネルギーを伝達・供給した状態で繊維強化樹脂素材を加圧して加熱・圧縮しながらプレス成形するヒート工程と、
(3)所要の加熱・圧縮処理の時間経過後、上金型1と下金型2への熱エネルギーの供給を停止すると共に、上金型1および下金型2の冷却手段21、22に冷却媒体を供給して上金型1と下金型2および前記繊維強化樹脂素材14aを所与の温度に冷却するクール工程と、
(4)繊維強化樹脂素材14aが所要の温度に冷却された時点で、上側ユニット100と下側ユニット200との加圧を解除して上金型1と下金型2を開き、繊維強化樹脂材成形品14を取り出す成形品取出す工程とを含み、
さらに、上金型1と下金型2への熱エネルギーの供給を停止する際に、上加熱プレート5および下加熱プレート6のそれぞれと上金型1および下金型2との熱接合を解除する加熱プレート退避工程を含む。
【0045】
また、上記の上金型1と下金型2に熱エネルギーを伝達・供給した状態には、繊維強化樹脂素材14aを上金型1と下金型2でのプレス工程前に、上金型1の温度を予備加熱する工程、あるいは必要により当該繊維強化樹脂素材に含浸される樹脂のガラス移転点又は溶融点温度より若干高く加熱する事前加熱工程を含ませることができる。
【0046】
以上説明した実施例によれば、冷却工程の開始前に加熱プレートを金型ユニットから退避させる構成としたことで、プレス加工における金型の冷却時間が大幅短縮され、ハイサイクルな量産化が実現できる。