特許第6872235号(P6872235)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6872235
(24)【登録日】2021年4月21日
(45)【発行日】2021年5月19日
(54)【発明の名称】振動モータ
(51)【国際特許分類】
   H02K 5/16 20060101AFI20210510BHJP
   H02K 7/065 20060101ALI20210510BHJP
   B06B 1/16 20060101ALI20210510BHJP
【FI】
   H02K5/16 Z
   H02K7/065
   B06B1/16
【請求項の数】2
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-115578(P2017-115578)
(22)【出願日】2017年6月13日
(65)【公開番号】特開2019-4551(P2019-4551A)
(43)【公開日】2019年1月10日
【審査請求日】2020年4月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】000220125
【氏名又は名称】東京パーツ工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】今井 秀一
【審査官】 池田 貴俊
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−356008(JP,A)
【文献】 特開昭61−281880(JP,A)
【文献】 特開平10−066294(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/090431(WO,A1)
【文献】 実開平04−051051(JP,U)
【文献】 特開平06−303735(JP,A)
【文献】 米国特許第04861657(US,A)
【文献】 特開平11−308803(JP,A)
【文献】 特開平02−223346(JP,A)
【文献】 特開2009−268352(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 5/16
B06B 1/16
H02K 7/065
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1筒部と、前記第1筒部の上部開口端から内方に一体形成された平坦面の第1内鍔部と、を有する磁性材料からなるモータケースと、
前記第1筒部の下部開口端に固定されたブラケットと、
前記第1内鍔部の内側に固定された上側含油軸受と、
前記ブラケットに固定された下側含油軸受と、
前記上側含油軸受と前記下側含油軸受に軸支され、上部が前記モータケースから突出する回転軸と、
前記モータケース内で前記回転軸に固定されたロータ部と、
前記ロータ部と前記上側含油軸受との間の前記回転軸に挿入された軟質のワッシャと、
前記回転軸の上部に偏心して固定された磁性材料からなる分銅と、
前記モータケースに固定され、前記分銅を前記モータケース側に吸引する吸引マグネットと、
を備えており、
前記上側含油軸受が上方向に力を受けた際に、前記上側含油軸受が当接する抜け止め部が前記モータケースに形成され
前記上側含油軸受の上端は、前記第1内鍔部の上面から突出しており、
前記吸引マグネットは、前記第1内鍔部の上面から突出した前記上側含油軸受の外周面により位置決めされ、前記第1内鍔部の上面に固定されていることを特徴とする振動モータ。
【請求項2】
前記上側含油軸受は、円筒部と、前記円筒部の外周面の下部に一体形成された外鍔部を有し、
前記抜け止め部は、前記第1内鍔部の内縁部の下面であり、
前記外鍔部の上端は、前記抜け止め部に接触していることを特徴とする請求項1に記載の振動モータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、コンピュータゲームコントローラのハウジング内に組付けられる振動モータに関するものであり、特に、回転軸が軸方向に移動することによって生じる衝突音を低減した振動モータに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1に記載の振動発生用の直流モータ111は、図3に示すように、コンピュータゲームコントローラのハウジング内にある取付座110に配されている。直流モータ111は、ケーシング112の内側面に配設されているマグネット114と、モータ軸113に軸着されているアーマチュア115と、モータ軸113に固設され、ブラシ116によって直流電源に接続されるコンミテータ117と、端子部118等とから構成され、直流電源に対しマグネット114と電流の相互作用による電磁石でアーマチュア115が回転するように構成されている。
【0003】
ケーシング112の上端部ではモータ軸113はメタル119によって軸支され、ケーシング112の下端部ではモータ軸113はメタル119Aによって軸支されている。また、アーマチュア115の軸方向の中心線Yとマグネット114の軸方向の中心線Xとは所定のギャップGがアーマチュア115の組付け時に予め設けられており、マグネット114のアーマチュア115に対する吸引力を助成するように形成されている。
【0004】
また、直流モータ111に所定の振動を付与するために、ケーシング112の外側に突設されているモータ軸113には分銅120が偏心して取付けられている。
そして、直流モータ111の回転によってモータ軸113が分銅120の偏心揺動に伴い上下動する。その際、モータ軸113に固定されているストッパ121等が、ケーシング112に対して衝突音を発生することになる。
そこで、マグネット114の吸引力を助成させるために、分銅120に所定の吸引力を有する永久磁石122を装着している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−356008号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の振動発生用モータにおいて、ストッパ121が硬質の材質である場合には、衝突音が増加する可能性がある。
一方、ストッパ121が軟質の材質である場合、モータ軸113が軸方向に移動することによって生じる衝突音は低減するが、筒体のメタル119Aが筒体の軸受保持部112Aに固定されているため、モータ軸113が上下動すると、ストッパ121が変形してメタル119Aに衝突して、メタル119Aがケーシング112の外方に移動する可能性があり、信頼性が低下する。
【0007】
そこで、本発明は、衝突音を低減して抜け止め強度を高められる振動モータを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するため、本発明の振動モータは、
第1筒部と、前記第1筒部の上部開口端から内方に一体形成された平坦面の第1内鍔部と、を有する磁性材料からなるモータケースと、
前記第1筒部の下部開口端に固定されたブラケットと、
前記第1内鍔部の内側に固定された上側含油軸受と、
前記ブラケットに固定された下側含油軸受と、
前記上側含油軸受と前記下側含油軸受に軸支され、上部が前記モータケースから突出する回転軸と、
前記モータケース内で前記回転軸に固定されたロータ部と、
前記ロータ部と前記上側含油軸受との間の前記回転軸に挿入された軟質のワッシャと、
前記回転軸の上部に偏心して固定された磁性材料からなる分銅と、
前記モータケースに固定され、前記分銅を前記モータケース側に吸引する吸引マグネットと、
を備えており、
前記上側含油軸受が上方向に力を受けた際に、前記上側含油軸受が当接する抜け止め部が前記モータケースに形成され
前記上側含油軸受の上端は、前記第1内鍔部の上面から突出しており、
前記吸引マグネットは、前記第1内鍔部の上面から突出した前記上側含油軸受の外周面により位置決めされ、前記第1内鍔部の上面に固定されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ロータ部と上側含油軸受との間の回転軸に軟質のワッシャが挿入されているため、回転軸が軸方向に移動することによって生じる衝突音が低減すると共に、上側含油軸受が上方向に力を受けた際に、上側含油軸受が当接する抜け止め部がモータケースに形成されているため、ロータ部が衝突する際の上側含油軸受の抜け止め強度を高めることが出来て、信頼性の高い振動モータを得られる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の第1実施形態例に係る振動モータの断面図である。
図2】本発明の第2実施形態例に係る振動モータの断面図である。
図3】従来の振動モータの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書では、図1及び図2の回転軸30における上方向側を単に「上方向」と呼び、下方向を単に「下方向」と呼ぶ。
また、回転軸30に平行な方向を「軸方向」と呼び、回転軸30を中心とする径方向を単に「径方向」と呼び、回転軸30を中心とする周方向を単に「周方向」と呼ぶ。
なお、上下方向は、実際の機器に組み込まれたときの位置関係や方向を示すものではない。
【0012】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を例示的に説明する。
【0013】
(第1の実施形態例)
まず、本発明の第1の実施形態例の振動モータ1Aを図1により説明する。
【0014】
図1の振動モータは、ブラシ付の直流モータにより構成されており、主に、モータケース部10と、ブラケット部20と、回転軸30と、ロータ部40と、ワッシャ50と、ステータ部60と、分銅70と、吸引マグネット81を有する。
【0015】
モータケース部10は、モータケース11と、上側含油軸受15を有する。
モータケース11は、磁性材料である板材をプレス加工等により形成されている。モータケース11は、断面小判形の第1筒部11Aと、第1筒部11Aの上部開口端から内方に一体形成した平坦面の第1内鍔部11Bを有する。第1内鍔部11Bの内側は、上側含油軸受15が固定される軸受保持部となる。第1内鍔部11Bの内周面は円形となっている。
【0016】
上側含油軸受15は、円筒部15Aと、円筒部15Aの外周面の下部に一体形成された外鍔部15Bを有し、焼結された銅系金属等の多孔質材料に潤滑油を含浸させたものである。
【0017】
外鍔部15Bは、周方向に全周、軸方向に同じ高さに形成されている。また、円筒部15Aの下端と外鍔部15Bの下端は軸方向に面一となっている。
【0018】
円筒部15Aの外周面と第1内鍔部11Bの内周面は同じ大きさであり、円筒部15Aが第1内鍔部11Bに挿入されると、上側含油軸受15は第1内鍔部11Bに圧入されて固定される。
上側含油軸受15が第1内鍔部11Bに固定されると、外鍔部15Bの上端全面は第1内鍔部11Bの内縁部の下面全面に接触する。
【0019】
第1内鍔部11Bの内縁部の下面は、外鍔部15Bの上端全面が第1内鍔部11Bに当接する抜け止め部となっている。つまり、この抜け止め部は、上側含油軸受15が上方向に力を受けた際に、上側含油軸受15が上方向に移動しないように外鍔部15Bの上端が当接する部分である。
【0020】
また、上側含油軸受15が第1内鍔部11Bに固定されると、円筒部15Aの上端が、第1内鍔部11Bの上面からモータケース11の外方に突出している。
【0021】
ブラケット部20は、ブラケット21と、下側含油軸受22と、ブラシ23を有する。
ブラケット21は、第1筒部11Aの開口端に固定されており、モータケース11を閉塞する断面小判形の樹脂製の蓋である。
このブラケット21の内側は一対のブラシ23を内蔵して、ブラシ23の一端から外部に一対の不図示のリード線が延出されている。
【0022】
また、ブラケット21の内側中央には凹部21Aが形成されており、この凹部21Aには、下側含油軸受22が固定されている。下側含油軸受22は、上側含油軸受15と同じ焼結された銅系金属等の多孔質材料に潤滑油を含浸させたものである。
【0023】
回転軸30は、円柱であり、上側含油軸受15と下側含油軸受22によって回転自在に軸支されており、回転軸30の上部がモータケース11から突出する。
【0024】
ロータ部40は、積層コア41と、巻線42と、整流子43を有しており、モータケース内で回転軸30に固定されている。
積層コア41は、径方向に等間隔に広がる3極のコア片を複数枚、積層されている。
巻線42は、積層コア41の各極に巻線カバーを介して巻回されている。
積層コア41と巻線42により電機子コアが構成されている。
整流子43は、回転軸30に固定されており、整流子43には一対のブラシ23が接触される。
【0025】
ワッシャ50は、軟質の材質からなる薄板のリング形状であり、上側含油軸受15とロータ部40との間の回転軸30に挿入されている。ワッシャ50の内径は回転軸30の外径と上側含油軸受15の内径より若干大きい。ワッシャ50の外径は円筒部15Aの外径より小さく形成されている。上側含油軸受15の下端とワッシャ50の上端には軸方向に所定の隙間が形成されている。
また、回転軸30が上方向に移動すると、積層コア41の上面に配されたワッシャ50が上側含油軸受15に接触する。
【0026】
ステータ部60は、駆動用マグネット61を有する。
駆動用マグネット61は、異なる極が着磁された2個の分割マグネットであり、第1筒部11Aの内周面には、ロータ部40の電機子コアと向かい合うように駆動用マグネット61が取り付けられている。
【0027】
また、電機子コアの軸方向の磁気中心線と駆動用マグネット61の軸方向の磁気中心線は一致しておらず、電機子コアは下方向に磁気吸引力を得られるように設計されている。このため、回転軸30は上方向に対して移動しにくくなっている。
【0028】
分銅70は、鉄を主成分とする磁性材料で形成されており、半円柱に形成された本体部71と、本体部71における弦側に軸方向に沿って形成された突部72を有する。この突部72には取付穴が形成されており、この取付穴に回転軸30の上部が固定されて、分銅70が回転軸30に取付けられている。この取付穴は、分銅70の重心位置から偏心されている。
また、分銅70が下側含油軸受22より上側含油軸受15の近くに配されており、振動時に上側含油軸受15の耐久性が低下しやすい。そこで振動時に上側含油軸受15の耐久性を向上させるため、上側含油軸受15の軸方向の高さは、下側含油軸受22の軸方向の高さより大きい。
【0029】
吸引マグネット81は、モータケース11の第1内鍔部11Bの上面に固定されており、分銅70をモータケース側に吸引する。吸引マグネット81は、円筒体である。吸引マグネット81の外径は、分銅70の本体部71の外径より小さく形成されている。
【0030】
吸引マグネット81の内径は、回転軸30の外径より大きく形成されている。また、吸引マグネット81の内周面は、第1内鍔部11Bの上面から突出した円筒部15Aの外周面とほぼ同じ大きさである。吸引マグネット81は上側含油軸受15により位置決めされて第1内鍔部11Bの上面に固定されており、接着材による固定を必要としない。
円筒部15Aの上端は、吸引マグネット81の上端より低く形成されている。
分銅70の下端と吸引マグネット81の上端は、軸方向に所定の空隙を持つ。
【0031】
そして、磁性材料からなる分銅70は、吸引マグネット81を固定したモータケース11に磁気吸引されて、回転軸30は上方向に対してさらに移動しにくくなる。
【0032】
以上のような振動モータ1Aでは、不図示の直流電源がリード線を介してブラシ23に加わり、ロータ部40とステータ部60の電流の相互作用により、ロータ部40が回転して、分銅70が回転して振動が発生する。
【0033】
以上のような本例の振動モータ1Aによれば、下記の構成を有する。
本例の振動モータ1Aは、第1筒部11Aと、第1筒部11Aの上部開口端から内方に一体形成された平坦面の第1内鍔部11Bと、を有する磁性材料からなるモータケース11と、第1筒部11Aの下部開口端に固定されたブラケット21と、第1内鍔部11Bの内側に固定された上側含油軸受15と、ブラケット21に固定された下側含油軸受22と、上側含油軸受15と下側含油軸受22に軸支され、上部がモータケース11から突出する回転軸30と、モータケース内で回転軸30に固定されたロータ部40と、ロータ部40と上側含油軸受15との間の回転軸30に挿入された軟質のワッシャ50と、回転軸30の上部に偏心して固定された磁性材料からなる分銅70と、モータケース11に固定され、分銅70をモータケース側に吸引する吸引マグネット81と、を備えている。
また、上側含油軸受15が上方向に力を受けた際に、上側含油軸受15が当接する抜け止め部がモータケース11に形成されている。
【0034】
よって、磁性材料からなる分銅70は、吸引マグネット81を固定したモータケース側に磁気吸引されるため、回転軸30が分銅70の偏心揺動に伴い上下方向に移動した際、ロータ部40と上側含油軸受15との衝突音を低減できる。また、ロータ部40と上側含油軸受15との間の回転軸30に軟質のワッシャ50が挿入されているため、回転軸30が軸方向に移動することによって生じる衝突音はさらに低減できる。また、上側含油軸受15が当接する抜け止め部がモータケース11に形成されているため、ロータ部40が衝突する際の上側含油軸受15の抜け止め強度を高めることが出来て、信頼性の高い振動モータができる。
【0035】
また、上側含油軸受15は、円筒部15Aと、この円筒部15Aの外周面の下部に一体形成された外鍔部15Bを有している。
また、抜け止め部は、第1内鍔部11Bの内縁部の下面であり、外鍔部15Bの上端は、抜け止め部に接触している。
よって、回転軸30が分銅70の偏心揺動に伴い上下方向に移動した際、上側含油軸受15がモータケース11の外方に移動しないため、抜け止め強度が上がり、信頼性が向上する。
【0036】
また、上側含油軸受15の上端は、第1内鍔部11Bの上面から突出している。
また、吸引マグネット81は、第1内鍔部11Bの上面から突出した上側含油軸受15の外周面により位置決めされ、第1内鍔部11Bの上面に固定されている。
よって、第1内鍔部11Bに吸引マグネット81を固定する際に、専用治具を用いることなく、吸引マグネット81はモータケース11に容易に位置決めができる。
【0037】
(第2の実施形態例)
本発明の第2の実施形態例である振動モータ1Bを図2を用いて説明する。図2において、図1中の部材と同等の部材には同一の符号を付しており、重複する部分については説明を省略する。
【0038】
第1の実施形態例では、第1内鍔部11Bの内側が上側含油軸受15の軸受保持部となる。一方、第2の実施形態例のモータケース12では、第1の実施形態例のモータケース11に、さらに、第1内鍔部11Bの内周面から上方向に突出して一体形成された円筒の第2筒部12Aと、第2筒部12Aの上部開口端から内方に一体形成した抜け止め部となる平坦面の第2内鍔部12Bが形成されており、第2筒部12Aが上側含油軸受の軸受保持部となる。
【0039】
また、第1の実施形態例の上側含油軸受15は、円筒部15Aと、円筒部15Aの外周面の下部に一体形成された外鍔部15Bを有するが、第2の実施形態例の上側含油軸受16は、外鍔部のない円筒部のみの形態となる。
この円筒部の外周面と第2筒部12Aの内周面は同じ大きさであり、この円筒部が第2筒部12Aに挿入されると、上側含油軸受16は第2筒部12Aに圧入されて固定される。すると、この円筒部の上端が抜け止め部となる第2内鍔部12Bの下面に接触している。この円筒部の上端は、抜け止め部となる第2内鍔部12Bより上方向に突出しない。また、第2内鍔部12Bの内周面は円形であり、第2内鍔部12Bの内径は、この円筒部の内径より大きく形成されている。
【0040】
また、第1の実施形態例の吸引マグネット81は、第1内鍔部11Bの上面に固定されていたが、第2の実施形態例の吸引マグネット82は、第1の実施形態例のような第1内鍔部11Bの上面ではなく、分銅70の下端に固定されている。これは、軸受保持部が第1内鍔部11Bから上方向に突出している形態において吸引マグネットが第1内鍔部11Bの上面に配されていると、吸引マグネットの軸方向の高さが軸受保持部の軸方向の高さより小さい場合に、半円柱の分銅70では、分銅70と吸引マグネット82が離れて磁気吸引力を得られにくいためである。吸引マグネットの軸方向の高さが軸受保持部の軸方向の高さより大きければ、磁気吸引力が高められるが、吸引マグネットの価格が増加する。
そこで、軸受保持部が第1内鍔部11Bから上方向に突出している形態では、吸引マグネット82は分銅70の下端に固定されることで、吸引マグネット82はモータケースの第2内鍔部12Bの近くに配置できて、吸引マグネット82の外径が小さくなる。すると、吸引マグネット82の軸方向の高さが小さくてもモータケースへの磁気吸引力が得られやすく、吸引マグネットの価格が低減できる。
【0041】
吸引マグネット82は分銅70の下端に設けられた凹部73に固定されており、第2内鍔部12Bと所定の距離を保って全面で対向している。この凹部73の内周面は、吸引マグネット82の外周面とほぼ同じ大きさである。この凹部73の軸方向の溝の高さは、吸引マグネット82の軸方向の高さより小さい。吸引マグネット82が凹部73に挿入されると、吸引マグネット82は分銅70の下面より突出して凹部73に接着材を用いることなく固定される。吸引マグネット82の外径は、第2筒部12Aの外径より大きい。
【0042】
そして、分銅70は、モータケース側に磁気吸引されるため、回転軸30が分銅70の偏心揺動に伴い上下方向に移動した際のロータ部40と上側含油軸受16との衝突音を低減できる。また、ロータ部40と上側含油軸受16との間の回転軸30に軟質のワッシャ50が挿入されているため、回転軸30が軸方向に移動することによって生じる衝突音はさらに低減できる。また、上側含油軸受16の上端が当接する抜け止め部がモータケース11に一体形成されているため、ロータ部40が衝突する際の上側含油軸受16の抜け止め強度を高めることができる。
【0043】
また、吸引マグネット82は、筒体で、分銅70の下面に固定されており、吸引マグネット82は、第2内鍔部12Bと全面で対向している。
よって、回転軸30が分銅70の偏心揺動に伴い上下方向に移動した際、ロータ部40と上側含油軸受16との衝突音を効果的に低減できる。
【0044】
なお、本発明の実施形態例は上記に限定されるものではなく、例えば、次のように構成することができる。
【0045】
(変形例1)
軸受保持部は、第2の実施形態例のように第1内鍔部11Bの内周から上方向に突出している形態があるが、これに限定されない。例えば、軸受保持部は第1内鍔部11Bの内周から下方向に突出する形態にしてもよい。
【0046】
具体的には、本例では、第1の実施形態例のモータケースに、さらに、第1内鍔部11Bの内周に下方向に突出して一体形成された円筒の第3筒部が形成されており、この第3筒部が軸受保持部となる。この軸受保持部には、不図示の上側含油軸受が固定されており、この上側含油軸受は、円筒部と、円筒部の外周面の下部に一体形成された外鍔部を有する。
【0047】
この円筒部の外周面と第3筒部の内周面は同じ大きさであり、円筒部が第3筒部に挿入されて固定されて、外鍔部の上端全面は抜け止め部となる第3筒部の下端に接触する。また、円筒部が第3筒部に固定されると、円筒部の上端が、第1内鍔部の上面からモータケースの外方に突出する。吸引マグネットはこの上側含油軸受により位置決めされて第1内鍔部の上面に固定されており、接着材による固定を必要としない。
本例は、第1の実施形態例と同様の作用効果を有する。
【0048】
(変形例2)
第2の実施形態例において、上側含油軸受16の上端は抜け止め部である第2内鍔部12Bより上方向に突出していない形態であるが、これに限定されない。
例えば、上側含油軸受16の上端は抜け止め部である第2内鍔部12Bより上方向に一部突出している形態でもよい。
具体的には、第2の実施形態例の上側含油軸受16は円筒部のみの形態であるが、本例の上側含油軸受は、円筒部と、この円筒部の上端から上方向に一体に突出した突出円筒部を有する。
【0049】
この突出円筒部の外周面は第2内鍔部12Bの内周面とほぼ同じである。この円筒部が第2筒部12Aに挿入されると、この円筒部は第2筒部12Aに圧入されて固定され、円筒部の上端全面は第2内鍔部12Bの下面全面に接触して、突出円筒部は第2内鍔部12Bより上方向に突出する。
また、吸引マグネット82の下端は、突出円筒部の上端に接触しない。
【0050】
本例は、第2の実施形態例と同様の作用効果を有すると共に、上側含油軸受の軸方向の長さを長くできるため、回転軸の軸触れが低減できる。
【0051】
(変形例3)
また、第2の実施形態例において、吸引マグネット82は、円筒体であるが、これに限られない。例えば、第2の実施形態例において、分銅70のモータケース11に対する磁気吸引力が設計的に十分に満たされており、この磁気吸引力を若干弱くしても設計的に所定の磁気吸引力を得られるなら、吸引マグネットは円弧筒体でもよく、例えば、半円筒体でもよい。この吸引マグネットは、軸方向から見て分銅70と重畳される分銅70の下端に固定されている。
【0052】
(変形例4)
また、上述の振動モータは、ブラシ付の直流モータであるが、これに限られず、例えば、カバー付きブラシレスモータでもよい。具体的に、本例のカバー付きブラシレスモータは、ステータ基板と、ステータ基板の上面に巻線を有するステータ部と、ステータ部に軸支された回転軸とスタータ部の外周に配された駆動用マグネットを有するロータ部と、カバーからなる。
【0053】
このカバーは、円筒の第4筒部と、第4筒部の上部開口端から内方に一体形成した平坦面の第4内鍔部を有する。そして、このカバーがステータ部とロータ部を覆い、カバーの開口端がステータ基板の外周に固定されている。
【0054】
そして、カバーの第4内鍔部の内側が、上述の、軸受保持部と上側含油軸受となり、回転軸がステータ部とこの上側含油軸受に軸支されている。
【0055】
また、回転軸の上部がカバーから外方に突出して、磁性材料の分銅が回転軸の上部に偏心して固定されている。また、ロータ部とこの上側含油軸受との間の回転軸には軟質のワッシャが挿入されている。また、上述の、軸受保持部と上側含油軸受の形態に合わせて吸引マグネットがカバーあるいは分銅に固定されている。
【符号の説明】
【0056】
1A 振動モータ
1B 振動モータ
10 モータケース部
11 モータケース
11A 第1筒部
11B 第1内鍔部
12 モータケース
12A 第2筒部
12B 第2内鍔部
15 上側含油軸受
15A 円筒部
15B 外鍔部
16 上側含油軸受
20 ブラケット部
21 ブラケット
21A 凹部
22 下側含油軸受
23 ブラシ
30 回転軸
40 ロータ部
41 積層コア
42 巻線
43 整流子
50 ワッシャ
60 ステータ部
61 駆動用マグネット
70 分銅
71 本体部
72 突部
73 凹部
81 吸引マグネット
82 吸引マグネット
図1
図2
図3