(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6872271
(24)【登録日】2021年4月21日
(45)【発行日】2021年5月19日
(54)【発明の名称】樹皮を活かした加工木材の製造方法及び加工木材
(51)【国際特許分類】
B27M 3/00 20060101AFI20210510BHJP
【FI】
B27M3/00 Z
【請求項の数】2
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2020-31625(P2020-31625)
(22)【出願日】2020年2月27日
【審査請求日】2020年2月27日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 令和2年2月19日〜21日 ニイガタIDSデザインコンペティション2020 令和2年2月19日 広葉樹活用研修会(中越地区林業振興会)
(73)【特許権者】
【識別番号】509235327
【氏名又は名称】昭和木工有限会社
(74)【代理人】
【識別番号】100134050
【弁理士】
【氏名又は名称】岩崎 博孝
(72)【発明者】
【氏名】宇之津 昌則
【審査官】
佐藤 智子
(56)【参考文献】
【文献】
特開平01−210303(JP,A)
【文献】
特開2002−307409(JP,A)
【文献】
特開2004−114422(JP,A)
【文献】
実開昭55−039857(JP,U)
【文献】
米国特許第05816015(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B27M 1/00−3/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹皮を含む1つの端材から、
断面視、一辺に樹皮を残した状態で少なくとも2本の三角柱部材を削り出し、
当該削り出した複数の三角柱部材同士を接着するとき、当該接着する三角柱部材の樹皮面が連続するように当該接着する三角柱部材の非樹皮面同士を接着すると共に、
前記複数の三角柱部材は、前記端材を断面視した際、切削工具の厚み分だけ離れた位置を基準として削り出した上で、
前記接着は、前記基準となった離れた位置同士を合わせるように接着することにより連続する樹皮面の模様が違和感なく繋がる
ことを特徴とする樹皮を活かした加工木材の製造方法。
【請求項2】
請求項1において、
前記三角柱部材は3本であり、各三角柱部材における前記樹皮を含まない頂点の角度の合計が180°とされると共に、
隣り合う前記三角柱部材における前記頂点を構成するいずれかの一辺同士が同じ長さに構成される
ことを特徴とする樹皮を活かした加工木材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、木材の技術分野に関し、特に詳しくは製材により発生する端材を利用した加工木材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、丸い材木を角材へと加工する際に不可避的に生じる「端材」(
図4参照)を無駄なく利用するため様々な工夫が行われている。
【0003】
例えば特許文献1においては、4つの端材の表面側(樹皮側)を内側に向けて組み合せ、角材を製造するというものである。
【0004】
また、特許文献2においては、端材から樹皮を含む表面をやや斜め方向に取り除いた上で、それを細分化して木製の「箸」を製造するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−54904号公報
【特許文献2】特開2000−271908号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記の発明はいずれも「樹皮」を内側に向けたり、取り除いた上で利用するという技術であり、「樹皮」の風合いを楽しめるものではない。例えばブナ材など、樹皮が非常に美しい木材であっても、端材となった後の利用は、上記先行技術文献に記載された方法や、単に燃料として燃やす材料として使われるといったものしかないのが実情であった。
【0007】
そこで本発明は、こういった問題点を解決するべくなされたものであって、端材から樹皮の風合いを活かしたままで使い勝手の良い加工木材を製造する方法を提供する事をその課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するべく、本願発明は、樹皮を含む端材から、断面視、一辺に樹皮を残した状態で少なくとも2本の三角柱部材を削り出し、当該削り出した複数の三角柱部材の非樹皮面同士を接着することを特徴とする。
【0009】
具体的には5軸加工機等を用いて、一辺に樹皮を残すように複数の三角柱部材を削り出し、その削り出した部材の非樹皮面同士を接着するのである。この時、残った樹皮面が繋がるように接着することによって、表面に樹皮の風合いを残した状態のままで加工木材を製造することが可能となる。
【0010】
また、前記複数の三角柱部材は、前記端材を断面視した際、切削工具の厚み分だけ離れた位置を基準として削り出すのが望ましい。
【0011】
このようにすることで、接着することによる連続する樹皮面の模様が違和感なく繋がり、恰も加工木材でない自然のままに近い樹皮面を構成することが可能となる。
【0012】
また、前記三角柱部材を3本とし、各三角柱部材における前記樹皮を含まない頂点の角度の合計を180°とすると共に、隣り合う前記三角柱部材における前記頂点を構成するいずれかの一辺同士を同じ長さに構成するのが望ましい。
【0013】
このように構成した三本の三角柱部材を接着すれば、一面(底面)をフラットに構成できると共に、底面以外の面に連続する樹皮が残る形で加工木材を構成できる。即ち、その加工木材を使って様々な加工品(例えば額縁や手摺など)を製作する場合に非常に使い勝手が良いのである。
【発明の効果】
【0014】
本発明を適用することで、端材から樹皮の風合いを活かしたままで使い勝手の良い加工木材を製造する方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】端材の断面図であって、端材の加工領域の一例を示した図である。
【
図2】削り出した3本の木材を組み合わせて1本の加工木材を製造する工程を示した図である(端材の断面に相当)。
【
図3】完成した加工木材の一例を示した写真である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面を参照しつつ、本発明の実施形態の一例である樹皮を活かした加工木材の製造方法について説明を加える。なお、図面理解容易の為、各部の大きさや寸法を誇張して表現している部分があり、実際の製品と必ずしも一致しない部分があることを付記しておく。また各図面は符号の向きに見るものとし、当該向きを基本に上下左右、手前、奥と表現する。
【0017】
〈樹皮を活かした加工木材の製造手順〉
まず加工対象となる端材1を用意し、5軸加工機(図示していない)等にセットして3本の三角柱部材10、20、30を削り出す(
図1参照)。
【0018】
この削り出しの加工は、例えば次のようなルールに基づいて削り出すようにする。
【0019】
各三角柱中部材10、20、30は、断面視、それぞれ自身の一辺に樹皮2を残すような形で削り出す。即ち、三角柱の一面に樹皮がそのまま残るようにして削り出す。
【0020】
また、各三角柱部材10、20、30における樹皮2を含まない頂点の角度θ1、θ2、θ3の角度の合計が180°となるように構成する。今回図示した例においてはそれぞれ60°となるように構成している。もちろん、この角度の組み合せによって合計180°とするパターンに限定されるものではなく、例えば、45°−90°−45°の組み合せや、50°−70°−60°といった組み合せであってもよい。
【0021】
また、端材1を断面視した際の、隣り合う三角柱部材同士の表面2における隙間α、βは可能な限り狭く設定して削り出す方が望ましい。より具体的には、切削工具(図示しない)の厚み分だけ離れた位置を基準として削り出すのが望ましい。
【0022】
また、隣り合う三角柱部材における樹皮2を含まない頂点(角度θ1、θ2、θ3を構成する頂点)を構成するいずれかの一辺同士を同じ長さに構成するのが望ましい。より具体的には、第1の三角柱部材10の一辺10cと第2の三角柱部材20の一辺20bとが同じ長さとなるようにし、更に、第2の三角柱部材20の一辺20cと第3の三角柱部材30の一辺30bとが同じ長さとなるようにするのである。
【0023】
このような条件で削り出した3本の三角柱部材10、20、30を、
図2に示しているように樹皮面2が連続するように組み合わせて接着する。これにより樹皮2の風合いが残った状態での加工木材100が完成する。
【0024】
以降、必要により樹皮面2の加工(例えは樹脂を用いてコーティングする等)をするなどし、各種製品を作る際の材料として利用すればよい。
【0025】
上記の通り、本願発明は、樹皮2を含む端材1から、断面視、一辺に樹皮2を残した状態で少なくとも2本の三角柱部材を削り出し、当該削り出した複数の三角柱部材の非樹皮面同士を接着することを特徴とし、その結果として、表面に樹皮2の風合いを残した状態のままで加工木材100を製造することが可能となっている。
【0026】
また、複数の三角柱部材は、端材2を断面視した際、切削工具の厚み分だけ離れた位置(隙間α、β)を基準として削り出すため、その後接着することによる連続する樹皮面の模様が違和感なく繋がり、恰も加工木材でない自然のままに近い樹皮面を構成することが可能となっている。
【0027】
また、三角柱部材を3本とし、各三角柱部材10、20、30における樹皮2を含まない頂点(角度θ1、θ2、θ3を構成する頂点)の角度の合計を180°とすると共に、隣り合う三角柱部材における前記頂点(角度θ1、θ2、θ3を構成する頂点)を構成するいずれかの一辺同士を同じ長さに構成していた。
【0028】
このように構成した三本の三角柱部材10、20、30を接着すれば、一面(底面)102をフラットに構成できると共に、底面102以外の面に連続する樹皮2が残る形で加工木材100を構成できる(
図3参照)。即ち、その加工木材100を使って様々な加工品(例えば額縁や手摺など)を製作する場合に非常に使い勝手が良いのである。
【0029】
〈その他の構成例〉
上記では、3本の三角柱部材を前提に説明しているが、2本であってもよいし、4本以上を組み合わせる事も可能である。
【0030】
また、上記では、底面がフラット(180°)になる構成を前提に説明しているが、用途に応じて意図的にフラットでない構成を採用してもよい。
【符号の説明】
【0031】
1・・・端材
2・・・樹皮
3・・・断面
10、20、30・・・三角柱部材
100・・・加工木材
102・・・加工木材の底面
【要約】 (修正有)
【課題】端材から樹皮の風合いを活かしたままで使い勝手の良い加工木材を製造する方法を提供する。
【解決手段】樹皮2を含む端材から、断面視、一辺に樹皮を残した状態で3本の三角柱部材10、20、30を削り出し、削り出した三角柱部材の非樹皮面同士を接着する。このとき複数の三角柱部材は、端材を断面視した際、切削工具の厚み分だけ離れた位置を基準として削り出す。更に各三角柱部材における樹皮を含まない頂点の角度の合計を180°とすると共に、隣り合う三角柱部材における頂点を構成するいずれかの一辺同士を同じ長さに構成する。
【選択図】
図2