特許第6872287号(P6872287)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6872287アンモニア脱硫用の溶液を酸化する方法及び装置
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  • 特許6872287-アンモニア脱硫用の溶液を酸化する方法及び装置 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6872287
(24)【登録日】2021年4月21日
(45)【発行日】2021年5月19日
(54)【発明の名称】アンモニア脱硫用の溶液を酸化する方法及び装置
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/74 20060101AFI20210510BHJP
   B01D 53/50 20060101ALI20210510BHJP
   B01F 3/04 20060101ALI20210510BHJP
   C02F 1/30 20060101ALI20210510BHJP
   C02F 1/32 20060101ALI20210510BHJP
   C02F 1/36 20060101ALI20210510BHJP
   C02F 1/72 20060101ALI20210510BHJP
   B01D 53/78 20060101ALI20210510BHJP
   B01F 5/00 20060101ALI20210510BHJP
   B01F 5/06 20060101ALI20210510BHJP
   B01D 53/14 20060101ALI20210510BHJP
【FI】
   C02F1/74 CZAB
   B01D53/50 220
   B01D53/50 290
   B01F3/04 A
   C02F1/30
   C02F1/32
   C02F1/36
   C02F1/72 101
   B01D53/78
   B01F3/04 Z
   B01F5/00 D
   B01F5/06
   B01D53/14 220
【請求項の数】24
【外国語出願】
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2018-206351(P2018-206351)
(22)【出願日】2018年11月1日
(65)【公開番号】特開2019-30877(P2019-30877A)
(43)【公開日】2019年2月28日
【審査請求日】2019年11月5日
(31)【優先権主張番号】201810329999.2
(32)【優先日】2018年4月13日
(33)【優先権主張国】CN
(31)【優先権主張番号】16/007,875
(32)【優先日】2018年6月13日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】518101495
【氏名又は名称】ジァンナン・エンバイロメンタル・プロテクション・グループ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】JIANGNAN ENVIRONMENTAL PROTECTION GROUP INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100122437
【弁理士】
【氏名又は名称】大宅 一宏
(74)【代理人】
【識別番号】100209495
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 さおり
(72)【発明者】
【氏名】ルオ、ジン
(72)【発明者】
【氏名】キ、リファン
(72)【発明者】
【氏名】ルオ、ヨンギン
【審査官】 高橋 成典
(56)【参考文献】
【文献】 中国特許出願公開第106955574(CN,A)
【文献】 特開平11−099318(JP,A)
【文献】 中国特許出願公開第103212348(CN,A)
【文献】 特開昭50−015358(JP,A)
【文献】 特開2015−066526(JP,A)
【文献】 特開昭54−093669(JP,A)
【文献】 特開昭50−093873(JP,A)
【文献】 特開昭53−073860(JP,A)
【文献】 実開昭58−095216(JP,U)
【文献】 中国実用新案第206810043(CN,U)
【文献】 中国特許出願公開第1408464(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 1/70 − 1/78
1/20 − 1/26
1/30 − 1/38
B01D 53/34 − 53/73
53/74 − 53/85
53/92
53/96
53/14 − 53/18
B01F 1/00 − 5/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンモニア脱硫用の吸収溶液を酸化する装置を用いて、アンモニア脱硫用の吸収溶液を酸化する方法であって、
該装置が、酸化用空気システムと酸化塔とを備え、該酸化塔が塔体を備え、該塔体内に前記吸収溶液の酸化を強制する多段式空気分配をもたらすように構成される酸化室が形成され、吸収溶液導入口と、酸化溶液排出口と、酸化用空気導入口と、酸化用空気排出口とが前記塔体に配置されており、前記酸化用空気システムが前記酸化用空気導入口に接続しており、前記酸化用空気排出口がアンモニア脱硫用の吸収塔に接続しており、前記多段式空気分配の段で、下部から上部に向かって次第に開気孔率が増大する篩板を使用し、
前記吸収溶液をアンモニア脱硫用の前記吸収塔から前記吸収溶液導入口を介して前記酸化塔内へ送り、前記酸化用空気システムによって供給される圧縮した酸化用空気を前記酸化用空気導入口を介して前記酸化塔内へ導入し、該酸化用空気により酸化した酸化溶液を前記酸化溶液排出口を介してアンモニア脱硫用の前記吸収塔に送ることにより、前記吸収溶液の多段式循環を行うことを含むことを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記酸化に使用した酸化用空気を前記酸化用空気排出口を介してアンモニア脱硫用の前記吸収塔の洗浄及び冷却区域に送り、洗浄及び冷却用の液体の二次酸化を行うことを更に含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記酸化に使用した酸化用空気を前記酸化用空気排出口を介してアンモニア脱硫用の前記吸収塔の吸収区域に送り、前記吸収溶液の二次酸化を行うことを更に含むことを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
アンモニア脱硫用の前記吸収塔に入れる前に、前記酸化溶液にアンモニアを補充することを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記圧縮した酸化用空気の圧力が、0.05MPa−g〜0.3MPa−gであることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記多段式空気分配の段数が、2〜6であることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記篩板の開気孔率が、下部から上部に向かって次第に増大するように1%〜15%の範囲から選択されることを特徴とする、請求項1〜のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記酸化用空気の添加量が、前記吸収溶液中の亜硫酸アンモニウム及び亜硫酸水素アンモニウムを酸化するのに要する酸化剤の理論量の1.2倍〜20倍となるように、導入される前記酸化用空気を制御することを特徴とする、請求項1〜のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
酸化に供される前記吸収溶液中、亜硫酸アンモニウム及び亜硫酸水素アンモニウムの含有率が0.1(重量)%〜8(重量)%であり、硫酸アンモニウムの含有率が2(重量)%〜38(重量)%となるように、前記吸収溶液の循環を制御することを特徴とする、請求項1〜のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記酸化塔内の前記吸収溶液の酸化時間を5分〜90分とする、及び/又は、
前記酸化した酸化溶液中の亜硫酸アンモニウム及び亜硫酸水素アンモニウムの酸化率を90%〜99.9%とすることを特徴とする、請求項1〜のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記酸化塔内の前記吸収溶液の酸化を、音波発生設備、超音波発生設備、赤外線発生設備、紫外光発生設備及び電子ビーム発生設備のいずれか1つ又はそれらの組合せである酸化増強設備によって高めることを特徴とする、請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
アンモニア脱硫用の吸収溶液を酸化する装置であって、
酸化用空気システムと酸化塔とを備え、該酸化塔が塔体を備え、該塔体内に前記吸収溶液の酸化を強制する多段式空気分配をもたらすように構成される酸化室が形成され、吸収溶液導入口と、酸化溶液排出口と、酸化用空気導入口と、酸化用空気排出口とが前記塔体に配置されており、前記酸化用空気システムが前記酸化用空気導入口に接続しており、前記酸化用空気排出口がアンモニア脱硫用の吸収塔に接続しており、前記多段式空気分配の段で、下部から上部に向かって次第に開気孔率が増大する篩板を使用し、
前記装置が、前記吸収溶液をアンモニア脱硫用の前記吸収塔から前記吸収溶液導入口を介して前記酸化塔に送り、前記酸化用空気システムによって供給される圧縮した酸化用空気により酸化した酸化溶液を前記酸化塔から前記酸化溶液排出口を介してアンモニア脱硫用の前記吸収塔に送ることにより、前記吸収溶液の多段式循環を実現するように構成されていることを特徴とする、装置。
【請求項13】
前記装置が、前記酸化に使用した酸化用空気を前記酸化用空気排出口を介してアンモニア脱硫用の前記吸収塔の洗浄及び冷却区域並びに/又は吸収区域に送ることにより、前記酸化用空気の多段式循環を実現するように構成されていることを特徴とする、請求項12に記載の装置。
【請求項14】
前記装置が、音波発生設備、超音波発生設備、赤外線発生設備、紫外光発生設備及び電子ビーム発生設備のいずれか1つ又はそれらの組合せである酸化増強設備を更に備えることを特徴とする、請求項12又は13に記載の装置。
【請求項15】
前記超音波発生設備の超音波周波数が、50kHz〜100kHzであり、その音の強さが、12W/L〜40W/Lであることを特徴とする、請求項14に記載の装置。
【請求項16】
空気分配器が、アンモニア脱硫用の前記吸収塔内の洗浄及び冷却区域に配置され、前記空気分配器が主管と分岐管とを備え、該分岐管は、単一の孔面積が25mm2〜625mm2である孔を有することを特徴とする、請求項1215のいずれか一項に記載の装置。
【請求項17】
前記多段式空気分配の段数が、2〜6であることを特徴とする、請求項1216のいずれか一項に記載の装置。
【請求項18】
前記篩板の開気孔率が、下部から上部に向かって次第に増大するように1%〜15%の範囲から選択されることを特徴とする、請求項1217のいずれか一項に記載の装置。
【請求項19】
請求項1218のいずれか一項に記載の装置を運転する方法であって、
1)アンモニア脱硫用の前記吸収塔から前記吸収溶液を前記酸化塔内へ送るプロセス工程と、
2)前記酸化用空気システムによって供給される前記圧縮した酸化用空気を前記酸化塔内へ導入し、該酸化用空気を前記吸収溶液と接触させて、前記吸収溶液中の亜硫酸アンモニウム及び亜硫酸水素アンモニウムを酸化して、硫酸アンモニウム及び硫酸水素アンモニウムとするプロセス工程と、
3)前記酸化溶液の一部を、アンモニア脱硫用の前記吸収塔内の洗浄及び冷却区域に送って噴霧し、前記洗浄及び冷却区域をすすいで、前記酸化溶液の残りの分を、アンモニア脱硫用の前記吸収塔の吸収区域に送るプロセス工程と、
4)前記酸化に使用した酸化用空気を、アンモニア脱硫用の前記吸収塔の前記洗浄及び冷却区域及び/又は吸収区域に送り、アンモニア脱硫用の前記吸収塔の前記洗浄及び冷却区域に送る場合、洗浄及び冷却用の溶液を撹拌しながら、洗浄及び冷却用の該溶液の二次酸化を行うプロセス工程と、
を含むことを特徴とする、方法。
【請求項20】
前記吸収区域に送る前に、プロセス工程3)における前記酸化溶液にアンモニアを補充するプロセス工程を更に含むことを特徴とする、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記圧縮した酸化用空気の圧力を、0.05MPa−g〜0.3MPa−gとすることを特徴とする、請求項19又は20に記載の方法。
【請求項22】
前記酸化用空気の添加量が、前記吸収溶液中の亜硫酸アンモニウム及び亜硫酸水素アンモニウムを酸化するのに要する酸化剤の理論量の1.2倍〜20倍となるように、導入される前記酸化用空気を制御することを特徴とする、請求項1921のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
酸化に供される前記吸収溶液中、亜硫酸アンモニウム及び亜硫酸水素アンモニウムの含有率が0.1(重量)%〜8(重量)%であり、硫酸アンモニウムの含有率が2(重量)%〜38(重量)%となるように、前記吸収溶液の循環を制御することを特徴とする、請求項1922のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記酸化塔内の前記吸収溶液の酸化時間を5分〜90分とする、及び/又は、
前記酸化した酸化溶液中の亜硫酸アンモニウム及び亜硫酸水素アンモニウムの酸化率を90%〜99.9%とすることを特徴とする、請求項1923のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、環境保護の技術分野に属し、特に、アンモニア脱硫用の溶液を酸化する方法及び装置に関する。本発明は、該装置を運転する方法に更に関する。
【背景技術】
【0002】
程度の差こそあれ世界各国で二酸化硫黄が排出されている。中国では、二酸化硫黄の放出が多いため、環境及び社会に影響を与えている。排出される二酸化硫黄は、経済損失を引き起こすのに加えて、生態環境及び人々の健康に更に大きな影響を及ぼす。
【0003】
現在、何百もの比較的発展した脱硫技法が存在しているが、中でも湿式脱硫プロセスが最も広範に適用されており、世界の脱硫の総設備容量の約85%を占めている。一般的な湿式排煙脱硫技法は、石灰石石膏法、デュアルアルカリ法、炭酸ナトリウム法、アンモニア法、酸化マグネシウム法等を含む。アンモニア脱硫は、吸収剤としてアンモニアを用いた湿式脱硫プロセスであり、ここでは、SOを利用して硫酸アンモニウム化学肥料を製造することができ、また、これは、低エネルギ消費量、高付加価値及び資源の再生を実現することができる環境にやさしい排煙処理スキームである。化学産業では製造中に大量の利用可能なアンモニア水を生成するため、化学産業におけるボイラ排気ガスにアンモニア脱硫を使用する点でも特に優れている。
【0004】
アンモニア脱硫プロセスは、吸収、酸化及び濃縮(結晶化)の3つのプロセスを主に含み、該プロセスでは、初めに二酸化硫黄を亜硫酸アンモニウムによって吸収させると、亜硫酸アンモニウムと亜硫酸水素アンモニウムとの混合溶液が得られ、その後、該混合溶液中の亜硫酸水素アンモニウムを、アンモニアを添加することによって中和することで、再び亜硫酸アンモニウムが得られる。二酸化硫黄の吸収、及びアンモニアの添加による中和は、下記化学式:
(NHSO+HO+SO=2NHHSO
(NHH(2−x)SO+(2−x)NH=(NHSO
によって簡潔に表すことができる。
【0005】
酸化にて、酸化用空気を溶液に導入すると、亜硫酸(水素)アンモニウムが酸化されて、硫酸(水素)アンモニウムが得られる。
(NHSO+1/2O=(NHSO
【0006】
硫酸アンモニウム溶液を、濃縮、結晶化、固液分離及び乾燥にかけると、最終生成物である硫酸アンモニウムが得られる。
【0007】
アンモニア脱硫において、アンモニアを吸収剤として使用すると、廃ガス中の二酸化硫黄が吸収されるため、亜硫酸水素アンモニウムと亜硫酸アンモニウムとの溶液が生成される。該溶液は容易に分解することがあり、安定でないため、酸化して、硫酸水素アンモニウムと硫酸アンモニウムとの溶液にする必要がある。アンモニア脱硫の主な工程の1つは、脱硫吸収溶液中の亜硫酸(水素)アンモニウムを酸化して、硫酸(水素)アンモニウムにすることである。酸化が十分でなければ、排煙中のSOの回収が影響を受け、エアロゾルが容易に生成される。
【0008】
亜硫酸アンモニウムの酸化は、アンモニア脱硫の主な工程の1つであり、また、或る特定の濃度のNHが酸化プロセスに対して減衰効果を有することから他の亜硫酸塩の酸化とは大きく異なる。非特許文献1は、特有の性質、すなわち、NHが水溶液中におけるOの溶解を著しく阻害することを開示している。塩濃度が0.5mol/L(すなわち、約5(重量)%)未満である場合、亜硫酸アンモニウムの酸化速度はその濃度に比例して増大するのに対し、この制限値を超えると、濃度が増大しても酸化速度は減少する。
【0009】
亜硫酸アンモニウムの酸化プロセスは、いわゆる、亜硫酸アンモニウムと酸素とを化合させて、硫酸アンモニウムを生成する方法である。低濃度の亜硫酸アンモニウムは比較的容易に酸化し、比較的速い酸化速度を有するが、より高い濃度の亜硫酸アンモニウム又は硫酸アンモニウムを含む溶液中では、亜硫酸アンモニウムの酸化速度が遅くなる。酸化速度は、例えばスラリ温度、O/S比、気液接触面積、pH値、塩濃度及び酸素溶解速度等の様々な因子の影響を受ける。
【0010】
溶液中における酸素のより速い溶解速度は、亜硫酸アンモニウムの酸化にとってより有益である。水への酸素の溶解度は非常に小さい。標準状態では、水100cm当たり3.08cmの酸素を溶解することができ、50℃では2.08cmの酸素を溶解することができる。高濃度の硫酸アンモニウムを含有する溶液中において、溶液の粘度は、水よりも遙かに大きく、酸素の溶解度及び溶解速度は小さい。どのようにして硫酸アンモニウムを含有する溶液中における酸素の利用率を改善させ、また酸化用空気の量及び圧力を減少させるかが、亜硫酸アンモニウムの酸化における課題である。
【0011】
実のところ、亜硫酸アンモニウムの酸化反応は、吸収プロセス中にも起こるものの、酸化率は一般に、排煙中の低いO含有率、低温及び遅い反応速度のために連続的な循環の下で40%〜70%となっている。この酸化率は十分なものでなく、後処理の処理要件を満たすために90%以上まで更に改善することが要求されている。これはかなり困難なことである。従来技術では、酸化槽/酸化区域/ジェット酸化装置が通例使用されている。技術者によっては触媒を吸収溶液中に添加して、酸化を促すことを選ぶことがあるが、これによって生成物の品質が影響を受けることもある。
【0012】
特許文献1は、亜硫酸アンモニウムを酸化するプロセス及び装置を提示している。該装置は、下部にスラリ排出ポンプを有する酸化槽を備え、更には、酸化槽の上部と連通する、アンモニアを添加するためのパイプラインと;酸化槽内部に配置されるとともに、その下部に位置する酸化用空気ダクトと;酸化槽内部に配置されるとともに、その中央部に位置する、一定間隔で設けられる何層かの多孔板とを備える。ここで、亜硫酸アンモニウムスラリはスラリ槽に送られ、アンモニア水を添加することによって亜硫酸アンモニウムスラリのpH値を6〜8に調節した後、酸化槽の上部からスラリを酸化槽に送り、亜硫酸アンモニウムスラリを酸化槽の上部から酸化槽の下部へと徐々に流す。また、酸化用空気を、酸化用空気ダクトを介して小さな気泡として噴射させて、硫酸アンモニウムスラリに導入し、次に、多孔板によって押しつぶした後、酸化反応のために硫酸アンモニウムスラリと接触させ、酸化反応が終了したら、スラリ排出ポンプによってスラリを排出する。ここで、多孔板は、隣接する層間の間隔が1m〜4mである2つ〜5つの層を有し、2mm〜20mmの孔径を有し、孔の中心距離は孔径の2倍〜5倍である。酸化槽内の硫酸アンモニウムスラリの滞留時間は10分〜60分であり、酸化用空気の空気量は満足なものであるため、酸化中のO/S比は2〜5となる。該プロセス及び装置は、酸化用空気の量が多すぎる、酸化時間が長い、酸化率を担保することができず、また酸化pHが高すぎて、アンモニアが流出し、エアロゾルが生成される等といった欠点を有する。
【0013】
特許文献2は、排煙中のSOを除去及び回収する方法及び装置を提示しており、ここでは、酸化するのに、また酸化のためのエネルギ消費量及び投資額を低減するのに最も有利な条件を作り出すために、亜硫酸アンモニウムの濃度が0.1(重量)%〜5(重量)%、好ましくは0.5(重量)%〜2.0(重量)%に制御される。ここでは、酸化反応が、得られる亜硫酸アンモニウム溶液と空気との間で行われることで、硫酸アンモニウム溶液が得られる。圧縮空気の圧力は一般に、0.05MPa〜0.2MPa(ゲージ圧力)であり、圧縮空気の流量は、亜硫酸アンモニウムを酸化するのに要する理論量の1倍〜5倍、通例2倍〜4倍であり、酸化反応の滞留時間は一般に1時間〜3時間、好ましくは約2時間である。この条件下で、酸化率は95%より大きくなり得る。硫酸アンモニウム溶液の濃度は一般に5(重量)%〜20(重量)%である。該プロセスは、酸化用空気の量が多すぎる、酸化時間が長い、酸化率を担保することができない、後処理プラントにおける空気質が芳しくない、酸化溶液の濃度が小さい、投資額が大きい、また運転コストが高いといった欠点を有する。
【0014】
特許文献3は、アンモニア脱硫用の多段式酸化槽を提示しており、該酸化槽には、還流液導入口が槽の上方に配置され、循環ポンプに外部接続する酸化溶液排出口が槽の下部に配置され、空気分配器、酸化溶液分配器及びエアレーション装置を含む酸化装置の幾つかの層が、槽内部に配置されており、該エアレーション装置は、スロットプレート上に配置されるとともに、スロットプレートの両側を連通させる幾つかのエアレータを備える。エアレータは、気泡を分割し、気液接触面を再生し、液体物質移動効率を増大し、また酸化効果を高め、酸化エジェクタは、空気自吸機能を有し、第1段階の酸化システムの空気消費量を低減させ、加えて、硫酸アンモニウム還流液を液位より下で噴射するため、スラリの水流の乱れを良くし、また酸化効率も改善する。段階的酸化機能は、三段酸化システムによって実現されるものである。それにもかかわらず、このプロセスは酸化条件を開示しておらず、構造が複雑で、投資額が大きい。
【0015】
それ故、酸化システムの投資額及び運転コストを低減させ、最適な酸化効果を達成し、アンモニア回収率を増大させ、またエアロゾルの生成を制御する、より好適な酸化プロセス及び装置を選ぶ必要がある。
【0016】
既知の従来技術では、アンモニア脱硫酸化技法の手段が完全に熟達されておらず、酸化装置の低い投資額及び低い運転コストを実現することは困難であるか又はできず、また最適な酸化効果を達成し、アンモニア回収率を担保し、またエアロゾルの生成を制御することは困難であるか又はできない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】中国特許出願公開第103212348号
【特許文献2】中国特許出願公開第1408464号
【特許文献3】中国実用新案第206810043号
【非特許文献】
【0018】
【非特許文献1】Chemical Engineering Science, 2000, Volume 55, Issue 23, December 2000, Pages 5637-5641, Pergamon Press, Oxford, England, 2000
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
本発明の課題は、アンモニア脱硫用の溶液を酸化する方法及び装置、並びに該装置を運転する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
このために、本発明は、吸収溶液を強制酸化させ、多段式循環を実現し、かつ高効率及び低コストの酸化という目的を達成するために、酸化プロセス中に、低コストの圧縮空気及び多段式空気分配を使用することを特徴とする、アンモニア脱硫用の溶液を酸化する方法を提供する。
【0021】
本発明は、アンモニア脱硫用の吸収溶液を酸化する方法であって、
吸収溶液をアンモニア脱硫用の吸収塔から酸化塔に送り、酸化させた吸収溶液又は酸化溶液を、酸化塔からアンモニア脱硫用の吸収塔に送ることにより、吸収溶液の多段式循環を実現し、
吸収溶液を強制酸化させ、酸化用空気の多段式循環を実現するために、酸化塔における酸化中、圧縮空気を酸化用空気として使用し、多段式空気分配を使用し、好ましくは、吸収溶液の酸化を完了させる酸化用空気を、アンモニア脱硫用の吸収塔に送って、アンモニア脱硫用の吸収塔内の吸収溶液の二次酸化を行うことを特徴とする、方法を更に提供する。
【0022】
本発明の方法の更なる実施の形態では、圧縮空気の圧力が、0.05MPa〜0.3MPa、好ましくは0.07MPa〜0.23MPaである。圧力は、別段の指示がない限り、大気圧に対するゲージ圧力又は相対圧力である。
【0023】
本発明の方法の更なる実施の形態では、空気分配の段数が1〜6、好ましくは2〜5、例えば3、4及び5である。
【0024】
本発明の方法の更なる実施の形態では、篩板(複数の場合もある)を1つ以上の空気分配段で使用し、篩板(複数の場合もある)は、単一の孔面積が4mm〜400mm、好ましくは9mm〜225mm、例えば50mm、100mm、150mm及び200mmである孔を有する。篩板の開気孔率は、好ましくは1%〜15%、より好ましくは1.5%〜10%、例えば2%、3%、5%、8%又は9%である。特に好ましくは、複数の空気分配段の篩板の開気孔率が、下部から上部に向かって次第に増大する。
【0025】
本発明の方法の更なる実施の形態では、酸化用空気の添加量が、吸収溶液中の亜硫酸(水素)アンモニウムを酸化するのに要する酸化剤の理論量の1.2倍〜20倍、好ましくは2倍〜8倍、例えば3倍、4倍、5倍又は6倍となるように、導入される酸化用空気の添加量を制御する。
【0026】
本発明の方法の更なる実施の形態では、酸化される吸収溶液中の亜硫酸(水素)アンモニウムの含有率が0.1(重量)%〜8(重量)%、好ましくは0.2(重量)%〜5(重量)%であり、硫酸アンモニウムの含有率が2(重量)%〜38(重量)%となるように、吸収溶液の成分を多段式循環によって制御する。
【0027】
本発明の方法の更なる実施の形態では、酸化塔内の吸収溶液の酸化時間が5分〜90分、好ましくは10分〜70分、例えば20分、30分、40分、50分、60分及び80分となるように、酸化塔内の液体体積を制御する。
【0028】
本発明の方法の更なる実施の形態では、酸化吸収溶液中の亜硫酸アンモニウム及び亜硫酸水素アンモニウムの酸化率を90%〜99.9%又はそれ以上に制御する。
【0029】
本発明の方法の更なる実施の形態では、酸化塔内の吸収溶液の酸化を、酸化増強設備によって高める。
【0030】
本発明は、アンモニア脱硫用の溶液を酸化する装置であって、該装置が酸化用空気システムと酸化塔(槽)を含む酸化システムとを備え、該酸化塔が塔体を備え、該塔体内に酸化室が形成され、吸収溶液導入口と、酸化溶液排出口と、酸化用空気導入口と、酸化用空気排出口とが塔体に配置されていることを特徴とする、装置を更に提示する。
【0031】
本発明は、アンモニア脱硫用の吸収溶液を酸化する装置であって、該装置が酸化用空気システムと酸化塔とを備え、酸化塔が塔体を備え、該塔体内に酸化室が形成され、酸化される吸収溶液を導入する吸収溶液導入口と、酸化吸収溶液を排出する酸化溶液排出口と、酸化用空気導入口と、酸化用空気排出口とが塔体に配置されており、酸化用空気システムが酸化用空気導入口に接続しており、酸化用空気排出口がアンモニア脱硫用の吸収塔に接続しており、
該装置が、吸収溶液をアンモニア脱硫用の吸収塔から酸化塔に送り、酸化吸収溶液又は酸化溶液を、酸化塔からアンモニア脱硫用の吸収塔に送ることにより、吸収溶液の多段式循環を実現するように構成されており、
酸化用空気システムが、吸収溶液を強制酸化させ、酸化用空気の多段式循環を実現するために、酸化塔における酸化中、圧縮空気を酸化用空気として使用し、多段式空気分配を使用するように構成されており、好ましくは、吸収溶液の酸化を完了させる酸化用空気を、アンモニア脱硫用の吸収塔内の吸収溶液の二次酸化を行うために、アンモニア脱硫用の吸収塔に送ることを特徴とする、装置を更に提示する。
【0032】
本発明の装置の更なる実施の形態では、1層、2層、3層又はそれ以上の気液分散エンハンサが酸化塔内に配置されている。好ましくは気液分散エンハンサの形態が、構造充填物、ランダム充填物、多孔板、ガスキャップ及びエアレータのいずれか1つ又はそれらの幾つもの組合せである。
【0033】
本発明の装置の更なる実施の形態では、装置が酸化増強設備を更に備え、好ましくは酸化増強設備が、音波発生設備、超音波発生設備、赤外線発生設備、紫外光発生設備及び電子ビーム発生設備のいずれか1つ又はそれらの幾つもの組合せである。
【0034】
本発明の装置の更なる実施の形態では、空気分配器が、アンモニア脱硫用の吸収塔内の洗浄及び冷却区域に配置され、空気分配器が主管と分岐管とを備え、該分岐管は、単一の孔面積が25mm〜625mm、好ましくは64mm〜400mm、例えば、50mm、100mm、150mm、200mm、250mm、300mm、350mm、400mm、450mm、500mmである孔を有する。
【0035】
本発明は、本発明の装置を運転する方法であって、
1)アンモニア脱硫用の吸収塔から酸化される吸収溶液を酸化塔内へ送るプロセス工程と、
2)酸化用空気システムによって供給される圧縮した酸化用空気を酸化塔内へ導入し、該酸化用空気を吸収溶液と接触させて、吸収溶液中の亜硫酸アンモニウム及び亜硫酸水素アンモニウムを酸化して、硫酸アンモニウム及び硫酸水素アンモニウムとするプロセス工程と、
3)酸化吸収溶液にアンモニアを添加した後、酸化吸収溶液の一部を、アンモニア脱硫用の吸収塔内の洗浄及び冷却区域に送って噴霧し、洗浄及び冷却区域をすすいで、酸化吸収溶液の残りの分を、アンモニア脱硫用の吸収塔の吸収区域に送るプロセス工程と、
4)反応させた酸化用空気を、アンモニア脱硫用の吸収塔の洗浄及び冷却区域及び/又は吸収区域に送り、アンモニア脱硫用の吸収塔の洗浄及び冷却区域に送る場合、洗浄及び冷却用の溶液を撹拌しながら、洗浄及び冷却用の該溶液の二次酸化を行うプロセス工程と、
を含むことを特徴とする、方法を更に提供する。
【0036】
別の態様によれば、
酸化用空気システムと、
吸収溶液導入口、
吸収溶液排出口、
酸化用空気導入口、及び
酸化用空気排出口、
を有する酸化槽と、
を備える、アンモニア脱硫用溶液を酸化する装置が提供される。
【0037】
好ましい更なる実施の形態では、装置が槽内に気液分散エンハンサを更に備える。
【0038】
好ましい更なる実施の形態では、エンハンサとして、篩板を備える篩板層が挙げられる。
【0039】
好ましい更なる実施の形態では、篩板層が複数の篩板層の1つである。
【0040】
好ましい更なる実施の形態において、複数とは2つ又は3つの篩板層を含む。
【0041】
好ましい更なる実施の形態では、エンハンサとして構造充填物が挙げられる。
【0042】
好ましい更なる実施の形態では、エンハンサとしてランダム充填物が挙げられる。
【0043】
好ましい更なる実施の形態では、エンハンサとして開口板が挙げられる。
【0044】
好ましい更なる実施の形態では、エンハンサとしてガスキャップが挙げられる。
【0045】
好ましい更なる実施の形態では、エンハンサとしてエアレーションヘッドが挙げられる。
【0046】
好ましい更なる実施の形態では、エンハンサが、
構造充填物、
ランダム充填物、
開口板、
ガスキャップ、
エアレーションヘッド、及び、
上記特徴の1つ以上の組合せ、
からなる群から選択される特徴を有する。
【0047】
好ましい更なる実施の形態では、エンハンサとして、構造充填物、ランダム充填物、開口板、ガスキャップ及びエアレーションヘッドが挙げられる。
【0048】
好ましい更なる実施の形態では、装置が、槽に結合した酸化増強装置を更に備える。
【0049】
好ましい更なる実施の形態では、酸化増強装置として音波発生装置が挙げられる。
【0050】
好ましい更なる実施の形態では、酸化増強装置として超音波発生装置が挙げられる。
【0051】
好ましい更なる実施の形態では、超音波発生装置が、超音波周波数を50kHz〜100kHzの範囲で放出するように構成される。
【0052】
好ましい更なる実施の形態では、周波数が60kHz〜85kHzの範囲であり、超音波発生装置が、12ワット/リットル〜40ワット/リットルの範囲、特に18ワット/リットル〜24ワット/リットルの範囲の音の強さをもたらすように構成される。
【0053】
好ましい更なる実施の形態では、酸化増強装置として赤外線発生装置が挙げられる。
【0054】
好ましい更なる実施の形態では、酸化増強装置として紫外光発生装置が挙げられる。
【0055】
好ましい更なる実施の形態では、酸化増強装置として電子ビーム発生装置が挙げられる。
【0056】
好ましい更なる実施の形態では、酸化増強装置が、
音波発生装置、
超音波発生装置、
赤外線発生装置、
紫外光発生装置、
電子ビーム発生装置、及び、
上記特徴の1つ以上の組合せ、
からなる群から選択される特徴を有する。
【0057】
好ましい更なる実施の形態では、装置は、
排煙脱硫塔の洗浄及び冷却区域と、
洗浄及び冷却区域に設けられ、主管と、開口部を画定する分岐管とを備える、空気分配器と、
を更に含む。
【0058】
好ましい更なる実施の形態では、開口部の開口が25mm〜625mm、特に64mm〜400mmの範囲の面積を有する。
【0059】
別の態様によれば、アンモニア脱硫用の吸収溶液を酸化する装置であって、
酸化用空気システムと、
酸化塔体、
吸収溶液の酸化を強制する多段式空気分配をもたらすように構成される、酸化塔体内の酸化室、
アンモニア脱硫用の吸収塔から吸収溶液を受け入れる、塔本体上の導入口、
酸化処理された吸収溶液を、アンモニア脱硫用の吸収塔へ供給する、酸化塔体上の排出口、
酸化塔体上の酸化用空気導入口、及び
酸化塔体上の酸化用空気排出口、
を備える、酸化塔と、
を備え、
酸化用空気システムが、圧縮空気を酸化用空気導入口に給送するように構成され、
酸化用空気排出口が、酸化用空気をアンモニア脱硫用の吸収塔内に給送するように構成される、装置が提供される。
【0060】
別の態様によれば、装置を運転する方法であって、
吸収溶液をアンモニア脱硫用の吸収塔から酸化槽へ給送することと、
酸化用空気を酸化用空気システムから酸化槽へ供給することと、
酸化用空気を吸収溶液と接触させて、吸収溶液中の亜硫酸アンモニウム及び重亜硫酸アンモニウムを酸化して、硫酸アンモニウム及び重硫酸アンモニウムとすることと、
吸収溶液の第1の画分を、吸収溶液排出口からアンモニア脱硫用の吸収塔の洗浄及び冷却区域へ送ることと、
洗浄及び冷却区域において、第1の画分を使用して、排煙を洗浄することと、
吸収溶液の第2の画分を、吸収溶液排出口から脱硫用の吸収塔の吸収区域へ送ることと、
空気を酸化用空気排出口から洗浄及び冷却区域へ送って、洗浄及び冷却用の液体の二次酸化を行うことと、
洗浄及び冷却用の液体を撹拌することと、
を含む、方法が提供される。
【0061】
別の態様によれば、装置を運転する方法であって、
吸収溶液をアンモニア脱硫用の吸収塔から酸化槽へ給送することと、
酸化用空気を酸化用空気システムから酸化槽へ供給することと、
酸化用空気を吸収溶液と接触させて、吸収溶液中の亜硫酸アンモニウム及び重亜硫酸アンモニウムを酸化して、硫酸アンモニウム及び重硫酸アンモニウムとすることと、
吸収溶液の第1の画分を、吸収溶液排出口からアンモニア脱硫用の吸収塔の洗浄及び冷却区域へ送ることと、
洗浄及び冷却区域において、第1の画分を使用して、排煙を洗浄することと、
吸収溶液の第2の画分を、吸収溶液排出口から脱硫用の吸収塔の吸収区域へ送ることと、
空気を酸化用空気排出口からアンモニア脱硫用の吸収塔の吸収区域へ送って、吸収溶液の二次酸化を行うことと、
を含む、方法が提供される。
【0062】
好ましい更なる実施の形態では、本方法は、空気を酸化用空気排出口からアンモニア脱硫用の吸収塔の吸収区域へ送って、吸収溶液の二次酸化を行うことを更に含む。
【0063】
好ましい更なる実施の形態では、本方法は、空気を酸化用空気排出口から洗浄及び冷却区域へ送って、洗浄及び冷却用の液体の二次酸化を行うことを更に含む。
【0064】
好ましい更なる実施の形態では、本方法は、吸収溶液を吸収溶液排出口から出した後、吸収溶液を脱硫用の吸収塔に入れる前に、アンモニアを吸収溶液に添加することを更に含む。
【0065】
別の態様によれば、装置を運転する方法であって、
吸収溶液をアンモニア脱硫用の吸収塔から酸化槽へ給送することと、
酸化用空気を酸化用空気システムから酸化槽へ供給することと、
酸化用空気を吸収溶液と接触させて、吸収溶液中の亜硫酸アンモニウム及び重亜硫酸アンモニウムを酸化して、硫酸アンモニウム及び重硫酸アンモニウムとすることと、
吸収溶液の第1の画分を、吸収溶液排出口からアンモニア脱硫用の吸収塔の洗浄及び冷却区域へ送ることと、
洗浄及び冷却区域において、第1の画分を使用して、排煙を洗浄することと、
吸収溶液の第2の画分を、吸収溶液排出口から脱硫用の吸収塔の吸収区域へ送ることと、
空気を酸化用空気排出口から洗浄及び冷却区域へ送って、洗浄及び冷却用の液体の二次酸化を行うことと、
洗浄及び冷却用の液体を撹拌することと、
を含む、方法が提供される。
【0066】
別の態様によれば、装置を運転する方法であって、
吸収溶液をアンモニア脱硫用の吸収塔から酸化槽へ給送することと、
酸化用空気を酸化用空気システムから酸化槽へ供給することと、
酸化用空気を吸収溶液と接触させて、吸収溶液中の亜硫酸アンモニウム及び重亜硫酸アンモニウムを酸化して、硫酸アンモニウム及び重硫酸アンモニウムとすることと、
吸収溶液の第1の画分を、吸収溶液排出口からアンモニア脱硫用の吸収塔の洗浄及び冷却区域へ送ることと、
洗浄及び冷却区域において、第1の画分を使用して、排煙を洗浄することと、
吸収溶液の第2の画分を、吸収溶液排出口から脱硫用の吸収塔の吸収区域へ送ることと、
空気を酸化用空気排出口からアンモニア脱硫用の吸収塔の吸収区域へ送って、吸収溶液の二次酸化を行うことと、
を含む、方法が提供される。
【0067】
好ましい更なる実施の形態では、本方法は、空気を酸化用空気排出口からアンモニア脱硫用の吸収塔の吸収区域へ送って、吸収溶液の二次酸化を行うことを更に含む。
【0068】
好ましい更なる実施の形態では、本方法は、空気を酸化用空気排出口から洗浄及び冷却区域へ送って、洗浄及び冷却用の液体の二次酸化を行うことを更に含む。
【0069】
好ましい更なる実施の形態では、本方法は、吸収溶液を吸収溶液排出口から出した後、吸収溶液を脱硫用の吸収塔に入れる前に、アンモニアを吸収溶液に添加することを更に含む。
【0070】
別の態様によれば、アンモニアを含む脱硫溶液を酸化する方法であって、
槽内における空気分配段で空気を溶液に対して発泡させることと、その後、
溶液を排煙脱硫塔の複数の異なる区域へ供給することと、
を含む、方法が提供される。
【0071】
好ましい更なる実施の形態では、供給が、塔の洗浄及び冷却区域において溶液を噴霧することを含む。
【0072】
好ましい更なる実施の形態では、供給が、塔の吸収区域において溶液を噴霧することを含む。
【0073】
好ましい更なる実施の形態では、供給が、
塔の洗浄及び冷却区域、及び、
塔の吸収区域、
において溶液を噴霧することを含む。
【0074】
好ましい更なる実施の形態において、本方法は、塔の吸収区域の排出口から溶液を受け取ることを更に含む。
【0075】
好ましい更なる実施の形態において、本方法は、供給前に、アンモニアを溶液に添加することを更に含む。
【0076】
好ましい更なる実施の形態において、本方法は、発泡のために空気を0.5MPa−g〜0.3MPa−g、特に0.7MPa−g〜0.23MPa−gで供給することを更に含む。
【0077】
好ましい更なる実施の形態では、発泡が、2つ以上の空気分配段で空気を分配することを含む。
【0078】
好ましい更なる実施の形態では、発泡が、6つ以下の空気分配段で空気を分配することを含む。
【0079】
好ましい更なる実施の形態では、発泡が、1つ以上の段かつ5つ以下の段で空気を分配することを含む。
【0080】
好ましい更なる実施の形態では、発泡が、空気分配段で、空気を篩板に通過させることを含み、篩板は、面積が4mm〜400mm、特に9mm〜225mmである孔を画定する。
【0081】
好ましい更なる実施の形態では、篩板が、1%〜15%、特に1.5%〜10%の多孔度を有する。
【0082】
好ましい更なる実施の形態では、
空気分配段が複数の空気分配段に含まれ、
空気分配段が垂直に配置され、
空気分配段の各々が、対応する多孔度を有する篩板を備え、
段の多孔度が下部段から上部段へと増大する。
【0083】
好ましい更なる実施の形態では、本方法は、溶液中の亜硫酸アンモニウム及び重亜硫酸アンモニウムを酸化するのに化学量論的に必要な量(rate:速度)と同等の量で、空気を槽内に流すことを更に含む。
【0084】
好ましい更なる実施の形態では、量が、化学量論的に必要な量の1.2倍〜20倍、特に2倍〜8倍である。
【0085】
好ましい更なる実施の形態では、本方法は、
溶液を塔中に循環させることと、
溶液を塔中に循環させた後、溶液を槽へ給送することと、
給送後、溶液が、
0.1重量%〜8重量%、特に0.2重量%〜5重量%の亜硫酸アンモニウム及び重亜硫酸アンモニウムと、
2重量%〜38重量%の硫酸アンモニウムと、
を有するように、循環を制御することと、
を更に含む。
【0086】
好ましい更なる実施の形態では、本方法は、溶液が酸化槽内において、5分〜90分、特に10分〜70分の酸化時間を有するように、槽について体積を選択することを更に含む。
【0087】
好ましい更なる実施の形態では、本方法は、
亜硫酸アンモニウム及び重亜硫酸アンモニウムのみを含む溶液が第1の亜硫酸含有率を有する条件で、溶液を槽に給送することと、
亜硫酸アンモニウム及び重亜硫酸アンモニウムのみを含む溶液が第2の亜硫酸含有率を有する条件で、溶液を槽から吸い出すことと、
を更に含み、
第2の亜硫酸含有率が、第1の亜硫酸含有率の10%以下である。
【0088】
好ましい更なる実施の形態では、第2の亜硫酸含有率が、第1の亜硫酸含有率の0.1%以下である。
【0089】
好ましい更なる実施の形態では、本方法は、酸化増強装置を用いて溶液の酸化を高めることを更に含む。
【0090】
別の態様によれば、アンモニア脱硫用の吸収溶液を酸化する方法であって、
脱硫用の吸収塔において吸収溶液を排煙と反応させることと、
反応後に、吸収溶液を酸化塔に移動することと、
移動後に、酸化塔において吸収溶液を酸化することと、
酸化後に、吸収溶液を脱硫用の吸収塔に戻すことと、
を含む、方法が提供される。
【0091】
好ましい更なる実施の形態では、酸化が、圧縮空気を多段式で吸収溶液中に分配することを含む。
【0092】
ここで、本出願において開示される技術的特徴は全て、組合せが技術的に実現可能でさえあれば、どのような形でも組み合わせることができることに留意されたい。組合せは全て、本出願に開示される技術内容である。
【0093】
図面を参照し、下記の実施例を用いて本発明をより詳細に例示するが、本発明は、説明及び記載した実施例に限定されない。概略図は以下のように簡単に記載したものである。
【図面の簡単な説明】
【0094】
図1】本発明の実施例に従ってアンモニア脱硫用の吸収溶液を酸化する装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0095】
図1に示されるアンモニア脱硫用の吸収溶液を酸化する装置では、酸化プロセス中に、低コストの圧縮空気を酸化用空気として使用することができ、吸収溶液を強制酸化させ、吸収溶液及び酸化用空気の多段式循環を実現し、かつ高効率及び低コストの酸化という目的を達成するために、多段式空気分配を使用する。
【0096】
図1に示される装置は、酸化用空気システム13と、酸化塔1とを備え、酸化塔1は塔体を備え、該塔体内に酸化室が形成され、酸化室用に吸収溶液導入口4と、酸化溶液排出口10と、酸化用空気導入口9と、酸化用空気排出口5とが塔体に配置されている。
【0097】
4層の気液分散エンハンサ2が酸化塔1内部に配置されている。気液分散エンハンサ2の形態は2層の多孔板及び2層のエアレータとなっている。
【0098】
図1に示される装置は酸化増強設備3を更に備え、該酸化増強設備は超音波発生設備である。この超音波周波数は60kHz〜85kHzであり、音の強さは20W/Lである。
【0099】
圧縮空気の圧力は0.06MPa〜0.18MPa(ゲージ圧力)とすることができる。
【0100】
酸化塔では、空気分配の段数が4である。
【0101】
空気分配段に篩板を使用し、篩板は、単一の孔面積が121mm〜196mmである孔を有する。下部から上部に向かう4層の篩板の開気孔率はそれぞれ、2.1%、2.3%、2.3%及び2.5%である。
【0102】
酸化用空気の添加量は、吸収溶液中の亜硫酸(水素)アンモニウムを酸化するのに要する酸化剤の理論量の4倍に調節される。
【0103】
吸収溶液中の亜硫酸(水素)アンモニウムの含有率は0.5(重量)%〜2.5(重量)%に調節され、硫酸(水素)アンモニウムの含有率は19(重量)%〜25(重量)%に調節される。
【0104】
酸化塔内の吸収溶液の滞留時間は30分〜42分である。
【0105】
有益な実施形態では、酸化吸収溶液又は酸化溶液にアンモニア又はアンモニアを含有する吸収溶液を、アンモニア脱硫用の吸収塔に入れる前にスタティックミキサによって供給する。これとは異なり、特許文献1では、スラリを酸化塔に入れる前にアンモニアをスラリに添加しており、このため、これに関連する一連の技術的欠陥が生じる。低いpHは亜硫酸アンモニウムの酸化に有益であり、高いpHでは、酸化コストが高く、酸化率を担保することができず、高いpHのスラリは、アンモニアの流出を容易にもたらし、空気のガスストリッピングのために酸化中にエアロゾルが容易に生成される。
【0106】
図1は、洗浄及び冷却区域11と、吸収区域12とを備えるアンモニア脱硫の吸収塔6を更に示す。洗浄及び冷却区域11には、洗浄及び噴霧する装置7が設けられている。吸収区域12には、吸収及び噴霧する装置8が設けられている。
【0107】
装置を運転させる場合、下記の具体的なプロセス工程を実施することができる。
1)吸収溶液を酸化塔1内へ導入する。
2)酸化用空気システム13によって供給される酸化用空気を酸化塔1内へ導入し、吸収溶液と接触させて、吸収溶液中の亜硫酸(水素)アンモニウムを酸化して、硫酸(水素)アンモニウムとする。
3)酸化吸収溶液(又は酸化溶液)の一部を、アンモニア脱硫用の吸収塔6内の洗浄及び冷却区域11内の洗浄及び噴霧する装置7内へ導入し、対向流で排煙と接触させて、排煙を冷却しながら酸化溶液を濃縮し、洗浄及び冷却区域をすすいで、酸化吸収溶液の残りの分を、アンモニア脱硫用の吸収塔6の吸収区域12内の吸収及び噴霧する装置8内へ導入する。
4)反応させた酸化用空気を、酸化用空気排出口5を介して、アンモニア脱硫用の吸収塔6の洗浄及び冷却区域11に送り、洗浄及び冷却用の溶液を撹拌しながら、洗浄及び冷却用の該溶液の二次酸化を行うことができる。
【0108】
吸収溶液中の亜硫酸(水素)アンモニウムの酸化率は、プロセス要件に従って96.5%〜99.5%又はそれ以上に制御することができる。
【0109】
空気分配器も、アンモニア脱硫用の吸収塔内の洗浄及び冷却区域に配置することができ、該空気分配器は、主管と分岐管とを備え、該分岐管は、孔径が10mm〜20mmである孔を有する。
【0110】
酸化用空気及び吸収溶液(酸化溶液)に対して一様分配作用を有する複数の層の気液分散エンハンサ(例えば篩板の形態)が酸化塔内に存在し、多段式酸化(多段式循環)を実現する。加えて、吸収溶液(酸化溶液)の循環も、アンモニア脱硫用の吸収塔と酸化塔との間に存在する。酸化用空気の複数回の分配は、酸化塔内の気液分散エンハンサによって達成されるため、酸化用空気の複数回の一様分配が達成され、酸化用空気が対向流において何度も吸収溶液と接触し、このことは酸化にとって有益である。
【0111】
本発明の別の実施例を以下で説明する。
【0112】
吸収溶液を強制酸化させ、多段式循環を実現し、かつ高効率及び低コストの酸化という目的を達成するために、酸化プロセス中に、低コストの圧縮空気及び多段式空気分配を使用する。
【0113】
圧縮空気の圧力が0.105MPaである。
【0114】
空気分配の段数が3である。
【0115】
空気分配段に篩板を使用し、該篩板が、単一の孔面積が16mm〜64mmである孔を有する。下部から上部に向かう3層の篩板の開気孔率がそれぞれ、5.2%、5.3%及び5.5%である。
【0116】
酸化用空気の添加量が、吸収溶液中の亜硫酸(水素)アンモニウムを酸化するのに要する酸化剤の理論量の5.2倍である。
【0117】
吸収溶液中の亜硫酸(水素)アンモニウムの含有率は0.3(重量)%〜1(重量)%であり、硫酸アンモニウムの含有率は20(重量)%〜23(重量)%である。
【0118】
酸化時間は52分である。
【0119】
装置は、酸化用空気システム13と酸化塔1とを備え、酸化塔1は塔体を備え、該塔体内に酸化室が形成され、吸収溶液導入口4と、酸化溶液排出口10と、酸化用空気導入口9と、酸化用空気排出口5とが塔体に配置されている。
【0120】
3層の気液分散エンハンサ2が酸化室内部に配置されている。気液分散エンハンサ2の形態は2層の多孔板及び1層の構造充填物である。
【0121】
装置は酸化増強設備を更に備え、該酸化増強設備を紫外光発生設備である。
【0122】
吸収溶液導入口4及び酸化溶液排出口10にはそれぞれプラグ弁が設けられており、弁のスルーフロー部の材料はフッ素樹脂でコーティングされた316鋼である。
【0123】
具体的な工程は、以下を含むことができる。
1)吸収溶液を酸化塔1内へ導入する。
2)酸化用空気システム13によって供給される酸化用空気を酸化塔の酸化用空気導入口9へ導入し、吸収溶液と接触させて、吸収溶液中の亜硫酸(水素)アンモニウムを酸化して、硫酸(水素)アンモニウムとする。
3)酸化吸収溶液(又は酸化溶液)の一部を、アンモニア脱硫用の吸収塔6内の洗浄及び冷却区域11内の洗浄及び噴霧する装置7内へ導入し、対向流で排煙と接触させて、排煙を冷却しながら酸化溶液を濃縮し、塔の壁及び支持梁をすすいで、酸化吸収溶液の残りの分にアンモニアを供給して、アンモニア脱硫用の吸収塔6の吸収区域12内の吸収及び噴霧する装置8内へ導入する。
4)反応させた酸化用空気を、酸化用空気排出口5を介して、アンモニア脱硫用の吸収塔6の吸収区域12に送る。
【0124】
吸収溶液中の亜硫酸(水素)アンモニウムの酸化率は97.5%〜99%である。
【0125】
アンモニア脱硫用の吸収塔6内の洗浄及び冷却区域11に撹拌機を設ける。
【0126】
処理されるボイラ排煙の量は最大500000Nm/h(標準状態、湿量基準、及び酸素実際量)とすることができ、SO濃度は最大1750mg/Nmとすることができ、酸化塔直径は5.6mであり、高さは10.5mであり、酸化塔に入れる酸化溶液の流量は最大650m/hとすることができる。
【0127】
最終的に、本発明の上記の実施例は全て、本発明を説明するのに使用されるに過ぎず、本発明の保護範囲を限定するものではないことに留意されたい。当業者であれば上記の実施例に基づいて変更を行うことができ、これらの変更は全て本発明の保護範囲を逸脱するものではない。
図1