特許第6872306号(P6872306)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6872306レディーミクストコンクリートの製造方法、および、レディーミクストコンクリート
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6872306
(24)【登録日】2021年4月21日
(45)【発行日】2021年5月19日
(54)【発明の名称】レディーミクストコンクリートの製造方法、および、レディーミクストコンクリート
(51)【国際特許分類】
   B28C 7/04 20060101AFI20210510BHJP
   C04B 24/26 20060101ALI20210510BHJP
   C04B 28/02 20060101ALI20210510BHJP
   C08F 220/28 20060101ALI20210510BHJP
   C08F 290/06 20060101ALI20210510BHJP
【FI】
   B28C7/04
   C04B24/26 B
   C04B24/26 E
   C04B24/26 F
   C04B24/26 H
   C04B28/02
   C08F220/28
   C08F290/06
【請求項の数】2
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-222296(P2014-222296)
(22)【出願日】2014年10月31日
(65)【公開番号】特開2016-87852(P2016-87852A)
(43)【公開日】2016年5月23日
【審査請求日】2017年9月20日
【審判番号】不服2019-7590(P2019-7590/J1)
【審判請求日】2019年6月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
(73)【特許権者】
【識別番号】000210654
【氏名又は名称】竹本油脂株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】一色国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】近松 竜一
(72)【発明者】
【氏名】桜井 邦昭
(72)【発明者】
【氏名】岡田 和寿
(72)【発明者】
【氏名】梶原 教裕
【合議体】
【審判長】 日比野 隆治
【審判官】 菊地 則義
【審判官】 金 公彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−82560(JP,A)
【文献】 特開2015−212216(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B28C 7/04
C04B 24/00-24/42
C04B 28/02
C08F220/28
C08F290/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレッシュ状態のレディーミクストコンクリートを練り混ぜた後、10分以上の時間を経て、コンクリートのスランプ値を当該コンクリートの練り混ぜ後120分より長い時間から少なくとも150分までの間、コンクリートの荷卸し時の目標スランプに対して±2.5cmに収める目的で混和剤を添加するレディーミクストコンクリートの製造方法であって、
前記混和剤は、カルボン酸及びその塩の量が酢酸換算で0.1〜5.3重量%であるポリカルボン酸系共重合体を主成分として含有しており、
前記混和剤は、一般式(I)で示される下記の単量体Aから形成された構成単位と単量体Bから形成された構成単位を有する前記ポリカルボン系酸共重合体を必須成分として含み、
前記単量体Bは、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、(無水)マレイン酸、フマル酸、(無水)イタコン酸、およびそれらの塩から選ばれる1種又は2種以上であることを特徴とするレディーミクストコンクリートの製造方法。
一般式(I)
【化1】
一般式(I)においてR,Rは水素原子またはメチル基であり、Rは水素原子、メチル基またはCOOMである。Mは水素原子、アンモニウム、アミン類、アルカリ金属、アルカリ土類金属から選ばれる1種または2種以上である。pは0〜2の整数であり、qは0または1である。AOは炭素原子数2〜4のオキシアルキレン基であり、nは1〜300の整数である。Rは、n=1〜300のときは水素原子、炭素数1〜22のアルキル基または炭素数1〜22の脂肪族アシル基である。
【請求項2】
混和剤を添加する時間が、フレッシュ状態のレディーミクストコンクリートを練り混ぜた後、10分以上120分以下の時間であることを特徴とする請求項1記載のレディーミクストコンクリートの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レディーミクストコンクリートの製造方法、および、レディーミクストコンクリートに関する。
【背景技術】
【0002】
レディーミクストコンクリート(以下、単にコンクリートという)は、練混ぜ後から時間が経過するにつれて流動性が低下する。練混ぜ後のコンクリートは速やかに打ち込むことが基本であることから、現場に近い生コン工場を選定したり、荷卸しから打ち込みまでの場内運搬をできるだけ短くしたりしている。しかしながら、現場の近くに生コン工場がなく場外運搬時間が長くなってしまうケースや、場内運搬に過度な時間を要する施工事例も増加している。さらに、夏期においては、コンクリート温度が高く、時間の経過に伴う流動性の低下も大きくなる。
【0003】
コンクリートの練混ぜから打ち込みまでに長い時間がかかる場合、次の対策が考えられる。まず、練混ぜから打ち込みまでの流動性の低下量を見込んで、練混ぜ時における流動性を上げ越しすることが考えられる。例えば、流動化剤を添加して流動性を増大させ、打ち込み時における流動性を確保することが考えられる。しかしながら、この方法では、セメント量が増加して温度ひび割れが生じたり、配合設計が複雑になったりしてしまう。また、一時的に流動性が増大するが、流動性の保持効果が小さく時間の経過と共に流動性の低下が顕著になる。
【0004】
また、AE減水剤や高性能AE減水剤について遅延形のタイプを選択し、流動性の低下を緩和させることが考えられる。しかしながら、遅延形のタイプを選択しても、遅延し得る時間には限界があり、十分な遅延時間を確保し難いという問題が生じる。
【0005】
さらに、練り混ぜ時に凝結遅延剤を添加し、コンクリートの硬化を遅らせることで、流動性の低下を緩和させることが考えられる。しかしながら、凝結遅延剤の添加量が過多になってコンクリートの硬化が遅延してしまう。また、ブリーディング水が発生したり、硬化後に強度低下が発現したりしてしまう。
【0006】
このような観点から、混和剤の構成成分について検討がなされている。例えば、特許文献1には、粘性調整成分を含む一液型の流動化剤を作製し、フレッシュ状態のコンクリートに後添加することで、ベースのコンクリートと同等の硬化性状を有し、高い流動性及び充分な材料分離抵抗性を有する流動化コンクリートの製造方法が記載されている。
【0007】
すなわち、この特許文献1には、スランプ値が15〜21cmであるベースコンクリートを作製し、作製から5〜180分の時間の経過によってスランプ値が12cm〜21cmとなったベースコンクリートに、粘性調整成分一液型コンクリート用流動化剤を添加して練り混ぜることで、スランプフロー値が35〜65cmの流動化コンクリートを得ることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2014−94846号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ここで、用途によっては、コンクリートの硬化を過度に遅延させず、かつ、ブリーディング水の発生を抑えつつ、コンクリートの流動化状態(スランプ値)を長時間に亘って所定範囲内に収めたい場合がある。
【0010】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、練り混ぜ直後におけるコンクリートの流動化状態を、長時間に亘って維持することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記目的を達成するため、本発明は、フレッシュ状態のレディーミクストコンクリートに混和剤を後添加するレディーミクストコンクリートの製造方法であって、前記混和剤は、カルボン酸及びその塩の量が酢酸換算で0.1〜6重量%であるポリカルボン酸系共重合体を主成分として含有していることを特徴とする。
【0012】
前述の製造方法において、前記混和剤は、一般式(I)で示される下記の単量体Aから形成された構成単位と単量体Bから形成された構成単位を有する前記ポリカルボン酸系共重合体を必須成分として含み、前記単量体Bは、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、(無水)マレイン酸、フマル酸、(無水)イタコン酸、およびそれらの塩から選ばれる1種又は2種以上であることが好ましい。
【0013】
一般式(I)
【化1】
【0014】
一般式(I)においてR,Rは水素原子またはメチル基であり、Rは水素原子、メチル基またはCOOMである。Mは水素原子、アンモニウム、アミン類、アルカリ金属、アルカリ土類金属から選ばれる1種または2種以上である。pは0〜2の整数であり、qは0または1である。AOは炭素原子数2〜4のオキシアルキレン基であり、nは0〜300の整数である。Rは、n=0のときは炭素数1〜22のアルキル基または炭素数1〜22の脂肪族アシル基であり、n=1〜300のときは水素原子、炭素数1〜22のアルキル基または炭素数1〜22の脂肪族アシル基である。
【0015】
また、本発明は、前述の製造方法で製造されたことを特徴とするレディーミクストコンクリートである。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、練り混ぜ直後におけるコンクリートの流動化状態を、長時間に亘って維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】使用材料を表形式で示す図である。
図2】今回の試験に使用した混和剤ad2の具体例を表形式で示す図である。
図3】ベースコンクリートの配合を表形式で示す図である。
図4】実施例1〜9、比較例1〜9の配合を表形式で示す図である。
図5】試験結果を表形式で示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明者等は、鋭意検討を重ねた結果、フレッシュ状態のコンクリートに後添加されるコンクリート用の混和剤として、カルボン酸及びその塩の量が酢酸換算で0.1〜6重量%であるポリカルボン酸系共重合体を主成分として含有するものを用いることで、コンクリートの硬化を過度に遅延させず、かつ、ブリーディング水の発生を抑えつつ、コンクリートのスランプ値を長時間に亘って所定範囲内に収めることができるという着想を得た。
【0019】
この着想を確認すべく、実施例及び比較例となる複数種類のサンプルを作製し、スランプ試験とブリーディング試験を行った。これらの試験の説明に先立ち、使用材料について説明する。
【0020】
図1に示すように、今回の試験では、セメント(C)として、普通ポルトランドセメントを用いた。この普通ポルトランドセメントは、密度が3.16g/cmである。細骨材(S)として、陸砂を用いた。この陸砂は、表乾密度が2.59g/cmである。粗骨材(G)として、砕石2005Aを用いた。この砕石2005Aは、表乾密度が2.66g/cmである。
【0021】
混和剤はad1〜ad4の4種類を用いた。混和剤ad1はAE減水剤(標準形,I種)であり、有機酸系誘導体と芳香族高分子化合物を主成分とするものである。混和剤ad2は特殊混和剤であり、単量体Aから形成された構成単位と、単量体Bから形成された構成単位を有する共重合体である。
【0022】
そして、単量体Aは、一般式(I)に示す構造のポリカルボン酸系共重合体の単位物質からなる。
【化2】
【0023】
一般式(I)においてR,Rは水素原子またはメチル基であり、Rは水素原子、メチル基またはCOOMである。Mは水素原子、アンモニウム、アミン類、アルカリ金属、アルカリ土類金属から選ばれる1種または2種以上である。pは0〜2の整数であり、qは0または1である。AOは炭素原子数2〜4のオキシアルキレン基であり、nは0〜300の整数である。Rは、n=0のときは炭素数1〜22のアルキル基または炭素数1〜22の脂肪族アシル基であり、n=1〜300のときは水素原子、炭素数1〜22のアルキル基または炭素数1〜22の脂肪族アシル基である。
【0024】
また、単量体Bは、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、(無水)マレイン酸、フマル酸、(無水)イタコン酸およびそれらの塩から選ばれる1種又は2種以上からなる。後述するように、今回の試験に用いた混和剤ad2は、単量体Bに由来するカルボン酸およびその塩の量が酢酸換算で0.8〜13.3%の範囲のものとした。
【0025】
図2に示すように、今回の試験では混和剤ad2として、30質量%水酸化ナトリウム水溶液にてpHを6に調整した6種類の重合体P1〜P6を単独であるいは混合して用いた。以下、重合体P1〜P6について説明する。
【0026】
重合体P1は、2種類の単量体Aと1種類の単量体Bを共重合させたものである。1種類目の単量体Aは、一般式(I)におけるRが水素原子、Rがメチル基、Rが水素原子、Rが水素原子、p=1、q=0、AOがエチレンオキシド、n=53である。2種類目の単量体Aは、一般式(I)におけるRが水素原子、Rが水素原子、Rが水素原子、Rが水素原子、p=0、q=1、AOがエチレンオキシド、n=1である。単量体Bはアクリル酸である。重合体P1の質量平均分子量は39000であり、単量体B(アクリル酸)に由来するカルボン酸の量が酢酸換算で0.8%である。
【0027】
重合体P2は、2種類の単量体Aと1種類の単量体Bを共重合させたものである。1種類目の単量体Aは、一般式(I)におけるRが水素原子、Rがメチル基、Rが水素原子、Rがメチル基、p=0、q=1、AOがエチレンオキシド、n=9である。2種類目の単量体Aは、一般式(I)におけるRが水素原子、Rが水素原子、Rが水素原子、Rが水素原子、p=0、q=1、AOがエチレンオキシド、n=1である。単量体Bはメタクリル酸である。重合体P2の質量平均分子量は40000であり、単量体B(メタクリル酸)に由来するカルボン酸の量が酢酸換算で1.4%である。
【0028】
重合体P3は、3種類の単量体Aと1種類の単量体Bを共重合させたものである。1種類目の単量体Aは、一般式(I)におけるRがメチル基、Rがメチル基、Rが水素原子、Rが水素原子、p=1、q=0、AOがエチレンオキシド、n=115である。2種類目の単量体Aは、一般式(I)におけるRが水素原子、Rが水素原子、Rが水素原子、Rが水素原子、p=0、q=1、AOがエチレンオキシド、n=1である。3種類目の単量体Aは、一般式(I)におけるRが水素原子、Rが水素原子、Rが水素原子、Rがメチル基、p=0、q=1、AOは無し、n=0である。単量体Bはアクリル酸である。重合体P3の質量平均分子量は41000であり、単量体B(アクリル酸)に由来するカルボン酸の量が酢酸換算で2.0%である。
【0029】
重合体P4は、1種類の単量体Aと1種類の単量体Bを共重合させたものである。単量体Aは、一般式(I)におけるRが水素原子、Rが水素原子、Rが水素原子、Rがメチル基、p=1、q=0、AOがエチレンオキシド、n=50である。単量体Bはマレイン酸である。重合体P4の質量平均分子量は33000であり、単量体B(マレイン酸)に由来するカルボン酸の量が酢酸換算で8.9%である。
【0030】
重合体P5は、1種類の単量体Aと1種類の単量体Bを共重合させたものである。単量体Aは、一般式(I)におけるRが水素原子、Rがメチル基、Rが水素原子、Rがメチル基、p=0、q=1、AOがエチレンオキシド、n=9である。単量体Bはメタクリル酸である。重合体P5の質量平均分子量は36000であり、単量体B(メタクリル酸)に由来するカルボン酸の量が酢酸換算で10.1%である。
【0031】
重合体P6は、2種類の単量体Aと1種類の単量体Bを共重合させたものである。1種類目の単量体Aは、一般式(I)におけるRが水素原子、Rがメチル基、Rが水素原子、Rが水素原子、p=0、q=1、AOがエチレンオキシド21個及びプロピレンオキシド2個、n=23である。2種類目の単量体Aは、一般式(I)におけるRが水素原子、Rが水素原子、Rが水素原子、Rがn−ブチル基、p=0、q=1、AOが無し、n=0である。単量体Bはメタクリル酸である。重合体P6の質量平均分子量は37000であり、単量体B(メタクリル酸)に由来するカルボン酸の量が酢酸換算で13.9%である。
【0032】
混和剤ad3は凝結遅延剤であり、ポリヒドロキシカルボン酸複合体を主成分とするものである。混和剤ad4は流動化剤であり、ポリカルボン酸コポリマーを主成分とするものである。この混和剤ad4に関し、カルボン酸およびその塩の量は、酢酸換算で15.6%である。
【0033】
次に、今回の試験に用いたベースコンクリートの配合について説明する。図3に示すように、今回の試験では、単位量(1m)あたり、水を(W)173kg、セメント(C)を315kg、細骨材(S)を834kg、粗骨材(G)を958kg用いた。これにより、水セメント比(W/C)55.0%、細骨材率(s/a)47.2%となる。また、AE減水剤である混和剤ad1を、セメントの1重量%添加した。
【0034】
次に、今回の試験に用いた各サンプルについて説明する。図4に示すように、今回の試験では、実施例1〜9および比較例1〜9からなる18種類のサンプルを用いた。
【0035】
実施例1では、混和剤ad2として重合体P1を用いた。このため、実施例1では、単量体Bに由来するカルボン酸の量が酢酸換算で0.8%となる。そして、ベースコンクリートの練り混ぜ完了から30分経過時点のスランプを測定した後、60分のスランプを測定するまでの期間に、濃度が20重量%とされた溶液状の混和剤ad2を、セメント量の0.3%添加した。
【0036】
実施例2でも、混和剤ad2として重合体P1を用いた。そして、ベースコンクリートの練り混ぜ完了から10分経過時点で、濃度が20重量%とされた溶液状の混和剤ad2を、セメント量の0.3%添加した。
【0037】
実施例3では、混和剤ad2として重合体P2を用いた。このため、実施例2では、単量体Bに由来するカルボン酸の量が酢酸換算で1.4%となる。なお、実施例3に関し、その他は、実施例1と同様であるので、説明を省略する。
【0038】
実施例4では、混和剤ad2として重合体P2と重合体P6をP2/P6=89/11の割合で混合して用いた。そのときの単量体Bに由来するカルボン酸の量は、酢酸換算で2.8%であった。なお、実施例3に関し、その他は、実施例1と同様であるので、説明を省略する。
【0039】
実施例5では、実施例4と同様に、混和剤ad2として重合体P2と重合体P6をP2/P6=89/11の割合で混合して用いた。このため、カルボン酸の量は酢酸換算で2.8%であった。そして、ベースコンクリートの練り混ぜ完了から30分経過時点のスランプを測定した後、60分のスランプを測定するまでの期間に、濃度が20重量%とされた溶液状の混和剤ad2を、セメント量の0.1%添加した。同様に、60分のスランプを測定した後、90分のスランプを測定するまでの期間と、90分のスランプを測定した後、120分のスランプを測定するまでの期間のそれぞれで、濃度が20重量%とされた溶液状の混和剤ad2を、セメント量の0.1%ずつ添加した。
【0040】
実施例6では、実施例4と同様に、混和剤ad2として重合体P2と重合体P6をP2/P6=89/11の割合で混合して用いた。このため、カルボン酸の量は酢酸換算で2.8%であった。さらに、実施例6では、凝結遅延剤である混和剤ad3を併用した。すなわち、ベースコンクリートの練り混ぜ完了から30分経過時点のスランプを測定した後、60分のスランプを測定するまでの期間に、濃度が20重量%とされた溶液状の混和剤ad2をセメント量の0.30%添加し、濃度が20重量%とされた溶液状の混和剤ad3をセメント量の0.02%添加した。
【0041】
実施例7では、重合体P1と重合体P5をP1/P5=73/27の割合で混合して用いた。そのときの単量体Bに由来するカルボン酸の量は、酢酸換算で3.3%であった。実施例8では、重合体P2と重合体P4をP2/P4=57/43の割合で混合して用いた。そのときの単量体Bに由来するカルボン酸の量は、酢酸換算で4.6%であった。実施例9では、重合体P3と重合体P5をP3/P5=59/41の割合で混合して用いた。そのときの単量体Bに由来するカルボン酸の量は、酢酸換算で5.3%であった。これらの実施例7〜9に関し、その他は、実施例1と同様であるので、説明を省略する。
【0042】
比較例1は、混和剤ad2〜ad4の何れも添加しないサンプルである。言い換えれば、ベースコンクリートそのもので作製したサンプルである。
【0043】
比較例2では、混和剤ad2として重合体P3と重合体P5をP3/P5=21/79の割合で混合して用いた。そのときの単量体Bに由来するカルボン酸の量は、酢酸換算で8.4%であった。そして、比較例2では、ベースコンクリートの練り混ぜ完了から30分経過時点のスランプを測定した後、60分のスランプを測定するまでの期間に、濃度が20重量%とされた溶液状の混和剤ad2をセメント量の0.25%添加した。
【0044】
比較例3では、混和剤ad2として重合体P4を用いた。このため、比較例3では単量体Bに由来するカルボン酸の量は、酢酸換算で8.9%であった。そして、比較例3では、比較例2で説明した期間に、濃度が20重量%とされた溶液状の混和剤ad2をセメント量の0.20%添加した。
【0045】
比較例4では、混和剤ad2として重合体P2と重合体P5をP2/P5=6/94の割合で混合して用いた。そのときの単量体Bに由来するカルボン酸の量は、酢酸換算で9.6%であった。そして、比較例4では、比較例2で説明した期間に、濃度が20重量%とされた溶液状の混和剤ad2をセメント量の0.30%添加した。
【0046】
比較例5では、混和剤ad2として重合体P5を用いた。このため、比較例5では、単量体Bに由来するカルボン酸の量は、酢酸換算で10.1%であった。そして、比較例5では、比較例2で説明した期間に、濃度が20重量%とされた溶液状の混和剤ad2をセメント量の0.30%添加した。
【0047】
比較例6では、混和剤ad2として重合体P1と重合体P6をP1/P6=22/78の割合で混合して用いた。そのときの単量体Bに由来するカルボン酸の量は、酢酸換算で11.0%であった。そして、比較例6では、比較例2で説明した期間に、濃度が20重量%とされた溶液状の混和剤ad2をセメント量の0.20%添加した。
【0048】
比較例7では、混和剤ad2として重合体P2と重合体P6をP2/P6=5/95の割合で混合して用いた。そのときの単量体Bに由来するカルボン酸の量は、酢酸換算で13.3%であった。そして、比較例7では、比較例2で説明した期間に、濃度が20重量%とされた溶液状の混和剤ad2をセメント量の0.20%添加した。
【0049】
比較例8では、ベースコンクリートの練り混ぜ完了から30分経過時点のスランプを測定した後、60分のスランプを測定するまでの期間に、凝結遅延剤である混和剤ad3(濃度20重量%)をセメント量の0.3%添加した。比較例9では、同期間に、流動化剤である混和剤ad4(濃度20重量%)をセメント量の0.3%添加した。
【0050】
今回の試験では、実施例1〜9,比較例1〜9の各サンプルに対して、スランプ、ブリーディング率および圧縮強度の測定を行った。
【0051】
サンプル作製時の練り混ぜには、公称容量55Lの強制二軸ミキサを用いた。具体的には、このミキサに対して、1/2量の細骨材、セメント、1/2量の細骨材、粗骨材の順で投入し、5秒間混合した。その後、水と混和剤ad1(AE減水剤)をミキサに投入し、90秒間混合して排出した。2往復切り返し、練り混ぜ直後のスランプを測定した。スランプの測定は、JIS A 1101:2007「コンクリートのスランプ試験方法」によった。
【0052】
経時変化は静置法とし、測定前に2往復切り返しを行ってスランプを測定した。実施例1〜9,比較例2〜9では、前述した期間に混和剤ad2〜ad4を添加してスランプを測定した。混和剤ad2〜ad4の添加に際しては、フレッシュ状態の各サンプルをミキサに戻した。そして、混和剤の添加後に30秒間練り混ぜを行い、2往復切り返しを行ってスランプを測定した。
【0053】
ブリーディング率の測定は、JIS A 1123:2003「コンクリートのブリーディング試験方法」によった。圧縮強度の測定に際し、JIS A 1132:2006「コンクリート強度試験用供試体の作り方」によりφ10×20cmの供試体を作製し、JIS A 1108:2006「コンクリートの圧縮強度試験方法」によって圧縮強度を測定した。
【0054】
測定結果について説明する。図5は、実施例1〜9,比較例1〜9の各サンプルにおけるスランプ、ブリーディング率および圧縮強度の測定結果である。なお、各サンプルにおいてコンクリート温度は20℃である。スランプに関しては、15±2.5cm(12.5〜17.5cm)を合格とした。ブリーディング率に関しては、7%以下を合格とした。圧縮強度に関しては、練り混ぜから24時間経過後に測定し、3.5N/mm以上を合格とした。
【0055】
スランプについて説明する。実施例1のサンプルにおけるスランプは、0分(練り混ぜ直後;以下同じ)で16.2cm、30分経過時で14.2cm、混和剤ad2添加時で15.9cm、60分経過時で15.6cm、90分経過時で15.8cmであった。以後は徐々にスランプが低下し、210分経過時で13.2cmであった。すなわち、実施例1のサンプルでは、練り混ぜ直後から210分までの長期間に亘ってスランプを16.2〜13.2cmの範囲に維持できた。
【0056】
実施例2のサンプルにおけるスランプは、0分で16.1cm、混和剤ad2添加時で16.9cm、60分経過時で16.5cmであった。以後は徐々にスランプが低下し、210分経過時で12.6cmであった。すなわち、実施例2のサンプルでは、練り混ぜ直後から210分までの長期間に亘ってスランプを16.9〜12.6cmの範囲に維持できた。
【0057】
実施例3のサンプルにおけるスランプは、0分で16.4cm、30分経過時で14.6cm、混和剤ad2添加時で16.2cm、60分および90分経過時で16.0cmであった。以後は徐々にスランプが低下し、210分経過時で12.9cmであった。すなわち、実施例3のサンプルでは、練り混ぜ直後から210分までの長期間に亘ってスランプを16.4〜12.9cmの範囲に維持できた。
【0058】
実施例4のサンプルにおけるスランプは、0分で15.8cm、30分経過時で14.5cm、混和剤ad2添加時および60分経過時で15.5cm、90分経過時で15.6cmであった。以後は徐々にスランプが低下し、210分経過時で12.5cmであった。すなわち、実施例4のサンプルでは、練り混ぜ直後から210分までの長期間に亘ってスランプを15.8〜12.5cmの範囲に維持できた。
【0059】
実施例5のサンプルにおけるスランプは、0分で15.9cm、30分経過時で14.7cm、1回目の混和剤ad2添加時で14.9cm、60分経過時で14.8cm、2回目の混和剤ad2添加時で15.1cm、90分経過時で15.0cm、3回目の混和剤ad2添加時で15.1cmであった。また、120分及び150分経過時で15.2cm、180分経過時で14.5cm、210分経過時で12.8cmであった。すなわち、実施例5のサンプルでは、練り混ぜ直後から210分までの長期間に亘ってスランプを16.4〜12.8cmの範囲に維持できた。
【0060】
実施例6のサンプルにおけるスランプは、0分で16.0cm、30分経過時で14.5cm、混和剤ad2およびad3添加時で16.4cm、60分経過時で16.3cm、90分経過時で16.0cmであった。以後は徐々にスランプが低下し、210分経過時で13.0cmであった。すなわち、実施例6のサンプルでは、練り混ぜ直後から210分までの長期間に亘ってスランプを16.4〜13.0cmの範囲に維持できた。
【0061】
実施例7のサンプルにおけるスランプは、0分で15.7cm、30分経過時で14.3cm、混和剤ad2添加時で16.7cm、60分経過時で16.5cm、90分経過時で16.2cmであった。以後は徐々にスランプが低下し、180分経過時で13.1cm、210分経過時で10.6cmであった。すなわち、実施例7のサンプルでは、練り混ぜ直後から180分までの長期間に亘ってスランプを16.7〜13.1cmの範囲に維持できた。
【0062】
実施例8のサンプルにおけるスランプは、0分で15.8cm、30分経過時で14.4cm、混和剤ad2添加時及び60分経過時で17.3cm、90分経過時で16.5cmであった。以後は徐々にスランプが低下し、180分経過時で12.9cm、210分経過時で8.5cmであった。すなわち、実施例8のサンプルでは、練り混ぜ直後から180分までの長期間に亘ってスランプを17.3〜12.9cmの範囲に維持できた。
【0063】
実施例9のサンプルにおけるスランプは、0分で16.0cm、30分経過時で14.6cm、混和剤ad2添加時及び60分経過時で17.4cm、90分経過時で16.3cmであった。また、120分経過時で15.0cm、150分経過時で13.9cm、180分経過時で12.4cm、210分経過時で7.0cmであった。すなわち、実施例9のサンプルでは、練り混ぜ直後から150分までの長期間に亘ってスランプを17.4〜13.9cmの範囲に維持できた。
【0064】
比較例1のサンプルにおけるスランプは、0分で15.9cm、30分経過時で14.5cm、60分経過時で8.9cm、90分経過時で5.5cmであった。このように、比較例1のサンプルでは、混和剤ad2〜4の何れも添加されていないことから、練り混ぜ直後から30分程度の短時間しか、スランプを合格範囲に維持できなかった。
【0065】
比較例2のサンプルにおけるスランプは、0分で15.9cm、30分経過時で14.5cm、混和剤ad2添加時で18.9cm、60分経過時で18.1cmであった。また、90分経過時で16.8cm、120分経過時で14.3cm、150分経過時で12.2cmであった。すなわち、比較例2のサンプルでは、混和剤ad2添加時にスランプが過度に大きくなった。
【0066】
比較例3のサンプルにおけるスランプは、0分で16.2cm、30分経過時で14.8cm、混和剤ad2添加時で19.2cm、60分経過時で17.9cmであった。また、90分経過時で17.0cm、120分経過時で15.2cm、150分経過時で12.4cmであった。すなわち、比較例3のサンプルでも、混和剤ad2添加時にスランプが過度に大きくなった。
【0067】
比較例4のサンプルにおけるスランプは、0分で16.1cm、30分経過時で14.7cm、混和剤ad2添加時で20.5cm、60分経過時で19.1cmであった。また、90分経過時で17.6cm、120分経過時で14.8cm、150分経過時で11.0cmであった。すなわち、比較例4のサンプルでも、混和剤ad2添加時にスランプが過度に大きくなった。
【0068】
比較例5のサンプルにおけるスランプは、0分で16.0cm、30分経過時で14.5cm、混和剤ad2添加時で21.6cm、60分経過時で19.5cmであった。また、90分経過時で14.9cm、120分経過時で11.0cmであった。すなわち、比較例5のサンプルでも、混和剤ad2添加時にスランプが過度に大きくなった。
【0069】
比較例6のサンプルにおけるスランプは、0分で15.8cm、30分経過時で14.6cm、混和剤ad2添加時で22.0cm、60分経過時で17.5cmであった。また、90分経過時で13.6cm、120分経過時で8.0cmであった。すなわち、比較例6のサンプルでも、混和剤ad2添加時にスランプが過度に大きくなった。
【0070】
比較例7のサンプルにおけるスランプは、0分で16.2cm、30分経過時で14.8cm、混和剤ad2添加時で22.6cm、60分経過時で17.0cmであった。また、90分経過時で12.8cm、120分経過時で9.5cmであった。すなわち、比較例7のサンプルでも、混和剤ad2添加時にスランプが過度に大きくなった。
【0071】
比較例8のサンプルにおけるスランプは、0分で16.0cm、30分経過時で14.5cm、混和剤ad3添加時で17.2cm、60分経過時で16.5cmであった。以後は徐々にスランプが低下し、150分経過時で13.7cm、180分経過時で12.5cmであった。すなわち、比較例8のサンプルでは、練り混ぜ直後から180分までの長期間に亘ってスランプを17.2〜12.5cmの範囲に維持できた。
【0072】
比較例9のサンプルにおけるスランプは、0分で16.2cm、30分経過時で14.6cm、混和剤ad4添加時で22.4cm、60分経過時で13.5cm、90分経過時で7.6cmであった。すなわち、比較例9のサンプルでは、混和剤ad4添加時にスランプが過度に大きくなり、かつ、練り混ぜから60分の短期間でスランプが合格範囲よりも低くなった。
【0073】
ブリーディング率に関しては、比較例8のサンプルが21.20%と際だって高い値を示したが、他のサンプルは5.93〜6.73%と何れも7%以下であった。
【0074】
練り混ぜから24時間経過後の圧縮強度に関しては、比較例8のサンプルが測定不能であったが、他のサンプルは3.82〜4.58N/mmと何れも、3.5N/mm以上を合格とした。
【0075】
以上の結果を総括すると、今回の試験では、実施例1〜9のサンプルにおいて、練り混ぜ直後からスランプを、少なくとも150分に亘って合格範囲(15±2.5cm)に維持できることが確認できた。すなわち、混和剤ad2において、単量体Bに由来するカルボン酸およびその塩の量が酢酸換算で0.8〜5.3%のものを用いることで、スランプを合格範囲に維持できることが確認できた。
【0076】
ここで、実施例8,9と比較例2を対比する。混和剤ad2の添加時点におけるスランプが、実施例8(酢酸換算量4.6%)のサンプルでは17.3cm、実施例9のサンプル(酢酸酸換算量5.3%)では17.4cm、比較例2のサンプル(酢酸換算量8.4%)では18.9cmであった。これらの結果を考慮すると、酢酸換算量6.0%であれば、混和剤ad2の添加時点におけるスランプが17.5cm以下になると考えられる。
【0077】
また、実施例1,3,4について検討する。混和剤ad2の添加時点におけるスランプが、実施例1のサンプル(酢酸換算量0.8%)では15.9cm、実施例3のサンプル(酢酸換算量1.4%)では16.2cm、実施例4のサンプル(酢酸換算量2.8%)では15.5cmであった。そして、これらのサンプルでは、練り混ぜから210分までの長時間に亘ってスランプ値を合格範囲に維持できた。加えて、酢酸換算量が最も少ない実施例1のサンプルが最も210分時点でのスランプが大きかった。これらを考慮すると、酢酸換算量0.1%の混和剤ad2を用いてもスランプを長時間に亘って合格範囲に維持できると考えられる。
【0078】
以上より、混和剤ad2としては、単量体Bに由来するカルボン酸およびその塩の量が酢酸換算で0.1〜6.0%のものを用いることができるといえる。そして、混和剤ad2に関しては、カルボン酸等の量が酢酸換算で0.8〜5.3%(実施例1〜9)であれば、練り混ぜから150分までの長時間に亘ってスランプを合格範囲に維持できる。同様に、カルボン酸等の量が酢酸換算で0.8〜4.6%(実施例1〜8)であれば、練り混ぜから180分までの長時間に亘ってスランプを合格範囲に維持できる。さらに、カルボン酸等の量が酢酸換算で0.8〜2.8%(実施例1〜4)であれば、練り混ぜから210分までの長時間に亘ってスランプを合格範囲に維持できる。
【0079】
加えて、混和剤ad2は練り混ぜから10分後程度の早期に添加してもよく(実施例2)、複数回に分けて添加してもよい(実施例5)。また、凝結遅延剤と併用してもよい(実施例6)。
【0080】
一方、混和剤ad2であっても、カルボン酸等の量が酢酸換算で8.4〜13.3%(比較例2〜7)になると、混和剤添加時のスランプが過度に大きくなってしまい合格範囲から外れてしまう。また、スランプを維持する力も弱くなり、前述の実施例よりも早期にスランプが合格範囲よりも低くなる。
【0081】
また、凝結遅延剤である混和剤ad3を用いた場合、スランプを長時間に亘って維持できるものの、ブリーディング率が過度に高くなってしまう。また、練り混ぜから24時間を経過しても硬化しないなど、硬化が過度に遅くなってしまう。
【0082】
さらに、流動化剤である混和剤ad4を用いた場合、比較例2〜7と同様に、混和剤添加時のスランプが過度に大きくなってしまい合格範囲から外れてしまう。また、スランプを維持する力も弱くなり、前述の実施例よりも早期にスランプが合格範囲よりも低くなる。これは、混和剤ad4においても、カルボン酸等が高い濃度で含まれているためと解される。
【0083】
なお、以上の実施形態の説明は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明はその趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に本発明にはその等価物が含まれる。
図1
図2
図3
図4
図5