(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記支持部は、前記第1カバー部と前記第2カバー部とが互いに離間するのに伴って前記気化成分の排気が前記排気機構により開始されてからの所定期間は、前記開口に対向する範囲に前記基板を支持する請求項3に記載の減圧乾燥装置。
基板収容部が有する第1カバー部と第2カバー部との間の処理空間に膜が塗布された基板を収容した状態で、前記第1カバー部と前記第2カバー部とを互いに接触させることで前記処理空間を閉じる工程と、
閉じられた前記処理空間を減圧することで、前記基板に塗布された前記膜を乾燥させる工程と、
前記第1カバー部と前記第2カバー部とを互いに離間させる工程と、
前記基板収容部の外側に配置された排気機構により、互いに離間する前記第1カバー部および前記第2カバー部それぞれの周縁部の間から前記処理空間内の気化成分を排気する工程と、
前記排気機構により前記気化成分を排気するのと並行して、前記第1カバー部と前記第2カバー部とが互いに離間した状態で、給気機構によって前記処理空間に気体を供給する工程と
を備える減圧乾燥方法。
基板収容部が有する第1カバー部と第2カバー部との間の処理空間に膜が塗布された基板を収容した状態で、前記第1カバー部と前記第2カバー部とを互いに接触させることで前記処理空間を閉じる工程と、
閉じられた前記処理空間を減圧することで、前記基板に塗布された前記膜を乾燥させる工程と、
前記第1カバー部と前記第2カバー部とを互いに離間させる工程と、
前記基板収容部の外側に配置された排気機構により、互いに離間する前記第1カバー部および前記第2カバー部それぞれの周縁部の間から前記処理空間内の気化成分を排気する工程と
を備え、
前記排気機構は、前記処理空間の外側で前記第2カバー部の周縁部に沿って延設された開口を有し、互いに離間する前記第1カバー部および前記第2カバー部それぞれの周縁部の間に形成される空間に前記開口が対向して、当該空間を介して前記開口から前記処理空間内を吸引することで、前記気化成分を排気する減圧乾燥方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、基板に塗布された膜の乾燥が完了した時点では、基板を収容する基板収容部(チャンバー)の内部には膜から気化した成分が残存している。そのため、基板収容部を開いた際に、この気化成分が基板収容部の外部に飛散して、周囲を汚染するという問題が発生する。
【0005】
この発明は上記課題に鑑みなされたものであり、基板を収容する基板収容部の内部を減圧することで基板に塗布された膜を乾燥させる技術において、膜からの気化成分が基板収容部の外部に飛散するのを抑制しつつ、この気化成分を基板収容部の内部から除去することを可能とする技術の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る減圧乾燥装置は、膜が塗布された基板を支持する支持部と、互いに接離可能な第1カバー部と第2カバー部とを有して、支持部に支持された基板を第1カバー部と第2カバー部との間の処理空間に収容する基板収容部と、第1カバー部と第2カバー部とを互いに接触させることで処理空間を閉じる一方、第1カバー部と第2カバー部とを互いに離間させることで処理空間を開く接離駆動部と、閉じられた処理空間を減圧することで、基板に塗布された膜を乾燥させる減圧機構と、基板収容部の外側に配置され、互いに離間する第1カバー部および第2カバー部それぞれの周縁部の間から処理空間内の気化成分を排気する排気機構とを備える。
【0007】
本発明に係る減圧乾燥方法は、基板収容部が有する第1カバー部と第2カバー部との間の処理空間に膜が塗布された基板を収容した状態で、第1カバー部と第2カバー部とを互いに接触させることで処理空間を閉じる工程と、閉じられた処理空間を減圧することで、基板に塗布された膜を乾燥させる工程と、第1カバー部と第2カバー部とを互いに離間させる工程と、基板収容部の外側に配置された排気機構により、互いに離間する第1カバー部および第2カバー部それぞれの周縁部の間から処理空間内の気化成分を排気する工程とを備える。
【0008】
このように構成された本発明(減圧乾燥装置、減圧乾燥方法)では、基板収容部は第1カバー部と第2カバー部とを有し、第1カバー部と第2カバー部とを接触させることで第1カバー部と第2カバー部との間の処理空間が閉じられる。そして、第1カバー部および第2カバー部によって閉じられた処理空間を減圧することで、処理空間に収容された基板の膜の乾燥が実行される。かかる乾燥が完了した時点では、上述のように基板収容部の内部、すなわち処理空間には膜からの気化成分が残存している。そのため、第1カバー部と第2カバー部とを離間させて処理空間を開くと、第1カバー部と第2カバー部との間から外部に気化成分が飛散するおそれがあった。これに対して、本発明では、基板収容部の外側に排気機構が配置されている。そして、互いに離間する第1カバー部および第2カバー部それぞれの周縁部の間から、排気機構が処理空間内の気化成分を排気する。これによって、気化成分は、処理空間から排気機構へと排気される。その結果、膜からの気化成分が基板収容部の外部に飛散するのを抑制しつつ、この気化成分を基板収容部の内部から除去することが可能となっている。
【0009】
また、排気機構が気化成分を排気するのと並行して、処理空間に気体を供給する給気機構をさらに備えるように、減圧乾燥装置を構成しても良い。かかる構成では、処理空間に供給される気体で気化成分を置換しつつ、排気機構による気化成分の排気が実行される。したがって、処理空間からの気化成分の除去を速やかに実行できるとともに、気化成分を置換した気体によって処理空間を清浄に保つことができる。
【0010】
また、処理空間内に配置されて、支持部により支持される基板を第2カバー部の側から加熱するホットプレートをさらに備え、給気機構は、ホットプレートと第2カバー部との間に気体を供給し、ホットプレートと第2カバー部との間の隙間が、給気機構により供給された気体を第2カバー部の周縁部に案内するように、減圧乾燥装置を構成しても良い。かかる構成では、処理空間に供給された気体は、ホットプレートと第2カバー部との間の隙間によって第2カバー部の周縁部に案内される。これによって、処理空間から第2カバー部の周縁部へ向かう気流が生成され、処理空間からの気化成分の除去を効率的に行うことが可能となる。
【0011】
また、排気機構は、処理空間の外側で第2カバー部の周縁部に沿って延設された開口を有し、互いに離間する第1カバー部および第2カバー部それぞれの周縁部の間を介して開口から処理空間内を吸引することで、気化成分を排気するように、減圧乾燥装置を構成しても良い。このように設けられた開口から処理空間内を吸引することで、第1カバー部および第2カバー部それぞれの周縁部の間から排出される気化成分が外部に飛散するのをより確実に抑制しつつ、処理空間から気化成分を排気することができる。
【0012】
また、支持部は、第1カバー部と第2カバー部とが互いに離間するのに伴って気化成分の排気が排気機構により開始されてからの所定期間は、開口に対向する範囲に基板を支持するように、減圧乾燥装置を構成しても良い。これによって、処理空間内の気化成分の残存量が比較的多い排気開始時点において、気化成分の発生源である基板の膜に開口を対向させつつ、開口から気化成分を排気することができる。したがって、気化成分が基板収容部の外部に飛散するのをより確実に抑制しつつ、処理空間から気化成分を排気することができる。
【0013】
また、排気機構は、開口が設けられたダクトを有し、ダクトの上面が外側へ向かって下る傾斜面であるように、減圧乾燥装置を構成しても良い。このようにダクトの上面を傾斜させた場合、上方からダクトの上面に当たる気流は、この上面の傾斜に沿って緩やかに曲がりながら下方へ向かう。したがって、ダウンフローが生成されたクリーンルーム等にこの減圧乾燥装置を設置しても、ダウンフローが排気機構のダクトにより乱されるのを抑えることができる。
【0014】
また、第1カバー部は、支持部に支持された基板に対向する範囲に平面を有するように、減圧乾燥装置を構成しても良い。これによって、基板に塗布された膜に乾燥ムラが生じるのを抑えることができる。さらに言えば、排気機構を例えば第1カバー部を介して処理空間に連通させるのではなく、基板収容部の外側に配置しているからこそ、当該構成を採用することが可能となっている。
【0015】
また、ポリイミド前駆体と溶媒とを含む膜を乾燥させるにあたって、上記の減圧乾燥装置を用いても良い。つまり、ポリイミド前駆体の膜は例えばフォトレジストの膜と比較して多くの溶媒を含む傾向にある。そこで、気化した溶媒が基板収容部の外部に飛散するのを抑制しつつ、この気化成分を基板収容部の内部から除去することが特に好適となる。
【0016】
本発明に係る減圧乾燥システムは、上記の減圧乾燥装置を複数備える。したがって、膜からの気化成分が基板収容部の外部に飛散するのを抑制しつつ、この気化成分を基板収容部の内部から除去することが可能となっている。
【0017】
また、複数の減圧乾燥装置が同一の基板に対して順番に膜の乾燥を実行するように、減圧乾燥システムを構成しても良い。かかる構成では、膜の乾燥が複数の減圧乾燥装置によって段階的に実行される。この際、初期に乾燥を実行する減圧乾燥装置の基板収容部の内部では、多くの気化成分が残存する。これに対して、本発明によれば基板収容部の内部に残存する多くの気化成分を、外部への飛散を抑制しつつ除去することができる。その結果、他の減圧乾燥装置が気化成分で汚染されるのを抑制できる。
【0018】
また、複数の減圧乾燥装置が鉛直方向に並んで配置されているように、減圧乾燥システムを構成しても良い。このような構成では、減圧乾燥装置の基板収容部から外部へ飛散した気化成分が下に滞留することで、下側に配置された減圧乾燥装置が汚染されるおそれがあった。これに対して、本発明によれば基板収容部の内部に残存する多くの気化成分を、外部への飛散を抑制しつつ除去することができる。その結果、下側に配置された減圧乾燥装置が気化成分で汚染されるのを抑制できる。
【発明の効果】
【0019】
以上のように、本発明によれば、基板を収容する基板収容部の内部を減圧することで基板に塗布された膜を乾燥させる技術において、膜からの気化成分が基板収容部の外部に飛散するのを抑制しつつ、この気化成分を基板収容部の内部から除去することが可能となっている。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1は本発明に係る減圧乾燥装置の一実施形態を装備するポリイミド膜製造ラインを模式的に示す図である。このポリイミド膜製造ライン1は、塗布装置11、減圧乾燥装置12、熱処理装置13および2台の搬送ロボット14、15を備える。ポリイミド膜製造ライン1では、塗布装置11がキャリアーガラス板G(
図2参照)の上面G1(
図2参照)にポリイミド前駆体および溶媒を含む塗布液を塗布して塗布膜F(
図2参照)を形成する。塗布装置11としては、例えば塗布液を吐出口から吐出するスリットノズルをキャリアーガラス板Gに対して相対移動させて塗布膜Fを形成する、いわゆるスリットコーターを用いることができる。もちろん、その他の塗布方式の塗布装置を用いても良い。また、本実施形態では、ポリアミド酸(ポリアミック酸)およびNMP(N−メチル−2−ピロリドン:N-Methyl-2-Pyrrolidone)をそれぞれ本発明の「ポリイミド前駆体」および「溶媒」として用いて所望厚みの10倍程度(例えば5〜20[μm]程度のポリイミド膜を形成する場合には、50〜200[μm]程度)の比較的厚い塗布膜Fを形成する。
【0022】
塗布膜Fが形成されたキャリアーガラス板Gは搬送ロボット14によって塗布装置11から減圧乾燥装置12に搬送される。この減圧乾燥装置12は塗布膜Fに対する減圧乾燥処理を行うことで、塗布膜F中の溶媒を除去して所望の膜厚のポリイミド前駆体塗膜を形成する。なお、減圧乾燥装置12の構成および動作については、ポリイミド膜製造ライン1の全体説明に続いて詳述する。
【0023】
ポリイミド前駆体塗膜が形成されたキャリアーガラス板Gは搬送ロボット15により減圧乾燥装置12から熱処理装置13に搬送される。この熱処理装置13はポリイミド前駆体塗膜に熱処理を施してポリイミド前駆体をイミド化してポリイミド膜を形成する。熱処理装置13は単一のキャリアーガラス板Gを加熱する枚葉方式の加熱部で構成しても良いし、複数のキャリアーガラス板Gを一括して加熱するバッチ方式の加熱部で構成しても良い。なお、イミド化には数時間の加熱処理が必要であり、減圧乾燥処理のタクトタイムと、イミド化のための熱処理のタクトタイムとは大きく相違している。そのため、枚葉方式の加熱部で熱処理装置13を構成する場合には、当該加熱部を複数台積層配置して並列処理するのが望ましい。
【0024】
図2は減圧乾燥装置の構成を模式的に示す部分断面図であり、
図3は
図2の減圧乾燥装置の構成を部分的に示す斜視図であり、
図4は
図2の減圧乾燥装置が具備する電気的構成を示す図である。
図2および
図3では、Z方向を鉛直方向とし、X方向およびY方向をそれぞれ水平方向とするXYZ直交座標系を示す。減圧乾燥装置12は、キャリアーガラス板Gの上面G1に塗布液を塗布してなる塗布膜Fに含まれる溶媒成分を気化させて塗布膜Fを乾燥させる装置である。減圧乾燥装置12は、
図4に示すように、装置各部の動作を統括的に制御する制御部2を備える。この制御部2は、CPU(Central Processing Unit)や記憶部等を有するコンピューターで構成される。さらに、減圧乾燥装置12は、
図2に示すように、チャンバー3、支持部4および加熱部5を備える。
【0025】
チャンバー3は、キャリアーガラス板Gに対して減圧乾燥処理(=減圧処理+加熱処理)を行うための処理空間30を有する耐圧容器である。チャンバー3は、互いに接離可能なベース部31と蓋部32とを有する。ベース部31は、装置フレーム(図示省略)上に固定設置されている。ベース部31は、水平に配置された矩形状の底板部311と、底板部311の各辺に沿って延設された壁部312とを有する。壁部312は底板部311の各辺、すなわち周縁部から上方へ垂直に設けられており、底板部311の上面と壁部312の内面とは滑らかな曲面で接続されている。このようにベース部31は、平面視において矩形状の外形を有し、上方へ開口した箱型に形成されている。
【0026】
一方、蓋部32は、水平に配置された矩形状の頂板部321と、頂板部321の各辺に沿って延設された壁部322とを有する。壁部322は頂板部321の各辺、すなわち周縁部から下方へ垂直に設けられており、頂板部321の下面と壁部322の内面とは滑らかな曲面で接続されている。このように蓋部32は、平面視において矩形状の外形を有し、下方へ開口した箱型に形成されている。この蓋部32は、ベース部31の上方に配置され、蓋部32の壁部322はベース部31の壁部312にZ方向から対向する。こうして、Z方向に互いに対向する蓋部32とベース部31との間に処理空間30が形成される。また、チャンバー3は、壁部322の上面に配置されたゴム製のOリング33を有する。そのため、蓋部32の壁部322とベース部31の壁部312とは、Oリング33を介して互いに接触する。
【0027】
また、減圧乾燥装置12はチャンバー3を開閉するために、
図2で概念的に示した開閉駆動部34を備える。この開閉駆動部34は蓋部32をベース部31に対してZ方向に駆動するアクチュエーターであり、制御部2からの昇降指令に応じて開閉駆動部34が動作することで、ベース部31に対して蓋部32がZ方向に昇降する。つまり、制御部2が開閉駆動部34に下降指令を出力すると、開閉駆動部34が蓋部32を下降させる。これによって、蓋部32がOリング33を介してベース部31に押圧され、処理空間30が密閉される。一方、制御部2が開閉駆動部34に上昇指令を出力すると、開閉駆動部34が蓋部32を上昇させる。これによって、蓋部32がベース部31およびOリング33から離間して、処理空間30が開放され、処理空間30に対してキャリアーガラス板Gを搬入あるいは搬出することが可能となる。
【0028】
支持部4は、チャンバー3の処理空間30内にキャリアーガラス板Gを支持するための機構である。支持部4は、複数の支持ピン41と、支持ピン41を支持する支持部材42とを有する。支持部材42はチャンバー3の外側下方に配置され、複数の支持ピン41が支持部材42に立設されている。各支持ピン41は、ベース部31およびホットプレート51を貫通してベース部31の処理空間30に突設されており、各支持ピン41の頭部がキャリアーガラス板Gの下面に当接することで、キャリアーガラス板Gが水平に支持される。なお、支持部4に支持されたキャリアーガラス板G(の塗布膜F)には、蓋部32の頂板部321の下面に形成された平滑な水平面321aが上方から対向する。
【0029】
また、減圧乾燥装置12は支持部4を昇降するために、
図2で概念的に示した昇降駆動部43を備える。この昇降駆動部43は支持部4をZ方向に駆動するアクチュエーターであり、制御部2からの昇降指令に応じて昇降駆動部43が動作することで、支持部4がZ方向に昇降する。つまり、制御部2は、昇降駆動部43を制御することで、支持部4に支持されるキャリアーガラス板Gの高さを調整することができる。具体的には、処理空間30に対するキャリアーガラス板Gの搬入あるいは搬出が実行される際には、制御部2は昇降駆動部43に上昇指令を出力し、支持部4によるキャリアーガラス板Gの支持位置を所定の上昇位置まで上昇させる。一方、処理空間30内に搬入されたキャリアーガラス板Gの塗布膜Fに減圧乾燥処理が実行される際には、制御部2は昇降駆動部43に下降指令を出力し、支持部4に支持されるキャリアーガラス板Gを、上昇位置より低い所定の下降位置まで下降させる。
【0030】
加熱部5は、ベース部31に取り付けられたホットプレート51と、蓋部32に取り付けられたラバーヒーター52とを有する。ホットプレート51は、ベース部31の底板部311の上面に、底板部311との間に隙間Dを空けて水平に取り付けられている。また、ラバーヒーター52は、蓋部32の上面を覆うように配置されている。そして、制御部2は加熱部5に加熱指令を出力することで、ホットプレート51およびラバーヒーター52の発熱によって処理空間30を加熱する。この処理空間30の加熱は、処理空間30へのキャリアーガラス板Gの搬入前から予め継続的に実行されており、処理空間30内に搬入されたキャリアーガラス板Gは、処理空間30内の雰囲気温度により加熱される。これによって、塗布膜Fから溶媒成分が気化する。
【0031】
減圧乾燥装置12は、加熱部5による加熱処理と並行して減圧処理を実行するために、減圧ユニット6を備える。この減圧ユニット6は、排気配管61(減圧機構)と、排気配管61に接続された減圧バルブ62とを有する。排気配管61は、チャンバー3のベース部31の中央に取り付けられて、ベース部31の底板部311から下方に突出する。排気配管61の一端611は底板部311の上面に開口しており、排気配管61はチャンバー3内の処理空間30に連通する。そして、排気配管61の他端612が減圧バルブ62を介して減圧ポンプPに接続されている。減圧ポンプPはさらに排気用力Ue、すなわち減圧乾燥装置12が設置された施設に備えられた排気用の用力設備に接続されている。この減圧ポンプPは基本的に常時稼動しており、制御部2は減圧バルブ62を開閉することで、処理空間30の減圧を実行・停止する。つまり、チャンバー3により処理空間30が密閉された状態で、制御部2が減圧バルブ62に開指令を出力すると、減圧バルブ62が開いて、減圧ポンプPの排気により処理空間30が減圧される。一方、制御部2が減圧バルブ62に閉指令を出力すると、減圧バルブ62が閉じて、処理空間30の減圧が停止される。
【0032】
また、減圧乾燥装置12は、減圧が停止された後の処理空間30の気圧を大気圧に戻すために、給気ユニット7を備える。この給気ユニット7は、複数の給気配管71(給気機構)と、各給気配管71に接続された給気バルブ72とを有する。各給気配管71は、ベース部31の底板部311から下方に突出する。各給気配管71の一端711は、ホットプレート51の下面に対向しつつ底板部311の上面に開口しており、各給気配管71はチャンバー3内の処理空間30に連通する。そして、各給気配管71の他端712が給気バルブ72を介して給気用力Us、すなわち減圧乾燥装置12が設置された施設に備えられた給気用の用力設備に接続されている。ここの例では、給気用力Usは窒素ガスを供給する。そして、制御部2は給気バルブ72を開閉することで、処理空間30への給気を実行・停止する。つまり、制御部2が給気バルブ72に開指令を出力すると、給気バルブ72が開いて、処理空間30に窒素ガスが供給される(ガスパージ)。一方、制御部2が給気バルブ72に閉指令を出力すると、給気バルブ72が閉じて、処理空間30への窒素ガスの供給が停止される。
【0033】
さらに、減圧乾燥装置12は、上述の減圧ユニット6とは別に処理空間30内の気化成分を排気する排気ユニット8を備える。この排気ユニット8は、乾燥処理後の処理空間30内に残存する気化した溶媒成分(気化成分)を処理空間30から排気するために設けられる。この排気ユニット8は、チャンバー3の外側に取り付けられた排気機構80と、排気機構80に接続された流量調整バルブ85とを有する。この排気機構80は、4個の排気ダクト81と各排気ダクト81に設けられた排気配管82とを有する。
【0034】
続いては、
図5を併用して、排気機構80の構成の詳細を説明する。ここで、
図5は排気機構が有する排気ダクトの周辺を拡大した部分断面図である。排気機構80が有する4個の排気ダクト81はベース部31の4辺に一対一で対応して設けられ、各排気ダクト81は対応するベース部31の辺に沿って水平方向に延設されている。
図3に示すように、ベース部31がX方向よりもY方向に長い長方形を有するのに対応して、Y方向に延設された排気ダクト81は、X方向に延設された排気ダクト81よりも長い。
【0035】
排気ダクト81の上面811は、外側(チャンバー3の逆側)へ向かうに連れて下る傾斜面であり、排気ダクト81の外側の側面812はZ方向に平行な垂直面である。排気ダクト81の上部81aは、ベース部31の壁部312より上方に突出し、ベース部31の下部81b(上部81aより下側)は、壁部312の外側の側面に取り付けられている。排気ダクト81の上部81aには、内側(チャンバー3側)を向いて開口813が設けられ、開口813は、排気ダクト81内にZ方向に設けられた中空部814に連通する。
図3に示すように、開口813は、ベース部31の壁部312に沿って水平方向に延設された矩形状を有する。各排気ダクト81には、ベース部31に沿って辺に応じた長さを有する開口813が設けられており、Y方向に延設された長尺の排気ダクト81に形成された開口813は、X方向に延設された短尺の排気ダクト81に形成された開口813よりも長い。
【0036】
ちなみに、
図5の状態では、キャリアーガラス板Gは支持部4によって下降位置に支持されている。そして、排気ダクト81の開口813の位置は、下降位置に位置するキャリアーガラス板Gに対して所定の位置関係を有する。つまり、開口813は下降位置のキャリアーガラス板Gに水平方向から対向しており、換言すれば、キャリアーガラス板Gは、開口813が対向する範囲R、すなわちZ方向における開口813の上端と下端との間の範囲Rに位置する。
【0037】
また、排気機構80は、排気ダクト81の底部から下方に突出する排気配管82を有する。この排気配管82は、各開口813の下方において水平方向に複数並んで設けられている。具体的には、Y方向に延設された長尺の排気ダクト81には3個の排気配管82がY方向に並んで設けられ、X方向に延設された短尺の排気ダクト81には2個の排気配管82がX方向に並んで設けられる。排気配管82の一端821は、排気ダクト81の中空部814に対して開口しており、排気配管82は排気ダクト81の中空部814に連通する。そして、排気配管82の他端822が流量調整バルブ85を介して排気用力Ueに接続されている。なお、制御部2は、流量調整バルブ85を基本的には常時開いている。そのため、排気用力Ueによる排気に伴って、排気ダクト81は開口813から外気を常時吸引する。
【0038】
このように、排気機構80の排気ダクト81は、ベース部31の壁部312から上方へ突出した位置に開口813を有し、開口813から外気を常時吸引する。したがって、チャンバー3が閉じた状態では、開口813はチャンバー3の蓋部32に対向する一方、チャンバー3が開いた状態では、開口813はベース部31と蓋部32との間から開放された処理空間30内の溶媒成分を排気することができる。
【0039】
以上が減圧乾燥装置12の構成の概要である。続いては減圧乾燥装置12が実行する減圧乾燥処理のフローについて説明する。
図6は減圧乾燥処理を示すフローチャートであり、
図7は
図6のフローチャートに従って実行される動作を模式的に示す図である。
図6のフローチャートは制御部2の制御により実行される。なお、このフローチャートの開始前では、減圧バルブ62および給気バルブ72は閉じており、流量調整バルブ85は開いている。
【0040】
ステップS11では、支持部4が下降位置にキャリアーガラス板Gを支持した状態で、蓋部32がベース部31へ向けて下降して、チャンバー3が閉じられる。これによって、蓋部32がOリング33を介してベース部31に当接し、チャンバー3内の処理空間30が閉じられて密閉される。
【0041】
続いて、減圧バルブ62が開いて、減圧ポンプPに連通する排気配管61による処理空間30内の雰囲気の排気が開始される(ステップS12)。これに伴って、処理空間30の圧力が負圧となり、キャリアーガラス板Gの上面G1に形成された塗布膜Fに含まれる溶媒成分の気化が促進される。同時に、加熱部5による加熱によっても、この溶媒成分の気化が促進される。そして、処理空間30の圧力が所定の負圧に到達した時点で、減圧バルブ62が閉じて、処理空間30の排気が終了する。こうして塗布膜Fの乾燥が完了し、塗布膜Fに含まれる溶媒成分が乾燥前の10%〜20%程度にまで減少する(つまり、80%〜90%程度の溶媒成分が気化した状態となる)。
【0042】
ステップS12での減圧が終了すると、給気バルブ72が開いて、給気配管71から処理空間30への窒素ガスの供給が開始される(ステップS13)。この際、
図7のステップS13の欄で、破線矢印で模式的に示すように、給気配管71から処理空間30に供給された窒素ガスの一部の気流Laは、ホットプレート51の下面に衝突して水平方向へ向きを変え、ホットプレート51とベース部31との間の隙間Dに案内されて、ベース部31の周縁部(壁部312)へと向かう。
【0043】
ステップS14では、処理空間30の窒素ガスの供給に伴って、処理空間30の圧力が大気圧以上となったかが判断される。処理空間30の圧力が大気圧未満であると(ステップS14で「NO」)、窒素ガスの供給開始から所定時間が経過したかが判断される(ステップS19)。こうして所定時間内に処理空間30の圧力が大気圧以上とならなければ(ステップS19で「YES」)、アラームを作業者に報知して異常終了する(ステップS20)。一方、所定時間内に処理空間30の圧力が大気圧以上となると(ステップS14で「YES」)、蓋部32が上昇を開始して、処理空間30が開放される(ステップS15)。その結果、蓋部32の壁部322が、ベース部31の壁部312およびOリング33から離れて、蓋部32の壁部322とベース部31の壁部312との間に空間35が形成され、排気ダクト81の開口813がこの空間35に対向する。すなわち、処理空間30を開放する空間35に排気ダクト81の開口813が対向する。したがって、ステップS15以後では、排気ダクト81が開口813から空間35を介して処理空間30を常時吸引し、処理空間30は排気ダクト81によって継続的に排気される。この際、キャリアーガラス板Gは支持部4によって下降位置に支持されており、排気ダクト81の開口813の対向範囲Rに位置する。
【0044】
ちなみに、蓋部32が上昇を開始する前から排気ダクト81は開口813からの吸引を継続的に実行している。したがって、蓋部32が上昇して、蓋部32とベース部31との間に空間35が形成された時点から処理空間30の排気を直ちに開始することができ、処理空間30からの溶媒成分(気化成分)の排出を速やかに実行可能となっている。また、ステップS13で開始された処理空間30への窒素ガスの供給は蓋部32の上昇開始後も継続して実行される。そのため、蓋部32が上昇した後の処理空間30の圧力は若干正圧となっており、これによっても処理空間30からの溶媒成分の排出が促進されている。
【0045】
そして、ステップS16ではチャンバー3が全開になったかが判断される。チャンバー3が全開とならない場合(ステップS16で「NO」の場合)は、アラームを作業者に報知して異常終了する(ステップS20)。一方、チャンバー3が全開になると(ステップS16で「YES」)、給気バルブ72が閉じて、処理空間30への窒素ガスの供給が停止する(ステップS17)。続いて、支持部4がキャリアーガラス板Gを、排気ダクト81よりも上方の上昇位置まで上昇させる(ステップS18)。これによって、搬送ロボット15は、排気ダクト81の上方からキャリアーガラス板Gの下側へ進入して、キャリアーガラス板Gを処理空間30から搬出できる。こうして、
図6のフローチャートが終了する。
【0046】
以上に説明したように本実施形態では、チャンバー3のベース部31と蓋部32とで密閉された処理空間30にキャリアーガラス板Gが支持され、キャリアーガラス板Gの塗布膜Fに対して減圧乾燥処理が実行される。そして、減圧乾燥処理が完了すると、ベース部31に対して蓋部32が離間して、チャンバー3が開かれる。この際、チャンバー3の外側に配置された排気機構80が、ベース部31の壁部312と蓋部32の壁部322との間から処理空間30内の気化成分(溶媒成分)を排気する。したがって、減圧乾燥処理の完了時に処理空間30に残存していた塗布膜Fからの気化成分(溶媒成分)は、排気機構80により処理空間30から排気され、排気用力Ueに収集される。その結果、塗布膜Fから気化した溶媒成分がチャンバー3の外部に飛散するのを抑制しつつ、この溶媒成分をチャンバー3の内部から除去することが可能となっている。
【0047】
また、排気機構80が処理空間30内の溶媒成分を排気するのと並行して、給気配管71が処理空間30に窒素ガスを供給する。そのため、処理空間30に供給される窒素ガスで溶媒成分を置換しつつ、排気機構80による溶媒成分の排気が実行される。したがって、処理空間30からの溶媒成分の除去を速やかに実行できるとともに、溶媒成分を置換した窒素ガスによって処理空間30を清浄に保つことができる。
【0048】
この際、給気配管71は、処理空間30に配置されたホットプレート51とベース部31との間の隙間Dに窒素ガスを供給する。そして、窒素ガスは、隙間Dによってベース部31の壁部312(周縁部)へ向けて案内される。これによって、処理空間30からベース部31の壁部312へ向かう気流が生成され、排気機構80による処理空間30からの溶媒成分の排出を効率的に行うことが可能となっている。
【0049】
特にNMP等のような溶媒成分は、重力によってベース部31の底に滞留しやすい。したがって、ホットプレート51とベース部31との隙間Dに上記の気流を生成する構成は、滞留した溶媒成分を処理空間30から効率的に排出でき、好適である。
【0050】
また、排気機構80は、処理空間30の外側でベース部31の壁部312に沿って延設された開口813を有する。そして、排気機構80は、互いに離間する蓋部32の壁部322とベース部31の壁部312との間を介して、開口813から処理空間30内を吸引する。このように設けられた開口813から処理空間30内を吸引することで、蓋部32の壁部322とベース部31の壁部312との間から排出される溶媒成分がチャンバー3の外部に飛散するのをより確実に抑制しつつ、処理空間30から溶媒成分を排気することができる。
【0051】
また、支持部4は、チャンバー3が開くのに伴ってチャンバー3の排気が排気機構80により開始されてからの所定期間(すなわち、ステップS18を実行するまでの期間)は、排気機構80の開口813に対向する範囲Rにキャリアーガラス板Gを支持する。これによって、処理空間30内の溶媒成分の残存量が比較的多い排気開始時点において、溶媒成分の発生源であるキャリアーガラス板Gの塗布膜Fに開口813を対向させつつ、開口813から処理空間30内の溶媒成分を排気することができる。したがって、溶媒成分がチャンバー3の外部に飛散するのをより確実に抑制しつつ、処理空間30から溶媒成分を排気することができる。
【0052】
また、キャリアーガラス板Gに塗布された塗布膜Fは、ポリイミド前駆体と溶媒とを含む。このような塗布膜Fは、例えばフォトレジストの膜と比較して多くの溶媒を含む傾向にある。そのため、上記の排気機構80を備える減圧乾燥装置12を用いることで、気化した溶媒成分がチャンバー3の外部に飛散するのを抑制しつつ、この溶媒成分をチャンバー3の内部から除去することが特に好適となる。
【0053】
また、排気機構80の排気ダクト81の上面811は、外側へ向かって下る傾斜面である。このように排気ダクト81の上面811を傾斜させた場合、上方から排気ダクト81の上面811に当たる気流は、この排気ダクト81の上面811の傾斜に沿って緩やかに曲がりながら、排気ダクト81の側面812に沿って下方へ向かう。したがって、ダウンフローが生成されたクリーンルーム等にこの減圧乾燥装置12を設置しても、ダウンフローが排気機構80の排気ダクト81により乱されるのを抑えることができる。
【0054】
また、蓋部32は、支持部4に支持されたキャリアーガラス板Gに対向する範囲に水平面321aを有する。これによって、キャリアーガラス板Gに塗布された塗布膜Fに乾燥ムラが生じるのを抑えることができる。さらに言えば、排気機構80を例えば蓋部32を介して処理空間30に連通させるのではなく、チャンバー3の外側に配置しているからこそ、当該構成を採用することが可能となっている。
【0055】
このように本実施形態では、減圧乾燥装置12が本発明の「減圧乾燥装置」の一例に相当し、支持部4が本発明の「支持部」の一例に相当し、チャンバー3が本発明の「基板収容部」の一例に相当し、蓋部32が本発明の「第1カバー部」の一例に相当し、ベース部31およびOリング33が本発明の「第2カバー部」の一例を構成し、蓋部32の壁部322が本発明の「第1カバー部の周縁部」の一例に相当し、ベース部31の壁部312が本発明の「第2カバー部の周縁部」の一例に相当し、開閉駆動部34が本発明の「接離駆動部」の一例に相当し、排気配管61が本発明の「減圧機構」の一例に相当し、排気機構80が本発明の「排気機構」の一例に相当し(なお、排気機構80は排気用力Ueを含まない)、排気ダクト81が本発明の「ダクト」の一例に相当し、開口813が本発明の「開口」の一例に相当し、排気ダクト81の上面811が本発明の「ダクトの上面」の一例に相当し、複数の給気配管71が本発明の「給気機構」の一例に相当し、ホットプレート51が本発明の「ホットプレート」の一例に相当し、隙間Dが本発明の「隙間」の一例に相当し、キャリアーガラス板Gが本発明の「基板」の一例に相当し、塗布膜Fが本発明の「膜」の一例に相当し、窒素ガスが本発明の「気体」の一例に相当する。
【0056】
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば、上記の実施形態では、1台の減圧乾燥装置12が設けられていた。しかしながら、複数台の減圧乾燥装置12により減圧乾燥システムSを構成しても良い。かかる減圧乾燥システムSでは、減圧乾燥装置12が上記の排気機構80を備えているため、塗布膜Fから気化した溶媒成分がチャンバー3の外部に飛散するのを抑制しつつ、この溶媒成分をチャンバー3の内部から除去することが可能となる。この際、減圧乾燥システムSの具体的構成は種々の変形が可能である。
【0057】
図8は減圧乾燥システムの第1例を備えたポリイミド膜製造ラインの一例を模式的に示す図である。同図のポリイミド膜製造ライン1が備える減圧乾燥システムSは、直列に配列された2台の減圧乾燥装置12と、2台の減圧乾燥装置12の間でキャリアーガラス板Gを搬送する搬送ロボット16とを有する。2台の減圧乾燥装置12はいずれも、上述の減圧乾燥装置12と同一の構成を備える。
【0058】
減圧乾燥システムSは、搬送ロボット14により塗布装置11から搬送されてきたキャリアーガラス板Gに対して前段(
図8左側)の減圧乾燥装置12により減圧乾燥処理を行う。続いて、減圧乾燥システムSは、前段の減圧乾燥装置12での減圧乾燥処理が完了したキャリアーガラス板Gを搬送ロボット16により後段(
図8右側)の減圧乾燥装置12に搬送し、後段の減圧乾燥装置12によりキャリアーガラス板Gの減圧乾燥処理を実行する。なお、前段の減圧乾燥装置12と後段の減圧乾燥装置12とは、加熱部5による加熱処理を異なる温度で実行し、前段の減圧乾燥装置12での加熱処理の温度は、後段の減圧乾燥装置12の加熱処理の温度よりも低い。こうして、加熱処理の前半において加熱温度を低くすることで、加熱処理の初期に生じやすい塗布膜Fの乾燥ムラや膜破れを抑えるとともに、加熱処理の後半において加熱温度を高くすることで、減圧乾燥処理に要する時間の短縮を図っている。
【0059】
このように、第1例の減圧乾燥システムSは、2台の減圧乾燥装置12が同一のキャリアーガラス板Gに対して順番に減圧乾燥処理を行う。この際、前段の減圧乾燥装置12のチャンバー3の内部では、多くの溶媒成分が残存する。これに対して、減圧乾燥装置12は上述の排気機構80を装備しているため、チャンバー3の内部に残存する多くの溶媒成分を、外部への飛散を抑制しつつ除去することができる。その結果、後段の減圧乾燥装置12が溶媒成分で汚染されるのを抑制できる。
【0060】
図9は減圧乾燥システムの第2例を備えたポリイミド膜製造ラインの一例を模式的に示す図である。同図のポリイミド膜製造ライン1が備える減圧乾燥システムSは、並列に配列された2台の減圧乾燥装置12を有する。2台の減圧乾燥装置12はいずれも、上述の減圧乾燥装置12と同一の構成を備え、鉛直方向に並んで配置されている。
【0061】
減圧乾燥システムSは、搬送ロボット14により塗布装置11から搬送されてきたキャリアーガラス板Gを、2台の減圧乾燥装置12のうち、キャリアーガラス板Gが不在の一方の減圧乾燥装置12に受け取って、この減圧乾燥装置12により減圧乾燥処理を実行する。そして、この減圧乾燥装置12での減圧乾燥処理が完了したキャリアーガラス板Gは、搬送ロボット15によって熱処理装置13へ搬送される。
【0062】
このように、2台の減圧乾燥装置12が鉛直方向に並んで配置されている場合、各減圧乾燥装置12のチャンバー3から外部へ溶媒成分が飛散すると、この溶媒成分が下に滞留して、下側の減圧乾燥装置12が汚染されるおそれがあった。これに対して、各減圧乾燥装置12は上述の排気機構80を装備しているため、チャンバー3の内部に残存する多くの溶媒成分を、外部への飛散を抑制しつつ除去することができる。その結果、下側に配置された減圧乾燥装置12が溶媒成分で汚染されるのを抑制できる。
【0063】
さらに、減圧乾燥装置12の具体的構成についても種々の変更が可能である。例えば、チャンバー3のベース部31は、上方へ開口した箱型に形成されていた。しかしながら、壁部312を設けずに、ベース部31を平板形状に形成しても構わない。この場合であっても、蓋部32およびベース部31それぞれの周縁部の間(すなわち、空間35)から排気機構80により処理空間30内の溶媒成分を排気することで、チャンバー3の内部に残存する溶媒成分を、外部への飛散を抑制しつつ除去することができる。
【0064】
また、その他の変形をチャンバー3に対して行うこともできる。例えば、蓋部32を昇降させることでチャンバー3を開閉していた。しかしながら、ベース部31を昇降させることでチャンバー3を開閉しても構わない。
【0065】
また、排気ダクト81の形状や取り付け位置についても適宜変更が可能であり、例えば排気ダクト81を蓋部32に取り付けても良い。この場合、排気ダクト81を上下反転させて蓋部32に取り付けて、蓋部32およびベース部31それぞれの周縁部の間に、排気ダクト81の開口813を対向させても良い。
【0066】
また、下降位置におけるキャリアーガラス板Gと排気ダクト81の開口813との位置関係も上述の例に限られない。つまり、キャリアーガラス板Gと開口813とが対向していなくても、排気ダクト81により処理空間30内の溶媒成分を排気することで、チャンバー3の内部に残存する溶媒成分を、外部への飛散を抑制しつつ除去することは可能である。
【0067】
また、互いに離間する蓋部32とベース部31との間の空間35と、開口813との位置関係も適宜変更可能である。例えば、開口813を上方へ向けて形成し、蓋部32の壁部322の上面と面一に設けても良い。
【0068】
また、排気ダクト81をベース部31の各辺に設ける必要は必ずしも無い。
【0069】
また、チャンバー3の外形は上記の例に限られず、例えば平面視において円形を有しても良い。この場合、排気機構80の形状も、チャンバー3に応じて円形にしても良い。
【0070】
また、減圧乾燥処理の完了後にキャリアーガラス板Gを上昇させるタイミングも、上記の例に限られない。したがって、蓋部32の上昇に連動してキャリアーガラス板Gを上昇させても良い。
【0071】
また、排気機構80は開口813から外気を常時吸引していた。しかしながら、ベース部31が開いている間だけ排気機構80による吸引を実行するように構成しても良い。
【0072】
また、給気配管71から処理空間30に供給する気体は窒素ガスに限られない。したがって、処理空間30に空気等の他の気体を供給しても良い。
【0073】
また、キャリアーガラス板Gの搬送には搬送ロボットが用いられている。しかしながら、その他の搬送方式、例えばコンベア方式の搬送ユニットによりキャリアーガラス板Gを搬送しても良い。
【0074】
また、上記実施形態では、キャリアーガラス板Gを本発明の「基板」として用いているが、これ以外の平板状部材を「基板」として用いてもよい。
【0075】
また、減圧乾燥装置12による減圧乾燥処理の対象は、ポリイミド前駆体と溶媒とを含む塗布膜Fに限られず、例えばレジストの薄膜でも良い。