(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の一実施の形態に係る電動義手について図面を参照しつつ説明する。
【0022】
[1]第1の実施の形態
(1)電動義手の概略構成
図1は第1の実施の形態に係る電動義手の平面図であり、
図2は
図1の電動義手1の側面図である。本実施の形態に係る電動義手1は、右手に相当する。
図1および
図2に示すように、電動義手1は、義手本体部100、手首部材190、牽引装置200、装着部材300、制御装置400、カバー部材500、パルス信号発生部900、電源装置BT、第1の筋電センサS1および第2の筋電センサS2を含む。
【0023】
装着部材300は、腕(本例では右腕)hbに装着可能に構成される。本例の装着部材300は、一方向に延びる略筒形状を有し、合成樹脂により形成される。装着部材300の内部には、制御装置400、パルス信号発生部900、電源装置BT、第1の筋電センサS1および第2の筋電センサS2が収容される。
【0024】
第1の筋電センサS1および第2の筋電センサS2は、装着部材300が腕hbに装着された状態で、第1の筋電信号および第2の筋電信号を検出可能に設けられる。第1の筋電信号および第2の筋電信号は互いに異なる。例えば、第1の筋電センサS1は、使用者の右腕における屈筋の筋電信号を第1の筋電信号として検出する。また、第2の筋電センサS2は、使用者の右腕における伸筋の筋電信号を第2の筋電信号として検出する。
【0025】
制御装置400は、第1の筋電センサS1および第2の筋電センサS2による第1の筋電信号および第2の筋電信号の検出に基づいて、パルス信号発生部900を制御する。電源装置BTは、例えば充放電可能なバッテリを含み、バッテリに蓄積された電力を牽引装置200、制御装置400およびパルス信号発生部900に供給する。パルス信号発生部900は、制御装置400の制御に基づいて牽引装置200にパルス信号を与える。
【0026】
装着部材300の先端に牽引装置200、手首部材190および義手本体部100がこの順で設けられる。牽引装置200が駆動されることにより、義手本体部100が動作する。義手本体部100および牽引装置200の詳細は後述する。
【0027】
図1に示すように、義手本体部100と手首部材190とは、接続軸191を介して接続される。義手本体部100は、手掌板120を含む。手首部材190は、
図1に太い矢印R1で示すように、義手本体部100を手掌板120に垂直な接続軸191の周りで揺動可能に支持する。また、
図2に示すように、手首部材190と牽引装置200とは、接続軸192を介して接続される。牽引装置200は、
図2に太い矢印R2で示すように、義手本体部100を手掌板120に平行な接続軸192の周りで揺動可能に支持する。
【0028】
義手本体部100、牽引装置200および装着部材300を覆うようにカバー部材500が設けられる。
図1および
図2では、電動義手1の内部構造の理解を容易にするために、カバー部材500の内部に設けられる部材が実線で示され、カバー部材500が一点鎖線で示される。
【0029】
カバー部材500は、ゴム(例えばシリコンゴム)または弾性樹脂(例えばポリ塩化ビニル)等の弾性力を有する材料からなる。カバー部材500は、健常手の外観を模して作製される。それにより、使用者は、視覚的な違和感を覚えることなく電動義手1を腕hbに装着することができる。
【0030】
(2)義手本体部の構成および基本動作
図3は
図1の義手本体部100の平面図であり、
図4は
図3の義手本体部100の側面図である。義手本体部100は、手掌部10、非可動義指20および4つの義指30を含む。手掌部10は、上記の手掌板120に加えて、手掌板110、線材連結部材130および支持軸140を含む。手掌板110,120は、一定の間隔をおいて互いに対向するように配置される。手掌板110は手掌部10の手のひら側(内側)部分を構成し、手掌板120は手掌部10の手の甲側(外側)部分を構成する。
【0031】
以下の説明では、義手本体部100、手首部材190および牽引装置200が並ぶ方向を電動義手1の前後方向と呼ぶ。また、牽引装置200から義手本体部100へ向かう方向を前方と呼び、義手本体部100から牽引装置200へ向かう方向を後方と呼ぶ。
【0032】
手掌板110は前端部f1および後端部b1を有する。後端部b1の中央部分から後方に突出するように、突出部bp1が設けられている。手掌板120は前端部f2および後端部b2を有する。後端部b2の中央部分から後方に突出するように、突出部bp2が設けられている。手掌板110,120の突出部bp1,bp2は互いに対向する。突出部bp1,bp2には、
図1の接続軸191が取り付けられる。
【0033】
手掌板110,120の間には、帯形状を有する線材連結部材130が前後方向に移動可能に設けられる。線材連結部材130には、複数の貫通孔(本例では3つの貫通孔)k1,k2,k3が形成されている。複数の貫通孔k1,k2,k3は、線材連結部材130の一端部から他端部に向かってこの順で並ぶ。複数の貫通孔k1,k2,k3のうち中央に位置する貫通孔k2には、
図1の牽引装置200から延びる線材W1の先端が取り付けられる。一方、貫通孔k1には、後述する共通線材W23が挿通される。他方、貫通孔k3には、後述する共通線材W45が挿通される。本実施の形態においては、線材W1および共通線材W23,W45として例えばテグス糸、樹脂製の線材または金属製の線材を用いることができる。
【0034】
手掌部10の一側部には、手掌板110,120の間で前後方向に延びるように支持軸140が設けられる。支持軸140は、手掌板110,120をつなぐ連結部材Qにより固定される。
【0035】
非可動義指20は、支持片21および骨部材22を含み、第1指として機能する。支持片21は、支持軸140に取り付けられる。支持片21は、骨部材22を支持するとともに、支持軸140の軸心周りで回転可能に支持軸140により支持される。
【0036】
4つの義指30は、前後方向の長さが異なる点を除いて基本的に同じ構成を有し、第2指〜第5指として機能する。各義指30は、支持片31、2つの骨部材32,33および線材Wを含む。4つの支持片31は、手掌部10の一側部から他側部に向かってこの順で並ぶように配置される。各支持片31は、手掌板110,120の前端部f1,f2に挟み込まれた状態で、手掌板110,120に接続される。支持片31と骨部材32の一端部とがピンp1により連結される。骨部材32の他端部と骨部材33の一端部とがピンp2により連結される。
【0037】
骨部材33の略中央部には、線材Wの先端を固定するための固定部jが設けられる。本例の固定部jは、2つの貫通孔により構成される。この場合、2つの貫通孔に線材Wを挿通するとともに線材Wの先端を結ぶことにより、線材Wの先端が固定部jに固定される。骨部材32には、線材Wが骨部材33の固定部jから手掌部10側に向かうように、線材Wを摺動可能に案内する案内部gが設けられる。本例の案内部gは、ヒートンねじにより構成される。なお、案内部gは、骨部材32の一部で構成されてもよい。例えば、骨部材32の一部に線材Wを挿通可能な貫通孔を形成することにより、その貫通孔を案内部gとしてもよい。
【0038】
手掌部10の手掌板110には、4つの義指30にそれぞれ対応する4つの長孔hが形成されている。4つの長孔hは、対応する支持片31の近傍にそれぞれ位置する。4つの長孔hには、骨部材33の固定部jから骨部材32の案内部gを通して案内される線材Wが挿通される。
【0039】
4つの義指30のうち手掌部10の一側部に近い2つの義指30の線材Wは、互いの後端が連続してつながるように1本の共通線材W23により構成される。共通線材W23の略中央部が、手掌板110,120の間で線材連結部材130の貫通孔k1に摺動可能に挿通される。また、4つの義指30のうち手掌部10の他側部に近い2つの義指30の線材Wは、互いの後端が連続してつながるように1本の共通線材W45により構成される。共通線材W45の略中央部が、手掌板110,120の間で線材連結部材130の貫通孔k3に摺動可能に挿通される。
【0040】
図1の牽引装置200は、
図1の第1の筋電センサS1により第1の筋電信号が検出されたときに、線材連結部材130の貫通孔k2に取り付けられた線材W1を後方に牽引する。この場合、線材連結部材130が後方に移動することにより、その線材連結部材130の貫通孔k1,k3に挿通された共通線材W23,W45(4つの義指30の線材W)が後方に牽引される。このとき、各義指30では、骨部材33の固定部jに骨部材32の案内部gへ向かう力が発生する。この力に基づいて、骨部材33がピンp2の軸心を支点として手掌部10の内側に向かって屈曲する。また、骨部材32の案内部gに手掌部10に向かう力が発生する。この力に基づいて、骨部材32がピンp1の軸心を支点として手掌部10の内側に向かって屈曲する。このようにして、電動義手1による物体の把持動作が行われる。
【0041】
一方、
図1の第2の筋電センサS2により第2の筋電信号が検出されたときには、
図1の牽引装置200は線材連結部材130の貫通孔k2に取り付けられた線材W1を前方に繰り出す。
図1のカバー部材500は弾性力を有する材料からなるので、カバー部材500は復元力を有する。そのため、カバー部材500の復元力が4つの義指30の線材Wに作用することにより、線材連結部材130には前方に向く力が作用している。したがって、4つの義指30が屈曲した状態で牽引装置200から線材W1が繰り出されると、線材連結部材130が前方に移動し、4つの義指30が伸展する。このようにして、電動義手1から物体を放す動作が行われる。
【0042】
上記の支持片21,31、骨部材22,32,33、手掌板110,120、線材連結部材130および連結部材Qは、例えば一定の厚み(3mm程度)を有する樹脂製または金属製の板状部材を切り抜くことにより作製される。
【0043】
(3)牽引装置の構成
図5(a)は第1の実施の形態係る牽引装置200の動作状態の一例を示す外観斜視図であり、
図5(b)は第1の実施の形態係る牽引装置200の動作状態の他の例を示す外観斜視図である。
図5(a),(b)では、牽引装置200の構成が理解しやすいように、牽引装置200のうち一部の構成(後述する上板232)が点線で示される。
【0044】
図5(a),(b)に示すように、牽引装置200は、支持部材220および直動型ステッピングモータ250を含む。支持部材220は、側板221,222、底板231、上板232、後部板223、固定板241,242および回転規制板260を含み、直動型ステッピングモータ250を支持する。支持部材220を構成する各部材は、手掌板110等と同様に、例えば樹脂製または金属製の板状部材を切り抜くことにより作製される。直動型ステッピングモータ250は、軸251および本体部252を含む。なお、本体部252は、ロータ、ステータ、ハウジング、後述する駆動回路253(
図6)および後述する電流検出回路254(
図6)を含む。
本体部252のロータおよびステータは、本発明の動作部の例である。
【0045】
底板231および上板232は同一形状を有する。底板231および上板232は、前後方向に延びるとともに一定の間隔をおいて互いに対向するように配置される。底板231および上板232の前端部近傍の両側部をつなぐように一対の側板221,222が設けられる。側板221,222には、
図2の接続軸192を介して手首部材190が接続される。底板231および上板232の後端部近傍をつなぐように後部板223が設けられる。
【0046】
底板231と上板232との間で、前後方向に間隔をおいて並ぶようにかつ互いに対向するように固定板241,242が設けられている。固定板241,242の間には、直動型ステッピングモータ250の軸251が、前後方向に延びるようにかつ支持部材220に対して前後方向に移動不可能に固定される。この状態で、直動型ステッピングモータ250の本体部252は、支持部材220に対して前後方向に移動可能である。
【0047】
本体部252の前端部には、回転規制板260が取り付けられている。回転規制板260の中央部には貫通孔が形成されている。回転規制板260の貫通孔に直動型ステッピングモータ250の軸251が挿通されている。
【0048】
前後方向に直交しかつ上板232に平行な方向において、回転規制板260の寸法は底板231および上板232の寸法よりも大きい。それにより、回転規制板260は、底板231および上板232のうち少なくとも一方に接触することにより、本体部252のうちロータを除く部分の回転を規制する。
【0049】
回転規制板260には、線材接続部nが設けられている。線材接続部nには
図3の線材W1の後端が接続される。線材接続部nは、例えばヒートンねじにより構成される。なお、線材接続部nは、回転規制板260の一部で構成されてもよい。例えば、回転規制板260に線材W1を締結可能な貫通孔を形成することにより、その貫通孔を線材接続部nとしてもよい。
【0050】
牽引装置200の駆動時には、パルス信号発生部900から直動型ステッピングモータ250に後述する第1のパルス信号または第2のパルス信号が与えられる。それにより、本体部252が支持部材220に対して前後方向に移動する。
【0051】
具体的には、物体を把持するために線材W1が後方に牽引される際には、
図5(a)に示すように、直動型ステッピングモータ250の本体部252が後方の固定板242の近傍まで移動する。一方、保持された物体を放すために線材W1が前方に繰り出される際には、
図5(b)に示すように、直動型ステッピングモータ250の本体部252が側板221,222の近傍まで移動する。
【0052】
(4)電動義手の制御系
図6は、電動義手1の制御系のブロック図である。
図6に示すように、制御装置400は、制御部410および記憶部460を含む。また、直動型ステッピングモータ250は、駆動回路253および電流検出回路254を含む。駆動回路253は、外部から与えられるパルス信号に基づいてステータに電流を供給する。電流検出回路254は、駆動回路253からステータに流れる駆動電流の電流値を検出する。
【0053】
制御装置400の制御部410は例えばCPU(中央演算処理装置)およびRAM(ランダムアクセスメモリ)で構成され、記憶部460は例えばROM(リードオンリメモリ)で構成される。なお、制御部410および記憶部460は、マイクロコンピュータで構成されてもよい。
【0054】
記憶部460には、パルス信号発生部900を制御するための制御プログラムおよび種々の情報が記憶される。制御部410は、筋電信号取得部420、屈曲制御部430、位置検出部440および接触検出部450を含む。これら各部の機能は、制御部410が記憶部460に記憶された制御プログラムを実行することにより実現される。
【0055】
筋電信号取得部420は、第1の筋電センサS1により検出される第1の筋電信号と第2の筋電センサS2により検出される第2の筋電信号とを取得する。なお、第1の筋電信号および第2の筋電信号は、同時に検出されることはないものとする。
【0056】
屈曲制御部430は、取得された第1の筋電信号または第2の筋電信号に基づいてパルス信号発生部900を制御する。例えば、屈曲制御部430は、第1の筋電信号が取得された場合に、第1の筋電信号に対応する第1のパルス信号を出力するようにパルス信号発生部900を制御する。それにより、パルス信号発生部900から直動型ステッピングモータ250の駆動回路253に第1のパルス信号が与えられる。この場合、直動型ステッピングモータ250の本体部252が軸251に対して後方に移動する。
【0057】
一方、屈曲制御部430は、第2の筋電信号が取得された場合に、第2の筋電信号に対応する第2のパルス信号を出力するようにパルス信号発生部900を制御する。それにより、パルス信号発生部900から直動型ステッピングモータ250の駆動回路253に第2のパルス信号が与えられる。この場合、直動型ステッピングモータ250の本体部252が軸251に対して前方に移動する。
【0058】
他方、屈曲制御部430は、第1の筋電信号および第2の筋電信号のいずれもが取得されない場合に、第1のパルス信号および第2のパルス信号のいずれも出力しないようにパルス信号発生部900を制御する。
【0059】
位置検出部440は、パルス信号発生部900から直動型ステッピングモータ250に与えられる第1のパルス信号および第2のパルス信号のパルス数を計数し、計数値に基づいて軸251上の本体部252の位置を検出する。
【0060】
記憶部460には、軸251上での本体部252の移動可能範囲を規定する前方限界位置と後方限界位置とが予め記憶されている。前方限界位置は軸251の前端部近傍に設定され、後方限界位置は軸251の後端部近傍に設定される。
【0061】
屈曲制御部430は、第1の筋電信号の取得時に本体部252が後方限界位置に到達すると、第1のパルス信号および第2のパルス信号のいずれも出力しないようにパルス信号発生部900を制御する。また、屈曲制御部430は、第2の筋電信号の取得時に本体部252が前方限界位置に到達すると、第1のパルス信号および第2のパルス信号のいずれも出力しないようにパルス信号発生部900を制御する。その結果、本体部252が移動可能範囲から外れることが防止される。
【0062】
駆動回路253からステータに流れる駆動電流の電流値は、直動型ステッピングモータ250で発生される推力に対する反力が直動型ステッピングモータ250に作用することにより変動する。そこで、直動型ステッピングモータ250の電流検出回路254は、検出される駆動電流の電流値を接触検出部450に与える。この場合、接触検出部450は、第1の筋電信号の取得時に、電流検出回路254から与えられる電流値に基づいて、4つの義指30のいずれかと物体との接触を検出する。屈曲制御部430は、第1の筋電信号の取得時において接触検出部450により義指30と物体との接触が検出された場合に、義指30が物体に接触する前よりも低下するように第1のパルス信号の周波数を変化させる。
【0063】
ここで、直動型ステッピングモータ250に与えられるパルス信号の周波数が低下すると、直動型ステッピングモータ250の推力が増加する。そのため、上記の構成によれば、義指30の屈曲中に義指30が物体に接触することにより、義指30の屈曲速度が低下するとともに義指30による物体の把持力が増加する。
【0064】
図7に示される筋電信号取得部420、屈曲制御部430、位置検出部440および接触検出部450の一部または全部の機能は、制御部410および制御プログラムに限らず、電子回路等のハードウェアにより実現されてもよい。また、上記の例では、パルス信号発生部900から直動型ステッピングモータ250に第1のパルス信号および第2のパルス信号が出力されるが、制御装置400の制御部410が、直動型ステッピングモータ250に第1のパルス信号および第2のパルス信号を出力してもよい。
【0065】
(5)制御装置の動作
図7は、
図1の制御装置400において実行される一連の処理の一例を示すフローチャートである。
図7の一連の処理は、電動義手1の電源がオン状態にあるときに一定周期で実行される。
【0066】
まず、
図6の制御部410は、第1の筋電信号が取得されたか否かを判定する(ステップS11)。第1の筋電信号を取得した場合、制御部410は、第1のパルス信号および第2のパルス信号のパルス数の計数値に基づいて軸251上の本体部252の位置を検出する(ステップS12)。
【0067】
次に、制御部410は、牽引装置200により線材W1を牽引することが可能であるか否かを判定する(ステップS13)。具体的には、制御部410は、検出された本体部252の位置に基づいて、本体部252が後方限界位置にない場合に線材W1を牽引することが可能であると判定する。一方、制御部410は、本体部252が後方限界位置にある場合に線材W1を牽引することが不可能であると判定する。制御部410は、牽引が不可能である場合、後述するステップS31の処理に進む。
【0068】
制御部410は、牽引が可能である場合、4つの義指30のいずれかと物体とが接触しているか否かを判定する(ステップS14)。この判定処理は、直動型ステッピングモータ250の駆動電流に基づいて4つの義指30のいずれかと物体との接触を検出することにより行われる。制御部410は、義指30と物体とが接触していないと判定した場合、予め定められた第1の周波数で第1のパルス信号を出力するようにパルス信号発生部900を制御し(ステップS15)、ステップS11の処理に戻る。一方、制御部410は、義指30と物体とが接触していると判定した場合、第1の周波数よりも低い第2の周波数で第1のパルス信号を出力するようにパルス信号発生部900を制御し(ステップS16)、ステップS11の処理に戻る。
【0069】
上記のステップS11において、第1の筋電信号を取得していない場合、制御部410は、第2の筋電信号が取得されたか否かを判定する(ステップS21)。第2の筋電信号を取得した場合、制御部410は、ステップS12の処理と同様に、軸251上の本体部252の位置を検出する(ステップS22)。
【0070】
次に、制御部410は、牽引装置200により線材W1を繰り出すことが可能であるか否かを判定する(ステップS23)。具体的には、制御部410は、検出された本体部252の位置に基づいて、本体部252が前方限界位置にない場合に線材W1を繰り出すことが可能であると判定する。一方、制御部410は、本体部252が前方限界位置にある場合に線材W1を繰り出すことが不可能であると判定する。制御部410は、繰り出しが不可能である場合、後述するステップS31の処理に進む。
【0071】
制御部410は、繰り出しが可能である場合、予め定められた一定の周波数で第2のパルス信号を出力するようにパルス信号発生部900を制御し(ステップS24)、ステップS11の処理に戻る。
【0072】
ステップS13において牽引が不可能である場合、ステップS21において第2の筋電信号を取得していない場合、およびステップS23において繰り出しが不可能である場合、制御部410は、第1のパルス信号および第2のパルス信号を出力しないようにパルス信号発生部900を制御し(ステップS31)、一連の処理を終了する。
【0073】
直動型ステッピングモータ250においては、駆動回路253からステータに電流が供給されないときに軸251と本体部252との相対的な位置を保持するための保持力(推力)が作用する。そのため、義指30の屈曲状態を保持させる際に電流の供給が不要である。そこで、
図7の例では、ステップS31の処理により、義指30が屈曲または伸展する場合を除いて直動型ステッピングモータ250に電流が供給されない。
【0074】
(6)効果
上記の電動義手1においては、直動型ステッピングモータ250の軸251が支持部材220に対して相対的に移動せず、直動型ステッピングモータ250の本体部252が支持部材220に対して相対的に移動する。本体部252の移動により線材W1が牽引され、4つの義指30が屈曲する。このように、直動型ステッピングモータ250が用いられることにより、直動型ステッピングモータ250と線材W1との間に、ウォームおよびウォームギア等の動力の向きを変更するための部材を設ける必要がない。それにより、構成が単純化されるとともに部品点数が削減される。したがって、電動義手1の低コスト化および軽量化が可能となる。
【0075】
また、上記の例では、義指30が屈曲または伸展する場合を除いて直動型ステッピングモータ250に電流が供給されない。したがって、電動義手1の消費電力および発熱が低減される。
【0076】
また、義指30の屈曲時に直動型ステッピングモータ250の本体部252が後方に移動するので、電動義手1の重心が4つの義指30よりも腕hbに近づく。それにより、使用者が電動義手1により把持した物体を持ち上げやすくなる。
【0077】
さらに、上記の電動義手1においては、使用者が電動義手1により物体を把持する際に、義指30と物体との接触が検出された場合に、義指30が物体に接触する前よりも低下するように直動型ステッピングモータ250に与えられる第1のパルス信号の周波数が変化する。この場合、使用者が電動義手1により物体を把持する際に義指30が物体に接触することにより、義指30の屈曲速度が低下するとともに義指30による物体の把持力が増加する。したがって、使用者は、電動義手1により健常手に近い感覚で物体を把持することができる。
【0078】
[2]第2の実施の形態
第2の実施の形態に係る電動義手は、牽引装置の構成が第1の実施の形態に係る電動義手1とは異なる。第2の実施の形態に係る牽引装置について、第1の実施の形態に係る牽引装置200と異なる部分を図面を参照しつつ説明する。
【0079】
(1)牽引装置の構成
図8(a)は第2の実施の形態に係る牽引装置の動作状態の一例を示す外観斜視図であり、
図8(b)は第2の実施の形態に係る牽引装置の動作状態の他の例を示す外観斜視図である。
図8(a),(b)では、牽引装置200Xの構成が理解しやすいように、牽引装置200Xのうち上板232Xが点線で示される。
【0080】
図8(a),(b)に示すように、牽引装置200Xは、支持部材220Xおよび直動型ステッピングモータ250を含む。支持部材220Xは、側板221,222、底板231X、上板232X、後部板223Xおよび移動支持板270を含み、直動型ステッピングモータ250を支持する。
【0081】
底板231Xおよび上板232Xは、前後方向に延びるとともに一定の間隔をおいて互いに対向するように配置される。底板231Xおよび上板232Xの中央部分には、前後方向に延びる矩形のガイド孔231g,232gがそれぞれ形成されている。底板231Xおよび上板232Xの前端部近傍の両側部をつなぐように一対の側板221,222が設けられる。ガイド孔231g,232gのわずかに後方の位置で、底板231Xおよび上板232Xをつなぐように後部板223Xが設けられる。後部板223Xの中央部には貫通孔が形成されている。
【0082】
後部板223Xの貫通孔に直動型ステッピングモータ250の軸251が挿通され、後部板223Xに直動型ステッピングモータ250の本体部252が接続される。後部板223Xにより、直動型ステッピングモータ250の本体部252が、支持部材220Xに対して前後方向に移動不可能に固定される。この状態で、直動型ステッピングモータ250の軸251は、支持部材220Xに対して前後方向に移動可能である。
【0083】
軸251の前端部には、後部板223Xに対向するように略矩形の移動支持板270が設けられている。移動支持板270は、軸251の前端部を底板231Xと上板232Xとの間の中間位置に支持しつつ、軸251とともに前後方向に移動可能に構成される。
移動支持板270は、本発明の移動支持板の例である。
【0084】
移動支持板270には、底板231Xおよび上板232Xのガイド孔231g,232gにそれぞれ対応する一対の突起部271が形成されている。一対の突起部271は、ガイド孔231g,232gにそれぞれ挿入されている。移動支持板270には、さらに線材接続部nが設けられている。
【0085】
牽引装置200Xの駆動時には、パルス信号発生部900から直動型ステッピングモータ250に第1のパルス信号または第2のパルス信号が与えられる。それにより、軸251が支持部材220Xに対して前後方向に移動する。
【0086】
具体的には、物体を把持するために線材W1が後方に牽引される際には、
図8(a)に示すように、移動支持板270が直動型ステッピングモータ250の軸251の移動とともに後部板223Xの近傍まで移動する。一方、保持された物体を放すために線材W1が前方に繰り出される際には、
図8(b)に示すように、移動支持板270が直動型ステッピングモータ250の軸251の移動とともに側板221,222の近傍まで移動する。
【0087】
本実施の形態に係る電動義手1においても、制御装置400により
図7の例と同様の一連の処理が実行される。なお、本例では、
図7のステップS15,S16において、第1のパルス信号に代えて第2のパルス信号が出力されるようにパルス信号発生部900が制御される。また、
図7のステップS24において、第2のパルス信号に代えて第1のパルス信号が出力されるようにパルス信号発生部900が制御される。
【0088】
さらに、
図7のステップS13において、制御部410は、本体部252が前方限界位置にない場合に線材W1を牽引することが可能であると判定する。一方、制御部410は、本体部252が前方限界位置にある場合に線材W1を牽引することが不可能であると判定する。また、
図7のステップS23において、制御部410は、本体部252が後方限界位置にない場合に線材W1を繰り出すことが可能であると判定する。一方、制御部410は、本体部252が後方限界位置にある場合に線材W1を繰り出すことが不可能であると判定する。
【0089】
(2)効果
上記の電動義手1においては、直動型ステッピングモータ250の本体部252が支持部材220Xに対して相対的に移動せず、直動型ステッピングモータ250の軸251が支持部材220Xに対して相対的に移動する。軸251の移動により線材W1が牽引され、4つの義指30が屈曲する。この場合、直動型ステッピングモータ250と線材W1との間に、ウォームおよびウォームギア等の動力の向きを変更するための部材を設ける必要がない。それにより、構成が単純化されるとともに部品点数が削減される。したがって、電動義手1の低コスト化および軽量化が可能となる。
【0090】
また、義指30の屈曲時に直動型ステッピングモータ250の本体部252が移動せずに軸251が移動するので、電動義手1の重心がほとんど移動しない。それにより、使用者は、電動義手1により物体を安定に把持することができる。
【0091】
[3]他の実施の形態
上記実施の形態では、直動型ステッピングモータ250に流れる駆動電流の変化に基づいて義指30と物体との接触が検出されるが、本発明はこれに限定されない。例えば、4つの義指30に物体との接触を検出することが可能な接触センサが設けられてもよい。この場合、制御部410は、
図7のステップS14において、接触センサによる接触の検出に基づいて義指30と物体との接触の有無を判定してもよい。