(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6872345
(24)【登録日】2021年4月21日
(45)【発行日】2021年5月19日
(54)【発明の名称】歯間清掃具および歯間清掃具形成体
(51)【国際特許分類】
A61C 15/00 20060101AFI20210510BHJP
【FI】
A61C15/00
【請求項の数】18
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-207507(P2016-207507)
(22)【出願日】2016年10月24日
(65)【公開番号】特開2018-68334(P2018-68334A)
(43)【公開日】2018年5月10日
【審査請求日】2019年7月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006769
【氏名又は名称】ライオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【弁理士】
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100153763
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 広之
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100108578
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 詔男
(74)【代理人】
【識別番号】100094400
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 三義
(72)【発明者】
【氏名】近藤 早紀
(72)【発明者】
【氏名】井出 浩子
【審査官】
胡谷 佳津志
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭64−015038(JP,A)
【文献】
特表平08−508179(JP,A)
【文献】
国際公開第2007/061384(WO,A1)
【文献】
特開2015−226697(JP,A)
【文献】
特開2008−022936(JP,A)
【文献】
国際公開第88/007354(WO,A1)
【文献】
特開平06−277237(JP,A)
【文献】
独国特許出願公開第04344110(DE,A1)
【文献】
米国特許第1287926(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61C 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
厚さ方向に互いに接合された一対の平板状の把持部と、
合成樹脂で構成され前記一対の把持部をつなぐ帯状部により、前記一対の把持部から延出する延出軸線方向に形成されたブラシ部とを備え、
前記ブラシ部は、弾性変形により前記延出軸線周りに捻れた前記帯状部によって、それぞれが前記延出軸線と直交する中心軸線の周囲を取り囲み、前記延出軸線方向に沿って複数配列された枠状部を有し、
前記複数の枠状部は、隣り合う前記枠状部の前記中心軸線が前記延出軸線周り方向について異なる位置に配置され、
複数の前記枠状部のうち、第1の枠状部は、前記延出軸線を含み当該第1の枠状部の前記中心軸線と直交する第1平面に沿って形成され、
前記第1の枠状部と隣り合う第2の枠状部は、前記延出軸線を含み当該第2の枠状部の前記中心軸線と直交する第2平面に沿って形成され、
前記第1平面と前記第2平面とは交差することを特徴とする歯間清掃具。
【請求項2】
前記帯状部は、前記一対の把持部の一方から延出する第1延出部と、前記一対の把持部の他方から延出する第2延出部とを有し、
前記第1延出部および前記第2延出部は、複数の前記枠状部のそれぞれで前記中心軸線と直交する面部を有し、
複数の前記枠状部は、それぞれの前記中心軸線と直交する平面と平行に配置され、
複数の前記枠状部同士の交差部には、前記中心軸線の前記延出軸線周り方向の位置に応じて、前記第1延出部の前記面部と前記第2延出部の前記面部とが厚さ方向に互いに逆方向に屈曲する屈曲部が設けられていることを特徴とする請求項1記載の歯間清掃具。
【請求項3】
前記枠状部は、前記延出軸線と直交する方向の一方側に配置された導入部と、前記直交する方向の他方側に配置された清掃部とを有し、
前記清掃部の最大幅は、前記導入部の最大幅よりも広いことを特徴とする請求項1または2記載の歯間清掃具。
【請求項4】
前記清掃部の厚さをT1、最大幅をW1とすると、
W1/T1は、1.0以上、2.0以下であることを特徴とする請求項3記載の歯間清掃具。
【請求項5】
前記導入部の厚さをT2、最大幅をW2とすると、
W2/T2は、0.5以上、1.0以下であることを特徴とする請求項3または4記載の歯間清掃具。
【請求項6】
前記枠状部の表面に複数の突起が設けられていることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の歯間清掃具。
【請求項7】
前記把持部は、前記合成樹脂で形成されていることを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の歯間清掃具。
【請求項8】
前記一対の把持部の相対位置を合わせる位置合わせ部を備えることを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載の歯間清掃具。
【請求項9】
一種類の合成樹脂で構成されることを特徴とする請求項1から8のいずれか一項に記載の歯間清掃具。
【請求項10】
把持部とブラシ部とを有する歯間清掃具を形成する歯間清掃具形成体であって、
前記把持部は、平板状に形成され第1方向に間隔をあけて一対で配置され、
前記ブラシ部は、合成樹脂で構成され前記一対の把持部を前記第1方向と直交する第2方向の一方側同士をつなぐ帯状部により形成され、
前記帯状部は、
一対の前記把持部からそれぞれ前記第2方向の他方側に向かうに従って、互いに前記第1方向で接近する側に延びる一対の第1部分と、
前記第1部分の先端からそれぞれ前記第2方向の他方側に延びる一対の第2部分と、
前記第2部分の先端からそれぞれ一対の屈曲部を介して前記第2方向の他方側に延びる一対の第3部分と、
前記第3部分の先端からそれぞれ前記第2方向の他方側に向かうに従って、互いに前記第1方向で接近する側に延びて交わる一対の第4部分とを有し、
一対の前記屈曲部は、前記第3部分の厚さ方向で互いに逆方向に屈曲することを特徴とする歯間清掃具形成体。
【請求項11】
前記一対の第1部分の先端の前記第1方向の距離は、前記一対の把持部の前記第1方向の配置ピッチよりも短いことを特徴とする請求項10記載の歯間清掃具形成体。
【請求項12】
前記枠状部は、前記延出軸線と直交する方向の一方側に配置された導入部と、前記直交する方向の他方側に配置された清掃部とを有し、
前記清掃部の最大幅は、前記導入部の最大幅よりも広いことを特徴とする請求項10または11記載の歯間清掃具形成体。
【請求項13】
前記清掃部の厚さをT1、最大幅をW1とすると、
W1/T1は、1.0以上、2.0以下であることを特徴とする請求項12記載の歯間清掃具形成体。
【請求項14】
前記導入部の厚さをT2、最大幅をW2とすると、
W2/T2は、0.5以上、1.0以下であることを特徴とする請求項12または13記載の歯間清掃具形成体。
【請求項15】
前記枠状部の表面に複数の突起が設けられていることを特徴とする請求項10から14のいずれか一項に記載の歯間清掃具形成体。
【請求項16】
前記把持部は、前記合成樹脂で形成されていることを特徴とする請求項10から15のいずれか一項に記載の歯間清掃具形成体。
【請求項17】
前記一対の把持部の相対位置を合わせる位置合わせ部を備えることを特徴とする請求項10から16のいずれか一項に記載の歯間清掃具形成体。
【請求項18】
一種類の合成樹脂で構成されることを特徴とする請求項10から17のいずれか一項に記載の歯間清掃具形成体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯間清掃具および歯間清掃具形成体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
歯間ブラシ等の歯間清掃具は、主として歯ブラシでは清掃が困難な歯と歯の間の隙間(隣接歯間)を清掃するための補助清掃用具として使用される。歯間清掃具については、「挿入性」、「清掃実感」、「清掃しやすさ」といった歯間清掃具の基本性能に加えて、「歯ぐきへの痛みの無さ」、「当り心地の良さ」といった為害性の無さについても重要視されている。
【0003】
歯間清掃具としては、弾力性のあるワイヤをU字状に折り曲げ、その先に取っ手をとり付けて、先端部分に空間が形成された歯間清掃具(例えば、特許文献1)が開示されている。また、特許文献2には、把持部(ハンドル部)の先端から延びる合成樹脂製の芯部にエラストマーが被覆してなる軸材と、前記軸材の延在方向から見て放射状に複数設けられたエラストマーからなる突起と、を備えた歯間ブラシが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−290353号公報
【特許文献2】特開2013−192866号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載された歯間清掃具は、ブラシ部に金属ワイヤーを用いていたため、歯間にブラシ部を挿入する際に操作を誤って歯肉を傷つける虞があり、上記為害性の無さに課題がある。
また、特許文献2に記載された歯間清掃具は、歯や歯肉に接する部分が軟質樹脂であるため、ブラシ部に金属ワイヤーを用いた場合の不具合を解消できるが、突起が柔らかく、突起間隔も広いため、歯間の清掃力及び使用者の清掃実感が低いという課題がある。
【0006】
本発明は、以上のような点を考慮してなされたもので、為害性を解消しつつ清掃力及び清掃実感を向上させる歯間清掃具および歯間清掃具形成体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様に従えば、厚さ方向に互いに接合された一対の平板状の把持部と、
合成樹脂で構成され前記一対の把持部をつなぐ帯状部により、前記一対の把持部から延出する延出軸線方向に形成されたブラシ部とを備え、前記ブラシ部は、弾性変形により前記延出軸線周りに捻れた前記帯状部によって、それぞれが前記延出軸線と直交する中心軸線の周囲を取り囲み、前記延出軸線方向に沿って複数配列された枠状部を有し、前記複数の枠状部は、隣り合う前記枠状部の前記中心軸線が前記延出軸線周り方向について異なる位置に配置されていることを特徴とする歯間清掃具が提供される。
【0008】
また、上記本発明の一態様に係る歯間清掃具において、前記枠状部は、前記延出軸線と直交する方向の一方側に配置された導入部と、前記直交する方向の他方側に配置された清掃部とを有し、前記清掃部の最大幅は、前記導入部の最大幅よりも広いことを特徴とする。
【0009】
また、上記本発明の一態様に係る歯間清掃具において、前記清掃部の厚さをT1、最大幅をW1とすると、W1/T1は、1.0以上、2.0以下であることを特徴とする。
【0010】
また、上記本発明の一態様に係る歯間清掃具において、前記導入部の厚さをT2、最大幅をW2とすると、W2/T2は、0.5以上、1.0以下であることを特徴とする。
【0011】
また、上記本発明の一態様に係る歯間清掃具において、前記枠状部の表面に複数の突起が設けられていることを特徴とする。
【0012】
また、上記本発明の一態様に係る歯間清掃具において、前記把持部は、前記合成樹脂で形成されていることを特徴とする。
【0013】
また、上記本発明の一態様に係る歯間清掃具において、前記一対の把持部の相対位置を合わせる位置合わせ部を備えることを特徴とする。
【0014】
本発明の第2の態様に従えば、把持部とブラシ部とを有する歯間清掃具を形成する歯間清掃具形成体であって、前記把持部は、平板状に形成され第1方向に間隔をあけて一対で配置され、前記ブラシ部は、合成樹脂で構成され前記一対の把持部を前記第1方向と直交する第2方向の一方側同士をつなぐ帯状部により形成され、前記ブラシ部は、前記一対の把持部を厚さ方向に接合したときに弾性変形により前記第2方向に延びる延出軸線周りに捻れた前記帯状部によって、それぞれが前記延出軸線と直交する中心軸線の周囲を取り囲み、前記延出軸線方向に沿って複数配列された枠状部を有し、前記複数の枠状部は、隣り合う前記枠状部の前記中心軸線が前記延出軸線周り方向について異なる位置に配置されていることを特徴とする歯間清掃具形成体が提供される。
【0015】
また、上記本発明の一態様に係る歯間清掃具形成体において、前記帯状部は、前記一対の把持部のそれぞれから延出し前記第2方向の一方側に向かうに従って漸次互いに接近する方向に向かう一対の第1部分と、前記一対の第1部分の先端からそれぞれ前記第2方向の一方側に延出する一対の第2部分と、前記一対の第2部分の先端からそれぞれ当該第2部分の厚さ方向について互いに逆方向に屈曲する一対の第3部分と、前記一対の第3部分の先端から延出し、前記第2方向の一方側に向かうに従って漸次互いに接近して交わる一対の第4部分と、を有し、前記一対の第1部分の先端の前記第1方向の距離は、前記一対の把持部の前記第1方向の配置ピッチよりも短く、前記一対の把持部を厚さ方向に接合したときに、先端の前記第1方向の位置関係が空隙を隔てて逆側の位置関係に変化した前記一対の第1部分と、弾性変形により先端同士が重なった前記一対の第2部分とにより、中心軸線が前記延出軸線と直交する第1の枠状部が形成されるとともに、先端が前記厚さ方向に空隙を隔てて離間する第3部分と、前記第4部分とにより、前記延出軸線に沿った前記第1の枠状部の前記一方側に、中心軸線の前記延出軸線周り方向の位置が第1の枠状部中心軸線と異なる第2の枠状部が形成されることを特徴とする。
【0016】
また、上記本発明の一態様に係る歯間清掃具形成体において、前記枠状部は、前記延出軸線と直交する方向の一方側に配置された導入部と、前記直交する方向の他方側に配置された清掃部とを有し、前記清掃部の最大幅は、前記導入部の最大幅よりも広いことを特徴とする。
【0017】
また、上記本発明の一態様に係る歯間清掃具形成体において、前記清掃部の厚さをT1、最大幅をW1とすると、W1/T1は、1.0以上、2.0以下であることを特徴とする。
【0018】
また、上記本発明の一態様に係る歯間清掃具形成体において、前記導入部の厚さをT2、最大幅をW2とすると、W2/T2は、0.5以上、1.0以下であることを特徴とする。
【0019】
また、上記本発明の一態様に係る歯間清掃具形成体において、前記枠状部の表面に複数の突起が設けられていることを特徴とする。
【0020】
また、上記本発明の一態様に係る歯間清掃具形成体において、前記把持部は、前記合成樹脂で形成されていることを特徴とする。
【0021】
また、上記本発明の一態様に係る歯間清掃具形成体において、前記一対の把持部の相対位置を合わせる位置合わせ部を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明では、為害性を解消しつつ清掃力及び清掃実感を向上させる歯間清掃具および歯間清掃具形成体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の実施の形態を示す図であって、歯間清掃具1の外観斜視図である。
【
図2】本発明の実施の形態を示す図であって、歯間清掃具形成体2を展開した平面図である。
【
図3】歯間清掃具1を用いた清掃動作を説明するための図である。
【
図4】歯間清掃具1を用いた清掃動作を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の歯間清掃具および歯間清掃具形成体の実施の形態を、
図1ないし
図4を参照して説明する。
なお、以下の実施形態は、本発明の一態様を示すものであり、この発明を限定するものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で任意に変更可能である。また、以下の図面においては、各構成をわかりやすくするために、実際の構造と各構造における縮尺や数等を異ならせている。
【0025】
図1は、歯間清掃具1の外観斜視図である。歯間清掃具1は、合成樹脂製であり、把持部10とブラシ部20とを備えている。把持部10は、平面視矩形の同一形状を有し、厚さ方向に接合された一対の平板状の把持板10A、10Bを有している。把持板10A、10Bは、位置合わせ部11によって互いの面方向の相対位置が合わせられている。
【0026】
歯間清掃具1を構成する合成樹脂としては、軟質樹脂あるいは硬質樹脂を用いることが可能であるが、歯間に挿入することを考慮すると軟質樹脂を用いることが好ましい。軟質樹脂としては、例えば、JIS K 7215に準拠して測定されるショアAの硬度が90以下の樹脂であり、熱可塑性エラストマー、シリコンゴム、ウレタンゴム等が挙げられる。また、硬質樹脂としては、例えば、JIS K7203に準拠して測定される曲げ弾性率が1000MPa以下のポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)等の樹脂が挙げられる。
【0027】
ブラシ部20は、把持部10から延出軸線40に沿って延出している。ブラシ部20は、延出軸線40に沿って配列された複数(本実施形態では二つ)の枠状部(第1の枠状部)21、および枠状部(第2の枠状部)22を有している。
【0028】
なお、以下の説明では、延出軸線40が延びる方向(すなわち、枠状部21、22配列された方向)をX軸方向(第2方向)とし、把持板10A、10Bが接合された方向をZ軸方向とし、X軸方向およびZ軸方向と直交する方向を軸Y方向(第1方向)として適宜説明する。
【0029】
枠状部21は、延出軸線40と直交しZ軸と平行な中心軸線21aの周囲を取り囲む矩形枠状に形成されている。枠状部22は、延出軸線40と直交しY軸と平行な中心軸線22aの周囲を取り囲む矩形枠状に形成されている。中心軸線21aと中心軸線22aとは、延出軸線40周り方向について異なる位置、具体的には90°異なる位置に配置されている。本実施形態における枠状部21、22は、対角線同士が直交し、長い方の対角線がX軸方向に延びる菱形状に形成されている。
【0030】
枠状部21、22は、例えば、断面が矩形(長方形)で帯状に延びる帯状部30によって形成されている。帯状部30は、弾性変形して延出軸線40周り(
図1では時計回り)に捻れることにより枠状部21、22を形成している。
【0031】
図2は、把持板10A、10Bが非接合状態で歯間清掃具1を形成する前段階の歯間清掃具形成体2を展開した平面図である。
図2に示すように、歯間清掃具形成体2は、Y軸方向に間隔をあけて配置された把持板10A、10Bと、把持板10A、10Bの+X側の辺同士をつなぐ帯状部30とを有している。
【0032】
位置合わせ部11は、把持板10Aの−Z側の面に突設された軸部11Aと、把持板10Bの+Z側の面に開口し、軸部11Aが嵌合する孔部11Bとを含む。軸部11Aおよび孔部11Bは、互いに離間して複数(図では二つ)設けられている。孔部11Bは、非貫通で形成されている。孔部11Bが貫通している場合は、把持板10A、10Bが誤った向きで接合される可能性があるが、孔部11Bが一面のみに開口しているため、把持板10A、10Bが誤った向きで接合されることを回避できる。
【0033】
帯状部30は、把持板10A、10Bの一方から+X側に延出した後に方向転換して把持板10A、10Bの一方に至るU字状に形成されている。帯状部30は、把持板10A、10Bからそれぞれ延出し、+X側に向かうに従って漸次互いに接近する方向に向かう一対の第1部分31A、31Bと、第1部分31A、31Bの先端からそれぞれ+X側に延出する一対の第2部分32A、32Bと、第2部分32A、32Bの先端の屈曲部35A、35Bからそれぞれ第2部分32A、32Bの厚さ方向に互いに逆方向に屈曲する一対の第3部分33A、33Bと、第3部分33A、33Bの先端から延出し、+X側に向かうに従って漸次互いに接近して交わる一対の第4部分34A、34Bとを有する。
【0034】
Y軸方向における第1部分31A、31Bの先端間の距離31Lは、把持板10A、10BのY軸方向における配置ピッチ10Lよりも短く形成されている。
【0035】
第1部分31A、31Bおよび第2部分32A、32Bは、枠状部21を形成している。第3部分33A、33Bおよび第4部分34A、34Bは、枠状部22を形成している。枠状部21を形成する第1部分31A、31Bおよび第2部分32A、32Bのうち、
図1における−Y側に位置する第1部分31Bおよび第2部分32Bは、歯間挿入時に変形する導入部21Gを形成する。また、
図1における+Y側に位置する第1部分31Aおよび第2部分32Aは、第1部分31Bおよび第2部分32Bの最大幅よりも広い最大幅を有し歯間挿入時に歯面を掻き取る清掃部21Cを形成する。
【0036】
枠状部22を形成する第3部分33A、33Bおよび第4部分34A、34Bのうち、
図1における−Z側に位置する第3部分33Aおよび第4部分34Aは歯間挿入時に変形する導入部22Gを形成する。また、
図1における+Z側に位置する第3部分33Bおよび第4部分34Bは、第3部分33Aおよび第4部分34Aの最大幅よりも広い最大幅を有し歯間挿入時に歯面を掻き取る清掃部22Cを形成する。
【0037】
第3部分33Aは、屈曲部35Aを基点として−Z側に屈曲して(所謂、山折りで)形成されている。第3部分33Bは、屈曲部35Bを基点として+Z側に屈曲して(所謂、谷折りで)形成されている。屈曲部35Aは、中心軸線22aが中心軸線21aに対して、延長軸線40周り方向について90°異なる位置に配置されるように、+X側に向かうに従って+Y側に向かう向きにX軸に対して傾斜している。同様に、屈曲部35Bは、中心軸線22aが中心軸線21aに対して、延長軸線40周り方向について90°異なる位置に配置されるように、+X側に向かうに従って−Y側に向かう向きにX軸に対して傾斜している。
【0038】
清掃部21Cは、第1部分31Aと第2部分32Aとの境界部分が最大幅で、把持部10および屈曲部35Aに向かうに従って幅が漸次狭くなるように形成されている。同様に、清掃部22Cは、第3部分33Bと第4部分34Bとの境界部分が最大幅で、+X側の先端部および屈曲部35Bに向かうに従って幅が漸次狭くなるように形成されている。導入部21Gは、第1部分31Bおよび第2部分32Bとの境界部分が最大幅で、把持部10および屈曲部35Bに向かうに従って幅が漸次狭くなるように形成されている。同様に、導入部22Gは、第3部分33Aおよび第4部分34Aとの境界部分が最大幅で、+X側の先端部および屈曲部35Aに向かうに従って幅が漸次狭くなるように形成されている。
【0039】
歯間清掃具形成体2(枠状部21、22)の厚さとしては、0.1mm以上で任意に設定可能である。
清掃部21C、22Cの最大幅をW1、厚さをT1とすると、W1/T1で表される比は、1.0以上、2.0以下であることが好ましく、1.2以上、1.5以下であることがより好ましい。W1/T1で表される比が1.0未満であれば歯垢掻き取り力が低下する可能性がある。また、W1/T1で表される比が1.5を超えると歯間への挿入が困難になる可能性がある。従って、W1/T1で表される比が1.0以上、2.0以下であれば、歯垢掻き取り力(清掃力)の向上と、歯間への挿入のしやすさを両立させることが可能になる。
【0040】
導入部21G、22Gの最大幅をW2、厚さをT2とすると、W2/T2で表される比は、0.5以上、1.0以下であることが好ましく、0.6以上、1.0以下であることがより好ましい。W2/T2で表される比が0.5未満、あるいは1.0を超えると歯間への挿入が困難になる可能性がある。従って、W2/T2で表される比が0.5以上、1.0以下であれば、歯間への挿入性を向上させることができる。
【0041】
上記構成の歯間清掃具形成体2は、一例として、上記の合成樹脂を用いた射出成形により製造することができる。射出成形により歯間清掃具形成体2を製造する際には、例えば、把持板10A、10Bおよび帯状部30それぞれの厚さ方向の中間位置にパーティングラインを設定した金型を用い、把持板10A、10Bの一方、或いは両方に配置したゲート部を介して金型のキャビティ内に溶融した合成樹脂を充填し、冷却後に金型から成形品を離型させることにより歯間清掃具形成体2を得ることができる。ゲート部としては、外観性等を考慮して、把持板10A、10B同士が接合される接合面に配置する構成や、把持板10A、10Bにおける−X側の側面に配置する構成を好適に採用できる。
【0042】
次に、上記構成の歯間清掃具形成体2を用いて歯間清掃具1を形成する操作について説明する。
まず、位置合わせ部11における軸部11Aと孔部11Bとを嵌合させて、把持板10Aが+Z側に配置されるように、把持板10A、10Bを厚さ方向に接合して把持部10を形成する。これにより、第1部分31Aおよび第2部分32Aについても、第1部分31Bおよび第2部分32Bの+Z側に配置される。
【0043】
ここで、Y軸方向に関して、第1部分31A、31Bの先端間の距離31Lは、把持板10A、10Bの配置ピッチ10よりも短いため、接合するために把持板10A、10BをY軸方向で互いに接近する側に移動させると、第1部分31A、31Bの先端同士はY軸方向の位置関係が、
図1に示したように、移動前に対して空隙S1を隔てて逆となる位置関係に変化する。また、把持板10A、10Bの移動に伴って、屈曲部35Aにおいては第3部分33Aが第2部分32Bに−Y側から係合することにより、第1部分31Aおよび第2部分32Aは、屈曲部35A(すなわち第2部分32Aの先端)がほぼ延出軸線40上に位置するように弾性変形して撓む。同様に、把持板10A、10Bの移動に伴って、屈曲部35Bにおいては第3部分33Bが第2部分32Aに+Y側から係合することにより、第1部分31Bおよび第2部分32Bは、屈曲部35B(すなわち第2部分32Bの先端)がほぼ延出軸線40上に位置するように弾性変形して撓む。
【0044】
その結果、弾性変形して撓んだ第1部分31A、第2部分32A、第1部分31Bおよび第2部分32Bによって、Z軸方向に延びる中心軸線21aの周囲を取り囲み、XY平面と略平行に配置されたZ軸方向の平面視で略菱形状の枠状部21が形成される。このとき、第1部分31A、第2部分32A、第1部分31Bおよび第2部分32Bは、一例として、空隙S1に近い側の端縁が+Z側の位置、空隙S1から遠い側の端縁が−Z側の位置となるように中心軸線21aに対して傾いた、略角錐台の外周輪郭状の枠状部21を形成する。
【0045】
また、上記枠状部21が形成されるのと同時に、屈曲部35A、35Bよりも先端側においては、
図2に示すように、第3部分33Aが略−Z側に向けて延び、第3部分33Bが略+Z側に向けて延びる。第3部分33Aの先端からは弾性変形して撓んだ第4部分34Aが+X側に延び、第3部分33Bの先端からは第4部分34Aと交わり弾性変形して撓んだ第4部分34Bが+X側に延びる。
【0046】
その結果、弾性変形して撓んだ第3部分33A、第4部分34A、第3部分33Bおよび第4部分34Bによって、Y軸方向に延びる中心軸線22aを含む空隙S2の周囲を取り囲み、XZ平面と略平行に配置されたY軸方向の平面視で略菱形状の枠状部22が形成される。このとき、第3部分33A、第4部分34A、第3部分33Bおよび第4部分34Bは、一例として、空隙S2に近い側の端縁がーY側の位置、空隙S2から遠い側の端縁が+Y側の位置となるように中心軸線22aに対して傾いた、略角錐台の外周輪郭状の枠状部22を形成する。
【0047】
上記構成の歯間清掃具1を用いて歯間を清掃する際には、把持部10を把持して、
図3に示すように、歯面Tの歯間Sに歯間清掃具1(ブラシ部20)を挿入する。歯間清掃具1の先端部は、最も幅が狭いため円滑に歯間Sに挿入される。最初に歯間Sに挿入された枠状部22において、導入部22Gおよび清掃部22Cの双方が歯面Tまたは歯肉に接触した場合、清掃部22Cよりも幅が狭く曲げ強度が低い導入部22Gは歯面Tまたは歯肉に倣って大きな変形量で弾性変形し、清掃部22Cは導入部22Gよりも小さな変形量で弾性変形する。従って、枠状部22を歯間Sに挿入して奥側に押し込むと、導入部22Gは小さな接触圧で歯面Tに接触し、清掃部22Cは導入部22Gよりも大きな接触圧で歯面Tに接触した状態で歯面Tに対して摺動する。これにより、導入部22Gおよび清掃部22Cは、それぞれの接触圧に応じた掻き取り力で歯面Tおよび歯間Sを清掃することができる。
【0048】
歯間清掃具1をさらに押し込むと、
図4に示すように、枠状部22が歯間Sから奥側に離脱するとともに、枠状部21が歯間Sに挿入される。枠状部21においても枠状部22と同様に、清掃部21Cよりも幅が狭く曲げ強度が低い導入部21Gは歯肉(または歯面T)に倣って大きな変形量で弾性変形し、清掃部21Cは歯面Tに倣って導入部21Gよりも小さな変形量で弾性変形する。
【0049】
ここで、枠状部21と枠状部22とは、延出軸線40周りに90°交差して配置されているため、枠状部21は、歯面Tに対して枠状部22とは異なる位置に接触して摺動する。そのため、枠状部22および枠状部21の歯間Sへの連続的な挿入により、歯面Tを広範囲に亘って清掃することができる。また、枠状部22および枠状部21とでは、延出軸線40周り方向の清掃部22Cの位置と清掃部21Cの位置が異なり、清掃部22Cが歯面Tに接触した位置と、清掃部21Cが歯面Tに接触した位置とが変動するため、枠状部22および枠状部21を歯間Sに連続的に挿入した際には、歯間清掃具1に延出軸線40周り方向の回転力が生じる。そのため、歯面Tおよび歯間Sに対しては、歯間清掃具1の挿入方向の両方向での掻き取り力に加えて、延出軸線40周り方向の両方向での掻き取り力で清掃することができる。
【0050】
そして、歯間清掃具1を往復移動させることにより、枠状部22および枠状部21によって繰り返し歯面Tおよび歯間Sを清掃することができる。この場合には、歯間清掃具1を奥側に移動させる場合と、手前側に移動させる場合とでは、回転方向が逆方向となるため、歯面Tを回転方向の両方向で掻き取ることにより効率的に歯面Tおよび歯間Sを清掃することが可能となる。
【0051】
以上説明したように、本実施形態の歯間清掃具1は、一対の把持部10A、10Bをつなぐ帯状部30が弾性変形して延出軸線40周りに捻れ、中心軸線21a、22aが延出軸線40周り方向の位置が異なる、合成樹脂で形成された枠状部21、22を有しているため、為害性を解消しつつ歯間Sに挿入した枠状部21、22が延出軸線40周り方向の異なる位置で歯面Tに摺動して効率的に清掃を行うことができる。
【0052】
また、本実施形態の歯間清掃具1では、枠状部21、22が延出軸線40と直交する方向の一方側に、歯間Sへの挿入時に大きく弾性変形して挿入を容易にする導入部21G、22Gを有し、延出軸線40と直交する方向の他方側に、歯間Sへの挿入時に大きな接触圧で歯面Tに接触して大きな清掃力を有する清掃部21C、22Cを有しているため、歯間Sへの挿入の容易性と、歯面Tおよび歯間Sへの大きな清掃力の双方を発現できる。特に、本実施形態の歯間清掃具1では、枠状部21、22が延出軸線40周り方向で異なる位置に配置されているため、歯間Sへの挿入により歯間清掃具1に回転力が発生するため、一層効率的に歯面Tおよび歯間Sを清掃することが可能となる。また、本実施形態の歯間清掃具1では、枠状部21、22が中心軸線21a、22aに対して傾いた、略角錐台の外周輪郭状に弾性変形しているため、歯面Tあるいは歯肉に接触した際に延出軸線40周り方向の回転力が生じやすくなり、さらに効率的な清掃が可能になる。
【0053】
加えて、本実施形態の歯間清掃具1では、略菱形形状である枠状部21、22における長い方の対角線が、ブラシ部20の挿入方向であるX軸方向に延びているため、枠状部21、22が歯面に接触した際に座屈することなく歯間に挿入することが可能となる。
【0054】
また、本実施形態の歯間清掃具1では、把持部10および枠状部21、22が合成樹脂材で形成されているため、射出成形によって歯間清掃具1を製造することができ、製造コストの低減および大量生産が可能になる。なお、例えば、把持部10が硬質樹脂で形成され、枠状部21、22が軟質樹脂で形成される構成であっても、順次異なる樹脂を用いて射出成形を行う二色成形を採用することで対応可能である。
【0055】
また、本実施形態では、例えば、射出成形で形成された歯間清掃具形成体2における把持板10A、10Bを接合することにより、帯状部30が弾性変形して容易、且つ、迅速に上述の歯間清掃具1を形成することが可能である。また、本実施形態の歯間清掃具形成体2では、位置合わせ部11によって把持板10A、10Bが互いの面方向の相対位置が合わせられているため、所定の清掃特性を有する歯間清掃具1を安定して形成することができる。特に、本実施形態では、孔部11Bが一面のみに開口しているため、軸部11Aと孔部11Bとを嵌合させる際に把持板10A、10Bが誤った向きで接合されることを回避できる。
【0056】
以上、添付図面を参照しながら本発明に係る好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。上述した例において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0057】
例えば、上記実施形態では、延出軸線40に沿って二つの枠状部21、22が連結された構成を例示したが、三つ以上の枠状部が連結される構成であってもよい。枠状部が三つ以上連結される構成の場合も、隣り合う枠状部における中心軸線が、延出軸線40周り方向について異なる位置に配置されることが好ましい。
【0058】
また、上記実施形態では、帯状部30が弾性変形して矩形状の枠状部21、22が形成される構成を例示したが、例えば、円環状の枠状部が形成される構成や、円環状の矩形部と矩形状の枠状部とが混在する構成であってもよい。枠状部が円環状である場合には、歯面との接触によりブラシ部20が座屈しないように、挿入方向であるX軸方向を長径とする楕円形状あるいは長円形状であることが好ましい。
【0059】
また、上記実施形態では、枠状部21、22が延長軸線40周り方向で90°異なる位置に配置される構成を例示したが、1°以上、179°以下で任意の角度に設定可能であるが、45°以上、135°以下が好ましく、70°以上、110°以下がより好ましく、90°が最も好ましい。
【0060】
また、上記実施形態では、枠状部21、22の表面が歯面Tに摺動して清掃する構成を例示したが、この構成の他に、例えば、枠状部21、22の表面にブラシ状に多数(複数)の微小突起を設け歯垢の除去性およびマッサージ性を高める構成であってもよい。微小突起の形成方法としては、枠状部21、22と一体成形してもよいし、放電加工等により二次成形してもよい。
【0061】
また、上記実施形態では、帯状部30の厚さが一定である構成を例示したが、これに限定されるものではなく、例えば、帯状部30において隣り合って順次並ぶ第1部分31A、第2部分32A、第3部分33A、第4部分34A、第4部分34B、第3部分33B、第2部分32B、第1部分31Bが互いに交差する部分については他の部分よりも薄くする構成であってもよい。この構成を採ることにより、屈曲または弾性変形する交差部が変形しやすくなり、歯間清掃具形成体2から歯間清掃具1を形成する際の操作が容易になる。
【0062】
また、上記実施形態では、枠状部21、22の断面が正方形や長方形の矩形状である構成を例示したが、この構成に限定されず、例えば真円や楕円形状であってもよい。枠状部21、22の断面としては、矩形状であれば清掃力やマッサージ力が向上することから好ましい。
【符号の説明】
【0063】
1…歯間清掃具、 10…把持部、 11…位置合わせ部、 20…ブラシ部、 21…枠状部(第1の枠状部)、 22…枠状部(第2の枠状部)、 21a、22a…中心軸線、 21C、22C…清掃部、 21G、22G…導入部、 30…帯状部、 31A、31B…第1部分、 32A、32B…第2部分、 33A、33B…第3部分、 34A、34B…第4部分、 40…延出軸線