特許第6872354号(P6872354)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6872354
(24)【登録日】2021年4月21日
(45)【発行日】2021年5月19日
(54)【発明の名称】時計
(51)【国際特許分類】
   G04B 21/06 20060101AFI20210510BHJP
   G04B 37/08 20060101ALI20210510BHJP
   G04C 21/06 20060101ALI20210510BHJP
【FI】
   G04B21/06 Z
   G04B37/08 H
   G04C21/06
【請求項の数】15
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2016-231283(P2016-231283)
(22)【出願日】2016年11月29日
(65)【公開番号】特開2017-134058(P2017-134058A)
(43)【公開日】2017年8月3日
【審査請求日】2019年9月11日
(31)【優先権主張番号】特願2016-13407(P2016-13407)
(32)【優先日】2016年1月27日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002325
【氏名又は名称】セイコーインスツル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(72)【発明者】
【氏名】新輪 隆
(72)【発明者】
【氏名】川内谷 卓磨
(72)【発明者】
【氏名】中嶋 正洋
【審査官】 菅藤 政明
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−191305(JP,A)
【文献】 特開2014−81334(JP,A)
【文献】 米国特許第2786326(US,A)
【文献】 中国特許出願公開第103713512(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G04B 21/06
G04B 37/08
G04C 21/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ムーブメントと、前記ムーブメントを収容するケースと、前記ムーブメントに直接または間接に接する振動部を有する中空構造部と、を備え、
前記中空構造部は、前記ケースとの間に区画された空間が密閉構造となるように形成され、
前記中空構造部の内部空間は、前記ケースの外部開口を通して前記ケースの外部空間と連通している、ことを特徴とする時計。
【請求項2】
前記振動部は、前記中空構造部の一部であって前記内部空間に面している、請求項1に記載の時計。
【請求項3】
前記振動部は、直接または間接に前記ムーブメントの地板と接している、請求項1または2に記載の時計。
【請求項4】
前記振動部に接続されたゴングをさらに有し、
前記ムーブメントは、前記ゴングを打つハンマーを有する、請求項1〜3のうちいずれか1項に記載の時計。
【請求項5】
前記ムーブメントは、前記中空構造部を打つハンマーを有する、請求項1〜3のうちいずれか1項に記載の時計。
【請求項6】
前記中空構造部は、前記ケースの外面に対して非突出となる、請求項1〜5のうちいずれか1項に記載の時計。
【請求項7】
前記外部開口の内径は、前記振動部における前記中空構造部の内径より大きい、請求項1〜のうちいずれか1項に記載の時計。
【請求項8】
前記ムーブメントと前記振動部のうち少なくともいずれか一方に当接凸部が形成され、
前記ムーブメントと前記振動部とが前記当接凸部において当接することによって、前記ムーブメントが前記振動部の一部のみに接する、請求項1〜のうちいずれか1項に記載の時計。
【請求項9】
前記当接凸部は、湾曲凸状である、請求項に記載の時計。
【請求項10】
前記振動部の少なくとも一部は、前記中空構造部の他の部分に比べて薄肉である薄肉部とされ、
前記薄肉部は、前記ムーブメントに接している、請求項1〜のうちいずれか1項に記載の時計。
【請求項11】
前記ムーブメントは、弾性を有する弾性支持部を介して前記ケースに当接する、請求項1〜1のうちいずれか1項に記載の時計。
【請求項12】
前記中空構造部は所定方向に延在し、
前記内部空間は、前記中空構造部の両端部においてそれぞれ前記ケースの外部開口を通して前記外部空間と連通している、請求項1〜11のうちいずれか1項に記載の時計。
【請求項13】
前記中空構造部は、一方の端部のみに前記外部開口を有する閉管構造であって、前記振動部から前記外部開口までの長さが、式(1)で表される、請求項1〜11のうちいずれか1項に記載の時計。
λ(2n−1)/4 ・・・(1)
(λは前記ムーブメントが発する音の波長。nは自然数。)
【請求項14】
前記中空構造部は、両方の端部に前記外部開口を有する開管構造であって、長さが、式(2)で表される、請求項1〜12のうちいずれか1項に記載の時計。
λ・n/4 ・・・(2)
(λは前記ムーブメントが発する音の波長。nは自然数。)
【請求項15】
前記ムーブメントは、ルモントワール機構を有する、請求項1〜14のうちいずれか1項に記載の時計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、時計に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、アラーム、ミニッツリピータなどの、音を発生させる機構を有する時計が用いられている。この種の時計においては、使用者に音を確実に認識させるために大きな音を出すことが求められる。一方、時計には防水性能も要求されることがある。
特許文献1に記載の時計は、密封部分と非密封部分を含むケースと、密封部分に配置された時打ち機構と、時打機構によって操作される鐘とを備えている。鐘は、全体がケースの非密封部分の内部に設けられている。
特許文献2に記載の時計は、外装ケースと、外装ケースの内部に配置された音源と、通気性および防水性を備えた内部フィルタとを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2014−513309号公報
【特許文献2】特開2008−76380号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の構成にあっては、音の発生源である鐘は非密封部分に位置し、音を発生させる機構は密封部内にある。そのため、鐘を鳴らすために密封部と非密封部の境界をまたぐように動作する機構が必要であり、密封部と非密封部の境界において防水性の問題が生じることがあった。
特許文献2に記載の構成は、内部フィルタを有するため、音源から発せられた音がケース外に伝わりにくかった。
本発明の一態様は、十分な防水性を確保でき、かつ音源からの音を効率的に外部に伝えることができる時計を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(1)本発明の一態様は、ムーブメントと、前記ムーブメントを収容するケースと、前記ムーブメントに直接または間接に接する振動部を有する中空構造部と、を備え、前記中空構造部は、前記ケースとの間に区画された空間が密閉構造となるように形成され、前記中空構造部の内部空間は、前記ケースの外部開口を通して前記ケースの外部空間と連通している時計を提供する。
この構成によれば、ムーブメントの振動によって生じた音は、中空構造部の内部空間を経て、外部開口を通して外部空間に伝えられる。そのため、ムーブメントで生じた音(例えば刻音)を効率的に、大きな音量で外部に伝えることができる。また、中空構造部は、ケースとの間に区画された空間が密閉構造となるように形成されているため、防水性を確保できる。
【0006】
(2)前記振動部は、前記中空構造部の一部であって前記内部空間に面している構成とすることができる。
この構成によれば、ムーブメントの振動を効率よく中空構造部の内部空間に伝えることができる。また、ケース内部の構造を簡略にでき、小型化および低コスト化を図ることができる。
【0007】
(3)前記振動部は、直接または間接に前記ムーブメントの地板と接している構成とすることができる。
この構成によれば、ムーブメントに生じた振動が効率よく中空構造部に伝えられる。よって、ムーブメントで生じた音を効率的に、大きな音量で外部に伝えることができる。
【0008】
(4)前記時計は、前記振動部に接続されたゴングをさらに有し、前記ムーブメントは、前記ゴングを打つハンマーを有する構成とすることができる。
この構成によれば、ゴングを有するため、大きな音を外部に伝えることができる。
【0009】
(5)前記ムーブメントは、前記中空構造部を打つハンマーを有する構成とすることができる。
この構成によれば、ハンマーによって中空構造部に直接、打撃を加え、中空構造部を大きく振動させることができるため、外部開口を通して発せられる音の音量を大きくできる。また、ゴングが不要であるため、ケース内部の空間における省スペース化が可能である。そのため、時計の小型化を図ることができる。
【0010】
(6)前記中空構造部は、前記ケースの外面に対して非突出となる構成とすることができる。
この構成によれば、小型化が可能であり、意匠性の点でも優れた時計が得られる。
【0011】
(7)前記中空構造部は所定方向に延在し、前記内部空間は、前記中空構造部の両端部においてそれぞれ前記ケースの外部開口を通して前記外部空間と連通している構成とすることができる。
この構成によれば、ムーブメントで生じた音を2つの外部開口を通して効率的に外部に伝えることができる。
【0012】
(8)前記外部開口の内径は、前記振動部における前記中空構造部の内径より大きくすることができる。
この構成によれば、音の回折などの影響を小さくし、外部開口を通して発せられる音の音量を大きくできる。よって、ムーブメントで生じた音(例えば刻音)を、より大きな音量で外部に伝えることができる
【0013】
(9)前記時計は、前記ムーブメントと前記振動部のうち少なくともいずれか一方に当接凸部が形成され、前記ムーブメントと前記振動部とが前記当接凸部において当接することによって、前記ムーブメントが前記振動部の一部のみに接する構成とすることができる。
この構成によれば、振動部が振動しやすくなるため、ムーブメントで生じた音(例えば刻音)を、中空構造部を通して大きな音量で外部に伝えることができる。
【0014】
(10)前記当接凸部は、湾曲凸状であってよい。
この構成によれば、当接凸部が振動部に点接触するため、当接凸部と振動部との接触面積が小さくなることから、振動部が振動しやすくなる。よって、ムーブメントで生じた音(例えば刻音)を、中空構造部を通して大きな音量で外部に伝えることができる。
【0015】
(11)前記時計は、前記振動部の少なくとも一部が、前記中空構造部の他の部分に比べて薄肉である薄肉部とされ、前記薄肉部が、前記ムーブメントに接している構成とすることができる。
この構成によれば、振動部が振動しやすくなるため、ムーブメントで生じた音(例えば刻音)を、中空構造部を通して大きな音量で外部に伝えることができる。
【0016】
(12)前記ムーブメントは、弾性を有する弾性支持部を介して前記ケースに当接する構成とすることができる。
この構成によれば、ムーブメントの振動を優先的に振動部に伝えることができ、ムーブメントの音を、より大きな音量で外部に伝えることができる。
【0017】
(13)前記中空構造部は、一方の端部のみに前記外部開口を有する閉管構造であって、前記振動部から前記外部開口までの長さが、式(1)で表される構成とすることができる。
λ(2n−1)/4 ・・・(1)
(λは前記ムーブメントが発する音の波長。nは自然数。)
この構成によれば、中空構造部で共鳴を起こすことができるため、ムーブメントの音を、より大きな音量で外部に伝えることができる。
【0018】
(14)前記中空構造部は、両方の端部に前記外部開口を有する開管構造であって、長さが、式(2)で表される構成とすることができる。
λ・n/4 ・・・(2)
(λは前記ムーブメントが発する音の波長。nは自然数。)
この構成によれば、中空構造部で共鳴を起こすことができるため、ムーブメントの音を、より大きな音量で外部に伝えることができる。
【0019】
(15)前記ムーブメントは、ルモントワール機構を有する構成とすることができる。
この構成によれば、ルモントワール機構の振動によって生じた音を前記中空構造部によって効率よく外部に伝えることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の一態様によれば、ムーブメントの振動によって生じた音は、中空構造部の内部空間を経て、外部開口を通して外部空間に伝えられる。したがって、ムーブメントで生じた音(例えば刻音)を効率的に、大きな音量で外部に伝えることができる。
本発明の一態様によれば、中空構造部は、ケースとの間に区画された空間が密閉構造となるように形成されているため、防水性を確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明に係る第1実施形態の時計を示す図であって、時計の外観図である。
図2図1に示す時計の内部構造を示す平面図である。
図3図1に示す時計の一部を示す斜視図である。
図4図1に示す時計の構造を模式的に示す構成図である。
図5図1に示す時計のムーブメントを示す平面図である。
図6】本発明に係る第2実施形態の時計の構造を模式的に示す構成図である。
図7】本発明に係る第3実施形態の時計の構造を模式的に示す構成図である。
図8】本発明に係る第4実施形態の時計の内部構造を示す平面図である。
図9】本発明に係る第5実施形態の時計の内部構造を示す平面図である。
図10】本発明に係る第6実施形態の時計の内部構造を示す平面図である。
図11】第1実施形態の時計の変形例を模式的に示す構成図である。
図12】中空構造部の変形例を示す斜視図である。
図13】本発明に係る第7実施形態の時計の内部構造を示す平面図である。
図14】本発明に係る第8実施形態の時計の構造を模式的に示す構成図である。
図15】本発明に係る第9実施形態の時計の構造を模式的に示す構成図である。
図16】本発明に係る第10実施形態の時計の構造を模式的に示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
[第1実施形態]
(時計)
一般に、時計の駆動部分を含む機械体を「ムーブメント」と称する。このムーブメントに文字板、指針を取り付けて、時計ケースの中に入れて完成品にした状態を時計の「コンプリート」と称する。
図1は、第1実施形態にかかる時計10を示す外観図である。図2は、時計10の内部構造を示す平面図である。図3は、時計10の一部を示す斜視図である。図4は、時計10の構造を模式的に示す構成図である。図5は、時計10のムーブメント1を示す平面図である。
【0023】
図1および図4に示すように、時計10のコンプリートは、ムーブメント1と、時計ケース2と、放音構造部3とを備えている。
時計ケース2は、例えば円筒状の周壁部5と、周壁部5の一方側の開口を閉止する裏蓋部6と、周壁部5の他方側の開口を閉止するカバー部7と、周壁部5の外面5aに設けられたラグ8と、を備えている。
【0024】
図1に示すように、ラグ8は、一対の第1ラグ8a,8aと、一対の第2ラグ8b,8bとを有する。第1ラグ8a,8aと第2ラグ8b,8bとは、周壁部5の中心軸に対して回転対称となる位置にある。
第1ラグ8aおよび第2ラグ8bは、周壁部5の外面5aから突出して形成されている。一対の第1ラグ8a,8aは周壁部5の周方向に間隔をおいて形成され、これらの間の空間に時計ベルト9の端部を受け入れることができる。一対の第2ラグ8b,8bは周壁部5の周方向に間隔をおいて形成され、これらの間の空間に時計ベルト9の端部を受け入れることができる。
カバー部7は、ガラスなどの透明材料からなる。
【0025】
図2および図3に示すように、周壁部5には、周方向に間隔をおいた4箇所に、周壁部5の外面5aと内面5cとの間を貫通する貫通孔5bが形成されている。
図1に示すように、時計ケース2は、ムーブメント1と、ムーブメント1に接続された文字板111および指針112〜114を収容している。文字板111は、少なくとも時に関する情報を示す目盛り等を有する。指針112〜114は、時を示す時針112、分を示す分針113および秒を示す秒針114を含む。
【0026】
(ムーブメント)
図1および図2に示すように、ムーブメント1は、平面視において時計ケース2の中央に配置される。
図5は、ムーブメント1の表側を示す平面図である。
図5に示すように、ムーブメント1は、基板を構成する地板11を有している。地板11の裏側には文字板111(図1参照)が設けられている。なお、ムーブメント1の表側に組み込まれる輪列を表輪列と称し、ムーブメント1の裏側に組み込まれる輪列を裏輪列と称する。
地板11には、巻真案内穴11aが形成されており、巻真案内穴11aに巻真12が回転自在に組み込まれている。巻真12の先端にはりゅうず115(図1参照)が取付けられる。
巻真12は、おしどり13、かんぬき14、かんぬきばね15及び裏押さえ16を有する切換装置により、軸方向の位置が決められている。また、巻真12の案内軸部には、きち車17が回転自在に設けられている。
【0027】
巻真12が回転軸方向に沿ってムーブメント1の内側に一番近い方の第1の巻真位置(0段目)にある状態で巻真12を回転させると、図示しないつづみ車の回転を介してきち車17が回転する。きち車17が回転することにより、これと噛合う丸穴車20が回転する。丸穴車20が回転することにより、これと噛合う角穴車21が回転する。角穴車21が回転することにより、香箱車22に収容された図示しないぜんまい(動力源)が巻き上げられる。
【0028】
ムーブメント1の表輪列は、上述した香箱車(回転部品)22の他に、二番車(回転部品)25、三番車(回転部品)26及び四番車(回転部品)27により構成されており、香箱車22の回転力を伝達する機能を果している。また、ムーブメント1の表側には、表輪列の回転を制御するための脱進機構30及び調速機構31が配置されている。
【0029】
二番車25は、香箱車22に噛合う歯車とされている。三番車26は、二番車25に噛合う歯車とされている。四番車27は、三番車26に噛合う歯車とされている。
脱進機構30は、上述した表輪列の回転を制御する機構であって、四番車27と噛み合うがんぎ車(回転部品)35と、このがんぎ車35を脱進させて規則正しく回転させるアンクル(回転部品)36と、を備えている。
調速機構31は、上述した脱進機構30を調速する機構であって、てんぷ(回転部品)40を具備している。
【0030】
脱進機構30のがんぎ車35は、がんぎ歯車部(回転体)101と、がんぎ歯車部101に同軸上に固定された軸部材(回転軸)102と、を備えている。
軸部材102は、四番車27の歯車部に噛合されるがんぎかな部103を有する。軸部材102の一端部は図示しない輪列受に回転可能に支持され、他端部は地板11に回転可能に支持されている。
がんぎかな部103が四番車27に噛合されることで、四番車27の回転力が軸部材102に伝達され、がんぎ車35が回転する。
【0031】
がんぎ車35は、複数の歯部104がアンクル36に噛合する。アンクル36は、3つのアンクルビーム(図示略)を有するアンクル体(図示略)と、アンクル真(図示略)と、を備えている。アンクル36は、前記アンクル真を軸として前記アンクル体が回動可能である。
3つのアンクルビームのうち2つのアンクルビームの先端には、爪石105が設けられ、残り1つのアンクルビームの先端には、アンクルハコ(図示略)が取り付けられている。
アンクルハコが取り付けられたアンクルビームは、地板11に支持されたドテピン(図示略)に接触可能である。
【0032】
てんぷ40は、てん真(回転軸)41と、アーム部42を介しててん真41に取付けられたてん輪(回転体)43と、ひげぜんまい(図示略)と、を備えている。てんぷ40は、ひげぜんまいから伝えられた動力によって、てん真41回りに一定の振動周期で正逆回転させられる。
【0033】
がんぎ車35、アンクル36およびてんぷ40は、回転軸の一端部が地板11に軸支され、他端部が受(図示略)に軸支されることによって、地板11と前記受に対して回転可能に支持される。前記受は、地板11に対して間隔をおいて対面する部材である。
【0034】
図2および図3に示すように、放音構造部3は、例えば一対の管状構造部51,51(中空構造部)を有する。管状構造部51としては、例えばアルミニウム、ステンレス鋼などの金属からなる管状体を使用できる。管状構造部51は金属製に限らず、他の材料、例えば樹脂で構成されていてもよい。
一対の管状構造部51,51は、例えば周壁部5の中心軸に対して回転対称となる位置にある。管状構造部51,51は、時計ケース2の内部に設けられている。
管状構造部51は、例えば、内径および外径が長さ方向に一定としてよい。管状構造部51は、長さ方向に内径が一定であると、後述のように、共鳴を起こさせるのが容易となる。
【0035】
管状構造部51は、中央部52と、中央部52の両端から周壁部5に近づく方向に延出する延出部53,53と、中央部52の外面に形成された一対の接続部54,54とを有する。
中央部52は、平面視において、例えばムーブメント1の地板11の外縁11bに沿う円弧状に形成されている。中央部52は、平面視において、例えば地板11の外縁11bよりも径方向外方側に位置している。
【0036】
接続部54は、例えば地板11に平行な板状とされており、中央部52の一部である接続基部52a(振動部)の外面から周壁部5の径方向内方に向けて突出して形成されている。接続部54,54は、中央部52の長さ方向に間隔をおいて形成されている。接続部54は、固定具55によってネジ止め等により地板11の一方の面に固定されている。
接続基部52aの内面は、管状構造部51の内部空間51aに面している。
【0037】
延出部53の先端部533aは、周壁部5の内面5cに液密に接合されている。そのため、管状構造部51と時計ケース2との間に区画された空間56(図2参照)は密閉構造となる。延出部53の先端部53aと周壁部5との接合方法としては、溶接、ロウ付け、熱拡散接合などがある。
なお、管状構造部51は周壁部5と別体であってもよいし、一体に形成されていてもよい。管状構造部51と周壁部5とが別体である場合、管状構造部51と周壁部5とは他の部品を介さずに接合することができる。管状構造部51と周壁部5とが一体に形成される場合、管状構造部51および周壁部5は、切削加工、深絞り加工、3Dプリンタによる成形などによって作製することができる。
【0038】
延出部53の先端部53aは、管状構造部51の内部空間51aと貫通孔5bの内部空間5d(図3参照)とが連通するように周壁部5に接続されている。図2および図3では、先端部53aの内部空間51aと貫通孔5bとは互いに同じ内径を有し、周壁部5の内面5cにおいて形成位置がほぼ一致している。そのため、管状構造部51の内周面51bと貫通孔5bの内周面5eとは、滑らかに連続した放音路57を形成している。
貫通孔5bの外面5a側の外部開口5fは、時計ケース2の外部空間60に開放されている。
【0039】
放音構造部3(管状構造部51)とムーブメント1とは接続部54,54を介して互いに固定されているため、時計10は、模式的には図4に示す構造であるといえる。
図4に示すように、管状構造部51は、ムーブメント1と接続された接続基部52aを有する。管状構造部51の内部空間51aは、時計ケース2の外部開口5fを通して外部空間60と連通している。
なお、図2では、管状構造部51の接続基部52aは、接続部54を介して間接的にムーブメント1に接続されているが、接続基部52aは、直接、ムーブメント1に接続されていてもよい。例えば、管状構造部51の接続基部52aが地板11に当接している構造が可能である。
【0040】
管状構造部51は、押出加工、引抜加工、ロール成形、深絞り加工などにより作製してもよいし、金属粉末を用いて3Dプリンタにより形成した成形物を焼結する方法により作製してもよい。また、樹脂を用いる場合には射出成形等を採用できる。管状構造部51は、切削加工によって作製してもよい。
【0041】
次に、時計10の動作について説明する。
図5に示すように、アンクル36がアンクル真を中心に回動すると、爪石105はがんぎ車35の歯部104の先端に接触する。この際、アンクルハコが取り付けられたアンクルビームはドテピン(図示略)に接触する。
アンクル36は、爪石105ががんぎ車35の歯部104に接触する際、および、アンクルビームがドテピンに接触する際に、振動が生じる。
また、てんぷ40は、ひげぜんまいから伝えられた動力によって一定の振動周期で正逆回転するため、回転方向が変わる際に、振動が生じる。
【0042】
図2図3および図5に示すように、アンクル36、がんぎ車35、ドテピンおよびてんぷ40に生じた振動は、地板11および前記受に伝えられる。地板11に伝えられた振動は、接続部54を通して管状構造部51の接続基部52aに伝えられる。
管状構造部51の振動によって生じた音(例えば刻音)は、管状構造部51の内部空間51aを経て、外部開口5fを通して外部空間60に伝えられる。
【0043】
このように、時計10は、接続基部52aを有する管状構造部51を有し、管状構造部51の内部空間51aが外部開口5fを通して外部空間60と連通しているため、ムーブメント1の振動によって生じた音は、管状構造部51の内部空間51aを経て、外部開口5fを通して外部空間60に伝えられる。
したがって、時計10は、ムーブメント1で生じた振動(例えばアンクル36が発生する振動)の振動源に近い場所(接続基部52a)で振動を音に変換することができるため、効率的に音を外部に伝えることができる。この音は管状構造部51の内部空間51aでの共鳴により音量を増して外部に発せられるため、ムーブメント1で生じた音を大きな音量で外部に伝えることができる。
時計10は、管状構造部51と時計ケース2との間に区画された空間56が密閉構造となるため、管状構造部51に水が入っても、ムーブメント1等への浸水を防ぐことができる。よって、十分な防水性を確保できる。
また、時計10は、振動部(接続基部52a)が管状構造部51にあるため、時計ケース2に振動部がある場合(例えば周壁部5に薄肉部がある場合)に比べて、外力が振動部に作用しにくい。そのため、時計10は強度的に優れている。
【0044】
時計10は、管状構造部51の一部であって内部空間51aに面する接続基部52aにムーブメント1の振動が伝えられるため、ムーブメント1の振動を効率よく管状構造部51の内部空間51aに伝えることができる。また、時計10の構造を簡略にでき、小型化および低コスト化を図ることができる。
【0045】
時計10は、管状構造部51が、アンクル36等を支持している地板11に接続されているため、アンクル36等に生じた振動が効率よく管状構造部51に伝えられる。よって、ムーブメント1で生じた音を効率的に、大きな音量で外部に伝えることができる。
【0046】
時計10は、管状構造部51の先端部53aが周壁部5の内面5cに接合されている構造であるため、管状構造部51は時計ケース2の外面から突出していない。すなわち、管状構造部51は時計ケース2の外面に対して非突出となる。そのため、時計10は、小型化が可能であり、意匠性の点でも優れている。
【0047】
時計10は、管状構造部51の内部空間51aは、管状構造部51の両端部においてそれぞれ外部開口5fを通して外部空間60と連通しているため、ムーブメント1で生じた音を2つの外部開口5fを通して効率的に外部に伝えることができる。
【0048】
[第2実施形態]
図6は、第2実施形態にかかる時計10Aの構造を模式的に示す構成図である。
時計10Aは、ムーブメント1と、時計ケース2と、管状構造部51A(中空構造部)を有する放音構造部3Aとを備えている。管状構造部51A(中空構造部)の一部である接続基部52Aa(振動部)は、管状構造部51Aの他の部分に比べて薄肉化されている。接続基部52Aaの内面は、管状構造部51Aの内部空間51Aaに面している。接続基部52Aaは、直接または間接にムーブメント1に接続されている。接続基部52Aaを薄肉部ともいう。
管状構造部51Aと時計ケース2との間に区画された空間56Aは密閉構造となっている。
【0049】
接続基部52Aaは、薄肉であるため振動しやすいことから、ムーブメント1の振動が管状構造部51Aの内部空間51Aaに伝わりやすくなる。したがって、ムーブメント1で生じた音(例えば刻音)を、管状構造部51Aの内部空間51Aaを通して効率的に、大きな音量で外部に伝えることができる。
接続基部52Aaは、薄肉であるため機械的強度が低いが、管状構造部51Aは時計ケース2の内部に形成されているため、外力が接続基部52Aaに作用しにくい。よって、耐久性の低下の問題は生じない。
【0050】
なお、時計10Aでは、接続基部52Aaの全体が薄肉とされているが、接続基部の一部のみが薄肉部であってもよい。
【0051】
[第3実施形態]
図7は、第3実施形態にかかる時計10Bの構造を模式的に示す構成図である。
時計10Bは、ムーブメント1Bと、時計ケース2と、放音構造部3Bとを備えている。
ムーブメント1Bは、図5に示すムーブメント1と同様の構成に加え、一対のハンマー66,66を有する。
放音構造部3Bは、管状構造部51B(中空構造部)と、管状構造部51Bに接続された一対のゴング65,65とを備え、時計ケース2内に設けられている。
【0052】
管状構造部51Bは、中央部52Bと、中央部52Bの両端から周壁部5に近づく方向に延出する延出部53B,53Bとを有する。
延出部53Bの先端部53Baは、周壁部5の内面5cに液密に接合されているため、管状構造部51Bと時計ケース2との間に区画された空間56Bは密閉構造となる。
延出部53Bの先端部53Baは、管状構造部51Bの内部空間51Baと貫通孔5bの内部空間とが連通するように周壁部5に接続されている。
なお、管状構造部51Bは周壁部5と別体であってもよいし、一体に形成されていてもよい。
【0053】
一対のゴング65,65は、周壁部5に沿う円弧状に形成され、それぞれ管状構造部51Bの中央部52Bの一部である接続基部52Ba,52Ba(振動部)の外面に固定されている。ゴング65,65は、空間56Bに収容されている。
【0054】
管状構造部51Bに対するゴング65,65の固定は、溶接、ネジ止め等を採用できる。ゴング65は、管状構造部51Bに一体に形成されていてもよい。また、ゴング65,65は、振動を管状構造部51Bに伝えることができればよく、管状構造部51Bに固定されずに直接または間接に管状構造部51Bに接している構造であってもよい。
【0055】
接続基部52Baの内面は、管状構造部51Bの内部空間51Baに面している。一対の接続基部52Ba,52Baは、中央部52Bの長さ方向に間隔をおいて配置されている。
【0056】
ハンマー66,66は、ムーブメント1Bの地板(図示略)等に回転軸66a,66aを中心として回動可能に支持されている。ハンマー66,66は、回動によってそれぞれゴング65,65を打つことができるように構成されている。
【0057】
ハンマー66,66がゴング65,65を打つことによってゴング65,65に生じた振動は、管状構造部51Bの接続基部52Baに伝えられる。
管状構造部51Bの振動によって生じた音は、管状構造部51Bの内部空間51Baを経て、外部開口5fを通して外部空間60に伝えられる。そのため、ムーブメント1Bで生じた音を効率的に、大きな音量で外部に伝えることができる。
時計10Bは、管状構造部51Bと時計ケース2との間に区画された空間56Bが密閉構造となるため、防水性を確保できる。
時計10Bは、ゴング65,65を有するため、大きな音を外部に伝えることができる。
【0058】
[第4実施形態]
図8は、第4実施形態にかかる時計10Cの構造を模式的に示す構成図である。
時計10Cは、ムーブメント1と、時計ケース2と、放音構造部3Cとを備えている。
放音構造部3Cは、複数、例えば4つの管状の管状構造部51C(中空構造部)を有する。管状構造部51Cの一端部51Cb(接続基部52Ca,振動部)には、周壁部5の径方向内方に向けて突出する板状の接続部54Cが形成されている。
接続部54Cは固定具55によってネジ止め等により地板11に固定されている。地板11に対する複数の接続部54Cの接続位置は、地板11の周方向に異なる位置であることが好ましい。
【0059】
管状構造部51Cの他端部51Ccは、管状構造部51Cの内部空間51Caと貫通孔5bの内部空間とが連通するように周壁部5の内面5cに接続されている。他端部51Ccは、周壁部5の内面5cに液密に接合されているため、管状構造部51Cと時計ケース2との間に区画された空間56Cは密閉構造となる。
なお、管状構造部51Cは周壁部5と別体であってもよいし、一体に形成されていてもよい。
【0060】
ムーブメント1で生じた振動は、管状構造部51Cの接続基部52Caに伝えられる。
管状構造部51Cの振動によって生じた音は、管状構造部51Cの内部空間51Caを経て、外部開口5fを通して外部空間60に伝えられる。そのため、ムーブメント1Cで生じた音(例えば刻音)を効率的に、大きな音量で外部に伝えることができる。
時計10Cは、管状構造部51Cと時計ケース2との間に区画された空間56Cが密閉構造となるため、防水性を確保できる。
時計10Cは、管状構造部51Cの一端部51Cbがムーブメント1に接続されるため、管状構造部51Cを短くできる。そのため、時計ケース2の内部の空間56Cにおける省スペース化が可能である。
【0061】
[第5実施形態]
図9は、第5実施形態にかかる時計10Dの構造を模式的に示す構成図である。
時計10Dの時計ケース2Dは、貫通孔5bがラグ8に達している点で、図1等に示す時計10と異なる。貫通孔5bの外部開口5Dfは一部または全部がラグ8(詳しくは第1ラグ8a,8aおよび第2ラグ8b,8b)の外面8cに形成されている。
時計10Dは、外部開口5Dfの少なくとも一部がラグ8に形成されているため、周壁部5における設計上の制約が少なくなることから、時計ケース2Dの設計の自由度の点で好適である。
【0062】
[第6実施形態]
図10は、第6実施形態にかかる時計10Eの構造を模式的に示す構成図である。
時計10Eは、放音構造部3Eがゴング65,65を備えていない点で図7に示す時計10Bと異なる。
ハンマー66,66は、回転軸66a,66aを中心として回動することによって、管状構造部51Bの中央部52Bの一部である被打部52Bb,52Bb(振動部)の外面を打つことができる。被打部52Bbの内面は管状構造部51Bの内部空間51Baに面している。
【0063】
ハンマー66,66が被打部52Bb,52Bbを打つことによって管状構造部51Bは振動する。管状構造部51Bの振動によって生じた音は、内部空間51Baを経て、外部開口5fを通して外部空間60に伝えられる。そのため、ムーブメント1Bで生じた音を効率的に、大きな音量で外部に伝えることができる。
時計10Eは、管状構造部51Bと時計ケース2との間に区画された空間56Bが密閉構造となるため、防水性を確保できる。
【0064】
時計10Eは、ハンマー66,66によって管状構造部51Bに直接、打撃を加え、管状構造部51Bを大きく振動させることができるため、外部開口5fを通して発せられる音の音量を大きくできる。
また、時計10Eは、ゴングが不要であるため、時計ケース2の内部の空間56Bにおける省スペース化が可能である。そのため、時計10Eの小型化を図ることができる。
【0065】
なお、本発明の技術範囲は上記実施の形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
図11は、第1実施形態にかかる時計10の変形例である時計10Fの一部を模式的に示す構成図である。
時計10Fは、時計ケース2に形成された貫通孔5b内に、貫通孔5bを閉止するフィルタ68が設けられている点で、図1等に示す時計10と異なる。
フィルタ68は、管状構造部51から外部空間60への音の伝わりを阻害することがなく、しかも外部からの異物侵入を妨げることができるものが選択される。フィルタ68としては、特に限定されず、例えば多数の通気孔を有する樹脂フィルム、金属膜などが使用できる。フィルタ68は、金属、樹脂などからなる繊維で構成することもできる。
【0066】
図12は、中空構造部の他の例である中空構造部51Gを示す図である。
中空構造部51Gは、向かい合う板状の第1および第2壁部61,62と、第1および第2壁部61,62の周縁の一部に形成された側壁部63とを備えている。中空構造部51Gは時計ケース2内に設けられている。
第1壁部61は、ムーブメント1に直接または間接に接続された振動部となる。中空構造部51Gと時計ケース2との間に区画された空間は密閉構造となる。中空構造部51Gの内部空間51Gaは、第1および第2壁部61,62と側壁部63とで区画された空間であり、周壁部5の外部開口5Gfを通して外部空間60と連通している。
【0067】
この構成によれば、板状の第1壁部61がムーブメント1に接続されているため、第1壁部61の共振周波数を調整することによって、ムーブメント1の振動をより効率よく外部に伝えることができる。
また、音源がミニッツリピータである場合には、第1壁部61の共振周波数を調整することによって、ミニッツリピータの音色を調整することができる。
【0068】
[第7実施形態]
図13は、第7実施形態にかかる時計10Hの内部構造を示す平面図である。
時計10Hでは、放音構造部3Hの管状構造部51Hの延出部53Hが、周壁部5に近づくにつれて内径が大きくなる形状とされている。また、周壁部5に形成された貫通孔5Hbは、周壁部5の内面5cから外部開口5Hfに向かうにつれて内径が大きくなる形状である。時計10Hは、これらの点において、図2に示す第1実施形態の時計10と異なる。
延出部53Hの先端部53Haにおける管状構造部51Hの内径D2は、接続基部52aにおける管状構造部51Hの内径D1より大きい。
【0069】
貫通孔5Hbの内周面5Hb1は、貫通孔5Hbの中心軸に対する傾斜角度が周壁部5の内面5cから外部開口5Hfに向かうにつれて大きくなる形状、例えばラッパ状であることが好ましい。
貫通孔5Hbの内面5cにおける内径D3は、先端部53Haにおける管状構造部51Hの内径D2に等しい。
外部開口5Hfの内径D4は、貫通孔5Hbの内面5cにおける内径D3より大きい。そのため、内径D4は、接続基部52aにおける管状構造部51Hの内径D1より大きい。
【0070】
時計10Hは、外部開口5Hfの内径D4が、接続基部52aにおける管状構造部51Hの内径D1より大きいため、音の回折などの影響を小さくし、外部開口5Hfを通して発せられる音の音量を大きくできる。よって、ムーブメント1で生じた音(例えば刻音)を、より大きな音量で外部に伝えることができる。
【0071】
なお、管状構造部51Hの延出部53Hは、周壁部5に近づくにつれて内径が大きくなる形状であるが、長さ方向に一定の内径を有する形状であってもよい。
貫通孔5Hbの内周面5Hb1は、ラッパ状に限らず、貫通孔5Hbの中心軸に対する傾斜角度が周壁部5の内面5cから外部開口5Hfにかけて一定である形状、例えば円錐台形状であってもよい。
【0072】
[第8実施形態]
図14は、第8実施形態にかかる時計10Iの構造を模式的に示す構成図である。
時計10Iは、ムーブメント1Iの表面(例えば下面1Ia)に当接凸部18が形成されている点で、図6に示す時計10Aと異なる。
当接凸部18は、例えば、断面矩形状(例えば中心軸方向が当接凸部18の突出方向と一致する円柱状)であり、ムーブメント1Iの下面1Iaに、下方(接続基部52Aaに近づく方向)に突出して形成されている。
ムーブメント1Iは、当接凸部18の突出端面18aにおいて接続基部52Aa(薄肉部)の一部、例えば接続基部52Aaの中央部のみに当接している。
【0073】
ムーブメント1Iは、1または複数の弾性支持部71によって時計ケース2の内面に支持されている。弾性支持部71は、例えばゴム、シリコーン系樹脂、アクリレート系樹脂等の弾性材料からなり、弾性変形可能である。弾性支持部71は、ムーブメント1Iの外面と時計ケース2の内面との間に介在することによって、ムーブメント1Iを時計ケース2に対して位置決めすることができる。
【0074】
時計10Iは、ムーブメント1Iが当接凸部18において接続基部52Aaの一部のみに当接するため、接続基部52Aaが振動しやすい。そのため、ムーブメント1Iで生じた音(例えば刻音)を、管状構造部51Aを通して大きな音量で外部に伝えることができる。
時計10Iは、ムーブメント1Iが弾性支持部71に支持されているため、振動が時計ケース2に伝わりにくいことから、ムーブメント1Iの振動を優先的に接続基部52Aaに伝えることができる。そのため、ムーブメント1Iの音を、より大きな音量で外部に伝えることができる。
【0075】
図14に示す時計10Iでは、ムーブメント1Iと接続基部52Aaとは、ムーブメント1Iに形成された当接凸部18において当接しているが、当接凸部は接続基部に形成されていてもよい。すなわち、ムーブメントと接続基部とは、接続基部に形成された当接凸部において当接し、それによってムーブメントが接続基部の一部にのみ当接してもよい。また、ムーブメントと接続基部の両方に当接凸部が形成され、これらの当接凸部どうしが当接してもよい。
【0076】
[第9実施形態]
図15は、第9実施形態にかかる時計10Jの構造を模式的に示す構成図である。
時計10Jでは、ムーブメント1Jの表面(例えば下面1Ja)に、当接凸部19が形成されている。
時計10Jは、当接凸部19が湾曲凸状である点で、図14に示す時計10Iと異なる。当接凸部19は、例えば球面状、楕円球状などの外面を有する形状である。当接凸部19は、例えば頂点19aにおいて接続基部52Aaの一部、例えば接続基部52Aaの中央部のみに当接している。
【0077】
時計10Jでは、当接凸部19が頂点19aにおいて接続基部52Aaに点接触するため、当接凸部19と接続基部52Aaとの接触面積が小さくなる。そのため、接続基部52Aaは振動しやすくなる。よって、ムーブメント1Iで生じた音(例えば刻音)を、管状構造部51Aを通して大きな音量で外部に伝えることができる。
【0078】
[第10実施形態]
図16は、第10実施形態にかかる時計10Kの構造を模式的に示す構成図である。
時計10Kの管状構造部51Aは、一方の端部のみに外部開口5fを有する閉管構造である。時計10Kでは、接続基部52Ka(薄肉部)は、最奥端壁51Ab(最奥端)に形成されている。管状構造部51Aの内径は長さ方向に一定であってよい。
ムーブメント1Kの表面(例えば側面1Ka)には当接凸部18Kが形成されている。当接凸部18Kは、接続基部52Kaの一部、例えば接続基部52Kaの中央部のみに当接している。
【0079】
管状構造部51Aの最奥端壁51Abから外部開口5fまでの長さL(接続基部52Kaから外部開口5fまでの長さ)は、式(1)で表されることが好ましい。長さLは、管状構造部51Aの長さである。
λ(2n−1)/4 ・・・(1)
(λはムーブメントが発する音の波長。nは自然数。)
【0080】
長さLは、λ(2n−1)/4に一致してもよいが、λ(2n−1)/4に一致していない場合でも、例えばλ(2n−1)/4の値に対して±10%の範囲にあれば、「長さLはλ(2n−1)/4で表される」とみなすことができる。
【0081】
時計10Kでは、管状構造部51Aの長さLが式(1)で表されるため、管状構造部51Aで共鳴を起こすことができ、ムーブメント1Kの音を、より大きな音量で外部に伝えることができる。
【0082】
ここで、ムーブメントが発生する音の周波数は、3600Hz〜19000Hzであることが知られている。中でも、13000Hz〜19000Hzが主要な周波数である。
例えば、気温23℃とした場合の音速は約346m/sであり、周波数の範囲を3600Hz〜19000Hzとした場合、上記の周波数に対応した音波の波長は、約18mm〜96mmとなる。同じく周波数の範囲を13000Hz〜19000Hzとした場合、上記の周波数に対応した音波の波長は、約18mm〜27mmとなる。
周波数の範囲を13000Hz〜19000Hzとした場合、上記の式に波長の値18mm〜96mmを適用すると、n=1のとき、Lは4.5mm〜24mmとなる。また、周波数の範囲を3600Hz〜19000Hzとした場合、上記の式に波長の値18mm〜27mmを適用すると、n=1のとき、Lは4.5mm〜6.75mmとなる。
【0083】
時計10Kは、一つの接続基部52Kaに対して管状構造部51Aを一つのみ有するが、前記時計は、一つの振動部に対して複数の管状構造部(中空構造部)があってもよい。その場合、前記一つの振動部の振動によって生じた音を前記複数の管状構造部によって外部に伝えることができる。
【0084】
図2に示す第1実施形態の時計10のように、管状構造部51が、両方の端部に外部開口5fを有する開管構造である場合、管状構造部51の長さ(一方の外部開口5fから他方の外部開口5fまでの長さ)は、式(2)で表されることが好ましい。
λ・n/4 ・・・(2)
(λはムーブメントが発する音の波長。nは自然数。)
【0085】
前記長さは、λ・n/4に一致するのが好ましいが、λ・n/4に一致していない場合でも、例えばλ・n/4の値に対して±10%の範囲にあれば、「前記長さはλ・n/4で表される」とみなすことができる。
【0086】
管状構造部51の長さLが式(2)で表される場合も、管状構造部51で共鳴を起こすことができるため、ムーブメントの音を、より大きな音量で外部に伝えることができる。
【0087】
ムーブメントの音源は、こはぜ、つづみ車でもよい。こはぜ、つづみ車は、例えば地板に支持されている構成とすることができる。こはぜ、つづみ車は巻真を回転させる際に振動を生じさせる。こはぜ、つづみ車によって生じた音も、地板等を介して中空構造部によって効率よく外部に伝えることができる。
ムーブメントの音源は、ルモントワール機構(定力機構、定トルク機構)に設けられるストップ車であってもよい。一般的にルモントワール機構は、ストップ車、ストッパ、定力ばねを有し、香箱のトルクによって駆動されるストップ車に対して、ストッパが一定周期で係合と解除を繰り返すことによって、ストップ車に接続された定力ばねを巻き上げる。また、定力ばねが発生するトルクによって、調速機を含む輪列、およびストッパを駆動する。ストップ車とストッパとが係合する際には振動が生じるため、この振動によって生じた音を中空構造部によって効率よく外部に伝えることができる。
音源は、アラーム装置、ミニッツリピータ、スピーカ等であってもよい。アラーム装置、ミニッツリピータ、スピーカ等は、ムーブメントの一部である。
【0088】
本発明の時計は、中空構造部の一部が時計ケースの外面から突出している構成も可能である。
図1の時計10では、放音構造部3は2つの管状構造部51(中空構造部)を有するが、放音構造部を構成する中空構造部の数は特に限定されず、1でもよいし、2以上の任意の数でもよい。
図1の時計10では、管状構造部51は周壁部5に接続され、周壁部5の外部開口5fを通して外部空間60と連通しているが、中空構造部は裏蓋部に接続され、裏蓋部の外部開口を通して外部空間と連通していてもよい。
【符号の説明】
【0089】
1,1B、1I,1J,1K…ムーブメント
2,2D…時計ケース(ケース)
51a,51Aa,51Ba,51Ca,51Ga・・・内部空間
5f,5Df,5Gf,5Hf…外部開口
10,10A,10B,10C,10D,10E,10F,10H,10I,10J,10K…時計
11…地板
18,18K,19…当接凸部
51,51A,51B,51C,51H…管状構造部(中空構造部)
51Ab…最奥端壁(最奥端)
51G…中空構造部
52a,52Aa,52Ba,52Ca,52Ka…接続基部(振動部)
52Aa,52Ka…接続基部(薄肉部、振動部)
52Bb…被打部(振動部)
56,56A,56B,56C…空間(中空構造部とケースとの間に区画された空間)
60…外部空間
65…ゴング
66…ハンマー
71…弾性支持部
D1…接続基部(振動部)における管状構造部(中空構造部)の内径
D4…外部開口の内径
L…管状構造部(中空構造部)の接続基部(振動部)から外部開口までの長さ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16