特許第6872356号(P6872356)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6872356車両のためのブレーキシステム、ブレーキシステムを運転するための方法およびこのようなブレーキシステムを備えた車両
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6872356
(24)【登録日】2021年4月21日
(45)【発行日】2021年5月19日
(54)【発明の名称】車両のためのブレーキシステム、ブレーキシステムを運転するための方法およびこのようなブレーキシステムを備えた車両
(51)【国際特許分類】
   B60T 8/96 20060101AFI20210510BHJP
【FI】
   B60T8/96
【請求項の数】11
【外国語出願】
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-235493(P2016-235493)
(22)【出願日】2016年12月5日
(65)【公開番号】特開2017-132454(P2017-132454A)
(43)【公開日】2017年8月3日
【審査請求日】2019年11月20日
(31)【優先権主張番号】10 2015 224 665.5
(32)【優先日】2015年12月9日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100177839
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 玲児
(74)【代理人】
【識別番号】100172340
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 始
(72)【発明者】
【氏名】ハーグ,フローリアン
(72)【発明者】
【氏名】マイヤー,ベルンハルト
(72)【発明者】
【氏名】フォレルト,ヘルベルト
(72)【発明者】
【氏名】ヴィーゲル,マルクス
(72)【発明者】
【氏名】ブラント,ミルコ
(72)【発明者】
【氏名】シェンフス,トーマス
【審査官】 大谷 謙仁
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−097687(JP,A)
【文献】 特開2014−094707(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60T 8/96
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両(3)のためのブレーキシステム(1)であって、
ブレーキ倍力装置(5)と電子式の制動力配分システム(7)とを有しており、
前記ブレーキ倍力装置(5)と前記電子式の制動力配分システム(7)とが第1の通信接続(11)を介して互いに接続されている形式のものにおいて、
前記第1の通信接続(11)とは異なる第2の通信接続(13)が、前記ブレーキ倍力装置(5)と前記電子式の制動力配分システム(7)との間に設けられており、前記第2の通信接続(13)は、前記ブレーキ倍力装置(5)の状態に関する第1の情報、および車両(3)の運転者の制動要求に関する第2の情報を伝送するように設定されていることを特徴とする、車両(3)のためのブレーキシステム(1)。
【請求項2】
前記第2の通信接続(13)が、前記第1の情報を伝送するための第1の通信チャンネル(19)と、前記第2の情報を伝送するための、前記第1の通信チャンネル(19)とは異なる第2の通信チャンネル(21)とを有していることを特徴とする、請求項1記載のブレーキシステム(1)。
【請求項3】
前記第2の通信接続(13)が、前記第1の情報および前記第2の情報を伝送するように設定された通信チャンネル(25)を有していることを特徴とする、請求項1記載のブレーキシステム(1)。
【請求項4】
前記第2の通信接続(13)が制御装置(27)を有しており、該制御装置(27)が、前記第1の情報と前記第2の情報との関連付けに依存して前記通信チャンネル(25)を制御するように設定されていることを特徴とする、請求項3記載のブレーキシステム(1)。
【請求項5】
前記第2の通信接続(13)が、電流インターフェース、電圧インターフェースまたはPWMインターフェースを有していることを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項記載のブレーキシステム(1)。
【請求項6】
前記第1の情報および/または前記第2の情報の様々な値に、前記第2の通信接続(13)の様々な電流値および/または電圧値が割り当てられていることを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項記載のブレーキシステム(1)。
【請求項7】
前記第2の通信接続(13)に別個の電圧供給部が割り当てられていることを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項記載のブレーキシステム(1)。
【請求項8】
車両(3)のためのブレーキシステム(1)を運転するための方法において、
ブレーキ倍力装置(5)の状態に関する第1の情報、および車両(3)の運転者の制動要求に関する第2の情報を、前記ブレーキ倍力装置(5)と電子式の制動力配分システム(7)との間の第1の通信接続(11)とは別個に、前記ブレーキ倍力装置(5)と前記電子式の制動力配分システム(7)との間の第2の通信接続(13)を介して伝送する、車両(3)のためのブレーキシステム(1)を運転するための方法。
【請求項9】
前記ブレーキシステム(1)は、請求項1から7までのいずれか1項記載のブレーキシステム(1)である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記第2の通信接続(13)を、前記第1の通信接続(11)が故障したときにだけ使用することを特徴とする、請求項8または9に記載の方法。
【請求項11】
車両(3)において、請求項1から7までのいずれか1項記載のブレーキシステム(1)を備えている、車両(3)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のためのブレーキシステム、ブレーキシステムを運転するための方法およびこのようなブレーキシステムを備えた車両に関する。
【背景技術】
【0002】
このようなブレーキシステムは、特にブレーキ倍力装置と電子式の制動力配分システムとを有しており、この場合、ブレーキ倍力装置と電子式の制動力配分システムとが第1の通信接続を介して互いに接続されている。ブレーキ倍力装置は、車両の運転者の制動力を増幅し、それによって運転者により特にマスタブレーキシリンダ内に生ぜしめられた液圧を高めるように設定されている。ブレーキ倍力装置は、自律的に、つまり運転者の手助けなしに、特にそれが車両の機能によって要求されたときに、圧力を上昇させることができる。
【0003】
電子式の制動力配分システム、特にESPシステム(エレクトロニックスタビリティプログラム)は、運転者および/またはブレーキ倍力装置によってもたらされたブレーキ圧を、車両のホイールに個別に対応配設された個別のブレーキピストンに配分するように設定されている。この場合、ブレーキ圧の個別の配分、およびひいては特にホイール個別のブレーキ圧調整が可能であり、従ってホイール個別の制動作用も可能である。好適な形式で、電子式の制動力配分システムも、アクティブに、特にブレーキ倍力装置に依存することなしに、液圧、特にブレーキ圧を生ぜしめることができるように設定されている。電子式の制動力配分システムは好適な形式で、自動車の電子制御ユニット(エンジンコントロールユニット−ECU)内に集積化されているかまたは実装されている。
【0004】
この第1の通信接続は、好適な形式でCAN接続またはFlexRay接続として構成されている。
【0005】
ブレーキ倍力装置が故障すると、制動力の増幅は停止されるが、これは電子式の制動力配分システムによって好適に補正され得る。この場合、運転者は、車両のブレーキペダルを操作することによって、増幅されていない圧力をマスタブレーキシリンダ内に生ぜしめることができる。この、電子式の制動力配分システムによって測定される圧力は、運転者の制動要求に比例しており、従って、電子式の制動力配分システムによるアクティブな圧力上昇のための調整値として使用することができる。従って、このフォールバックレベル内で、制動力は電子式の制動力配分システムによって増幅される。しかしながら、電子式の制動力配分システムによる液圧式の制動力補正は、改善の余地がある。マスタブレーキシリンダ圧が調整値として使用されるので、制動力アシストは、運転者がマスタブレーキシリンダ内に圧力を形成してからはじめて行われ得る。アクティブなブレーキ倍力装置なしでは、一般的にマスタブレーキシリンダ内の圧力を上昇させるために運転者が必要とする力は、アクティブなブレーキ倍力装置を備えている場合よりも著しく大きい。従って、制動作用を得るために、高い初期力が必要となる。
【0006】
さらに、第1の通信接続が故障すると、電子式の制動力配分システム内に、ブレーキ倍力装置の状態に関する情報が存在しなくなる。つまりここでは、ブレーキ倍力装置がその増幅された機能をなお維持できるかどうかは不明である。このような状況において、電子式の制動力配分システムによって、マスタブレーキシリンダ圧に基づいてブレーキ圧の増幅が行われると、すなわちブレーキ倍力装置が実際にまだアクティブである場合、可能な限り運転者制動要求の2重の増幅が行われることになる。このような理由から、通信が故障した場合には、通常は電子式の制動力配分システムにより減少されたブレーキ倍力が行われるので、場合によっては2重の増幅もまだ許容され得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、改善された特性を有していて、この場合、特に前記欠点を有してない、車両のためのブレーキシステムを発展させることである。さらに本発明の課題は、相応に改善された特性を有する、ブレーキシステムを運転するための方法、並びにこのようなブレーキシステムを備えた車両を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この課題は、独立請求項の対象が提供されることによって解決される。好適な実施形態は従属請求項により明らかである。
【0009】
本発明によれば、第1の通信接続とは異なる第2の通信接続が、ブレーキ倍力装置と電子式の制動力配分システムとの間に設けられており、第2の通信接続は、ブレーキ倍力装置の状態に関する第1の情報、および車両の運転者の制動要求に関する第2の情報を伝送するように設定されていることが企図されている。これによって、第1の通信接続が故障した場合でも確実に、ブレーキ倍力装置の状態も運転者の制動要求も、ブレーキ倍力装置から電子式の制動力配分システムに伝送され得るので、常に確実な情報が提供される。これによって、2重の増幅または減少されたブレーキ倍力は避けられ、それと同時に、運転者のために制動作用を得るための初期力の減少が得られる。
【0010】
通信接続とは、特にこの接続を介して情報および/またはデータを伝送することができる接続のことと理解される。この場合、接続とは好適には、電気的な接続または電子的な接続のことである。通信接続は、特に1つの信号ラインまたは複数の信号ラインの形で、1つの通信チャンネルまたは複数の通信チャンネルを有していてよい。また、例えば無線を介した、特にブルートゥース(登録商標)をまたはWLANを介した、または光学インターフェース例えば赤外線インターフェースを介した、単数または複数の通信チャンネルを有するワイヤレスの通信接続も可能である。またガラス繊維接続も考えられる。
【0011】
第2の通信接続は、特に第1の通信接続とは無関係に構成されている。これによって、第1の通信接続が故障した場合でも、第2の通信接続の作動が保証される。
【0012】
第2の通信接続は好適にはもっぱら、第1の情報および第2の情報を伝送するように設定されている。つまり、第2の通信接続は、特に好適な形式で、その他の追加的な情報および/またはデータを伝送するためには使用されない。
【0013】
ここでは、ブレーキ倍力装置の状態とは、特にブレーキ倍力装置の機能が作動可能であること、つまり、ブレーキ倍力装置が機能しているか否かという意味である。ブレーキ倍力装置を介して、好適にはブレーキ倍力装置が機能しているか否かの2進法的な情報が伝送される。
【0014】
運転者の制動要求とは、ここでは一般的に、運転者が、特にブレーキペダルの操作を介して、制動したいという要求を知らせる、という意味である。また好適には、制動要求とは、運転者が制動要求を信号で伝えるか否かというように伝送される2進法的な情報でもある。従って、本発明の好適な実施態様によれば、運転者の制動要求が量的にどの程度欠落しているかは重要ではない。これはむしろ、特に運転者によってマスタブレーキシリンダ内で上昇された圧力を用いて容易に算出することができる。
【0015】
運転者の制動要求は、好適な形式で、ブレーキ倍力装置内に集積化されているかまたは実装されている制動要求識別手段を用いて算出される。それに応じて、運転者の制動要求は、第2の通信接続によって、ブレーキ倍力装置特に制動要求識別手段から電子式の制動力配分システムに伝送され得る。
【0016】
第2の通信接続は、好適な形式で、ブレーキ倍力装置のコントロールユニットとは無関係に、特にそのマイクロコントローラとは無関係に機能するものでもある。つまり、第2の通信接続は、ブレーキ倍力装置の状態に関する情報、および運転者の制動要求に関する情報を、好適にはブレーキ倍力装置のコントロールユニットの状態とは無関係に伝送する。
【0017】
第1および第2の情報をベースにして、電子式の制動力配分システムは、メイン通信接続とも称呼される第1の通信接続が故障した場合でも、ブレーキ倍力装置による増幅が行われているか否かを識別することができる。これによって、ブレーキ倍力装置が機能している場合の2重増幅の問題、若しくはブレーキ倍力装置が故障している場合の不必要に低減される増幅の問題は、完全に取り除かれ得る。さらに、運転者の制動要求に関する第2の情報は、電子式の制動力配分システムによるブレーキ倍力を早期に、つまりより小さいペダル操作力で既に初期化するために、利用され得る。例えば電子式の制動力配分システムによる適切な圧力上昇によって、運転者にとって快適なペダル感覚で初期力の減少が得られる。
【0018】
本発明の発展形態によれば、第2の通信接続が、第1の情報を伝送するための第1の通信チャンネルと、第2の情報を伝送するための、第1の通信チャンネルとは異なる第2の通信チャンネルを有していることが企図されている。好適な形式で、これらの通信チャンネルは互いに独立している。特に、第1および第2の情報は、別個のラインを介して、ブレーキ倍力装置から電子式の制動力配分システムに伝送することができる。特にこれらの情報は、好適には信号として独立した2つの信号ラインで伝送される。これは、第2の通信接続を技術的に特に簡単に実現できるという利点を有している。
【0019】
本発明の発展形態によれば、第2の通信接続が、第1の情報および第2の情報を伝送するように設定された通信チャンネルを有していることが企図されている。特に好適には、第2の通信接続は、第1の情報および第2の情報のためにまさに1つの通信チャンネルを有している。つまり、第1の情報および第2の情報は、好適には同一の、正確には1つの通信チャンネルを介して伝送される。特にこれらの情報は好適には1つだけのラインによって伝送され、この場合、これらの情報は好適には2つ以上の状態を伝送することができる。この実施態様では好適には、ブレーキ倍力装置を電子式の制動力配分システムに接続するために、1つの通信チャンネル、特に1つのラインを必要とするだけである。従ってこの実施態様は、特に安価であり、しかも故障しにくい。
【0020】
本発明の発展形態によれば、第2の通信接続が制御装置を有しており、該制御装置は、第1の情報と第2の情報との関連付けに依存して通信チャンネルを制御するように設定されていることが企図されている。この制御装置は特に、第2の通信接続が、2つの情報を伝送するための正確に1つの、1つだけの通信チャンネルを有している場合に設けられている。この制御装置によって、2つの情報のいわばオーバーラップが生ぜしめられ、1つの通信チャンネルを介して伝送され得る。特にこの制御装置は好適には、2つの情報から、その瞬間的な値に応じて、通信チャンネルのための様々な状態を生ぜしめるように設定されている。原理的に、2進法的な2つの信号は、4つの状態に組み合わせることができる。ここに記載された、通信チャンネルを介しての信号伝送は好適には、もっぱらブレーキ倍力装置が機能していないときに利用される機能性を可能にする。従って、ブレーキ倍力装置が機能している場合のために、運転者がこの瞬間に制動要求を信号で伝えるか否かをさらに識別する必要はない。従って、伝送しようとする状態の数は3つに減少され、これらの状態は次の通りである:
a)ブレーキ倍力装置が機能している;
b)ブレーキ倍力装置が機能しておらず、運転者が制動要求を信号で伝えていない;
c)ブレーキ倍力装置が機能しておらず、運転者が制動要求を信号で伝えている。
【0021】
この場合、状態a)では、前述のように、運転者が制動要求を信号で伝えているか否かは重要ではない。
【0022】
制御装置は特に、第1の情報および第2の情報のための相応の2進法的な値から、上記の3つの状態の1つを生ぜしめ、これらの状態に割り当てられた相応の信号を通信チャンネルで生成するように設定されている。
【0023】
本発明の発展形態によれば、第2の通信接続が、電流インターフェース、電圧インターフェースまたはPWMインターフェースを有していることが企図されている。この場合、電流インターフェースとは特に、所定の電流、特に所定の電流値の調節に関する所定の値または状態を伝送するように設定されたインターフェースと理解される。電圧インターフェースとは特に、所定の電圧の調節に関する値または状態を伝送するように設定されたインターフェースと理解される。PWMインターフェースとは、パルス幅変調された信号を伝送するように設定されたインターフェースと理解される。この場合、特に、所定の電流または所定の電圧を、時間平均で、相応のパルス幅変調された信号を介して伝送することも可能である。ここに挙げられたインターフェースは、情報および/またはデータを伝送する、簡単で安価な通常の可能性を具現する。
【0024】
本発明の発展形態によれば、第1の情報および/または第2の情報の様々な値に、第2の通信接続の様々な電流値および/または様々な電圧値が割り当てられていることが企図されている。この場合、情報の値とは特に、それぞれの情報がどの2進法的な状態を占めるか、つまり第1の情報の場合、ブレーキ倍力装置が機能しているか否かの問い合わせ、第2の情報の場合、運転者が制動要求を信号で伝えるか否かの問い合わせと理解される。特に好適には、これらの様々な値および/またはこれらの値の組み合わせに、特に重なりの意味で、第2の通信接続および特に通信チャンネルの様々な電圧値が割り当てられている。
【0025】
第2の通信接続が2つの通信チャネル、つまり各情報のために1つの別個の通信チャンネルを有している場合、好適な形式で電圧信号は、ブレーキ倍力装置が機能しているか否かの情報を伝送する場合、状態「機能していない」のために0Vの電圧が使用されるように、用いられる。この場合、信号は、ブレーキ倍力装置の機能性を妨げる停電においても正しい。個別に伝送された情報の評価は、好適には車両のコントロールユニットで行われる。
【0026】
2つの情報のために正確に1つ、つまり1つだけの通信チャンネルを有している第2の通信接続の場合、好適には、電圧が0Vと12Vとの間で変化することができる電圧インターフェースが使用される。この場合、好適には、前記3つの状態a),b),c)のために所定の3つの異なる電圧値、特に好適には3つの電圧0V,6V,12Vが使用される。この場合、0Vにおいて、電圧供給部が故障した場合でも優勢な状態に状態b)が割り当てられ、それに従って、ブレーキ倍力装置は機能しなくなり、運転者は制動要求を信号で伝えなくなるようにすることが可能である。この場合、電子式の制動力配分システムは、圧力上昇が検知されると、圧力上昇を増幅するように駆動される。しかしながら、この場合、圧力上昇は、欠陥が存在するときにのみ可能である。何故ならば、このためには制動が必要だからであるが、この場合、状態b)は、まさに制動が検出されないときにだけ優勢となる。
【0027】
ブレーキ倍力装置が機能している状態a)は、好適には、6Vの信号で置き換えられる。これは、信号の連続的な監視を可能にする。何故ならば、ブレーキ倍力装置は通常運転中に機能しており、従って状態a)が優勢となるからである。この状態は、その他の点では、結局のところ0Vの信号を生成するケーブル破損、またはその他の、12Vの電圧が印加される欠陥とは明らかに異なっている。
【0028】
ブレーキ倍力装置が故障していて、追加的な運転者の制動要求が信号で伝えられた場合、状態c)が12Vの信号で置き換えられる。この信号において、電子式の制動力配分システムは、ブレーキ倍力のために必要な、運転者のための初期力を減少させる。
【0029】
本発明の発展形態によれば、第2の通信接続に別個の電圧供給部が割り当てられていることが企図されている。電圧供給部は特に好適には、ブレーキ倍力装置のための電圧供給部および/または第1の通信接続のための電圧供給部とは無関係である。これによって、ブレーキ倍力装置から電子式の制動力配分システムへの情報の伝送は、ブレーキ倍力装置の電圧供給部および/または第1の通信接続が故障した場合でも機能する。
【0030】
このために特に、第2の通信接続のために必要な構成要素に別個の電圧供給部から供給されるようになっている。これは、第2の通信接続が情報を伝送するための2つの別個の通信チャンネルを有していて、特にブレーキ倍力装置内に制動要求識別手段を有しているケースに該当し、第2の通信接続が2つの情報のために正確に1つの通信チャンネルを有している別のケースでは、追加的にさらに、制御装置が別個の電圧供給部により供給される。
【0031】
前記課題は、ブレーキ倍力装置の状態に関する第1の情報、および車両の運転者の制動要求に関する第2の情報が、ブレーキ倍力装置と電子式の制動力配分システムとの間の第1の通信接続とは別個に、特に無関係に、ブレーキ倍力装置と電子式の制動力配分システムとの間の第2の通信接続を介して伝送される、車両のためのブレーキシステムを運転するための方法が提供されることによっても解決される。この方法に関連して、特に、ブレーキシステムに関連して既に説明された前記利点が実現される。
【0032】
好適には、この方法の枠内で、前記実施例のいずれか1つに記載したブレーキシステムが運転される。
【0033】
本発明の発展形態によれば、第2の通信接続は、第1の通信接続が故障したときにだけ使用されることが企図されている。好適には、第2の通信接続は、第1の通信接続が故障したときにだけ作動される。これによって、特に資源にやさしい実施形態が具現され、同時に、第2の通信接続は、これが必要とされるときに提供される。第1の通信接続が損なわれていない限り、前記情報を必ずしも第2の通信接続を介して伝送させる必要はない。それにも拘わらず、第2の通信接続は、特に冗長性を生ぜしめるために、第1の通信接続と同時に使用されてもよい。
【0034】
最後に、前記課題は、前記実施例のいずれか1つに記載したブレーキシステムを有する車両が提供されることによっても解決される。この場合、特にブレーキシステムおよび方法に関連して既に説明された前記利点が実現される。
【0035】
この車両は、好適には複数のホイールを有していて、これらのホイールにそれぞれ個別のブレーキピストンが対応配設されており、この場合、電子式の制動力配分システムは、ブレーキ圧をホイールの個別のブレーキピストンに、特にホイール個別に配分するように設定されている。
【0036】
車両は、好適には自動車として、特に乗用車、トラックまたは輸送用車両として構成されている。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1】ブレーキシステムの第1実施例の概略図である。
図2】ブレーキシステムの第2実施例の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
本発明を以下に図面を用いて詳しく説明する。
【0039】
図1は、車両3、特に自動車のためのブレーキシステムの第1実施例の概略図を示す。ブレーキシステム1は、ブレーキ倍力装置5と電子式の制動力配分システム7とを有しており、この場合、電子式の制動力配分システム7は、特に車両3の中央コントロールユニット9内に実装されているかまたは集積化されている。中央コントロールユニット9は電子式の制動力配分システム7の一部であってもよい。
【0040】
ブレーキ倍力装置5と電子式の制動力配分システム7とは、ここでは概略的にしか示されていない第1の通信接続11、特にCANまたはFlexray接続を介して、情報および/またはデータを交換するために互いに接続されている。
【0041】
ブレーキシステム1は、第1の通信接続11とは異なる、特に独立した第2の通信接続13を有しており、この第2の通信接続13は、ブレーキ倍力装置5の状態に関する第1の情報および車両3の運転者の制動要求に関する第2の情報を伝送するように設定されている。
【0042】
この場合特に、制御装置15、特にブレーキ倍力装置5のマイクロコントローラが機能しているかどうかが検査され、この際に、運転者の制動要求が、ブレーキ倍力装置5に対応配設された制動要求識別手段17を介して検出される。
【0043】
第2の通信接続13は、ここでは第1の情報を伝送するための第1の通信チャンネル19と、この第1の通信チャンネル19とは異なる、第2の情報を伝送するための特に独立した第2の通信チャンネル21とを有している。通信チャンネル19,21は、それぞれ電流インターフェース、電圧インターフェースまたはパルス幅変調されたインターフェース、つまりPWMインターフェースを介して実現され得る。この場合、第1および/または第2の情報の様々な値に、様々な電流値および/または電圧値が割り当てられている。特に、ブレーキ倍力装置5若しくは制御装置15の機能していない状態に電圧値0Vが割り当てられているので、この状態は、制御装置15およびひいてはブレーキ倍力装置5の停電に基づく故障時においても、確実に第1の通信チャンネル19を介して伝送され得る。第2の通信接続13には、好適には別個の電圧供給部が対応配設されており、この電圧供給部はここでは、特に制動要求識別手段17に電圧を供給する。この別個の電圧供給部は特に、ブレーキ倍力装置5特に制御装置15のための電圧供給部および/または第1の通信接続部11のための電圧供給部に依存しない。
【0044】
中央コントロールユニット9によって、好適な形式で特に第2の通信接続13を介して伝送された情報に基づいて、ブレーキ倍力装置のための要求信号23が生成される。
【0045】
図2は、ブレーキシステム1の第2実施例の概略図を示す。同じおよび機能的に同じ構成要素には同じ符号が付けられているので、そのかぎりでは前記説明が参照される。この場合、第2の通信接続13は、ここでは正確に1つの、つまり1つだけの共通の通信チャンネル25を有しており、この通信チャンネル25は、第1の情報も、また第2の情報も伝送するように設定されている。
【0046】
第2の通信接続13はここでは制御装置27を有しており、この制御装置27は、特に制御装置15から得られる第1の情報と、特に制動要求識別手段17から得られる第2の情報との関連付けに基づいて通信チャンネル25を制御するように設定されている。これらの情報から制御装置27が、共通の通信チャンネル25のための状態若しくは重なりを生ぜしめる。
【0047】
第2の通信接続13はここでも、電流インターフェース、電圧インターフェースまたはPWMインターフェースを有していてよい。また好適には、ここでも、第1および第2の情報の値の様々な値若しくは重なりに、第2の通信接続13の様々な電流値および/または電圧値が割り当てられている。
【0048】
好適にはここでも、第2の通信接続13に別個の電圧供給部が対応配設されており、この別個の電圧供給部は、特にブレーキ倍力装置5、特に制御装置15のための電圧供給部および/または第1の通信接続11のための電圧供給部に依存しないことが企図されている。この場合、別個の電圧供給部は好適な形式で、制動要求識別手段17にも、また制御装置27にも電圧を供給する。
【0049】
共通の通信チャンネル25は、特に好適には3つの状態を伝送するように設定されており、これら3つの状態のうち、第1の状態では、ブレーキ倍力装置が機能していて、この場合、運転者の制動要求が存在するか否かは問題ではなく、第2の状態では、ブレーキ倍力装置5は機能しておらず、この場合、運転者は制動要求を信号で伝えず、また最後に第3の状態ではブレーキ倍力装置5は機能しておらず、この場合、運転者は制動要求を信号で伝える。特に好適には、これらの状態に様々な電圧値が割り当てられており、特に第1の状態に6Vの電圧値が割り当てられ、第2の状態に0Vの電圧値が割り当てられ、第3の状態に12Vの電圧値が割り当てられている。
【0050】
好適な形式で、図1または図2に示したブレーキシステム1の具体的な実施例に依存することなく、第2の通信接続13は、第1の通信接続11が故障したときにだけ作動する。また、第2の通信接続13は、第1の通信接続11が故障したときにだけ使用されるようになっていてもよい。もちろん、第2の通信接続13と第1の通信接続11とは、特に冗長性を提供するために同時に使用されてもよい。
【0051】
全体として、ここで提案されたブレーキシステム1、方法および車両3によって、ブレーキ倍力装置5が故障したときに、改善された運転者の支援が提供され得ることが示される。
【符号の説明】
【0052】
1 ブレーキシステム
3 車両
5 ブレーキ倍力装置
7 制動力配分システム
9 中央コントロールユニット
11 第1の通信接続
13 第2の通信接続
15 制御装置
17 制動要求識別手段
19 第1の通信チャンネル
21 第2の通信チャンネル
23 要求信号
25 通信チャンネル
27 制御装置
図1
図2