【課題を解決するための手段】
【0008】
この課題は、独立請求項の対象が提供されることによって解決される。好適な実施形態は従属請求項により明らかである。
【0009】
本発明によれば、第1の通信接続とは異なる第2の通信接続が、ブレーキ倍力装置と電子式の制動力配分システムとの間に設けられており、第2の通信接続は、ブレーキ倍力装置の状態に関する第1の情報、および車両の運転者の制動要求に関する第2の情報を伝送するように設定されていることが企図されている。これによって、第1の通信接続が故障した場合でも確実に、ブレーキ倍力装置の状態も運転者の制動要求も、ブレーキ倍力装置から電子式の制動力配分システムに伝送され得るので、常に確実な情報が提供される。これによって、2重の増幅または減少されたブレーキ倍力は避けられ、それと同時に、運転者のために制動作用を得るための初期力の減少が得られる。
【0010】
通信接続とは、特にこの接続を介して情報および/またはデータを伝送することができる接続のことと理解される。この場合、接続とは好適には、電気的な接続または電子的な接続のことである。通信接続は、特に1つの信号ラインまたは複数の信号ラインの形で、1つの通信チャンネルまたは複数の通信チャンネルを有していてよい。また、例えば無線を介した、特にブルートゥース(登録商標)をまたはWLANを介した、または光学インターフェース例えば赤外線インターフェースを介した、単数または複数の通信チャンネルを有するワイヤレスの通信接続も可能である。またガラス繊維接続も考えられる。
【0011】
第2の通信接続は、特に第1の通信接続とは無関係に構成されている。これによって、第1の通信接続が故障した場合でも、第2の通信接続の作動が保証される。
【0012】
第2の通信接続は好適にはもっぱら、第1の情報および第2の情報を伝送するように設定されている。つまり、第2の通信接続は、特に好適な形式で、その他の追加的な情報および/またはデータを伝送するためには使用されない。
【0013】
ここでは、ブレーキ倍力装置の状態とは、特にブレーキ倍力装置の機能が作動可能であること、つまり、ブレーキ倍力装置が機能しているか否かという意味である。ブレーキ倍力装置を介して、好適にはブレーキ倍力装置が機能しているか否かの2進法的な情報が伝送される。
【0014】
運転者の制動要求とは、ここでは一般的に、運転者が、特にブレーキペダルの操作を介して、制動したいという要求を知らせる、という意味である。また好適には、制動要求とは、運転者が制動要求を信号で伝えるか否かというように伝送される2進法的な情報でもある。従って、本発明の好適な実施態様によれば、運転者の制動要求が量的にどの程度欠落しているかは重要ではない。これはむしろ、特に運転者によってマスタブレーキシリンダ内で上昇された圧力を用いて容易に算出することができる。
【0015】
運転者の制動要求は、好適な形式で、ブレーキ倍力装置内に集積化されているかまたは実装されている制動要求識別手段を用いて算出される。それに応じて、運転者の制動要求は、第2の通信接続によって、ブレーキ倍力装置特に制動要求識別手段から電子式の制動力配分システムに伝送され得る。
【0016】
第2の通信接続は、好適な形式で、ブレーキ倍力装置のコントロールユニットとは無関係に、特にそのマイクロコントローラとは無関係に機能するものでもある。つまり、第2の通信接続は、ブレーキ倍力装置の状態に関する情報、および運転者の制動要求に関する情報を、好適にはブレーキ倍力装置のコントロールユニットの状態とは無関係に伝送する。
【0017】
第1および第2の情報をベースにして、電子式の制動力配分システムは、メイン通信接続とも称呼される第1の通信接続が故障した場合でも、ブレーキ倍力装置による増幅が行われているか否かを識別することができる。これによって、ブレーキ倍力装置が機能している場合の2重増幅の問題、若しくはブレーキ倍力装置が故障している場合の不必要に低減される増幅の問題は、完全に取り除かれ得る。さらに、運転者の制動要求に関する第2の情報は、電子式の制動力配分システムによるブレーキ倍力を早期に、つまりより小さいペダル操作力で既に初期化するために、利用され得る。例えば電子式の制動力配分システムによる適切な圧力上昇によって、運転者にとって快適なペダル感覚で初期力の減少が得られる。
【0018】
本発明の発展形態によれば、第2の通信接続が、第1の情報を伝送するための第1の通信チャンネルと、第2の情報を伝送するための、第1の通信チャンネルとは異なる第2の通信チャンネルを有していることが企図されている。好適な形式で、これらの通信チャンネルは互いに独立している。特に、第1および第2の情報は、別個のラインを介して、ブレーキ倍力装置から電子式の制動力配分システムに伝送することができる。特にこれらの情報は、好適には信号として独立した2つの信号ラインで伝送される。これは、第2の通信接続を技術的に特に簡単に実現できるという利点を有している。
【0019】
本発明の発展形態によれば、第2の通信接続が、第1の情報および第2の情報を伝送するように設定された通信チャンネルを有していることが企図されている。特に好適には、第2の通信接続は、第1の情報および第2の情報のためにまさに1つの通信チャンネルを有している。つまり、第1の情報および第2の情報は、好適には同一の、正確には1つの通信チャンネルを介して伝送される。特にこれらの情報は好適には1つだけのラインによって伝送され、この場合、これらの情報は好適には2つ以上の状態を伝送することができる。この実施態様では好適には、ブレーキ倍力装置を電子式の制動力配分システムに接続するために、1つの通信チャンネル、特に1つのラインを必要とするだけである。従ってこの実施態様は、特に安価であり、しかも故障しにくい。
【0020】
本発明の発展形態によれば、第2の通信接続が制御装置を有しており、該制御装置は、第1の情報と第2の情報との関連付けに依存して通信チャンネルを制御するように設定されていることが企図されている。この制御装置は特に、第2の通信接続が、2つの情報を伝送するための正確に1つの、1つだけの通信チャンネルを有している場合に設けられている。この制御装置によって、2つの情報のいわばオーバーラップが生ぜしめられ、1つの通信チャンネルを介して伝送され得る。特にこの制御装置は好適には、2つの情報から、その瞬間的な値に応じて、通信チャンネルのための様々な状態を生ぜしめるように設定されている。原理的に、2進法的な2つの信号は、4つの状態に組み合わせることができる。ここに記載された、通信チャンネルを介しての信号伝送は好適には、もっぱらブレーキ倍力装置が機能していないときに利用される機能性を可能にする。従って、ブレーキ倍力装置が機能している場合のために、運転者がこの瞬間に制動要求を信号で伝えるか否かをさらに識別する必要はない。従って、伝送しようとする状態の数は3つに減少され、これらの状態は次の通りである:
a)ブレーキ倍力装置が機能している;
b)ブレーキ倍力装置が機能しておらず、運転者が制動要求を信号で伝えていない;
c)ブレーキ倍力装置が機能しておらず、運転者が制動要求を信号で伝えている。
【0021】
この場合、状態a)では、前述のように、運転者が制動要求を信号で伝えているか否かは重要ではない。
【0022】
制御装置は特に、第1の情報および第2の情報のための相応の2進法的な値から、上記の3つの状態の1つを生ぜしめ、これらの状態に割り当てられた相応の信号を通信チャンネルで生成するように設定されている。
【0023】
本発明の発展形態によれば、第2の通信接続が、電流インターフェース、電圧インターフェースまたはPWMインターフェースを有していることが企図されている。この場合、電流インターフェースとは特に、所定の電流、特に所定の電流値の調節に関する所定の値または状態を伝送するように設定されたインターフェースと理解される。電圧インターフェースとは特に、所定の電圧の調節に関する値または状態を伝送するように設定されたインターフェースと理解される。PWMインターフェースとは、パルス幅変調された信号を伝送するように設定されたインターフェースと理解される。この場合、特に、所定の電流または所定の電圧を、時間平均で、相応のパルス幅変調された信号を介して伝送することも可能である。ここに挙げられたインターフェースは、情報および/またはデータを伝送する、簡単で安価な通常の可能性を具現する。
【0024】
本発明の発展形態によれば、第1の情報および/または第2の情報の様々な値に、第2の通信接続の様々な電流値および/または様々な電圧値が割り当てられていることが企図されている。この場合、情報の値とは特に、それぞれの情報がどの2進法的な状態を占めるか、つまり第1の情報の場合、ブレーキ倍力装置が機能しているか否かの問い合わせ、第2の情報の場合、運転者が制動要求を信号で伝えるか否かの問い合わせと理解される。特に好適には、これらの様々な値および/またはこれらの値の組み合わせに、特に重なりの意味で、第2の通信接続および特に通信チャンネルの様々な電圧値が割り当てられている。
【0025】
第2の通信接続が2つの通信チャネル、つまり各情報のために1つの別個の通信チャンネルを有している場合、好適な形式で電圧信号は、ブレーキ倍力装置が機能しているか否かの情報を伝送する場合、状態「機能していない」のために0Vの電圧が使用されるように、用いられる。この場合、信号は、ブレーキ倍力装置の機能性を妨げる停電においても正しい。個別に伝送された情報の評価は、好適には車両のコントロールユニットで行われる。
【0026】
2つの情報のために正確に1つ、つまり1つだけの通信チャンネルを有している第2の通信接続の場合、好適には、電圧が0Vと12Vとの間で変化することができる電圧インターフェースが使用される。この場合、好適には、前記3つの状態a),b),c)のために所定の3つの異なる電圧値、特に好適には3つの電圧0V,6V,12Vが使用される。この場合、0Vにおいて、電圧供給部が故障した場合でも優勢な状態に状態b)が割り当てられ、それに従って、ブレーキ倍力装置は機能しなくなり、運転者は制動要求を信号で伝えなくなるようにすることが可能である。この場合、電子式の制動力配分システムは、圧力上昇が検知されると、圧力上昇を増幅するように駆動される。しかしながら、この場合、圧力上昇は、欠陥が存在するときにのみ可能である。何故ならば、このためには制動が必要だからであるが、この場合、状態b)は、まさに制動が検出されないときにだけ優勢となる。
【0027】
ブレーキ倍力装置が機能している状態a)は、好適には、6Vの信号で置き換えられる。これは、信号の連続的な監視を可能にする。何故ならば、ブレーキ倍力装置は通常運転中に機能しており、従って状態a)が優勢となるからである。この状態は、その他の点では、結局のところ0Vの信号を生成するケーブル破損、またはその他の、12Vの電圧が印加される欠陥とは明らかに異なっている。
【0028】
ブレーキ倍力装置が故障していて、追加的な運転者の制動要求が信号で伝えられた場合、状態c)が12Vの信号で置き換えられる。この信号において、電子式の制動力配分システムは、ブレーキ倍力のために必要な、運転者のための初期力を減少させる。
【0029】
本発明の発展形態によれば、第2の通信接続に別個の電圧供給部が割り当てられていることが企図されている。電圧供給部は特に好適には、ブレーキ倍力装置のための電圧供給部および/または第1の通信接続のための電圧供給部とは無関係である。これによって、ブレーキ倍力装置から電子式の制動力配分システムへの情報の伝送は、ブレーキ倍力装置の電圧供給部および/または第1の通信接続が故障した場合でも機能する。
【0030】
このために特に、第2の通信接続のために必要な構成要素に別個の電圧供給部から供給されるようになっている。これは、第2の通信接続が情報を伝送するための2つの別個の通信チャンネルを有していて、特にブレーキ倍力装置内に制動要求識別手段を有しているケースに該当し、第2の通信接続が2つの情報のために正確に1つの通信チャンネルを有している別のケースでは、追加的にさらに、制御装置が別個の電圧供給部により供給される。
【0031】
前記課題は、ブレーキ倍力装置の状態に関する第1の情報、および車両の運転者の制動要求に関する第2の情報が、ブレーキ倍力装置と電子式の制動力配分システムとの間の第1の通信接続とは別個に、特に無関係に、ブレーキ倍力装置と電子式の制動力配分システムとの間の第2の通信接続を介して伝送される、車両のためのブレーキシステムを運転するための方法が提供されることによっても解決される。この方法に関連して、特に、ブレーキシステムに関連して既に説明された前記利点が実現される。
【0032】
好適には、この方法の枠内で、前記実施例のいずれか1つに記載したブレーキシステムが運転される。
【0033】
本発明の発展形態によれば、第2の通信接続は、第1の通信接続が故障したときにだけ使用されることが企図されている。好適には、第2の通信接続は、第1の通信接続が故障したときにだけ作動される。これによって、特に資源にやさしい実施形態が具現され、同時に、第2の通信接続は、これが必要とされるときに提供される。第1の通信接続が損なわれていない限り、前記情報を必ずしも第2の通信接続を介して伝送させる必要はない。それにも拘わらず、第2の通信接続は、特に冗長性を生ぜしめるために、第1の通信接続と同時に使用されてもよい。
【0034】
最後に、前記課題は、前記実施例のいずれか1つに記載したブレーキシステムを有する車両が提供されることによっても解決される。この場合、特にブレーキシステムおよび方法に関連して既に説明された前記利点が実現される。
【0035】
この車両は、好適には複数のホイールを有していて、これらのホイールにそれぞれ個別のブレーキピストンが対応配設されており、この場合、電子式の制動力配分システムは、ブレーキ圧をホイールの個別のブレーキピストンに、特にホイール個別に配分するように設定されている。
【0036】
車両は、好適には自動車として、特に乗用車、トラックまたは輸送用車両として構成されている。