(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
材軸方向両端部に継手部を有し、材軸方向に伸縮する棒状の衝撃吸収装置であって、塑性変形領域として設定される第1の変位区間では、衝撃吸収装置を構成する特定の第1の軸方向変形部材が破断に至らない範囲で弾性変形または塑性変形しつつ、第1の変位区間の上限において変位が拘束される構成とし、前記第1の変位区間を超え、第2の塑性変形領域として設定される第2の変位区間では、衝撃吸収装置を構成する特定の第2の軸方向変形部材が弾性変形または塑性変形する構成とし、かつ衝撃吸収装置を構成する特定の軸方向変位部材が、前記継手部の一方との連結が切り離された状態で実質的に無抵抗で軸方向に変位する遊間領域として設定される変位区間を備えていることを特徴とする衝撃吸収装置。
請求項1記載の衝撃吸収装置において、前記第2の軸方向変形部材が第2の変位区間を超え、第3の塑性変形領域として設定される第3の変位区間では、衝撃吸収装置を構成する特定の第3の軸方向変形部材が弾性変形または塑性変形する構成としたことを特徴とする衝撃吸収装置。
請求項1〜3の何れか一項に記載の衝撃吸収装置を、レベル2地震動以上の地震動での支承の破壊を許容する構成とした橋梁の下部工と上部工との間に介在させてあることを特徴とする衝撃吸収装置を備えた橋梁。
請求項4記載の衝撃吸収装置を備えた橋梁において、前記衝撃吸収装置をレベル2地震動以上の地震動であって、前記支承が破壊する地震動以下の地震動で破壊することを許容するように設定してあることを特徴とする衝撃吸収装置を備えた橋梁。
【背景技術】
【0002】
構造物の耐震性能、制震性能を高めるものとして、制振部材と構造部材を兼ねた制振ブレースなどの棒状制振部材が種々開発され、製品化されている。
【0003】
例えば、特許文献1、特許文献2には、平板または断面十字形の鋼材からなる芯材とその座屈変形を拘束する山形鋼からなる拘束材を用いた座屈拘束型の軸力負担部材が記載されている。
【0004】
また特許文献3には、鋼製芯材の外周をアンボンド層を介して座屈拘束用コンクリート部材で覆い、その座屈拘束用コンクリート部材の外周を鋼管で覆って補強した軸降伏型弾塑性履歴ブレースの改良技術が記載されている。
【0005】
図19は、従来の棒状制振部材の一例として、平板芯材を用いた座屈拘束型の棒状制振部材の具体例を示したものである。
【0006】
基本的な構成は、低降伏点鋼あるいは普通鋼からなるエネルギー吸収材としての芯材30本体の両端部に断面が拡大された継手部31、32を形成し、芯材30本体を四方より変形拘束部材33としての山形鋼で抑え、スペーサー34を介して変形拘束部材33どうしを高力ボルト35で締め付けて、芯材30本体が座屈しないようにしたものである。
【0007】
この例で、芯材30と変形拘束部材33とは、
図19(a)における奥側の固定側継手部31と、手前側の可動側継手部32の2箇所において、それぞれ高力ボルト35で接合されており、可動側継手部32の高力ボルト35は芯材30に軸方向の引張力または圧縮力が作用したときに、変形拘束部材33に形成した長孔33aに沿って軸方向に摺動可能となっている。
【0008】
すなわち、芯材30に軸方向の引張力が作用したときは芯材30が弾性範囲または弾塑性範囲で伸び、芯材30に軸方向の圧縮力が作用したときは芯材30が弾性範囲または弾塑性範囲で縮み、変形拘束部材33には実質的に軸方向力が作用しないようになっている。
【0009】
また、芯材30に軸方向の圧縮力が作用したとき、変形拘束部材33が芯材30本体を四方から拘束していることで、芯材30本体の座屈変形が生じないため、制振部材としてのエネルギー吸収能力をフルに発揮させることができる。
【0010】
図20は、従来の棒状制振部材の一例として十字芯材を用いた座屈拘束ブレースの具体例を示したものであり、芯材30本体の断面を十字断面とした点以外の構成および作用効果は
図17の平板の場合と同様であるが、同じ変形が生じた場合、芯材30の方が断面が大きい分エネルギー吸収能力が高い。
【0011】
ところで、道路橋などの橋梁においては、大規模地震時に上部工である橋桁の端部が橋桁端部を支える橋台や橋脚などの下部工から落橋しないように、下部工側に桁かかり長を十分に確保したり、上部工側の橋桁端部と下部工とを落橋防止材で連結することが行われている。
【0012】
近年では、棒状制振部材に落橋防止材としての機能を兼用させる検討をしたり,落橋防止材単体として使用をする検討がなされたりしている。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の衝撃吸収装置の第1の実施形態を図示したものであり、
図1(a)は初期状態、
図1(b)は引張り力が作用し、左側の芯材が軸降伏後、塑性変形をして作動した状態、
図1(c)は仮に継手部を破壊させた場合の最終破壊状態の斜視図である。
【
図2】
図2(a),(b)は、それぞれ
図1(a)及び
図11(a)におけるイ−イ線、ロ−ロ線断面図である。
【
図3】本発明の衝撃吸収装置の設置例を図示したものであり、橋桁端部と橋台との間に設置された衝撃吸収装置の側面図である。
【
図4】橋桁端部と橋台との間に設置された本発明の衝撃吸収装置の作動状態のうち引張り変形を示す側面図である。
【
図5】橋桁端部と橋台との間に設置された本発明の衝撃吸収装置の作動状態のうち圧縮変形を示す側面図である。
【
図6】
図1の衝撃吸収装置に軸力(圧縮および引張力)が作用した際の荷重−変位設計曲線を示すグラフである。圧縮側には橋台があり変位が限定される。引張り側は、設計最大荷重で破断する設計とした事例である。
【
図7】本発明の衝撃吸収装置の第2の実施形態を図示したものであり、
図7(a)は初期状態、
図7(b)は引張り力が作用し、左側の芯材が軸降伏して作動した状態、
図7(c)はその後、右側の芯材が軸降伏後塑性変形をし、仮に継手部を破壊させた場合の最終破壊状態の斜視図である。
【
図8】
図7の衝撃吸収装置に軸力(圧縮および引張力)が作用した際の荷重−変位設計曲線を示すグラフである。分割された芯材が降伏荷重の階層化によりそれぞれ軸降伏した後、塑性変形をし、設計最大荷重で破断する設計とした事例である。
【
図9】本発明の衝撃吸収装置の第3の実施形態を図示したものであり、
図9(a)は初期状態、
図9(b)は引張り力が作用し、左側の芯材が軸降伏して作動した状態の斜視図である。
【
図10】
図9の衝撃吸収装置に軸力(圧縮および引張力)が作用した際の荷重−変位設計曲線を示すグラフである。
【
図11】本発明の衝撃吸収装置の第4の実施形態を図示したものであり、
図11(a)は初期状態、
図11(b)は左側の芯材が軸降伏後、圧縮・引張りの変位を繰り返した後、引張り荷重が右側の芯材の降伏荷重に達して塑性変形をした作動状態の斜視図である。
【
図12】
図11の衝撃吸収装置に軸力(圧縮および引張力)が作用した際の荷重−変位設計曲線を示すグラフである。
【
図13】本発明の衝撃吸収装置の第5の実施形態を図示したものであり、
図13(a)は初期状態、
図13(b)は左側の芯材が軸降伏後、圧縮・引張りの繰り返し変位を繰り返した後、引張り荷重が右側の芯材の降伏荷重に達して塑性変形をした作動状態の斜視図である。
【
図14】
図13の衝撃吸収装置に軸力(圧縮および引張力)が作用した際の荷重−変位設計曲線を示すグラフである。
【
図15】本発明の衝撃吸収装置の第5の実施形態を図示したものであり、
図15(a)は初期状態、
図15(b)は芯材が軸降伏後、圧縮・引張りの変位を繰り返した後、引張り変位が設定変位に達して、さらに塑性変形をした作動状態の斜視図である。
【
図16】
図15の衝撃吸収装置に軸力(圧縮および引張力)が作用した際の荷重−変位設計曲線を示すグラフである。
【
図17】本発明の衝撃吸収装置の第7の実施形態の衝撃吸収装置に軸力(圧縮および引張力)が作用した際の荷重−変位設計曲線を示すグラフである。第4の実施形態に無抵抗で軸方向に変位する遊間領域を設定した場合の設計事例である。
【
図18】本発明の衝撃吸収装置において芯材として用いられる代表的な鋼材の応力ひずみ曲線を示すグラフである。
【
図19】(a)は従来の棒状制振部材としての座屈拘束ブレースの一例(平板芯材の場合)を示す部分透過斜視図、(b)は軸直角方向の断面図である。
【
図20】(a)は従来の棒状制振部材としての座屈拘束ブレースの他の例(十字芯材の場合)を示す部分透過斜視図、(b)は軸直角方向の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
[実施形態1]
図1〜
図6は、本発明の第1の実施形態であり、落橋防止材とその設置例を図示したものである。図において、橋桁1の端部と橋桁1端部を支える橋台2との間に落橋防止材3と支承4がそれぞれ取り付けられている。いずれも、橋桁1の幅方向に間隔をおいて複数取り付けられている。符号17は伸縮装置である。
【0025】
落橋防止材3は、材軸方向に伸縮する棒状に構成され、材軸方向の両端部に継手部5と継手部6がそれぞれ取り付けられている。継手部5は橋台2の側面に固定され、継手部6は橋桁1端部の下部側面に固定されている。
【0026】
また、継手部5と継手部6との間に弾塑性変形領域として設定された第1の変位区間L
1と第2の変位区間L
2が落橋防止材3の材軸方向に隣接して設けられている。
【0027】
第1および第2の変位区間L
1、L
2についてより具体的に説明すると、継手部5と継手部6間の同一材軸線上に変形芯材7と変位芯材8が材軸方向に隣接して配置され、変形芯材7および変位芯材8の軸直角方向の外側に複数の座屈拘束材9が配置されている。
【0028】
変形芯材7は、継手部5と継手部6間の材軸方向に細長い長尺板状に形成され、当該変形芯材7の材軸方向の両端部に側面視矢羽根形状をなしかつ断面十字形状をなす拡径部7a,7aが形成されている。また、継手部5側の端部に拡径部7aと同じ幅で継手部5側に突出する平板状の連結部7bが形成され、連結部7bは継手部5に回転自在に連結されている。
【0029】
変位芯材8は、継手部6側において変形芯材7と隣接し、かつ継手部5と継手部6間に作用する軸力(引張力と圧縮力)に対して、継手部5との連結が切り離された状態で材軸方向に実質的に無抵抗で変位するように配置されている。
【0030】
変位芯材8についてさらに詳しく説明すると、変位芯材8は、継手部5と継手部6間の材軸方向に長尺に形成され、かつ断面略十字形状に形成されている。また、変位芯材8の材軸方向の両端部に側面視矢羽根形状をなしかつ断面十字形状をなす拡径部8a,8aが形成されている。
【0031】
また、変位芯材8の継手部6側の端部に拡径部8aと同じ幅で継手部6側に突出する平板状の連結部8bが形成され、連結部8bは継手部6に回転自在に連結されている。さらに、拡径部8a,8a と拡径部8a,8a 間に介在されたスペーサー11との間に継手部5と継手部6間の材軸方向に一定長の遊間Wが設けられている。
【0032】
また、変形芯材7の拡径部7a,7a間が連結部7bより先に弾性変形または塑性変形するように、拡径部7a,7a間の断面積が連結部7bより小断面に形成され、さらに、変形芯材7は低降伏点鋼(例えば、LY225規格等)より形成され、変位芯材8は普通鋼(例えば、SM400)より形成されている(
図18参照)。
【0033】
座屈拘束材9は、変形芯材7および変位芯材8の材軸方向に連続し、かつ変形芯材7および変位芯材8の全長とほぼ同等の長さを有し、断面略等辺山形状に形成されている。また、変形芯材7および変位芯材8の軸直角方向の外側に変形芯材7および変位芯材8を四方から挟み込むように配置されている。
【0034】
また、各座屈拘束材9は、変形芯材7の拡径部7a,7aおよび変位芯材8の拡径部8a,8a の各側面部に複数の締付けボルト10aおよびガイドボルト10bによって接合され、また、各拡径部7a,7a間および拡径部8a,8a 間においてスペーサー11を介在し、複数の締付けボルト10aおよびガイドボルト10bによって互いに接合されている。また、各座屈拘束材9の材軸方向の両端部に形成されたガイドボルト10bのボルト孔9aは、座屈拘束部材9の材軸方向に長軸を有する長孔に形成されている。
【0035】
このような構成において、継手部5と継手部6間に作用する軸力(引張力および圧縮力)に対し、変位芯材8と座屈拘束材9が、ボルト孔9aの長孔の範囲で材軸方向に相対変位する。これにより、橋桁1端部と橋台2間に作用するレベル2に至る規模の地震エネルギー(想定し得る範囲内で最大規模の地震)を吸収することができる(
図6の荷重-変位設計曲線(1)-(2)-(3))。また、レベル2を超える想定外の大地震時には、変形芯材7が材軸方向に弾塑性変形(
図6の荷重-変位設計曲線(3)-(4)-(5))し、さらに、変形芯材7の継手部5側の連結部7bが弾性または塑性変形する(
図6の荷重-変位設計曲線(5)-(6))。
【0036】
なお、変位芯材8と座屈拘束材9間の相対変位がボルト孔9aの長孔の範囲を超えた時点で、継手部5と継手部6間に作用する軸力は座屈拘束材9を介して変位芯材7に伝達される。また、継手部5と継手部6間に作用する圧縮力に対しては、変位芯材8の拡径部8aの端部が変形芯材7の拡径部7aの端部に面タッチすることにより、変形芯材7および変位芯材8の芯材を通じて荷重が伝達される。
【0037】
[実施形態2]
図7と
図8は、本発明の第2の実施形態を図示したものである。図において、各座屈拘束材9が、継手部5と継手部6間の材軸方向に座屈拘束材ユニット9Aと9Bの2本の座屈拘束材ユニットより構成され、かつ各座屈拘束材ユニット9Aおよび9Bの外側に棒状ストッパー12が取り付けられている点で、実施形態1の落橋防止材と構成が異なっている。
【0038】
座屈拘束材9を9Aおよび9Bに分割させることで、変位芯材8を想定外の地震時においては塑性変形芯材として機能させることができる。
【0039】
詳しく説明すると、各座屈拘束材9は、変位芯材8のほぼ中間部を境に継手部5側の座屈拘束材ユニット9Aと継手部6側の座屈拘束材ユニット9Bの2本の座屈拘束材ユニットより構成されている。
【0040】
各座屈拘束材ユニット9Aは、変形芯材7の拡径部7a,7aの側面部に複数の締付けボルト10aおよびガイドボルト10bよって接合され、また、拡径部7a,7a間においてスペーサー11を介在し、複数のガイドボルト10bによって互いに接合されている。
【0041】
また、座屈拘束材ユニット9Bは、変位芯材8の継手部6側に位置する拡径部8aの側面部にガイドボルト10bよって接合され、さらに、各座屈拘束材ユニット9Aどうし、および座屈拘束材ユニット9Bどうしは、変位芯材8の拡径部8a,8a間においてスペーサー11を介在し、複数の締付けボルト10aおよびガイドボルト10bによって接合されている。
【0042】
棒状ストッパー12は、座屈拘束材ユニット9Aと9B間の離間距離を制御するためのストッパー材であり、変位制限時に干渉材を介在させれば、さらに衝撃干渉効果が高まることが期待できる。各座屈拘束材ユニット9Aおよび座屈拘束材ユニット9Bの軸直角方向の外側に配置され、かつ座屈拘束材ユニット9Aおよび9Bの材軸方向に沿って、座屈拘束材ユニット9Aおよび9Bの両方向にほぼ対称に所定長延長されている。
【0043】
また、当該棒状ストッパー12の座屈拘束材ユニット9B側の端部12bは、座屈拘束材ユニット9Bの側部に突設された定着用リブ13に固定され、座屈拘束材ユニット9A側の端部12aは、座屈拘束材ユニット9Aの側部に突設された定着用リブ14に形成されたルーズ孔を貫通し、その先端部12aに抜止めストッパー15が取り付けられている。なお、棒状ストッパー12には長ボルト、抜止めストッパー15にはナットがそれぞれ用いられている。
【0044】
このような構成において、継手部5と継手部6間に作用する軸力(引張力および圧縮力)に対し、変位芯材8と座屈拘束材9が、ボルト孔9aの長孔の範囲で材軸方向に相対変位する。これにより、橋桁1端部と橋台2間に作用するレベル2(想定し得る範囲内で最大規模の地震)に至る規模の地震エネルギーを吸収することができる(
図8の荷重-変位設計曲線(1)-(2)-(3))。
【0045】
また、レベル2を超える想定外の大地震時には、変形芯材7が材軸方向に弾塑性変形(
図8の荷重-変位設計曲線(3)-(4)-(5))し、さらに設定荷重Py2に達すると変位芯材8が軸降伏をし、塑性変形することで衝撃吸収に寄与し、最後に設計最大荷重Pmaxに達した時点で継手部5側の連結部7bが破断する(
図8の荷重-変位設計曲線(5)-(6) -(7))。
【0046】
なお、変位芯材8と座屈拘束材9間の相対変位がボルト孔9aの長孔の範囲を超えた時点で、継手部5と継手部6間に作用する軸力は座屈拘束材9を介して変位芯材7に伝達される。また、座屈拘束材ユニット9Aと9B間に棒状ストッパー12が配置されていることにより、変位芯材8が変形芯材7の連結部7bより先に破断してしまうことはない。但し、設計制御として耐力の階層化を行うことで棒状ストッパー12の軸部を破断させることは可能である。
【0047】
さらに、継手部5と継手部6間に作用する圧縮力に対しては、変位芯材8の拡径部8aの端部が変形芯材7の拡径部7aの端部に面タッチすることにより、変形芯材7および変位芯材8の芯材を通じて荷重が伝達される。
【0048】
[実施形態3]
図9と
図10は、本発明の第3の実施形態を図示したものである。図において、各座屈拘束材9が、継手部5と継手部6間の材軸方向に2本の座屈拘束材ユニット9Aと9Bより構成され、かつかつ各座屈拘束材ユニット9Aおよび9Bの外側に棒状ストッパー12が取り付けられている点で、実施形態1の落橋防止材と構成が異なっている。
【0049】
詳しく説明すると、各座屈拘束材9は、変形芯材7のほぼ中間部を境に継手部5側の座屈拘束材ユニット9Aと継手部6側の座屈拘束材ユニット9Bの2本の座屈拘束材ユニットより構成されている。
【0050】
各座屈拘束材ユニット9Aは、変形芯材7の拡径部7a,7aの側面部に複数の締付けボルト10aによって接合され、かつスペーサー11を介在し、複数の締付けボルト10aによって互いに接合されている。
【0051】
各座屈拘束材ユニット9Bは、変形芯材7の継手部6側に位置する拡径部7aの側面部と変位芯材8の継手部6側に位置する拡径部8aの側面部に複数のガイドボルト10bによって接合され、さらに変位芯材8の拡径部8a,8a間においてスペーサー11を介在し、複数の締付けボルト10aによって互いに接合されている。また特に、各座屈拘束材ユニット9Bの継手部6側の端部に形成されたボルト孔9aは座屈拘束材ユニット9Bの材軸方向に長軸を有する長孔に形成されている。
【0052】
棒状ストッパー12は、座屈拘束材ユニット9Aと9B間の離間距離を制御するためのストッパー材であり、各座屈拘束材ユニット9Aおよび座屈拘束材ユニット9Bの軸直角方向の外側に配置され、かつ座屈拘束材ユニット9Aおよび9Bの材軸方向に沿って、座屈拘束材ユニット9Aおよび9Bの両方向にほぼ対称に所定長延長されている。
【0053】
また、当該棒状ストッパー12の座屈拘束材ユニット9B側の端部12bは、座屈拘束材ユニット9Bの側部に突設された定着用リブ13に固定され、座屈拘束材ユニット9A側の端部12aは、座屈拘束材ユニット9Aの側部に突設された定着用リブ14に形成されたルーズ孔を貫通し、その先端部12aに抜止めストッパー15が取り付けられている。
【0054】
このような構成において、継手部5と継手部6間に作用する軸力(引張力および圧縮力)に対し、変位芯材8と座屈拘束材9が、ボルト孔9aの長孔の範囲で材軸方向に相対変位する。これにより、橋桁1端部と橋台2間に作用するレベル2に至る大規模の地震エネルギーを吸収することができる(
図10の荷重-変位設計曲線(1)-(2)-(3))。
【0055】
また、レベル2を超える想定外の大地震時には、変形芯材7と変位芯材8が材軸方向に弾塑性変形(
図10の荷重-変位設計曲線(3)-(4)-(5))し、さらに、座屈拘束材ユニット9Aと9B間の離間距離が変位制御されると荷重が立ち上がり、最終的に設計最大荷重Pmaxに達した時点で継手部5側の連結部7bが破断する(
図10の荷重-変位設計曲線(5)-(6))。
【0056】
なお、変位芯材8と座屈拘束材9間の相対変位がボルト孔9aの長孔の範囲を超えた時点で、継手部5と継手部6間に作用する軸力は座屈拘束材9を介して変位芯材7に伝達される。また、座屈拘束材ユニット9Aと9B間に棒状ストッパー12が配置されていることにより、変形芯材7が変形芯材7の連結部7bより先に破断してしまうことはない。
【0057】
さらに、継手部5と継手部6間に作用する圧縮力に対しては、変位芯材8の拡径部8aの端部が変形芯材7の拡径部7aの端部に面タッチすることにより、変形芯材7および変位芯材8の芯材を通じて荷重が伝達される。
【0058】
[実施形態4]
図11と
図12は、本発明の第4の実施形態であり、継手部5と継手部6間の同一材軸線上に、変位芯材8に代えて変形芯材16が変形芯材7に隣接して配置され、かつ変形芯材7の弾塑性領域を長く設定することによりダンパーの機能が付与されている点が実施形態1〜3の落橋防止材と異なっている。
【0059】
詳しく説明すると、継手部5と継手部6間の同一材軸線上に第1の変形芯材7と第2の変形芯材16が材軸方向に隣接して配置され、変形芯材16は変形芯材7の継手部6側に配置されている。
【0060】
変形芯材7は、継手部5と継手部6間の材軸方向に細長い長尺板状に形成され、その材軸方向の両端部に側面視矢羽根形状をなしかつ断面十字形状をなす拡径部7a,7aが形成されている。また、継手部5側の端部に拡径部7aと同じ幅で継手部5側に突出する平板状の連結部7bが形成され、連結部7bは継手部5に回転自在に連結されている。
【0061】
第2の変形芯材16は、継手部5と継手部6間の材軸方向に長尺に形成され、かつ断面略十字形状に形成されている。また、変形芯材16の材軸方向の両端部に側面視矢羽根形状をなしかつ断面十字形状をなす拡径部16a,16a が形成されている。さらに、変形芯材16の継手部6側の端部に拡径部16aと同じ幅で継手部6側に突出する平板状の連結部16bが形成され、連結部16bは継手部6に回転自在に連結されている。
【0062】
なお、これらの部材は、設計の要求性能に応じて適宜選択、または組み合わせて使用することが望ましい。例えば同じ鋼材でも普通鋼あるいは低降伏点鋼や形状記憶合金では鋼材の降伏応力、伸び性能に違いがある(
図18参照)。例えば、低ひずみの繰り返しを受ける場合は、これらの累積損傷度の度合いを主眼にした選定が望ましいと考えられる。
【0063】
また、これらの部材断面の強度の階層化を行うことにより、塑性化させる順番を設計制御することが可能となる。例えば、同一鋼材の選定をした場合に断面積は、変形芯材7が一番小さく、続いて変形芯材16、変形芯材7の連結部7bの順で大きく、連結部16bの断面積が一番大きくなるように形成することで、これらの部材はこの順番で塑性変形させることができる。さらに、変形芯材7の材長を長くして弾塑性変形領域を広くすることにより、継手部5と6間に作用する地震動を減衰させるダンパーの機能が付与することができる。
【0064】
座屈拘束材9は、変形芯材7および変形芯材16の材軸方向に連続し、かつ変形芯材7および変形芯材16の全長とほぼ同等の長さを有し、断面略等辺山形状に形成されている。また、変形芯材7および変形芯材16の軸直角方向の外側に変形芯材7および変形芯材16を四方から挟み込むように配置されている。
【0065】
また、各座屈拘束材9は、変形芯材7の各拡径部7a,7aの側面部および変形芯材16の継手部6側に位置する拡径部16aの側面部に複数のガイドボルト10bによって接合され、かつ、変形芯材7の拡径部7a,7a間および変形芯材16の拡径部16a,16a 間において、スペーサー11を介在し、複数の締付けボルト10aおよびガイドボルト10bによって互いに接合されている。また、座屈拘束材9の両端部に形成されたガイドボルト10bのボルト孔9aは、座屈拘束材9の材軸方向に長軸を有する長孔に形成されている。
【0066】
このような構成において、継手部5と継手部6間に作用する軸力(引張力および圧縮力)に対し、変形芯材7がボルト孔9aの長孔の範囲で材軸方向に弾塑性変形(伸縮)する。これにより、橋桁1端部と橋台2間に作用するレベル2に至る大規模の地震エネルギーを吸収することができる(
図12の荷重-変位設計曲線(1)-(2)-(3) -(4)-(5) -(6)-(7))。
【0067】
また、レベル2を超える想定外の大地震時には、変形芯材16が長孔16aの範囲で材軸方向に弾塑性変形し(
図12の荷重-変位設計曲線(3)-(8)-(9))、さらに、変形芯材7の継手部5側の連結部7bが弾性または塑性変形する(
図12の荷重-変位設計曲線(8)-(9)-(10))。
【0068】
なお、変形芯材7の弾塑性変形(伸び)がボルト孔9aの長孔の範囲を超えた時点で、継手部5と継手部6間に作用する軸力は座屈拘束材9を介して変形芯材16に伝達される。また、継手部5と継手部6間に作用する圧縮力に対しては、変形芯材16の拡径部16aの端部が変形芯材7の拡径部7aの端部に面タッチしていることにより、変形芯材7および変形芯材16の芯材を通じて荷重が伝達される。
【0069】
[実施形態5]
図13と
図14は、本発明の第5の実施形態を図示したものである。図において、各座屈拘束材9が材軸方向に二つの座屈拘束材ユニット9Aと9Bから構成され、かつ座屈拘束材ユニット9Aと9B間の離間距離を制御する棒状ストッパー12が設置されている点が、実施形態4の落橋防止材と構成が異なっている。
【0070】
以下、より詳しく説明すると、各座屈拘束材9は、変形芯材16の材軸方向のほぼ中間部を境に継手部5側の座屈拘束材ユニット9Aと継手部6側の座屈拘束材ユニット9Bの2本の座屈拘束材ユニットから構成されている。
【0071】
各座屈拘束材ユニット9Aは、変形芯材7の拡径部7a,7aの側面部および変形芯材16の継手部5側に位置する拡径部16aの側面部に複数の締付けボルト10aおよびガイドボルト10bによって接合され、かつ、変形芯材7の拡径部7a,7a間においてスペーサー11を介在し、複数の締付けボルト10aによって互いに接合されている。また、座屈拘束材ユニット9Aの継手部5側の端部に形成されたガイドボルト10bのボルト孔9aは座屈拘束材ユニット9Aの材軸方向に長軸を有する長孔に形成されている。
【0072】
各座屈拘束材ユニット9Bは、変形芯材16の継手部6側に位置する拡径部16aの側面部に複数の締付けボルト10aによって接合され、かつスペーサー11を介在し、複数の締付けボルト10aによって互いに接合されている。
【0073】
また、各座屈拘束材ユニット9Aおよび座屈拘束材ユニット9Bの軸直角方向の外側に、複数の棒状ストッパー12が座屈拘束材ユニット9Aおよび9Bの材軸方向に沿って配置されている。棒状ストッパー12は、座屈拘束材ユニット9Aと9B間の離間距離を制御するためのストッパー材であり、座屈拘束材ユニット9Aおよび9Bの両方向にほぼ対称に所定長延長されている。そして、当該棒状ストッパー12の座屈拘束材ユニット9A側の端部12aは、座屈拘束材ユニット9Aの側部に突設された定着用リブ13に固定され、座屈拘束材ユニット9B側の端部12bは、座屈拘束材ユニット9Bの側部に突設された複数の定着用リブ14に設けられたルーズ孔を貫通し、かつ先端部に抜止めストッパー15が取り付けられている。
【0074】
このような構成において、継手部5と継手部6間に作用する軸力(引張力および圧縮力)に対し、変形芯材7がボルト孔9aの長孔の範囲で材軸方向に弾塑性変形(伸縮)する。これにより、橋桁1端部と橋台2間に作用するレベル2に至る大規模の地震エネルギーを吸収することができる(
図14の荷重-変位設計曲線(1)-(2)-(3) -(4)-(5) -(6)-(7))。
【0075】
また、レベル2を超える想定外の大地震時には、変形芯材16が長孔16aの範囲で材軸方向に弾塑性変形し(
図14の荷重-変位設計曲線(3)-(8))、さらに、変形芯材7の継手部5側の連結部7bが弾性または塑性変形する(
図14の荷重-変位設計曲線(8)-(9)-(10))。
【0076】
なお、変形芯材7の弾塑性変形(伸び)がボルト孔9aの長孔の範囲を超えた時点で、継手部5と継手部6間に作用する軸力は座屈拘束材9を介して変形芯材16に伝達される。また、座屈拘束材ユニット9Aと9B間に棒状ストッパー12が配置されていることにより、変形芯材16が変形芯材7の連結部7bより先に破断してしまうことはない。
【0077】
さらに、継手部5と継手部6間に作用する圧縮力に対しては、変形芯材16の拡径部16aの端部が変形芯材7の拡径部7aの端部に面タッチしていることにより、変形芯材7および変形芯材16の芯材を通じて荷重が伝達される。
【0078】
[実施形態6]
図15と
図16は、本発明の第6の実施形態を図示したものである。図において、継手部5と継手部6間に変形芯材7が単体で配置され、かつ座屈拘束材9が変形芯材7のほぼ中間部を境に継手部5側の座屈拘束材ユニット9Aと継手部6側の座屈拘束材ユニット9Bの2本の座屈拘束材ユニットから構成され、さらに座屈拘束材ユニット9Aと9B間の離間距離を制御する棒状ストッパー12を備えている点が実施形態5の落橋防止材と構成が異なっている。
【0079】
以下、より詳しく説明すると、継手部5と継手部6間の材軸線上に変形芯材7が配置され、変形芯材7の軸直角方向の外側に複数の座屈拘束材9が配置されている。
【0080】
変形芯材7は、継手部5と継手部6間の材軸方向に細長い長尺板状に形成され、当該変形芯材7の材軸方向の両端部に側面視矢羽根形状をなし、かつ断面十字形状をなす拡径部7a,7aが形成されている。
【0081】
また、材軸方向の両端部に拡径部7aと同じ幅で継手部5側と継手部6側にそれぞれ突出する板状の連結部7b,7bがそれぞれ形成され、連結部7b,7bは継手部5と継手部6にそれぞれ回転自在に連結されている。
【0082】
各座屈拘束材9は、変形芯材7のほぼ中間部を境に継手部5側の座屈拘束材ユニット9Aと継手部6側の座屈拘束材ユニット9Bの2本の座屈拘束材ユニットより構成され、いずれも変形芯材7の拡径部7aの側面部に複数の締付けボルト10aおよびガイドボルト10bによって接合され、かつ拡径部7a,7a間においてスペーサー11を介在し、複数の締付けボルト10aおよびガイドボルト10bによって互いに接合されている。また、継手部5側の端部に形成されたガイドボルト10bのボルト孔9aは座屈拘束材ユニット9Aの材軸方向に長軸を有する長孔に形成されている。
【0083】
棒状ストッパー12は、各座屈拘束材ユニット9Aおよび座屈拘束材ユニット9Bの軸直角方向の外側に、各座屈拘束材ユニット9Aおよび座屈拘束材ユニット9Bの材軸方向に沿って配置され、かつ座屈拘束材ユニット9Aおよび9Bの両方向にほぼ対称に所定長延長されている。
【0084】
また、棒状ストッパー12の座屈拘束材ユニット9A側の端部12aは、座屈拘束材ユニット9Aの側部に突設された定着用リブ13に固定され、座屈拘束材ユニット9B側の端部12bは、座屈拘束材ユニット9Bの側部に突設された複数の定着用リブ14に設けられたルーズ孔を貫通し、その先端部12aに抜止めストッパー15が取り付けられている。
【0085】
このような構成において、継手部5と継手部6間に作用する軸力(引張力および圧縮力)に対し、変形芯材7がボルト孔9aの長孔の範囲内で材軸方向に弾塑性変形(伸縮)を繰り返えす。これにより、橋桁1端部と橋台2間に作用するレベル2に至る大規模の地震エネルギーを吸収することができる(
図16の荷重-変位設計曲線(1)-(2)-(3) -(4)-(5) -(6)-(7))。
【0086】
また、レベル2を超える想定外の大地震時には、変形芯材7がボルト孔9aの長孔の範囲で材軸方向に弾塑性変形し(
図16の荷重-変位設計曲線(3)-(8))、さらに、変形芯材7の継手部5側の連結部7bが弾性または塑性変形する(
図16の荷重-変位設計曲線(8)-(9))。
【0087】
このように、変形芯材7の累積疲労損傷度が低ひずみの繰り替えしを受けても設計上問題ない場合は、その後の想定外の地震動においては、累積疲労損傷度の余力を使って落橋防止構造として機能させることが可能となる。
[実施形態7]
図17は、本発明の第7の実施形態であり、第4の実施形態に無抵抗で軸方向に変位する遊間領域を設定した場合の設計事例である。荷重−変位設計曲線を示している。