特許第6872360号(P6872360)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6872360マスターバッチの製造方法、ゴム組成物の製造方法およびタイヤの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6872360
(24)【登録日】2021年4月21日
(45)【発行日】2021年5月19日
(54)【発明の名称】マスターバッチの製造方法、ゴム組成物の製造方法およびタイヤの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08J 3/205 20060101AFI20210510BHJP
   C08K 3/04 20060101ALI20210510BHJP
   C08L 21/02 20060101ALI20210510BHJP
【FI】
   C08J3/205CEQ
   C08K3/04
   C08L21/02
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-242484(P2016-242484)
(22)【出願日】2016年12月14日
(65)【公開番号】特開2018-95748(P2018-95748A)
(43)【公開日】2018年6月21日
【審査請求日】2019年11月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO TIRE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】特許業務法人 ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】野村 健治
【審査官】 加賀 直人
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−160315(JP,A)
【文献】 特開2016−014086(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 3/205
C08K 3/04
C08L 21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カーボンブラックを含む凝固処理前ゴムラテックスを加熱しながら、撹拌羽根を備える撹拌機で撹拌する第1工程と、
前記凝固処理前ゴムラテックスに凝固剤を添加する第2工程とを含み、
前記第1工程は、式Iおよび式IIを満たし、
前記式Iは、
b≧i×5.6/100
であり、
前記式IIは、
b×t/e×100>10
であり、
bは、前記撹拌羽根の周速(m/s)を示し、前記周速が10m/s以上であり、
iは、前記カーボンブラックのヨウ素吸着量(g/kg)を示し、
は撹拌時間(s)を示し、
は式IIIで表され、
前記式IIIは、
=(t+t)×t/2
であり、
は、前記第1工程 終了時における前記凝固処理前ゴムラテックスの温度(℃)を示し、
は、前記第1工程 開始時における前記凝固処理前ゴムラテックスの温度(℃)を示す、
マスターバッチの製造方法。
【請求項2】
前記カーボンブラックのヨウ素吸着量が100g/kg以上である、請求項1に記載のマスターバッチの製造方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載のマスターバッチの製造方法を含む、ゴム組成物の製造方法。
【請求項4】
請求項1または2に記載のマスターバッチの製造方法を含む、タイヤの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、マスターバッチの製造方法、ゴム組成物の製造方法およびタイヤの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ウエットマスターバッチの製造は、たとえば、天然ゴムラテックスにカーボンブラックスラリーを添加し、加熱しながら撹拌し、凝固剤を添加し、凝固物を回収するという手順を踏む。撹拌や加熱は、凝固を徐々に押しすすめる。
【0003】
このような手順において、小粒径のカーボンブラックを、中粒径または大粒径のカーボンブラックと同じ程度に天然ゴムラテックスに分散させることは難しい。カーボンブラックは、一次粒子径が小さいほど、分散性が悪いからである。
【0004】
天然ゴムラテックスにおけるカーボンブラックの分散不良は、マスターバッチにおけるカーボンブラックの分散不良につながる。さらには、加硫ゴムにおける発熱性や耐疲労性の悪化につながる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−213866号公報
【特許文献2】特開2007−237456号公報
【特許文献3】特開2010−284799号公報
【特許文献4】特開2016−14086号公報
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示におけるマスターバッチの製造方法は、カーボンブラックを含む凝固処理前ゴムラテックスを加熱しながら、撹拌羽根を備える撹拌機で撹拌する第1工程と、凝固処理前ゴムラテックスに凝固剤を添加する第2工程とを含み、第1工程は、式Iおよび式IIを満たす。
式I b≧i×5.6/100
式II b×t/e×100>10
bは、撹拌羽根の周速(m/s)を示す。iは、カーボンブラックのヨウ素吸着量(g/kg)を示す。tは撹拌時間(s)を示す。eは式IIIで表される。
式III e=(t+t)×t/2
は、第1工程 終了時における凝固処理前ゴムラテックスの温度(℃)を示す。tは、第1工程 開始時における凝固処理前ゴムラテックスの温度(℃)を示す。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施形態1で使用する撹拌機の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本開示は、カーボンブラック分散に優れ、加硫ゴムの発熱性や耐疲労性に優れたマスターバッチの製造方法を提供する。
【0009】
本開示におけるマスターバッチの製造方法は、カーボンブラックを含む凝固処理前ゴムラテックスを加熱しながら、撹拌羽根を備える撹拌機で撹拌する第1工程と、凝固処理前ゴムラテックスに凝固剤を添加する第2工程とを含み、第1工程は、式Iおよび式IIを満たす。
式I b≧i×5.6/100
式II b×t/e×100>10
bは、撹拌羽根の周速(m/s)を示す。iは、カーボンブラックのヨウ素吸着量(g/kg)を示す。tは撹拌時間(s)を示す。eは式IIIで表される。
式III e=(t+t)×t/2
は、第1工程 終了時における凝固処理前ゴムラテックスの温度(℃)を示す。tは、第1工程 開始時における凝固処理前ゴムラテックスの温度(℃)を示す。
【0010】
本開示におけるマスターバッチの製造方法は、カーボンブラック分散に優れ、加硫ゴムの発熱性や耐疲労性に優れたマスターバッチを製造できる。第1工程が式Iを満たすため、粒径に関わらずカーボンブラックを分散可能であり、式IIを満たすため、カーボンブラック分散が不十分なままにおける凝固剤による凝固を抑制することができるからである。
【0011】
本開示におけるマスターバッチの製造方法は、式Iを満たすため、粒径に関わらずカーボンブラックを分散できる。これは、式Iが、カーボンブラックのヨウ素吸着量が大きくなるほど撹拌羽根における周速が速くなるように、周速をヨウ素吸着量に関連づけるからである。
【0012】
本開示におけるマスターバッチの製造方法は、式IIを満たすため、カーボンブラック分散が不十分なままにおける凝固剤による凝固を抑制することができる。この理由を説明する。式IIにおいて、b×tは、撹拌羽根の回転量(m)に相当し、eは、凝固処理前ゴムラテックスに加熱で入力される熱エネルギーに相当するため、式IIが、回転量の割合を確保し、熱エネルギーの割合を制限している。よって、本開示におけるマスターバッチの製造方法は、加熱による凝固促進を適度に制限しつつ撹拌による凝固をすすめることが可能であり、カーボンブラック分散が不十分なままにおける凝固剤による凝固を抑制することができる。
【0013】
カーボンブラックのヨウ素吸着量が100g/kg以上であることが好ましい。100g/kg以上である場合に、式I・式IIの意義が大きい。
【0014】
本開示におけるマスターバッチの製造方法を、本開示におけるゴム組成物の製造方法は含む。
【0015】
本開示におけるマスターバッチの製造方法を、本開示におけるタイヤの製造方法は含む。
【0016】
実施形態1
ここからは、実施形態1で本開示を説明する。
【0017】
実施形態1におけるマスターバッチの製造方法は、カーボンブラックとゴムラテックスとを混合し、カーボンブラックスラリーを得る工程を含む。カーボンブラックとゴムラテックスとを混合することによって、カーボンブラックの再凝集を防止できる。カーボンブラックの表面の一部または全部に極薄いラテックス相が生成し、ラテックス相がカーボンブラックの再凝集を抑制すると考えられるからである。カーボンブラックのヨウ素吸着量は、好ましくは100g/kg以上である。カーボンブラックにおけるヨウ素吸着量の上限としては、たとえば170g/kg、160g/kgなどを挙げることができる。カーボンブラックのヨウ素吸着量は、ASTM D1510に準拠して測定される。カーボンブラックスラリーをつくる工程のゴムラテックスは、たとえば天然ゴムラテックス、合成ゴムラテックスなどである。天然ゴムラテックス中の天然ゴムの数平均分子量は、たとえば200万以上である。天然ゴムラテックスについては濃縮ラテックスやフィールドラテックスといわれる新鮮ラテックスなどを区別なく使用できる。合成ゴムラテックスは、たとえばスチレン−ブタジエンゴムラテックス、ブタジエンゴムラテックス、ニトリルゴムラテックス、クロロプレンゴムラテックスである。ゴムラテックスの固形分(ゴム)濃度は、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.2質量%以上、さらに好ましくは0.3質量%以上である。固形分濃度の上限は、たとえば5質量%、好ましくは2質量%、さらに好ましくは1質量%である。カーボンブラックとゴムラテックスとは、高せん断ミキサー、ハイシアーミキサー、ホモミキサー、ボールミル、ビーズミル、高圧ホモジナイザー、超音波ホモジナイザー、コロイドミルなどの一般的な分散機で混合できる。「高せん断ミキサー」とは、ローターとステーターとを備えるミキサーであって、高速回転が可能なローターと、固定されたステーターと、の間に精密なクリアランスを設けた状態でローターが回転することにより、高せん断作用が働くミキサーを意味する。このような高せん断作用を生み出すためには、ローターとステーターとのクリアランスを0.8mm以下とし、ローターの周速を5m/s以上とすることが好ましい。このような高せん断ミキサーは、市販品を使用することができ、たとえばSILVERSON社製「ハイシアーミキサー」を挙げることができる。
【0018】
カーボンブラックスラリーでは、カーボンブラックが水中に分散している。カーボンブラックスラリーにおけるカーボンブラックの量は、カーボンブラックスラリー100質量%において、好ましくは1質量%以上、より好ましくは3質量%以上である。カーボンブラックスラリーにおけるカーボンブラック量の上限は、好ましくは15質量%、より好ましくは10質量%である。
【0019】
カーボンブラックスラリーとゴムラテックスとを混合し、凝固処理前ゴムラテックスを得る工程を、実施形態1におけるマスターバッチの製造方法はさらに含む。カーボンブラックスラリーと混合するためのゴムラテックスは、たとえば天然ゴムラテックス、合成ゴムラテックスなどである。カーボンブラックスラリーと混合するためのゴムラテックスの固形分濃度は、カーボンブラックスラリーをつくる工程におけるゴムラテックスの固形分濃度よりも高いことが好ましい。カーボンブラックスラリーと混合するためのゴムラテックスの固形分濃度は、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上である。ゴムラテックスにおける固形分濃度の上限は、たとえば60質量%、好ましくは40質量%、さらに好ましくは35質量%である。カーボンブラックスラリーとゴムラテックスとは、公知の何れの混合機でも混合可能であるものの、円筒状容器内でブレードが回転するものを好適に用いることができる。たとえばカワタ社製「スーパーミキサー」、新栄機械製作所社製「スーパーミキサー」、月島マシンセールス社製「ユニバーサルミキサー」や日本コークス工業社製「ヘンシェルミキサー」を挙げることができる。
【0020】
凝固処理前ゴムラテックスでは、ゴム粒子、カーボンブラックなどが水中に分散している。
【0021】
凝固処理前ゴムラテックスを加熱しながら、図1に示す撹拌機5で撹拌する第1工程を、実施形態1におけるマスターバッチの製造方法は含む。加熱しながら撹拌することで、加熱せずに撹拌する場合と比べて、撹拌時間を短縮できる。撹拌機5は、撹拌槽51と回転軸52と撹拌羽根53とを備える。回転軸52は、撹拌槽51の底に設けられている。回転軸52は、垂直線に沿うことが好ましい。撹拌羽根53は、回転軸52に固定されている。撹拌機5以外の混合機も使用可能であり、たとえばカワタ社製「スーパーミキサー」、新栄機械製作所社製「スーパーミキサー」、月島マシンセールス社製「ユニバーサルミキサー」や日本コークス工業社製「ヘンシェルミキサー」を挙げることができる。
【0022】
第1工程は式Iを満たす。式Iを第1工程が満たすため、実施形態1におけるマスターバッチの製造方法は、粒径に関わらずカーボンブラックを分散できる。
b≧i×5.6/100 (式I)
bは、撹拌羽根53の周速(m/s)を示す。iは、カーボンブラックのヨウ素吸着量(g/kg)を示す。撹拌羽根53の周速は、たとえば7m/s以上、好ましくは8m/s以上、より好ましくは10m/s以上、さらに好ましくは10.5m/s以上である。撹拌羽根53の周速の上限はたとえば25m/sである。
【0023】
第1工程は式IIをさらに満たす。式IIを第1工程が満たすため、実施形態1におけるマスターバッチの製造方法は、カーボンブラック分散が不十分なままにおける凝固剤による凝固を抑制することができる。
b×t/e×100>10 (式II)
は撹拌時間(s)を示す。eは式IIIで表される。
=(t+t)×t/2 (式III)
は、第1工程 終了時における凝固処理前ゴムラテックスの温度(℃)を示す。tは、第1工程 開始時における凝固処理前ゴムラテックスの温度(℃)を示す。式IIのb×tは、撹拌羽根53の回転量(m)に相当する。eは、撹拌時間を横軸に、凝固処理前ゴムラテックスの温度を縦軸にとった平面における台形の面積であり、凝固処理前ゴムラテックスに加熱で入力される熱エネルギーに相当する。
【0024】
第1工程後の凝固処理前ゴムラテックスに凝固剤を添加し、凝固物を得る第2工程を、実施形態1におけるマスターバッチの製造方法はさらに含む。凝固剤は、たとえば酸である。酸としてゴムラテックスの凝固用として通常使用されるギ酸、硫酸などを挙げることができる。凝固処理前ゴムラテックスを凝固することで得られた凝固物は水を含む。
【0025】
凝固物を脱水し、乾燥させながら可塑化する工程を、実施形態1におけるマスターバッチの製造方法はさらに含む。
【0026】
可塑化後の凝固物を必要に応じて成型し、マスターバッチを得る工程を、実施形態1におけるマスターバッチの製造方法はさらに含む。
【0027】
マスターバッチは、ゴムを含む。ゴムは、たとえば天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、ニトリルゴム、クロロプレンゴムなどである。マスターバッチにおける天然ゴムの量は、ゴム100質量%において、好ましくは70質量%以上、より好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは100質量%である。
【0028】
マスターバッチは、カーボンブラックをさらに含む。カーボンブラックの量は、ゴム100質量部に対して、好ましくは10質量部以上、より好ましくは20質量部以上、さらに好ましくは30質量部以上である。カーボンブラックの量は、ゴム100質量部に対して、好ましくは80質量部以下、より好ましくは60質量部以下である。
【0029】
マスターバッチと、配合剤と、必要に応じてマスターバッチ由来のゴム以外のゴムとを混合機で乾式混合し、混合物を得る工程を、実施形態1におけるタイヤの製造方法はさらに含む。配合剤は、たとえばステアリン酸、ワックス、酸化亜鉛、老化防止剤などである。老化防止剤として、芳香族アミン系老化防止剤、アミン−ケトン系老化防止剤、モノフェノール系老化防止剤、ビスフェノール系老化防止剤、ポリフェノール系老化防止剤、ジチオカルバミン酸塩系老化防止剤、チオウレア系老化防止剤などを挙げることができる。マスターバッチ由来のゴム以外のゴムとして、たとえば天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、ニトリルゴム、クロロプレンゴムなどを挙げることができる。混合機として密閉式混合機、オープンロールなどを挙げることができる。密閉式混合機としてバンバリーミキサー、ニーダーなどを挙げることができる。
【0030】
混合物に加硫系配合剤を添加し、加硫系配合剤を混合物に練り込み、ゴム組成物を得る工程を、実施形態1におけるタイヤの製造方法はさらに含む。加硫系配合剤として硫黄、有機過酸化物などの加硫剤、加硫促進剤、加硫促進助剤、加硫遅延剤などを挙げることができる。硫黄として粉末硫黄、沈降硫黄、不溶性硫黄、高分散性硫黄などを挙げることができる。加硫促進剤としてスルフェンアミド系加硫促進剤、チウラム系加硫促進剤、チアゾール系加硫促進剤、チオウレア系加硫促進剤、グアニジン系加硫促進剤、ジチオカルバミン酸塩系加硫促進剤などを挙げることができる。
【0031】
ゴム組成物はゴム成分を含む。ゴム成分として、たとえば天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、ニトリルゴム、クロロプレンゴムなどを挙げることができる。天然ゴムの量は、ゴム成分100質量%において、好ましくは40質量%以上、より好ましくは50質量%以上である。天然ゴム量の上限は、たとえば100質量%である。
【0032】
ゴム組成物は、カーボンブラックをさらに含む。カーボンブラックの量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは10質量部以上、より好ましくは20質量部以上、さらに好ましくは30質量部以上である。カーボンブラックの量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは80質量部以下、より好ましくは60質量部以下である。
【0033】
ゴム組成物は、ステアリン酸、ワックス、酸化亜鉛、老化防止剤、硫黄、加硫促進剤などをさらに含むことができる。硫黄の量は、ゴム成分100質量部に対して、硫黄分換算で好ましくは0.5質量部〜5質量部である。加硫促進剤の量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.1質量部〜5質量部である。
【0034】
ゴム組成物の用途は、トレッド、サイドウォール、チェーハー、ビードフィラーなどのタイヤ部材用途である。
【0035】
ゴム組成物からなるタイヤ部材を備える生タイヤをつくる工程を、実施形態1におけるタイヤの製造方法は含む。生タイヤを加熱する工程を実施形態1におけるタイヤの製造方法はさらに含む。実施形態1の方法で得られたタイヤは、空気入りタイヤであることができる。
【0036】
実施形態1の変形例をここで説明する。実施形態1におけるマスターバッチの製造方法は、カーボンブラックとゴムラテックスとを混合し、カーボンブラックスラリーを得る工程を含むものの、実施形態1の変形例は、この工程の代わりに、カーボンブラックと水とを混合し、カーボンブラックスラリーを得る工程を含む。
【実施例】
【0037】
以下に、本開示の実施例を説明する。
【0038】
原料・薬品を次に示す。
天然ゴムラテックス(Dry Rubber Content=31.2% Mw=23.2万) Golden Hope社製
凝固剤 ギ酸(一級85%)ナカライテスク社製 (10%溶液に希釈し、pH1.2に調整し、使用した)
カーボンブラックN110 「シースト9」東海カーボン社製
カーボンブラックN115 「SYNBLACK N115」China Synthetic Rubber社製
カーボンブラックN121 「SYNBLACK N121」China Synthetic Rubber社製
カーボンブラックN234 「シースト7HM」東海カーボン社製
亜鉛華 「1号亜鉛華」三井金属社製
ステアリン酸 「ルナックS−20」花王社製
ワックス 「OZOACE0355」日本精蝋社製
老化防止剤A 「6C」大内新興化学工業社製
老化防止剤B 「RD」大内新興化学工業社製
硫黄 「粉末硫黄」鶴見化学工業社製
加硫促進剤 「サンセラーCM」三新化学工業社製
【0039】
マスターバッチの作製
Golden Hope社製の天然ゴムラテックスに25℃で水を加え、固形分(ゴム)濃度を25質量%に調整した。カーボンブラックを水に添加し、シルバーソン社製攪拌機(フラッシュブレンド)を使用してカーボンブラックを分散させることにより(フラッシュブレンドの条件:3600rpm、30min)、カーボンブラックスラリーを得た。カーボンブラックスラリーを、固形分(ゴム)濃度25質量%の天然ゴムラテックスに表1にしたがって加え、カワタ社製の混合機(スーパーミキサーSM‐20)で表1に記載の条件にて撹拌し、その後凝固剤をpH3〜4になるように添加し、凝固物を得た。凝固物を、スクイザー式1軸押出脱水機(スエヒロEPM社製スクリュープレスV−02型)にかけ、脱水し、乾燥させながら可塑化し、マスターバッチを得た。
【0040】
未加硫ゴムの作製
マスターバッチに、硫黄と加硫促進剤とを除く配合剤を表1にしたがって添加し、神戸製鋼社製のB型バンバリーミキサーで混練りし、ゴム混合物を排出した。ゴム混合物と硫黄と加硫促進剤とをB型バンバリーミキサーで混練りし、未加硫ゴムを得た。
【0041】
マスターバッチにおけるカーボンブラックのばらつき
マスターバッチにおけるゴム成分100質量部に対するカーボンブラック量(質量部)を熱重量・示差熱分析装置TG/DTAを使用して評価した。具体的には、マスターバッチから無作為にN=3でサンプリングし、各標本のカーボンブラック量(質量部)を求め、中央値から最も離れたカーボンブラック量と中央値との差を求め、差が1質量部未満を○、1質量部以上2質量部未満を△、2質量部以上を×とした。
【0042】
発熱性
未加硫ゴムを150℃で30分間加硫し、加硫ゴムの発熱性を損失正接tanδで評価した。tanδは、JIS K−6265に準じて、UBM社製レオスペクトロメーターE4000を使用し、50Hz、80℃、動的歪2%の試験で求めた。比較例1のtanδを100とした指数で、各例のtanδを表示した。指数が小さいほど発熱性が低く、良好である。
【0043】
耐疲労性
加硫ゴムの耐疲労性をJIS K−6260に準じて評価した。比較例1の結果を100とした指数で各例の結果を表示した。指数が大きいほど、耐疲労性に優れることを示す。
【0044】
【表1】
【0045】
式I・式IIを満たすように撹拌することで、加硫ゴムの発熱性・耐疲労性に優れたマスターバッチを作製できた。たとえば、実施例1では比較例1より低発熱性が8ポイント改善し、耐疲労性が8ポイント改善した。
図1