【実施例】
【0038】
以下、実施例を示して本発明を更に具体的に説明する。なお、本発明は、以下の実施例に限定されない。
【0039】
(サンプル1)
<ロール形状物の製造>
ゴム基材に、主として導電剤、無機充填剤、加硫促進剤及び加硫剤を含んだ添加剤を添加して得られたゴム組成物をロールミキサーで混練り後、直径6mmの芯金の表面にプレス成形し、芯金表面に弾性層が形成されたロール形状物を得た。ゴム組成物において、ゴム基材としてエピクロルヒドリンゴムを、導電剤としてカーボンブラック及び金属のアンモニウム錯塩を、無機充填剤として酸化亜鉛を、加硫剤としてチオ尿素及び硫黄を、それぞれ用いた。下記表1に、ゴム組成物におけるゴム基材と添加剤の配合比(質量%)や、ゴム組成物の全量に対する加工助剤、導電剤及び無機充填剤の割合(質量%)を示した。なお、下記表1に示したゴム組成物中に含まれる添加剤a〜添加剤c以外の添加剤dを、まとめて「その他」としたが、サンプル1は、添加剤d中に加工助剤としてステアリン酸を含んだものである。
【0040】
<ロール形状物の研磨>
得られたロール形状物を研磨砥石で研磨(乾式研磨)した後、湿式研磨により、下記表1に示したロール表面粗さRz(μm)とし、所定寸法に成形した。
【0041】
<表面処理液の調製>
表面処理液は、下記表1に示した表面処理前後の電気抵抗値(LogΩ)の差(抵抗差R
a−b)が得られるように、配合比(質量%)の調整を行った。具体的には、イソシアネート化合物(MDI)12.5質量%、有機溶媒として酢酸エチルを87.5質量%配合し、これらをボールミルで1時間分散混合して表面処理液を得た。
【0042】
<ロール形状物の表面処理>
得られた表面処理液を20℃に保ち、研磨したロール形状物を30秒間浸漬した。その後、100℃に保持されたオーブンで浸漬したロール形状物を10時間加熱することにより、弾性層の表面に表面処理層を形成し、帯電ロールを得た。そして、得られた帯電ロールをサンプル1とした。
【0043】
(サンプル2)
下記表1に示した通り、サンプル1で用いた表面処理液のイソシアネート化合物を15.0質量%及び有機溶媒を85.0質量%配合し、ロール表面粗さRzを3.0μmにした以外はサンプル1と同様にして帯電ロールを得た。そして、得られた帯電ロールをサンプル2とした。
【0044】
(サンプル3)
下記表1に示した通り、サンプル1で用いた表面処理液のイソシアネート化合物を15.0質量%及び有機溶媒を85.0質量%配合し、ロール表面粗さRzを4.6μmにした以外はサンプル1と同様にして帯電ロールを得た。そして、得られた帯電ロールをサンプル3とした。
【0045】
(サンプル4)
下記表1に示した通り、ゴム組成物の全量に対する加工助剤、導電剤及び無機充填剤の割合を6.13質量%とし、ロール表面粗さRzを5.3μmにした以外はサンプル1と同様にして帯電ロールを得た。そして、得られた帯電ロールをサンプル4とした。
【0046】
(サンプル5)
下記表1に示した通り、サンプル1で用いた表面処理液のイソシアネート化合物を10.0質量%及び有機溶媒を90.0質量%配合し、研磨したロール形状物を30秒間浸漬し、ロール表面粗さRzを9.7μmにした以外はサンプル1と同様にして帯電ロールを得た。そして、得られた帯電ロールをサンプル5とした。
【0047】
(サンプル6)
下記表1に示した通り、サンプル1で用いた表面処理液のイソシアネート化合物を28.0質量%及び有機溶媒を72.0質量%配合し、ロール表面粗さRzを10.0μmにした以外はサンプル1と同様にして帯電ロールを得た。そして、得られた帯電ロールをサンプル6とした。
【0048】
(サンプル7)
下記表1に示した通り、ゴム組成物の全量に対するゴム基材の割合を86.21質量%とし、加工助剤、導電剤及び無機充填剤の割合を10.17質量%とし、研磨したロール形状物を30秒間浸漬し、ロール表面粗さRzを5.3μmにした以外はサンプル1と同様にして帯電ロールを得た。そして、得られた帯電ロールをサンプル7とした。
【0049】
【表1】
【0050】
(サンプル8〜サンプル11)
下記表2に示した通り、ゴム組成物の全量に対するゴム基材の割合をそれぞれ57.47質量%、73.48質量%、82.64質量%、94.34質量%とし、加工助剤、導電剤及び無機充填剤の割合を、それぞれ39.66質量%、25.06質量%、13.88質量%、2.83質量%とし、研磨したロール形状物を、それぞれ30秒間浸漬した以外はサンプル1と同様にして帯電ロールを得た。そして、得られた帯電ロールを、それぞれサンプル8〜サンプル11とした。
【0051】
【表2】
【0052】
(サンプル12及びサンプル13)
下記表3に示した通り、得られたロール形状物のロール表面粗さRzを、それぞれ11.1μm、16.3μmにした以外はサンプル1と同様にして帯電ロールを得た。そして、得られた帯電ロールを、それぞれサンプル12及びサンプル13とした。
【0053】
(サンプル14〜サンプル16)
下記表3に示した通り、サンプル1で用いた表面処理液のイソシアネート化合物を、それぞれ20.0質量%、15.0質量%、17.5質量%及び有機溶媒を、それぞれ80.0質量%、85.0質量%、82.5質量%配合し、得られたロール形状物のロール表面粗さRzを、それぞれ12.4μm、12.3μm、11.9μmにした以外はサンプル1と同様にして帯電ロールを得た。そして、得られた帯電ロールを、それぞれサンプル14〜サンプル16とした。
【0054】
【表3】
【0055】
(サンプル17〜サンプル19)
下記表4に示した通り、サンプル1で用いた表面処理液のイソシアネート化合物を、それぞれ5.0質量%、5.0質量%、35.0質量%及び有機溶媒を、95.0質量%、95.0質量%、65.0質量%配合し、得られたロール形状物のロール表面粗さRzを、それぞれ9.5μm、9.5μm、9.8μmにした以外はサンプル1と同様にして帯電ロールを得た。そして、得られた帯電ロールを、それぞれサンプル17〜サンプル19とした。
【0056】
【表4】
【0057】
(試験例1)
<電気抵抗値の測定>
図2は、電気抵抗値の測定方法を説明するための図である。
図2に示すように、帯電ロール10(サンプル1〜サンプル19)をφ30mmの金属ロール20の上に載置し、芯体11の両端に500g荷重をかけて押し当てた。その状態で、金属ロール20を30rpmで回転させ、芯体11と金属ロール20との間にDC−100Vを10秒印加して、表面処理前後の電気抵抗値(Ω)を測定した後に、表面処理前後の電気抵抗値の差(抵抗差)を算出した。なお、電気抵抗値の測定には、株式会社アドバンテスト製の「ULTRA HIGH RESISTANCE METER R8340A」を使用した。
【0058】
試験例1では、表面処理前後の電気抵抗値(Ω)を測定した後に常用対数に変換した値(LogΩ)とし、下記式(2)に基づき抵抗差R
a−b(LogΩ)を算出し、その結果を表1〜表4にそれぞれ示した。なお、下記式(2)中のR
beforeは、表面処理前の帯電ロール10の電気抵抗値(Ω)を常用対数に変換した値(LogΩ)を示し、R
afterは、表面処理後の帯電ロール10の電気抵抗値(Ω)を常用対数に変換した値(LogΩ)を示す。
【0059】
R
a−b=R
after−R
before ・・・ (2)
【0060】
(試験例2)
<含浸深さの測定>
サンプル1〜サンプル19について、表面処理液の含浸深さを測定し、その結果を表1〜表4に示した。具体的には、研磨砥石を用いて各サンプルの表面を少しずつ切削し、赤外吸収分光法(IR:infrared absorption spectrometry)を用いてイソシアネート化合物の吸収スペクトルを測定し、そのピークが消失したときの切削量(切削深さ)を含浸深さとした。
【0061】
(試験例3)
<ロール表面粗さの測定>
サンプル1〜サンプル19について、表面処理後のロール表面粗さを測定し、その結果を表1〜表4に示した。具体的には、表面粗さ計(株式会社小阪研究所製、SE3300)を用い、「JIS B0601−1994」(ISO 4287 1997)に準拠して、各サンプルのロール表面粗さRz(μm)を測定した。このとき、各サンプルの中央及び両端の3点のRzを測定し、これらの平均値を算出して測定値とした。
【0062】
(試験例4)
<弾性層硬度の測定>
サンプル1〜サンプル19について、マイクロゴム硬度計(高分子計器株式会社製、MD−1capa)を用いて、表面処理後の各サンプルの弾性層硬度(マイクロゴム硬度)(°)を測定し、その結果を表1〜表4に示した。
【0063】
(試験例5)
<圧縮永久歪の測定>
サンプル1〜サンプル19について、「JIS K6262」(ISO 0815−1)に準拠して、70℃、25%圧縮環境下に22時間放置した後の、表面処理後の各サンプルの圧縮永久歪(%)を測定し、その結果を表1〜表4に示した。
【0064】
(試験例6)
<画像評価>
サンプル1〜サンプル19について、市販のレーザープリンターの帯電部分に各サンプルを搭載した状態でプリンターを起動し、紙に印刷した画像を用いて画像評価(かぶり、黒スジ、濃淡ムラ)を行い、その結果を表1〜表4に示した。なお、画像評価の基準は、以下に示した通りである。
【0065】
かぶり評価は、白地印字で印刷した紙と印刷前の紙とを目視で観察し、両者を比較して行った。このときの評価基準は、白地部にトナーが付着している場合を「×」、僅かな付着が見られる場合を「△」、トナーの付着が見られない場合を「○」とした。
【0066】
黒スジ評価は、ハーフトーン画像を用いて印刷前後の紙を目視で観察し、両者を比較して行った。このときの評価基準は、黒スジが発生している場合を「×」、僅かな発生が見られる場合を「△」、黒スジの発生が見られない場合を「○」とした。
【0067】
濃淡ムラ評価は、ハーフトーン画像を用いて印刷前後の紙を目視で観察し、両者を比較して行った。このときの評価基準は、帯電ロールピッチでムラが見える場合を「×」、僅かにムラが見られる場合を「△」、ムラが見られない場合を「○」とした。
【0068】
(試験例7)
<加工性評価>
サンプル1〜サンプル19について、各作業中における加工性(練り性、研磨性)を評価し、その結果を表1〜表4に示した。なお、加工性評価の基準は、以下に示した通りである。
【0069】
各サンプルの加工性においては、ゴム組成物の作製時に練り性に問題があり、且つロール形状物の研磨時に研磨性に問題があり、加工ができない場合を「×」、練り性及び研磨性に難がある場合を「△」、練り性及び研磨性に問題が無い場合を「○」とした。
【0070】
(結果のまとめ)
サンプル1〜サンプル7は、ゴム組成物の全量に対する加工助剤、導電剤及び無機充填剤の配合比が11質量%以下、表面処理液の含浸深さが100μm以下、ロール表面粗さRzが10μm以下、及び抵抗差R
a−bが0.60LogΩ以上、2.40LogΩ以下の範囲内のものである。得られた各サンプルは、マイクロゴム硬度が40°以上、及び圧縮永久歪が40%以下であり、ゴム組成物の混練りやロール研磨といった加工性に問題は生じなかった。また、これらのサンプルを搭載したプリンターを用いて出力した画像には、かぶり、黒スジ及び濃淡ムラといった画像不良は見られなかった。
【0071】
サンプル8〜サンプル10は、加工助剤、導電剤及び無機充填剤の配合比が11質量%を超えたものである。得られた各サンプルは、画像評価において、出力した画像に黒スジが発生した。特に、サンプル8及びサンプル9は、表面処理液の含浸深さが100μmを超えたことから、耐久性が悪化した。
【0072】
サンプル11は、加工助剤、導電剤及び無機充填剤の配合比が3質量%未満であって、無機充填剤を添加しなかったものである。このため、サンプル11は、ゴム組成物の作製時における練り性が悪化し、ロール研磨に問題が生じたが、出力した画像に画像不良は見られなかった。
【0073】
サンプル12〜サンプル16は、ロール表面粗さRzが10μmを超えたものである。得られた各サンプルは、画像評価において、出力した画像の白地部にトナーが付着し、かぶりが発生した。
【0074】
サンプル17〜サンプル19は、表面処理液の全量に対するイソシアネート化合物の含有量が6質量%以上、34質量%以下の範囲から外れることにより、抵抗差R
a−bが0.60LogΩ以上、2.40LogΩ以下の範囲から外れたものである。サンプル17及びサンプル18は、表面処理液の全量に対するイソシアネート化合物の含有量を6質量%未満としたことから、表面処理前後における電気抵抗値の差が0.60LogΩ未満となり、画像評価において、出力した画像に黒スジが発生した。また、サンプル19は、表面処理液の全量に対するイソシアネート化合物の含有量を34質量%より大きくしたことから、表面処理前後における電気抵抗値の差が2.40LogΩを超えてしまい、画像評価において、出力した画像に濃淡ムラが生じた。