特許第6872380号(P6872380)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日立造船株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6872380-ノズル式電子線照射装置 図000002
  • 特許6872380-ノズル式電子線照射装置 図000003
  • 特許6872380-ノズル式電子線照射装置 図000004
  • 特許6872380-ノズル式電子線照射装置 図000005
  • 特許6872380-ノズル式電子線照射装置 図000006
  • 特許6872380-ノズル式電子線照射装置 図000007
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6872380
(24)【登録日】2021年4月21日
(45)【発行日】2021年5月19日
(54)【発明の名称】ノズル式電子線照射装置
(51)【国際特許分類】
   G21K 5/04 20060101AFI20210510BHJP
   B65B 55/08 20060101ALI20210510BHJP
   B65B 55/04 20060101ALI20210510BHJP
   G21K 1/093 20060101ALI20210510BHJP
   A61L 2/08 20060101ALI20210510BHJP
【FI】
   G21K5/04 E
   B65B55/08 B
   B65B55/04 C
   G21K1/093 F
   A61L2/08 108
【請求項の数】1
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-18020(P2017-18020)
(22)【出願日】2017年2月3日
(65)【公開番号】特開2018-124217(P2018-124217A)
(43)【公開日】2018年8月9日
【審査請求日】2020年1月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005119
【氏名又は名称】日立造船株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001298
【氏名又は名称】特許業務法人森本国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】野田 武史
(72)【発明者】
【氏名】田中 龍太
(72)【発明者】
【氏名】坂井 一郎
【審査官】 山口 敦司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−055556(JP,A)
【文献】 特開2013−129453(JP,A)
【文献】 特開2005−331418(JP,A)
【文献】 特開2002−104333(JP,A)
【文献】 特許第6068693(JP,B2)
【文献】 国際公開第2012/057166(WO,A1)
【文献】 国際公開第2014/175065(WO,A1)
【文献】 特開平04−065057(JP,A)
【文献】 特開平04−098746(JP,A)
【文献】 特開平04−051439(JP,A)
【文献】 特開2017−122691(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21K 5/04
A61L 2/08
B65B 55/04
B65B 55/08
G21K 1/093
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部が形成された照射対象物の当該開口部に挿入され得る真空ノズルを備え、当該真空ノズルにより上記照射対象物の内部に電子線を照射するノズル式電子線照射装置であって、
真空チャンバと、この真空チャンバの内部に配置された電子線発生器とを備え、
上記真空ノズルが、上記真空チャンバに接続されて、上記電子線発生器からの電子線を案内して外部に出射するものであり、
上記真空ノズルを外方から囲う形状で、当該真空ノズルに案内される電子線を集束するネオジム磁石と、
上記照射対象物の開口部から真空ノズルを挿入および抜去する挿入抜去機構と、
上記真空ノズルを冷却する冷却機構とを備え、
上記冷却機構が、上記真空ノズルを冷却すると同時に、上記ネオジム磁石を不可逆減磁が生じない程度まで冷却するものであり、
上記真空チャンバと真空ノズルとを接続する接続部材を備え、
上記接続部材が、その内部にネオジム磁石を保持するものであり、
上記真空ノズルが、その基端部を接続部材に埋設するように配置されたものであり、
上記冷却機構が、冷媒を通過させる冷媒路を有し、
上記冷媒路が、上記接続部材の内部において、上記真空ノズルとネオジム磁石との間で、上記真空ノズルを囲うように配置されたものであることを特徴とするノズル式電子線照射装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノズル式電子線照射装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ノズル式電子線照射装置は、その真空チャンバに接続されて電子線を先端部から出射する真空ノズルを有する。このため、ノズル式電子線照射装置は、その真空ノズルを容器の開口部に挿入して、上記真空ノズルから電子線を出射することで、上記容器の内部に電子線を照射することが可能である。容器の内部への電子線の照射は、例えば容器の内部を滅菌するために行われる。この場合、ノズル式電子線照射装置は、容器の内部を電子線の直接的な照射により滅菌するので、容器の外部に強力な電子線を照射して内部に透過させるような電子線照射装置に比べて、電力の消費を抑えられるだけでなく、容器の変質を抑えられる。
【0003】
このようなノズル式電子線照射装置において、真空ノズルに案内される電子線は、当該真空ノズルの内面にあまり当たらないことが好ましい。真空ノズルの内面に当たった電子線はロスとなり外部に出射されないので、電子線の歩留りが低くなるからである。従来には、電子線発生器に設けられた静電レンズで電子線を集束させるノズル式電子線照射装置が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許5597743号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1に記載されたノズル式電子線照射装置では、静電レンズにより電子線が集束されるものの、この集束は場合によっては不十分である。例えば真空ノズルが長い場合、電子線が真空ノズルの先端部に達するまでに当該真空ノズルの内面に多く当たり、電子線の歩留りが低くなってしまう。したがって、電子線発生器で発生させる電子線が低出力であれば、十分な線量の電子線が真空ノズルから出射されない。よって、電子線発生器で発生させる電子線を高出力にせねばならず、これにより、電子線発生器におけるカソードの寿命が短くなっていた。一方で、追加の電子線集束機構を設けると、電子線の集束が十分であったとしても、構成が複雑になる。加えて、そのような電子線集束機構が妨げとなって真空ノズルを容器の開口部に挿入できないことにもなり、結果として、容器(開口部が形成された照射対象物)の内部に電子線を適切に照射することができなかった。
【0006】
そこで、本発明は、簡素な構成で高寿命化を実現し得るとともに、開口部が形成された照射対象物の内部に適切に電子線を照射し得るノズル式電子線照射装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、第1の発明に係るノズル式電子線照射装置は、開口部が形成された照射対象物の当該開口部に挿入され得る真空ノズルを備え、当該真空ノズルにより上記照射対象物の内部に電子線を照射するノズル式電子線照射装置であって、
真空チャンバと、この真空チャンバの内部に配置された電子線発生器とを備え、
上記真空ノズルが、上記真空チャンバに接続されて、上記電子線発生器からの電子線を案内して外部に出射するものであり、
上記真空ノズルを外方から囲う形状で、当該真空ノズルに案内される電子線を集束するネオジム磁石と、
上記照射対象物の開口部から真空ノズルを挿入および抜去する挿入抜去機構と、
上記真空ノズルを冷却する冷却機構とを備え、
上記冷却機構が、上記真空ノズルを冷却すると同時に、上記ネオジム磁石を不可逆減磁が生じない程度まで冷却するものであり、
上記真空チャンバと真空ノズルとを接続する接続部材を備え、
上記接続部材が、その内部にネオジム磁石を保持するものであり、
上記真空ノズルが、その基端部を接続部材に埋設するように配置されたものであり、
上記冷却機構が、冷媒を通過させる冷媒路を有し、
上記冷媒路が、上記接続部材の内部において、上記真空ノズルとネオジム磁石との間で、上記真空ノズルを囲うように配置されたものである。
【発明の効果】
【0010】
上記ノズル式電子線照射装置によると、電子線が低出力でも適用可能になるので高寿命化を実現することができる。また、ネオジム磁石を冷却するための別途の冷却機構が不要になるので、簡素な構成にすることができる。加えて、真空ノズルが、ネオジム磁石に妨げられることなく照射対象物の開口部に挿入および抜去されながら、照射対象物の内部に電子線を照射するので、照射対象物の内部に適切に電子線を照射することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施の形態に係るノズル式電子線照射装置を示す概略縦断面図である。
図2】本発明の実施例1に係るノズル式電子線照射装置を示す概略縦断面図である。
図3】同ノズル式電子線照射装置をペットボトル側から見た分解斜視図である。
図4図2のA−A断面図である。
図5図2のB−B断面図である。
図6】本発明の実施例2に係るノズル式電子線照射装置を示す概略縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本実施の形態に係るノズル式電子線照射装置1について図1に基づき詳細に説明する。
【0013】
図1に示すように、このノズル式電子線照射装置1は、開口部mが形成された照射対象物Oの当該開口部mに挿入され得る真空ノズル2を備え、当該真空ノズル2により上記照射対象物Oの内部に電子線Eを照射するものである。ここで、開口部mが形成された照射対象物Oとは、例えば、ペットボトルなどの容器、またはプリフォーム体などである。なお、プリフォーム体とは、ブロー成形によりペットボトルに成形される前の原料体であって試験管形状のものである。以下では、簡単のために、上記開口部mが形成された照射対象物OをペットボトルOとして説明する。
【0014】
上記ノズル式電子線照射装置1は、真空チャンバ3と、この真空チャンバ3の内部に配置された電子線発生器4とを備える。この電子線発生器4に、当該電子線発生器4からの電子線Eを集束する静電レンズ5が設けられてもよい。上記真空ノズル2は、上記真空チャンバ3に接続されて、上記電子線発生器4からの電子線Eを案内して外部に出射するものである。
【0015】
上記真空チャンバ3は、内部が真空雰囲気にされることで、上記電子線発生器4からの電子線Eを加速するものである。上記電子線発生器4は、例えばカソードのような、電子線Eを発生させる部品を有する。上記真空ノズル2は、外部に電子線Eを出射するために、例えばチタン箔のような出射窓20を先端部に有する。なお、上記静電レンズ5は、上記電子線発生器4に設けられる場合、上記電子線発生器4からの電子線Eを真空ノズル2に案内させるように配置される。
【0016】
ここで、電子線Eを発生させる部品(例えばカソード)の位置、例えばカソードと静電レンズ5との距離によって、電子線Eの集束される程度が大きく変化する。また、上記位置(距離)を適切にしても、真空ノズル2が長い場合、電子線Eが真空ノズル2の先端部に到達する前に当該真空ノズル2の内面に当たることになる。そこで、本発明の要旨として、電子線Eを妨げない位置である上記真空ノズル2の外方に、当該真空ノズル2に案内される電子線Eを集束するネオジム磁石60が配置される。一般にネオジム磁石は、他の永久磁石よりも磁力が強いので、他の永久磁石よりも小型で足りる。
【0017】
上記ネオジム磁石60は、真空ノズル2を外方から囲う形状(図1では見やすさのために半分のみを示す)である。このネオジム磁石60は、真空ノズル2がペットボトルOの開口部mに挿入される際に妨げにならない場所に配置され、例えば真空ノズル2の基端部に配置される。また、上記ネオジム磁石60は、真空チャンバ側60NがN極(またはS極)で、ペットボトル側60SがS極(またはN極)となるように配置される。
【0018】
上記ノズル式電子線照射装置1は、さらに、ペットボトルOの開口部mから真空ノズル2を挿入および抜去する挿入抜去機構7と、上記真空ノズル2を冷却する冷却機構8とを備える。
【0019】
上記挿入抜去機構7は、ペットボトルOの開口部mから真空ノズル2を挿入および抜去するものであれば特に限定されないが、例えば、ペットボトルOを昇降させるペットボトル昇降機7である。このペットボトル昇降機7は、ペットボトルOを上昇させることにより、上記真空ノズル2の先端部(出射窓20)をペットボトルOの内部に開口部mから挿入し、その状態からペットボトルOを下降させることにより、上記真空ノズル2の先端部をペットボトルOの開口部mから抜去するものである。このため、上記ペットボトル昇降機7は、ペットボトルOを把持するグリッパ71と、このグリッパ71を上下方向に案内するガイド部材72と、このガイド部材72の案内により上記グリッパ71を上下方向に移動させるアクチュエータ(図示省略)とを有する。上記挿入抜去機構7は、上記ペットボトル昇降機7のようなペットボトルOを昇降させるものではなく、真空ノズル2を昇降させるものでもよい。
【0020】
上記冷却機構8は、電子線Eを案内することにより温度が上昇する真空ノズル2を、適正な温度まで冷却するものである。このため、上記冷却機構8は、例えば、真空ノズル2に巡らされた冷媒路83と、この冷媒路83に冷媒を通過させる冷媒導入部81とを有する。上記冷媒路83は、その内部に液体または気体の冷媒を通過させることで、当該冷媒に真空ノズル2から熱を吸収させるものである。ここで、一般にネオジム磁石60は、他の永久磁石よりも磁力が強いという長所を有するものの、熱により不可逆減磁が生じやすいという短所を有する。このため、上記冷却機構8を、上記真空ノズル2を冷却すると同時に、上記ネオジム磁石60を不可逆減磁が生じない程度まで冷却するように構成することで、ネオジム磁石60を冷却するための別途の冷却機構が不要になる。
【0021】
上述した構成により、真空チャンバ3の内部に配置された電子線発生器4からの電子線Eは、真空ノズル2の内部に案内されて、当該真空ノズル2の出射窓20から外部に出射される。なお、静電レンズ5が設けられた場合は、電子線Eが真空ノズル2の内部に案内される前にも静電レンズ5により集束される。真空ノズル2に案内される電子線Eは、真空ノズル2を外方から囲う形状のネオジム磁石60により集束される。このため、真空ノズル2の内面に当たる電子線Eの量が減少することになり、外部に出射される電子線Eのロスが減少する。これにより、電子線Eの歩留りが高くなり、電子線発生器4で発生させる電子線Eが低出力でも適用可能になる。
【0022】
また、ペットボトル昇降機7により、ペットボトルOの開口部mから真空ノズル2を挿入および/または抜去しながら、当該ペットボトルOの内部に電子線Eが照射される。ここで、ネオジム磁石60は、小型で足りるので上記挿入および抜去を妨げない。
【0023】
このように、上記ノズル式電子線照射装置1によると、電子線Eが低出力でも適用可能になるので高寿命化を実現することができる。また、ネオジム磁石60を冷却するための別途の冷却機構が不要になるので、簡素な構成にすることができる。加えて、真空ノズル2が、ネオジム磁石60に妨げられることなくペットボトルOの開口部mに挿入および抜去されながら、ペットボトルOの内部に電子線Eを照射するので、ペットボトルOの内部に適切に電子線Eを照射することができる。
【0024】
以下、上記実施の形態をより具体的に示した実施例1および2に係るノズル式電子線照射装置1について説明する。なお、以下の実施例1および2において、より具体的に示すのはネオジム磁石60およびその付近と、冷却機構8とについての構成であり、それら以外の構成は上記実施の形態と同一であるから説明を省略する。
【実施例1】
【0025】
以下、本実施例1に係るノズル式電子線照射装置1について図2図5に基づき詳細に説明する。
【0026】
図2に示すように、本実施例1に係るノズル式電子線照射装置1は、真空チャンバ3と真空ノズル2とを接続する円台座形状の接続部材11(図2では見やすさのために半分のみを示す)を備える。この接続部材11は、一方の側で真空チャンバ3を固定するとともに、他方の側で真空ノズル2の基端部を埋設することで固定して、真空チャンバ3と真空ノズル2とを構造的に安定させる。また、上記接続部材11は、ネオジム磁石60を収容する収容溝16が上記他方の側から形成される。さらに、上記接続部材11は、収容溝16に収容された(つまり内部に保持された)ネオジム磁石60を固定するための蓋板12も有する。図3に示すように、上記収容溝16は、ネオジム磁石60と平面視が同一で且つ、ネオジム磁石60および蓋板12の厚さに相当する深さを有する。上記蓋板12は、ネオジム磁石60および収容溝16と平面視が同一である。なお、ネオジム磁石60は、図3に示すような一枚ものに限られず、厚さ方向に複数枚から構成されてもよい。これにより、収容溝16に収容されるネオジム磁石60の枚数を増減することで、電子線Eをさらに集束するのに必要な磁力の調整が可能になる。
【0027】
本実施例1に係るノズル式電子線照射装置1の冷却機構8は、水冷方式であり、図2に示すように、真空ノズル2に巡らされた冷媒路83と、この冷媒路83に冷媒(水)を導入する冷媒導入部81と、冷媒路83に導入された冷媒を回収する冷媒回収部89とを有する。
【0028】
上記冷媒路83は、冷媒を真空ノズル2の先端部外周まで導入する部分として、上記冷媒導入部81から接続部材11の内部まで冷媒を導入する導入管82と、接続部材11の内部で真空ノズル2の基端部外周における一方の半円部に冷媒を導入する内部導入路84と、接続部材11の外部で内部導入路84から真空ノズル2の先端部外周(一方の半円部)まで冷媒を導入する外部導入路85とを具備する。また、上記冷媒路83は、冷媒を真空ノズル2の先端部外周から回収する部分として、真空ノズル2の先端部外周(他方の半円部)から接続部材11の内部まで冷媒を回収する外部回収路86と、接続部材11の内部で真空ノズル2の基端部外周における他方の半円部から冷媒を回収する内部回収路87と、上記接続部材11の内部から冷媒回収部89まで冷媒を回収する回収管88とを具備する。
【0029】
上記冷却機構8は、上記外部導入路85および外部回収路86を形成するために、上記真空ノズル2の外周において、当該真空ノズル2に接しないように配置された外筒体21を有する。また、上記冷却機構8は、真空ノズル2の先端部外周まで導入された冷媒が流れ出ないようにするために、外筒体21の先端部と真空ノズル2の先端部とを接続する先端部材22も有する。上記真空ノズル2と外筒体21との間は、外部導入路85および外部回収路86に相当し、図4図2のA−A断面図)に示すように、真空ノズル2の先端部外周を除き、外部導入路85と外部回収路86とを区画する2本の仕切材23が配置されている。これら仕切材23は、図5図2のB−B断面図)に示すように、接続部材11の内部においても、真空ノズル2の基端部外周における一方の半円部と他方の半円部とを区画する長さである。上記冷媒路83(具体的には内部導入路84および内部回収路87の仕切材23で区画された部分)は、図5で明らかに示すように、接続部材11の内部において、真空ノズル2とネオジム磁石60との間で、上記真空ノズル2を囲うように配置される。
【0030】
上述した構成により、図2に示すように、接続部材11が真空チャンバ3と真空ノズル2とを構造的に安定させるので、例えばターンテーブルのような動きのある部材の上に設置されても、真空チャンバ3と真空ノズル2との相対位置は変動しない。また、ネオジム磁石60は、接続部材11の内部に保持されるので、電子線発生器4に近い側での配置になるとともに、ペットボトルOの開口部mからの真空ノズル2の挿入および抜去を妨げない。さらに、冷媒路83(具体的には、内部導入路84、外部導入路85、外部回収路86および内部回収路87)は、真空ノズル2を外周から略全面において冷却するとともに(図4および図5参照)、ネオジム磁石60を内周から略全面において冷却する(図5参照)。
【0031】
このように、本実施例1に係るノズル式電子線照射装置1によると、上記実施の形態での効果に加えて、真空チャンバ3と真空ノズル2との相対位置は変動しないので、ペットボトルOの内部に適切に電子線Eを照射することができる。
【0032】
また、ネオジム磁石60は、電子線発生器4に近い側での配置になることで、一層電子線Eが集束される。このため、電子線Eが一層低出力でも適用可能になるので、一層の高寿命化を実現することができる。さらに、真空ノズル2が、ネオジム磁石60に妨げられることなくペットボトルOの開口部mに挿入および抜去されながら、ペットボトルOの内部に電子線Eを照射するので、ペットボトルOの内部に一層適切に電子線Eを照射することができる。
【0033】
加えて、冷媒路83が真空ノズル2およびネオジム磁石60を略全面において冷却するので、真空ノズル2およびネオジム磁石60が効率的に冷却されることになり、装置全体として一層の高寿命化を実現することができる。
【実施例2】
【0034】
以下、本実施例2に係るノズル式電子線照射装置1について図6に基づき詳細に説明する。
【0035】
上記実施例1では、冷却機構8が水冷方式であるとして説明したが、本実施例2では、冷却機構8が空冷方式である。なお、以下において、上記実施例1と異なる部分に着目して説明するとともに、上記実施例1と同一の構成については、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0036】
上記実施例1に係るノズル式電子線照射装置1では、真空ノズル2の外周(真空ノズル2と外筒体21との間)において、基端部から先端部まで冷媒(水)が導入される外部導入路85と、先端部から基端部まで冷媒が回収される外部回収路86とに仕切材23で区画されるとして説明した。しかしながら、本実施例2に係るノズル式電子線照射装置1では、このような仕切材23が無く、図6に示すように、冷媒(窒素ガスであり図6の黒矢印で示す)を真空ノズル2の先端部外周に導入した後、その冷媒を先端部の出射窓20に衝突するように導入し、その冷媒をそのまま外部に放出するように構成される。このため、本実施例2に係るノズル式電子線照射装置1の冷却機構8において、外筒体21は真空ノズル2の先端部から突出する長さであり、先端部材22は真空ノズル2に接することなく出射窓20に向けて傾斜している。したがって、本実施例2に係るノズル式電子線照射装置1の冷媒路83では、冷媒が真空ノズル2の基端部外周から出射窓20に衝突するまでの部分が、外部導入路85に相当する。なお、本実施例2に係るノズル式電子線照射装置1では、冷媒が外部に放出されるので、上記実施例1のような冷媒を回収するための構成86〜89は不要になる。
【0037】
このように、本実施例2に係るノズル式電子線照射装置1によると、上記実施の形態での効果に加えて、冷却機構8が空冷方式であることにより簡素になるので、装置全体としてより簡素な構成にすることができる。
【0038】
また、冷媒路83(具体的には、外部導入路85)が真空ノズル2およびネオジム磁石60を略全面において冷却するので、真空ノズル2およびネオジム磁石60が効率的に冷却されることになり、装置全体として一層の高寿命化を実現することができる。
【0039】
ところで、上記実施の形態で説明した構成以外については、任意の構成であり、適宜削除および変更することが可能である。例えば、上記実施例2に係るノズル式電子線照射装置1に、上記実施例1に係る接続部材11を採用したものであってもよい。
【0040】
また、上記実施の形態並びに実施例1および2では、ネオジム磁石60が円形(輪)状であるとして図示したが、この形状に限定されるものではなく、角形状など、真空ノズル2を囲う形状であればよい。
【0041】
さらに、上記実施例1では冷媒を水として説明したが、真空ノズル2およびネオジム磁石60の熱を吸収して移送する液体であればよい。同様に、上記実施例2では冷媒を窒素ガスとして説明したが、真空ノズル2およびネオジム磁石60の熱を吸収して移送する気体であればよい。
【符号の説明】
【0042】
1 ノズル式電子線照射装置
2 真空ノズル
3 真空チャンバ
4 電子線発生器
7 ペットボトル昇降機
8 冷却機構
60 ネオジム磁石
図1
図2
図3
図4
図5
図6