(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
露光装置の光出射部には、真空紫外線を透過するガラス板が設けられている。長期にわたって露光装置を使用すると、露光処理により生じた有機材料からなる異物が光出射部のガラス板に付着する。この場合、ガラス板が曇るかまたは濁ることにより、ガラス板の光透過率が低下するとともに、光透過率が局所的に不均一になる。そのため、露光処理の効率および精度が低下する。一方で、保守作業者が頻繁にガラス板に付着した異物を除去する場合には、保守作業者の負担が大きくなる。また、保守作業に長時間を要するので、露光装置の稼動停止時間が長期化し、稼働効率が低下する。
【0006】
本発明の目的は、保守作業者の負担を低減しつつ長期にわたって露光処理の効率および精度を維持することが可能な露光装置、基板処理装置、露光方法および基板処理方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)第1の発明に係る露光装置は、基板を露光する露光装置であって、露光装置の動作モードを露光モードと保守モードとで切り替える切替部と、透光性の窓部材が取り付けられ、露光モードにおいて処理対象の基板を収容する処理室と、窓部材を通して処理室内に真空紫外線を出射可能に設けられた光源部と、
処理室内において、光源部の下方に設けられ、基板が載置される載置部と、処理室内の雰囲気を排気するための排気部と、露光モードにおいて、処理室内の酸素濃度が大気中の酸素濃度よりも低い第1の濃度になるように排気部を制御する第1の排気制御部と、露光モードにおいて、処理室内の酸素濃度が第1の濃度である状態で、処理室内の基板に真空紫外線を照射することにより基板を露光するように光源部を制御する第1の投光制御部と、保守モードにおいて、処理室内の酸素濃度が第1の濃度よりも高い第2の濃度である状態で、処理室内の雰囲気に真空紫外線を照射することによりオゾンを発生させるように光源部を制御する第2の投光制御部と
、処理室内と外部との間での基板の受け渡しの際に、載置部が第1の位置に移動するように載置部を制御し、露光モードにおいて、光源部から基板への真空紫外線の照射の際に、載置部が第1の位置の上方の第2の位置に移動するように載置部を制御し、保守モードにおいて、光源部から処理室内の雰囲気への真空紫外線の照射の際に、載置部が第2の位置に移動するように載置部を制御する昇降制御部とを備える。
【0008】
この露光装置においては、動作モードが露光モードと保守モードとで切り替えられる。露光モードにおいては、透光性の窓部材が取り付けられた処理室内に処理対象の基板が収容される。処理室内の酸素濃度が大気中の酸素濃度よりも低い第1の濃度になるように排気部により処理室内の雰囲気が排気される。この状態で、光源部から窓部材を通して処理室内の基板に真空紫外線が照射されることにより、基板が露光される。保守モードにおいては、処理室内の酸素濃度が第1の濃度よりも高い第2の濃度である状態で、光源部から窓部材を通して処理室内の雰囲気に真空紫外線が照射されることにより、処理室内にオゾンが発生される。
【0009】
露光モードにおいて基板が露光されることにより、処理室に取り付けられた窓部材の部分に有機材料からなる異物が徐々に付着する。このような場合でも、上記の構成によれば、保守モードにおいて処理室内に発生するオゾンにより、窓部材に付着した異物が分解または除去される。そのため、保守作業者は頻繁に窓部材の異物を除去する必要がない。したがって、保守作業者の負担が低減される。
【0010】
また、保守作業に要する時間が短縮されるため、露光装置の稼動停止時間が最小化される。これにより、露光装置の稼働効率が向上する。さらに、異物による窓部材の曇りおよび濁りが防止され、窓部材の透過性が高い状態で維持されるので、露光装置を長期間使用した場合でも、露光処理の効率および精度が低下することが防止される。これらの結果、保守作業者の負担を低減しつつ長期にわたって露光処理の効率および精度を維持することができる。
【0011】
(2)露光装置は、保守モードにおいて、発生された処理室内のオゾンを排気するように排気部を制御する第2の排気制御部をさらに備えてもよい。この場合、窓部材に付着した異物が除去された後に、処理室内に残存するオゾンを容易に排気することができる。
【0012】
(3)第2の濃度は、大気中の酸素濃度であってもよい。この場合、保守モードにおいて、第1の濃度よりも高い第2の濃度の状態を容易に実現することができる。
【0013】
(4)第1の濃度は、光源部により出射される真空紫外線によってはオゾンが発生しない酸素濃度であってもよい。この場合、露光モードにおいて、真空紫外線を減衰させることなく基板に照射することができる。これにより、露光処理の効率を向上させることができる。
【0014】
(5)露光装置は、露光モードにおいて、処理室内に不活性ガスを供給する給気部をさらに備えてもよい。この場合、露光モードにおける処理室内の酸素濃度を容易にかつ十分に低減させることができる。
【0015】
(6)光源部は、面状の断面を有する真空紫外線を出射するように構成されてもよい。この場合、広範囲に真空紫外線が出射される。そのため、露光モードにおいて、基板の露光処理を短時間で終了することができる。また、保守モードにおいて、十分な量のオゾンを容易に発生させることができるので、窓部材に付着した異物の分解または除去を短時間で終了することができる。
【0016】
(7)光源部による真空紫外線の出射面積は、基板の面積よりも大きくてもよい。この場合、露光モードにおいて、基板の全面露光を行うことができるので、基板の露光処理をより短時間で終了することができる。また、保守モードにおいて、窓部材に付着した異物の分解または除去をより短時間で終了することができる。
【0017】
(8)第2の発明に係る基板処理装置は、基板に処理液を塗布することにより基板に膜を形成する塗布処理部と、塗布処理部により膜が形成された基板を熱処理する熱処理部と、熱処理部により熱処理された基板を露光モードにおいて露光する第1の発明に係る露光装置と、露光装置により露光された基板に溶剤を供給することにより基板の膜を現像する現像処理部とを備える。
【0018】
この基板処理装置においては、塗布処理部により基板に処理液が塗布されることにより基板に膜が形成される。塗布処理部により膜が形成された基板が熱処理部により熱処理される。熱処理部により熱処理された基板が上記の露光装置により露光モードにおいて露光される。露光装置により露光された基板に現像処理部により溶剤が供給されることにより基板の膜が現像される。
【0019】
露光装置においては、露光モードにおいて基板が露光されることにより処理室に取り付けられた窓部材の部分に有機材料からなる異物が徐々に付着する。この場合でも、上記の保守モードにおいて処理室内に発生するオゾンにより窓部材に付着した異物が分解または除去される。これにより、保守作業者の負担を低減しつつ長期にわたって基板処理装置による基板処理の効率および精度を維持することができる。
【0020】
(9)処理液は、誘導自己組織化材料を含んでもよい。この場合、誘導自己組織化材料を含む処理液が塗布された基板が熱処理されることにより、基板の一面上でミクロ相分離が生じる。また、ミクロ相分離により2種類の重合体のパターンが形成された基板が露光および現像される。これにより、2種類の重合体のうちの一方が除去され、微細化されたパターンを形成することができる。
【0021】
(10)第3の発明に係る露光方法は、露光装置を用いた基板の露光方法であって、露光装置の動作モードを露光モードと保守モードとで切り替えるステップと、
透光性の窓部材が取り付けられた処理室への基板の搬入の際に、光源部の下方に設けられた載置部を第1の位置に移動させるステップと、露光モードにおいて
、処理室内に処理対象の基板を収容するステップと、露光モードにおいて、処理室内の酸素濃度が大気中の酸素濃度よりも低い第1の濃度になるように排気部により処理室内の雰囲気を排気するステップと、露光モードにおいて、処理室内の酸素濃度が第1の濃度である状態で、光源部から窓部材を通して処理室内の基板に真空紫外線を照射することにより基板を露光するステップと、
露光モードにおいて、光源部から基板への真空紫外線の照射の際に、載置部を第1の位置の上方の第2の位置に移動させるステップと、処理室からの基板の搬出の際に、載置部を第1の位置に移動させるステップと、保守モードにおいて、処理室内の酸素濃度が第1の濃度よりも高い第2の濃度である状態で、光源部から窓部材を通して処理室内の雰囲気に真空紫外線を照射することによりオゾンを発生させるステップと
、保守モードにおいて、光源部から処理室内の雰囲気への真空紫外線の照射の際に、載置部を第2の位置に移動させるステップとを含む。
【0022】
この露光方法によれば、露光モードにおいて基板が露光されることにより処理室に取り付けられた窓部材の部分に有機材料からなる異物が徐々に付着する。この場合でも、保守モードにおいて処理室内に発生するオゾンにより窓部材に付着した異物が分解または除去される。これにより、保守作業者の負担を低減しつつ長期にわたって露光処理の効率および精度を維持することができる。
【0023】
(11)第4の発明に係る基板処理方法は、塗布処理部により基板に処理液を塗布することにより基板に膜を形成するステップと、塗布処理部により膜が形成された基板を熱処理部により熱処理するステップと、熱処理部により熱処理された基板を露光モードにおいて露光装置により露光する第3の発明に係る露光方法と、露光装置により露光された基板に現像処理部により溶剤を供給することにより基板の膜を現像するステップとを含む。
【0024】
この基板処理方法によれば、露光装置の露光モードにおいて基板が露光されることにより処理室に取り付けられた窓部材の部分に有機材料からなる異物が徐々に付着する。この場合でも、露光装置の保守モードにおいて処理室内に発生するオゾンにより窓部材に付着した異物が分解または除去される。これにより、保守作業者の負担を低減しつつ長期にわたって基板処理の効率および精度を維持することができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、保守作業者の負担を低減しつつ長期にわたって露光処理の効率および精度を維持することができる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の一実施の形態に係る露光装置、基板処理装置、露光方法および基板処理方法について図面を用いて説明する。以下の説明において、基板とは、半導体基板、液晶表示装置用基板、プラズマディスプレイ用基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板またはフォトマスク用基板等をいう。
【0028】
(1)露光装置の構成
図1は、本発明の一実施の形態に係る露光装置の構成を示す模式的断面図である。
図1に示すように、露光装置100は、制御部110、処理室120、閉塞部130、受渡部140、昇降部150、投光部160、置換部170および計測部180を含む。制御部110は、計測部180から計測値を取得するとともに、閉塞部130、昇降部150、投光部160および置換部170の動作を制御する。制御部110の機能については後述する。
【0029】
処理室120は、上部開口および内部空間を有する筐体121、環状部材122および被覆部材123を含む。筐体121の側面には、筐体121の内部と外部との間で処理対象の基板Wを搬送するための搬送開口121aが形成される。なお、本実施の形態においては、処理対象の基板Wには、誘導自己組織化材料を含む膜(以下、DSA(Directed Self Assembly)膜と呼ぶ。)が形成されている。また、筐体121の底面には、後述する昇降部150の連結部材152が通過する開口部121bが形成される。
【0030】
後述する投光部160のハウジング161が環状部材122を介して筐体121の上部に配置されることにより、筐体121の上部開口が閉塞される。筐体121と環状部材122との間、および環状部材122とハウジング161との間には、それぞれシール部材s1,s2が取り付けられる。また、環状部材122の外周面を覆うように筐体121とハウジング161との間に被覆部材123が取り付けられる。
【0031】
閉塞部130は、シャッタ131、棒形状の連結部材132および駆動装置133を含む。連結部材132は、シャッタ131と駆動装置133とを連結する。駆動装置133は、例えばステッピングモータである。駆動装置133は、シャッタ131が搬送開口121aを開放する開放位置と、シャッタ131が搬送開口121aを閉塞する閉塞位置との間でシャッタ131を移動させる。
【0032】
シャッタ131には、シール部材131aが取り付けられる。シャッタ131が閉塞位置にある状態においては、シール部材131aが筐体121における搬送開口121aを取り囲む部分に密着することにより筐体121の内部が密閉される。
【0033】
なお、シール部材131aと筐体121との摩擦を防止するため、駆動装置133は、シャッタ131を開放位置と閉塞位置との間で移動させる際には、シャッタ131を筐体121から離間させた状態で上下方向に移動させる。駆動装置133には、シャッタ131の上限位置および下限位置をそれぞれ検出する位置センサ133a,133bが取り付けられる。位置センサ133a,133bは、検出結果を制御部110に与える。
【0034】
受渡部140は、例えば円板形状の支持板141および複数(本例では3個)の支持ピン142を含む。支持板141は、筐体121内に水平姿勢で配置される。支持板141の中央部には、後述する昇降部150の連結部材152が通過する開口部141aが形成される。複数の支持ピン142は、開口部141aを取り囲むように支持板141の上面から上方に延びる。複数の支持ピン142の上端部に、処理対象の基板Wを載置することができる。
【0035】
昇降部150は、平板形状の載置板151、棒形状の連結部材152および駆動装置153を含む。載置板151は、筐体121内において、受渡部140の支持板141の上方に水平姿勢で配置される。載置板151には、支持板141の複数の支持ピン142にそれぞれ対応する複数の貫通孔151aが形成される。
【0036】
連結部材152は筐体121の開口部121bおよび支持板141の開口部141aを通して上下に延びるように配置され、駆動装置153は筐体121の下方に配置される。連結部材152は、載置板151と駆動装置153とを連結する。連結部材152の外周面と開口部121bの内周面との間には、連結部材152が上下方向に摺動可能にシール部材s3が配置される。
【0037】
駆動装置153は、例えばステッピングモータであり、複数の支持ピン142の上端部よりも上方の処理位置と、複数の支持ピン142の上端部よりも下方の待機位置との間で載置板151を上下方向に移動させる。載置板151が待機位置にある状態においては、複数の支持ピン142が複数の貫通孔151aにそれぞれ挿通される。駆動装置153には、載置板151の上限位置および下限位置をそれぞれ検出する位置センサ153a,153bが取り付けられる。位置センサ153a,153bは、検出結果を制御部110に与える。
【0038】
投光部160は、下部開口および内部空間を有するハウジング161、透光板162、面状の光源部163および電源装置164を含む。本実施の形態では、透光板162は石英ガラス板である。透光板162の材料として、後述する真空紫外線を透過する他の材料が用いられてもよい。上記のように、ハウジング161は、筐体121の上部開口を閉塞するように筐体121の上部に配置される。透光板162は、ハウジング161の下部開口を閉塞するようにハウジング161に取り付けられる。筐体121の内部空間とハウジング161の内部空間とは、透光板162により光学的にアクセス可能に隔てられる。
【0039】
光源部163および電源装置164は、ハウジング161内に収容される。本実施の形態においては、波長約120nm以上約230nm以下の真空紫外線を出射する複数の棒形状の光源が所定の間隔で水平に配列されることにより光源部163が構成される。各光源は、例えばキセノンエキシマランプであってもよいし、他のエキシマランプまたは重水素ランプ等であってもよい。光源部163は、透光板162を通して筐体121内に略均一な光量分布を有する真空紫外線を出射する。光源部163における真空紫外線の出射面の面積は、基板Wの被処理面の面積よりも大きい。電源装置164は、光源部163に電力を供給する。
【0040】
置換部170は、配管171p,172p,173p、バルブ171v,172vおよび吸引装置173を含む。配管171p,172pは筐体121の給気口と不活性ガスの供給源との間に接続される。本実施の形態では、不活性ガスは例えば窒素ガスである。配管171p,172pにはバルブ171v,172vが介挿される。
【0041】
配管171pを通して支持板141の側方から筐体121内に不活性ガスが供給される。配管172pを通して支持板141の下方から筐体121内に不活性ガスが供給される。不活性ガスの流量は、バルブ171v,172vにより調整される。本実施の形態では、不活性ガスとして窒素ガスが用いられる。
【0042】
配管173pは、枝管173aと枝管173bとに分岐する。枝管173aは筐体121の排気口に接続され、枝管173bの端部は筐体121とシャッタ131との間に配置される。配管173pには、吸引装置173が介挿入される。枝管173bにはバルブ173vが介挿される。吸引装置173は、例えばエジャクタである。配管173pは、排気設備に接続される。吸引装置173は、筐体121内の雰囲気を枝管173aおよび配管173pを通して排出する。また、吸引装置173は、筐体121とシャッタ131との間の雰囲気をシャッタ131の移動により発生する塵埃等とともに枝管173bおよび配管173pを通して排出する。吸引装置173により排出された気体は、排気設備により無害化される。
【0043】
計測部180は、酸素濃度計181、オゾン濃度計182および照度計183を含む。酸素濃度計181、オゾン濃度計182および照度計183は、筐体121に設けられた接続ポートp1,p2,p3をそれぞれ通して制御部110に接続される。酸素濃度計181は、例えばガルバニ電池式酸素センサまたはジルコニア式酸素センサであり、筐体121内の酸素濃度を計測する。オゾン濃度計182は、筐体121内のオゾン濃度を計測する。
【0044】
照度計183は、フォトダイオード等の受光素子を含み、受光素子の受光面に照射される光源部163からの真空紫外線の照度を計測する。ここで、照度とは、受光面の単位面積当たりに照射される真空紫外線の仕事率である。照度の単位は、例えば「W/m
2」で表される。
【0045】
(2)動作モード
露光装置100は、基板Wの露光処理を行う露光モードと、投光部160の透光板162の保守処理を行う保守モードとで選択的に動作する。露光モードにおいては、光源部163から基板Wに真空紫外線が照射されることにより露光処理が行われる。
【0046】
しかしながら、筐体121内の酸素濃度が高い場合、酸素分子が真空紫外線を吸収して酸素原子に分離するとともに、分離した酸素原子が他の酸素分子と再結合することによりオゾンが発生する。この場合、基板Wに到達する真空紫外線が減衰する。真空紫外線の減衰は、約230nmよりも長い波長の紫外線の減衰に比べて大きい。そこで、露光モードにおいては、筐体121内の雰囲気が置換部170により不活性ガスに置換される。これにより、筐体121内の酸素濃度が低減する。
【0047】
酸素濃度計181により計測される酸素濃度が大気中の酸素濃度よりも低い予め定められた濃度(以下、露光濃度と呼ぶ。)まで低減した場合に、光源部163から基板Wに真空紫外線が照射される。ここで、大気中の酸素濃度とは、成分調整が行われていない状態の大気中の酸素濃度であり、例えば標準状態の空気中の酸素濃度である。露光濃度は、光源部163により出射される真空紫外線によってはオゾンが発生しない酸素濃度(例えば1%)であることが好ましい。
【0048】
基板Wに照射される真空紫外線の露光量が予め定められた設定露光量に到達した場合、真空紫外線の照射が停止され、露光処理が終了する。ここで、露光量とは、露光処理時に基板Wの被処理面の単位面積当たりに照射される真空紫外線のエネルギーである。露光量の単位は、例えば「J/m
2」で表される。したがって、真空紫外線の露光量は、照度計183により計測される真空紫外線の照度の積算により取得される。
【0049】
基板Wに露光処理が行われると、基板Wから有機材料からなる異物が発生し、投光部160の透光板162に徐々に付着する。そのため、露光装置100が長期間使用された場合、透光板162が曇るかまたは濁ることにより、透光板162の光透過率が低下するとともに、光透過率が局所的に不均一になる。そこで、保守モードにおいては、透光板162に付着した異物を除去する保守処理が行われる。
【0050】
具体的には、保守モードにおいては、筐体121内の酸素濃度が露光濃度よりも高い状態で、光源部163から真空紫外線が出射される。この場合、筐体121内にオゾンが発生する。これにより、透光板162に付着した異物が発生されたオゾンにより洗浄され、分解または除去される。その後、オゾンが吸引装置173を通して排出され、保守処理が終了する。保守モードにおける筐体121内の酸素濃度は、大気中の酸素濃度であってもよい。
【0051】
(3)制御部
図2は、
図1の制御部110の構成を示す機能ブロック図である。
図2に示すように、制御部110は、閉塞制御部1、昇降制御部2、排気制御部3、給気制御部4、濃度取得部5、濃度比較部6、照度取得部7、露光量算出部8、露光量比較部9、投光制御部10および切替部11を含む。
【0052】
制御部110は、例えばCPU(中央演算処理装置)およびメモリにより構成される。制御部110のメモリには、制御プログラムが予め記憶されている。制御部110のCPUがメモリに記憶された制御プログラムを実行することにより、制御部110の各部の機能が実現される。
【0053】
閉塞制御部1は、
図1の位置センサ133a,133bの検出結果に基づいて、シャッタ131が閉塞位置と開放位置との間で移動するように駆動装置133を制御する。昇降制御部2は、
図1の位置センサ153a,153bの検出結果に基づいて、載置板151が待機位置と処理位置との間で移動するように駆動装置153を制御する。
【0054】
排気制御部3は、
図1の筐体121内の雰囲気および筐体121とシャッタ131との間の雰囲気を排出するように吸引装置173およびバルブ173vを制御する。給気制御部4は、不活性ガスを供給するように
図1のバルブ171v,172vを制御する。
【0055】
濃度取得部5は、
図1の酸素濃度計181により計測された酸素濃度の値を取得する。濃度比較部6は、濃度取得部5により計測された酸素濃度と露光濃度とを比較する。
【0056】
照度取得部7は、
図1の照度計183により計測された真空紫外線の照度の値を取得する。露光量算出部8は、照度取得部7により取得された真空紫外線の照度と、
図1の光源部163からの真空紫外線の出射時間とに基づいて基板Wに照射される真空紫外線の露光量を算出する。露光量比較部9は、露光量算出部8により算出された露光量と予め定められた設定露光量とを比較する。
【0057】
投光制御部10は、濃度比較部6による比較結果および露光量比較部9による比較結果に基づいて
図1の光源部163が真空紫外線を出射するように電源装置164を制御する。また、投光制御部10は、所定の時点で光源部163が予め定められた時間(以下、洗浄時間と呼ぶ。)だけ真空紫外線を出射するように電源装置164を制御する。さらに、投光制御部10は、電源装置164の制御時間を光源部163からの真空紫外線の出射時間として露光量算出部8に与える。
【0058】
切替部11は、露光装置100の動作モードを露光モードと保守モードとの間で切り替える。具体的には、切替部11は、露光装置100が露光モードで動作しない期間に保守モードで動作するように動作モードを切り替える。制御部110の各部は、切替部11により切り替えられた動作モードで動作する。露光モードおよび保守モードにおける制御部110の各部の動作の詳細は後述する。
【0059】
切替部11は、露光モードにおいて予め設定された枚数の基板Wが露光処理されるか、または露光モードにおいて予め設定された時間が経過した場合に、動作モードを露光モードから保守モードに切り替えてもよい。また、切替部11は、保守モードにおいて保守処理が終了した場合に、動作モードを保守モードから露光モードに切り替えてもよい。
【0060】
(4)露光モード
図3〜
図6は、露光モードにおける露光装置100の動作を説明するための模式図である。
図3〜
図6においては、筐体121内およびハウジング161内の構成の視認を容易にするために、一部の構成の図示が省略されるとともに、筐体121およびハウジング161の輪郭が一点鎖線で示される。
図7および
図8は、露光モードにおいて
図2の制御部110により行われる露光処理の一例を示すフローチャートである。以下、
図3〜
図6を参照しながら制御部110による露光処理を説明する。
【0061】
図3に示すように、露光処理の初期状態においては、シャッタ131が閉塞位置にあり、載置板151が待機位置にある。また、筐体121内の酸素濃度は、酸素濃度計181により常時または定期的に計測され、濃度取得部5により取得されている。この時点においては、酸素濃度計181により計測される筐体121内の酸素濃度は大気中の酸素濃度に等しい。
【0062】
まず、閉塞制御部1は、
図4に示すように、シャッタ131を開放位置に移動させる(ステップS1)。これにより、搬送開口121aを通して処理対象の基板Wを複数の支持ピン142の上端部に載置することができる。本例では、後述する
図10の搬送装置220により基板Wが複数の支持ピン142の上端部に載置される。
【0063】
次に、昇降制御部2は、基板Wが複数の支持ピン142の上端部に載置されたか否かを判定する(ステップS2)。基板Wが載置されていない場合、昇降制御部2は、基板Wが複数の支持ピン142の上端部に載置されるまで待機する。基板Wが載置された場合、昇降制御部2は、
図5に示すように、シャッタ131を閉塞位置に移動させる(ステップS3)。
【0064】
続いて、排気制御部3は、
図1の吸引装置173により筐体121内の雰囲気を排出する(ステップS4)。また、給気制御部4は、
図1の配管171p,172pから筐体121内に不活性ガスを供給する(ステップS5)。ステップS4,S5の処理は、いずれが先に開始されてもよいし、同時に開始されてもよい。その後、昇降制御部2は、
図6に示すように、載置板151を処理位置に移動させる(ステップS6)。これにより、基板Wが複数の支持ピン142から載置板151に受け渡され、透光板162に近接される。
【0065】
ここで、濃度比較部6は、筐体121内の酸素濃度が露光濃度まで低減されたか否かを判定する(ステップS7)。酸素濃度が露光濃度まで低減されていない場合、濃度比較部6は、酸素濃度が露光濃度まで低減されるまで待機する。酸素濃度が露光濃度まで低減された場合、投光制御部10は、光源部163により真空紫外線を出射する(ステップS8)。これにより、光源部163から透光板162を通して真空紫外線が基板Wに照射され、被処理面に形成されたDSA膜が露光される。
【0066】
また、照度取得部7は、照度計183に真空紫外線の照度の計測を開始させ、計測された照度を照度計183から取得する(ステップS9)。ステップS8,S9の処理は、略同時に開始される。露光量算出部8は、照度取得部7により取得される真空紫外線の照度を積算することにより基板Wに照射される真空紫外線の露光量を算出する(ステップS10)。
【0067】
次に、露光量比較部9は、露光量算出部8により算出された露光量が設定露光量に到達したか否かを判定する(ステップS11)。露光量が設定露光量に到達していない場合、露光量比較部9は、露光量が設定露光量に到達するまで待機する。露光量が設定露光量に到達した場合、投光制御部10は、光源部163からの真空紫外線の出射を停止させる(ステップS12)。また、照度取得部7は、照度計183による照度の計測を停止させる(ステップS13)。
【0068】
次に、昇降制御部2は、
図5に示すように、載置板151を待機位置に移動させる(ステップS14)。これにより、基板Wが載置板151から複数の支持ピン142に受け渡される。続いて、排気制御部3は、吸引装置173による筐体121内の雰囲気の排出を停止させる(ステップS15)。また、給気制御部4は、配管171p,172pからの筐体121内への不活性ガスの供給を停止させる(ステップS16)。ステップS14〜S16の処理は、いずれが先に開始されてもよいし、同時に開始されてもよい。
【0069】
その後、閉塞制御部1は、
図4に示すように、シャッタ131を開放位置に移動させる(ステップS17)。これにより、搬送開口121aを通して露光後の基板Wを複数の支持ピン142上から回収することができる。本例では、後述する
図10の搬送装置220により基板Wが複数の支持ピン142上から回収される。
【0070】
次に、閉塞制御部1は、基板Wが複数の支持ピン142上から回収されたか否かを判定する(ステップS18)。基板Wが回収されていない場合、閉塞制御部1は、基板Wが複数の支持ピン142上から回収されるまで待機する。基板Wが回収された場合、閉塞制御部1は、
図3に示すように、シャッタ131を閉塞位置に移動させ(ステップS19)、露光処理を終了する。上記の動作が繰り返されることにより、複数の基板Wに露光処理を順次行うことができる。
【0071】
(5)保守モード
図9は、
図2の制御部110により行われる保守処理の一例を示すフローチャートである。以下、
図3および
図9を参照しながら制御部110による保守処理を説明する。
図3に示すように、保守処理の初期状態においては、シャッタ131が閉塞位置にあり、載置板151が待機位置にある。また、筐体121内の酸素濃度は、酸素濃度計181により常時または定期的に計測され、濃度取得部5により取得されている。この時点においては、酸素濃度計181により計測される。筐体121内の酸素濃度は大気中の酸素濃度に等しい。
【0072】
まず、投光制御部10は、光源部163により真空紫外線を出射する(ステップS21)。この場合、光源部163から透光板162を通して真空紫外線が筐体121内の酸素分子に照射され、筐体121内にオゾンが発生する。これにより、透光板162に付着した異物が発生されたオゾンにより洗浄され、分解または除去される。なお、ステップS21において、載置板151が処理位置に移動され、透光板162に近接した状態で真空紫外線が出射されてもよい。この場合、狭い空間において異物が効率よく洗浄され、分解または除去される。
【0073】
次に、投光制御部10は、洗浄時間が経過したか否かを判定する(ステップS22)。洗浄時間が経過していない場合、投光制御部10は、洗浄時間が経過するまで待機する。洗浄時間が経過した場合、投光制御部10は、光源部163からの真空紫外線の出射を停止させる(ステップS23)。
【0074】
続いて、排気制御部3は、
図1の吸引装置173により筐体121内の雰囲気を排出する(ステップS24)。また、給気制御部4は、
図1の配管171p,172pから筐体121内に不活性ガスを供給する(ステップS25)。ステップS24,S25の処理は、いずれが先に開始されてもよいし、同時に開始されてもよい。これにより、筐体121内に発生したオゾンが吸引装置173を通して排出され、オゾンが露光装置100の周辺に拡散することが防止される。その後、閉塞制御部1は、シャッタ131を開放位置に移動させる(ステップS26)。これにより、筐体121内に外気が導入され、筐体121内の酸素濃度が増加する。
【0075】
ここで、濃度比較部6は、筐体121内の酸素濃度が所定値以上まで増加したか否かを判定する(ステップS27)。酸素濃度が所定値以上まで増加していない場合、濃度比較部6は、酸素濃度が所定値以上まで増加するまで待機する。酸素濃度が所定値以上まで増加した場合、排気制御部3は、吸引装置173による筐体121内の雰囲気の排出を停止させる(ステップS28)。また、給気制御部4は、配管171p,172pからの筐体121内への不活性ガスの供給を停止させる(ステップS29)。ステップS28,S29の処理は、いずれが先に開始されてもよいし、同時に開始されてもよい。最後に、閉塞制御部1は、シャッタ131を閉塞位置に移動させ(ステップS30)、保守処理を終了する。
【0076】
(6)基板処理装置
図10は、
図1の露光装置100を備えた基板処理装置の全体構成を示す模式的ブロック図である。以下に説明する基板処理装置200においては、ブロック共重合体の誘導自己組織化(DSA)を利用した処理が行われる。具体的には、基板Wの被処理面上に誘導自己組織化材料を含む処理液が塗布される。その後、誘導自己組織化材料に生じるミクロ相分離により基板Wの被処理面上に2種類の重合体のパターンが形成される。2種類の重合体のうち一方のパターンが溶剤により除去される。
【0077】
誘導自己組織化材料を含む処理液をDSA液と呼ぶ。また、ミクロ相分離により基板Wの被処理面上に形成される2種類の重合体のパターンのうち一方を除去する処理を現像処理と呼び、現像処理に用いられる溶剤を現像液と呼ぶ。
【0078】
図10に示すように、基板処理装置200は、露光装置100に加えて、制御装置210、搬送装置220、熱処理装置230、塗布装置240および現像装置250を備える。制御装置210は、例えばCPUおよびメモリ、またはマイクロコンピュータを含み、搬送装置220、熱処理装置230、塗布装置240および現像装置250の動作を制御する。また、制御装置210は、
図1の露光装置100の閉塞部130、昇降部150、投光部160および置換部170の動作を制御するための指令を制御部110に与える。
【0079】
搬送装置220は、処理対象の基板Wを保持しつつその基板Wを露光装置100、熱処理装置230、塗布装置240および現像装置250の間で搬送する。熱処理装置230は、塗布装置240による塗布処理および現像装置250による現像処理の前後に基板Wの熱処理を行う。
【0080】
塗布装置240は、基板Wの被処理面にDSA液を供給することにより、膜の塗布処理を行う。本実施の形態では、DSA液として、2種類の重合体から構成されるブロック共重合体が用いられる。2種類の重合体の組み合わせとして、例えば、ポリスチレン−ポリメチルメタクリレート(PS−PMMA)、ポリスチレン−ポリジメチルシロキサン(PS−PDMS)、ポリスチレン−ポリフェロセニルジメチルシラン(PS−PFS)、ポリスチレン−ポリエチレンオキシド(PS−PEO)、ポリスチレン−ポリビニルピリジン(PS−PVP)、ポリスチレン−ポリヒドロキシスチレン(PS−PHOST)、およびポリメチルメタクリレート−ポリメタクリレートポリヘドラルオリゴメリックシ
ルセスキオキサン(PMMA−PMAPOSS)等が挙げられる。
【0081】
現像装置250は、基板Wの被処理面に現像液を供給することにより、膜の現像処理を行う。現像液の溶媒として、例えば、トルエン、ヘプタン、アセトン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、シクロヘキサノン、酢酸、テトラヒドロフラン、イソプロピルアルコール(IPA)または水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)等が挙げられる。
【0082】
図11は、
図10の基板処理装置200による基板Wの処理の一例を示す模式図である。
図11では、処理が行われるごとに変化する基板Wの状態が断面図で示される。本例では、基板Wが基板処理装置200に搬入される前の初期状態として、
図11(a)に示すように、基板Wの被処理面を覆うように下地層L1が形成され、下地層L1上に例えばフォトレジストからなるガイドパターンL2が形成されている。以下、
図10および
図11を用いて基板処理装置200の動作を説明する。
【0083】
搬送装置220は、処理対象の基板Wを、熱処理装置230および塗布装置240に順に搬送する。この場合、熱処理装置230において、基板Wの温度がDSA膜の形成に適した温度に調整される。また、塗布装置240において、基板Wの被処理面にDSA液が供給され、塗布処理が行われる。それにより、
図11(b)に示すように、ガイドパターンL2が形成されていない下地層L1上の領域に、2種類の重合体から構成されるDSA膜L3が形成される。
【0084】
次に、搬送装置220は、DSA膜L3が形成された基板Wを、熱処理装置230および露光装置100に順に搬送する。この場合、熱処理装置230において、基板Wの加熱処理が行われることにより、DSA膜L3にミクロ相分離が生じる。これにより、
図11(c)に示すように、一方の重合体からなるパターンQ1および他方の重合体からなるパターンQ2が形成される。本例では、ガイドパターンL2に沿うように、線状のパターンQ1および線状のパターンQ2が指向的に形成される。
【0085】
その後、熱処理装置230において、基板Wが冷却される。また、露光装置100において、ミクロ相分離後のDSA膜L3の全体にDSA膜L3を改質させるための真空紫外線が照射され、露光処理が行われる。これにより、一方の重合体と他方の重合体との間の結合が切断され、パターンQ1とパターンQ2とが分離される。
【0086】
続いて、搬送装置220は、露光装置100による露光処理後の基板Wを、熱処理装置230および現像装置250に順に搬送する。この場合、熱処理装置230において、基板Wが冷却される。また、現像装置250において、基板W上のDSA膜L3に現像液が供給され、現像処理が行われる。これにより、
図11(d)に示すように、パターンQ1が除去され、最終的に、基板W上にパターンQ2が残存する。最後に、搬送装置220は、現像処理後の基板Wを現像装置250から回収する。
【0087】
(7)効果
本実施の形態に係る露光装置100においては、動作モードが露光モードと保守モードとで切り替えられる。露光モードにおいて基板Wが露光されることにより、処理室120に接する透光板162の部分に有機材料からなる異物が徐々に付着する。このような場合でも、保守モードにおいて処理室120内に発生するオゾンにより、透光板162に付着した異物が分解または除去される。そのため、保守作業者は頻繁に透光板162の異物を除去する必要がない。したがって、保守作業者の負担が低減される。
【0088】
また、保守作業に要する時間が短縮されるため、露光装置100の稼動停止時間が最小化される。これにより、露光装置100の稼働効率が向上する。さらに、異物による透光板162の曇りおよび濁りが防止され、透光板162の透過性が高い状態で維持されるので、露光装置100を長期間使用した場合でも、露光処理の効率および精度が低下することが防止される。これらの結果、保守作業者の負担を低減しつつ長期にわたって露光処理の効率および精度を維持することができる。
【0089】
(8)他の実施の形態
(a)上記実施の形態において、処理液としてDSA液が用いられるが、本発明はこれに限定されない。DSA液とは異なる他の処理液が用いられてもよい。
【0090】
(b)上記実施の形態において、真空紫外線の出射面は基板Wの被処理面よりも大きく、基板Wの全面露光が行われるが、本発明はこれに限定されない。真空紫外線の出射面は基板Wの被処理面よりも小さくてもよいし、面状の断面を有さずに線状の断面を有する真空紫外線が出射されてもよい。この場合、真空紫外線の出射面と基板Wの被処理面とが相対的に移動されることにより基板Wの被処理面の全体に真空紫外線が照射される。
【0091】
(c)上記実施の形態において、露光処理時に筐体121内に不活性ガスが供給されるが、本発明はこれに限定されない。露光処理時に筐体121内の酸素濃度が十分に低減可能である場合には、筐体121内に不活性ガスが供給されなくてもよい。
【0092】
(d)上記実施の形態において、保守モードにおける筐体121内の酸素濃度は大気中の酸素濃度であるが、本発明はこれに限定されない。保守モードにおける筐体121内の酸素濃度は大気中の酸素濃度は、大気中の酸素濃度よりも高くてもよいし、低くてもよい。
【0093】
(9)請求項の各構成要素と実施の形態の各部との対応関係
以下、請求項の各構成要素と実施の形態の各構成要素との対応の例について説明するが、本発明は下記の例に限定されない。
【0094】
上記実施の形態においては、基板Wが基板の例であり、露光装置100が露光装置の例であり、透光板162が窓部材の例であり、処理室120が処理室の例であり、光源部163が光源部の例である。吸引装置173が排気部の例であり、排気制御部3が第1および第2の排気制御部の例であり、投光制御部10が第1および第2の投光制御部の例であり、配管171p,172pが給気部の例である。塗布装置240が塗布処理部の例であり、熱処理装置230が熱処理部の例であり、現像装置250が現像処理部の例であり、基板処理装置200が基板処理装置の例である。
【0095】
請求項の各構成要素として、請求項に記載されている構成または機能を有する他の種々の構成要素を用いることもできる。
(10)参考形態
(10‐1)第1の参考形態に係る露光装置は、基板を露光する露光装置であって、露光装置の動作モードを露光モードと保守モードとで切り替える切替部と、透光性の窓部材が取り付けられ、露光モードにおいて処理対象の基板を収容する処理室と、窓部材を通して処理室内に真空紫外線を出射可能に設けられた光源部と、処理室内の雰囲気を排気するための排気部と、露光モードにおいて、処理室内の酸素濃度が大気中の酸素濃度よりも低い第1の濃度になるように排気部を制御する第1の排気制御部と、露光モードにおいて、処理室内の酸素濃度が第1の濃度である状態で、処理室内の基板に真空紫外線を照射することにより基板を露光するように光源部を制御する第1の投光制御部と、保守モードにおいて、処理室内の酸素濃度が第1の濃度よりも高い第2の濃度である状態で、処理室内の雰囲気に真空紫外線を照射することによりオゾンを発生させるように光源部を制御する第2の投光制御部とを備える。
この露光装置においては、動作モードが露光モードと保守モードとで切り替えられる。露光モードにおいては、透光性の窓部材が取り付けられた処理室内に処理対象の基板が収容される。処理室内の酸素濃度が大気中の酸素濃度よりも低い第1の濃度になるように排気部により処理室内の雰囲気が排気される。この状態で、光源部から窓部材を通して処理室内の基板に真空紫外線が照射されることにより、基板が露光される。保守モードにおいては、処理室内の酸素濃度が第1の濃度よりも高い第2の濃度である状態で、光源部から窓部材を通して処理室内の雰囲気に真空紫外線が照射されることにより、処理室内にオゾンが発生される。
露光モードにおいて基板が露光されることにより、処理室に取り付けられた窓部材の部分に有機材料からなる異物が徐々に付着する。このような場合でも、上記の構成によれば、保守モードにおいて処理室内に発生するオゾンにより、窓部材に付着した異物が分解または除去される。そのため、保守作業者は頻繁に窓部材の異物を除去する必要がない。したがって、保守作業者の負担が低減される。
また、保守作業に要する時間が短縮されるため、露光装置の稼動停止時間が最小化される。これにより、露光装置の稼働効率が向上する。さらに、異物による窓部材の曇りおよび濁りが防止され、窓部材の透過性が高い状態で維持されるので、露光装置を長期間使用した場合でも、露光処理の効率および精度が低下することが防止される。これらの結果、保守作業者の負担を低減しつつ長期にわたって露光処理の効率および精度を維持することができる。
(10‐2)露光装置は、保守モードにおいて、発生された処理室内のオゾンを排気するように排気部を制御する第2の排気制御部をさらに備えてもよい。この場合、窓部材に付着した異物が除去された後に、処理室内に残存するオゾンを容易に排気することができる。
(10‐3)第2の濃度は、大気中の酸素濃度であってもよい。この場合、保守モードにおいて、第1の濃度よりも高い第2の濃度の状態を容易に実現することができる。
(10‐4)第1の濃度は、光源部により出射される真空紫外線によってはオゾンが発生しない酸素濃度であってもよい。この場合、露光モードにおいて、真空紫外線を減衰させることなく基板に照射することができる。これにより、露光処理の効率を向上させることができる。
(10‐5)露光装置は、露光モードにおいて、処理室内に不活性ガスを供給する給気部をさらに備えてもよい。この場合、露光モードにおける処理室内の酸素濃度を容易にかつ十分に低減させることができる。
(10‐6)光源部は、面状の断面を有する真空紫外線を出射するように構成されてもよい。この場合、広範囲に真空紫外線が出射される。そのため、露光モードにおいて、基板の露光処理を短時間で終了することができる。また、保守モードにおいて、十分な量のオゾンを容易に発生させることができるので、窓部材に付着した異物の分解または除去を短時間で終了することができる。
(10‐7)光源部による真空紫外線の出射面積は、基板の面積よりも大きくてもよい。この場合、露光モードにおいて、基板の全面露光を行うことができるので、基板の露光処理をより短時間で終了することができる。また、保守モードにおいて、窓部材に付着した異物の分解または除去をより短時間で終了することができる。
(10‐8)第2の参考形態に係る基板処理装置は、基板に処理液を塗布することにより基板に膜を形成する塗布処理部と、塗布処理部により膜が形成された基板を熱処理する熱処理部と、熱処理部により熱処理された基板を露光モードにおいて露光する第1の参考形態に係る露光装置と、露光装置により露光された基板に溶剤を供給することにより基板の膜を現像する現像処理部とを備える。
この基板処理装置においては、塗布処理部により基板に処理液が塗布されることにより基板に膜が形成される。塗布処理部により膜が形成された基板が熱処理部により熱処理される。熱処理部により熱処理された基板が上記の露光装置により露光モードにおいて露光される。露光装置により露光された基板に現像処理部により溶剤が供給されることにより基板の膜が現像される。
露光装置においては、露光モードにおいて基板が露光されることにより処理室に取り付けられた窓部材の部分に有機材料からなる異物が徐々に付着する。この場合でも、上記の保守モードにおいて処理室内に発生するオゾンにより窓部材に付着した異物が分解または除去される。これにより、保守作業者の負担を低減しつつ長期にわたって基板処理装置による基板処理の効率および精度を維持することができる。
(10‐9)処理液は、誘導自己組織化材料を含んでもよい。この場合、誘導自己組織化材料を含む処理液が塗布された基板が熱処理されることにより、基板の一面上でミクロ相分離が生じる。また、ミクロ相分離により2種類の重合体のパターンが形成された基板が露光および現像される。これにより、2種類の重合体のうちの一方が除去され、微細化されたパターンを形成することができる。
(10‐10)第3の参考形態に係る露光方法は、露光装置を用いた基板の露光方法であって、露光装置の動作モードを露光モードと保守モードとで切り替えるステップと、露光モードにおいて、透光性の窓部材が取り付けられた処理室内に処理対象の基板を収容するステップと、露光モードにおいて、処理室内の酸素濃度が大気中の酸素濃度よりも低い第1の濃度になるように排気部により処理室内の雰囲気を排気するステップと、露光モードにおいて、処理室内の酸素濃度が第1の濃度である状態で、光源部から窓部材を通して処理室内の基板に真空紫外線を照射することにより基板を露光するステップと、保守モードにおいて、処理室内の酸素濃度が第1の濃度よりも高い第2の濃度である状態で、光源部から窓部材を通して処理室内の雰囲気に真空紫外線を照射することによりオゾンを発生させるステップとを含む。
この露光方法によれば、露光モードにおいて基板が露光されることにより処理室に取り付けられた窓部材の部分に有機材料からなる異物が徐々に付着する。この場合でも、保守モードにおいて処理室内に発生するオゾンにより窓部材に付着した異物が分解または除去される。これにより、保守作業者の負担を低減しつつ長期にわたって露光処理の効率および精度を維持することができる。
(10‐11)第4の参考形態に係る基板処理方法は、塗布処理部により基板に処理液を塗布することにより基板に膜を形成するステップと、塗布処理部により膜が形成された基板を熱処理部により熱処理するステップと、熱処理部により熱処理された基板を露光モードにおいて露光装置により露光する第3の参考形態に係る露光方法と、露光装置により露光された基板に現像処理部により溶剤を供給することにより基板の膜を現像するステップとを含む。
この基板処理方法によれば、露光装置の露光モードにおいて基板が露光されることにより処理室に取り付けられた窓部材の部分に有機材料からなる異物が徐々に付着する。この場合でも、露光装置の保守モードにおいて処理室内に発生するオゾンにより窓部材に付着した異物が分解または除去される。これにより、保守作業者の負担を低減しつつ長期にわたって基板処理の効率および精度を維持することができる。