(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6872387
(24)【登録日】2021年4月21日
(45)【発行日】2021年5月19日
(54)【発明の名称】複合フィルタ
(51)【国際特許分類】
H03H 9/64 20060101AFI20210510BHJP
H03H 9/54 20060101ALI20210510BHJP
H03H 7/38 20060101ALI20210510BHJP
【FI】
H03H9/64 Z
H03H9/54 Z
H03H7/38 Z
【請求項の数】5
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2017-48111(P2017-48111)
(22)【出願日】2017年3月14日
(65)【公開番号】特開2018-152746(P2018-152746A)
(43)【公開日】2018年9月27日
【審査請求日】2020年2月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000232483
【氏名又は名称】日本電波工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100093104
【弁理士】
【氏名又は名称】船津 暢宏
(72)【発明者】
【氏名】浦田 暁良
【審査官】
石田 昌敏
(56)【参考文献】
【文献】
特開2007−129297(JP,A)
【文献】
特開平08−032393(JP,A)
【文献】
特開2015−115797(JP,A)
【文献】
特表2012−524427(JP,A)
【文献】
特開平03−009640(JP,A)
【文献】
特開2004−173191(JP,A)
【文献】
特開2002−290153(JP,A)
【文献】
特開2004−179979(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03H 7/30− 7/54
H03H 9/00− 9/76
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
弾性表面波フィルタとモノリシックフィルタとを備え、位相雑音を改善し、高次高調波を抑制する複合フィルタであって、
水晶発振器の出力側に接続される入力端子に、前記弾性表面波フィルタ、整合回路、前記モノリシックフィルタの順で接続され、
前記弾性表面波フィルタは、前記モノリシックフィルタに比べ、電力耐性が高く、通過帯域が広いことを特徴とする複合フィルタ。
【請求項2】
整合回路が、弾性表面波フィルタとモノリシックフィルタとの間に直列に接続されたコイルと、前記コイルとモノリシックフィルタとの間の点に一端が接続され、他端が接地されたコンデンサとを備えることを特徴とする請求項1記載の複合フィルタ。
【請求項3】
弾性表面波フィルタと、整合回路と、モノリシックフィルタとを同一のパッケージに収容したことを特徴とする請求項1又は2記載の複合フィルタ。
【請求項4】
弾性表面波フィルタと整合回路との間に、減衰器を備えたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか記載の複合フィルタ。
【請求項5】
減衰器を、弾性表面波フィルタと、整合回路と、モノリシックフィルタと同一のパッケージに収容したことを特徴とする請求項4記載の複合フィルタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弾性表面波フィルタとモノリシックフィルタとを備えた複合フィルタに係り、特に位相雑音の低い信号源を実現することができる複合フィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
[先行技術の説明]
基準信号を発生する信号源として、例えば、恒温槽付水晶発振器(OCXO;Oven Controlled Crystal Oscillator)がある。
従来、信号源の位相雑音を低減するために、OCXOの出力側に弾性表面波(SAW;Surface Acoustic Wave)フィルタやモノリシックフィルタ(MCF;Monolithic Crystal Filter、水晶フィルタ)を設けた構成がある。
【0003】
SAWフィルタは、電力耐性は高いが、通過帯域は比較的広い。
一方、MCFは、電力耐性は低いものの、通過帯域は狭い特性がある。
位相雑音の低減(低位相雑音)を実現するためには、電力耐性が高く、且つ通過帯域が狭いフィルタが必要であるが、従来はSAWフィルタ又はMCFを単独で用いることが一般的であり、位相雑音を十分低減することはできなかった。
【0004】
[信号源の位相雑音及び高次高調波の特性]
フィルタを設けない場合の信号源の特性例について説明する。
信号源(OCXO)からの信号は、例えば、発振周波数200MHzで信号レベルが+8dBmである場合、高次(2次)高調波400MHzが−35dBc、位相雑音は、オフセット周波数が10kHzで−145dBc、100kHzで−160dBc、10MHzで−164dBc、40MHzで−165dBcであった。
【0005】
[関連技術]
尚、複数のフィルタを備えた回路に関する従来技術としては、特開2007−129297号公報「ジッタ低減回路および信号伝送装置」(エプソントヨコム株式会社、特許文献1)がある。
特許文献1には、入力した信号の成分を通過させる第1のフィルタと、第1のフィルタから出力された信号を増幅する増幅器と、第1のフィルタよりも広い通過帯域幅を有し、増幅器からの出力信号の信号成分を通過させる第2のフィルタとを備えた構成が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−129297号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述したように、従来のSAWフィルタは電力耐性は高いが通過帯域が広く、MCFは通過帯域は狭いものの電力耐性が低いため、SAWフィルタ又はMCFを単独でOCXO等の信号源の出力に設けても、低位相雑音の信号源を実現することができないという問題点があった。
【0008】
本発明は上記実状に鑑みて為されたもので、電力耐性が高く、且つ通過帯域が狭いフィルタを実現して、低位相雑音の信号源を実現することができ、更に小型化を図ることができる複合フィルタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記従来例の問題点を解決するための本発明は、弾性表面波フィルタとモノリシックフィルタとを備え、
位相雑音を改善し、高次高調波を抑制する複合フィルタであって、水晶発振器の出力側に接続される入力端子に、弾性表面波フィルタ、整合回路、モノリシックフィルタの順で接続され、
弾性表面波フィルタは、モノリシックフィルタに比べ、電力耐性が高く、通過帯域が広いことを特徴としている。
【0010】
また、本発明は、上記複合フィルタにおいて、整合回路が、弾性表面波フィルタとモノリシックフィルタとの間に直列に接続されたコイルと、コイルとモノリシックフィルタとの間の点に一端が接続され、他端が接地されたコンデンサとを備えることを特徴としている。
【0011】
また、本発明は、上記複合フィルタにおいて、弾性表面波フィルタと、整合回路と、モノリシックフィルタとを同一のパッケージに収容したことを特徴としている。
【0012】
また、本発明は、弾性表面波フィルタと整合回路との間に、減衰器を備えたことを特徴としている。
【0013】
減衰器を、弾性表面波フィルタと、整合回路と、モノリシックフィルタと同一のパッケージに収容したことを特徴としている。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、弾性表面波フィルタとモノリシックフィルタとを備え、
位相雑音を改善し、高次高調波を抑制する複合フィルタであって、水晶発振器の出力側に接続される入力端子に、弾性表面波フィルタ、整合回路、モノリシックフィルタの順で接続され、
弾性表面波フィルタは、モノリシックフィルタに比べ、電力耐性が高く、通過帯域が広い複合フィルタとしているので、入力信号を、電力耐性の高い弾性表面波フィルタを先に通過させることで信号を減衰させて、更に整合回路で適正な信号レベルとしてから、通過帯域の狭いモノリシックフィルタを通過させることができ、また、弾性表面波フィルタでオフセット周波数の大きい領域での位相雑音を低減すると共に高次高調波を抑制し、モノリシックフィルタでオフセット周波数の小さい領域での位相雑音を低減することができ、広い範囲に亘って位相雑音の低い信号源を実現できる効果がある。
【0015】
また、本発明によれば、弾性表面波フィルタと、整合回路と、モノリシックフィルタとを同一のパッケージに収容した上記複合フィルタとしているので、フィルタの小型化を図ることができる効果がある。
【0016】
また、本発明によれば、弾性表面波フィルタと整合回路との間に、減衰器を備えた上記複合フィルタとしているので、弾性表面波フィルタ通過後に信号レベルが十分減衰していない場合でも、減衰器によって適切なレベルに低減することができ、モノリシックフィルタに適切な入力信号を供給できる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図2】本複合フィルタの位相雑音特性を示す概略説明図である。
【
図3】整合回路3の第1の構成例を示す説明図である。
【
図4】別の複合フィルタの構成を示す説明図である。
【
図5】本複合フィルタの応用例を示す説明図である。
【
図6】本複合フィルタを適用した場合の特性例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
[実施の形態の概要]
本発明の実施の形態に係る複合フィルタは、水晶発振器の出力側に設ける複合フィルタであって、電力耐性の高いSAWフィルタと、狭帯域のMCFとを備え、水晶発振器の出力側に接続された入力端子に、SAWフィルタ、整合回路、MCFの順で接続された構成としており、電力耐性が高く、通過帯域が狭いフィルタを構成することができ、低位相雑音の信号源を実現できるものである。
【0019】
[実施の形態に係る複合フィルタの構成:
図1]
本発明の実施の形態に係る複合フィルタ(本複合フィルタ)の基本的な構成について
図1を用いて説明する。
図1は、本複合フィルタの概略構成図である。
図1に示すように、本複合フィルタは、OCXO等の信号源からの信号を入力する入力端子1と、SAWフィルタ2と、整合回路3と、MCF4と、出力端子5とを備えている。特に、本複合フィルタでは、入力端子1側にSAWフィルタ2を設け、整合回路3を介して出力端子5側にMCF4を配置している。
【0020】
SAWフィルタ2は、電力耐性が高いが、通過帯域が広い特性を持つ。
そのため、SAWフィルタ2を入力端子1側に設けることにより、入力端子1から入力される信号の信号レベルを低減させると共に、オフセット周波数の高い領域における位相雑音レベルを減衰させることができるものである。
また、SAWフィルタ2によって高次高調波(スプリアス雑音)の低減も可能となる。
【0021】
整合回路3は、SAWフィルタ2とMCF4との間に設けられ、SAWフィルタ2の出力インピーダンスとMCF4の入力インピーダンスとの整合を取るものであり、SAWフィルタ2からMCF4への信号の出入力を適正な信号レベルで行うものである。
【0022】
MCF4は、電力耐性は低いが、通過帯域は狭い特性を持つ。
本複合フィルタでは、SAWフィルタ2の出力側に整合回路3を介してMCF4を設ける構成として、信号レベルを低下させた状態でMCF4に入力して、MCF4を適切な入力電力で動作させ、オフセット周波数の低い領域における位相雑音レベルを減衰させることができるものである。
【0023】
このようにして、電力耐性が高く通過帯域が狭い複合フィルタを実現することができ、本複合フィルタをOCXO等の信号源の出力に設けることにより、位相雑音の低い信号源を実現することができるものである。
【0024】
[本複合フィルタの位相雑音特性:
図2]
本複合フィルタの位相雑音特性について
図2を用いて説明する。
図2は、本複合フィルタの位相雑音特性を示す概略説明図である。
図2では、比較のために、(a)SAWフィルタ及びMCFをいずれも設けていない場合、(b)SAWフィルタのみを設けた場合、(c)MCFのみを設けた場合、(d)SAWフィルタとMCFとを両方とも設けた場合、の4つの場合について位相雑音特性を示している。本複合フィルタは、(d)に相当する。
【0025】
図2に示すように、フィルタを設けていない(a)に対して、(b)のSAWフィルタのみを設けた場合には、オフセット周波数が高い領域において位相雑音が減衰している。
また、(c)のMCFのみを設けた場合には、SAWフィルタよりもオフセット周波数が低い領域において位相雑音を減衰させるものの、オフセット周波数が高くなると減衰の効果は得られない。
【0026】
これに対し、SAWフィルタとMCFとを、入力端子側から、SAWフィルタ、MCFの順で設けた場合には、オフセット周波数が低い領域ではMCFの特性により位相雑音を減衰させ、オフセット周波数が高い領域ではSAWフィルタの特性により位相雑音を減衰させることができ、広い帯域において効果的に位相雑音を低減できることがわかる。
【0027】
[整合回路の構成例:
図3]
次に、整合回路3の構成例について、
図3を用いて説明する。
図3は、整合回路3の第1の構成例を示す説明図である。
図3に示すように、整合回路3は、SAWフィルタ2とMCF4の間に、コイル31が直列に接続され、コイル31とMCF4の間の点にコンデンサ32の一端が接続され、他端が接地された構成である。
整合回路3を設けることにより、インピーダンスを整合し、MCF4の特性を十分に生かすことができるものである。
【0028】
[本複合フィルタの別の構成:
図4]
次に、本複合フィルタの別の構成(別の複合フィルタ)について
図4を用いて説明する。
図4は、別の複合フィルタの構成を示す説明図である。
図4に示すように、別の複合フィルタは、
図3に示した複合フィルタにおいて、SAWフィルタ2と整合回路3のコイル31との間に、減衰器(ATT)33を直列に接続した構成である。
【0029】
減衰器33を設けることにより、SAWフィルタ2からの信号レベルが高い場合であっても、減衰器33で更に信号レベルを低減してMCF4への過入力を防ぎ、適切な入力レベルとすることができるものである。MCF4への適切な入力レベルは、0dBm以下としている。
【0030】
[応用例:
図5]
次に、本複合フィルタの応用例について
図5を用いて説明する。
図5は、本複合フィルタの応用例を示す説明図である。
上述した本複合フィルタ及び別の複合フィルタでは、SAWフィルタ2、MCF4等の素子をそれぞれ独立したパッケージを備えた個別の部品で実現していたが、応用例は、それらの素子を1パッケージ化(1チップ化)して、小型化を図るものである。
【0031】
図5に示すように、応用例の複合フィルタは、SAWフィルタ2と、整合回路3と、MCF4とを、例えば、同一基板上に金属パターンを形成し、表面実装型の素子を搭載することで実現して、同一のパッケージ10内に収納した構成であり、個別のSAWフィルタ2やMCF4等を基板に搭載して本複合フィルタを構成する場合に比べて、小型化が可能となるものである。
【0032】
また、減衰器33を備えた別の複合フィルタについても、SAWフィルタ2、減衰器33、整合回路3、MCF4を同一パッケージ内に収納して小型化を図ることが可能である。
【0033】
[本複合フィルタの適用例及び特性:
図6]
ここで、本複合フィルタを実際の信号源に適用した場合の位相雑音及び高次高調波の抑制について
図6を用いて説明する。
図6は、本複合フィルタを適用した場合の特性例を示す図である。
信号源としては、上述した信号源と同一の特性(発振周波数200MHz)を持つOCXOを用いた。
【0034】
図6に示すように、位相雑音の改善目標を、オフセット周波数10kHzにおいて−150dBc、100kHzにおいて−170dBc、10MHzにおいて−170dBc、40MHzにおいて−175dBcとした。
また、高次高調波(スプリアス)の抑制目標を、オフセット周波数400MHzにおいて−60dBcとした。
【0035】
そして、オフセット周波数の低い領域(オフセット周波数10kHz、100kHz)の位相雑音を改善するために、MCF4として、中心周波数200MHz、帯域幅20kHzの水晶フィルタを用いた。
【0036】
また、オフセット周波数の高い領域(オフセット周波数10MHz、40MHz)の位相雑音を改善するために、SAWフィルタ2として、中心周波数200MHz、帯域幅10MHzのものを用いた。
更に、当該SAWフィルタ2は、高次高調波を抑制する効果も備えている。
【0037】
このような構成の本複合フィルタを信号源の出力に設けることにより、
図6に示すように、位相雑音はオフセット周波数の低い領域から高い領域に亘って目標値を達成した。
また、高次高調波についても、−35dBcから−65dBcに大幅に抑制でき、目標値を達成したものである。
【0038】
[実施の形態の効果]
本発明の実施の形態に係る複合フィルタによれば、水晶発振器の出力側に接続された入力端子1に、電力耐性の高いSAWフィルタ2、整合回路3、通過帯域の狭いMCF4の順に接続された複合フィルタとしているので、SAWフィルタ2で信号を減衰させ、更に整合回路3で適正な信号レベルとして、MCF4への入力レベルを適正にすると共に、SAWフィルタ2がオフセット周波数の大きな領域における位相雑音を低減し、MCF4がオフセット周波数が小さい領域における位相雑音を低減し、更に、SAWフィルタ2により高次高調波を抑制することができ、電力耐性が高く、通過帯域が狭いフィルタを構成することができ、低位相雑音の信号源を実現できる効果がある。
【0039】
また、別の複合フィルタによれば、SAWフィルタ2と整合回路3との間に減衰器33を直列に設けた構成としているので、SAWフィルタ2を通過した後の信号レベルが十分に減衰されていない場合でも、減衰器33によって適切な信号レベルとすることができ、MCF4への過入力を防ぎ、適正に動作させることができる効果がある。
【0040】
また、応用例の複合フィルタによれば、SAWフィルタ2、整合回路3、MCF4を(減衰器33がある場合には減衰器33も)同一のパッケージに収容した構成としているので、フィルタの小型化を図ることができる効果がある。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明は、電力耐性が高く、且つ通過帯域が狭いフィルタとして、位相雑音の低い信号源を実現することができる複合フィルタに適している。
【符号の説明】
【0042】
1…入力端子、 2…弾性表面波フィルタ(SAWフィルタ)、 3…整合回路、 4…モノリシックフィルタ(MCF)、 5…出力端子、 10…パッケージ、 31…コイル、 32…コンデンサ、 33…減衰器