特許第6872393号(P6872393)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社トッパンTDKレーベルの特許一覧

<>
  • 特許6872393-レーザーマーキング用ラベル 図000004
  • 特許6872393-レーザーマーキング用ラベル 図000005
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6872393
(24)【登録日】2021年4月21日
(45)【発行日】2021年5月19日
(54)【発明の名称】レーザーマーキング用ラベル
(51)【国際特許分類】
   B41M 5/26 20060101AFI20210510BHJP
   B23K 26/00 20140101ALI20210510BHJP
   B29C 55/16 20060101ALI20210510BHJP
   G09F 3/02 20060101ALI20210510BHJP
   B29K 71/00 20060101ALN20210510BHJP
   B29L 7/00 20060101ALN20210510BHJP
【FI】
   B41M5/26
   B23K26/00 B
   B29C55/16
   G09F3/02 F
   B29K71:00
   B29L7:00
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-51615(P2017-51615)
(22)【出願日】2017年3月16日
(65)【公開番号】特開2018-153973(P2018-153973A)
(43)【公開日】2018年10月4日
【審査請求日】2020年3月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】591186888
【氏名又は名称】株式会社トッパンインフォメディア
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【弁理士】
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100109335
【弁理士】
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(72)【発明者】
【氏名】森川 知也
(72)【発明者】
【氏名】明星 芳樹
(72)【発明者】
【氏名】小田川 友彦
【審査官】 川村 大輔
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−277908(JP,A)
【文献】 特開2015−080917(JP,A)
【文献】 特開2008−201050(JP,A)
【文献】 特開2013−082087(JP,A)
【文献】 特開2013−220611(JP,A)
【文献】 特開2014−197118(JP,A)
【文献】 特表2007−512215(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0137305(US,A1)
【文献】 中国特許出願公開第1902055(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41M 5/26−5/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、該基材上に設けられたレーザーマーキング層と、該レーザーマーキング層上に設けられた粘着層とからなるクリーンラベルであって、該レーザーマーキング層が、レーザー光の照射により発色する発色層であり、該基材がポリアリールエーテルケトン系樹脂を含有した二軸配向プラスチックフィルムであり、前記粘着層を介して被着体に張り合わせたとき、前記基材が最表層になることを特徴とするレーザーマーキング用ラベル。
【請求項2】
前記レーザーマーキング層が、主剤となる樹脂と発色剤とから少なくともなり、レーザー光の照射による該発色剤の発熱により、該樹脂が炭化することを特徴とする請求項1に記載のレーザーマーキング用ラベル。
【請求項3】
前記発色剤が、レーザー光の照射により発熱する金属化合物からなることを特徴とする請求項2に記載のレーザーマーキング用ラベル。
【請求項4】
前記基材の熱膨張率がMD方向およびTD方向のいずれの方向についても50ppm/℃以下であり、150℃の熱収縮率の絶対値がMD方向およびTD方向のいずれの方向についても1.5%以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のレーザーマーキング用ラベル。
【請求項5】
前記基材が、ポリアリールエーテルケトン系樹脂を含有するフィルムを少なくとも同時二軸延伸処理してなる二軸配向プラスチックフィルムであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のレーザーマーキング用ラベル。
【請求項6】
前記ポリアリールエーテルケトン系樹脂は、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)である請求項1〜5のいずれか1項に記載のレーザーマーキング用ラベル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐熱性に優れ且つ、発塵性が少ないレーザーマーキング用ラベルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
製品の管理や品質保証の目的で、製造番号や賞味期限等の個別情報を印字したラベルやシート等を個々の製品に貼り付けることは広く行われている。
従来、鉄鋼、非鉄金属、鋳物、半導体などの製品、あるいはそれらの半製品や部品等の製造工程において、工程内で発生した熱を保持した状態で製品管理する場合に用いるラベルとしては、刻印やビス止め等が用いられている。しかし、貼り付けに手間がかかる、製品等を傷つける、曲面に使用できない等の問題がある。
【0003】
特に半導体製品の製造工程では、リフロー工程やオートクレーブ使用時などで200℃程度の熱がかかるため工程管理用のラベルとしては高い耐熱性が要求される。また、半導体製品の製造工程においては数μm程度の異物も大きなトラブルとなりうるため、ラベル表面の擦れ傷による発塵や、高温時に基材から析出するオリゴマー成分による汚染等が課題となっている。そのため、簡単に貼り付け可能であり且つ、高耐熱性と低発塵性を有したラベルが要望されている。
【0004】
刻印やビス止め以外の方法として、特許文献1のようなロイコ染料を用いた感熱式記録ラベルが知られている。
また、特許文献2には、レーザー印字によって表層を削り取るレーザー印字用ラベルが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−88348号公報
【特許文献2】特開2007−21818号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1のようなロイコ染料を用いた感熱式記録ラベルは、長時間高温環境下に保管すると退色が見られるため、上記のような用途においては使用することが困難である。
また、特許文献2に示すようなレーザー印字によって表層を削り取る様なラベルは、高温環境下でも印字されたコードが消えることはないが、耐摩耗性が低いため表面が擦れ発塵する。そのため、クリーン環境下で使用する管理用ラベルとしては不向きである。
【0007】
本発明は上記の問題点を改良し、特に高温環境(200℃)に耐える耐熱性と、十分なレーザーマーキング面の寸法安定性を有するとともに、発塵性の低いラベルを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、基材と、基材上に設けられたレーザーマーキング層と、レーザーマーキング層上に設けられた粘着層とからなるクリーンラベルであって、レーザーマーキング層が、レーザー光の照射により発色する発色層であり、基材がポリアリールエーテルケトン系樹脂を含有した二軸配向プラスチックフィルムであることを特徴とするレーザーマーキング用ラベルある。
本発明は、基材が、ポリアリールエーテルケトン系樹脂を含有した同時二軸延伸処理してなる二軸配向プラスチックフィルムであるのが望ましい。
本発明は、レーザーマーキング層が、主剤となる樹脂と発色剤とから少なくともなり、レーザー光の照射による発色剤の発熱により、樹脂が炭化するものであるとよい。
また、本発明で使用する発色剤は、レーザー光の照射により発熱する金属化合物からなるとよい。
【0009】
本発明は、基材の熱膨張率がMD方向およびTD方向のいずれの方向についても50ppm/℃以下であり、150℃における熱収縮率の絶対値がMD方向およびTD方向のいずれの方向についても1.5%以下であることがよい。
また本発明は、基材が、ポリアリールエーテルケトン系樹脂を含有するフィルムを少なくとも同時二軸延伸処理してなる二軸配向プラスチックフィルムであることが好ましい。
さらに本発明は、ポリアリールエーテルケトン系樹脂が、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)であることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、レーザーマーキング層に製造番号や賞味期限等の個別情報を印字することができ、高温使用下でも印字情報が消失することがない。
【0011】
また、最表層にポリアリールエーテルケトン系樹脂を含有する基材を用いることにより、保護層として機能し、耐熱性、機械的強度、強靭性が高く、特に高温環境(200℃)に耐える耐熱性と、十分な印字面の寸法安定性を有するとともに、擦れやオリゴマーによる発塵性の低いラベルを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明のラベルの概略的な断面模式図である。
図2】実施例及び比較例のラベルについて、各試験環境(温度)に対する耐摩耗性(傷数)の関係を示した折れ線グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しつつ、本発明を実施するための形態について説明する。
図1は、本発明のラベルの概略的な断面模式図である。
図1を参照して、基材2と、基材2の一方の面に設けられたレーザーマーキング層3と、レーザーマーキング層3上に設けられた被着体に貼付するための粘着層4と、粘着層4上に設けられた剥離フィルム5とで、レーザーマーキング用ラベル1を構成している。
【0014】
本発明によるレーザーマーキング用ラベルのレーザーマーキング層は、レーザー光による加熱で印字(マーキング)でき、その印字方法としては、耐熱性、加工精度、加工時間等の側面からレーザー印字装置による印字方法が好適である。
レーザーマーキング層は、レーザー印字装置等によって所望の変色パターンが形成されるものであって、主剤である樹脂に発色剤を添加した層からなるものとすることができる。この場合、レーザーマーキング層にレーザー光(たとえば、1064nm)を照射すると、添加された発色剤がレーザー光を吸収することにより発熱し、この発熱により、発色剤の周辺の樹脂は炭化して黒色等に発色(変色)することにより変色パターンを形成できる。
この発色原理は不可逆なものであり、ロイコ染料を用いた発色に比べて安定であり200℃以上の環境でも印字コード等の変色パターンが消えることもなく容易に読み取ることができる。
【0015】
レーザーマーキング層に用いる樹脂としては、発色剤の発熱により炭化するものであれば特に限定されないが、例えば、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ乳酸系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリアクリル系もしくはポリメタクリル系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、エチレン共重合体、ポリビニルアセタール系樹脂、ゴム系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリオレフィン系樹脂、フェノール系樹脂、アミノ−プラスト系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリエステルウレタン樹脂、シリコーン系樹脂、セルロース系樹脂等からなる樹脂を構成するモノマー、プレポリマー若しくはオリゴマーまたはポリマーの一種ないしそれ以上を主成分とする組成物を用いることができる。
【0016】
発色剤はレーザー光の照射により、発熱し、発色剤の周辺の樹脂を黒色に炭化させるものであれば特に限定されるものではないが、金属化合物を好適に使用することができる。例えば、ビスマス酸化物、ネオジム酸化物、銅・モリブデン複合酸化物、アンチモンドープ酸化錫被覆マイカ、アンチモンドープ酸化錫/酸化チタン/二酸化珪素被覆マイカのいずれか一種以上を単独、または混合して用いることができる。
【0017】
なお、レーザーマーキング層には必要に応じて着色剤、充填剤(フィラー類)、滑剤、可塑剤等の添加剤を加えることができる。具体的な添加剤としては、例えばカーボンブラック、フタロシアニン、アゾ化合物、ジスアゾ化合物、キナクリドン、アントラキノン、フラバントロン、ペリレン、ジオキサジン、縮合アゾ化合物、アゾメチン、又はメチン化合物等の各種有機顔料、硫酸鉛、酸化チタン、酸化亜鉛、クロムエロー、ジンクエロー、クロムバーミリオン、ベンガラ、コバルト紫、群青、クロムグリーン、酸化クロム、コバルトグリーン等の無機・有機顔料および染料が挙げられる。
【0018】
レーザーマーキング層の厚みは、1〜25μmとすることができ、好ましくは5〜20μmとする。厚みが1μm未満であると発色が不十分になることがあり、また、厚みが25μmより厚いと、レーザー光が深さ方向に十分届かなくなることから、厚くしても発色に大きな差は見られない。
レーザーマーキング層は、例えば、主剤である樹脂を有機溶媒に溶解し、発色剤を分散させたレーザーマーキング層用塗料を、塗工機を用いて直接基材上に塗布し、溶媒を乾燥させ塗膜化して作製することができる。
レーザーマーキング層に照射可能なレーザーとしては、特に種類を限定するものではないが、レーザーマーキング層のレーザー光吸収波長に合わせ、CO2レーザー、Nd:YAGレーザー、エキシマレーザー、半導体レーザー、半導体励起固体レーザー、Arレーザー、N2/Dyeレーザー、HeCdレーザー等を使用することができる。レーザーの波長は193〜10600nmであってよい。
【0019】
本発明によるレーザーマーキング用ラベルの基材は、機械的強度、寸法安定性、耐熱性等が要求されることからポリアリールエーテルケトン系樹脂を含有した二軸配向プラスチックフィルムであることを特徴とする。
ポリアリールエーテルケトン系樹脂としては、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)、ポリエーテルエーテルケトンケトン(PEEKK)、ポリエーテルケトンエーテルケトンケトン(PEKEKK)が例示され、中でも好ましくはPEEKである。
ポリアリールエーテルケトン系樹脂は80〜230℃、特に100〜200℃のガラス転移温度を有することが好ましい。ガラス転移温度はJIS K7121に基づいて測定することができる。
ポリアリールエーテルケトン系樹脂はまた250〜420℃、特に280〜400℃の融点を有することが好ましい。 融点はJIS K7121に基づいて測定することができる。
【0020】
本発明によるレーザーマーキング用ラベルの基材は、耐熱寸法安定性、耐熱変形性、透明性および製膜性に悪影響を与えない範囲で、上記ポリアリールエーテルケトン系樹脂以外に、他のポリマーを含有してもよい。
他のポリマーとしては、ガラス転移温度が230℃以下、特に50〜200℃のポリマーを使用し、製膜性の観点から好ましくはガラス転移温度が、プラスチックフィルムに含有されるポリアリールエーテルケトン系樹脂より低いポリマーを使用することができる。他のポリマーの具体例としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリトリメチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂;ポリフェニレンサルファイト;ポリアリレート;ポリエーテルサルホン;ポリフェニレンエーテル等が挙げられる。
基材中のポリマー成分におけるポリアリールエーテルケトン系樹脂の含有割合は、耐熱寸法安定性および耐熱変形性のさらなる向上の観点から、60重量%以上が好ましく、より好ましくは80重量%以上であり、最も好ましくは90重量%以上である。2種類以上のポリアリールエーテルケトン系樹脂が含有される場合、それらの合計割合が上記範囲内であればよい。
【0021】
また、本発明によるレーザーマーキング用ラベルの基材は、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、滑剤、着色剤、結晶核剤、難燃剤等の添加剤を含有してもよい。
着色剤としてはプラスチックフィルムの分野で使用される任意の顔料および染料が使用できる。着色剤の含有割合は本発明の目的が達成される限り特に制限されず、例えば、ポリマー成分に対して1〜30重量%が好適である。
【0022】
ポリアリールエーテルケトン系樹脂は、射出成形可能な熱可塑性樹脂としては最高の耐熱性を持つ芳香族系のプラスチックで、融点が250〜420℃で,200℃程度の高温環境下で使用できるという超耐熱性を持つ。分子構造としては、ベンゼン環がパラの位置につき、剛直なカルボニル基(-C=O)とフレキシブルなエーテル結合(-O-)によって連結される構造をとっている。また、耐薬品性や耐熱水性に優れ、高い難燃性と同時に燃焼時の発煙や腐食性ガスの発生が極めて少ないため、高温使用下で用いられるラベル基材として好適である。
本発明では、基材が、ポリアリールエーテルケトン系樹脂を含有した二軸配向プラスチックフィルムであることを特徴する。ポリアリールエーテルケトン系樹脂を含有した二軸配向プラスチックフィルムは、同時二軸延伸処理してなるのが好ましい。
ポリアリールエーテルケトン系樹脂を含有するプラスチックフィルムは著しく優れた熱寸法安定性が発現する。その結果、高温条件下で被着体に貼着を行った場合においても、反りを十分に防止することができる。
【0023】
本発明によるレーザーマーキング用ラベルの基材に使用する、ポリアリールエーテルケトン系樹脂を含有した二軸配向プラスチックフィルムは、同時二軸延伸処理してなるのが好ましい。本発明において、ポリアリールエーテルケトン系樹脂を含有するフィルムを同時二軸延伸で二軸配向フィルムとすることにより、二軸配向していないフィルムおよび逐次二軸延伸による二軸配向フィルムと比較して、十分に優れた耐熱寸法安定性および耐熱変形性が発現し、透明性を向上させることができる。
【0024】
基材の熱寸法安定性は、熱膨張率が特定の範囲内であり、好ましくは熱膨張率および熱収縮率がそれぞれ特定の範囲内であることが好ましく、具体的には、熱膨張率がMD方向およびTD方向のいずれの方向についても50ppm/℃以下であり、150℃の熱収縮率の絶対値がMD方向およびTD方向のいずれの方向についても1.5%以下であることが好ましい。
熱膨張率が大きすぎると、熱寸法安定性が低下し、反りを十分に防止できない。そのため熱膨張率は通常は、1〜50ppm/℃、好ましくは3〜45ppm/℃、より好ましくは5〜40ppm/℃である。
また、150℃での熱収縮率の絶対値は1.5%以下であり、好ましくは0.5%以下、より好ましくは0.3%以下である。
熱収縮率の絶対値が大きすぎると、熱寸法安定性が低下し、反りを十分に防止できない。
【0025】
基材にポリアリールエーテルケトン系樹脂を含有した二軸配向プラスチックフィルムを用いた場合、耐熱ラベルとして有用であり、例えば200℃以上250℃以下の高温環境下で使用される耐熱ラベルとして有用である。
本発明において、レーザーマーキング用ラベルとは、高温環境下で使用でき、熱寸法安定性等の耐熱性、擦れやオリゴマーによる発塵性等の低い、耐久性に優れたラベルである。
本発明によるレーザーマーキング用ラベルの基材は、ラベルを製造する際の取り扱いの容易性や、被着体へのラベリング性などの観点から、所望の厚みを選択することが可能であり、ラベルとしての強度と取扱い時の作業性(フレキシブル性)を考慮すると、10〜400μmが好ましく、10〜100μmがより好ましい。
本発明本発明によるレーザーマーキング用ラベルの基材は、基材自体の耐熱性に優れたものが好ましい。これは、レーザー光の照射によりレーザーマーキング層から発生する発熱による熱変形などの損傷を生じさせないためである。耐熱性の低い基材を使用すると、レーザー光の照射による発熱で熱変形によるひずみが媒体の外観で視認されるなどの不具合が発生する。
【0026】
本発明によるレーザーマーキング用ラベルの粘着層は、レーザーマーキング用ラベルを被着体に十分に貼り合わせることができるものであれば特に種類を限定するものではないが、具体例としてアクリル系、ゴム系、ポリエステル系、ウレタン系、ビニル系、シリコーン系等の粘着剤を挙げることができる。粘着力や耐環境性を有するシリコーン粘着剤、及びアクリル系粘着剤などが好ましく、特にアクリル系粘着剤が好適に用いられる。また安定した耐環境性や粘着物性を得るために、イソシアネート系などの硬化剤を用いて粘着層を熱硬化してもよい。
粘着層の膜厚は、2μm以上であるとよく、好ましくは5μm以上であるとよい。より好ましくは10μm以上である。粘着層は厚いほど粘着力は高くなるが、被着体に貼り合せたときの端部からはみ出すなどの不具合を考慮すると500μm以下が好ましい。より好ましくは100μm以下である。
粘着層は、例えば、粘着剤を有機溶媒に溶解した粘着層用塗料をレーザーマーキング層上に直接塗布し形成することができる。また粘着層用塗料を剥離フィルム上に塗布形成し、溶媒を乾燥後に、必要に応じてエージングを行い、これをレーザーマーキング層上に貼り合せて形成することもできる。他に無溶媒の紫外線硬化型粘着剤を剥離フィルム上に塗布形成し、レーザーマーキング層上に貼り付けた後、紫外線を照射することで粘着層を形成することもできる。また、レーザーマーキング層上に市販の両面粘着フィルムを貼り付けて形成しても良い。
【実施例】
【0027】
以下に実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
次に詳述するように、本発明のレーザーマーキング用ラベルを試作し、比較例として作製したラベルとともに、その性能を評価した。
【0028】
<熱膨張率の測定方法>
熱膨張率は、試験片(2mm×25mm)を長手方向が鉛直方向になるように吊り下げて、該試験片の下端に5gf/2mm幅の引張荷重を印加し、雰囲気温度を昇温速度10℃/分で50℃から100℃まで昇温したときの熱膨張率である。
具体的には、熱機械測定装置(Q400EM;TA INSTRUMENTS社)を用い、試験片(フィルム;2mm×25mm)を、該試験片の長手方向が鉛直方向になるように吊り下げ、該試験片の下端に5gf/2mm幅の引張荷重を印加した。その後、雰囲気温度を昇温速度10℃/分で昇温し、50℃から100℃までの寸法変化を1℃あたりの変化量に換算し、熱膨張率を測定した。熱膨張率は引張方向がMD方向およびTD方向の場合について測定した。
【0029】
<熱収縮率の測定方法>
熱収縮率は、試験片(200mm×200mm)を雰囲気温度150℃で30分間放置したときのMD方向およびTD方向の各方向における熱収縮率である。
具体的には、長さ150mmの2本の直線をそれぞれ、MD方向およびTD方向に対して平行に、かつ互いに中点で交わるように、試験片(フィルム;200mm×200mm)上に描いた。この試験片を、標準状態(温度23℃×湿度50%)に2時間放置し、その後試験前の直線の長さを測定した。続いて150℃の雰囲気に設定された熱風循環式オーブン内で一角を支持した宙吊り状態にて30分間放置した後、取り出して、標準状態に2時間放置冷却した。その後各方向の直線の長さを測定し、試験前の長さからの変化量を求め、当該試験前の長さに対する変化量の割合として熱収縮率を求めた。
【0030】
(実施例1)
レーザーマーキング層用塗料として、三酸化ビスマスと三酸化ネオジウムの混合による発色顔料(東罐マテリアル・テクノロジー株式会社製:42−920A)とポリエステルウレタン樹脂(東洋紡製株式会社製:バイロンUR3200)をメチルエチルケトン/トルエン=1/1の混合溶媒を用いて、樹脂固形分を20%、P(顔料)/R(樹脂)=0.25/1の塗料を作製し、膜厚が10μmとなるように同時二軸延伸により二軸配向させたPEEKフィルム基材(倉敷紡績株式会社製 エクスピーク:厚み25μm)上にメイヤーバーにて製膜し、100〜130℃の雰囲気化で30〜300秒間乾燥させた。その後、株式会社MCK社製ラミネート装置を用いて、製膜したレーザーマーキング層表面に両面粘着フィルム(日東電工株式会社 HJ−3160W)を貼り合わせ実施例1のレーザーマーキング用ラベルを得た。
なお、PEEKフィルム基材の熱膨張率は35ppm/℃、熱収縮率は0.2%(150℃×30分)であった。また、同時二軸延伸前のPEEKフィルム基材のガラス転移温度は約150℃であり、同時二軸延伸後のPEEKフィルム基材のガラス転移温度は約320℃であった。基材に用いるPEEK樹脂の融点は約340℃であった。
【0031】
(比較例1)
基材としてポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ株式会社製:PET、S10、25μm))を準備し、この基材上に実施例1と同条件でレーザーマーキング層を形成した。その後、実施例1と同様に両面粘着フィルム(日東電工株式会社 HJ−3160W)をレーザーマーキング層表面に貼り合わせ比較例1のレーザーマーキング用ラベルを得た。
なお、比較例に用いた基材の熱膨張率は62ppm/℃、熱収縮率1.2%(150℃×30分)であった。
【0032】
(比較例2)
基材として無延伸のPEEKフィルム(ビクトレックスジャパン株式会社製:APTIV 25μm))を準備し、この基材上に実施例1と同条件でレーザーマーキング層を形成した。その後、実施例1と同様に両面粘着フィルム(日東電工株式会社 HJ−3160W)をレーザーマーキング層表面に貼り合わせ比較例2のレーザーマーキング用ラベルを得た。
なお、比較例に用いた基材は、熱膨張率は37ppm/℃、熱収縮率0.4%(150℃×30分)であった。
【0033】
(評価)
レーザーマーキング層への変色パターン(印字コード)の形成は、キーエンス株式会社製の波長1064nmのレーザーマーカー(株式会社キーエンス社製 MD−V9600)を用いて行った。レーザーマーキング条件は、スキャンスピード:2000mm/s、周波数:10kHz、レーザーパワー:30%とし、印字コードは、4ケタの数字(1234)をバーコード(規格:CODE39、幅:30mm、高さ10mm)に変換し、実施例1および比較例1、2を、それぞれのレーザーマーキング用ラベル上に印字した後、以下の試験を実施し評価した。
【0034】
<読み取り容易性>
実施例1並びに比較例1、2のレーザーマーキング用ラベルにおいて、上記レーザーマーキング条件にてバーコードを印字し、バーコードリーダーで10回読み取りさせ、10回とも読み取りでき、目視でも良好にコードが確認できた場合を○、バーコードリーダーで10回とも読み取りできたが、目視ではコードが判読し難い場合を△、バーコードリーダーで1回でも読み取りできなかった場合を×として、バーコードの読み取り性の評価を実施した。
試験は25℃、100℃、150℃、200℃の環境下で行った。また、印字部分の印字濃度を印字濃度計(Macbeth社製 RD-918)を用いて測定した。結果を表1に示した。
【0035】
<発塵性(耐摩耗性)>
レーザーマーキング用ラベル表面に荷重:200gをかけて#0000のスチールウールを押し付け、ストローク幅25mm、毎分120回の速度で100回往復摩擦したあとの表面を粗さ計(テーラーホブソン社製 PGI-800)を用いて、0.2μm以上の深さのモノを傷と判断しカウントした。試験は25℃、100℃、150℃、200℃の環境下で行った。結果を図2に示した。
【0036】
<耐熱性>
実施例1、並びに比較例1、2のレーザーマーキング用ラベルをステンレス板に貼り付け、25℃、100℃、150℃、200℃の環境下で30分保管した。その後ラベル表面をSEM(株式会社日立ハイテクノロジーズ社製:S−4800)を用いて観察し、オリゴマーの発生の有無を観察した。オリゴマーが発生したものを×、発生していないものを○と判定し、結果を表2に示した。
【0037】
【表1】
【0038】
【表2】
【0039】
表1より、実施例1、比較例1はラベルが透明であり目視でコードを視認し易かったのに対して、比較例2は、ラベル自体が不透明であり目視でコードを視認し難かった。
図2より、実施例1は高温環境でも高い耐摩耗性を示しているのに対して、比較例1、2は耐摩耗性が著しく低下することが分かった。表2より実施例1、比較例2は高温環境でもオリゴマーが発生しないのに対して、比較例1は150℃からオリゴマーが観測された。
【符号の説明】
【0040】
1 レーザーマーキング用ラベル
2 基材
3 レーザーマーキング層
4 粘着層
5 剥離フィルム
図1
図2