(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6872404
(24)【登録日】2021年4月21日
(45)【発行日】2021年5月19日
(54)【発明の名称】放射線検出装置および放射線検出装置用可視光反射シート
(51)【国際特許分類】
G01T 1/20 20060101AFI20210510BHJP
【FI】
G01T1/20 D
G01T1/20 L
G01T1/20 E
G01T1/20 G
【請求項の数】7
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-80296(P2017-80296)
(22)【出願日】2017年4月14日
(65)【公開番号】特開2018-44944(P2018-44944A)
(43)【公開日】2018年3月22日
【審査請求日】2020年2月13日
(31)【優先権主張番号】特願2016-175532(P2016-175532)
(32)【優先日】2016年9月8日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】501428187
【氏名又は名称】昭和電工パッケージング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106091
【弁理士】
【氏名又は名称】松村 直都
(74)【代理人】
【識別番号】100079038
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 彰
(74)【代理人】
【識別番号】100060874
【弁理士】
【氏名又は名称】岸本 瑛之助
(72)【発明者】
【氏名】古谷 篤
【審査官】
中尾 太郎
(56)【参考文献】
【文献】
特開2003−248279(JP,A)
【文献】
特開2004−325445(JP,A)
【文献】
特開2006−052984(JP,A)
【文献】
特開2006−078471(JP,A)
【文献】
特開2006−153707(JP,A)
【文献】
特開2014−071077(JP,A)
【文献】
特開2014−167404(JP,A)
【文献】
特開2015−045615(JP,A)
【文献】
特開2015−184205(JP,A)
【文献】
国際公開第2010/018496(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01T 1/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
可視光反射層と、可視光透過性を有しかつ可視光反射層の一方の面に積層されている接着層と、可視光反射層の他方の面に積層されている保護層とを備えている放射線検出装置用可視光反射シートであって、
可視光反射層が厚さ15〜100μmのアルミニウム箔からなるとともに、アルミニウム箔における接着層側の面の算術平均粗さ(Ra)が0.1μm以下であり、
接着層がホットメルト接着剤からなるとともに、接着層の厚さが10〜200μmであり、かつ接着層における可視光反射層と反対側の面の算術平均粗さ(Ra)が5〜100μmである、
放射線検出装置用可視光反射シート。
【請求項2】
アルミニウム箔における保護層側の面の算術平均粗さ(Ra)が1μm以下である、請求項1記載の放射線検出装置用可視光反射シート。
【請求項3】
保護層が2軸延伸樹脂フィルムからなり、保護層の厚さが10〜100μmである、請求項1または2記載の放射線検出装置用可視光反射シート。
【請求項4】
可視光反射層と、可視光透過性を有しかつ可視光反射層の一方の面に積層されている接着層と、可視光反射層の他方の面に積層されている保護層とを備えている放射線検出装置用可視光反射シートであって、
可視光反射層が厚さ15〜100μmのアルミニウム箔からなるとともに、アルミニウム箔における接着層側の面の算術平均粗さ(Ra)が0.1μm以下であり、
接着層がアクリル樹脂系粘着剤、シリコン樹脂系粘着剤またはウレタン樹脂系粘着剤からなるとともに、接着層の厚さが10〜200μmであり、
接着層における可視光反射層と反対側の面に離型フィルムが積層されている、
放射線検出装置用可視光反射シート。
【請求項5】
アルミニウム箔における保護層側の面の算術平均粗さ(Ra)が1μm以下である、請求項4記載の放射線検出装置用可視光反射シート。
【請求項6】
保護層が2軸延伸樹脂フィルムからなり、保護層の厚さが10〜100μmである、請求項4または5記載の放射線検出装置用可視光反射シート。
【請求項7】
一方の面側から入射した放射線を可視光に変換するシンチレータ層と、光電変換素子を有しかつシンチレータ層の他方の面に積層されているセンサパネルと、シンチレータ層の前記一方の面に可視光透過性を有する接着層を介して積層されかつシンチレータ層から発せられた可視光をシンチレータ層の前記他方の面側に向かって反射させる可視光反射層と、可視光反射層におけるシンチレータ層と反対側の面に積層されている保護層とを備えている放射線検出装置であって、
接着層、可視光反射層および保護層が、請求項1〜3のいずれか1つに記載の放射線検出装置用可視光反射シートによって構成されている、放射線検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば産業用非破壊検査装置や医療用X線装置といった放射線検出装置、および同装置に用いられる可視光反射シートに関する。
この明細書および特許請求の範囲において、「放射線」には、X線、α線、β線、γ線等の電磁波が含まれるものとする。この明細書および特許請求の範囲において、「接着」には、粘着が含まれるものとする。また、この明細書および特許請求の範囲において、「アルミニウム」には、純アルミニウムの他、アルミニウム合金が含まれるものとする。
【背景技術】
【0002】
放射線検出装置として、一方の面側から入射した放射線を可視光に変換するシンチレータ層と、光電変換素子を有しかつシンチレータ層の他方の面に積層されているセンサパネルと、シンチレータ層の前記一方の面に可視光透過性を有する接着層を介して積層されかつシンチレータ層から発せられた可視光をシンチレータ層の他方の面側に向かって反射させる可視光反射層と、可視光反射層におけるシンチレータ層と反対側の面に積層されている保護層とを備えているものが知られている(下記の特許文献1参照)。
上記の放射線検出装置のうち接着層、可視光反射層および保護層は、可視光反射シートによって構成される場合がある。可視光反射シートとしては、例えば、可視光反射層を構成する金属箔の一方の面に、接着層を構成する粘着剤を積層するとともに、金属箔の他方の面に、保護層を構成する樹脂フィルム等を積層してなる積層シートが用いられる。
上記の放射線検出装置においては、保護層、可視光反射層および接着層を透過してシンチレータ層にその一方の面側から入射した放射線がシンチレータ層内で可視光に変換され、それによって生じた可視光がセンサパネルの光電変換素子で電気信号に変換されて、画像の形成が行われるようになっている。
可視光反射シートは、シンチレータ層内で変換された可視光を反射・増幅させるためのものであるとともに、シンチレータ層を保護する役割も担っている。したがって、可視光反射シートには、高反射性、防湿性、シンチレータ層との密着性といった性能が要求される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014−71077号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の放射線検出装置用可視光反射シートでは、可視光反射層が金属箔によって構成されている場合、シンチレータ層側の面、すなわち可視光を反射させる面の表面状態が一定せず、安定した光量が得られ難いという問題があった。一方、可視光反射層が金属薄膜によって構成されている可視光反射シートもあるが、製造コストが高くなる上、可視光反射層の形成時にピンホールが発生して、放射線検出装置により得られる画像の画質低下を招くおそれがあった。
【0005】
この発明の目的は、製造コストが嵩まず、放射線検出装置の機能を低下させるおそれがない上、シンチレータ層内で生じた可視光をセンサパネルの光電変換素子に向かって高効率で反射させることができる放射線検出装置用可視光反射シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、上記の目的を達成するために、以下の態様からなる。
【0007】
1)可視光反射層と、可視光透過性を有しかつ可視光反射層の一方の面に積層されている接着層と、可視光反射層の他方の面に積層されている保護層とを備えている放射線検出装置用可視光反射シートであって、
可視光反射層が厚さ15〜100μmのアルミニウム箔からなり、アルミニウム箔における接着層側の面の算術平均粗さ(Ra)が0.1μm以下である、放射線検出装置用可視光反射シート。
【0008】
2)アルミニウム箔における保護層側の面の算術平均粗さ(Ra)が1μm以下である、上記1)の放射線検出装置用可視光反射シート。
【0009】
3)接着層がホットメルト接着剤からなり、接着層の厚さが10〜200μmである、上記1)または2)の放射線検出装置用可視光反射シート。
【0010】
4)接着層における可視光反射層と反対側の面の算術平均粗さ(Ra)が5〜100μmである、上記3)の放射線検出装置用可視光反射シート。
【0011】
5)接着層がアクリル樹脂系粘着剤、シリコン樹脂系粘着剤またはウレタン樹脂系粘着剤からなり、接着層の厚さが10〜200μmである、上記1)または2)の放射線検出装置用可視光反射シート。
【0012】
6)接着層における可視光反射層と反対側の面に離型フィルムが積層されている、上記5)の放射線検出装置用可視光反射シート。
【0013】
7)保護層が2軸延伸樹脂フィルムからなり、保護層の厚さが10〜100μmである、上記1)〜6)のいずれか1つの放射線検出装置用可視光反射シート。
【0014】
8)一方の面側から入射した放射線を可視光に変換するシンチレータ層と、光電変換素子を有しかつシンチレータ層の他方の面に積層されているセンサパネルと、シンチレータ層の前記一方の面に可視光透過性を有する接着層を介して積層されかつシンチレータ層から発せられた可視光をシンチレータ層の前記他方の面側に向かって反射させる可視光反射層と、可視光反射層におけるシンチレータ層と反対側の面に積層されている保護層とを備えている放射線検出装置であって、
接着層、可視光反射層および保護層が、上記1)〜7)のいずれか1つの放射線検出装置用可視光反射シートによって構成されている、放射線検出装置。
【発明の効果】
【0015】
上記1)の放射線検出装置用可視光反射シートによれば、可視光反射層が厚さ15〜100μmのアルミニウム箔からなるので、製造コストが抑えられ、また、ピンホールの発生による放射線検出装置の機能低下を招くおそれがない。
また、上記1)の可視光反射シートによれば、アルミニウム箔における接着層側の面の算術平均粗さ(Ra)が0.1μm以下であるので、シンチレータ層内で生じた可視光を、散乱させることなく、シンチレータ層の他方の面側、すなわちセンサパネルの光電変換素子に向かって、高効率で反射させることができる。
【0016】
上記2)の放射線検出装置用可視光反射シートによれば、アルミニウム箔における保護層側の面の算術平均粗さ(Ra)が1μm以下であるので、同シートをシンチレータ層に接着して積層する際、斑なく貼り合わせることができ、反射板としての機能が低下するおそれがない。
【0017】
上記3)の放射線検出装置用可視光反射シートによれば、接着層がホットメルト接着剤からなり、接着層の厚さが10〜200μmであるので、同シートをシンチレータ層の一方の面に強固に接着することが可能となり、また、接着層内を透過する可視光の減衰を少なくすることができる。
【0018】
上記4)の放射線検出装置用可視光反射シートによれば、ホットメルト接着剤からなる接着層における可視光反射層と反対側の面の算術平均粗さ(Ra)が5〜100μmであるので、同シートをシンチレータ層の一方の面に接着して積層する際に、空気が逃げやすくなり、気泡等をかみ込むことなく良好な状態で両者を積層一体化することができる。
【0019】
上記5)の放射線検出装置用可視光反射シートによれば、接着層がアクリル樹脂系粘着剤、シリコン樹脂系粘着剤またはウレタン樹脂系粘着剤からなり、接着層の厚さが10〜200μmであるので、同シートをシンチレータ層の一方の面に強固にかつ容易に接着することができ、また、接着層内を透過する可視光の減衰を少なくすることができる。
【0020】
上記6)の放射線検出装置用可視光反射シートによれば、アクリル樹脂系粘着剤等からなる接着層における可視光反射層と反対側の面に離型フィルムを積層させているので、同シートをシンチレータ層の一方の面に接着する迄に、接着層の粘着力が弱まることがなく、強固に接着することが可能となる。
【0021】
上記7)の放射線検出装置用可視光反射シートによれば、保護層が2軸延伸樹脂フィルムからなり、保護層の厚さが10〜100μmであるので、同シートをシンチレータ層の一方の面に接着する際に生じる圧力や、形成された放射線検出装置に外部から加えられる負荷に対して、十分な強度が得られるとともに、シート全体の厚さを薄くすることができ、ひいては、放射線検出装置をコンパクト化することができる。
【0022】
上記8)の放射線検出装置によれば、製造コストが抑えられ、可視光反射層へのピンホールの発生に起因する画質低下を招くおそれがない上、シンチレータ層内で生じた可視光を高効率で光電変換素子に照射させることができ、さらには、可視光反射シートに層間剥離が生じ難く、耐久性に優れている。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】この発明による放射線検出装置の概要を示す部分拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、この発明の実施形態を、
図1を参照して説明する。
【0025】
図1は、この発明による放射線検出装置の概要を示したものである。
図示の放射線検出装置(1)は、平板構造のものであって、一方の面(
図1では上面)側から入射した放射線(X)を可視光に変換するシンチレータ層(2)と、光電変換素子(31)を有しかつシンチレータ層(2)の他方の面に積層されているセンサパネル(3)と、シンチレータ層(2)の一方の面に可視光透過性を有する接着層(41)を介して積層されかつシンチレータ層(2)から発せられた可視光(L)をシンチレータ層(2)の他方の面(
図1では下面)側に向かって反射させる可視光反射層(42)と、可視光反射層(42)におけるシンチレータ層(2)と反対側の面(
図1では上面)に積層されている保護層(43)とを備えている。
接着層(41)、可視光反射層(42)および保護層(43)は、可視光反射シート(4)によって構成されている。
【0026】
上記装置(1)では、目的物に照射されてこれを透過した放射線(X)が、保護層(43)、可視光反射層(42)および接着層(41)を透過して、シンチレータ層(2)にその一方の面(
図1では上面)側から入射し、同層(2)内で可視光(L)に変換され、それによって生じた可視光(L)がセンサパネル(3)の光電変換素子(31)によって電気信号に変換されることにより、目的物の画像形成が行われるようになっている。この際、シンチレータ層(2)内で生じた可視光(L)の一部は、可視光反射層(42)により、シンチレータ層(2)の他方の面(
図1では下面)側、すなわちセンサパネル(3)の光電変換素子(31)に向かって反射される。
【0027】
シンチレータ層(2)は、外部の放射線源から照射された放射線(L)を、センサパネル(3)の光電変換素子(31)によって検出可能な波長の光、すなわち可視光(L)に変換するものである。
このシンチレータ層(2)は、例えば柱状結晶構造を有するシンチレータ(蛍光体)によって形成される。柱状結晶構造を有するシンチレータとしては、例えばハロゲン化アルカリを主成分とする材料、より具体的には、例えば、CsI:Tl、CsI:Na、(CsBr:Tl、)NaI:Tl,LiI:Eu,KI:Tl等が用いられる。
シンチレータ層(2)の形成方法は、特に限定されないが、例えば、センサパネル(3)における光電変換素子(31)が配されている側の面に、上記材料(例えばCsIとTlI)を蒸着する方法が適用可能であり、その他、粒子状シンチレータやペースト状シンチレータによってシンチレータ層(2)が形成されていてもよい。
シンチレータ層(2)の厚さは、通常、数十〜1000μm程度となされる。
【0028】
センサパネル(3)は、シンチレータ層(2)において放射線(X)から変換された可視光(L)を電気信号(電荷)に変換するためのものであって、例えばガラス板や耐熱性樹脂板等よりなる基板(30)の片面(
図1の上面)側に、光電変換素子(31)を配してなる。
光電変換素子(31)の材料としては、例えばアモルファスシリコンが挙げられる。光電変換素子(31)の構成は、特に限定されず、例えばMIS型センサ、PIN型センサ、TFT型センサ等の中から適宜の構成が採用される。
図示は省略したが、基板(30)には、配線が形成されている。この配線を通じて、光電変換素子(31)が、センサパネル(3)外部に設置された光電変換素子駆動回路や光電変換素子からの出力信号処理回路と接続されている。
また、センサパネル(3)の基板(30)の他面に、光電変換素子(31)に裏側から光を照射して光電変換素子(31)の特性を改善する光源ユニット(図示略)が配置されてもよい。
【0029】
接着層(41)は、可視光反射シート(4)をシンチレータ層(2)に接着して接合する機能を有する他、外気からシンチレータ層(2)への水分の侵入を防止する防湿機能や、シンチレータ層(2)の衝撃による破壊を防止する衝撃保護機能を有するものである。
接着層(41)の材料としては、たとえば接着剤や粘着剤が挙げられるが、接着層(41)には可視光透過性が必要であることから、好適には、透明度が高く、さらに硬化後の屈折率が小さいポリオレフィン樹脂(特に、X線耐久性に優れたポリエチレン樹脂)やエチレン酢酸ビニル共重合樹脂(EVA)等のホットメルト接着剤、または、アクリル樹脂系粘着剤、シリコン樹脂系粘着剤もしくはウレタン樹脂系粘着剤が用いられる。
可視光反射シート(4)の接着層(41)がアクリル樹脂系粘着剤、シリコン樹脂系粘着剤、またはウレタン樹脂系粘着剤からなる場合、接着層(41)における可視光反射層(42)と反対側の面に、離型フィルム(図示略)を積層させておくのが好ましい。離型フィルムは、可視光反射シート(4)をシンチレータ層(2)の一方の面に接着する前に剥離される。これによって、接着層の粘着力が弱まるのが防止され、強固に接着を行うことができる。
また、接着層(41)の厚さは、10〜200μm、より好ましくは20〜100μmとなされる。接着層(41)の厚さが10μm未満であると、算術平均粗さ(Ra)の制御が困難となり、また、十分な接着力も得られず、シンチレータ層(2)と可視光反射シート(4)とが剥離するおそれがある。その一方、接着層(41)の厚さが200μmを超えると、接着層(41)の厚さの制御が困難になり、また、シンチレータ層(2)から発せられた可視光や可視光反射層(42)により反射された可視光が、接着層(41)で散乱しやすくなり、画像の解像度が低下するおそれがある。
接着層(41)がホットメルト接着剤からなる場合、接着層(41)における可視光反射層(42)と反対側の面(
図1では下面)、すなわち、シンチレータ層(2)との接着面は、その算術平均粗さ(Ra)が、好ましくは5〜100μm、より好ましくは10〜50μmとなされている。以上の構成によれば、可視光反射シート(4)をシンチレータ層(2)の一方の面に接着して積層する際に、空気が逃げやすくなり、気泡等をかみ込むことなく良好な状態で両者を積層一体化することができる。ホットメルト接着剤からなる接着層(41)は、好適には、溶融した樹脂をグラビアロールによってシンチレータ層(2)の一方の面に塗工することにより形成され、使用するグラビアロール表面の凹部のパターンによって、接着層(41)における可視光反射層(42)と反対側の面の算術平均粗さ(Ra)が上記範囲となるようにコントロールされる。
【0030】
可視光反射シート(4)の可視光反射層(42)は、シンチレータ層(2)にその一方の面側から入射した放射線(X)が変換されて発生した可視光(L)をシンチレータ層(2)の他方の面側、すなわち、センサパネル(3)の光電変換素子(31)に向かって反射させることにより、可視光(L)の利用効率を向上させ、また、面方向における光分布の均一化を促進する機能を有している。また、それと同時に、可視光反射層(42)によって、放射線検出装置(1)の外部から入射する電磁波等のノイズをブロックする効果も得られる。
可視光反射層(42)の材料としては、可視光(L)のほぼ全域にわたって高い反射率を示し、コストが安く、かつ金属薄膜のようにピンホール発生による性能低下のおそれが少ないアルミニウム箔が用いられ、好ましくは、JIS H4160(2006)で分類されるA1000系やA8000系(特に1N30、A8021、A8079)のアルミニウム箔が用いられる。
可視光反射層(42)に使用されるアルミニウム箔の厚さは、15〜100μm(好ましくは20〜80μm)となされる。アルミニウム箔の厚さが15μm未満であると、ピンホールが発生しやすくなる。一方、アルミニウム箔の厚さが100μmを超えると、製造コストも高くなってしまい、透過するX線の減衰もアルミニウム箔の厚さに対して著しく大きくなる。
アルミニウム箔における接着層(41)側の面は、算術平均粗さ(Ra)が0.1μm以下となされる。これにより、シンチレータ層(2)内で発生した可視光(L)を、散乱させることなく、シンチレータ層(2)の他方の面側、すなわちセンサパネル(3)の光電変換素子(31)に向かって、高効率で反射させることができる。
また、アルミニウム箔における保護層(43)側の面は、算術平均粗さ(Ra)が1μm以下となされる。上記の面の算術平均粗さが1μmを超えると、放射線検出装置用可視光反射シートをシンチレータ層に接着して積層する際、表面の凹凸が影響し、貼り斑が出てしまう可能性が高くなり、その結果、反射板としての機能が低下してしまう。
【0031】
可視光反射シート(4)の保護層(43)は、可視光反射層(42)の衝撃による破損や水分等による腐食を防止する機能を果たすものである。
保護層(43)には、1層または2層以上の樹脂フィルムが用いられる他、コート剤によって構成されていてもよい。樹脂フィルムとしては、薄くても優れた機械的強度が得られる2軸延伸樹脂フィルム、具体的には、2軸延伸ナイロン樹脂フィルム、2軸延伸ポリエチレンナフタレート樹脂フィルム、2軸延伸ポリエチレンテレフタレート樹脂フィルム等が好適に用いられ、それによって、可視光反射シート(4)をシンチレータ層(2)に接着する際や、外部から何らかの負荷が加えられた際にも、同シート(4)の強度を維持することが可能となる上、可視光反射シート、ひいては放射線検出装置の厚さを小さくすることができる。コート剤としては、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂などが挙げられる。
保護層(43)の厚さは、好ましくは10〜100μm、より好ましくは20〜50μmとなされる。保護層(43)の厚さが10μm未満であると、厚さ10μm以上の保護層(43)を持つ可視光反射シート(4)と比べると突刺強度が急激に小さくなり、また、保護層にピンホールが発生しやすくなるため可視光反射層(42)が腐食する可能性も高くなる。一方、保護層(43)の厚さが100μmを超えると、突刺強度は十分に取れているが、可視光反射シート(4)が厚く硬いものとなるため、同シート(4)が曲げにくくなり、シンチレータ層(2)への貼り付けが困難になる。
【実施例】
【0032】
次に、この発明の具体的実施例について説明する。
【0033】
<可視光反射シートの作製>
可視光反射層の構成材料として、JIS H4160で分類されるA1N30H−Oよりなる厚さ50μmのアルミニウム箔を用意した。また、アルミニウム箔の一方の面の算術平均粗さ(Ra)を0.05μmとし、同他方の面の算術平均粗さ(Ra)を0.2μmとした。
次に、アルミニウム箔の一方の面に、接着層としてホットメルト樹脂をグラビアロールによりコートした。接着層の厚さは50μmとした。また、接着層の外表面の算術平均粗さ(Ra)は40μmとした。
さらに、アルミニウム箔の他方の面に、保護層として、厚さ25μmのポリエチレンテレフタレート樹脂フィルムを、二液硬化型ポリエステルウレタン接着剤を用いて接着積層した。
こうして、実施例1の可視光反射シートを作製した。
【0034】
アルミニウム箔の一方の面(接着層側の面)の算術平均粗さ(Ra)を0.1μmとした点を除いて、実施例1と同様の要領で可視光反射シートを作製し、これを実施例2とした。
【0035】
保護層の厚さを12μmとした点を除いて、実施例1と同様の要領で可視光反射シートを作製し、これを実施例3とした。
【0036】
保護層の厚さを100μmとした点を除いて、実施例1と同様の要領で可視光反射シートを作製し、これを実施例4とした。
【0037】
接着層としてホットメルト樹脂の代わりに2液架橋型アクリル樹脂系粘着剤をグラビアロールにより30μmの厚さでコートし、同接着層の外表面(接着面)に厚さ25μmの離型フィルムを貼り付けた点を除いて、実施例1と同様の要領で可視光反射シートを作製し、これを実施例5とした。
【0038】
アルミニウム箔の一方の面(接着層側の面)の算術平均粗さ(Ra)を0.3μmとした点を除いて、実施例1と同様の要領で可視光反射シートを作製し、これを比較例1とした。
【0039】
保護層の厚さを8μmとした点を除いて、実施例1と同様の要領で可視光反射シートを作製し、これを比較例2とした。
【0040】
<シートの反射率の検証>
次に、実施例1〜
5および比較例1,2の可視光反射シートについて、顕微分光測定機を用いて、可視光反射層による可視光の反射率を測定した。
測定結果を表1に示す。
【0041】
【表1】
【0042】
表1に示す通り、アルミニウム箔における接着層側の面の算術平均粗さ(Ra)が0.1μmである実施例1〜5(および比較例2)の場合、75%を超える良好な反射率を示したが、同算術平均粗さ(Ra)が0.1μmを超える比較例1では、反射率が70%を切る結果となった。
【0043】
<保護層の強度>
実施例1〜5および比較例1,2の可視光反射シートについて、突刺強度を測定した。
測定は、フィルム突き刺し試験用治具を用いて、JIS Z1707:1997に準拠して行った。
結果は、上記の表1に示す通りであって、実施例1〜5(および比較例1)の場合、突刺強度が10Nを超える好結果となったが、比較例2では、突刺強度が約10Nであり、やや不十分であった。
【産業上の利用可能性】
【0044】
この発明は、例えば産業用非破壊検査装置や医療用X線装置等の放射線検出装置および同装置の可視光反射シートとして、好適に使用することができる。
【符号の説明】
【0045】
(1):放射線検出装置
(2):シンチレータ層
(3):センサパネル
(31):光電変換素子
(4):可視光反射シート
(41):接着層
(42):可視光反射層
(43):保護層
(X):放射線
(L):可視光