(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1〜4に開示された方式の装置では、二本の回転軸間で固定されずフリーな状態のベルト部位にカッター刃を挿入するため、ベルト背面を押圧するプッシュロールや、側面を挟持するガイドロールなどの、ベルト固定手段が必要になる。さらに、これらの固定手段でベルトを固定した場合でも、カッター刃の切リ込みに対して生じる幅方向へ「逃げる」抵抗力を抑制し切れず、その結果、カット後のベルトのバイアスカット面(カットライン)が内側に反った形状になり、ベルト側面が平滑でなくなる場合がある。このようなVベルトは、摩擦伝動面である側面がプーリと充分に接触できないので、ベルトの伝達効率が低下してしまう場合がある。
【0007】
また、金属製の刃物(丸刃など)を使用して、短繊維を含むベルトをバイアスカットする場合、短繊維のカットに負担が掛かるため、刃物の寿命は比較的短くなってしまう。
【0008】
更に、特許文献5〜6に開示された研磨具を使用した研磨工程では、カッターでベルトをバイアスカットした後、カッターとは別の研磨具を使用してバイアスカット面を研磨することから、装置の部品数や工程が多くなってしまう。
【0009】
そこで、本発明は、ベルトのバイアスカットと同時にバイアスカット面の研磨を可能として、ベルトのバイアスカット後にバイアスカット面(カットライン)が内側に反ることを防止し、伝動効率を向上可能にする、平滑なベルト側面を有するVベルトを形成可能なバイアスカット装置、及び、Vベルトの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、短繊維を含むベルトに対して張力を付与しつつ、ベルト周長方向に巻き掛けることが可能な少なくとも2本の軸と、
前記軸の一つを回転駆動可能な軸駆動部と、
前記軸間に巻き掛けられた前記ベルトの外周空間に配置されるダイヤモンドワイヤーソーと、
前記ダイヤモンドワイヤーソーを、前記軸間を周動する前記ベルトの、前記軸に巻き掛けられた部位に対して、斜めに進入させる方向に移動自在にする移動機構と、を備えていることを特徴とする、バイアスカット装置である。
【0011】
上記構成によれば、ダイヤモンドワイヤーソーが進入するベルト部位は、軸の外周により押圧されるためダイヤモンドワイヤーソーの切リ込みに対して生じるベルト厚み方向への「逃げ」を抑制することができる。また、ダイヤモンドワイヤーソーが進入するベルト部位は、軸の外周に対して面接触しているため、摩擦力を高めることができ、ダイヤモンドワイヤーソーの斜めの切リ込みに対して生じるベルト幅方向への「逃げ」も抑制することができる。
このように、ベルトをバイアスカットする際にベルトが「逃げ」るのを抑制して強固に固定することにより、バイアスカット面(カットライン)が内側に反ることを防止して、平滑なベルト側面を有するVベルトを形成することができる。
また、ベルトをバイアスカットすると同時に、ダイヤモンドワイヤーソーの表面に電着されたダイヤモンドの砥粒により、バイアスカット面を研磨(研削)することができる。このバイアスカット面の研磨の結果、ベルトに含有されている短繊維を、バイアスカットと同時に露出させることができる。研磨により短繊維がバイアスカット面から露出すると、露出した短繊維によりバイアスカット面の摩擦係数を低くすることができ、この摩擦係数の低下(摩擦力の低下)により、摩擦伝動面となるバイアスカット面とプーリとの摺動が円滑となって伝動効率を向上させることができる。
このように、従来、バイアスカットの後、別の工程として行っていたバイアスカット面を研磨する工程を、ベルトのバイアスカットと同時に行うことができる。
更に、ベルトをカットする場合、ダイヤモンドワイヤーソーを使用した場合、金属製の刃物(丸刃など)を使用した場合に比べて、寿命が向上する。特に、短繊維を含むベルトの場合、短繊維のカットに負担が掛かるため、その長寿命効果は顕著なものになる。
【0012】
また、本発明は、上記バイアスカット装置において、
前記ダイヤモンドワイヤーソーは、
複数のワイヤーガイドローラーと、
前記複数のワイヤーガイドローラーに巻き掛けられたダイヤモンドワイヤーと、
前記複数のワイヤーガイドローラーの一つを回転駆動可能なローラー駆動部と、
を備えていることを特徴としている。
【0013】
上記構成によれば、ローラー駆動部を駆動させて、複数のワイヤーガイドローラーに巻き掛けられたダイヤモンドワイヤーを周動させることにより、周動するダイヤモンドワイヤーをベルトに対して斜めに進入させることができる。
【0014】
また、本発明は、上記バイアスカット装置において、前記ダイヤモンドワイヤーに電着されているダイヤモンドの砥粒の大きさが、100番手〜140番手の範囲であることを特徴としている。
【0015】
ダイヤモンドワイヤーに電着されているダイヤモンドの砥粒の大きさを、100番手よりも小さい番手のものを使用すると、ダイヤモンドの砥粒が大きくなり過ぎ、ダイヤモンドワイヤーの表面が粗く摩擦係数が高いものになる。そうすると、バイアスカット面の研磨による短繊維の露出量が多くなり、バイアスカット面の摩擦係数が十分に低下しなくなる。その結果、摩擦伝動面となるバイアスカット面とプーリとの摺動が十分ではなくなり、Vベルトの伝動効率を十分に向上させることができなくなってしまう。
一方、ダイヤモンドワイヤーに電着されているダイヤモンドの砥粒の大きさを、140番手よりも大きい番手のものを使用すると、ダイヤモンドの砥粒が小さくなり過ぎ、ダイヤモンドワイヤーの表面の摩擦係数が低いものになる。そうすると、バイアスカット面の研磨による短繊維の露出量が少なくなり、バイアスカット面の摩擦係数が低くなり過ぎてしまう。その結果、ベルトが変速したりする際に、バイアスカット面とプーリとの間でスリップが起きやすくなり、ベルトの加速性能が低下してしまう。
そこで、ダイヤモンドワイヤーに電着されているダイヤモンドの砥粒の大きさを、100番手〜140番手の範囲にすることにより、ベルトの加速性能及び伝動効率を十分に確保することができるバイアスカット面の研磨が可能になる。
【0016】
また、本発明は、短繊維を含むベルトに対して張力を付与しつつ、2本の軸に巻き掛ける工程と、
前記2本の軸間に巻き掛けられた前記ベルトを周動させつつ、ダイヤモンドワイヤーソーを、前記軸間を周動する前記ベルトの、前記軸に巻き掛けられた部位に対して、斜めに進入させ、前記ベルトをバイアスカットすると同時に、前記バイアスカットした面を研磨して前記短繊維を露出させる工程と、
を含むことを特徴とする、Vベルトの製造方法である。
【0017】
上記製造方法によれば、ダイヤモンドワイヤーソーが進入するベルト部位は、軸の外周により押圧されるためダイヤモンドワイヤーソーの切リ込みに対して生じるベルト厚み方向への「逃げ」を抑制することができる。また、ダイヤモンドワイヤーソーが進入するベルト部位は、軸の外周に対して面接触しているため、摩擦力を高めることができ、ダイヤモンドワイヤーソーの斜めの切リ込みに対して生じるベルト幅方向への「逃げ」も抑制することができる。
このように、ベルトをバイアスカットする際にベルトが「逃げ」るのを抑制して強固に固定することにより、バイアスカット面(カットライン)が内側に反ることを防止して、平滑なベルト側面を有するVベルトを形成することができる。
また、ベルトをバイアスカットすると同時に、ダイヤモンドワイヤーソーの表面に電着されたダイヤモンドの砥粒により、バイアスカット面を研磨(研削)することができる。このバイアスカット面の研磨の結果、ベルトに含有されている短繊維を、バイアスカットと同時に露出させることができる。研磨により短繊維がバイアスカット面から露出すると、露出した短繊維によりバイアスカット面の摩擦係数を低くすることができ、この摩擦係数の低下(摩擦力の低下)により、摩擦伝動面となるバイアスカット面とプーリとの摺動が円滑となって伝動効率を向上させることができる。
このように、従来、バイアスカットの後、別の工程として行っていたバイアスカット面を研磨する工程を、ベルトのバイアスカットと同時に行うことができる。
更に、ベルトをカットする場合、ダイヤモンドワイヤーソーを使用した場合、金属製の刃物(丸刃など)を使用した場合に比べて、寿命が向上する。特に、短繊維を含むベルトの場合、短繊維のカットに負担が掛かるため、その長寿命効果は顕著なものになる。
【発明の効果】
【0018】
ベルトのバイアスカットと同時にバイアスカット面の研磨を可能として、ベルトのバイアスカット後にバイアスカット面(カットライン)が内側に反ることを防止し、伝動効率を向上可能にする、平滑なベルト側面を有するVベルトを形成可能なバイアスカット装置、及び、Vベルトの製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(Vベルト1)
先ず、本実施形態のバイアスカット装置20により製造されるVベルト1の構成について、
図1を参照して説明する。このVベルト1は、繊維コードからなる心線3が接着ゴム層2内に埋め込まれ、この接着ゴム層2の上部には補強布4を含む伸張ゴム層5が、下部には同様に補強布4を含む圧縮ゴム層6が配置されている。圧縮ゴム層6には、一定ピッチでベルト周長方向に沿ってコグ谷部7とコグ山部8とを交互に配したコグ部9が設けられている。
【0021】
ベルト側面10の形状は、伸張ゴム層5の背面12に対して直角である直角カット面13と、後述のバイアスカット装置20で形成されるバイアスカット面15と、を有するものとなっている。具体的には、伸張ゴム層5の背面12から心線3の上端Pまでの距離をLとしたとき、伸張ゴム層5の背面12からLの90〜100%に相当する境界位置Uまでの領域が、前記直角カット面13になっている。一方、上記境界位置Uから圧縮ゴム層6の底面14にかけての領域が、バイアスカット面15になっている。
【0022】
心線3としては、ポリエステル繊維、アラミド繊維、ガラス繊維が使用され、中でも、エチレン−2,6−ナフタレートを主たる構成単位とするポリエステル繊維フィラメント群を寄り合わせた総デニール数が4,000〜8,000の接着処理したコードが、ベルトスリップ率を低くでき、ベルト寿命を延長させるために好ましい。本実施形態において、コードの上撚り数は10〜23/10cmであり、また下撚り数は17〜38/10cmである。総デニール数が4,000未満の場合には、心線のモジュラス、強力が低くなってしまい、また8,000を超えると、ベルトの厚みが厚くなって、屈曲疲労性が良好でない。
【0023】
上記圧縮ゴム層6及び伸張ゴム層5に使用するゴムとしては、天然ゴム、ブチルゴム、スチレン・ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、エチレン・プロピレンゴム(EPM、EPDM)、アルキル変性クロロスルフォン化ポリエチレン、水素化ニトリルゴム、不飽和カルボン酸金属塩を含む水素化ニトリルゴム、等のゴム材の単独、またはこれらの混合物が使用される。
【0024】
そして、上記圧縮ゴム層6に含まれる短繊維16としては、アラミド繊維、ポリアミド繊維、ポリエステル繊維、綿等の繊維が挙げられ、繊維の長さは繊維の種類によって異なるが1〜10mm程度であり、例えばアラミド繊維であると3〜5mm程度、ポリアミド繊維、ポリエステル繊維、綿であると5〜10mm程度のものが用いられる。そして、上記圧縮ゴム層6中の短繊維16の方向は、ベルトの周長方向に対して垂直方向を向いているのを90°としたときに、殆どの短繊維16が70〜110°の範囲内に配向されていることが好ましい。
【0025】
伸張ゴム層5には、短繊維16を含めなくても良い。また、接着ゴム層2には、上記短繊維16を含めても良いが、含めない方が好ましい。
【0026】
補強布4は、綿、ポリエステル繊維、ナイロン等からなり、平織、綾織、朱子織等に製織した布で、経糸と緯糸との交差角を90°〜120°程度に広角度化した織布でもよい。補強布4はRFL処理した後、ゴム組成物のフリクション(すり込み)、積層などの処理をしてゴム付織布とする。RFL液はレゾルシンとホルムアルデヒドとの初期縮合物をラテックスに混合したものであり、ここで使用するラテックスとしてはクロロプレンゴム、スチレン・ブタジエン・ビニルピリジン三元共重合体、水素化ニトリルゴム、ニトリルゴムなどである。
【0027】
(バイアスカット装置20)
次に、上記Vベルト1を製造するためのバイアスカット装置20の構成について、
図2〜
図5を参照しながら説明する。
【0028】
図2に示すように、このバイアスカット装置20は、その本体23に、断面矩形状のベルト40を張架することが可能な、互いに平行な駆動軸21と従動軸22を備えている。この2本の駆動軸21及び従動軸22は、本体23の前面から手前側に向けて突出されている。また、従動軸22は、駆動軸21に対して近接または離間する方向に移動可能であり、様々な周長のベルト40を張架できるようになっている。
【0029】
駆動軸21は、本体23に内蔵されたモータ等の原動機24(軸駆動部:図示せず)に連結されており、この原動機24からの駆動力を受けて回転して、ベルト40を走行させることができるようになっている。
【0030】
なお、この矩形断面のベルト40は、圧縮ゴム層6と伸張ゴム層5との間に心線3を介在させるようにこれらを積層一体化したベルトスリーブを、所定幅に直角にカットして製造される。
図2ではベルト40のコグ部9を図示していないが、ベルト40はコグ部9を外周側に向けた状態でバイアスカット装置20にセットされる。
【0031】
ここで、
図5に示すように、駆動軸21の外周の両端には、ベルト40を幅方向で挟持するフランジ211・212が設けられている。更に、駆動軸21の外周、及び、フランジ211の内側(ベルト40の収容側)には、駆動軸21の外周に沿ったリング形状のキャストナイロン製のリング213(樹脂体)が設けられている。また、フランジ212の内側にも、リング形状のキャストナイロン製のリング214が設けられている。リング213・214は、後述する第1ダイヤモンドワイヤーソー51のワイヤー516、及び、第2ダイヤモンドワイヤーソー52のワイヤー526と駆動軸21とが直接接触しないように設けるものであり、素材としては樹脂が好ましい(なお、リング213・214は、交換可能とされている)。これにより、
図5に示すように、リング213が設けられたフランジ211とリング214が設けられたフランジ212との間にベルト40を収容することができる。
【0032】
また、フランジ211とフランジ212との幅は図示しないエアシリンダによって変更可能(チャッキング可能)に構成されており、これにより、ベルト40の側面をフランジ211とフランジ212とで挟持した状態で、駆動軸21と従動軸22との間にベルト40を掛け渡すことが可能になっている。
【0033】
従動軸22は、駆動軸21同様に、その外周の両端に、ベルト40を幅方向で挟持するフランジ221・222が設けられている(
図2参照)。また、フランジ221とフランジ222との幅は図示しないエアシリンダによって変更可能(チャッキング可能)に構成されている。また、従動軸22は、駆動軸21に対して近接または離間する方向に移動可能にする駆動機構(図示せず)に連結されている。これにより、駆動軸21と従動軸22との間に、ベルト40に対して張力を付与しつつ、ベルト周長方向に巻き掛けることができる。
【0034】
次に、
図2に示すように、駆動軸21に向かって左斜め上方向には、第1ダイヤモンドワイヤーソー51を備えた第1ワイヤーソー部41が設けられている。また、駆動軸21に向かって右斜め上方向には、第2ダイヤモンドワイヤーソー52を備えた第2ワイヤーソー部42が設けられている。即ち、第1ダイヤモンドワイヤーソー51及び第2ダイヤモンドワイヤーソー52は、駆動軸21と従動軸22との間に巻き掛けられたベルト40の外周空間側に配置されている。第1ダイヤモンドワイヤーソー51は、ベルト40の一方端(
図2の手前側)をバイアスカット面15に沿って斜めにカットする役割を果たす。第2ダイヤモンドワイヤーソー52は、ベルト40の他端(
図2の奥側)をバイアスカット面15に沿って斜めにカットする役割を果たす。
【0035】
第1ワイヤーソー部41(移動機構)は、第1台座411と、第1台座411上を駆動軸21に対して平行方向にスライド可能であり、駆動軸21の水平面に対して45°の傾斜面412aを有する第2台座412と、第2台座412の傾斜面412a上を円弧方向にスライド可能な第3台座413と、第3台座413上を駆動軸21の中心方向にスライド可能な第4台座414と、第4台座414上に配置された、第1ダイヤモンドワイヤーソー51とを備えている。
【0036】
第1ダイヤモンドワイヤーソー51は、同一平面上に配置した3つのワイヤーガイドローラー511・512・513と、3つのワイヤーガイドローラー511・512・513を回転可能に軸支する支持部514と、ワイヤーガイドローラー511に回転駆動力を付与するモータ515(ローラー駆動部)と、3つのワイヤーガイドローラー511・512・513の外周に設けられたそれぞれの溝に巻き掛けられたダイヤモンドワイヤー516とを備えている。なお、図示しないが、ダイヤモンドワイヤー516の張力を調整できるように、テンショナーや、ワイヤーガイドローラー512のワイヤーガイドローラー511・513に対する相対的な距離を伸縮できる機構などを備えている。
【0037】
ダイヤモンドワイヤー516は、
図4に示すように、ワイヤーにダイヤモンド砥粒を電着させた構成で、そのダイヤモンド砥粒の大きさは、100番手〜140番手の範囲のものを使用している。
【0038】
ダイヤモンドワイヤー516に電着されているダイヤモンド砥粒の大きさを、100番手よりも小さい番手のものを使用すると、ダイヤモンドの砥粒が大きくなり過ぎ、ダイヤモンドワイヤー516の表面が粗く摩擦係数が高いものになる。そうすると、ベルト40のバイアスカット面15の研磨による短繊維16の露出量が多くなり、バイアスカット面15の摩擦係数が十分に低下しなくなる。その結果、摩擦伝動面となるバイアスカット面15とプーリとの摺動が十分ではなくなり、Vベルト1の伝動効率を十分に向上させることができなくなってしまう。一方、ダイヤモンドワイヤー516に電着されているダイヤモンド砥粒の大きさを、140番手よりも大きい番手のものを使用すると、ダイヤモンド砥粒が小さくなり過ぎ、ダイヤモンドワイヤー516の表面の摩擦係数が低いものになる。そうすると、ベルト40のバイアスカット面15の研磨による短繊維16の露出量が少なくなり、バイアスカット面15の摩擦係数が低くなり過ぎてしまう。その結果、Vベルト1が変速したりする際に、バイアスカット面15とVベルト1が巻き掛けられたプーリとの間でスリップが起きやすくなり、Vベルト1の加速性能が低下してしまう。そこで、ダイヤモンドワイヤー516に電着されているダイヤモンド砥粒の大きさを、100番手〜140番手の範囲にすることにより、Vベルト1の加速性能及び伝動効率を十分に確保することができるバイアスカット面15の研磨が可能になる。
【0039】
また、ダイヤモンドワイヤー516は、その線径が0.1mm〜0.3mmの範囲のものを使用している。ダイヤモンドワイヤー516の線径が細い場合、剛性が下がるので硬い材料で構成されたベルト40のカットには不向きであるが、ベルト40のカット及び研磨時の材料屑を少なくするメリットがある。一方、ダイヤモンドワイヤー516の線径が太い場合、ベルト40のカット及び研磨時の材料屑が多くなるが、剛性は上がるので硬い材料で構成されたベルト40のカットに対応可能になる。
【0040】
第1台座411は、第2台座412を駆動軸21に対して平行方向に0.01mm単位でスライド可能なサーボ制御器(図示せず)を有している。これにより、ダイヤモンドワイヤー516のベルト40の幅方向に対する進入位置を調整することができる。第2台座412では、傾斜面412aに設けられた円弧状のレールに配置された第3台座413をスライドすることができる。これにより、ダイヤモンドワイヤー516のベルト40に対する進入角度を調整することができる。第3台座413は、第4台座414を駆動軸21の中心方向に0.01mm単位でスライド可能なサーボ制御器413aを有している。これにより、ダイヤモンドワイヤー516のベルト40に対する進入距離及び進入速度を調整することができる。
【0041】
第1ダイヤモンドワイヤーソー51において、モータ515が駆動されると、モータ515が回転することによりワイヤーガイドローラー511が回転し、3つのワイヤーガイドローラー511・512・513に巻き掛けられたダイヤモンドワイヤー516が、ベルト40の走行方向と同じ方向に走行する(例えば、走行速度は1500m/min)。そして、ワイヤーガイドローラー512とワイヤーガイドローラー513との間を走行するダイヤモンドワイヤー516によって、駆動軸21と従動軸22との間を走行するベルト40の側面を斜めにカットして、ベルト40にバイアスカット面15を形成すると同時に、バイアスカット面15を研磨(研削)する。
【0042】
第2ワイヤーソー部42(移動機構)は、第1台座421と、第1台座421上を駆動軸21に対して平行方向にスライド可能であり、駆動軸21の水平面に対して45°の傾斜面422aを有する第2台座422と、第2台座422の傾斜面422a上を円弧方向にスライド可能な第3台座423と、第3台座423上を駆動軸21の中心方向にスライド可能な第4台座424と、第4台座424上に配置された、第2ダイヤモンドワイヤーソー52とを備えている。
【0043】
第2ダイヤモンドワイヤーソー52は、同一平面上に配置した3つのワイヤーガイドローラー521・522・523と、3つのワイヤーガイドローラー521・522・523を回転可能に軸支する支持部524と、ワイヤーガイドローラー521に回転駆動力を付与するモータ525(ローラー駆動部)と、3つのワイヤーガイドローラー521・522・523の外周に設けられたそれぞれの溝に巻き掛けられたダイヤモンドワイヤー526とを備えている。なお、第2ワイヤーソー部42の各機構や、第2ダイヤモンドワイヤーソー52の詳細については、第1ワイヤーソー部41及び第1ダイヤモンドワイヤーソー51と同様であるため説明を省略する。
【0044】
上記第1ダイヤモンドワイヤーソー51(第2ダイヤモンドワイヤーソー52)を使用することにより、モータ515(モータ525)を駆動させて、3本のワイヤーガイドローラー511・512・513(ワイヤーガイドローラー521・522・523)に巻き掛けられたダイヤモンドワイヤー516(ダイヤモンドワイヤー526)を周動させることにより、周動するダイヤモンドワイヤー516(ダイヤモンドワイヤー526)をベルト40に対して斜めに進入させることができる。
【0045】
本実施形態のバイアスカット装置20は、図示しないが、コンピュータ(制御部)、入力部(操作ボタン、キーボード、タッチパネル等)、記憶装置を備えており、上記の各サーボ制御器やモータ515やモータ525等は、コンピュータによってプログラム制御され、入力部からの情報の入力により駆動制御可能となっている。これにより、バイアスカット装置20では、第1ワイヤーソー部41による第1ダイヤモンドワイヤーソー51及び第2ワイヤーソー部42による第2ダイヤモンドワイヤーソー52の、ベルト40の厚み方向への移動制御、ベルト40の幅方向への移動制御、ベルト40に対する進入角度の調整制御、ダイヤモンドワイヤー516・526の走行速度制御、駆動軸21と従動軸22との間に巻き掛けられたベルト40の走行速度制御等が可能になっている。
【0046】
(Vベルト1の製造方法)
次に、バイアスカット装置20を使用してV字状のVベルト1を製造する方法について説明する。
【0047】
先ず、短繊維16を含む、矩形断面のベルト40を、駆動軸21のフランジ211とフランジ212との間、及び、従動軸22のフランジ221とフランジ222との間に巻き掛ける。ここで、ベルト40は、コグ部9を外周側に向けた状態で駆動軸21と従動軸22との間に巻き掛けられる。
【0048】
その後、駆動軸21のエアシリンダを駆動すると、ベルト40の側面を駆動軸21のフランジ211とフランジ212とで挟持する。同様に、従動軸22のエアシリンダを駆動すると、ベルト40の側面を従動軸22のフランジ221とフランジ222とで挟持する。これにより、ベルト40を駆動軸21と従動軸22との間に張架することができる。また、従動軸22に連結された駆動機構(図示せず)によって、従動軸22を上下方向に移動調整させることにより、ベルト40の周長に合わせたテンション(張力)に設定することができる。
【0049】
次に、入力部によって、ベルト40の両端に形成するバイアスカット面15の傾斜角度(進入角度)やベルト40の幅方向に対する進入位置を入力する。その他、入力部からは、ベルト40の幅、厚み、周長などのベルト40に関する情報が入力される。なお、入力されたベルト40の情報は記憶装置に記憶される。
【0050】
その後、入力部からのスタート指令により、バイアスカット装置20は、記憶装置に記憶されたベルト40の情報(バイアスカット面15の進入角度、ベルト40の幅方向に対する進入位置、ベルト40の幅・厚み・周長等)に基づき、コンピュータによってプログラム制御される。
【0051】
具体的なプログラム制御として以下の工程を実行する。まず、
図2に示すように、原動機で駆動軸21を回転駆動し、ベルト40に張力を付与しつつ走行させる。
【0052】
次に、第1ワイヤーソー部41に関して、各サーボ制御器により、第1ダイヤモンドワイヤーソー51のダイヤモンドワイヤー516のベルト40の幅方向に対する進入位置、及び、ベルト40に対する進入角度が調整された後、モータ515の駆動により3つのワイヤーガイドローラー511・512・513に巻き掛けられたダイヤモンドワイヤー516が走行される。そして、
図3及び
図5に示すように、サーボ制御器413aにより、ダイヤモンドワイヤー516がベルト40の一方端(
図2の手前側)に対して駆動軸21の中心方向に所定の進入速度で進入する。これにより、ベルト40の一端側の側面を斜め(入力した進入角度)にカットして、ベルト40の一端側にバイアスカット面15を形成する。なお、本実施形態では、ダイヤモンドワイヤー516を、
図3に示すように、駆動軸21を正面から見て、ベルト40が巻き掛けられた駆動軸21の頂点から左に45°の位置で、ベルト40に進入させている。
【0053】
同様に、第2ワイヤーソー部42に関して、各サーボ制御器により、第2ダイヤモンドワイヤーソー52のダイヤモンドワイヤー526のベルト40の幅方向に対する進入位置、及び、ベルト40に対する進入角度が調整された後、モータ525の駆動により3つのワイヤーガイドローラー521・522・523に巻き掛けられたダイヤモンドワイヤー526が走行される。そして、
図3及び
図5に示すように、サーボ制御器423aにより、ダイヤモンドワイヤー526がベルト40の他端(
図2の奥側)に対して駆動軸21の中心方向に所定の進入速度で進入する。これにより、ベルト40の他端側の側面を斜め(入力した進入角度)にカットして、ベルト40の他端側にバイアスカット面15を形成する。なお、本実施形態では、ダイヤモンドワイヤー526を、
図3に示すように、駆動軸21を正面から見て、ベルト40が巻き掛けられた駆動軸21の頂点から右に45°の位置で、ベルト40に進入させている。
【0054】
上記のように、第1ワイヤーソー部41及び第2ワイヤーソー部42は、駆動軸21に巻き掛けられたベルト40の外周側から内周側に向けてベルト幅方向の断面幅が広がるように、第1ダイヤモンドワイヤーソー51のダイヤモンドワイヤー516及び第2ダイヤモンドワイヤーソー52のダイヤモンドワイヤー526を斜め方向に移動させてバイアスカットする(
図5参照)。
【0055】
その結果、ベルト40をバイアスカットすると同時に、ダイヤモンドワイヤー516・526の表面に電着されたダイヤモンドの砥粒により、バイアスカット面15を研磨(研削)することができる。このバイアスカット面15の研磨により、ベルト40に含有されている短繊維16を、バイアスカットと同時に露出させることができる。
【0056】
バイアスカット終了後は、ベルト40の掛け外しを阻害しない位置まで第1ワイヤーソー部41及び第2ワイヤーソー部42を退避させる。
【0057】
上記動作がプログラム制御により行われた結果、ベルト40の両端の側面が、それぞれ斜めにカットされ、カットされたバイアスカット面15に短繊維16が露出した、断面V字状のVベルト1が完成する(
図1参照)。
【0058】
(効果)
上記構成によれば、第1ダイヤモンドワイヤーソー51のダイヤモンドワイヤー516及び第2ダイヤモンドワイヤーソー52のダイヤモンドワイヤー526が進入するベルト40は、駆動軸21の外周により押圧されるためダイヤモンドワイヤー516・526の切リ込みに対して生じるベルト厚み方向への「逃げ」を抑制することができる。また、ダイヤモンドワイヤー516・526が進入するベルト40の背面12は、駆動軸21の外周に対して面接触しているため、摩擦力を高めることができ、ダイヤモンドワイヤー516・526の斜めの切リ込みに対して生じるベルト幅方向への「逃げ」も抑制することができる。
このように、ベルト40をバイアスカットする際にベルト40が「逃げ」るのを抑制して強固に固定することにより、バイアスカット面15(カットライン)が内側に反ることを防止して、平滑なベルト側面(バイアスカット面15)を有するVベルト1を形成することができる。
また、ベルト40をバイアスカットすると同時に、ダイヤモンドワイヤー516・526の表面に電着されたダイヤモンドの砥粒により、バイアスカット面15を研磨(研削)することができる。このバイアスカット面15の研磨の結果、ベルト40に含有されている短繊維16を、バイアスカットと同時に露出させることができる。研磨により短繊維16がバイアスカット面15から露出すると、露出した短繊維16によりバイアスカット面15の摩擦係数を低くすることができ、この摩擦係数の低下(摩擦力の低下)により、摩擦伝動面となるバイアスカット面15とVベルトが巻き掛けられたプーリとの摺動が円滑となって伝動効率を向上させることができる。
このように、従来、バイアスカットの後、別の工程として行っていたバイアスカット面15を研磨する工程を、ベルト40のバイアスカットと同時に行うことができる。
更に、ベルト40をカットする場合、第1ダイヤモンドワイヤーソー51及び第2ダイヤモンドワイヤーソー52を使用した場合、金属製の刃物(丸刃など)を使用した場合に比べて、寿命が向上する。特に、短繊維16を含むベルト40の場合、短繊維16のカットに負担が掛かるため、その長寿命効果は顕著なものになる。
【0059】
(その他の実施形態)
以上に本発明の好適な実施形態を示したが、上記の実施形態は更に以下のように変更することができる。
【0060】
上記実施形態では、バイアスカット装置20は、駆動軸21と従動軸22の2本の軸を備えた構成としたが、これに限らず、例えば3本以上配置しても良い。
【0061】
また、上記実施形態では、駆動軸21に巻き掛けられたベルト40に対して、ダイヤモンドワイヤー516・526を進入させてバイアスカット及び研磨をしているが、従動軸22に巻き掛けられたベルト40に対して、ダイヤモンドワイヤー516・526を進入させてバイアスカット及び研磨する構成にしてもよい。
【0062】
また、上記実施形態に係るバイアスカット装置20では、
図2に示すように、駆動軸21を上側、従動軸22を下側に配置し、ベルト40を上下方向に巻き掛ける構成をしているが、駆動軸21と従動軸22とを水平方向に配置し、ベルト40を水平方向に巻き掛ける構成にしてもよい。
【0063】
具体的には、駆動軸21の中心軸及び従動軸22の中心軸が水平方向に対して垂直になるように配置し、ベルト40の両側面が上下方向を向くように、ベルト40を駆動軸21と従動軸22との間に巻き掛ける。また、駆動軸21の中心軸及び従動軸22の中心軸が水平方向になるように配置し、ベルト40の内周側が上下方向を向くように、ベルト40を駆動軸21と従動軸22との間に巻き掛ける。
【0064】
本実施形態のように、駆動軸21を上側、従動軸22を下側に配置し、ベルト40を上下方向に巻き掛ける構成のバイアスカット装置20(
図2参照)では、幅(水平方向)を取らないため設置スペースを最小限にすることができる利点がある。もっとも、設置スペース(工場等の天井など)との関係で、駆動軸21と従動軸22との間の距離(上下方向の距離)について制限が生じる場合がある。即ち、駆動軸21と従動軸22との間に巻き掛けるベルト40の周長に制限が生じることになる。
【0065】
一方、駆動軸21と従動軸22とを水平方向に配置し、ベルト40を水平方向に巻き掛ける構成にした場合、水平方向の設置スペースを確保することができれば、駆動軸21と従動軸22との間の距離(水平方向の距離)を比較的大きく設定することが可能となる。これにより、駆動軸21と従動軸22との間に巻き掛けるベルト40を比較的長いものにすることができる(長尺のベルトに最適)。