特許第6872413号(P6872413)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6872413
(24)【登録日】2021年4月21日
(45)【発行日】2021年5月19日
(54)【発明の名称】車両用灯具
(51)【国際特許分類】
   B60Q 1/14 20060101AFI20210510BHJP
   F21S 41/675 20180101ALI20210510BHJP
   F21S 41/663 20180101ALI20210510BHJP
   F21W 102/00 20180101ALN20210510BHJP
   F21Y 115/10 20160101ALN20210510BHJP
   F21Y 115/30 20160101ALN20210510BHJP
【FI】
   B60Q1/14 H
   F21S41/675
   F21S41/663
   F21W102:00
   F21Y115:10
   F21Y115:30
【請求項の数】11
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2017-90377(P2017-90377)
(22)【出願日】2017年4月28日
(65)【公開番号】特開2018-187979(P2018-187979A)
(43)【公開日】2018年11月29日
【審査請求日】2020年3月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001133
【氏名又は名称】株式会社小糸製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100109047
【弁理士】
【氏名又は名称】村田 雄祐
(74)【代理人】
【識別番号】100109081
【弁理士】
【氏名又は名称】三木 友由
(72)【発明者】
【氏名】菊池 賢
(72)【発明者】
【氏名】村上 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】村松 隆雄
【審査官】 飯塚 向日子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−205357(JP,A)
【文献】 特開2017−037806(JP,A)
【文献】 特開2016−074235(JP,A)
【文献】 特開2014−216049(JP,A)
【文献】 特開2015−149307(JP,A)
【文献】 特開2011−249377(JP,A)
【文献】 国際公開第2016/167250(WO,A1)
【文献】 国際公開第2016/104319(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2015/0285458(US,A1)
【文献】 独国特許出願公開第102015219903(DE,A1)
【文献】 中国特許出願公開第106133438(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60Q 1/14
F21S 41/663
F21S 41/675
F21W 102/00
F21Y 115/10
F21Y 115/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のチャンネルに分けられる複数の発光ユニットを含み、同一のチャンネルに含まれる複数の発光ユニットは直列に接続されている光源部と、
前記光源部の出射光を受け、所定の周期運動を繰り返すことにより車両前方で走査するスキャン光学系と、
前記複数の発光ユニットを駆動する点灯回路と、
を備え、
前記点灯回路は、
前記複数のチャンネルに対応する複数の点灯ユニットと、
前記複数の点灯ユニットを制御するコントローラと、
を備え、
各点灯ユニットは、
対応するチャンネルに含まれる前記複数の発光ユニットに駆動電流を供給する定電流ドライバと、
それぞれが、対応するチャンネルに含まれる前記複数の発光ユニットの対応するひとつと並列なバイパス経路を形成可能な複数のバイパススイッチと、
を含み、
前記コントローラは、複数の配光モードが切替え可能であり、前記複数の点灯ユニットそれぞれについて配光モードごとに、(i)前記定電流ドライバそれぞれが生成すべき駆動電流と、(ii)1走査期間において前記複数のバイパススイッチそれぞれがオンすべき期間と、が規定されていることを特徴とする車両用灯具。
【請求項2】
同一のチャンネルに含まれる複数の発光ユニットは仮想スクリーン上の同一の高さを照射するように配置されることを特徴とする請求項1に記載の車両用灯具。
【請求項3】
前記複数の発光ユニットは高さ方向に2段以上に配置され、最下段の発光ユニットの個数が最も多いことを特徴とする請求項2に記載の車両用灯具。
【請求項4】
前記最下段の複数の発光ユニットは、3個以上のチャンネルに分けられることを特徴とする請求項3に記載の車両用灯具。
【請求項5】
前記複数の発光ユニットは、それぞれの出射光が同一時刻において仮想スクリーン上の異なる箇所を照射するように配置されることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の車両用灯具。
【請求項6】
前記複数の発光ユニットはN段(N≧3)に配置され、下から1段目、2段目、…N段目の発光ユニットに供給される電流量をI、I、…Iとするとき、前記複数の配光モードのいずれにおいても、
…≧I
の関係が成り立つことを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の車両用灯具。
【請求項7】
前記複数の発光ユニットはN段(N≧3)に配置され、下から1段目、2段目、…N段目の発光ユニットに供給される電流の最大電流を1(MAX)2(MAX)、…IN(MAX)するとき、
1(MAX)>I2(MAX)…>IN(MAX)
の関係が成り立つことを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の車両用灯具。
【請求項8】
前記複数の発光ユニットは、U字型、逆さのT字型、倒れたE字型または倒れたL字型で配置されることを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の車両用灯具。
【請求項9】
前記コントローラはさらに、各発光ユニットの出射光が遮光領域を通過する間、対応するバイパススイッチによりバイパス経路を形成することを特徴とする請求項1から8のいずれかに記載の車両用灯具。
【請求項10】
前記車両用灯具は、前記スキャン光学系の出射光が形成する集光領域と、非スキャン光学系の出射光が形成する拡散領域とを重ね合わせることを特徴とする請求項1から9のいずれかに記載の車両用灯具。
【請求項11】
スキャン式の車両用灯具であり、
独立に点消灯が切りかえ可能な複数の発光ユニットを備え、
前記複数の発光ユニットは、それぞれの出射光が仮想スクリーン上に形成する照射スポットの走査の重ね合せにより、所望の配光が形成されるように配置され、
前記複数の発光ユニットは複数のチャンネルに分割されており、同一チャンネルに含まれるすべての少なくともひとつの発光ユニットには、同一の直流の駆動電流が供給され、前記駆動電流は走査期間中、一定に保たれ、
チャンネルごとの駆動電流の電流量は、配光モードに応じて設定され、また各発光ユニットは、走査期間中の配光モードに応じて規定される所定のタイミングで、点灯、消灯が切りかえられることを特徴とする車両用灯具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車などに用いられる車両用灯具に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用灯具は、一般にロービームとハイビームとを切りかえることが可能である。ロービームは、近方を所定の照度で照明するものであって、対向車や先行車にグレアを与えないよう配光規定が定められており、主に市街地を走行する場合に用いられる。一方、ハイビームは、前方の広範囲および遠方を比較的高い照度で照明するものであり、主に対向車や先行車が少ない道路を高速走行する場合に用いられる。したがって、ハイビームはロービームと比較してより運転者による視認性に優れているが、車両前方に存在する車両の運転者や歩行者にグレアを与えてしまうという問題がある。
【0003】
近年、車両の周囲の状態にもとづいて、ハイビームの配光パターンを動的、適応的に制御するADB(Adaptive Driving Beam)技術が提案されている。ADB技術は、車両の前方の先行車、対向車や歩行者の有無を検出し、車両あるいは歩行者に対応する領域を減光するなどして、車両あるいは歩行者に与えるグレアを低減するものである。
【0004】
ADB機能を実現する方式として、アクチュエータを制御するシャッタ方式、ロータリー方式、LEDアレイ方式などが提案されている。シャッター方式やロータリー方式は、消灯領域(遮光領域)の幅を連続的に変化させることが可能であるが、消灯領域の数が1個に制限される。LEDアレイ方式は、消灯領域を複数個、設定することが可能であるが、消灯領域の幅が、LEDチップの照射幅に制約されるため、離散的となる。
【0005】
本出願人は、これらの問題点を解決可能なADB方式として、スキャン方式を提案している(特許文献2参照)。スキャン方式とは、回転するリフレクタ(ブレード)に光を入射し、リフレクタの回転位置に応じた角度で入射光を反射して反射光を車両前方で走査しつつ、光源の点消灯あるいは光量を、リフレクタの回転位置に応じて変化させることで、車両前方に、所望の配光パターンを形成するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−205357号公報
【特許文献2】特開2012−224317号公報
【特許文献3】国際公開WO2016/167250A1号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明者らは、高速道路や市街地などの走行シーンに応じて配光モードを切りかえる機能について検討した。
【0008】
複数の配光モードを切りかえる場合、モードごとに、仮想スクリーン上の同一部分(サブ領域と称する)の照度が大きく異なることとなる。言い換えれば、LEDチップなどの発光素子の輝度を、配光モードに応じて大きく変化させる必要がある。
【0009】
発光素子の輝度を広大なミックレンジで制御したい場合、一般的にPWM調光が用いられる。アレイ方式では、1つの発光素子(LEDチップ)は、ひとつの領域と対応付けられるため、1つの発光素子をPWM調光すれば、対応する領域の輝度を変化させることができるため、アレイ方式とPWM調光との整合性は高いと言える。
【0010】
一方、スキャン方式では、PWM調光の採用が難しい。なぜならスキャン方式においては、発光素子のオン、オフが、リフレクタの周期運動と同期して制御されるところ、これにPWM調光を併用する場合、リフレクタの周期運動と同期した制御に加えて、PWM周期と同期した制御が併存することとなり、制御が複雑化するからである。このような複雑な制御は、安価なマイコンでは難しく、高価なマイコンあるいはCPUが必要となる。
【0011】
本発明は係る課題に鑑みてなされたものであり、そのある態様の例示的な目的のひとつは、複数の配光モードを切りかえ可能な車両用灯具の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明のある態様は、車両用灯具に関する。車両用灯具は、複数のチャンネルに分けられる複数の発光ユニットを含み、同一のチャンネルに含まれる複数の発光ユニットは直列に接続されている光源部と、複数の発光ユニットの出射光を受け、所定の周期運動を繰り返すことにより車両前方で走査するスキャン光学系と、複数の発光ユニットを駆動する点灯回路と、を備える。点灯回路は、複数のチャンネルに対応する複数の点灯ユニットと、複数の点灯ユニットを制御するコントローラと、を備える。
各点灯ユニットは、対応するチャンネルに含まれる複数の発光ユニットに駆動電流を供給する定電流ドライバと、それぞれが、対応するチャンネルに含まれる複数の発光ユニットの対応するひとつと並列なバイパス経路を形成可能な複数のバイパススイッチと、を含む。
コントローラは、複数の配光モードが切替え可能であり、複数の点灯ユニットそれぞれについて、配光モードごとに、(i)定電流ドライバそれぞれが生成すべき駆動電流と、(ii)1走査期間において複数のバイパススイッチそれぞれがオンすべき期間と、が規定されている。
【0013】
この態様によると、複数の配光モードを適切に切りかえることができる。
【0014】
複数の発光ユニットは、それぞれの出射光が同一時刻において仮想スクリーン上の異なる箇所を照射するように配置されてもよい。
【0015】
同一のチャンネルに含まれる複数の発光ユニットは、仮想スクリーン上の同一の高さを照射するように配置されてもよい。
同じ高さを照射する発光ユニットを同一の駆動電流量で発光させることにより、定電流ドライバの制御を簡素化できる。
【0016】
複数の発光ユニットは2段以上に配置され、最下段の発光ユニットの個数が最も多くてもよい。これにより、仮想スクリーン上のH線の近傍に、照度の高い領域を形成できる。
【0017】
最下段の複数の発光ユニットは、3個以上のチャンネルに分けられてもよい。これにより、電子スイブルを実現できる。
【0018】
複数の発光ユニットはN段(N≧3)に配置されてもよい。下からi段目(1≦i≦N)の発光ユニットに供給される電流量をIとするとき、複数の配光モードそれぞれにおいて、I≧…≧Iの関係が成り立ってもよい。これにより、複数の定電流ドライバの設計を簡略化できる。
【0019】
複数の発光ユニットはN段(N≧3)に配置され、下からi段目(1≦i≦N)の発光ユニットに供給される電流の最大電流をIi(MAX)とするとき、
1(MAX)≧…≧IN(MAX)
の関係が成り立ってもよい。
【0020】
複数の発光ユニットは、U字型、逆さのT字型、倒れたE字型または倒れたL字型に配置されてもよい。
【0021】
コントローラはさらに、各発光ユニットの出射光が遮光領域を通過する間、対応するバイパススイッチによりバイパス経路を形成してもよい。これにより、前方車へのグレアを抑制できる。
【0022】
車両用灯具は、スキャン光学系の出射光が形成する集光領域と、非スキャン光学系の出射光が形成する拡散領域とを重ね合わせてもよい。拡散領域をスキャン光学系のみで形成しようとすると、スキャン光学系による走査範囲を大きく設計する必要があるところ、非スキャン光学系を組み合わせることにより、スキャン光学系の走査範囲を小さくできる。
【0023】
なお、以上の構成要素の任意の組み合わせや、本発明の構成要素や表現を、方法、装置、システムなどの間で相互に置換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0024】
本発明のある態様によれば、スキャン方式の車両用灯具において、さまざまな配光モードを切りかえることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】実施の形態に係る車両用灯具の斜視図である。
図2図2(a)〜(d)は、配光パターンの形成を説明する図である。
図3図3(a)〜(c)は、車両用灯具によって実現可能な複数の配光モードの具体例を説明する図である。
図4】車両用灯具の電気系統を示すブロック図である。
図5】車両用灯具の1チャンネル分の構成を示すブロック図である。
図6図6(a)、(b)は、モータウェイモードにおける配光パターンの形成を説明する図である。
図7図7(a)、(b)は、遮光領域の形成を説明する図である。
図8図8(a)〜(c)は、電子スイブルを説明する図である。
図9図9(a)〜(c)は、発光ユニットのレイアウトの変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明を好適な実施の形態をもとに図面を参照しながら説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、実施の形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0027】
本明細書において、「部材Aが、部材Bと接続された状態」とは、部材Aと部材Bが物理的に直接的に接続される場合のほか、部材Aと部材Bが、それらの電気的な接続状態に実質的な影響を及ぼさない、あるいはそれらの結合により奏される機能や効果を損なわせない、その他の部材を介して間接的に接続される場合も含む。
【0028】
同様に、「部材Cが、部材Aと部材Bの間に設けられた状態」とは、部材Aと部材C、あるいは部材Bと部材Cが直接的に接続される場合のほか、それらの電気的な接続状態に実質的な影響を及ぼさない、あるいはそれらの結合により奏される機能や効果を損なわせない、その他の部材を介して間接的に接続される場合も含む。
【0029】
また本明細書において、電圧信号、電流信号などの電気信号、あるいは抵抗、キャパシタなどの回路素子に付された符号は、必要に応じてそれぞれの電圧値、電流値、あるいは抵抗値、容量値を表すものとする。
【0030】
実施の形態に係る車両用灯具100の概要を説明する。
この車両用灯具100は、スキャン式のADBヘッドランプであり、複数の配光モードが切りかえ可能となっている。車両用灯具100は、複数の発光ユニットを備える。複数の発光ユニットは、独立に点消灯が切りかえ可能である。複数の発光ユニットは、それぞれの出射光が仮想スクリーン上に形成する照射スポットの走査の重ね合せにより、所望の配光が形成されるように配置される。複数の発光ユニットは複数のチャンネルに分割されており、同一チャンネルに含まれるすべての少なくともひとつの発光ユニットには、同一のDC電流が供給され、DC電流は走査期間中、一定に保たれる。
チャンネルごとのDC電流量は、配光モードに応じて設定される。また各発光ユニットは、走査期間中の配光モードに応じて規定される所定のタイミングで、点灯、消灯が切りかえられる。
【0031】
すなわち、複数の発光ユニットに一定の駆動電流を供給しながら、各発光ユニットを適切なタイミングで点消灯することにより、所望の配光パターンを形成できる。そして、駆動電流の電流量と、発光ユニットの点消灯のタイミングを変化させることにより、配光パターンを変化させることができ、複数の配光モードを実現できる。配光モードは、走行シーンに応じて適応的に切りかえてもよいし、ユーザからの指示に応じて切りかえてもよい。発光ユニットの1走査期間内の点灯期間中において、駆動電流を高速に変化させる必要がないため、駆動電流を生成する定電流ドライバの設計を容易化できるという利点もある。
【0032】
以下、車両用灯具100の具体的な構成を説明する。図1は、実施の形態に係る車両用灯具100の斜視図である。図1の車両用灯具100はスキャン方式の灯具であり、走行シーンに応じて、複数の配光モードが選択可能である。
【0033】
車両用灯具100は、主として、光源部110、スキャン光学系120、投影光学系130および図示しない点灯回路200を備える。光源部110は、複数の発光ユニット112を含む。複数の発光ユニット112は、コネクタ114を介して図示しない点灯回路200と接続される。発光ユニット112は、LED(発光ダイオード)やLD(半導体レーザ)などの半導体光源を含む。ひとつの発光ユニット112は、輝度および点消灯の制御の最小単位を構成している。ひとつの発光ユニット112は、ひとつのLEDチップ(LDチップ)であってもよいし、直列および/または並列に接続された複数のLEDチップ(LDチップ)を含んでもよい。
【0034】
スキャン光学系120は光源部110の出射光Lを受け、所定の周期運動を繰り返すことによりその反射光Lを車両前方で横方向(図中、H方向)に走査する。投影光学系130は、スキャン光学系120の反射光Lを車両前方の仮想スクリーン上に投影する。投影光学系130は反射光学系、透過光学系、それらの組み合わせで構成することができる。
【0035】
具体的にはスキャン光学系120は、リフレクタ122およびモータ124を備える。リフレクタ122は、モータ124のロータに取り付けられており、回転運動を行なう。本実施の形態においてリフレクタ122は2枚設けられており、モータ124の1回転で、出射光Lは2回、走査される。したがって走査周波数は、モータの回転数の2倍となる。なおリフレクタ122の枚数は特に限定されない。
【0036】
ある時刻tにおいて光源部110の出射光Lは、リフレクタ122の位置(ロータの回転角)に応じた角度で反射され、そのときの反射光Lは、車両前方の仮想スクリーン1上に、ひとつの照射領域2を形成する。図1では説明の簡素化のため、照射領域2を矩形で示すが、後述のように照射領域2は矩形とは限らない。
【0037】
別の時刻tにおいてリフレクタ122の位置が変化すると、反射角が変化し、そのときの反射光L’は、照射領域2’を形成する。さらに別の時刻tにおいてリフレクタ122の位置が変化すると反射角が変化し、そのときの反射光L”は、照射領域2”を形成する。
【0038】
スキャン光学系120を高速に回転させることにより、照射領域2が仮想スクリーン1上を走査し、これにより車両前方に配光パターン3が形成される。
【0039】
図2(a)〜(d)は、配光パターン3の形成を説明する図である。図2(a)には、光源部110における複数の発光ユニット112のレイアウトが示される。本実施の形態において複数の発光ユニット112の個数は9である。
【0040】
複数の発光ユニット112は高さ方向に2段以上で、この例では3段で配置され、最下段の発光ユニット112の個数が最も多くなっている。これにより、仮想スクリーン上のH線の近傍に、照度の高い領域を形成できる。
【0041】
本実施の形態に係る車両用灯具100は、スキャンによる配光と、非スキャンによる配光の重ね合わせにより、配光パターンを形成する。光源部110は、スキャン用の複数の発光ユニット112_1〜112_9に加えて、非走査で車両前方を広く照射するための少なくともひとつの発光ユニット113_1,113_2を備える。発光ユニット113_1,113_2の出射光は、スキャン光学系120とは異なる光学系(不図示)を経由して、仮想スクリーン1に照射される。
【0042】
図2(b)は、リフレクタ122が所定の位置にあるときに、各発光ユニット112、113の出射光が仮想スクリーン1上に形成する照射スポットを示す図である。
【0043】
スキャン用の発光ユニット112が形成する照射スポットを集光スポットScと称する。Scは、i番目(1≦i≦9)の発光ユニット112_iが形成する集光スポットを表す。図2(b)の複数の集光スポットSc〜Scの集合が、図1の照射領域2に相当する。
【0044】
また、拡散用の発光ユニット113が仮想スクリーン1上に形成する照射スポットを、拡散スポットSdと称する。Sdは、i番目の発光ユニット113_iが形成する集光スポットを表す。拡散スポットSdはリフレクタ122の回転とは無関係である。拡散スポットSd,Sdの集合を、拡散領域4と称する。
【0045】
図2(b)には右側灯具による照射スポットSc,Sdのみが示される。右側灯具と左側灯具を左右対称に構成した場合、図2(b)の照射スポットをV線で左右反転したものが、左側灯具によって形成される。
【0046】
図2(c)には、リフレクタ122を回転させたときに、各集光スポットScが通過する領域(スキャン領域と称する)SRが示される。SRは、i番目の集光スポットScが通過する領域を示す。スキャン領域SR〜SRの集合、言い換えれば照射領域2が走査される領域を集光領域5と称する。集光領域5は拡散領域4とオーバーラップしている。
【0047】
図2(d)には、最下段の発光ユニット112_1〜112_5が形成するH線近傍の配光パターンの水平方向の照度分布が示される。
【0048】
実際に形成される配光パターンは、右側灯具の配光パターンと左側灯具の配光パターンの重ね合わせとなる。この例では、右側灯具の集光領域5と、左側灯具の集光領域5は実質的にオーバーラップしている。また右側灯具の拡散領域4は主としてV線より右側を照射し、左側灯具の拡散領域4(不図示)が主としてV線より左を照射することとなる。
【0049】
このように、スキャン用の複数の発光ユニット112_1〜112_9は、それぞれの出射光が仮想スクリーン上で異なる箇所を照射するように配置される。図2(a)に示すように、複数の発光ユニット112をU字型に配置するとよい。U字型(あるいは図9(b)のE字型)に配置することにより、1段目、2段目、3段目の集光領域の右端および左端を揃えることができる。
【0050】
複数の発光ユニット112とチャンネルの対応関係はたとえば以下の通りである。
第1チャンネルCH=発光ユニット112_1,112_2
第2チャンネルCH=発光ユニット112_3
第3チャンネルCH=発光ユニット112_4,112_5
第4チャンネルCH=発光ユニット112_6,112_7
第5チャンネルCH=発光ユニット112_8,112_9
【0051】
複数の発光ユニット112は高さ方向に3段に配置されており、同じ高さを照射する発光ユニット112は、同一量の駆動電流が供給されるように、同一チャンネルに分類される。
【0052】
拡散領域用の発光ユニット113_1、113_2は、第6チャンネルCHとなる。
【0053】
以上が車両用灯具100の基本構成である。続いて動作を説明する。
図3(a)〜(c)は、車両用灯具100によって実現可能な複数の配光モードの具体例を説明する図である。たとえば複数の配光モードのひとつは図3(a)に示すノーマルモードであり、複数の配光モードの別のひとつは図3(b)に示すモータウェイモードであり、複数の配光モードのさらに別のひとつは図3(c)に示すタウンモードである。図3(a)〜(c)には、各配光モードにおける仮想スクリーン1上の配光パターンが示されており、左右の両方の灯具の重ね合わせが示される。図3(a)〜(c)には、各チャンネルの発光ユニット112に供給すべき駆動電流IDRVの電流量が示される。
【0054】
図3(a)を参照すると、ノーマルモードでは、最下段の3チャンネルCH、CH,CHの駆動電流の設定値は1.0A、下から2段目のチャンネルCHの駆動電流の設定値は0.7A、最上段のチャンネルCHの駆動電流の設定値は0.5Aである。また拡散用のチャンネルCHの駆動電流の設定値は1.0Aである。すべての発光ユニット112は走査期間中、点灯状態を維持する。
【0055】
モータウェイモードは、高速道路や有料道路において選択される。図3(b)を参照すると、モータウェイモードでは、最下段の3チャンネルCH、CH,CHの駆動電流の設定値は1.2A、下から2段目のチャンネルCHの駆動電流の設定値は1.0A、最上段のチャンネルCHの駆動電流の設定値は0.7Aである。また拡散用のチャンネルCHの駆動電流の設定値は0.8Aであり、拡散領域4はノーマルモードのそれより暗く設定される。
【0056】
モータウェイモードでは、集光領域5の幅が、ノーマルモードの幅より狭くなるように、発光ユニット112のスキャン領域SRの幅が図3(a)のノーマルモードよりも狭められており、発光ユニット112の輝度を高めることにより中央の照度が集中的に高められている。
【0057】
タウンモードは、街灯が多いような市街地において選択される。図3(c)を参照すると、タウンモードでは、すべてのチャンネルCH〜CHの駆動電流の設定値は0.2Aである。また拡散用のチャンネルCHの駆動電流の設定値は0.8Aであり、拡散領域4はノーマルモードのそれより暗く設定される。
【0058】
モータウェイモードでは、集光領域5の幅が、ノーマルモードの幅と実質的に同等であるが、発光ユニット112の輝度を大幅に低下させることにより、照度が低く設定される。すべての発光ユニット112は、走査期間中、点灯状態を維持するように、バイパススイッチが制御される。
【0059】
以上が車両用灯具100の動作である。
この車両用灯具100によれば、複数の発光ユニット112にチャンネルごとに規定された一定の駆動電流IDRVを供給しながら、各発光ユニット112を適切なタイミングで点消灯することにより、所望の配光パターンを形成できる。
【0060】
そして、駆動電流IDRVの電流量と、発光ユニット112の点消灯のタイミングを変化させることにより配光パターンを変化させることができ、複数の配光モードを実現できる。
【0061】
配光モードは、走行シーンに応じて適応的に切りかえてもよいし、ユーザからの指示に応じて切りかえてもよい。発光ユニットの1走査期間内の点灯期間中において、駆動電流を高速に変化させる必要がないため、駆動電流を生成する定電流ドライバの設計を容易化できるという利点もある。
【0062】
本発明は、上述の説明から導かれるさまざまな装置、方法、システムに及ぶものであり、特定の構成に限定されるものではない。以下、本発明の範囲を狭めるためではなく、発明の本質や動作の理解を助け、またそれらを明確化するために、より具体的な構成例や実施例を説明する。
【0063】
続いて車両用灯具100のさらに具体的な構成例を説明する。図4は、車両用灯具100の電気系統を示すブロック図である。車両用灯具100は、光源部110および点灯回路200を備える。上述のように光源部110は、スキャン用の複数の発光ユニット112と、拡散用の複数の発光ユニット113を含む。
【0064】
上述のようにスキャン用の複数の発光ユニット112_1〜112_9は、複数のチャンネルCH〜CHに分割されている。同一のチャンネルに含まれる複数の発光ユニット112は、仮想スクリーン上の同一の高さを照射するように配置される。逆に言えば、仮想スクリーン上の同一の高さを照射するよう配置される複数の発光ユニット112は、同一のチャンネルに含まれる。
【0065】
具体的には図2に示すように仮想スクリーン1上の最下段を照射する複数の発光ユニット112_1,112_2が第1チャンネルCH、発光ユニット112_3が第2チャンネルCH、発光ユニット112_4,112_5が第3チャンネルCHを形成する。また、下から2段目を照射する複数の発光ユニット112_6,112_7が第4チャンネルCHを形成する。また下から3段目を照射する複数の発光ユニット112_8,112_9が第5チャンネルCHを形成している。同一のチャンネルに含まれる複数の発光ユニットは直列に接続されている。また拡散用の発光ユニット113_1,113_2は、別のチャンネルCHを形成する。
【0066】
点灯回路200は、ハーネス202を介して光源部110と接続されており、バッテリ10からの直流電圧(バッテリ電圧)VBATを受け、複数の発光ユニット112を駆動する。具体的には点灯回路200は、発光ユニット112の輝度を、チャンネル単位で制御可能であり、また発光ユニット112ごとに点消灯を制御可能である。
【0067】
点灯回路200は、複数のチャンネルCH〜CH(およびCH)に対応する複数の点灯ユニット210_1〜210_5(および210_6)、灯具ECU(Electronic Control Unit)250、モータドライバ260を備える。灯具ECUは単にコントローラとも称される。
【0068】
灯具ECU250は、複数の点灯ユニット210_1〜210_6を制御する。灯具ECU250は、たとえば入力段252と、マイコン254を含む。入力段252は、バッテリ電圧VBATの供給経路に設けられた半導体スイッチ253や、ノイズ除去用のフィルタ(不図示)を含む。マイコン254は、LIN(Local Interconnect Network)やCAN(Controller Area Network)などの車載ネットワーク用のバス14を介して、車両ECU12と接続される。車両ECU12からマイコン254には、(i)走行シーンあるいは配光モードを示す情報、(ii)遮光すべき領域を指示する情報などが送信される。マイコン254は、車両ECU12からの情報にもとづいて、配光モードを選択し、また遮光領域を形成する。
【0069】
モータドライバ260は、スキャン光学系120のモータ124を駆動し、その回転数を目標値に安定化する。モータ124はたとえばブラシレスDCモータであってもよい。モータドライバ260の回路構成は特に限定されず、公知のモータドライバを利用すればよい。スキャン光学系120は、リフレクタ122の回転と同期した周期的な回転信号FGを出力する。FG信号はホール素子126が生成するホール信号にもとづいて生成してもよい。
【0070】
たとえば図1に示すように、2枚のリフレクタ122が設けられる場合、2枚のリフレクタ122の隙間(スリット)が基準位置を通過するたびに、回転信号FGがハイレベルに遷移するように、ホール素子を位置決めしてもよい。
【0071】
FG信号はコントローラ250に入力される。コントローラ250は、FG信号と同期して、点灯ユニット210_1〜210_5を制御する。点灯ユニット210_6については、FG信号との同期は不要である。
【0072】
図5は、車両用灯具100の1チャンネル分の構成を示すブロック図である。各チャンネルは、複数の発光ユニット112と、点灯ユニット210と、灯具ECU250のマイコン254の一部を含む。ここでは第1チャンネルCHを例とする。
【0073】
点灯ユニット210は、定電流ドライバ212およびバイパス回路220を含む。点灯ユニット210のVIN(入力電圧)ピンには、入力段252を介してバッテリ電圧(入力電圧VIN)が供給される。またGND(グランド)ピンには、接地電圧VGNDが供給される。EN(イネーブル)ピンには、定電流ドライバ212の動作、停止を指示するイネーブル信号SENが入力され、DC調光(ADIM)ピンには、定電流ドライバ212が生成する駆動電流IDRVの目標値を指示するDC調光信号SADIMが入力される。
【0074】
定電流ドライバ212は、対応するチャンネルCHに含まれる複数の発光ユニット112_1,112_2に駆動電流IDRVを供給する。たとえば定電流ドライバ212は、スイッチングコンバータ214およびコンバータコントローラ216を含む。スイッチングコンバータ214は、降圧、昇圧、あるいは昇降圧コンバータであり、VINピンに供給される入力電圧VIN(バッテリ電圧VBAT)を受ける。スイッチングコンバータ214の形式は、駆動対象の発光ユニット112の個数に応じて決定される。
【0075】
本実施の形態のように、ひとつのチャンネルに最大で2個の発光ユニット112を割り当てるようにするとスイッチングコンバータ214を降圧コンバータに統一することができる。
【0076】
コンバータコントローラ216は、スイッチングコンバータ214のスイッチング素子を駆動するための制御パルスSCNTを生成する。コンバータコントローラ216は、駆動電流IDRVの検出値(フィードバック信号SFB)が、マイコン254からのDC調光信号SADIMが指示する目標値に近づくように、制御パルスSCNTのデューティ比、周波数、密度の少なくともひとつを制御する。
【0077】
コンバータコントローラ216の制御方式は特に限定されず、公知の回路を用いればよい。たとえばコンバータコントローラ216は、リップル制御のコントローラであってもよく、ヒステリシス制御、ピーク検出オフ時間固定方式、ボトム検出オン時間固定方式などを採用しうる。あるいはコンバータコントローラ216は、エラーアンプを用いたPWM(Pulse Width Modulation)コントローラであってもよいし、PI制御やPID制御を利用したデジタルのコントローラであってもよい。
【0078】
バイパス回路220は、複数のバイパススイッチSW,SWを含む。各バイパススイッチSWは、対応するチャンネルCHに含まれる発光ユニット112_1,112_2の対応するひとつと並列なバイパス経路を形成可能である。バイパススイッチSWは、FET(Field Effect Transistor)などで構成することができる。バイパススイッチSW、SWのオン、オフは、マイコン254からのバイパス制御信号SB,SBに応じて制御される。フェイル検出回路222は、発光ユニット112のオープンあるいはショート異常を検出し、フェイル信号を生成する。
【0079】
以上が第1チャンネルCHの構成である。第2チャンネルCH〜第6チャンネルCHについても同様に構成される。バイパススイッチSW(1≦j≦9)がオフのとき、対応する発光ユニット112_jに駆動電流IDRVが流れるため、発光ユニット112_jは発光する。バイパススイッチSWがオンのとき、駆動電流IDRVは発光ユニット112_jではなくバイパススイッチSW側に流れるため、対応する発光ユニット112_jは消灯する。
【0080】
灯具ECU250(マイコン254)は、複数の配光モードが切替え可能に構成される。マイコン254は、複数の点灯ユニット210_1〜210_5それぞれについて配光モードごとに、(i)定電流ドライバ212それぞれが生成すべき駆動電流IDRVと、(ii)1走査期間において複数のバイパススイッチSWそれぞれがオンすべき期間(オフすべき期間)と、が規定されている。
【0081】
図6(a)、(b)は、モータウェイモードにおける配光パターンの形成を説明する図である。図6(a)は、見やすいように、複数のスキャン領域SR〜SRをずらして並べた図である。スキャン領域SRのうち、ハッチングを付した範囲が実際に光の照射される照射領域(B)を示し、一点鎖線は、光が照射されない非照射領域(A,C)を示す。Sc〜Scは同時刻における集光スポットの位置を示す。集光スポットScは図中、左から右に走査するものとし、集光スポットScの右端をリーディングエッジLE、左端をトレイリングエッジTEとする。ある時刻tに、集光スポットScのトレイリングエッジTEが、照射領域SRの左端に位置しているものとする。
【0082】
図6(b)は、複数のバイパススイッチSW〜SWの状態を示すタイムチャートである。水平方向が同じ位置のバイパススイッチ(SW,SW,SWのセット、もしくはSW,SW,SWのセット)は、同じタイミングで制御すればよいから、ここではバイパススイッチSW〜SWの制御のみを示す。i番目のバイパススイッチSWiは、対応する集光スポットScが照射領域Bを通過する期間、オフとなり、非照射領域(A,C)を通過する期間、オンとなる。Tsは走査周期を表す。
【0083】
バイパススイッチSWのターンオフ(発光ユニット112の点灯)のタイミングtは、集光スポットScのトレイリングエッジ(左端)TEが、照射領域の左端を通過したタイミングとしてもよい。一方、バイパススイッチSWのターンオン(発光ユニット112の消灯)のタイミングtは、集光スポットScのリーディングエッジ(右端)LEが、照射領域の右端に到達したタイミングとしてもよい。この制御により、非照射領域の照度をゼロとすることができる。
【0084】
バイパススイッチSWの遷移タイミングt,tは、とある基準時刻tからの経過時間を、走査周期Tsで正規化した値として規定しておいてもよい。これにより、モータの回転数が変化して走査周期Tsが変動しても、適切なタイミングでバイパススイッチSWを制御できる。なお基準時刻tは、FG信号の変化点と一致させてもよい。
【0085】
続いて、遮光領域の形成を説明する。図7(a)、(b)は、遮光領域の形成を説明する図である。図7(a)は、見やすいように、複数のスキャン領域SR〜SRをずらして並べた図である。図7(b)は、複数のバイパススイッチSW〜SWの状態を示すタイムチャートである。ここでもモータウェイモードを例とする。遮光領域をDで示す。i番目のバイパススイッチSWiは、対応する集光スポットScが遮光領域Dを通過する期間、オンとなるように制御される。
【0086】
遮光領域Dに対応して、バイパススイッチSWがターンオン(発光ユニット112の消灯)するタイミングtは、集光スポットScのリーディングエッジ(右端)LEが、遮光領域Dの左端に到達するタイミングとしてもよい。一方、バイパススイッチSWのターンオフ(発光ユニット112の点灯)のタイミングtは、集光スポットScのトレイリングエッジ(左端)TEが、遮光領域Dの右端に達するタイミングとしてもよい。
【0087】
図2(c)に示したように、最下段の5個の発光ユニット112_1〜112_5は、3チャンネルCH〜CHに分割することとした。これにより以下で説明するように、電子スイブルが可能となる。図8(a)〜(c)は、電子スイブルを説明する図である。図8(a)〜(c)はそれぞれ、最下段の発光ユニット112が形成する仮想スクリーン上のH線近傍の配光パターン(照度分布)を示す。図8(a)〜(c)はそれぞれ直進時、左カーブ、右カーブに対応する。
【0088】
以上、本発明について、実施の形態をもとに説明した。この実施の形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組み合わせにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。以下、こうした変形例について説明する。
【0089】
(変形例1)
バイパススイッチSWの制御に関して、非照射領域に光が照射されることを許容する場合、バイパススイッチSWのターンオフ(発光ユニット112の点灯)のタイミングtを、集光スポットScのリーディングエッジ(右端)LEが、照射領域の左端を通過したタイミングとしてもよい。
【0090】
反対に、バイパススイッチSWのターンオン(発光ユニット112の消灯)のタイミングtを、集光スポットScのトレイリングエッジ(左端)TEが、照射領域の右端に到達したタイミングとしてもよい。
【0091】
(変形例2)
実施の形態では、図2(a)に示すようにU字型に複数の発光ユニット112を配置したがその限りでない。図9(a)〜(c)は、発光ユニット112のレイアウトの変形例を示す図である。図9(a)では、逆さのT字型に配置される。図9(b)では、倒れたE字型に配置される。図9(c)では、倒れたL字型に配置される。いずれの配置を選択すべきかは、投影光学系130からの出射光の拡散角に応じて規定すればよい。
【0092】
また実施の形態では、右側灯具と左側灯具それぞれが形成する集光領域5が実質的に同一範囲で重なったがその限りでなく、中央の一部において重なるようにしてもよい。
【0093】
(変形例3)
図3(a)〜(c)の配光モードでは、同じ高さを照射する3つのチャンネルCH〜CHの駆動電流が等しいが、その限りではない。たとえばモータウェイモードにおいて、3つのチャンネルCH〜CHの駆動電流が異なっていてもよい。
【0094】
(変形例4)
実施の形態では、1チャンネル当たりの発光ユニット112の個数を1または2としたがその限りではなく、3個以上の発光ユニット112を1チャンネルに割り当てて、ひとつの定電流ドライバで駆動してもよい。
【0095】
(変形例5)
スキャン光学系120の構成は、図1のそれには限定されない。たとえばポリゴンミラーやガルバノミラーによって、照射スポットを走査する構成としてもよい。あるいは複数の発光ユニット112の出射角をアクチュエータで制御する構造としてもよい。
【0096】
(変形例6)
実施の形態では、複数の発光ユニット112を、図2(b)に示すようにそれらが形成する複数の集光スポットScが仮想スクリーン1上でオーバーラップしないように配置したがその限りでない。2個以上の発光ユニット112に対応する集光スポットを仮想スクリーン1上でオーバーラップさせてもよい。
【0097】
(変形例7)
実施の形態では、非スキャンによる拡散領域とスキャンによる集光領域の重ね合わせによって配光を形成したがその限りでなく、スキャン光学系のみによって、配光パターンを形成してもよい。
【0098】
実施の形態にもとづき、具体的な語句を用いて本発明を説明したが、実施の形態は、本発明の原理、応用を示しているにすぎず、実施の形態には、請求の範囲に規定された本発明の思想を逸脱しない範囲において、多くの変形例や配置の変更が認められる。
【符号の説明】
【0099】
1…仮想スクリーン、2…照射領域、3…配光パターン、4…拡散領域、5…集光領域、10…バッテリ、12…車両ECU、14…バス、100…車両用灯具、110…光源部、112,113…発光ユニット、114…コネクタ、120…スキャン光学系、122…リフレクタ、124…モータ、130…投影光学系、200…点灯回路、210…点灯ユニット、212…定電流ドライバ、214…スイッチングコンバータ、216…コンバータコントローラ、220…バイパス回路、SW…バイパススイッチ、250…灯具ECU、252…入力段、254…マイコン、260…モータドライバ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9