特許第6872435号(P6872435)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6872435
(24)【登録日】2021年4月21日
(45)【発行日】2021年5月19日
(54)【発明の名称】計器用指針及びそれを備えた指示計器
(51)【国際特許分類】
   G01D 13/22 20060101AFI20210510BHJP
   G01D 11/28 20060101ALI20210510BHJP
   B60K 35/00 20060101ALI20210510BHJP
【FI】
   G01D13/22 101
   G01D11/28 P
   G01D11/28 B
   B60K35/00 Z
【請求項の数】8
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2017-120140(P2017-120140)
(22)【出願日】2017年6月20日
(65)【公開番号】特開2019-2885(P2019-2885A)
(43)【公開日】2019年1月10日
【審査請求日】2020年5月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】591182112
【氏名又は名称】NSウエスト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山川 洋輔
【審査官】 清水 靖記
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−357463(JP,A)
【文献】 特開2013−029314(JP,A)
【文献】 特開2001−165714(JP,A)
【文献】 特開平09−145417(JP,A)
【文献】 特開2004−271373(JP,A)
【文献】 特開2002−098560(JP,A)
【文献】 特開2008−122305(JP,A)
【文献】 特開2011−180094(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01D 11/00 − 13/28
B60K 35/00 − 37/06
G01D 7/00 − 7/12
G12B 1/00 − 17/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示盤に設けられた指標を指示する指針本体と、該指針本体の一端側を保持し且つ前記表示盤上で回転可能に支持される保持具と、を備え、
前記指針本体が、回転中心となる基部の裏面で受けた光を、先端側に向けて内部で導光し、表面から外部に放つことにより発光する計器用指針であって、
前記指針本体は、透明な針状導光体と、該針状導光体の外周を被覆した被覆膜とによって構成されており、
前記被覆膜は、光透過性及び光反射性を有する色の付いた半透過着色層と、該半透過着色層の外側に設けられた遮光性を有する外被層とを含み、
前記被覆膜の表面部分には、前記針状導光体内を導光された光を外部に放つ放光孔が、前記外被層を貫通し且つ前記半透過着色層に凹部をなす深さに形成されている
ことを特徴とする計器用指針。
【請求項2】
請求項1に記載された計器用指針において、
前記半透過着色層の色は明色系の色である
ことを特徴とする計器用指針。
【請求項3】
請求項2に記載された計器用指針において、
前記半透過着色層の色は白色である
ことを特徴とする計器用指針。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載された計器用指針において、
前記半透過着色層は、前記被覆膜のうち当該半透過着色層よりも外側に設けられる層と前記針状導光体との間の接着性を向上させるプライマー層を兼ねている
ことを特徴とする計器用指針。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載された計器用指針において、
前記半透過着色層と前記外被層との間には、金属材料からなる金属光沢層が設けられている
ことを特徴とする計器用指針。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載された計器用指針において、
前記保持具は、前記指針本体の前記基部に装着されるキャップと、該キャップの裏側にある裏面開口を部分的に塞いで前記キャップ及び前記指針本体を支持する台座部材と、を備え、
前記キャップの表面部分から周壁部分の前側にかけての箇所にはスリットが形成されており、
前記スリットのうち前記キャップの周壁部分に形成された側面開口には、前記指針本体のうち前記基部から先端側へ延びる指示部が挿通され、
前記指針本体の前記基部の表面は、前記スリットのうち前記キャップの表面部分に形成された表面開口を通して当該キャップの表面よりも表側に突出し、
前記放光孔は、前記指針本体のうち前記指示部から前記基部にかけての表面に形成されている
ことを特徴とする計器用指針。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載された計器用指針において、
前記針状導光体は、前記基部の裏面から内部に進入した光を前記基部の後側で先端側に向けて反射させる反射面部と、前記基部の表面部分から前記反射面部に対応する箇所を後方に向けて延びる延長片と、を有し、
前記反射面部と前記延長片との間には、前記延長片の後側へ光を透過させる補強リブが設けられており、
前記放光孔は、前記指針本体のうち前記基部から先端側へ延びる指示部と前記延長片の前記補強リブに対応する部分とに亘る表面に形成されている
ことを特徴とする計器用指針。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載された計器用指針と、
前記表示盤と、
前記指針本体を発光させるための光を発する光源と、
前記表示盤の表面上で前記計器用指針を回転駆動させる駆動装置と、を備える
ことを特徴とする指示計器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両や船舶、航空機等の各種乗り物に搭載される計器用指針及びそれを備えた指示計器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、車両等に搭載される指示計器においては、夜間や暗がりでの指示位置の認知性を高めるために、目盛や数字、文字が設けられた表示盤を裏面側から照明して目盛等を発光させると共に、それら目盛等を指示する指針自体も発光させるようになっているのが一般的である。この種の計器用指針としては、光透過性の高い透明な樹脂材料からなる指針本体と、指針本体の全体に亘って装着されるカバー部材とで構成された指針が知られている。
【0003】
このような構成の計器用指針では、指針本体のうち回転中心となる基部から先端に向けて延びる指示部は、その断面が逆台形状であり、上辺が下辺よりも長くなるように形成されている。また、カバー部材は、指針本体の基部の表面及び側面を覆う第1のカバー部と、指示部をその表面の両側縁部から各側面にかけて覆う第2のカバー部とで構成されている。そして、当該指針は、指針本体が基部の裏面で受けた光を、先端に向けて内部で導光し、第2のカバー部の表面に形成された直線状のスリットから放つことにより発光するようになっている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
さらに、計器用指針としては、遮光部が外周面に一体形成された指針本体と、指針本体のうち回転中心となる基部に装着されるキャップとで構成された指針が知られている。こうした指針では、指針本体は、光透過性の高い透明な樹脂材料からなる針状導光体と、針状導光体の外周面に設けられた遮光部としての金属反射膜等の非透光性膜とで構成されている。非透光性膜の表面部分には、針状導光体内で導光された光を外部に放つスリット状の放光孔が設けられている。この放光孔は、非透光性膜をレーザーで部分的に除去することにより指針導光体の表面に達する深さに形成される(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2017−049176号公報
【特許文献2】特開2013−029314号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した前者の指針、つまり指針本体の全体にカバー部材が装着された構成の指針では、カバー部材が指針本体の基部に加えて指示部をも覆う分、指針の重量が重くなる。加えて、指針の長手方向におけるバランスが悪いし、指示部での幅が太くなるため、シャープでスマートなデザインの指針を実現するのが困難である。さらに、当該指針では、指示部を覆う第2のカバー部の裏側が解放されているため、カバー部材の裏側から光漏れが生じてしまう。
【0007】
また、上述した後者の指針、つまり指針本体の外周面に遮光部が一体形成された構成の指針では、前者の指針で生じる上記問題を解消できるものの、透明な針状導光体はレーザーの光エネルギーを吸収しないため、非透光性膜をレーザーにより指針導光体の表面に達する深さで除去するのが難しい。仮に、レーザーの出力調整や複数回に亘るレーザー処理で放光孔を形成し得るとしても、放光孔のエッジを綺麗には仕上げられず、スムーズなラインの発光を得ることが困難であるし、タクトタイムが長くなってしまう。しかも、放光孔の形成時にレーザーが針状導光体の表面に達すると、非透光性膜の表面部分を貫通したレーザーが、針状導光体を通して同膜の裏面部分に照射されるため、非透光性膜が裏面部分でも除去されることとなり、その結果、指針裏側からの光漏れを招いてしまう。
【0008】
本開示の技術は、斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、指針裏側からの光漏れがなく、且つスムーズなラインで発光させられる、シャープでスマートなデザインの計器用指針を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、本開示の技術では、指針本体の構成として、針状導光体の外周面に遮光性を有する被覆膜が一体形成された構成を採用し、且つ、放光孔のレーザーによる形成が容易になるように被覆膜の構成を工夫した。
【0010】
具体的には、本開示の技術は、表示盤に設けられた指標を指示する指針本体と、指針本体の一端側を保持し且つ表示盤上で回転可能に支持される保持具とを備え、指針本体が、回転中心となる基部の裏面で受けた光を、先端に向けて内部で導光し、表面から外部に放つことにより発光する計器用指針及びそれを備えた指示計器を対象とする。
【0011】
本開示の技術に係る計器用指針では、指針本体が、透明な針状導光体と、針状導光体の外周を被覆した被覆膜とによって構成されている。被覆膜は、光透過性及び光反射性を有する色の付いた半透過着色層と、半透過着色層の外側に設けられた遮光性を有する外被層とを含む。そして、被覆膜の表面部分には、針状導光体内を導光された光を外部に放つ放光孔が、外被層を貫通し且つ半透過着色層に凹部をなす深さに形成されている。
【0012】
この構成によると、指針本体の構成として、遮光性を有する被覆膜が針状導光体の外周面を覆い、被覆膜に形成された放光孔から針状導光体内を通した光を外部に取り出す構成を採用したので、指針本体の全体にカバー部材が装着された従来の指針に比べて、指針の小型化、細径化及び軽量化を図ることができる。しかも、針状導光体内を導光された光は放光孔からしか外部に出ることができないから、指針本体のうち放光孔が形成された箇所以外の部分からの光漏れを防止することができる。
【0013】
さらに、被覆膜の構成として、透明な針状導光体に比べて光エネルギーを吸収しやすい半透過着色層を、遮光性を有する外被層と針状導光体との間に設ける構成を採用したので、外被層を半透過着色層の表面部分ともどもレーザーで好適に除去することができる。それにより、放光孔が半透過着色層に凹部をなす深さで形成されているので、放光孔のエッジを綺麗に仕上げることができ、スムーズなラインの発光を得ることができる。以上により、シャープでスマートなデザインの計器用指針を実現することができる。
【0014】
そのような計器用指針において、半透過着色層は、色が付いているので、発光部分の色調を有色に表現すると共に針状導光体の内部が見えないように隠蔽する役割を果たす。この半透過着色層の色は、明色系の色であること、特に白色であることが好ましい。ここでいう「明色系の色」とは、マンセル表色系における明度が6〜10に相当する色を意味する。
【0015】
この構成によると、半透過着色層の色を明色系の色(好ましくは白色)にしたから、針状導光体内を通る光を半透過着色層との界面で良好に反射させて先端側へ導光することができ、指針本体を放光孔の全長に亘ってなるべく均一に発光させることができる。
【0016】
また、半透過着色層は、被覆膜のうち当該半透過着色層よりも外側に設けられる層と針状導光体との間の接着性を向上させるプライマー層を兼ねていることが好ましい。
【0017】
この構成によると、半透過着色層に接着性向上を図るプライマー層としての機能を備えさせるようにしたので、半透過着色層よりも外側に設けられる層が針状導光体から剥がれるのを簡単な構成で防止することができる。これにより、半透過着色層とは別にプライマー層を形成する手間を省いて製造効率を上げることができ、且つ製品の不良発生を抑えて長期に亘り光漏れのない計器用指針を実現することができる。
【0018】
また、半透過着色層と外被層との間には、金属材料からなる金属光沢層が設けられていることが好ましい。
【0019】
この構成によると、外被層の内側に金属光沢層を設けるようにしたから、外被層を透過した光が金属光沢層で反射する作用により外被層に金属調の艶を表現することができ、計器用指針に高級感を付与することができる。
【0020】
また、保持具は、指針本体の基部に装着されるキャップと、キャップの裏側にある裏面開口を部分的に塞いでキャップ及び指針本体を支持する台座部材とを備えていてもよい。この場合、キャップの表面部分から周壁部分の前側にかけての箇所にはスリットが形成されている。スリットのうちキャップの周壁部分に形成された側面開口には、指針本体のうち基部から先端側へ延びる指示部が挿通されている。指針本体の基部の表面は、スリットのうちキャップの表面部分に形成された表面開口を通して当該キャップの表面よりも表側に突出している。そして、放光孔は、指針本体のうち指示部から基部にかけての表面に形成されていることが好ましい。
【0021】
この構成によると、指針本体の基部の表面をキャップに形成されたスリットの表面開口から表側に突出させ、その突出した表面部分にも放光孔を形成するようにしたから、指針本体をキャップが装着された部分でも発光させることができ、発光ラインが比較的長いデザイン性に優れた計器用指針を実現することができる。
【0022】
また、針状導光体は、基部の裏面から内部に進入した光を基部の後側で先端側に向けて反射させる反射面部と、基部の表面部分から反射面部に対応する箇所を後方に向けて延びる延長片とを有していてもよい。この場合、針状導光体のうち反射面部と延長片との間には延長片の後側へ光を透過させる補強リブが設けられ、放光孔が指針本体のうち基部から先端側へ延びる指示部と延長片の補強リブに対応する部分とに亘る表面に形成されていることが好ましい。
【0023】
この構成によると、針状導光体に対し、反射面部に対応する箇所を後方に向けて延びる延長片と、反射面部と延長片との間に位置する補強リブとを設け、補強リブを通して延長片の後側へ光が透過するようにしたから、延長片のうち反射面部に対応する箇所で放光孔が形成された部分も良好に発光させることができ、延長片にまで延びる可及的に長い発光ラインを形成することができる。
【0024】
本開示の技術に係る指示計器は、上述した計器用指針と、指標が設けられた表示盤と、指針本体を発光させるための光を発する光源と、表示盤の表面上で計器用指針を回転駆動させる駆動装置とを備える。
【0025】
この構成によると、上述した計器用指針が、指針裏側からの光漏れがなく、且つスムーズなラインで発光させられる、シャープでスマートなデザインの指針を実現できる、という優れた特性を備えているので、指針から漏れた光が表示盤を照らすことで生じるハレーションや指針先端で点状に光輝するスポット等の現象が生じず、指針の発光輝度が高くて指示位置の視認性が良い指示計器を実現することができる。
【発明の効果】
【0026】
上記構成の計器用指針によれば、指針裏側からの光漏れを防止し、且つスムーズなラインで発光させられる、シャープでスマートなデザインの計器用指針を実現することができる。そして、この計器用指針を備えた指示計器によれば、指針から漏れた光が表示盤を照らすことで生じるハレーションや指針先端で点状に光輝するスポット等の現象が生じず、指針の発光輝度が高くて指示位置の視認性が良い指示計器を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】実施形態に係る車両用の指示計器を示す正面図である。
図2図1のII−II線における指示計器の断面図である。
図3】実施形態に係る計器用指針の斜視図である。
図4図3のIV−IV線における計器用指針の断面図である。
図5】実施形態に係る計器用指針の分解斜視図である。
図6】実施形態に係る計器用指針の台座部材を取り外した状態の底面図である。
図7】実施形態に係る計器用指針の台座部材を示す正面図である。
図8】実施形態に係る計器用指針の組立て作業において、キャップにバランスウエイトを挿入する様子を示す工程図である。
図9】実施形態に係る計器用指針の組立て作業において、キャップに指針本体を組み付ける際の様子を示す工程図である。
図10】実施形態に係る計器用指針の組立て作業において、キャップに指針本体を組み付ける際の様子を示す工程図である。
図11】実施形態に係る計器用指針の組立て作業において、指針本体に装着したキャップに台座部材を取り付ける際の様子を示す工程図である。
図12】変形例に係る計器用指針の図4相当図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、例示的な実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の実施形態では、説明の便宜上、計器用指針の長手方向における先端側を「前」、後側を「後」と称し、指示計器を正面視したとき、つまり視認者(運転者)が指示計器を正面から見て指示値を確認するときの手前側を「表」、奥側を「裏」と称する。
【0029】
この実施形態では、本開示の技術ついて、自動車の各種情報を表示するコンビネーションメータとして、インストルメントパネルの運転席前の部分に設置される指示計器を例に挙げて説明する。
【0030】
− 指示計器の構成 −
図1に、指示計器1の正面図を示す。図2に、図1のII−II線における指示計器1の断面図を示す。
【0031】
指示計器1は、図1に示すように、走行速度を表示するスピードメータ3と、エンジンの回転数を表示するタコメータ5と、その他の情報を表示する複数(図示する例では3つ)のディスプレイ、具体的には、燃料の残量やエンジン水温、走行可能距離、充電系(バッテリ)やエンジンのエラー情報等を表示する大型のディスプレイ7と、ギア位置等を表示する小型のディスプレイ8と、総走行距離等を表示する小型のディスプレイ9と、各種エラーや警告の表示を行うランプ類(不図示)とを備える。
【0032】
スピードメータ3は、指示計器1の中央に配置されている。タコメータ5は、スピードメータ3の左側に配置されている。これらスピードメータ3及びタコメータ5は、いずれも計器用指針11を用いたアナログ式(指針式)の装置である。ディスプレイ7,8,9は、それぞれ液晶ディスプレイ又は有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイからなる。ディスプレイ7は、スピードメータ3の右側に配置されている。ディスプレイ8はスピードメータ3の下側部分に、ディスプレイ9はタコメータ5の下側部分にそれぞれ配置されている。
【0033】
指示計器1は、図1及び図2に示すように、主として、上記スピードメータ3用及びタコメータ5用の2つの指針11と、指針11によって指示される目盛13及び文字15からなる指標17が表面に設けられた表示盤19と、表示盤19の裏側に配置された照明用の光源21と、表示盤19の表面上で指針11を回転駆動させる駆動装置23と、光源21及び駆動装置23の動作を制御するプリント回路基板25と、これらを収容するケーシング27とを備える。
【0034】
指針11は、樹脂材料で形成されて細長針状を呈しており、自動車に搭載されたセンサを用いて計測された計測値に応じて所定の指標を指し示すものである。この指針11は、回転中心となる正面視で円形をなす回転基部29と、回転基部29から先端に向かって延びる指示部31と、回転基部29から後側に突出したテール部33とを備えたデザインとされていて、回転基部29から指示部31にかけての略全長が縁取りされた領域で発光するように構成されている。この指針11の構成については後に詳述する。
【0035】
表示盤19は、各々円形に設定された、中央に位置するスピードメータ領域35と、左側に位置するタコメータ領域37と、右側に位置するディスプレイ配置領域39とを有している。スピードメータ領域35には車速を示す指標17(目盛13及び数字15)が、タコメータ領域37にはエンジン回転数を示す指標17(目盛13及び数字15)が、それぞれ対応する指針11の回転軸を中心として時計回りに値が増すように円弧状に配列されている。
【0036】
さらに、これらスピードメータ領域35及びタコメータ領域37の下側には、ディスプレイ8,9の画面に対応するサイズの矩形状に表示窓41がそれぞれ形成されている。また、ディスプレイ配置領域39の中央には、ディスプレイ7の画面に対応するサイズの矩形状に表示窓43が形成されている。これら表示窓41,43は、対応するディスプレイ7,8,9を正面側に覗かせるための開口である。
【0037】
この表示盤19は、透光性を有する板材45と、板材45の表面に形成された遮光性を有する印刷層47とによって構成されており、指示計器1の外形に対応した形状とされている。板材45は、射出成形などによって形成されており、例えばアクリル樹脂やポリカーボネート樹脂からなる。印刷層47は、樹脂材料による型成形、インク材による印刷成形、又は樹脂材料からなるシート材の貼付けなどによって形成されている。
【0038】
板材45と印刷層47とは、互いにコントラストを持たせた配色とされている。具体的には、板材45は、白色等の明度の高い色に着色されており、印刷層47は、グレー色や黒色等の明度の低い色に着色されている。指標17は、印刷層47が目盛13及び数字15を象る形状に抜かれることで形成されている。すなわち、表示盤19の指標17が形成された部分には印刷層47が設けられていない。これにより、指標17は、表示盤19の裏側から照射された光を表側に透過するようになっている。
【0039】
光源21は、表示盤19を照明するのに用いられる表示盤用の光源49と、指針11を照明するのに用いられる指針用の光源51とである。これら表示盤用及び指針用の光源49,51は、チップタイプのLED(Light Emitting Diode)によって構成されており、プリント回路基板25の表側に実装されている。
【0040】
表示盤用の光源49は、スピードメータ領域35及びタコメータ領域37の外周に沿い大径の円周上において等間隔に複数配置されていて、表示盤19の指標17の形成箇所に裏側から光を照射するようになっている。指針用の光源51は、指針11の回転軸心周りの小径の円周上において等間隔に複数配置されていて、表示盤19に形成された貫通孔52を通して指針11に光を照射するようになっている。
【0041】
駆動装置23は、ステッピングモータと減速歯車機構との組合せによって構成されており、プリント回路基板25の裏側に実装されている。この駆動装置23は、プリント回路基板25に設けられた後述の制御回路57による制御の下で回転駆動される回転軸53を備える。回転軸53は、プリント回路基板25に形成された通孔55に挿通されて表側に延び出ており、指針11の回転基部29に連結されている。駆動装置23は、その回転軸53の回転駆動を以て指針11を所定の位置にまで回転させるようになっている。
【0042】
プリント回路基板25は、絶縁性を有する基材に対し、各種配線が印刷されていると共に、上記光源49,51や駆動装置23の他、各種電子部品が実装された構成を有する。各種電子部品には、マイクロコンピュータからなる制御回路57を含む。制御回路57は、自動車のECU(Engine Control Unit)により車速やエンジン回転数、イグニッションスイッチのON/OFFなどの車両情報を取得し、取得した情報に基づいて、光源49,51を点灯や消灯させたり、駆動装置23を動作させて指針11を回転させたりするようになっている。
【0043】
− 指針の構成 −
図3に、指針11の斜視図を示す。図4に、図3のIV−IV線における指針11の断面図を示す。図5に、指針11の分解斜視図を示す。図6に、指針11の台座部材99を取り外した状態の底面図を示す。また、図7に、指針11の台座部材99の正面図を示す。
【0044】
指針11は、図3及び図5に示すように、表示盤19の指標17を指示する指針本体61と、指針本体61の後端側(一端側)を保持し且つ表示盤19上で回転可能に支持される保持具63とを備える。そして、指針本体61は、指針11の回転基部29を構成する基部65の裏面で受けた光を、先端側に向けて内部で導光し、表面から外部に放つことにより発光するように構成されている。
【0045】
具体的には、指針本体61は、上記基部65と、基部65から先端に向けて延びる指示部31と、基部65の表面部分67から後方に向けて延びる延長片69とを備える。指針11の基部65は、正面視で後方に向けて広がる扇状に形成されたブロック部分71を有している。基部65の表面部分67は、このブロック部分71から表側に突出していて、指示部31の表面部分に連続する帯板状に形成されている。
【0046】
ブロック部分71の両側面には、保持具63に位置決めするための位置決め突起72が前後方向に間隔をあけて一対にそれぞれ設けられている。また、ブロック部分71の裏面の後側部分には、図2及び図6に示すように、裏側から照射された光を受ける受光部73が設けられている。この受光部73は、ブロック部分71の裏面におけるその他の部分に比べて裏側に突出している。
【0047】
さらに、ブロック部分71には、受光部73にて受けた光を先端側に向けて反射させる反射面部75が設けられている。反射面部75は、表面部分67の幅方向における両側に設けられた平坦面部77から後方に向かうに従い裏側に延びており、ブロック部分71の扇状外周部分に相当する形状に形成されている。そして、反射面部75は、指示部31の裏面に臨む内面79を有し、その内面79で受光部73から進入した光を指示部31へと反射するようになっている。
【0048】
指針本体61の基部65のうち反射面部75と延長片69との間には、側面視で三角形状の補強リブ81が設けられている。補強リブ81は、延長片69の根元の剛性を補強すると共に、反射面部75の外面と延長片69の裏面とを繋いでいて、基部65に進入した光を延長片69の後側へ透過させる役割も果たす。
【0049】
そして、指針本体61の指示部31表面には、反射面部75で反射された光を外部に放つ発光部82が設けられている。指示部31は、基部65の表面部分67と共に断面台形状に形成されている一方で、基部65の表面部分67から先端に向かって幅が僅かに狭くなり且つ高さが次第に低くなる先細り形状とされている。これにより、反射面部75にて反射された光は、指示部31の先端に向かうに連れて発光部82に多く導かれるようになり、発光部82を先端側にまで均一な輝度で発光させるようになっている。
【0050】
この発光部82は、指針本体61の基部65の表面部分67から延長片69のうち補強リブ81に対応する部分にも設けられている。つまり、発光部82は、指針本体61のうち指示部31から基部65にかけての表面、さらには延長片69の補強リブ81に対応する部分に亘る表面に形成されており、指針本体61においてその先端と延長片69の後側部分を除く略全長に亘って直線状に延びている。
【0051】
指針本体61の基部65に受光部73から進入した光は、反射面部75の内面79によって指示部31に向けて反射されるが、その反射光の一部は、基部65裏面などで表側へと反射された後に、反射面部75と延長片69との間に設けられた補強リブ81を通して延長片69の後側へ透過するから、発光部82は、保持具63(後述するキャップ95)の装着部分、さらには延長片69のうち反射面部75に対応する箇所でも発光し、比較的長い発光ラインを呈する。
【0052】
上記構造の指針本体61は、図2及び図4に示すように、ベースとなる透明な針状導光体83と、針状導光体83の外周面を被覆した被覆膜85とによって構成されている。被覆膜85は、光透過性及び光反射性を有する色の付いた半透過着色層87と、半透過着色層87の外周面に設けられた遮光性を有する外被層としてのトップコート層89とによって構成されている。
【0053】
針状導光体83は、射出成形などによって成形されており、透明度が比較的高いポリメタクリル酸メチル樹脂(PMMA)からなる。半透過着色層87及びトップコート層89は、スプレー塗装、静電塗装、刷毛塗り、浸漬塗装などの公知の塗装方法を用いて形成されている。このように、被覆膜85には、ホットスタンプ印刷などの過度な加熱を伴う方法により形成される層は含まれていない。
【0054】
半透過着色層87は、例えば、熱硬化型塗料や紫外線硬化型塗料などの材料からなる。この半透過着色層87は、トップコート層89と針状導光体83との間の接着性を向上させるプライマー層を兼ねており、トップコート層89が剥がれるのを防止している。
【0055】
この半透過着色層87には明色系の色が付けられている。ここでいう「明色系の色」とは、マンセル表色系における明度が6〜10に相当する色を意味する。この実施形態では、半透過着色層87の色は白色とされている。それにより、発光部82の色調が白色に表現されると共に、針状導光体83の内部が透過して見えないようになっている。また、針状導光体83内を通る光が、半透過着色層87との界面で良好に反射されて先端にまで導光されるようになっている。
【0056】
他方、トップコート層89は、例えば、熱硬化型塗料や紫外線硬化型塗料などの材料からなる。このトップコート層89には暗色系の色が付けられている。ここでいう「暗色系の色」とは、マンセル表色系における明度が0〜5に相当する色を意味する。この実施形態では、トップコート層89の色はグレー色や黒色とされている。
【0057】
指針本体61の受光部73は、被覆膜85が抜かれることで形成されている。すなわち、指針本体61の受光部73では、被覆膜85が設けられておらず、針状導光体83が露出している。また、被覆膜85の表面部分には、針状導光体83内を導光された光を外部に放つ放光孔91が設けられている。
【0058】
放光孔91は、レーザー加工(レーザートリミング)により指針本体61の表面部分の長手方向における略全体に亘って形成されており、指針本体61の表面に残した被覆膜85部分で外周が囲まれた一条のスリット状とされている。この放光孔91は、トップコート層89を貫通し、且つ半透過着色層87に凹部93をなす深さに形成されている。発光部82は、指針本体61のうち放光孔91が形成された部分によって構成されている。
【0059】
保持具63は、指針本体61の基部65に装着されるキャップ95と、キャップ95の裏側にある裏面開口97を部分的に塞いでキャップ95及び指針本体61を支持する台座部材99とを備える。
【0060】
キャップ95は、図3図5及び図6に示すように、指針本体61の基部65と共に指針11の回転基部29を構成し、その回転基部29の外形(正面視で円形)を形成している。そして、このキャップ95は、指針本体61のブロック部分71を内部に収容すると共に、当該基部65の表面部分67を外部に露出させるようになっている。
【0061】
具体的には、キャップ95の表面部分から周壁部分の前側にかけての箇所には、裏面開口97に繋がるスリット101が形成されている。このスリット101は、キャップ95の表面部分に形成された表面開口103と、キャップ95の周壁部分に形成された側面開口105とによって構成されている。指針本体61の指示部31は、スリット101の側面開口105に挿通されてキャップ95内から外側に延び出ている。また、指針本体61の基部65の表面部分67は、スリット101の表面開口103を通してキャップ95の表面よりも表側に突出している。
【0062】
キャップ95の内側には、当該キャップ95の内周面に沿って高さ方向に延びる位置決めピン107が設けられている。位置決めピン107は、スリット101の表面開口103の両側においてキャップ95の内周面に沿う方向に間隔をあけて一対に配置されており、それぞれ指針11の幅方向において位置決め突起72と対峙する。さらに、キャップ95のうち側面開口105の両縁部分には、キャップ95の内方(後方)に突出した位置決め片109が一対に設けられている。
【0063】
キャップ95の周壁部分のうち後側の部分には、後方に突出したウエイト収容部111が設けられている。ウエイト収容部111は、表側に開口した差入口113を有している。そして、ウエイト収容部111には、その差入口113から差し入れられたバランスウエイト115が収容されている。バランスウエイト115は、樹脂製や金属製の板状物からなり、指針11の重心位置を回転軸心又はその付近に調整するものである。
【0064】
ウエイト収容部111の差入口113は、スリット101の表面開口103に連続しており、指針本体61の延長片69によって覆われている。すなわち、指針本体61の延長片69は、ウエイト収容部111内のバランスウエイト115を隠蔽している。指針本体61の延長片69とウエイト収容部111とは、正面視で互いの外形が一致していて、指針11のテール部33を構成している。
【0065】
ウエイト収容部111の底面部分の後側には位置決め孔117が形成されている。バランスウエイト115の裏側の後方部分には位置決め凸部119が設けられている。バランスウエイト115は、その位置決め凸部119を位置決め孔117に挿入することにより、ウエイト収容部111内で位置決めされている。バランスウエイト115の裏側の前方部分には、指針本体61の反射面部75の外面に倣う傾斜面121が形成されている。
【0066】
バランスウエイト115のうち傾斜面121に対応する部分は、指針本体61の反射面部75と延長片69との間に入り込んでおり、指針本体61の回転軸心に沿う方向において反射面部75と重なり合っている。このようなバランスウエイト115の配置によれば、指示部31が比較的長く形成されていても、バランスウエイト115が指針本体61の反射面部75に重なっている分だけテール部33を短くすることができ、指示部31に比べてテール部33が長過ぎないバランスのとれた指針11を実現できる。
【0067】
指針本体61のブロック部分71は、台座部材99が取り付けられていない状態においては、キャップ95の内部空間で、スリット101の側面開口105に対して指示部31をスライドにより挿抜する方向へ回転させることが可能になっている。そして、指針本体61及びキャップ95は、キャップ95を指針本体61に装着する際に、指針本体61を、延長片69がスリット101の表面開口103に挿通されて表側に突出し且つ反射面部75がキャップ95内に位置する状態の先端下がりの傾斜姿勢から、基部65或いはその付近を中心として指示部31が表側に移動すると共に延長片69が裏側に移動する後回り方向へ回転させることにより、所定の組付姿勢とすることが可能に構成されている。
【0068】
台座部材99は、図5及び図7に示すように、ベース板部123と、ベース板部123の表側に突出した位置決め片としての後側突片125及び前側突片127と、ベース板部123の前側に設けられた支持舌片129とを備える。
【0069】
ベース板部123は、キャップ95の裏面開口97のうち指針本体61の受光部73を除く部分に相当する形状とされている。ベース板部123には、後方に開放された開放部131が形成されている。開放部131には、指針本体61の受光部73が嵌め入れられるようになっている。受光部73は、その開放部131を通して保持具63から裏側に露出する。
【0070】
ベース板部123の外周縁部分には、外側方に開放されたピン孔133が形成されている。ピン孔133は、指針11の幅方向における両側において前後方向に間隔をあけて一対に配置されている。さらに、ベース板部123のうち支持舌片129の両側には、前方に開放された嵌入孔135がそれぞれ形成されている。また、ベース板部123の裏面にはボス136が設けられている。ボス136には、駆動装置23の回転軸53が挿入されて連結されている。
【0071】
後側突片125は、ピン孔133の間で小片板状に形成されており、一対の位置決めピン107の間と一対の位置決め突起72の間とに挿入されて、指針本体61の位置決め突起72と位置決めピン107とを指針11の幅方向に揃えるようになっている。前側突片127は、正面視で略三角形状のブロック片であり、指針本体61の位置決め突起72及び位置決めピン107と位置決め片109との間に挿入されて、位置決め片109を指針本体61の指示部31との間に挟むようになっている。そして、これら一対の前側突片127は、両方の位置決め片109を挟むことで側面開口105の幅が広がるのを制限する役割を果たす。
【0072】
後側突片125及び前側突片127は、ベース板部123のうち指針11の幅方向における両側にそれぞれ設けられている。これら後側突片125と前側突片127とは前後方向に間隔をあけて配置されている。支持舌片129は、スリット101の側面開口105の開口幅と概ね同じ幅を有し、側面開口105に嵌め入れられて側面開口105の裏側の開放端を閉塞する。
【0073】
台座部材99は、各ピン孔133を対応する位置決めピン107に、各嵌入孔135を対応する位置決め片109に、支持舌片129をスリット101の側面開口105にそれぞれ嵌め入れると共に、開放部131に指針本体61の受光部73を嵌め入れて、振動溶着などの公知の方法によりキャップ95に固定されている。この台座部材99は、キャップ95の位置決めピン107や位置決め片109、指針本体61の位置決め突起72と協働することで、指針本体61をキャップ95内にしっかりと保持する。
【0074】
− 指針の組立て手順 −
図8に、指針11の組立て作業においてキャップ95にバランスウエイト115を挿入する様子を示す。図9に、指針11の組立て作業においてキャップ95に指針本体61を組み付ける際の様子を示す。図10に、指針11の組立て作業においてキャップ95に指針本体61を組み付ける際の様子を示す。また、図11に、指針11の組立て作業において指針本体61に装着したキャップ95に台座部材99を取り付ける際の様子を示す。
【0075】
上記構成の指針11を組み立てるには、まず、図8に示すように、キャップ95のウエイト収容部111にバランスウエイト115を差入口113から差し入れることにより収容する。次いで、図9に示すように、指針本体61の延長片69を、キャップ95の裏面開口97に裏側から差し入れるか、又はスリット101の側面開口105から後方へスライド挿入することにより、スリット101の表面開口103に挿通させる。このとき、指針本体61は、延長片69が表面開口103から表側へ突出し、且つ反射面部75を含むブロック部分71がキャップ95内に位置する先端下がりの傾斜姿勢を採る。
【0076】
続いて、図10に示すように、指針本体61を、先端下がりの傾斜姿勢から、基部65或いはその付近を中心として後回り方向へ回転させることにより、指示部31を表側に移動させると共に、延長片69を裏側に移動させる。このように指針本体61を後回りに回転させると、指示部31がスリット101の側面開口105に裏側の開放端から表側に挿入されていき、やがて延長部69の裏面がウエイト収容部111の表側端部に当接して差入口113を塞ぐ位置となり、指針本体61が、基部65の表面部分67をスリット101の表面開口103を通して表側に突出させた所定の組付姿勢となる。
【0077】
しかる後、図11に示すように、指針本体61に装着されたキャップ101の裏面開口97に台座部材99を挿入し、その台座部材99を振動溶着などの公知の方法によりキャップ95に接合する。以上の作業工程を経て、指針11を組み立てることができる。
【0078】
− 実施形態の効果 −
この実施形態に係る指針11によれば、指針本体61の構成として、遮光性を有する被覆膜85が針状導光体83の外周面を覆い、被覆膜85に形成された放光孔91から針状導光体83内を通した光を外部に取り出す構成を採用したので、指針本体の全体にカバー部材が装着された従来の指針に比べて、指針11の小型化、細径化及び軽量化を図ることができる。しかも、針状導光体83内を導光された光は放光孔91からしか外部に出ることができないから、指針本体61のうち放光孔91が形成された箇所、つまり発光部82以外の部分からの光漏れを防止することができる。
【0079】
さらに、被覆膜85の構成として、針状導光体83に比べて光エネルギーを吸収しやすい半透過着色層87を、遮光性を有するトップコート層89と針状導光体83との間に設ける構成を採用したので、トップコート層89を半透過着色層87の表面部分ともどもレーザーで好適に除去することができる。それにより、放光孔91が半透過着色層87に凹部93をなす深さで形成されているので、放光孔91のエッジを綺麗に仕上げることができ、スムーズなラインの発光を得ることができる。以上により、シャープでスマートなデザインの指針11を実現することができる。
【0080】
また、この実施形態に係る指針11によれば、半透過着色層87に接着性向上を図るプライマー層としての機能を備えさせるようにしたので、簡単な構成で指針11表面からトップコート層89が剥がれるのを防止することができる。これにより、半透過着色層87とは別にプライマー層を形成する手間を省いて製造効率を上げることができ、且つ製品の不良発生を抑えて長期に亘り光漏れのない指針11を実現することができる。
【0081】
そして、この実施形態に係る指示計器1によれば、上述した指針11が、指針11裏側からの光漏れがなく、且つスムーズなラインで発光させられる、シャープでスマートなデザインの指針を実現できる、という優れた特性を備えているので、指針11から漏れた光が表示盤19を照らすことで生じるハレーションや指針11先端で点状に光輝するスポット等の現象が生じず、指針11の発光輝度が高くて指示位置の視認性が良い指示計器1を実現することができる。
【0082】
− 変形例−
図12に、この変形例に係る指針11の図4相当図を示す。
【0083】
上記実施形態の指針11では、被覆膜85が半透過着色層87及びトップコート層89によって構成されているとしたが、本変形例の指針11では、被覆膜85は、図12に示すように、半透過着色層87及びトップコート層89に加えて、金属光沢層141を備える。金属光沢層141は、半透過着色層87とトップコート層89との間に介在されている。この金属光沢層141は、アルミニウムやチタン、ステンレス鋼(SUS)、クロム等の金属材料からなり、蒸着やスパッタ等の公知の方法により形成される。
【0084】
この変形例に係る指針11によれば、トップコート層89の内側に金属光沢層141を設けるようにしたから、トップコート層89を透過した光が金属光沢層141で反射する作用によりトップコート層89に金属調の艶を表現することができる。例えば、トップコート層89をグレー色とした場合、金属光沢層141による光反射を以て指針本体61をガンメタリック調に仕上げることができる。それにより、指針11に高級感を付与することができる。
【0085】
以上のように、ここに開示する技術の例示として、好ましい実施形態について説明した。しかし、ここに開示する技術は、これに限定されず、適宜、変更、置き換え、付加、省略などを行った実施の形態にも適用可能である。また、上記実施形態で説明した各構成要素を組み合わせて新たな実施の形態とすることも可能である。また、添付図面及び詳細な説明に記載された構成要素の中には、課題解決のためには必須でない構成要素も含まれ得る。そのため、それらの必須でない構成要素が添付図面や詳細な説明に記載されていることを以て、直ちにそれらの必須でない構成要素が必須であるとの認定をするべきではない。
【0086】
例えば、上記実施形態について、以下のような構成としてもよい。
【0087】
上記実施形態では、針状導光体83がPMMAからなるとしたが、これに限らない。PMMAは針状導光体83の好ましい材料の一例に過ぎず、透明性を有するものであれば、ポリカーボネート樹脂やその他のアクリル樹脂などを採用することもできる。PMMAは、透明度が高い点で有利であるが、耐熱性が比較的低いため、被覆膜85にホットスタンプ印刷等の加熱を伴う方法で形成される層を含む場合には、耐熱性の高い材料を適宜採用することができる。
【0088】
また、上記実施形態では、被覆膜85が半透過着色層87及びトップコート層89からなり、半透過着色層87がプライマー層を兼ねているとした。また、上記変形例では、被覆膜85が金属光沢層141をさらに備えるとしたが、これに限らない。被覆膜85は、半透過着色層87とは別個に隣り合う層同士の接着性を向上させるプライマー層を含んでいてもよいし、その他の層を追加で含んでいても構わない。
【0089】
また、上記実施形態では、半透過着色層87の色が白色であるとしたが、これに限らない。白色は半透過着色層87の色の一例に過ぎず、半透過着色層87は、赤色や緑色などの他の色に着色されていてもよく、トップコート層89とコントラストを持たせた配色とされていることが好ましい。この半透過着色層87は、針状導光体83内で光を指針先端側に向けて好適に導光させる観点から、マンセル表色系における明度が6〜10に相当する色であることが好ましく、明度が8〜10に相当する色であることがより好ましい。
【0090】
また、上記実施形態では、発光部82を形成するための放光孔91が指針本体61の表面部分の長手方向における略全体に亘って一条のスリット状に形成されているとしたが、これに限らない。放光孔91は、指針本体61の長手方向において2つ以上に分断されていてもよく、指示部31のみ等の特定の部位だけに形成されていても構わない。
【0091】
また、上記実施形態では、本開示の技術に係る指針及びそれを備えた指示計器について自動車に用いられるコンビネーションメータを例に挙げて説明したが、これに限らない。本開示の技術は、船舶や航空機などのその他の乗り物に搭載される計器用指針及びそれを備えた指示計器にも勿論適用することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0092】
以上説明したように、本開示の技術は、車両や船舶、航空機などの各種乗り物に搭載される計器用指針及びそれを備えた指示計器について有用である。
【符号の説明】
【0093】
1…指示計器、3…スピードメータ、5…タコメータ、7,8,9…ディスプレイ
11…計器用指針、13…目盛、15…文字、17…指標、19…表示盤、
21…光源、23…駆動装置、25…プリント回路基板、27…ケーシング、
29…回転基部、31…指示部、33…テール部、35…スピードメータ領域、
37…タコメータ領域、39…ディスプレイ配置領域、41,43…表示窓、
45…板材、47…印刷層、49…表示盤用の光源、51…指針用の光源、
52…貫通孔、53…回転軸、55…通孔、57…制御回路、61…指針本体、
63…保持具、65…基部、67…表面部分、69…延長片、71…ブロック部分、
72…位置決め突起、73…受光部、75…反射面部、77…平坦面部、
79…内面、81…補強リブ、82…発光部、83…針状導光体、85…被覆膜、
87…半透過着色層、89…トップコート層、91…放光孔、93…凹部、
95…キャップ、97…裏面開口、99…台座部材、101…スリット、
103…表面開口、105…側面開口、107…位置決めピン、
109…位置決め片、111…ウエイト収容部、113…差入口、
115…バランスウエイト、117…位置決め孔、119…位置決め凸部、
121…傾斜面、123…ベース板部、125…後側突片、127…前側突片、
131…開放部、133…ピン孔、135…嵌入孔、136…ボス、
141…金属光沢層
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12