(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
全有機体炭素(TOC)が1ppm以上であり、次亜塩素酸塩を10ppm以上添加した被処理水を陰イオン交換体と接触させる、請求項1〜4のいずれか一項に記載の水処理方法。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して本発明を詳しく説明する。
なお、以下の図面においては、各部材を認識可能な大きさとするため、各部材の縮尺を適宜変更している。
【0015】
本発明の除去の対象となるハロ酢酸としては、クロロ酢酸、ブロモ酢酸等のモノハロ酢酸およびその塩;ジクロロ酢酸、ジブロモ酢酸、ブロモクロロ酢酸等のジハロ酢酸およびその塩;トリクロロ酢酸、トリブロモ酢酸、ブロモジクロロ酢酸、ジブロモクロロ酢酸等のトリハロ酢酸およびその塩などのポリハロゲノ酢酸が挙げられる。塩としては、ナトリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩などが挙げられる。
なお、ハロ酢酸は、被処理水への次亜塩素酸塩の添加量と、被処理水中の有機物の含有量の積に比例して増加する傾向が見られる。有機物の中でも、とりわけフェノール骨格を有するフミン質の含有率が高い場合、消毒副生成物が増加する傾向があるが、ハロ酢酸の生成機構は明確にされていない。
【0016】
本発明の処理の対象となる被処理水としては、地下水、井水、浸出水、河川水、湖沼水などが挙げられる。特に、地下水や井水を水処理する場合、河川水を水処理する場合に比べて次亜塩素酸塩の添加量が多いことから、ハロ酢酸等の消毒副生成物が生成しやすい傾向がある。よって、本発明は、被処理水が地下水、井水、湖沼水の場合に特に好適である。
以下の実施形態は、被処理水が地下水の場合である。
【0017】
「水処理装置」
図1に本発明の水処理装置の一例を示す。
図1に示す水処理装置1は、上流側から順に、井戸Aから被処理水として地下水Wを汲み上げる揚水手段10と、井戸Aから汲み上げた地下水Wを一旦、貯留する貯留槽20と、地下水Wに次亜塩素酸塩を添加する添加手段30と、次亜塩素酸塩を添加した地下水Wと活性炭とを接触させる活性炭処理手段40と、次亜塩素酸塩を添加した地下水Wと陰イオン交換体とを接触させるイオン交換処理手段50と、処理された地下水(以下、「処理水」ともいう。)を貯留する処理水槽60と、処理水に再度、次亜塩素酸塩を添加する添加手段70とを具備する。
なお、本発明において、陰イオン交換体と接触する前の地下水に次亜塩素酸塩を添加する添加手段30を「第1の添加手段30」ともいい、陰イオン交換体により処理された地下水(処理水)に次亜塩素酸塩を添加する添加手段70を「第2の添加手段70」ともいう。
【0018】
揚水手段10は、井戸Aから被処理水として地下水Wを汲み上げるものであり、地下水Wを汲み上げる揚水ポンプ11と、揚水管12とを備える。
この例の揚水管12の一端は揚水ポンプ11に接続され、他端は貯留槽20に接続されている。
【0019】
貯留槽20は、井戸Aから汲み上げた地下水Wを一旦、貯留するものである。井戸Aから汲み上げた地下水Wは、揚水管12を通過して貯留槽20に貯留される。
貯留槽20に貯留された地下水Wは、第1の通水管21を通過して活性炭処理手段40へ供給される。
【0020】
第1の通水管21には、地下水Wに次亜塩素酸塩を添加する添加手段30(第1の添加手段30)が接続されている。
第1の添加手段30は、次亜塩素酸塩を収容する第1の収容タンク31と、次亜塩素酸塩を第1の通水管21に供給する第1の供給管32とを備える。本実施形態においては、第1の供給管32は第1の通水管21の途中で合流しており、第1の通水管21中で地下水Wに次亜塩素酸塩が供給されるようになっている。
次亜塩素酸塩としては、次亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸カルシウムなどが挙げられる。これらの中でも、コスト、反応速度、非金属酸化剤、流通性の観点から、次亜塩素酸ナトリウムが好ましい。
【0021】
活性炭処理手段40は、次亜塩素酸塩を添加した地下水Wと活性炭とを接触させるものである。
本実施形態の活性炭処理手段40は、活性炭が充填された活性炭吸着塔41を備える。
活性炭吸着塔41の上部には第1の通水管21が接続されている。
【0022】
イオン交換処理手段50は、次亜塩素酸塩を添加した地下水Wと陰イオン交換体とを接触させるものである。
本実施形態のイオン交換処理手段50は、陰イオン交換体が充填されたイオン交換体塔51を備える。イオン交換体塔51には、陰イオン交換体の流出を防止するフィルター52が設置されている。
活性炭処理手段40を通過した地下水Wは、活性炭吸着塔41の下端から排出され、第2の通水管42を通過してイオン交換処理手段50に供給される。第2の通水管42の一端は活性炭吸着塔41の下部に接続され、他端はイオン交換体塔51の上部に接続されている。
【0023】
イオン交換体塔51には、陰イオン交換体が固定床または流動床を形成するように充填されている。
陰イオン交換体は、骨格ポリマー(樹脂母体)の表面および内部に、骨格ポリマーに化学結合されたイオン交換基(固定イオン)を有する。このイオン交換基により地下水W中のハロ酢酸や有機物が吸着され、地下水Wからハロ酢酸や有機物を除去することができる。
骨格ポリマーとしては、スチレン系、(メタ)アクリル系、(メタ)アクリルアミド系、セルロース系などのポリマーが挙げられる。これらの中でも、耐有機汚染性の観点から、親水性ポリマーである(メタ)アクリル系、(メタ)アクリルアミド系ポリマーが好ましく、コスト面からスチレン系ポリマーが好ましい。
【0024】
陰イオン交換体は弱塩基性でも強塩基性でもよいが、ハロ酢酸や有機物が吸着されやすい点で強塩基性陰イオン交換体が好ましい。
ここで、「強塩基性陰イオン交換体」とは、イオン交換基としてアルカリ性でも解離状態にある四級アンモニウム基を有する陰イオン交換体のことである。
【0025】
強塩基性陰イオン交換体として種々のイオン交換基を有するものが挙げられる。イオン交換基としては、例えば、トリメチルアンモニウム基、トリエチルアンモニウム基、トリプロピルアンモニウム基、トリブチルアンモニウム基、ヒドロキシエチルジメチルアンモニウム基、ジヒドロキシエチルメチルアンモニウム基等が挙げられる。これらの中でも、静的交換容量の最大化、イオン交換基の熱的安定性に劣ることによる溶出に伴う有機物量の増加やイオン交換基に由来する臭気の発生、長期間の使用によるイオン交換基の脱落やイオン交換基の分解に伴うホルムアルデヒドの発生の観点から、イオン交換基としてはトリメチルアンモニウム基が好ましい。
【0026】
陰イオン交換体としては、陰イオン交換樹脂、陰イオン交換繊維などが挙げられる。
陰イオン交換樹脂の粒子径は、樹脂の圧力損失の上昇を抑制する観点から大きい方が好ましい。陰イオン交換樹脂の平均粒子径は、100μm以上が好ましく、より好ましくは200μm以上であり、さらに好ましくは300μm以上である。
一方、吸着帯長を最小化し貫流交換容量を最大化する観点から、陰イオン交換樹脂の粒子径は小さい方が好ましい。陰イオン交換樹脂の平均粒子径は、800μm以下が好ましく、より好ましくは700μm以下であり、さらに好ましくは600μm以下であり、特に好ましくは500μm以下である。
陰イオン交換樹脂は、粒度分布を有する樹脂でも、粒子径が揃っている均一粒子径の樹脂でもよい。
陰イオン交換樹脂として強塩基性陰イオン交換樹脂を用いる場合、強塩基性陰イオン交換樹脂はI型でもII型でもよい。
【0027】
陰イオン交換樹脂は市販品を用いることができ、例えばザ・ダウ・ケミカル・カンパニー製のアンバーライト「IRA402」、「IRA901」、「XT5007」、「IRA958」、「IRA938」、「IRA458」や、ダウエックスマラソン「A」、「SBR」、「MSA」、「MSA−1」、「C」、「C−1」;ランクセス社製のレバチット「MP500」、「M500」、「MP504」、「A8071」;イオン・エクスチェンジ・インディア社製の「インディオンA930」;杭州争光樹脂有限公司製の「争光ZGD730」;三菱ケミカル株式会社製のダイヤイオン「SA10A」、「SA12A」、「PA308」や、リライト「JA800」、「JA810」などが好適である。
【0028】
陰イオン交換繊維を構成する繊維としては、短繊維でも長繊維でもよい。陰イオン交換繊維はグラフト重合タイプであってもよい。
陰イオン交換繊維の平均繊維径は、1μm以上が好ましく、より好ましくは10μm以上である。また、陰イオン交換繊維の平均繊維径は、1mm以下が好ましく、より好ましくは500μm以下であり、さらに好ましくは100μm以下であり、特に好ましくは50μm以下である。
陰イオン交換繊維は市販品を用いることができ、例えば株式会社ニチビ製の「IEF−SA」などが好適である。
【0029】
イオン交換処理手段50を通過した地下水W(処理水)は、イオン交換体塔51の下端から排出され、第3の通水管53を通過して処理水槽60に貯留される。第3の通水管53の一端はイオン交換体塔51の下部に接続され、他端は処理水槽60に接続されている。
処理水槽60には、受水槽(図示略)へ供給する処理水供給管61が接続されている。
【0030】
第3の通水管53には、イオン交換処理手段50を通過した地下水W(処理水)に再度、次亜塩素酸塩を添加する添加手段70(第2の添加手段70)が接続されている。
第2の添加手段70は、次亜塩素酸塩を収容する第2の収容タンク71と、次亜塩素酸塩を第3の通水管53に供給する第2の供給管72とを備える。本実施形態においては、第2の供給管72は第3の通水管53の途中で合流しており、第3の通水管53中で処理水に次亜塩素酸塩が供給されるようになっている。
第1の収容タンク31と第2の収容タンク71は共用しても構わない。
【0031】
なお、地下水Wに鉄やマンガンが含まれている場合、活性炭処理手段40の上流にろ過砂、ろ過砂利、マンガン砂、二酸化マンガン粒等の砂が充填された砂ろ過塔(図示略)を設置するのが望ましい。
【0032】
「水処理方法」
以下、
図1に示す水処理装置1を用いた地下水の水処理方法の一例について説明する。
まず、揚水ポンプ11を作動させて井戸Aから地下水Wを汲み上げる。汲み上げられた地下水Wは揚水管12を通って貯留槽20に供給され、一旦貯留される。
【0033】
貯留槽20に貯留された地下水Wは、第1の通水管21を通って活性炭処理手段40に供給される。地下水Wが第1の通水管21を通過する際に、第1の通水管21と第1の供給管32との合流点において、地下水Wに次亜塩素酸塩が添加される(添加工程)。なお、地下水Wに鉄やマンガンが含まれている場合、活性炭処理手段40の上流に砂ろ過塔(図示略)を設置しておけば、次亜塩素酸塩で酸化され析出した鉄がろ過される。さらに、砂ろ過塔にマンガン砂を充填しておけば、マンガン砂による接触酸化でマンガンが除去される。
次亜塩素酸塩の必要添加量は、地下水Wの鉄、マンガン、アンモニア、および有機物の濃度に依存する。特にアンモニア濃度の影響が大きく、アンモニアを窒素に酸化するには10当量以上の次亜塩素酸塩を添加することが好ましい。ただし、次亜塩素酸塩の添加量は、ハロ酢酸の副生や経済性の観点からできる限り少なくすることが好ましい。
地下水Wの全有機体炭素(TOC)が1ppm以上であり、かつ次亜塩素酸塩の添加量が地下水Wの1Lに対して10ppm以上である場合に、ハロ酢酸やトリハロメタンが生成しやすい傾向があり、全有機炭素が1.5ppm以上であり、かつ次亜塩素酸塩の添加量が20ppm以上である場合は、その傾向は顕著である。
ハロ酢酸の生成機構は明確にされていないが、フミン酸やフルボ酸中のフェノール骨格成分が塩素ラジカル酸化され、ハロ酢酸が生成する。さらに脱炭酸反応が進みトリハロメタンが生成すると考えられている。ただし、被処理水の分析結果に基づきハロ酢酸の生成能を推測することは困難である。
【0034】
次亜塩素酸塩が添加された地下水Wは、下向流にて活性炭処理手段40の活性炭吸着塔41を通過し、この間に活性炭と接触する(活性炭処理工程)。
地下水Wに次亜塩素酸塩を添加すると、ハロ酢酸に加えてトリハロメタンが生成する場合がある。地下水Wが活性炭と接触することで、地下水W中に生成したトリハロメタンが活性炭に吸着され、地下水Wから除去される。また、地下水W中の未反応の有機物や次亜塩素酸塩も地下水Wから除去される。
【0035】
活性炭処理手段40を通過した地下水Wは、第2の通水管42を通ってイオン交換処理手段50に供給される。地下水Wは下向流にてイオン交換処理手段50のイオン交換体塔51を通過し、この間に陰イオン交換体と接触する(イオン交換処理工程)。
地下水Wが陰イオン交換体と接触することで、次亜塩素酸塩の添加により生成したハロ酢酸が陰イオン交換体に吸着され、地下水Wから除去される。また、活性炭処理手段40で除去しきれなかった有機物も除去される。
【0036】
イオン交換体塔51に通水される地下水Wの通液速度は水質によって異なるが、通液速度は、空間速度(SV)で200hr
−1以下が好ましく、より好ましくは100hr
−1以下であり、さらに好ましくは70hr
−1以下である。また、通液速度は、空間速度(SV)で1hr
−1以上が好ましく、より好ましくは5hr
−1以上であり、さらに好ましくは10hr
−1以上であり、特に好ましくは20hr
−1以上である。
また、例えばイオン交換体塔51への陰イオン交換体の充填量が100L以下である場合は、地下水Wの通液速度は空間速度(SV)で20〜200hr
−1が好ましく、このときに使用する陰イオン交換体としては強塩基性の陰イオン交換体が好適である。特に、陰イオン交換体が陰イオン交換繊維の場合は、空間速度(SV)で50〜1,000hr
−1が好ましく、陰イオン交換樹脂の場合は、空間速度(SV)で20〜100hr
−1が好ましい。
【0037】
イオン交換処理手段50を通過した地下水W(処理水)は、第3の通水管53を通って処理水槽60に供給され、一旦貯留される。そして、処理水供給管61を通って受水槽(図示略)へ供給される。処理水が第3の通水管53を通過する際に、第3の通水管53と第2の供給管72との合流点において、処理水に次亜塩素酸塩が添加される。
【0038】
地下水Wを連続的に処理するに際して、イオン交換体塔51に充填された陰イオン交換体を定期的に再生することが好ましい。
陰イオン交換体をその場で再生する場合、揚水ポンプ11を停止し、次いで、再生水をイオン交換体塔51に供給すればよい。
また、イオン交換体塔51を新品の陰イオン交換体が充填されたものに交換し、使用済みのイオン交換体塔51を別の場所に移動させた後に、陰イオン交換体の再生処理を行ってもよい。
【0039】
再生水としては、塩化ナトリウム、塩化カリウム、硫酸ナトリウム、硫酸アンモニウム、水酸化ナトリウム、臭化ナトリウム、硫酸、塩酸、海水等の再生剤の水溶液が挙げられる。これらの中でも、1段再生で陰イオン交換体の対イオンが塩化物イオンとなることから、塩化ナトリウム水溶液、塩化カリウム水溶液が好適である。再生水として硫酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、臭化ナトリウム、硫酸アンモニウム等の再生剤の水溶液を用いた場合、陰イオン交換体の対イオンが硫酸イオン、水酸化物イオンまたは臭化物イオンとなるため、塩化物イオン形に変換するために、塩化ナトリウム水溶液や塩化カリウム水溶液を用いて2段再生してもよい。
再生水中の再生剤の濃度は、再生水の総質量に対して2〜25質量%が好ましく、2〜20質量%がより好ましく、4〜20質量%がさらに好ましく、4〜15質量%が特に好ましい。
イオン交換体塔51への再生水の通水量は、イオン交換体塔51に充填された陰イオン交換体1Lに対して、再生剤の投入量は50〜1000gとなる範囲が好ましい。例えば、陰イオン交換体1Lに対して濃度10質量%の塩化ナトリウム水溶液500mLをイオン交換体塔51に通液した場合、再生剤の投入量は50g/L−樹脂となり、再生剤の再生レベル50gと呼ばれている。
【0040】
なお、陰イオン交換体に有機物が吸着している場合には、再生剤としてメタノール、エタノール等の水溶性アルコール類、またはその水溶液もしくはその電解質溶液を用いてもよい。
回生操作を行っても陰イオン交換体の機能が回復しない場合は、陰イオン交換体を入れ替える。
【0041】
「作用効果」
以上説明した本実施形態の水処理装置、および該水処理装置を用いた水処理方法によれば、次亜塩素酸塩を添加した被処理水と陰イオン交換体とを接触させることにより、次亜塩素酸塩の添加により生成したハロ酢酸が陰イオン交換体に吸着し、被処理水からハロ酢酸を除去できる。
酢酸は弱酸であるため、陰イオン交換体に対する選択性が低く、吸着能に劣っていることから、陰イオン交換体は酢酸の除去には適していないとされている。そのため、陰イオン交換体はハロ酢酸の除去にも適していないと考えるのが技術常識の観点から通常である。
しかし、本発明者らは鋭意検討した結果、驚くべきことに、陰イオン交換体によってハロ酢酸を除去できることを見出した。陰イオン交換体によってハロ酢酸を除去できる理由としては定かではないが、ハロ酢酸に含まれるハロゲノ基の電子吸引性により、ハロ酢酸の酸性度が高くなる(すなわち、pKaが小さくなる)ため、陰イオン交換体に吸着しやすくなり、被処理水からハロ酢酸を除去できると考えられる。
【0042】
よって、従来は、次亜塩素酸塩を添加する前に、前処理により被処理水中の有機物を除去したり、生物処理により被処理水中のアンモニアを分解したりしていたが、本発明の水処理方法および水処理装置によれば、前処理により被処理水中の有機物やアンモニアを除去しておかなくても、被処理水の処理において生成するハロ酢酸を除去できる。
【0043】
また、本実施形態では、次亜塩素酸塩を添加した被処理水と陰イオン交換体とを接触させる前に、被処理水と活性炭とを接触させている。陰イオン交換体は次亜塩素酸塩により劣化しやすい傾向があるが、次亜塩素酸塩を添加した被処理水を陰イオン交換体と接触させる前に活性炭と接触させておくことで、活性炭により被処理水中の次亜塩素酸塩が除去される。よって、次亜塩素酸塩による陰イオン交換体の劣化を抑制できる。しかも、次亜塩素酸塩の添加によりハロ酢酸に加えてトリハロメタンが生成しても、活性炭によりトリハロメタンを除去できる。
【0044】
「他の形態」
図示例の水処理装置1ではイオン交換処理手段50が活性炭処理手段40の下流に設けられているが、イオン交換処理手段50および活性炭処理手段40が1つの処理手段として構成されていてもよい。すなわち、陰イオン交換体および活性炭が1つの塔に充填されていてもよい。具体的には、
図1において、陰イオン交換体が活性炭吸着塔41に充填されていても、活性炭がイオン交換体塔51に充填されていてもよい。このような状態を混床ともいう。これに対して、
図1に示すように、陰イオン交換体と活性炭とが別々の塔に充填されている状態をそれぞれ単床ともいう。陰イオン交換体と活性炭との混床状態の場合、イオン交換処理工程と活性炭処理工程が同時に行われる。
【0045】
また、次亜塩素酸塩の添加量が少ない等の場合には、活性炭処理手段40は必ずしも設置する必要はない。ただし、次亜塩素酸塩の添加によりトリハロメタンが生成したり、次亜塩素酸塩により陰イオン交換体が劣化したりする場合には、活性炭処理手段40をイオン交換処理手段50の上流に設置するか、イオン交換処理手段50および活性炭処理手段40とで1つの処理手段を構成して、活性炭により次亜塩素酸塩やトリハロメタンを除去するのが好ましい。
【0046】
図示例の水処理装置1は連続式であるが、バッチ式でもよい。また、陰イオン交換体はイオン交換体塔51に充填されているが、例えばカートリッジタイプの容器やFRPボンベに陰イオン交換体を充填してもよい。
さらに、図示例の水処理装置1では、第2の通水管42の他端がイオン交換体塔51の上部に接続され、第3の通水管53の一端はイオン交換体塔51の下部に接続されている。この場合、地下水Wは下向流にてイオン交換体塔51を通過するが、地下水Wを上向流でイオン交換体塔51に通過させてもよい。地下水Wを上向流で通過させるためには、例えば第2の通水管42の他端をイオン交換体塔51の下部に接続し、かつ第3の通水管53の一端をイオン交換体塔51の上部に接続すればよい。また、イオン交換体塔51を横向きに設置し、地下水Wを横向流で通水してもよい。ただし、地下水Wの縦拡散による吸着帯長の増加、その結果による処理量の低下、プロセスの簡素化の観点から、地下水Wを下向流でイオン交換体塔51に通水させるのが好ましい。
【0047】
また、上述したように活性炭処理手段40の上流に砂ろ過塔(図示略)を設置する場合であって、被処理水の有機物濃度が高い場合には、被処理水にポリ塩化アルミニウム(PAC)、硫酸アルミニウム(硫酸バンド)、有機高分子凝集剤、有機凝結剤等の凝集剤を砂ろ過塔の上流にて添加しておくことが好ましい。
なお、被処理水中に鉄が多く含まれている場合には、砂ろ過塔で被処理水を処理する前に、被処理水に空気をバブリングまたは圧入して鉄(II)イオンを空気酸化してもよい。
【0048】
また、イオン交換処理手段50と処理水槽60との間に膜分離手段(図示略)を設置してもよい。被処理水に細菌、微生物や懸濁物質が含まれている場合、膜分離手段により細菌および懸濁物質が除去される。
膜分離手段としては特に制限されないが、公知の分離膜(ろ過膜)を備えた公知の膜モジュールが挙げられる。分離膜の種類としては、精密ろ過膜(MF膜)、限外ろ過膜(UF膜)、逆浸透膜(RO膜)が好ましい。
【0049】
さらに、図示例の水処理装置1では、井戸Aから汲み上げた地下水Wを一旦、貯留槽20に貯留しているが、地下水Wを直接、活性炭処理手段40に供給してもよい。この場合、揚水管12が第1の通水管21を兼ねるため、揚水管12に第1の添加手段30が接続される。
また、図示例のように井戸Aから汲み上げた地下水Wを一旦、貯留槽20に貯留する場合、次亜塩素酸塩は貯留槽20に添加してもよい。
【実施例】
【0050】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0051】
「実施例1」
地下水として、表1に示す水質のものを用いた。なお、全有機体炭素(TOC)は燃焼酸化法により測定し、pHはpH計を用いて地下水温度(一般的には17℃前後)にて測定し、色度は透過光測定法により測定した。
被処理水として、地下水にトリクロロ酢酸(東京化成工業株式会社製)を濃度が10ppmとなるように添加したものを用いた。この被処理水は次亜塩素酸塩を添加した状態を再現したものである。
【0052】
【表1】
【0053】
陰イオン交換体として、強塩基性陰イオン交換樹脂(三菱ケミカル株式会社製、「リライト JA810」、ポーラス様樹脂)50mLをカラムに充填し、地下水を空間速度がSV20hr
−1の条件で1時間通水し、陰イオン交換体を洗浄した。
洗浄後の陰イオン交換体10mLを10mLのメスシリンダーで秤量し、遠心分離機で脱水した後、500mLの三角フラスコに投入した。さらに被処理水100mLを添加し、室温(25℃)で30分間振盪して被処理水を処理した後、上澄み液を採取した。
採取した上澄み液について、以下の測定条件によりガスクロマトグラフ(GC)分析し、上澄み液中のトリクロロ酢酸の濃度を測定した。結果を表2に示す。なお、検出下限は1ppmであった。
【0054】
<GC分析条件>
・GC装置:Agilent Technologies社製の「Agilent 6850シリーズ」。
・昇温条件:50℃〜250℃、昇温速度10℃/分。
・分析時間:20分。
・分析カラム:Agilent Technologies社製の「Agilent J&W GCカラム HP−5」。
・キャリアガス:He。
・検出器:FID。
・注入量:1.00μL。
【0055】
「実施例2」
陰イオン交換体として、強塩基性陰イオン交換樹脂(三菱ケミカル株式会社製、「ダイヤイオン PA308」)を用いた以外は、実施例1と同様にして被処理水を処理し、上澄み液中のトリクロロ酢酸の濃度を測定した。結果を表2に示す。
【0056】
「実施例3」
陰イオン交換体として、強塩基性陰イオン交換樹脂(ランクセス社製、「レバチット A8071」)50mLを内径13mmのガラス製カラムに充填し、実施例1と同様の地下水で充分に洗浄した。
次いで、実施例1と同様の被処理水を空間速度がSV20hr
−1の条件で通水し、被処理水を処理した。被処理水の通水開始から12時間経過後および24時間経過後の処理水を採取した。採取した処理水について、実施例1と同様にしてGC分析を行い、処理水中のトリクロロ酢酸の濃度を測定した。結果を表2に示す。
【0057】
被処理水の通水開始から24時間経過した後、被処理水の通水を停止した。次いで、濃度10質量%の塩化ナトリウム水溶液150mLを空間速度がSV2hr
−1の条件で通水し、さらに地下水を空間速度がSV5hr
−1の条件で1時間通水し、陰イオン交換体を再生した。
陰イオン交換体を再生した後、被処理水を空間速度がSV20hr
−1の条件で再び通水し、被処理水を処理した。被処理水の通水開始から24時間経過後の処理水を採取し、トリクロロ酢酸の濃度を測定した。結果を表2に示す。
【0058】
「実施例4」
陰イオン交換体として、強塩基性陰イオン交換樹脂(ザ・ダウ・ケミカル・カンパニー製、「アンバーライト IRA458」)を用いた以外は、実施例1と同様にして被処理水を処理し、上澄み液中のトリクロロ酢酸の濃度を測定した。結果を表2に示す。
【0059】
「比較例1」
陰イオン交換体の代わりに、強酸性陽イオン交換樹脂(三菱ケミカル株式会社製、「ダイヤイオン SK1B」)を用いた以外は、実施例1と同様にして被処理水を処理し、上澄み液中のトリクロロ酢酸の濃度を測定した。結果を表2に示す。
【0060】
【表2】
【0061】
表2の結果から明らかなように、各実施例の場合、上澄み液または処理水から、ハロ酢酸の代表例として知られているトリクロロ酢酸は検出されなかった。特に、実施例3の場合、陰イオン交換体を再生した後も、処理水からトリクロロ酢酸は検出されなかった。
対して、強酸性陽イオン交換樹脂を用いた比較例1の場合、上澄み液中のトリクロロ酢酸の濃度は9.8ppmであり、被処理水からトリクロロ酢酸を殆ど除去できなかった。