(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6872443
(24)【登録日】2021年4月21日
(45)【発行日】2021年5月19日
(54)【発明の名称】トルバプタンの合成中間体の改善された製造方法
(51)【国際特許分類】
C07D 223/16 20060101AFI20210510BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20210510BHJP
【FI】
C07D223/16 A
!C07B61/00 300
【請求項の数】15
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-131576(P2017-131576)
(22)【出願日】2017年7月5日
(65)【公開番号】特開2018-12690(P2018-12690A)
(43)【公開日】2018年1月25日
【審査請求日】2020年4月9日
(31)【優先権主張番号】10-2016-0090889
(32)【優先日】2016年7月18日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】515311291
【氏名又は名称】ヘキサファーマテック カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100077012
【弁理士】
【氏名又は名称】岩谷 龍
(72)【発明者】
【氏名】ハン,シン
(72)【発明者】
【氏名】ジョン,ソンヒョン
(72)【発明者】
【氏名】イ,シンヨン
【審査官】
三上 晶子
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2012/046244(WO,A1)
【文献】
中国特許出願公開第102382053(CN,A)
【文献】
特開2007−091738(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D201/00−519/00
C07B 61/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水酸化マグネシウムの存在下で、7−クロロ−5−オキソ−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−1−ベンザゼピンを2−メチル−4−ニトロベンゾイルクロライドと反応させることを含む、7−クロロ−1−(2−メチル−4−ニトロベンゾイル)−5−オキソ−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−1−ベンザゼピンの製造方法。
【請求項2】
水酸化マグネシウムの存在下で、1−(4−アミノ−2−メチルベンゾイル)−7−クロロ−5−オキソ−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−1−ベンザゼピンを2−メチルベンゾイルクロライドと反応させることを含む、7−クロロ−1−[2−メチル−4−[(2−メチルベンゾイル)アミノ]ベンゾイル]−5−オキソ−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−1−ベンザゼピンの製造方法。
【請求項3】
前記水酸化マグネシウムが、7−クロロ−5−オキソ−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−1−ベンザゼピンまたは1−(4−アミノ−2−メチルベンゾイル)−7−クロロ−5−オキソ−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−1−ベンザゼピンの1当量に対して、1〜10当量比で用いられることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記反応が、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、ジクロロメタンまたはその混合物からなる群から選択された有機溶媒中で行われることを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項5】
前記反応が、アセトニトリル中で行われることを特徴とする請求項4に記載の製造方法。
【請求項6】
前記反応が、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、ジクロロメタンまたはその混合物からなる群から選択された有機溶媒と水との混合溶媒中で行われることを特徴とする請求項2に記載の製造方法。
【請求項7】
前記反応が、ジクロロメタンと水との混合溶媒中で行われることを特徴とする請求項6に記載の製造方法。
【請求項8】
(a)水酸化マグネシウムの存在下で、1−(4−アミノ−2−メチルベンゾイル)−7−クロロ−5−オキソ−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−1−ベンザゼピンを2−メチルベンゾイルクロライドと反応させて7−クロロ−1−[2−メチル−4−[(2−メチルベンゾイル)アミノ]ベンゾイル]−5−オキソ−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−1−ベンザゼピンを製造する工程;および
(b)前記7−クロロ−1−[2−メチル−4−[(2−メチルベンゾイル)アミノ]ベンゾイル]−5−オキソ−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−1−ベンザゼピンを水素化剤の存在下で還元させてトルバプタンを製造する工程
を含む、トルバプタンの製造方法。
【請求項9】
前記水酸化マグネシウムが、1−(4−アミノ−2−メチルベンゾイル)−7−クロロ−5−オキソ−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−1−ベンザゼピンの1当量に対して、1〜10当量比で用いられることを特徴とする請求項8に記載の製造方法。
【請求項10】
工程(a)の前記反応が、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、ジクロロメタンまたはその混合物からなる群から選択された有機溶媒と水との混合溶媒中で行われることを特徴とする請求項8に記載の製造方法。
【請求項11】
工程(a)の前記反応が、ジクロロメタンと水との混合溶媒中で行われることを特徴とする請求項10に記載の製造方法。
【請求項12】
前記1−(4−アミノ−2−メチルベンゾイル)−7−クロロ−5−オキソ−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−1−ベンザゼピンが、7−クロロ−1−(2−メチル−4−ニトロベンゾイル)−5−オキソ−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−1−ベンザゼピンを塩化スズと反応させて製造され、
前記7−クロロ−1−(2−メチル−4−ニトロベンゾイル)−5−オキソ−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−1−ベンザゼピンが、水酸化マグネシウムの存在下で、7−クロロ−5−オキソ−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−1−ベンザゼピンを2−メチル−4−ニトロベンゾイルクロライドと反応させて製造されることを特徴とする請求項8〜11のいずれかに記載の製造方法。
【請求項13】
前記水酸化マグネシウムが、7−クロロ−5−オキソ−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−1−ベンザゼピンの1当量に対して、1〜10当量比で用いられることを特徴とする請求項12に記載の製造方法。
【請求項14】
前記7−クロロ−5−オキソ−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−1−ベンザゼピンと2−メチル−4−ニトロベンゾイルクロライドとの反応が、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、ジクロロメタンまたはその混合物からなる群から選択された有機溶媒中で行われることを特徴とする請求項12に記載の製造方法。
【請求項15】
前記7−クロロ−5−オキソ−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−1−ベンザゼピンと2−メチル−4−ニトロベンゾイルクロライドとの反応が、アセトニトリル中で行われることを特徴とする請求項14に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トルバプタンの合成中間体の改善された製造方法に関する。さらに詳しくは、本発明は、水酸化マグネシウムの存在下で、アミノ基とカルボキシル基とを縮合させることを含む、トルバプタンの合成中間体である7−クロロ−1−(2−メチル−4−ニトロベンゾイル)−5−オキソ−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−1−ベンザゼピンおよび7−クロロ−1−(2−メチル−4−[(2−メチルベンゾイル)アミノ]ベンゾイル)−5−オキソ−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−1−ベンザゼピンを高い収率で製造する、改善された製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
トルバプタン(Tolvaptan)は、バソプレシンの拮抗活性を有する化合物であり、心不全、肝硬化、抗利尿ホルモン分泌異常症候群(SIADH)患者等で低ナトリウム血症の治療剤として用いられる。トルバプタンの化学名は、7−クロロ−5−ヒドロキシ−1−[2−メチル−4−(2−メチルベンゾイルアミノ)ベンゾイル]−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−1−ベンザゼピンであり、下記化学式1の構造を有する(US5,258,510)。
<化学式1>
【0003】
トルバプタンの製造方法は、US5,258,510、JPH04−154765;Kazumi Kondo et al, Bioorganic & Medicinal Chemistry, 7(1999), pp. 1743−1754等に開示されている。前記製造方法は、下記反応式1のように、7−クロロ−5−オキソ−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−1−ベンザゼピン(化学式2)を2−メチル−4−ニトロベンゾイルクロライドと反応させて7−クロロ−1−(2−メチル−4−ニトロベンゾイル)−5−オキソ−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−1−ベンザゼピン(化学式3)を製造する工程;前記化学式3の中間体を塩化スズと反応させて1−(4−アミノ−2−メチルベンゾイル)−7−クロロ−5−オキソ−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−1−ベンザゼピン(化学式4)を製造する工程;前記化学式4の中間体を2−メチルベンゾイルクロライドと反応させて7−クロロ−1−[2−メチル−4−[(2−メチルベンゾイル)アミノ]ベンゾイル]−5−オキソ−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−1−ベンザゼピン(化学式5)を製造する工程;および前記化学式5の中間体を水素化ホウ素ナトリウムなどの水素化剤を用いて還元させてトルバプタン(化学式1)を製造する工程を含む。
<反応式1>
【0004】
前記反応式1にしたがう製造方法において、化学式2の化合物から化学式3の中間体を製造する工程および化学式4の中間体から化学式5の中間体を製造する工程は、両方アミノ基とカルボキシル基との縮合反応であり、各工程での収率はそれぞれ32%および53%に過ぎない欠点がある。
【0005】
そのような製造方法の問題点を改善するために、US2013/0190490は、前記アミノ基とカルボキシル基との縮合反応を重炭酸ナトリウムなどの無機塩基の存在下で反応させる、改善された製造方法を開示している。US2013/0190490にしたがって、重炭酸ナトリウムの存在下で、化学式2の化合物から化学式3の中間体を製造する工程および化学式4の化合物から化学式5の中間体を製造する工程の収率は、それぞれ85.2%および73.6%である。US2013/0190490の製造方法によって、アミノ基とカルボキシル基との縮合反応の収率を、ある程度改善することができるが、その収率がまだ低いという問題点がある。したがって、トルバプタンの製造中間体のアミノ基とカルボキシル基との縮合反応を改善して、高い収率で中間体を製造することができる方法を開発する必要が存在する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者らは、トルバプタンの製造中間体のアミノ基とカルボキシル基との縮合反応を改善して、高い収率で中間体(すなわち、化学式3の中間体および化学式5の中間体)を製造することができる方法を開発するために多様な研究を行った。驚くべきことに、本発明者らは、特定のアルカリ土金属水酸化物である水酸化マグネシウム[Mg(OH)
2]の存在下で縮合反応を行うと、化学式3の化合物および化学式5の化合物を両方95%以上の高い収率で製造することができることを見出した。
【0007】
したがって、本発明は、水酸化マグネシウムの存在下で縮合反応を行うことを含む、7−クロロ−1−(2−メチル−4−ニトロベンゾイル)−5−オキソ−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−1−ベンザゼピン(化学式3の中間体)の改善された製造方法を提供することを目的とする。
【0008】
また、本発明は、水酸化マグネシウムの存在下で縮合反応を行うことを含む、7−クロロ−1−(2−メチル−4−[(2−メチルベンゾイル)アミノ]ベンゾイル)−5−オキソ−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−1−ベンザゼピン(化学式5の中間体)の改善された製造方法を提供することを目的とする。
【0009】
また、本発明は、前記水酸化マグネシウムの存在下で縮合反応を行うことを含む、トルバプタンの改善された製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様によって、水酸化マグネシウムの存在下で、7−クロロ−5−オキソ−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−1−ベンザゼピンを2−メチル−4−ニトロベンゾイルクロライドと反応させることを含む、7−クロロ−1−(2−メチル−4−ニトロベンゾイル)−5−オキソ−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−1−ベンザゼピンの製造方法が提供される。
【0011】
本発明の別の一態様によって、水酸化マグネシウムの存在下で、1−(4−アミノ−2−メチルベンゾイル)−7−クロロ−5−オキソ−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−1−ベンザゼピンを2−メチルベンゾイルクロライドと反応させることを含む、7−クロロ−1−[2−メチル−4−[(2−メチルベンゾイル)アミノ]ベンゾイル]−5−オキソ−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−1−ベンザゼピンの製造方法が提供される。
【0012】
本発明のさらに別の一態様によって、(a)水酸化マグネシウムの存在下で、1−(4−アミノ−2−メチルベンゾイル)−7−クロロ−5−オキソ−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−1−ベンザゼピンを2−メチルベンゾイルクロライドと反応させて7−クロロ−1−[2−メチル−4−[(2−メチルベンゾイル)アミノ]ベンゾイル]−5−オキソ−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−1−ベンザゼピンを製造する工程;および(b)前記7−クロロ−1−[2−メチル−4−[(2−メチルベンゾイル)アミノ]ベンゾイル]−5−オキソ−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−1−ベンザゼピンを水素化剤の存在下で還元させてトルバプタンを製造する工程を含む、トルバプタンの製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0013】
トルバプタンの製造中間体のアミノ基とカルボキシル基との縮合反応を水酸化マグネシウム[Mg(OH)
2]の存在下で行うと、トルバプタンの合成中間体である7−クロロ−1−(2−メチル−4−ニトロベンゾイル)−5−オキソ−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−1−ベンザゼピンおよび7−クロロ−1−[2−メチル−4−[(2−メチルベンゾイル)アミノ]ベンゾイル]−5−オキソ−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−1−ベンザゼピンを95%以上の高い収率で製造することができることが本発明により見出された。したがって、本発明の製造方法は、トルバプタンの合成中間体を高い収率で製造することができ、さらにトルバプタンの産業的大規模生産に有用に用いられる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、水酸化マグネシウムの存在下で、7−クロロ−5−オキソ−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−1−ベンザゼピンを2−メチル−4−ニトロベンゾイルクロライドと反応させることを含む、7−クロロ−1−(2−メチル−4−ニトロベンゾイル)−5−オキソ−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−1−ベンザゼピンの製造方法を提供する。
【0015】
前記7−クロロ−1−(2−メチル−4−ニトロベンゾイル)−5−オキソ−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−1−ベンザゼピンの製造方法において、前記水酸化マグネシウムは、7−クロロ−5−オキソ−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−1−ベンザゼピンの1当量に対して、1〜10当量比で用いられてもよく、好ましくは1〜5当量比で用いられてもよい。また、前記反応は、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、ジクロロメタンまたはその混合物からなる群から選択された有機溶媒中で行われてもよく、好ましくはアセトニトリル中で行われてもよい。前記反応は、0ないし30℃で行われてもよく、好ましくは0ないし25℃で行われてもよく、より好ましくは約10℃の温度で行われてもよい。反応時間は、反応温度などにより適切に設定することができるが、約0.5ないし約5時間程度が好ましい。得られた生成物すなわち、7−クロロ−1−(2−メチル−4−ニトロベンゾイル)−5−オキソ−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−1−ベンザゼピンは、層分離、アルカリpHへの調節、有機溶媒を用いた抽出、濃縮などの通常の方法にしたがって単離することができる。
【0016】
本発明は、また水酸化マグネシウムの存在下で、1−(4−アミノ−2−メチルベンゾイル)−7−クロロ−5−オキソ−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−1−ベンザゼピンを2−メチルベンゾイルクロライドと反応させることを含む、7−クロロ−1−[2−メチル−4−[(2−メチルベンゾイル)アミノ]ベンゾイル]−5−オキソ−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−1−ベンザゼピンの製造方法を提供する。
【0017】
前記1−(4−アミノ−2−メチルベンゾイル)−7−クロロ−5−オキソ−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−1−ベンザゼピンは、従来の製造方法にしたがって得られたものを制限なく使用することができる。例えば、US5,258,510;Kazumi Kondo et al, Bioorganic & Medicinal Chemistry, 7(1999), pp. 1743−1754; US2013/0190490; CN102060769等に開示された製造方法にしたがって得られた1−(4−アミノ−2−メチルベンゾイル)−7−クロロ−5−オキソ−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−1−ベンザゼピンを制限なく使用することができる。具体的には、7−クロロ−1−(2−メチル−4−ニトロベンゾイル)−5−オキソ−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−1−ベンザゼピン、好ましくは上記した本発明の製造方法にしたがって得られた7−クロロ−1−(2−メチル−4−ニトロベンゾイル)−5−オキソ−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−1−ベンザゼピンと塩化スズを反応させて得られた生成物を、1−(4−アミノ−2−メチルベンゾイル)−7−クロロ−5−オキソ−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−1−ベンザゼピンとして用いられてもよい。前記反応は、溶媒としてメタノール、エタノール、好ましくはメタノール中で行われてもよい。また、前記反応は0〜25℃で行われてもよく、好ましくは10℃以下で行われてもよい。
【0018】
前記7−クロロ−1−[2−メチル−4−[(2−メチルベンゾイル)アミノ]ベンゾイル]−5−オキソ−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−1−ベンザゼピンの製造方法において、前記水酸化マグネシウムは、1−(4−アミノ−2−メチルベンゾイル)−7−クロロ−5−オキソ−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−1−ベンザゼピンの1当量に対して、1〜10当量比で用いられてもよく、好ましくは1〜5当量比で用いられてもよい。また、前記反応はアセトニトリル、テトラヒドロフラン、ジクロロメタンまたはその混合物からなる群から選択された有機溶媒と水との混合溶媒中で行われてもよく、好ましくはジクロロメタンと水との混合溶媒中で行われてもよい。前記反応は、0ないし30℃で行われてもよく、好ましくは0ないし25℃で行われてもよく、より好ましくは約10℃の温度で行われてもよい。反応時間は、反応温度などにより適切に設定することができるが、約0.5ないし約5時間程度が好ましい。得られた生成物すなわち、7−クロロ−1−[2−メチル−4−[(2−メチルベンゾイル)アミノ]ベンゾイル]−5−オキソ−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−1−ベンザゼピンは、アルカリpHへの調節、抽出、濃縮などの通常の方法にしたがって単離することができる。
【0019】
本発明は、また(a)水酸化マグネシウムの存在下で、1−(4−アミノ−2−メチルベンゾイル)−7−クロロ−5−オキソ−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−1−ベンザゼピンを2−メチルベンゾイルクロライドと反応させて7−クロロ−1−[2−メチル−4−[(2−メチルベンゾイル)アミノ]ベンゾイル]−5−オキソ−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−1−ベンザゼピンを製造する工程;および(b)前記7−クロロ−1−[2−メチル−4−[(2−メチルベンゾイル)アミノ]ベンゾイル]−5−オキソ−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−1−ベンザゼピンを水素化剤(hydrogenating agent)の存在下で還元させてトルバプタン(7−クロロ−5−ヒドロキシ−1−[2−メチル−4−(2−メチルベンゾイルアミノ)ベンゾイル]−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−1−ベンザゼピン)を製造する工程を含む、トルバプタンの製造方法を提供する。
【0020】
本発明にしたがうトルバプタン製造方法において、工程(a)は上記したように7−クロロ−1−[2−メチル−4−[(2−メチルベンゾイル)アミノ]ベンゾイル]−5−オキソ−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−1−ベンザゼピンの製造方法にしたがって行われてもよい。すなわち、前記工程(a)において、前記水酸化マグネシウムは、1−(4−アミノ−2−メチルベンゾイル)−7−クロロ−5−オキソ−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−1−ベンザゼピンの1当量に対して、1〜10当量比で用いられてもよく、好ましくは1〜5当量比で用いられてもよい。また、前記反応は、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、ジクロロメタンまたはその混合物からなる群から選択された有機溶媒と水との混合溶媒中で行われてもよく、好ましくはジクロロメタンと水との混合溶媒中で行われてもよい。
【0021】
一実施形態において、工程(a)で用いられる1−(4−アミノ−2−メチルベンゾイル)−7−クロロ−5−オキソ−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−1−ベンザゼピンは、7−クロロ−1−(2−メチル−4−ニトロベンゾイル)−5−オキソ−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−1−ベンザゼピンを塩化スズと反応させて製造され、前記7−クロロ−1−(2−メチル−4−ニトロベンゾイル)−5−オキソ−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−1−ベンザゼピンは、上記したように、水酸化マグネシウムの存在下で、7−クロロ−5−オキソ−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−1−ベンザゼピンを2−メチル−4−ニトロベンゾイルクロライドと反応させて製造してもよい。前記実施形態で、前記水酸化マグネシウムは、7−クロロ−5−オキソ−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−1−ベンザゼピンの1当量に対して、1〜10当量比で用いられてもよく、好ましくは1〜5当量比で用いられてもよい。また、前記7−クロロ−5−オキソ−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−1−ベンザゼピンと2−メチル−4−ニトロベンゾイルクロライドとの反応は、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、ジクロロメタンまたはその混合物からなる群から選択された有機溶媒で行われてもよく、好ましくはアセトニトリル中で行われてもよい。
【0022】
前記7−クロロ−1−[2−メチル−4−[(2−メチルベンゾイル)アミノ]ベンゾイル]−5−オキソ−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−1−ベンザゼピンの還元[すなわち、工程(b)の還元]は、水素化剤の存在下で行われてもよい。前記還元は公知の方法、例えばKazumi Kondo et al, Bioorganic & Medicinal Chemistry, 7(1999), pp. 1743−1754、US2013/0190490、WO2007/026971等に開示された方法にしたがって行われてもよい。前記水素化剤は、水素化ホウ素ナトリウム、水素化アルミニウムリチウム、ヒドリドホウ酸亜鉛などを用いてもよく、好ましくは水素化ホウ素ナトリウムを用いてもよい。前記水素化剤は、7−クロロ−1−[2−メチル−4−[(2−メチルベンゾイル)アミノ]ベンゾイル]−5−オキソ−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−1−ベンザゼピンの1モル当たりに0.1ないし1モルの比率で用いてもよく、好ましくは0.25ないし0.5モルの比率で用いてもよい。
【0023】
以下、本発明を下記実施例によりさらに具体的に説明する。しかし、これらの実施例は、本発明を例示的に説明するためのものであり、本発明の範囲はそれらによって制限されるものではない。
【0024】
実施例1:7−クロロ−1−(2−メチル−4−ニトロベンゾイル)−5−オキソ−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−1−ベンザゼピンの製造
【0025】
1L反応器に7−クロロ−5−オキソ−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−1−ベンザゼピン(90.0 g、460.0 mmol)およびアセトニトリル(630 ml)を加えて溶解させた後、反応混合物を10℃以下で水酸化マグネシウム(134.16 g、2300 mmol)を加え、30分間撹拌した。温度を維持しながら、反応混合物に2−メチル−4−ニトロベンゾイルクロライド(110.17 g、552.0 mmol)を徐々に加えた後、5時間撹拌した。反応混合物を濾過して水酸化マグネシウムを除去し、蒸留水(1.35 L)およびジクロロメタン(0.9 L)を入れ、層分離して有機層を得た。得られた有機層に蒸留水(1.5 L)を入れ、水酸化ナトリウム水溶液を使用して反応混合物のpHをpH 9.5〜10に調節した後、ジクロロメタン(200 ml)を入れ、撹拌した後、有機層を分離した。得られた有機層を硫酸ナトリウム(Na
2SO
4)で乾燥した後、濾過し、減圧濃縮して、7−クロロ−1−(2−メチル−4−ニトロベンゾイル)−5−オキソ−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−1−ベンザゼピン 156.79 gを得た(収率:95%)。
【0026】
実施例2:7−クロロ−1−[2−メチル−4−[(2−メチルベンゾイル)アミノ]ベンゾイル]−5−オキソ−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−1−ベンザゼピンの製造
【0027】
(1)1−(4−アミノ−2−メチルベンゾイル)−7−クロロ−5−オキソ−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−1−ベンザゼピンの合成
【0028】
2L反応器に実施例1で製造した7−クロロ−1−(2−メチル−4−ニトロベンゾイル)−5−オキソ−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−1−ベンザゼピン(140 g、390.21 mmol)およびメタノール(300 ml)を加え、室温で1時間撹拌した。反応混合物を10℃以下で撹拌しながら、塩化スズ二水和物(338.99 g、1502.31 mmol)をメタノール(600 ml)に溶かして、徐々に加えた。23時間後、水酸化ナトリウム水溶液を使用して反応混合物のpHをpH 8〜9に調節した後、ジクロロメタン(200 ml)を入れて撹拌した後、濾過して反応副産物を除去した。得られた濾液にジクロロメタン(3 L)および蒸留水(2 L)を入れ、層分離して有機層を得た。得られた有機層を硫酸ナトリウム(Na
2SO
4)で乾燥した後、濾過し、減圧濃縮して、1−(4−アミノ−2−メチルベンゾイル)−7−クロロ−5−オキソ−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−1−ベンザゼピン 115.09 gを得た(収率:89.70%)。
【0029】
(2)7−クロロ−1−[2−メチル−4−[(2−メチルベンゾイル)アミノ]ベンゾイル]−5−オキソ−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−1−ベンザゼピンの合成
【0030】
3L 反応器に工程(1)で製造した1−(4−アミノ−2−メチルベンゾイル)−7−クロロ−5−オキソ−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−1−ベンザゼピン(70.0 g、212.90 mmol)およびジクロロメタン(560 ml)と蒸留水(140 ml)とを入れ、1時間撹拌した。反応混合物を10℃以下で水酸化マグネシウム(14.90 g、14.90 mmol)を加え、30分間撹拌した。反応混合物に2−メチルベンゾイルクロライド(30.42 ml)を徐々に加えた後、3時間撹拌した。反応混合物を濾過して水酸化マグネシウムを除去し、水酸化ナトリウム水溶液を使用して反応混合物のpHをpH 8〜9に調節した後、有機層を分離した。得られた有機層を硫酸ナトリウム(Na
2SO
4)で乾燥した後、濾過し、減圧濃縮して、7−クロロ−1−[2−メチル−4−[(2−メチルベンゾイル)アミノ]ベンゾイル]−5−オキソ−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−1−ベンザゼピン 91.35 gを得た(収率:96%)。
【0031】
実施例3:7−クロロ−5−ヒドロキシ−1−[2−メチル−4−(2−メチルベンゾイルアミノ)ベンゾイル]−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−1−ベンザゼピン(トルバプタン)の製造
【0032】
1L 反応器に7−クロロ−1−[2−メチル−4−[(2−メチルベンゾイル)アミノ]ベンゾイル]−5−オキソ−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−1−ベンザゼピン(80.0 g、179.00 mmol)およびメタノール(675 ml)を入れ、30分間撹拌した。反応混合物に水素化ホウ素ナトリウム(2.37 g、62.65 mmol)を入れ、1時間撹拌した。その後、反応混合物に0.5% 希鹽酸(232 ml)を徐々に加え、常温で徐々に冷却した。結晶が析出されると、反応混合物を濾過した後、得られた濾過物を減圧乾燥して、7−クロロ−5−ヒドロキシ−1−[2−メチル−4−(2−メチルベンゾイルアミノ)ベンゾイル]−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−1−ベンザゼピン(73.9 g、92%)を得た。