(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。初めに、
図1を参照して、電子海図表示ネットワークシステム1について説明する。
図1は、第1実施形態の電子海図表示装置20を含む電子海図表示ネットワークシステム1のブロック図である。
【0012】
電子海図表示ネットワークシステム1は、船舶に搭載されて航海に必要な各種の情報を表示するためのものである。
図1に示すように、電子海図表示ネットワークシステム1は、GPS受信機11と、AIS受信機12と、船首方位センサ13と、電子海図表示装置(航海情報表示装置)20と、を含んで構成されている。また、電子海図表示ネットワークシステム1を構成する各舶用機器は、舶用ネットワーク10を介して接続されている。
【0013】
舶用ネットワーク10は、同一の船舶内の舶用機器同士で通信を行うためのネットワークである。舶用機器同士は、検出した情報等を、舶用ネットワーク10を介してやり取りすることができる。舶用ネットワーク10はLAN(Local Area Network)であり、具体的にはイーサネット(登録商標)、CAN(Controller Area Network)、又は、NMEA(National Marine Electronics Association)を採用することができる。なお、GPS受信機11、AIS受信機12、及び船首方位センサ13のうち少なくとも1つについて、舶用ネットワーク10を介してではなく、電子海図表示装置20と直接的にケーブル等で接続されていてもよい。
【0014】
GPS受信機11は、GPS衛星からの測位信号を、図略のGPSアンテナを介して受信する。GPS受信機11は、この測位信号に基づいて自船の位置(詳細には、GPSアンテナの位置、地球基準の絶対位置)を求めて電子海図表示装置20へ送信する。なお、GPS受信機11は、GPS以外のGNSS(例えば、GLONASSやGALILEO等)を用いて自船の位置を求めてもよい。
【0015】
AIS受信機12は、他船から送信されてくるAIS信号を受信するように構成されている。AIS(Univeral Shipborne Automatic Identification System:船舶自動識別システム)とは、自船の位置情報や航行情報等を無線通信によって周囲に送信するシステムである。AIS受信機12は、他船が送信したAIS信号を受信して解析することで、他船の絶対位置及び目的地等の情報(AIS情報)を取得する。AIS受信機12は、取得したAIS情報を電子海図表示装置20へ送信する。AIS情報には、他船の名称、絶対位置、針路、及び目的地等が含まれている。なお、AIS信号の解析処理は、電子海図表示装置20側で行ってもよい。
【0016】
船首方位センサ13は、自船の船首方位(自船の船首が向いている方向)を、地球基準の絶対的な方位で検出するように構成されている。船首方位センサ13は、例えば磁気方位センサ、GPSコンパス、ジャイロコンパス等を利用することができる。船首方位センサ13は、検出した船首方位を電子海図表示装置20へ送信する。
【0017】
電子海図表示装置20は、電子海図を表示するための装置である。本実施形態の電子海図表示装置20は、比較的大型(例えば、画面サイズが30インチ以上又は40インチ以上)であり、複数のユーザが同時に内容を確認することが可能である。また、電子海図表示装置20は、表示される画面が水平方向に平行となるように配置され、複数のユーザで電子海図表示装置20の周りを囲むようにして内容を確認することができる。この場合、ユーザの位置によっては、ユーザが画面を見る向きと文字の表示向きとが相違するため、電子海図表示装置20に表示される電子海図の文字が読みにくいことがある。
【0018】
また、本明細書において、水平方向とは、鉛直方向に垂直な面の他、電子海図表示装置20の設置先の床面に平行な面も含む概念である。また、本明細書において、水平方向とは、厳密に鉛直方向に垂直又は床面に平行でなくても良く、例えば10°以下の角度をなしている場合も含むものとする。また、電子海図表示装置20の画面の傾斜角度が変更可能な場合は、傾斜角度を変更して水平方向に向けることが可能であれば、「電子海図表示装置20の画面が水平方向に平行となるように配置される」に該当するものとする。
【0019】
図1に示すように、電子海図表示装置20は、航海情報取得部21と、表示部22と、操作部23と、入力部24と、記憶部25と、航海情報取得部21と、演算部26と、を備える。
【0020】
航海情報取得部21は、電子海図表示装置20の外部の機器(本実施形態ではGPS受信機11、AIS受信機12、及び船首方位センサ13)及び内部の機器(本実施形態では記憶部25)の少なくとも何れかから航海情報を取得する。航海情報取得部21は、具体的には、情報を受信するための機器又は部品であり、電子海図表示装置20の内外の機器に有線又は無線で接続される。また、航海情報とは、航海に関する情報(航海時に使用する情報、航海時に使用する情報を算出するために用いられる検出値、又は航海時に得られた情報等)である。また、航海情報取得部21は、航海情報として、特に第1航海情報と第2航海情報とを取得する。第1航海情報とは、地理的な位置に関連付けられている航海情報(例えば、海、陸、他船、浮標等の位置を示す情報)である。第1航海情報は、主として、地理的な所定範囲を示す領域に表示されるとともに、各航海情報が示す位置に応じて表示位置が決定される。第2航海情報は、画面との位置関係で表示位置が定まる航海情報である。第2航海情報は、主として、地理的な位置に関連付けられていない情報である。なお、第2航海情報が表示されない場合等において、航海情報取得部21が第2航海情報を取得しない構成であってもよい。航海情報取得部21は、取得した航海情報を演算部26に向けて出力する。
【0021】
表示部22は、電子データを図及び文字等を用いて表示可能な画面を有する部分である。表示部22は、例えば液晶ディスプレイであるが、プラズマディスプレイ又は有機ELディスプレイ等であってもよい。本実施形態では、表示部22の画面は長方形(矩形)であるが、異なる形状(例えば、正方形又は他の多角形)であってもよい。
【0022】
操作部23は、表示部22の画面に配置された静電容量式等のタッチパネルである。操作部23は、ユーザ又は所定の操作具が画面にタッチしたことを検出可能である。なお、タッチパネルに代えて、又は、加えて、ハードウェアキーが配置されていてもよい。また、本実施形態の電子海図表示装置20は当該電子海図表示装置20自身が操作部23を備える構成である。これ代えて、電子海図表示装置20にマウスやキーボード等の操作部が接続され、これらの操作部から電子海図表示装置20が指示を受付可能な構成であってもよい。操作部23は、ユーザが行った操作に応じた電気信号を出力する。特に、表示部22の画面の表示向きを変更する操作が行われることで出力される信号を本明細書では「指示信号」と称する。なお、「画面の表示向き」とは、例えば、画面(画面全体)を表示部22に対してどの向きで表示するか(つまり、画面の上側を表示部22のどちらにして表示するか)を示している。
【0023】
入力部24には、操作部23から出力された信号(指示信号等)が入力される。また、入力部24には、操作部23が出力した信号に代えて又は加えて、電子海図表示装置20の外部の機器が出力した信号が入力される構成であってもよい。入力部24は、具体的には、操作部23が出力した信号、外部の機器が出力した信号が入力される入力ポート等である。入力部24に入力された信号に応じて、演算部26が処理を行う。
【0024】
記憶部25は、海図情報(特にベクター形式の海図)、ユーザが登録した地点、ユーザが作成したルート、及び各種プログラム等を記憶している。記憶部25は、ハードディスク、フラッシュメモリ(フラッシュディスク及びメモリーカード等)、又は光ディスク等の不揮発性メモリである。記憶部25は、上記の1つのハードウェアから構成されていてもよいし、複数のハードウェアから構成されていてもよい。例えば、海図情報のみが光ディスクに記憶され、その他の情報がハードウェアに記憶されていてもよい。
【0025】
演算部26は、FPGA、ASIC、又はCPU等の演算処理装置である。演算部は、記憶部25等に記憶されたプログラムをRAM等に読み出して実行することで、電子海図表示装置20に関する様々な処理を実行できるように構成されている。例えば、演算部26は、入力部24に入力された信号に応じて、記憶部25に記憶された海図情報を表示部22に表示する処理、GPS受信機11、AIS受信機12、及び船首方位センサ13から受信した各種情報を表示部22に表示する処理、及び表示部22の画面の表示向きを変更する処理等を行う。
【0026】
次に、
図2から
図5を参照して、表示部22に表示される情報、及び、画面の表示向きを変更する処理について説明する。
【0027】
図3には、画面の表示向きの変更前の表示部22に表示される画面が示されている。海図情報には陸地及び海等の位置、等深線、水深、地名等が含まれている。海図情報は上記の第1航海情報に該当する。また、表示部22には、陸地及び海、及び水深等の地理的な位置(実際の位置)に対応した画面上の位置に、当該陸地、海、及び等深線等が図を用いて示されている。具体的には、陸地部分がドットで示され、海部分が無地で示されており、等深線が線で示されている。このように、第1実施形態では、「航海映像」として陸地、海、及び等深線等が表示されている。航海映像とは、地理的な所定の範囲を示す領域に、地理的な位置に応じて第1航海情報を図で表した映像である。
【0028】
図3に示すように、表示部22には、航海映像以外の航海情報に関する表示物として、水深31と、地名32と、自船基本情報33と、時刻34と、方位シンボル35と、AISシンボル36と、照射範囲シンボル38と、自船シンボル39と、浮標シンボル41と、ウェイポイント44と、航海ルート線47と、が表示されている。
【0029】
水深31は、文字が表示された位置の水深を示す文字である。地名32は、文字が表示された位置の地名を示す文字である。従って、水深31及び地名32は、地理的な位置に関連付けられた航海情報である。ここで、水深31又は地名32は、第1航海情報を示す文字である「第1航海情報文字」に該当する。そのため、水深31又は地名32は、地理的な位置に対応した画面上の位置に表示される。
【0030】
自船基本情報33は、自船に関する基本的な情報であり、具体的には船首方位、速度、及び位置等から構成されている。また、船首方位は電子海図表示装置20が船首方位センサ13から取得した情報である。位置は、電子海図表示装置20がGPS受信機11から取得した情報である。速度は、位置の時間変化に基づいて電子海図表示装置20が算出した情報である。自船基本情報33は、何れも文字で示されている。なお、速度については、船速計から取得してもよい。時刻34は、現在の時刻を示す文字である。ここで、自船基本情報33又は時刻34は、第2航海情報を示す文字である「第2航海情報文字」に該当する。そのため、自船基本情報33又は時刻34は、画面との位置関係で表示位置が定められる。本実施形態では、他の一般的な舶用機器と同様に、電子海図表示装置20は、自船基本情報33は画面の右上隅に表示し、時刻34を画面の右下隅に表示する。
【0031】
方位シンボル35は、表示されている海図の方位を示すシンボルである。AISシンボル36は、AIS受信機12から取得したAIS情報に基づいて作成したシンボルであり、他船の位置及び針路を示すシンボルである。照射範囲シンボル38は、灯台等が灯光を行う範囲(方位)を示すシンボルである。自船シンボル39は、自船の位置及び向きを示すシンボルである。方位シンボル35から自船シンボル39は、航海情報を示すシンボルであって、当該航海情報が示す方位に応じて表示向きが変化するシンボルである。ここで、方位シンボル35から自船シンボル39までの少なくとも何れかは、「第1シンボル」に該当する。「第1シンボル」とは、第1航海情報又は第2航海情報を表すシンボルであって、方位に応じて表示向きが変化するシンボルである。
【0032】
なお、上記の「第1シンボル」のうち、方位シンボル35のみは、第2航海情報を表すシンボルであり、航海情報との位置関係ではなく、画面との位置関係で表示位置が定められている(具体的には画面の左上隅)。一方、「第1シンボル」のうち、方位シンボル35以外は、第1航海情報を表すシンボルであり、地理的な位置に関連付けられた航海情報であり、地理的な位置に対応した画面上の位置に表示されている。
【0033】
浮標シンボル41は、浮標の位置を示すシンボルである。浮標シンボル41は、規格等で定められた形状であるため、表示向きが定められている。従って、浮標シンボル41は、航海情報を示すシンボルであって、表示向きが定められているシンボルである。ここで、浮標シンボル41は「第2シンボル」に該当する。第1航海情報又は前記第2航海情報を表すシンボルであって、表示向きが定められているシンボルである。また、浮標シンボル41も、地理的な位置に関連付けられた第1航海情報を表すシンボルであり、地理的な位置に対応した画面上の位置に表示されている。
【0034】
ウェイポイント44は、ユーザが登録した位置を示すシンボルに文字を付加したものである。ウェイポイント44は、位置を示す円形のシンボルと、シンボルの上側に文字で表示された名称と、シンボルの下側に文字で表示されたウェイポイント44までの距離と、から構成されている。ウェイポイント44は、位置を示すが方位を示す訳ではない。
【0035】
航海ルート線47は、航海ルートを示す線である。従って、航海ルート線47は文字ではなく図である。航海ルートとは、ユーザが出発地、経由地、及び目的地を設定することで作成した航路である。なお、ユーザが出発地及び目的地のみを設定して、電子海図表示装置20が航海ルートを作成することもできる。
【0036】
図3に示すように、表示部22には、装置操作(ユーザが電子海図表示装置20を操作すること)に関する表示物として、海図向き変更ボタン51と、メニューボタン52と、画面向き変更ボタン53と、が表示されている。これらの装置操作ボタンには、装置操作の内容を示す装置操作文字が含まれている。なお、本明細書では、画面に表示されている表示物であって、ユーザがタッチ操作で操作可能な表示物を装置操作ボタン(即ちGUI上のボタン)と称している。
【0037】
海図向き変更ボタン51は、画面の左下隅に表示されている。海図向き変更ボタン51は、画面上側が北となる向きで海図を表示するノースアップ、画面上側が自船の船首方位となる向きで海図を表示するヘディングアップ、又は、画面上側が航海ルートの針路方向となる向きで海図を表示するコースアップの複数のモードを切り替えるための装置操作ボタンである。
【0038】
メニューボタン52は、画面の下側かつ中央に表示されている。メニューボタン52は、海図に関する操作(例えば、海図のメンテナンス、ルートの作成、及び表示の調整)を行うための装置操作ボタンである。
【0039】
画面向き変更ボタン53は、画面の上側(長辺側の一辺)かつ中央に表示されている。画面向き変更ボタン53は、画面の表示向きを180°変更するための装置操作ボタンである。画面向き変更ボタン53は、ユーザがタッチすることで操作(指示)が完了する構成であってもよいし、ユーザが所定の方向にドラックすることで操作(指示)が完了する構成であってもよい。
【0040】
以上に示した、航海情報及び装置操作に関する表示物は一例であり、電子海図表示装置20は、他の表示物を表示可能な構成であってもよいし、以上に示した表示物の一部が表示されない構成であってもよい。また、以上に示した表示物の形状等は一例であり、異なる形状であってもよい。また、画面との位置関係で表示位置が定まる表示物については、以上で示した位置とは異なる位置に表示される構成であってもよい。
【0041】
以下、画面向き変更ボタン53を操作した際に演算部26が行う処理、及び、表示部22の表示がどのように切り替わるか等について説明する。
図2には、演算部26が画面の表示向きを回転する際に行う処理を示すフローチャートが示されている。
【0042】
演算部26は、画面の表示向きの変更を指示する指示信号(以下、指示信号)が入力されたか否かを判断する(S101)。本実施形態では、ユーザが画面向き変更ボタン53を操作することで、入力部24に指示信号が入力される。
【0043】
なお、画面向き変更ボタン53の操作以外に基づいて、指示信号が入力部24に入力される構成であってもよい。例えば、ハードウェアキーの操作、ユーザの音声による指示、ユーザの位置の検出結果等である。また、指示信号は、画面の向きを変更する旨の指示がデータとして当該信号に記述されているか否かは問わず、指示信号が入力部24に入力されることをトリガとして画面の向きが変更されれば足りるとする。
【0044】
演算部26は、指示信号が入力された場合(S101でYesの場合)、画面との位置関係で表示位置が定まる表示物の表示位置等を変更するアニメーションを開始する(S102)。「画面との位置関係で表示位置が定まる表示物」とは、本実施形態では、「第2航海情報文字」=「自船基本情報33、時刻34」と、「装置操作ボタン」=「海図向き変更ボタン51、メニューボタン52、画面向き変更ボタン53」と、第2航海情報を表すシンボル=「方位シンボル35」である。
【0045】
ステップS102で示すアニメーションとは、「画面との位置関係で表示位置が定まる表示物」が目的位置まで移動するものである。また、本実施形態では、画面向き変更ボタン53を操作することで画面の表示向きが180°変更されるため、
図4に示すように、各表示物は画面の中心を通過するようにして移動する。また、本実施形態では、画面の中心を通過する際に、表示物の表裏が回転するようなアニメーションが行われる。このようなアニメーションを行うことにより、画面の表示向きが変更されたことが視覚的に分かり易くなる。なお、このようなアニメーションを省略することもできる。
【0046】
また、このアニメーションが開始した後(ステップS102の後)であって終了前(ステップS104の前)に、演算部26は、文字(具体的には、第1航海情報文字、第2航海情報文字)の表示向きを変更する(S103)。本実施形態では、「画面との位置関係で表示位置が定まる表示物」が画面の中心を通過するタイミングで文字の表示向きが変化する(180°回転する)。なお、文字の表示向きを本実施形態とは異なるタイミングで変更する構成であってもよい。
【0047】
以下、画面の表示向きの変更前と変更後で、各表示物の表示位置及び表示向きがどのように変更されるかについて説明する。本実施形態では、演算部26は、複数のレイヤ画像を重ねて、表示部22に表示する画像を作成している。そのため、各レイヤ画像を構成する少なくとも一部の表示物の向きを回転させることで、一部の表示物のみを回転させた画像を表示部22に表示できる。
【0048】
本実施形態では、画面の表示向きが変更された場合であっても、地理的な位置と画面上の位置の対応関係を維持する(変更されない)構成である。言い換えれば、画面の表示向きの変更の前後において、画面上の方位が変更されない構成である。従って、画面の表示向きが変更された場合であっても、
図3及び
図5に示すように、海図の向きは変更されない。この構成により、例えば、表示部22の長辺側の一側と他側にそれぞれユーザがいる場合において、画面の表示向きを180°変更したときであっても、地理的な位置と画面上の位置との対応関係を把握し直す必要がないため、スムーズに航海情報を把握できる。なお、海図の表示向きが維持されるため、航海ルート線47の表示位置は当然維持される。
【0049】
水深31又は地名32を示す第1航海情報文字は、地理的な位置に関連付けられた航海情報を示すため、表示位置が維持される。一方で、第1航海情報文字は、文字であるため、読み易くなるように、表示向きが変更される。なお、地名32は、表示位置が厳密には同一ではないが、関連付けられた位置(具体的には島の位置)を示しているため、「表示位置が維持される」に相当するものとする。
【0050】
自船基本情報33又は時刻34を示す第2航海情報文字は、画面との位置関係で表示位置が定まるため、表示位置が変更される(具体的には、画面の中心を回転中心として、画面の表示向きの変更に応じた角度だけ回転する)。これにより、画面向き変更ボタン53を操作したユーザは、違和感なく(通常通りの間隔で)、自船基本情報33及び時刻34等を確認できる。一方で、第2航海情報文字は、文字であるため、読み易くなるように、表示向きが変更される。
【0051】
このように、同じ文字であっても、上記のように表示位置を維持するか変更するかを定めることで、航海情報を正しく、かつ、ユーザの違和感なく航海情報を表示できる。
【0052】
方位シンボル35から自船シンボル39の何れかを示す第1シンボルは、航海情報が示す方位に応じて表示向きが変化するシンボルであるため、表示向きが維持される。なお、方位シンボル35は、画面との位置関係で表示位置が定まるため、表示位置が変更される。一方、方位シンボル35以外は、地理的な位置に関連付けられた航海情報であるため、表示位置も維持される。
【0053】
浮標シンボル41を示す第2シンボルは、表示向きが定められているシンボルであるため、表示向きが変更される。また、浮標シンボル41は、地理的な位置に関連付けられた航海情報であるため、表示位置は維持される。
【0054】
ウェイポイント44は、シンボル部分は円形であり上下対象であるため、表示向きは変更されない。なお、シンボルが他の形状(例えば三角形)であれば、表示向きを変更してもよい。また、ウェイポイント44には、シンボルの上側に名称が表示され、下側に距離が表示されるため、その位置関係を維持するために、これらの文字の位置が入れ替わる。また、文字であるため、読み易くなるように、表示向きが変更される。
【0055】
海図向き変更ボタン51、メニューボタン52、又は画面向き変更ボタン53を示す装置操作ボタンは、画面との位置関係で表示位置が定まるため、表示位置が変更される。そのため、画面向き変更ボタン53が操作された箇所が画面の表示向きの下側になるように画面の表示向きが変更される。また、これらのボタンには文字が含まれているため、読み易くなるように、表示向きが変更される。なお、これらのボタンに文字ではなくアイコン等が含まれている場合であっても、アイコンの内容が分かり易くなるように、表示向きが変更される。
【0056】
また、上述したように、海図を表示する向きを定めるモードとして、例えば、ノースアップ、ヘディングアップ、及びコースアップ等が存在する。画面の表示向きが180°変更された場合、変更前において画面下側であった方向が画面上側に変更される。従って、これらのモードを維持する場合、海図等の表示向きが変更されてしまう。それを防止するため、本実施形態では、ノースアップ時に画面の表示向きが180°変更された場合、画面下側が北となる向きで海図を表示するいわば「ノースダウン」を設定する。ヘディングアップの場合についても同様に、画面下側が船首方位となる向きで海図を表示する「ヘディングダウン」を設定する。コースアップの場合についても同様に、画面下側が航海ルートの針路方向となる向きで海図を表示する「コースダウン」を設定する。このように、画面の表示向きが変更された場合は、変更された角度に応じて、海図の表示向きを定めるモードを調整する。また、画面の表示向きを変更した後では、調整後のモードである、「ノースダウン」、「ヘディングダウン」、「コースダウン」の中からモードを選択可能な構成であってもよい。あるいは、通常通りのモードである、「ノースアップ」、「ヘディングアップ」、「コースアップ」の中からモードを選択可能な構成であってもよい。
【0057】
また、電子海図表示装置20を操作して設定を変更している途中や、電子海図表示装置20を操作して情報を登録している等の操作を行っている途中においても、画面向き変更ボタン53を操作することで、当該操作内容を維持しつつ、画面の表示向きを変更することができる。例えば、航海ルートの作成の途中において、状態を維持しつつ(航海ルート作成内容を維持しつつ)、画面の表示向きを変更することができる。
【0058】
これにより、例えば一部の経由地の選択を一側にいるユーザが行い、電子海図表示装置20が経由地の選択を受け付けている状態において、画面の表示向きを変更した場合であっても、電子海図表示装置20は経由地の選択を受け付けている状態を継続している。そのため、残りの経由地の設定を他側にいるユーザが行うことができる。経由地だけでなく、出発地又は目的地の設定を受け付けている場合も同様である。
【0059】
以上に説明したように、電子海図表示装置20は、航海情報取得部21と、表示部22と、入力部24と、演算部26と、を備え、以下の処理を行う航海情報表示プログラムが実行されることで航海情報表示方法を行う。航海情報取得部21は、地理的な位置に関連付けられた第1航海情報を取得する。表示部22は、第1航海情報に関する図を用いて表された航海映像を表示し、更に、第1航海情報を表す第1航海情報文字、画面との位置関係で表示位置が定まる第2航海情報を表す第2航海情報文字、及び、自装置(電子海図表示装置20)の操作に関する装置操作文字の少なくとも何れかの文字を表示する。入力部24には、画面の表示向きの変更を指示する指示信号が入力される。演算部26は、指示信号が入力部24に入力されることで、航海映像の表示向きは維持しつつ、文字の表示向きを変更する。
【0060】
これにより、画面の表示向きの変更に応じて文字の表示向きが変更されるので、ユーザは、表示部22に表示される文字を確認し易くなる。一方で、航海映像の表示向きが維持されるので、ユーザは、地理的な位置と画面上の位置の対応関係を把握し直す必要がない。以上により、画面の表示向きを変更した場合においても、航海映像をスムーズに把握できる。
【0061】
次に、
図6及び
図7を参照して、第2実施形態を説明する。なお、第2実施形態の説明においては、前述の実施形態と同一又は類似の部材には図面に同一の符号を付し、説明を省略する場合がある。
【0062】
第2実施形態では、海図に代えてレーダ映像が航海映像として表示される。レーダ映像は、表示部22と同様の構成のレーダ映像表示部29によって表示される。レーダ映像表示部29は、レーダ装置の一部(本体側の機器)の一部であってもよいし、レーダ装置等の複数の舶用機器から情報を取得して表示する多機能表示装置の一部であってもよい。
【0063】
図6に示すように、レーダ映像表示部29には、航海情報として、レーダエコー61と、方位62と、レーダ情報63と、が表示されている。また、レーダエコー61が航海映像であり、方位62が第1航海情報文字であり、レーダ情報63が第2航海情報文字に相当する。
【0064】
また、レーダ映像表示部29には、装置操作のためのボタンとして、上述の画面向き変更ボタン53に加え、メニューボタン56が表示されている。メニューボタン56は、メニューボタン52と同様に、レーダ装置に関する操作を行うためのボタンである。
【0065】
図6及び
図7に示すように、画面向き変更ボタン53を操作することで、画面の表示向きが180°変更される。第1実施形態では、第2航海情報及び装置操作ボタンは海図上に重畳されて表示されているため、航海映像である海図が全画面で表示されているので、海図の表示向きだけでなく表示位置も変更されない。しかし、第2実施形態では、航海映像であるレーダエコー61が全画面で表示されていないため、レーダエコー61の表示位置が変更される。なお、画面全体におけるレーダエコー61の表示位置は変更されるが、レーダ映像(図において同心円で囲まれる領域)における各レーダエコー61の表示位置は変更されない。レーダエコー61の表示位置が変更されることを防止するために、第2実施形態の構成に代えて、レーダエコー61の表示位置を維持し、代わりにレーダ情報63の表示位置を変更する構成であってもよい。
【0066】
以上に本発明の好適な実施の形態を説明したが、上記の構成は例えば以下のように変更することができる。
【0067】
上記実施形態では、電子海図表示装置20は画面が水平面と平行となるように配置されているが、異なる角度で配置される構成であってもよい。
【0068】
電子海図表示装置20の記憶部25が記憶する電子海図の一部がラスター形式であってもよい。この場合、ラスター形式では電子海図の表示物の一部のみを回転させることはできないため、ベクター形式の電子海図を表示する場合に限って、画面の表示向きの回転等の処理を行う。
【0069】
上記実施形態では、画面の表示向きを180°回転させる場合について説明したが、他の角度(例えば90°)回転させる場合においても、本発明を用いることができる。この場合、複数の画面向き変更ボタン53を表示部22に表示させてもよい。
【0070】
上記実施形態では、画面向き変更ボタン53が常に表示されているが、所定の操作を行うことで画面向き変更ボタン53が表示される構成であってもよい。
【0071】
上記実施形態では、電子海図及びレーダ映像を主に表示する表示装置に本発明を適用する例を説明したが、位置に関連付けられた航海情報を表示する構成であれば、他の航海情報(天気情報、水中探知結果)等を表示する表示装置にも本発明を適用できる。