特許第6872454号(P6872454)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6872454
(24)【登録日】2021年4月21日
(45)【発行日】2021年5月19日
(54)【発明の名称】薬液合成装置
(51)【国際特許分類】
   B01J 4/00 20060101AFI20210510BHJP
【FI】
   B01J4/00 103
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-150356(P2017-150356)
(22)【出願日】2017年8月3日
(65)【公開番号】特開2019-25458(P2019-25458A)
(43)【公開日】2019年2月21日
【審査請求日】2020年3月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000219314
【氏名又は名称】東レエンジニアリング株式会社
(72)【発明者】
【氏名】丹羽 主
(72)【発明者】
【氏名】井中 千草
【審査官】 河野 隆一朗
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−216352(JP,A)
【文献】 特開昭63−252538(JP,A)
【文献】 特開平07−081981(JP,A)
【文献】 特開2015−171899(JP,A)
【文献】 特表2002−518526(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 4/00 − 4/02
B01J 19/24
B01J 3/02
C08G 85/00
C12M 1/00
B01J 19/00
C08F 2/00 − 2/60
C12P 21/00 − 21/08
C07H 21/00 − 21/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬液が供給される反応容器と、
前記反応容器から排出された廃液を貯留する廃液タンクと、
を備え、
前記反応容器と前記廃液タンクとの間には、廃液配管を通じて前記廃液タンクよりも容量の小さい中間容器が設けられ、この中間容器の圧力が調節されることにより、前記反応容器に供給される流量、及び、前記反応容器から排出される流量が調節されることを特徴とする薬液合成装置。
【請求項2】
前記中間容器には、この中間容器の圧力を調節する圧力調整器が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の薬液合成装置。
【請求項3】
前記中間容器には、圧力調整量が異なる複数の前記圧力調整器が設けられており、これらの圧力調整器が切り替えられることにより、選択された一の圧力調整器により、前記中間容器の圧力が調節されることを特徴とする請求項2に記載の薬液合成装置。
【請求項4】
前記中間容器と前記廃液タンクとを連結する配管に設けられる廃液開閉バルブが設けられ、この廃液開閉バルブと前記圧力調整器とが選択的に切り替えられることにより、前記中間容器の圧力が、前記廃液タンクと同じ圧力、又は、前記圧力調整器で調整される圧力に調節されることを特徴とする請求項2又は3に記載の薬液合成装置。
【請求項5】
前記反応容器に供給する薬液が貯留される薬液タンクが設けられており、この薬液タンクを加圧するためのガスを供給するガス供給配管には、このガス供給配管の圧力を調整する減圧弁が設けられていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の薬液合成装置。
【請求項6】
前記中間容器は、前記反応容器の容量よりも大きい容量を有していることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の薬液合成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の薬液を反応させて合成させる薬液合成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
タンパク質、ペプチド、ポリマー、核酸等を化学合成する薬液合成装置では、複数の薬液(試薬)を反応容器に供給し化学合成が行われる。例えば、核酸を合成する場合には、反応容器内にビーズを多数設け、この反応容器に薬液を順次供給しながら、脱トリチル化、カップリング、酸化、キャッピング等の処理を繰り返し行ってビーズに塩基を次々に結合させる。
【0003】
このような薬液合成装置として、例えば、下記特許文献1に記載の薬液合成装置が知られている。ここで、図5は、一般的な薬液合成装置の配管経路図を表したものである。この薬液合成装置は、薬液が供給される反応容器100と、この反応容器100に供給する薬液を貯留する薬液タンク101と、反応容器100から排出された廃液を貯留する廃液タンク102とを備えており、それぞれ配管103で連結されている。そして、薬液タンク101から反応容器100に薬液が供給されることにより反応容器100内で薬液との化学合成が行われ、最終的に薬液は廃液タンク102に排出される。この薬液の反応容器100への供給、および、反応容器100からの排出は、薬液タンク101の加圧手段104により行われる。すなわち、加圧手段104は、高圧のガスが充填されているガスタンク104aを有しており、薬液タンク101に高圧ガスを供給することにより薬液タンク101内が加圧され薬液が反応容器100に供給される。加圧された薬液は反応容器100に流入されつつ、反応容器100で化学合成が行われ、反応後の薬液、余剰の薬液は、加圧手段104により薬液タンク101が加圧されることにより廃液タンク102に排出される。なお、図5に示す例では、薬液タンク101が1つのみ記載されているが、実際は、複数種類の薬液タンク101が多数設けられており、化学合成に必要な薬液が選択されて反応容器100に供給されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2002−518526号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記薬液合成装置では、プロセスに応じて薬液の供給量、排出量を調節するのが困難であるという問題があった。上記薬液合成装置では、流入側の加圧手段104のみで送液しているため、薬液の送液速度を調節するには限界がある。そのため、例えば、反応速度の遅い薬液を合成する場合には、薬液を反応させるための反応時間が必要になるが、実際には、反応時間を稼ぐために薬液を必要以上に流入させて見かけ上の反応時間を稼いで合成させる必要があった。また、新たな化学合成を行う場合には、反応容器100に洗浄液を流入させて洗浄するが、洗浄液の流入、排出に時間がかかると、薬液合成装置の稼働率低下の要因になるという問題があった。
【0006】
このような問題を解決するため、廃液タンク102にも、加圧手段、負圧手段等を設けることにより、反応容器100の流入側と流出側の差圧を調節し、薬液等の送液速度を調節することができる。ところが、廃液タンク102は、様々なプロセスの廃液を貯留するため、反応容器100に比べて、はるかに容積の大きいものが使用されている。そのため、廃液タンク102の圧力を調節しようとすると、加圧手段、負圧手段として高出力の機器が必要になり、薬液合成装置全体が大型化してしまうという問題があった。
【0007】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、装置全体が大型化することなく、反応容器に供給される薬液の流量、及び、反応容器から排出される流量を調節することができる薬液合成装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために本発明の薬液合成装置は、薬液が供給される反応容器と、前記反応容器から排出された廃液を貯留する廃液タンクと、を備え、前記反応容器と前記廃液タンクとの間には、廃液配管を通じて前記廃液タンクよりも容量の小さい中間容器が設けられ、この中間容器の圧力が調節されることにより、前記反応容器に供給される流量、及び、前記反応容器から排出される流量が調節されることを特徴としている。
【0009】
上記薬液合成装置によれば、反応容器と廃液タンクとの間に設けられる中間容器の圧力を調節することにより、反応容器に供給される流量、及び、前記反応容器から排出される流量を調節することができる。すなわち、中間容器は反応容器の流出側に配置されているため、この中間容器の圧力を調節することにより反応容器の流入側と流出側の差圧が調節され、薬液等の送液速度を調節することができる。そして、中間容器は、廃液タンクよりも小さく形成されているため、中間容器の圧力を調節する加圧手段、負圧手段等の出力を廃液タンクの圧力を調節する場合に比べて小さくすることができる。したがって、加圧手段、負圧手段等の機器を小型化することができるため、薬液合成装置全体を大型化することなく反応容器に供給される薬液の流量、及び、反応容器から排出される流量を調節することができる。
【0010】
また、上記薬液合成装置の具体的な態様としては、前記中間容器には、この中間容器の圧力を調節する圧力調整器が設けられている構成にすることができる。
【0011】
この構成によれば、例えば、真空ポンプ、背圧弁等の圧力調整器を用いることにより、中間容器の圧力を容易に調整することができる。
【0012】
また、前記中間容器には、圧力調整量が異なる複数の前記圧力調整器が設けられており、これらの圧力調整器が切り替えられることにより、選択された一の圧力調整器により、前記中間容器の圧力が調節される構成にしてもよい。
【0013】
この構成によれば、圧力調整器を選択することで中間容器の圧力が調節され、ひいては、反応容器に供給される流量、反応容器から排出される流量を選択的に調節することができる。
【0014】
また、前記中間容器と前記廃液タンクとを連結する配管に設けられる廃液開閉バルブが設けられ、この廃液開閉バルブと前記圧力調整器とが選択的に切り替えられることにより、前記中間容器の圧力が、前記廃液タンクと同じ圧力、又は、前記圧力調整器で調整される圧力に調節される構成にしてもよい。
【0015】
この構成によれば、廃液開閉バルブと圧力調整器とを選択的に切り替えることにより、反応容器に供給される薬液の流量、及び、反応容器から排出される流量を用途に応じて容易に調節することができる。
【0016】
また、前記反応容器に供給する薬液が貯留される薬液タンクが設けられており、この薬液タンクを加圧するためのガスを供給するガス供給配管には、このガス供給配管の圧力を調整する減圧弁が設けられている構成にしてもよい。
【0017】
この構成によれば、反応容器の流入側を減圧させることができるため、反応容器の流入側と流出側の差圧をより細かく調節することができる。
【0018】
また、前記中間容器は、前記反応容器の容量よりも大きい容量を有している構成にしてもよい。
【0019】
この構成によれば、反応容器に供給された薬液をすべて中間容器に移すことができるため、反応容器の薬液を一度に排出させることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の薬液合成装置によれば、装置全体が大型化することなく、反応容器に供給される薬液の流量、及び、反応容器から排出される流量を調節することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の薬液合成装置の概略的な配管経路図である。
図2】上記薬液合成装置を大気圧モードで動作させる場合のバルブの開閉状態を示した図である。
図3】上記薬液合成装置を背圧モードで動作させる場合のバルブの開閉状態を示した図である。
図4】上記薬液合成装置を吸引モードで動作させる場合のバルブの開閉状態を示した図である。
図5】従来の薬液合成装置の配管経路図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の薬液合成装置に係る実施の形態を図面を用いて説明する。
【0023】
図1は、本発明の一実施形態における薬液合成装置を示す配管経路図である。
【0024】
図1に示すように、薬液合成装置は、薬液が貯留される薬液タンク1と、薬液が合成される反応容器2と、この反応容器2から排出された廃液を貯留する廃液タンク3と、を備えており、それぞれ配管4で連結されている。そして、薬液タンク1から反応容器2に薬液が供給されると反応容器2で薬液が化学合成され、化学合成後の薬液が廃液タンク3に排出される。例えば、核酸を合成する場合には、反応容器2内にビーズが多数設けられており、この反応容器2に薬液を順次供給しながら、脱トリチル化、カップリング、酸化、キャッピング等の処理を繰り返し行ってビーズに塩基を次々に結合させる。
【0025】
薬液タンク1は、化学合成の試薬となる薬液を貯留するためのものである。図1の例では、1つの薬液タンク1が図示されているが、通常は、複数の薬液タンク1が設けられており、それぞれの薬液タンク1が独立した送液配管44で反応容器2と連結されている。すなわち、複数種類の薬液が混合されることなく反応容器2に供給できるようになっている。なお、これらの送液配管44はそれぞれ開閉バルブ52が設けられており、開閉バルブ52を開状態にすることにより、選択された薬液のみを送液配管44を通じて反応容器2に供給できるようになっている。
【0026】
薬液タンク1には、加圧手段6が接続されており、この加圧手段6により薬液タンク1の薬液が送液されるように形成されている。加圧手段6は、高圧のガスが充填されているガスタンク61と、このガスタンク61と薬液タンク1とを連結するガス供給配管41とを有しており、このガス供給配管41を通じてガスタンク61のガスを薬液タンク1に供給することができる。そして、ガスタンク61のガスが供給されることにより、薬液タンク1の圧力がガスタンク61の圧力に調節され、薬液タンク1から送液される薬液の流量を調節できるようになっている。すなわち、薬液タンク1の圧力と反応容器2との差圧を大きくすると、薬液タンク1から送液される薬液の送液速度が大きくなって薬液量を大きくすることができ、薬液タンク1の圧力と反応容器2との差圧を小さくすると、薬液タンク1から送液される薬液の送液速度が小さくなって薬液量を抑えることができる。なお、このガスタンク61のガスは、薬液タンク1の薬液と反応しないガスが用いられている。
【0027】
また、加圧手段6のガスタンク61と薬液タンク1とを連結するガス供給配管41には、減圧弁62が設けられている。この減圧弁62は、加圧手段6の圧力を軽減させて薬液タンク1の薬液の送液量を調節するためのものである。この減圧弁62は、大気への解放量を調節することで配管4内の圧力を調節することができ、ガスタンク61のみで調節するよりも細やかに調節することができる。すなわち、ガスの供給量をガスタンク61の圧力で調節しつつ、さらに減圧弁62で減圧させることにより、配管4内の圧力が細かく調節され、ガスタンク61のみで調節する場合に比べて、薬液タンク1から送液される薬液量を細かく調節することができる。さらに、ガスタンク61のみで調節される薬液の送液速度の下限値をさらに下げることができ、結果として反応容器2に送液される薬液の時間を遅らせることにより、反応容器2における薬液の反応時間を稼ぐことができる。
【0028】
また、本実施形態では、洗浄液を貯留する洗浄液タンク11が設けられている。この洗浄液タンク11は、薬液タンク1と同様に、反応容器2と洗浄液配管42で連結されており、この洗浄液配管42に開閉バルブ53が設けられている。すなわち、この開閉バルブ53を開状態にすることで、洗浄液タンク11と反応容器2とが連通し、反応容器2に洗浄液を供給することができる。
【0029】
また、洗浄液タンク11には、加圧手段6が接続されており、本実施形態では、薬液タンク1の加圧手段6と共用できるように構成されている。すなわち、加圧手段6のガスタンク61と洗浄液タンク11とが減圧弁62よりも下流側で接続されており、ガスタンク61からガスが供給されることにより洗浄液タンク11内が加圧され、洗浄液が反応容器2に送液されるようになっている。すなわち、加圧手段6により洗浄液タンク11と反応容器2との差圧を調節することにより、洗浄液の供給量を変化させることができる。なお、減圧弁62を操作することにより、薬液同様、洗浄液タンク11から送液される洗浄液量を開閉バルブ53のみで調節する場合に比べて、さらに細かく調節することができる。
【0030】
また、加圧手段6のガスタンク61には、減圧弁62よりも下流側で反応容器2と直結する強制排出配管43が連結されている。この強制排出配管43によりガスタンク61のガスを直接反応容器2に供給して反応容器2内を直接加圧させることができる。すなわち、強制排出配管43には、開閉バルブ51が設けられており、開閉バルブ51を開の状態でガスを供給することにより、反応容器2内にガスを供給し加圧させることができる。これにより、反応容器2と、その下流側とに差圧が発生するため、反応容器2内の薬液を下流側に強制的に排出させることができる。なお、薬液タンク1、洗浄液タンク11と同様に、減圧弁62を操作することにより、開閉バルブ51のみで調節する場合に比べて、反応容器2から排出させる薬液等の排出量をさらに細かく調節することができる。
【0031】
また、反応容器2は、供給された薬液等を化学合成させるためのものである。本実施形態の反応容器2は、筒状形状を有しており、薬液等が供給される流入側の供給ポート21と、不要になった薬液等を排出させる流出側の排出ポート22を有している。供給ポート21には、上述の送液配管44、強制排出配管43、洗浄液配管42がそれぞれ接続されており、所望の開閉バルブ51、52、53を開状態にして加圧手段6を操作することにより、薬液、洗浄液等が供給されるようになっている。また、排出ポート22には、廃液配管45が接続されており、加圧手段6を操作することにより、反応容器2内の薬液等を排出させることができるようになっている。
【0032】
また、反応容器2の下流側(流出側)には、排出された薬液等を貯留する廃液タンク3が設けられている。廃液タンク3は、反応容器2と廃液配管45で連結されており、反応容器2から排出ポート22から排出された廃液が廃液配管45を通じて廃液タンク3に送液されるようになっている。本実施形態では、廃液配管45は、反応容器2と後述の中間容器7とを連結する第1廃液配管45aと、中間容器7と廃液タンク3とを連結する第2廃液配管45bとで形成されており、これらを区別なく表す場合は単に廃液配管45と呼ぶ。
【0033】
また、本実施形態の廃液タンク3は、反応容器2に比べて容量が大きく形成されており、反応容器2から複数回排出された場合でも貯留できる容量に形成されている。これにより、廃液タンク3が満了になったことによる交換作業の回数を減らすことができ薬液合成装置全体の稼働率低下を抑えることができる。
【0034】
また、廃液タンク3には、大気開放弁31が取り付けられており、廃液タンク3内が大気圧と同じ圧力に調節されている。また、廃液タンク3と中間容器7とを連結する第2廃液配管45bには、廃液開閉バルブ54が設けられており、廃液開閉バルブ54を開状態にすることにより廃液タンク3と中間容器7とを連通させることができる。これにより、反応容器2内の薬液を排出する場合には、廃液開閉バルブ54を開けて中間容器7、廃液タンク3を大気圧に調節した状態で反応容器2の圧力を大気圧よりも高くすることにより、反応容器2と廃液タンク3とに差圧を発生させ強制的に薬液を排出させることができる。
【0035】
また、反応容器2と廃液タンク3との間には中間容器7が設けられている。この中間容器7は、反応容器2に供給される薬液等の流量、及び、前記反応容器2から排出される廃液の流量を調節するためのものである。すなわち、この中間容器7の圧力を調節することにより、反応容器2の上流側の圧力と、下流側の圧力(中間容器7の圧力)との差圧が調節され、反応容器2に対する流入、流出の速度、及び、流量を調節することができる。
【0036】
この中間容器7は、筒状の密封容器であり、廃液タンク3の容量よりも小さい容量に形成されている。中間容器7の上流側に位置する蓋部71には、反応容器2と接続される第1廃液配管45aと、廃液タンク3と接続される第2廃液配管45bとが接続されている。これにより、反応容器2から排出される廃液は、第1廃液配管45aを通じて中間容器7に流入し、第2廃液配管45bを通じて廃液タンク3に流出される。
【0037】
また、中間容器7の蓋部71には、中間容器7の圧力を調節する圧力調整器8が設けられている。本実施形態では、背圧弁81と吸引装置82(真空ポンプ等)が設けられており、これらが中間容器7と接続されている。具体的には、中間容器7と背圧弁81とが背圧配管46で連結されており、背圧配管46には背圧開閉バルブ55が設けられている。この背圧開閉バルブ55を開状態にすることにより中間容器7には設定された背圧が負荷されるようになっている。これにより、中間容器7に背圧が負荷されると、中間容器7内の圧力が上がるため、背圧弁81がない場合に比べて反応容器2の上流側の圧力との差圧を小さくなるように調節することができる。すなわち、薬液等が所定の圧力で送液されると、背圧開閉バルブ55を閉じ背圧がかからない状態では、薬液が所定の圧力で反応容器2に送液されるが、背圧開閉バルブ55を開けて中間容器7に背圧が負荷される状態では、反応容器2の下流側に背圧がかかるため、所定の圧力から背圧を減算した圧力で薬液等が反応容器2に送液される。すなわち、背圧開閉バルブ55を開くことにより、反応容器2の上流側と下流側との差圧が小さくなるため、反応容器2に流入させる薬液等の流量を小さくし、薬液等の送液速度を遅くすることができる。
【0038】
同様に、中間容器7と吸引装置82とが吸引配管47で連結されており、吸引配管47には吸引開閉バルブ56が設けられている。この吸引開閉バルブ56を開状態にすることにより中間容器7には設定された負圧が負荷され中間容器7が減圧されるようになっている。これにより、吸引開閉バルブ56を開状態にすると、中間容器7内の圧力が下がるため、反応容器2の上流側の圧力との差圧を大きくなるように調節することができる。すなわち、薬液等が所定の圧力で送液されると、吸引開閉バルブ56を閉じ負圧がかからない状態では、薬液が所定の圧力で反応容器2に送液されるが、吸引開閉バルブ56を開けて中間容器7に負圧が負荷される状態では、反応容器2の下流側が減圧されるため、所定の圧力からさらに減圧された圧力で薬液等が反応容器2に送液される。すなわち、吸引開閉バルブ56を開くことにより、反応容器2の上流側と下流側との差圧が大きくなるため、反応容器2に流入させる薬液等の流量を大きくし、薬液等の送液速度を速くすることができる。
【0039】
そして、この中間容器7は、廃液タンク3の容量よりも小さい容量に形成されているため、これらの圧力調整器8で調節する容量を廃液タンク3に圧力調整器8を設ける場合に比べて小さくすることができる。すなわち、差圧によって反応容器2に対する流入、流出の流量を調節されるが、反応容器2の下流側の圧力の調節が容量の小さい中間容器7によって行れるため、廃液タンク3を圧力調整器8で調節する場合に比べて圧力調整器8の調整容量を小さくすることができる。その結果、圧力調整器8に小型のものが使用することができるため、薬液合成装置全体が大型化、コストアップするのを抑えることができる。
【0040】
なお、本実施形態の中間容器7は、反応容器2の容量よりも大きい容量に形成されている。これにより、反応容器2内の薬液等の全量を一度に中間容器7に排出させることができる。
【0041】
また、薬液合成装置には、制御装置が設けられており、この制御装置により各バルブの開閉状態、加圧手段6、及び、吸引装置82の圧力等が制御されるようになっている。そして、薬液合成装置の使用状況に応じた薬液等の送液を効率よく行うため、中間容器7の圧力を制御する複数のモードが切り替え可能に備えられている。本実施形態では、大気圧モード、背圧モード、吸引モードを備えており、これらのモードにより、背圧開閉バルブ55、吸引開閉バルブ56、廃液開閉バルブ54がそれぞれ制御される。
【0042】
大気圧モードは、通常の送液を行うモードであり、中間容器7を大気圧にして反応容器2への送液は、加圧手段6の圧力で調節され、加圧手段6の圧力がそのまま薬液等に作用するモードである。大気圧モードでは、図2に示すように、廃液開閉バルブ54が開状態にされ、背圧開閉バルブ55、吸引開閉バルブ56は閉状態にされる。これにより、中間容器7が廃液タンク3と同じ大気圧に調節されるため、薬液タンク1を大気圧以上の圧力で加圧することにより、その圧力に応じた送液速度で所定の薬液を反応容器2に供給することができる。なお、図2〜4において、背圧開閉バルブ55、吸引開閉バルブ56、廃液開閉バルブ54は、黒色が閉状態を示し、白色が開状態を示している。
【0043】
この大気圧モードは、薬液を反応容器2に通常状態で送液(薬液タンク1の加圧手段6の圧力のみで送液)する場合や、反応容器2の薬液を強制的に排液する場合に用いられる。薬液を通常状態で送液する場合には、対象となる薬液タンク1に連結される送液配管44の開閉バルブ52を開状態にして、薬液タンク1をガスタンク61で加圧する。これにより、反応容器2において、上流側がガスタンク61で加圧した圧力になり、下流側は大気圧であるため、ガスタンク61で加圧した圧力、時間で薬液の送液速度、供給量が決定される。
【0044】
また、反応容器2の薬液を強制的に排液する場合には、強制排出配管43の開閉バルブ51を開状態にして、送液配管44及び洗浄液配管42の開閉バルブ52,53を閉状態にした状態でガスタンク61を加圧する。これにより、反応容器2において、その上流側がガスタンク61で加圧した圧力になり、下流側が大気圧であるため、ガスタンク61で加圧した圧力が反応容器2内の薬液に作用し、排出ポート22、第1廃液配管45aを通じて中間容器7に排出される。さらに、ガスタンク61からの加圧状態を維持することにより、中間容器7内が加圧され、中間容器7内の薬液等が第2廃液配管45bを通じて廃液タンク3に排液される。
【0045】
背圧モードでは、薬液等の送液速度を遅速化させるモードであり、反応容器2での化学合成のための時間を長くとりたい場合に用いられる。この背圧モードでは、図3に示すように、背圧開閉バルブ55を開状態にして、廃液開閉バルブ54、吸引開閉バルブ56を閉状態にする。そして、背圧弁81を所定の圧力に調節することにより行われる。これにより、反応容器2において、その上流側がガスタンク61で加圧した圧力になり、下流側は設定された背圧がかかるため、下流側が大気圧に調節される大気圧モードに比べて上流側と下流側における差圧が小さくなる。そのため、薬液の送液速度が大気圧モードよりも遅くなり、薬液が反応容器2に到達する時間を大気圧モードに比べて長くとることができる。その結果、反応容器2における化学合成の時間を長くとることができ、従来のように反応速度の遅い薬液を供給し続けて化学合成の時間を稼ぐ場合に比べて、薬液の供給量を抑えつつ十分に反応させることができる。
【0046】
また、減圧弁62を使用することにより、薬液等の送液速度をさらに遅速化させることができる。すなわち、減圧弁62を開状態にすることにより、ガスタンク61で加圧した圧力が減圧されるため、反応容器2の上流側及び下流側における差圧が、減圧弁62を作用させない場合に比べて、さらに小さくすることができる。これにより、上述の反応時間よりも長い反応時間をとることができるため、きわめて反応速度の遅い薬液であっても化学合成させることができる。
【0047】
また、吸引モードは、薬液等の送液速度を迅速化させるモードであり、反応容器2への送液時間を短くしたい場合に用いられる。この吸引モードでは、図4に示すように、吸引開閉バルブ56を開状態にして、廃液開閉バルブ54、背圧開閉バルブ55を閉状態にする。そして、吸引装置82を作動させることにより中間容器7を減圧させることにより行われる。これにより、反応容器2において、その上流側がガスタンク61で加圧した圧力になり、下流側は吸引力が付加されるため、反応容器2の上流側の圧力との差圧を大きくなる。そのため、薬液の送液速度が大気圧モードよりも速くなり、薬液等が反応容器2に到達する時間を大気圧モードに比べて短くさせることができる。これにより、送液時間を短縮させることができるため、薬液合成装置のタクトタイムを向上させることができる。具体的には、反応容器2で所定の薬液を排出した後、次の薬液を供給する前に洗浄が必要になる。この場合、吸引モードに切り替えて洗浄液を反応容器2に供給する。すなわち、開閉バルブ53を開状態にしてガスタンク61で加圧しつつ、吸引装置82を作動させることにより、反応容器2の上流側と下流側とで大気圧モードに比べて差圧が大きくなり、洗浄液が反応容器2に迅速に送液される。このとき、洗浄液は、反応容器2に高速で送液されるため、洗浄液配管42から反応容器2に供給された洗浄液が勢いよく流入することから、反応容器2に付着した不純物を急速な流れにより洗い流すことができ、洗浄効果を向上させることができる。
【0048】
このように、上記薬液合成装置によれば、反応容器2と廃液タンク3との間に設けられる中間容器7の圧力を調節することにより、反応容器2に供給される流量、及び、前記反応容器2から排出される流量を調節することができる。すなわち、中間容器7は反応容器2の流出側に配置されているため、この中間容器7の圧力を調節することにより反応容器2の流入側と流出側の差圧が調節されるため、薬液等の送液速度を調節することができる。そして、中間容器7は、廃液タンク3よりも小さく形成されているため、中間容器7の圧力を調節する加圧手段6、負圧手段等の出力を廃液タンク3の圧力を調節する場合に比べて小さくすることができる。したがって、加圧手段6、負圧手段等の機器を小型化することができるため、薬液合成装置全体を大型化することなく反応容器2に供給される薬液の流量、及び、反応容器2から排出される流量を調節することができる。
【0049】
また、上記実施形態では、中間容器7に吸引装置82、背圧弁81等の圧力調整器8が設けられる例について説明したが、圧力調整器8を設けず、中間容器7の蓋部71に孔を設け、この孔径を調節できるようにして中間容器7内の圧力を調節できるようにして反応容器2に供給される薬液の流量等を調節できるように構成してもよい。すなわち、廃液開閉バルブ54を閉じた状態で中間容器7内のガスを孔径から排出させる際、この孔径を調節することにより圧損を調節することにより反応容器2に供給される薬液等の送液速度を調節することができる。
【0050】
また、上記実施形態では、吸引装置82、背圧弁81の2つの圧力調整器8を用いる例について説明したが、3つ以上の圧力調整器8を用いてもよく、1つのみの圧力調整器8を用いる形態であってもよい。
【0051】
また、上記実施形態では、大気圧モード、背圧モード、吸引モードの3つのモードに切り替え可能な例について説明したが、モードの数を増やしたものであってもよく、これらが状況に応じて自動で切り替える構成であってもよい。そして、装置を簡素化するために、使用状況によっては、上述の3つのモードのうち、2つのモードのみを備えるものでもよい。また、モードの切り替えを自動的に行わず、手動で切り替えるものであってもよい。
【0052】
また、上記実施形態では、減圧弁62を設ける例について説明したが、使用する薬液の反応時間から必要ない場合には、この減圧弁62を設けない構成であってもよい。
【0053】
また、上記実施形態では、中間容器7の容量が反応容器2の容量よりも大きい構成である例について説明したが、反応容器2の容量よりもさらに小さい容量にしてもよい。この構成では、反応容器2に貯留された薬液等の廃液全量を一度に中間容器7に排出することが困難になるが、圧力調整器8をさらに小型化することにより装置全体の小型化、コストダウンを図ることができる。
【符号の説明】
【0054】
1 薬液タンク
2 反応容器
3 廃液タンク
7 中間容器
8 圧力調整器
41 ガス供給配管
54 廃液開閉バルブ
62 減圧弁
図1
図2
図3
図4
図5