(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ポリ塩化ビニル樹脂100質量部と、アジピン酸系可塑剤およびエポキシ化大豆油の少なくともいずれか1つを含む可塑剤8質量部以上50質量部以下と、カルシウム亜鉛系安定剤0.05質量部以上7質量部以下とを少なくとも含む樹脂原料を、スクリュー式押出機にて、スクリューの回転数を120rpm以上190rpm以下の範囲で回転させて押出後、フィルム状に成形を行うポリ塩化ビニル系樹脂製ラッピングフィルムの製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明のポリ塩化ビニル系樹脂製ラッピングフィルム及びその製造方法の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態は、特許請求の範囲に係る発明を限定するものではなく、また、当該実施形態の中で説明されている諸要素及びその組み合わせの全てが本発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0013】
<A.ポリ塩化ビニル系樹脂製ラッピングフィルム>
1.ポリ塩化ビニル系樹脂組成物
本発明のポリ塩化ビニル系樹脂製ラッピングフィルム(以後、適宜、「ラッピングフィルム」あるいは「ラップフィルム」と称する。)は、その原料として、ポリ塩化ビニル系樹脂組成物を含む。本明細書において、「ポリ塩化ビニル系樹脂組成物」とは、ポリ塩化ビニル系樹脂を主成分として含有し、必要に応じてその他の成分を含有する組成物をいう。以下、ポリ塩化ビニル系樹脂組成物の好ましい成分について説明する。
【0014】
1.1 ポリ塩化ビニル系樹脂
ポリ塩化ビニル系樹脂としては、例えば、ポリ塩化ビニル、塩化ビニルモノマーとこれと共重合可能なモノマーとの共重合体を好適に例示できる。当該共重合体としては、例えば、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル・(メタ)アクリル酸共重合体、塩化ビニル・(メタ)アクリル酸メチル共重合体、塩化ビニル・(メタ)アクリル酸エチル共重合体、塩化ビニル・マレイン酸エステル共重合体、塩化ビニル・エチレン共重合体、塩化ビニル・プロピレン共重合体、塩化ビニル・スチレン共重合体、塩化ビニル・イソブチレン共重合体、塩化ビニル・塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニル・スチレン・無水マレイン酸三元共重合体、塩化ビニル・スチレン・アクリロニトリル三元共重合体、塩化ビニル・ブタジエン共重合体、塩化ビニル・イソプレン共重合体、塩化ビニル・塩素化プロピレン共重合体、塩化ビニル・塩化ビニリデン・酢酸ビニル三元共重合体、塩化ビニル・アクリロニトリル共重合体、塩化ビニル・各種ビニルエーテル共重合体等を用いることができる。また、上記共重合体の2以上の混合物を用いることもできる。
【0015】
ポリ塩化ビニル系樹脂の重合度は特に限定されるものではないが、例えば、600以上2500以下の範囲内とすることができる。また、ポリ塩化ビニル系樹脂としては、ゲル浸透クロマトグラフィー(以下、「GPC」という。)により測定した微分分子量分布曲線におけるピークトップのポリスチレン換算分子量が1,000以上1,000,000未満の範囲内にあるポリ塩化ビニル系樹脂成分(以下、「第1成分」という。)を含有することが好ましい。
【0016】
ここで、「ポリスチレン換算分子量」とは、GPCによる分子量測定においてポリ塩化ビニル系樹脂の分子量を相対的に示す尺度である。ポリスチレン換算分子量は、既知の分子量の単分散直鎖ポリスチレンに関する測定を行った際に得られる溶出時間とポリスチレン分子量との関係を示す較正曲線を、ポリ塩化ビニル系樹脂について同一条件で測定を行った場合に適用することによって算出される。すなわち、ポリスチレン換算分子量は、ポリ塩化ビニル系樹脂の分子そのものの分子量ではなく、ポリ塩化ビニル系樹脂の分子と同一慣性半径を有するポリスチレン分子に換算した際のポリスチレンの分子量であるということができる。較正曲線の作成においては、重量平均分子量(Mw)を用いる。ポリ塩化ビニル系樹脂製のフィルムのGPC測定データは、検出時間に相当する分子量から算出される。その際、重量平均分子量(Mw)の他に、数平均分子量(Mn)およびZ平均分子量(Mz)も同時に得られるが、上記フィルムに関する分子量は、全て、数平均分子量(Mn)で比較している。なお、GPCによる測定の方法については後述する。
【0017】
ここで、上記第1成分において、微分分子量分布曲線におけるピークトップのポリスチレン換算分子量(以下、単にピークトップのポリスチレン換算分子量という。)を1,000以上としたのは、ラッピングフィルムの引張強度を良好に保つためである。当該観点からは、ピークトップのポリスチレン換算分子量が10,000以上であることがより好ましい。また、上記第1成分において、ピークトップのポリスチレン換算分子量を1,000,000未満としたのは、ラッピングフィルムを製造する際の成形性を高めるためである。当該観点からは、ピークトップのポリスチレン換算分子量が500,000以下であることがより好ましい。
【0018】
また、ポリ塩化ビニル系樹脂は、GPCにより測定した微分分子量分布曲線におけるピークトップのポリスチレン換算分子量が1,000,000以上10,000,000以下の範囲内にある高分子量ポリ塩化ビニル系樹脂成分(以下、「第2成分」という。)をさらに含有するのが好ましい。ここで、上記第2成分において、ピークトップのポリスチレン換算分子量を1,000,000以上としたのは、良好な耐低温衝撃性を得るためである。当該観点からは、ピークトップのポリスチレン換算分子量が3,000,000以上であることがより好ましい。また、上記第2成分において、ピークトップのポリスチレン換算分子量を10,000,000以下としたのは、良好なフィルムの外観を得るためである。当該観点からは、ピークトップのポリスチレン換算分子量が7,000,000以下であることがより好ましい。
【0019】
上記第2成分としては、任意の方法により得たポリ塩化ビニル系樹脂を用いることができる。例えば、第2成分として、通常のポリ塩化ビニル系樹脂の重合度をポリスチレン換算分子量が1,000,000以上10,000,000以下の範囲になるように高めた高重合度のポリ塩化ビニル系樹脂を用いることができる。また、第2成分として、通常の重合度(例えば、重合度600〜2,500)のポリ塩化ビニル系樹脂をポリスチレン換算分子量が1,000,000以上10,000,000以下の範囲になるように架橋反応させたポリ塩化ビニル系樹脂の架橋体を用いることもできる。
【0020】
ここで、GPCによる測定の方法について簡単に説明する。GPCによる測定は、例えば、以下のように行うことができる。システムとしては、昭和電工株式会社製の高速液体クロマトグラフィシステム「登録商標:Shodex、GPC−101(商品名)」(デガッサー、送液ポンプ、オートサンプラー、カラムオーブン及びRI(示差屈折率)検出器を含むシステム。)を用いることができる。分離カラムとして、昭和電工株式会社のスチレンジビニルベンゼン共重合体カラム「GPC KF−806L(商品名)」2本を連結したものを用いることができる。リファレンスカラムとして、昭和電工株式会社のスチレンジビニルベンゼン共重合体カラム「GPC KF−800RL(商品名)」2本を連結したものを用いることができる。移動相としては、純正化学株式会社の特級テトラヒドロフラン(安定化剤不含)を用いることができる。測定条件は、流速1.0mL/分、カラム温度40℃、試料濃度0.5mg/mL、試料注入量100μLとすることができる。各保持容量における溶出量は、ポリ塩化ビニル系樹脂の屈折率に分子量依存性がないとみなし、RI検出器の検出量から求めることができる。
【0021】
まず、移動相であるテトラヒドロフラン10mLに、試料としてラッピングフィルムのエーテル抽出残渣5mgを投入し、室温で静置して溶解後、ポアサイズ0.45μmのPTFE製メンブレンフィルターを使用して濾過する。保持容量からポリスチレン換算分子量への較正曲線は、分子量3,800,000、600,000、200,000、110,000、50,000、17,500、4,000、800の標準ポリスチレンを使用して作成する。解析プログラムは、昭和電工株式会社製の「登録商標:Shodex、SIC−480II XP(商品名)」を使用する。
【0022】
ここで、ラッピングフィルムを製造する際の上記第1成分及び上記第2成分の含有量について説明する。
【0023】
ラッピングフィルムの主成分であるポリ塩化ビニル系樹脂が第1成分のみ、あるいは第1成分と第2成分の両成分の場合、第1成分の含有量及び第2成分の含有量は、例えば以下のようにすることができる。すなわち、ポリ塩化ビニル系樹脂が第1成分のみの場合には、第1成分の含有量は、ラッピングフィルム製造時の成形性を良好にする観点から、下限を、90質量%とするのが好ましく、95質量%とするのがより好ましい。この場合、ポリ塩化ビニル系樹脂以外の成分が残りの含有量を占める。
【0024】
また、ポリ塩化ビニル系樹脂が第1成分と第2成分とを含む場合には、低温耐衝撃性を良好にする観点から、第2成分の含有量の下限を0.5質量%以上とするのが好ましく、1質量%以上とするのがより好ましい。また、ラッピングフィルムの成形性を良好にする観点では、第2成分の含有量の上限を10質量%以上とするのが好ましく、6質量%以下とするのがより好ましい。この場合、第1成分と、ポリ塩化ビニル系樹脂以外の成分とが残りの含有量を占める。例えば、ラッピングフィルムがポリ塩化ビニル系樹脂以外の成分を含まない場合には、第1成分を、99.5質量%以下とするのが好ましく、99質量%以下とするのがより好ましい。また、ラッピングフィルムがポリ塩化ビニル系樹脂以外の成分を含む場合には、第1成分を、90質量%以下とするのが好ましく、80質量%以下とするのがより好ましい。なお、第1成分及び第2成分の含有量は、GPCにより測定した微分分子量分布曲線から常法により算出することが可能である。
【0025】
1.2 その他の成分
その他の成分としては、ポリ塩化ビニル系樹脂組成物からなるラッピングフィルムを製造するのに通常用いられる種々の成分を用いることができる。以下、その他の成分について簡単に説明する。
【0026】
1.2.1 可塑剤
ポリ塩化ビニル系樹脂組成物は、可塑剤として、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジヘプチル、フタル酸ジ−nブチル、フタル酸ジ−2−エチルヘキシル、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジイソデシル、フタル酸ジイソオクチル、フタル酸ジウンデシル、フタル酸ジ−n−デシル、フタル酸ジトリデシル、フタル酸エチルエチルグリコレ−ト、フタル酸オクチルデシル、フタル酸ブチルベンジル、イソフタル酸ジエチル、イソフタル酸ジ−2−エチルヘキシル、テトラヒドロフタル酸ジ−2−エチルヘキシルなどのフタル酸系可塑剤; アジピン酸ジ−2−エチルヘキシル、アジピン酸ジ−n−デシル、アジピン酸ジイソデシル、アジピン酸ジイソブチル、アジピン酸ジイソノニル、セバシン酸ジブチル、アジピン酸ジブチルジグリコール、セバシン酸ジブチル、セバシン酸ジ−2−エチルヘキシルなどの脂肪族エステル系可塑剤; トリメリット酸トリオクチル、トリメリット酸トリデシルなどのトリメリット酸系可塑剤; リン酸トリブチル、リン酸トリ(ジクロロプロピル)、リン酸トリフェニル、リン酸トリキシレニル、リン酸トリ−2−エチルヘキシル、リン酸−2−エチルヘキシルジフェニル、リン酸トリクレジル、リン酸デシルジフェニルなどのリン酸エステル系可塑剤; エポキシ
化大豆油、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジ−2−エチルヘキシル、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジイソデシル、エポキシジブチルステアレート、エポキシアマニ油、エポキシ化脂肪族オクチルエステルなどのエポキシ系可塑剤; アジピン酸系ポリエステルなどのポリエステル系高分子可塑剤などがあげられ、これらは単独又は2種以上併用して使用することができる。ポリ塩化ビニル系樹脂組成物に含まれる可塑剤としては、特に、アジピン酸系可塑剤およびエポキシ化大豆油の少なくともいずれか1つを含む可塑剤が好ましい。可塑剤は、ポリ塩化ビニル樹脂100質量部に対して、好ましくは8質量部以上50質量部以下、より好ましくは12質量部以上40質量部以下を混合する。
【0027】
1.2.2 添加剤
ポリ塩化ビニル系樹脂組成物は、架橋反応を制御するためのカルシウム亜鉛系安定剤を好適に含有する。カルシウム亜鉛系安定剤は、ポリ塩化ビニル樹脂100質量部に対して、好ましくは0.05質量部以上7質量部以下、より好ましくは0.3質量部以上2質量部以下を混合する。また、本発明におけるポリ塩化ビニル系樹脂組成物は、通常使用される添加剤を含有していてもよい。添加剤としては、例えば、塩素捕捉剤(ハイドロタルサイト化合物、ゼオライト化合物、金属石鹸等)、酸化防止剤(リン系、フェノール系、硫黄系等)、光安定化剤(ヒンダードアミン系等)、エポキシ化合物(エポキシ化大豆油等)、紫外線吸収剤(ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系等)、β−ジケトン化合物、過塩素酸塩類、多価アルコール、顔料、滑剤、架橋剤、帯電防止剤、防曇剤、プレートアウト防止剤、表面処理剤、難燃剤、充填剤、蛍光剤、防黴剤、殺菌剤、金属不活性剤、離型剤、加工助剤等を挙げることができる。
【0028】
2.ラッピングフィルムの特性
本発明のラッピングフィルムは、上記各成分を含有するポリ塩化ビニル系樹脂組成物からなる。ラッピングフィルムの厚みは特に限定されるものではないが、通常1μm以上100μm以下とすることができる。ラッピングフィルムの具体的な製造方法については後述する。
【0029】
2.1 光沢度
ラッピングフィルムは、JIS Z 8741に準拠して60度で測定した光沢度が137%以上である。光沢度は、ラッピングフィルムの強度を考慮すると、好ましくは137%以上190%以下であり、より好ましくは140%以上160%以下であり、さらにより好ましくは140%以上153%以下である。本明細書においては、「光沢度」は鏡面光沢度と同じ意味であり、光の反射のしやすさのことをいう。光沢度の測定原理は、規定の入射角に対して、試料面からの鏡面反射光束を測定することであり、同一条件における屈折率n=1.567のガラス表面の鏡面反射光束を基準としてその比で示す。光沢度を測定するための装置としては、日本工業規格に定める「鏡面光沢度−測定法(JIS Z 8741)」に準拠した装置、例えば、日本電色工業株式会社のVG 7000(商品名)を用いることができる。VG 7000は、平行光方式の光沢計である。ポリ塩化ビニル樹脂組成物からラッピングフィルムを製造する過程において、可塑剤がポリ塩化ビニル分子間結合を切断して結晶化を阻害する。この結果、より光沢度の高いラッピングフィルムを得ることができる。光沢度を高めるための条件については後述する。
【0030】
2.2 貯蔵弾性率
ラッピングフィルムは、動的粘弾性測定装置により昇温速度5℃/分で周波数1Hzの条件で測定した150℃以上180℃以下におけるいずれかの温度でのMDの貯蔵弾性率が1.7×10
6Pa以上であるのが好ましく、さらには、1.9×10
6Pa以上5.0××10
6Pa以下であるのがより好ましい。MD方向は、実使用上フィルムの引き出し方向であり、トレー包装時に強く延伸され、しわが残らないよう強く包装されるが、強度が低いと作業時に破れる場合がある。更に強くフィルムを延伸すると、厚さ精度が悪い場合、光の干渉による干渉縞が発生して、見た目を悪くする。これらの不具合を解消した包装適正に優れたフィルムの供給が顧客に望まれている。そこで、本発明では、MD方向は、TD方向と比較して厚さの制御が可能である一方で、TD方向は本発明において物性上安定しないことから、MD方向の貯蔵弾性率のみを規定している。
【0031】
動的粘弾性測定装置としては、ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン株式会社のRSA−G2(商品名)を用いることができる。
【0032】
<B.ラッピングフィルムの製造方法>
次に、ラッピングフィルムの製造方法について説明する。
【0033】
以下、上記第1成分と上記第2成分とを含有するポリ塩化ビニル系樹脂組成物を用いてラッピングフィルムを製造する方法について説明する。第1成分と第2成分とを含有するポリ塩化ビニル系樹脂組成物を用いてラッピングフィルムを製造する場合、第1成分の一部を架橋させることにより第2成分を生成することもできる。例えば、第1成分の一部を架橋させて第2成分を生成したポリ塩化ビニル系樹脂組成物をTダイやインフレーションダイ等の公知の押出ダイへ送り、フィルム状に成形することができる。ただし、第2成分を別途製造して、第1成分と混合してから、その混合状態のポリ塩化ビニル系樹脂組成物をTダイやインフレーションダイ等の公知の押出ダイへ送り、フィルム状に成形しても良い。この実施形態では、好ましくは、単軸押出機とインフレーションを備えた成形装置を用いることができる。
【0034】
以下、第1成分の一部を架橋させて第2成分を生成する形態のラッピングフィルムの製造方法の一態様について具体的に説明する。
【0035】
当該製造方法には、以下の原料を含有する混合物を好適に用いることができる。
1)第1成分として用いるポリ塩化ビニル系樹脂 100質量部
2)可塑剤 8質量部以上50質量部以下
3)安定剤 0.05質量部以上7.0質量部以下
【0036】
なお、可塑剤としては、アジピン酸系可塑剤、セバシン酸系可塑剤、アセチル化モノ脂肪酸グリセライド、アセチル化ジ脂肪酸グリセライド、及びエポキシ化大豆油からなる群から選択される少なくとも1種を用いることができる。
【0037】
適切なせん断を行い、架橋ゲルの生成及びそれに伴うフィルム外観の低下を防止するためには、可塑剤の量をポリ塩化ビニル樹脂100質量部に対して8質量部以上とすることが好ましい。当該観点からは、可塑剤の量を12質量部以上とすることがより好ましい。また、原料混合物の流動性を適度に抑制し、せん断を良好に行い、第2成分をより容易に生成させるためには、可塑剤の量を50質量部以下とすることが好ましい。当該観点からは、可塑剤の量を40質量部以下とすることがさらに好ましい。
【0038】
一方、ポリ塩化ビニル系樹脂の架橋反応を制御し、架橋ゲルの生成及びそれに伴うフィルム外観の低下を防止しつつ、第2成分を効率的に得るためには、カルシウム亜鉛系安定剤の量を0.05質量部以上とすることが好ましい。当該観点からはカルシウム亜鉛系安定剤の量を0.3質量部以上とすることがより好ましい。また、ポリ塩化ビニル系樹脂の架橋反応を適切に進行させ、所望量の第2成分を得るためには、カルシウム亜鉛系安定剤の量を7.0質量部以下とすることが好ましい。当該観点からは、カルシウム亜鉛系安定化剤の量を2.0質量部以下とすることがより好ましい。
【0039】
カルシウム亜鉛系安定剤は、あらかじめ、アルコール系溶剤又はアルコール系溶剤と炭化水素系溶剤との混合溶剤に溶解又は分散させて使用することが好ましい。カルシウム亜鉛系安定剤をあらかじめ溶剤に溶解又は分散させることにより、当該安定剤を原料混合物中に均一に分散させ、高いせん断速度で制御された架橋反応が起こり、高分子量の第2成分を生成させることがより容易になる。アルコール系溶剤としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,4−ブチレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、メトキシブタノール、イソオクタノール、2−エチルヘキサノール、ベンジルアルコールを挙げることができる。炭化水素系溶剤としては、例えば、脂肪族炭化水素系溶剤、芳香族炭化水素系溶剤、及び、これらの混合物を挙げることができる。またこれらの炭化水素系溶剤は、官能基を有するものであってもよい。炭化水素系溶剤としては、流動パラフィンを特に好適に用いることができる。
【0040】
また、ラッピングフィルムの良好な光沢度には、ポリ塩化ビニル系樹脂組成物の温度を高くすることが関係している。好ましい製造方法では、当該樹脂組成物を押し出すスクリューの回転数を高く設定して、上記温度が高くなるようにしている。スクリューの回転数を高めて当該樹脂組成物を高度に練り上げると、せん断発熱が生じる。なお、スクリューの回転数を高めるのと併用若しくは当該回転数を高めるのに代えて、押出機バレルの温度設定を高くすることもできるが、単に外部の熱源からの熱伝導に起因する加熱では、好ましい光沢度を得るのは難しい。この実施形態では、単軸押出機のスクリューの回転数を上げて、樹脂にせん断応力を与えて、せん断発熱による樹脂の自己発熱を誘発するようにしている。この結果、樹脂の分子間に可塑剤等の添加物の分子を介在させ、樹脂分子同士の会合(結晶化)を抑制でき、高い光沢度を持つラッピングフィルムを容易に得ることができる。加えて、スクリューの回転数を上げる方法を用いると、ラッピングフィルムの動的粘弾性測定装置により昇温速度5℃/分で周波数1Hzの条件で測定した150℃以上180℃以下におけるいずれかの温度でのMDの貯蔵弾性率を、1.7×10
6Pa以上とすることができ、高光沢度と高貯蔵弾性率との両立を図ることができる。上述のスクリューとしては、単軸スクリューを好適に用いることができる。単軸スクリューは、主に、樹脂供給部、圧縮部、計量部から構成され、発生するガスを排気するベントを介して多段構成にすることもできる。任意の回転数で所望のせん断速度および押出量を得ることができるように、溝寸法、ピッチ、基本径などのスクリューディメンジョンが設計される。圧縮比は、樹脂供給部と計量部の溝部1ピッチあたりの体積比である。本実施形態では、圧縮比は、好ましくは2.5〜3.2である。ホッパー下のネジの切り始めからスクリュー先端までの長さ(L)と直径(D)の比率は、有効長(L/D)と称する。この値が大きくなると、混錬効果が上がり、製品品質が向上する。かかる理由から、有効長25〜35のものが好ましい。
【0041】
上記スクリューを用いてスクリューの回転数により樹脂の温度を高くする際には、樹脂温度が190℃以上、好ましくは192℃以上、より好ましくは195℃以上になるように、適宜、スクリュー回転数が調整される。具体的なスクリューの回転数は、120rpm以上190rpm以下、好ましくは130rpm以上160rpm以下、より好ましくは134rpm以上156rpm以下である。スクリューの回転数を120rpm以上とすると、せん断発熱による樹脂の自己発熱を誘発し、樹脂の温度を容易に高めることができる。一方、スクリューの回転数を190rpm以下とすると、樹脂温度を上記範囲にしやすくなり、さらにフィルムにヤケや異物が発生しにくくなる。上記の樹脂温度を実現できるように、上記の通り、スクリューの構造を適宜選択できる。また、スクリューの回転は、好適には次のように制御される。直流0−10Vの速度指令信号がインバータへ入力され、押出機の主モーターの最高回転数に対して0−60(最大60Hzで最高回転数となる)で比例配分出力される。これを、スクリュー回転数としてデジタル表示される。主モーターの回転数に対して、製作時に要求した最高スクリュー回転数までギア比で落とすのが好ましい。なお、樹脂温度は、好ましくは、各スクリュー回転にて押し出しを行ったときのダイから吐出された直後の樹脂に熱電対等の温度測定手段を直接接触させ、あるいは赤外線放射温度計などを用いて非接触にて測定できる。
【0042】
ラッピングフィルムは、動的粘弾性測定装置により周波数1Hzの条件で測定したとき、150℃以上180℃以下におけるいずれかの温度でのMDの貯蔵弾性率が1.7×10
6Pa以上であるのが好ましい。貯蔵弾性率の測定時の周波数を1Hzとするのは、分子の緩和を考慮し、より精密な貯蔵弾性率を得るためである。
【0043】
以上のように、ポリ塩化ビニル系樹脂製ラッピングフィルムの製造方法によれば、好ましくは、ポリ塩化ビニル樹脂100質量部と、アジピン酸系可塑剤およびエポキシ化大豆油の少なくともいずれか1つを含む可塑剤8質量部以上50質量部以下と、カルシウム亜鉛系安定剤0.05質量部以上7質量部以下とを少なくとも含む樹脂原料を、スクリュー式押出機にて、スクリューの回転数を120rpm以上190rpm以下の範囲で回転させて押出後、フィルム状に成形を行う。
【実施例】
【0044】
次に、本発明の各実施例を比較例との比較を行いながら説明する。なお、本発明は、以下の各実施例に限定されるものではない。
【0045】
1.各原料
(1)ポリ塩化ビニル系樹脂
ポリ塩化ビニル系樹脂には、信越化学工業株式会社製の塩化ビニール樹脂(品名:TK−1300、平均重合度:1,300)を用いた。
(2)可塑剤
可塑剤には、DIC株式会社製のアジピン酸系可塑剤(品名:DINA)と、DIC株式会社製のエポキシ化大豆油(品名:ESO)とを用いた。
(3)安定剤
安定剤には、昭島化学工業株式会社製のカルシウム亜鉛系安定剤(品名:FD−4L)を用いた。
(4)滑剤
滑剤には、高級アルコール工業株式会社製のハイマリック MKHを用いた。
(5)防曇剤
防曇剤には、理研ビタミン株式会社製のSP−IAを用いた。
ポリ塩化ビニル系樹脂100質量部に対して、おおよそ、アジピン酸系可塑剤33質量部、エポキシ化大豆油10質量部、カルシウム亜鉛系安定剤1質量部、滑剤0.04質量部、防曇剤3.06質量部となるように、ポリ塩化ビニル系樹脂67.98kg、アジピン酸系可塑剤22.44kg、エポキシ化大豆油6.80kg、カルシウム亜鉛系安定剤0.68kg、滑剤0.02kg、防曇剤2.08kgを配合して、ラッピングフィルム用の配合物とした。
【0046】
2.測定・分析条件
(1)単軸押出機からの押出時の樹脂温度
単軸押出機からの押出時の樹脂温度は、スクリュー回転による押出時のリップ口から押し出された軟化樹脂に熱電対を差し込んで測定した。当該熱電対と接続される温度計本体には、ハンディタイプの温度計(安立計器株式会社製、HD−1200K)を用いた。
(2)貯蔵弾性率
ラッピングフィルムの貯蔵弾性率は、動的粘弾性測定装置(TAインスツルメント社製のRSA G2)を用いて、周波数1Hz、昇温条件5℃/分の条件で150℃以上180℃以下の範囲で調べた。
(3)光沢度
ラッピングフィルムの光沢度は、光沢計(日本電色工業株式会社製、VG7000 CU−II)を用いて、基準角度である60度を含む20〜85度の角度範囲で調べた。
(4)フィルムの厚さ
フィルムの厚さは、ロールから引き出されたフィルム1,000mから、オンライン非接触連続測定膜厚測定器(コーンズドッドウェル社製、FG710e)を用いて測定した。厚みのばらつきについては、最大厚みと最小厚みの差から求めた。
【0047】
3.実施例・比較例
(1)実施例1
前記ラッピングフィルム用の配合物を、単軸押出機とインフレーション成形機を備えた装置に供してラッピングフィルムの製造を行った。シリンダー設定温度は、145〜150℃(変動範囲は−20℃〜+20℃)で共通とした。当該装置には、株式会社プラコー製のインフレーション成形機を用いた。フィルムの引巻取速度は、フィルム厚さが約16μmとなるように、スクリューの回転数に応じて調整された。スクリューの回転数は156rpmに設定した。この条件での樹脂温度は、208℃であった。上記条件にて得られたラッピングフィルムの貯蔵弾性率を調べた結果、MDの貯蔵弾性率は1.5×10
6Pa以上4.3×10
6Pa以下であり、TDの貯蔵弾性率は1.7×10
5Pa以上8.2×10
5Pa以下であった。また、ラッピングフィルムの光沢度は、153%であった。
【0048】
(2)実施例2
実施例1と同一の配合物及び同一の装置を用いてラッピングフィルムを製造した。以後の実施例及び比較例でも同様である。スクリューの回転数は150rpmに設定した。この条件での樹脂温度は、205℃であった。上記条件にて得られたラッピングフィルムの貯蔵弾性率を調べた結果、MDの貯蔵弾性率は2.2×10
6Pa以上3.8×10
6Pa以下であり、TDの貯蔵弾性率は1.4×10
5Pa以上7.6×10
5Pa以下であった。また、ラッピングフィルムの光沢度は、151%であった。
【0049】
(3)実施例3
スクリューの回転数は147rpmに設定した。この条件での樹脂温度は、204℃であった。上記条件にて得られたラッピングフィルムの貯蔵弾性率を調べた結果、MDの貯蔵弾性率は1.3×10
6Pa以上3.1×10
6Pa以下であり、TDの貯蔵弾性率は1.0×10
5Pa以上2.9×10
5Pa以下であった。また、ラッピングフィルムの光沢度は、148%であった。
【0050】
(4)実施例4
スクリューの回転数は145rpmに設定した。この条件での樹脂温度は、203℃であった。上記条件にて得られたラッピングフィルムの貯蔵弾性率を調べた結果、MDの貯蔵弾性率は1.1×10
5Pa以上4.4×10
6Pa以下であり、TDの貯蔵弾性率は2.0×10
4Pa以上2.1×10
5Pa以下であった。また、ラッピングフィルムの光沢度は、148%であった。
【0051】
(5)実施例5
スクリューの回転数は142rpmに設定した。この条件での樹脂温度は、200℃であった。上記条件にて得られたラッピングフィルムの貯蔵弾性率を調べた結果、MDの貯蔵弾性率は9.7×10
3Pa以上5.0×10
6Pa以下であり、TDの貯蔵弾性率は5.3×10
4Pa以上1.2×10
6Pa以下であった。また、ラッピングフィルムの光沢度は、143%であった。
【0052】
(6)実施例6
スクリューの回転数は140rpmに設定した。この条件での樹脂温度は、199℃であった。上記条件にて得られたラッピングフィルムの貯蔵弾性率を調べた結果、MDの貯蔵弾性率は2.4×10
6Pa以上3.8×10
6Pa以下であり、TDの貯蔵弾性率は9.0×10
4Pa以上1.3×10
6Pa以下であった。また、ラッピングフィルムの光沢度は、143%であった。
【0053】
(7)実施例7
スクリューの回転数は137rpmに設定した。この条件での樹脂温度は、198℃であった。上記条件にて得られたラッピングフィルムの貯蔵弾性率を調べた結果、MDの貯蔵弾性率は2.0×10
5Pa以上2.8×10
6Pa以下であり、TDの貯蔵弾性率は1.1×10
4Pa以上1.8×10
5Pa以下であった。また、ラッピングフィルムの光沢度は、143%であった。
【0054】
(8)実施例8
スクリューの回転数は134rpmに設定した。この条件での樹脂温度は、196℃であった。上記条件にて得られたラッピングフィルムの貯蔵弾性率を調べた結果、MDの貯蔵弾性率は6.0×10
5Pa以上1.7×10
6Pa以下であり、TDの貯蔵弾性率は4.0×10
5Pa以上1.1×10
6Pa以下であった。また、ラッピングフィルムの光沢度は、141%であった。
【0055】
(9)実施例9
スクリューの回転数は138rpmに設定した。この条件での樹脂温度は、195℃であった。上記条件にて得られたラッピングフィルムの貯蔵弾性率を調べた結果、MDの貯蔵弾性率は9.8×10
5Pa以上4.3×10
6Pa以下であり、TDの貯蔵弾性率は8.3×10
4Pa以上3.1×10
5Pa以下であった。また、ラッピングフィルムの光沢度は、140%であった。
【0056】
(10)実施例10
実施例1のラッピングフィルム用配合物を用いて、フィルムの厚さが10μmとなるように、Tダイキャスト法によりラッピングフィルムの製造を行った。成形装置には、株式会社池貝製押出機(型式: GS125−30V)を用いた。Tダイス(型式: コートハンガーフレキシブルリップ)には、リップ面長2500mmの硬質クロムメッキ処理のものを用いた。ダイスの設定温度は180℃とした。シリンダーの設定温度は130〜150℃の範囲とした。スクリューの回転数は125rpmに設定した。この条件での樹脂温度は、203℃であった。上記条件にて得られたラッピングフィルムの貯蔵弾性率を調べた結果、MDの貯蔵弾性率は1.5×10
6Pa以上4.3×10
6Pa以下であり、TDの貯蔵弾性率は1.7×10
5Pa以上8.2×10
5Pa以下であった。また、ラッピングフィルムの光沢度は、153%であった。
【0057】
(11)比較例1
スクリューの回転数は110rpmに設定した。この条件での樹脂温度は、191℃であった。上記条件にて得られたラッピングフィルムの貯蔵弾性率を調べた結果、MDの貯蔵弾性率は9.8×10
5Pa以上1.9×10
6Pa以下であり、TDの貯蔵弾性率は6.0×10
5Pa以上1.4×10
6Pa以下であった。また、ラッピングフィルムの光沢度は、135%であった。
【0058】
(12)比較例2
スクリューの回転数は90rpmに設定した。この条件での樹脂温度は、189℃であった。上記条件にて得られたラッピングフィルムの貯蔵弾性率を調べた結果、MDの貯蔵弾性率は4.5×10
4Pa以上2.6×10
6Pa以下であり、TDの貯蔵弾性率は6.3×10
5Pa以上1.6×10
6Pa以下であった。また、ラッピングフィルムの光沢度は、128%であった。
【0059】
上記各実施例及び各比較例の条件・特性の詳細を表1に示す。
【0060】
【表1】
【0061】
表1から明らかなように、スクリューの回転数が90rpm(比較例2)および110rpm(比較例1)の条件では、製造したフィルムの光沢度が140%に達することができなかったのに対して、スクリューの回転数を134rpm以上(実施例1〜10)にすると、製造したフィルムの光沢度が140%以上となった。また、どの実施例の条件でも、フィルムにおけるMDの貯蔵弾性率は、150℃以上180℃以下の範囲のいずれかの温度で1.7×10
6Pa以上であり、光沢度と貯蔵弾性率との両立を図ることができた。