(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係る制動力調整装置の制御システムの一実施の形態を
図1〜
図11を参照して詳細に説明する。
図1に示す制動力調整装置の制御システム1は、
図1において右側に描かれている複数の制動力調整装置2,2…と、これらの複数の制動力調整装置2に電力線3を介して並列に接続された電源装置4と、複数の制動力調整装置2に信号線5を介して並列に接続された制御装置6などを備えている。この実施の形態による複数の制動力調整装置2は、回転台7の上に搭載されている。回転台7は、基台8に対して回転する。電源装置4および制御装置6は、基台8側で移動しない位置に設けられている。すなわち、電源装置4および制御装置6は、基台8の上または他の場所に移動することがないように設置されている。
【0018】
複数の制動力調整装置2は、詳細は後述するが、それぞれモータ11を備えている。各々の制動力調整装置2は、それぞれ識別アドレスを有している。また、この実施の形態による複数の制動力調整装置2は、複数のブロックB1〜Bnにそれぞれ複数台ずつ分けられている。すなわち、所定数の(m台の)制動力調整装置2がそれぞれ複数の(n個の)ブロックB1〜Bnに振り分けられている。
【0019】
一つのブロックに含まれるm台の制動力調整装置2には、Adr.1〜Adr.mからなるアドレスが設定されている。このアドレスAdr.1〜Adr.mは、全てのブロックB1〜Bnにおいて重複して用いられている。このため、同一のアドレスの制動力調整装置2がブロックの総数(n)だけ存在している。
【0020】
これらの制動力調整装置2と電源装置4とを接続する電力線3は、基台8と回転台7との境界に設けられた電力用スリップリング12と、この電力用スリップリング12と電源装置4とを接続する固定側電力線部13と、電力用スリップリング12と複数の制動力調整装置2とを接続する回転側電力線部14とによって構成されている。
複数の制動力調整装置2と制御装置6とを接続する信号線5は、基台8と回転台7との境界に設けられた信号用スリップリング15と、この信号用スリップリング15と制御装置6とを接続する固定側信号線部16と、信号用スリップリング15と複数の制動力調整装置2とを接続する回転側信号線部17とによって構成されている。
【0021】
電源装置4は、予め定めた台数の制動力調整装置2に給電可能な容量のものが用いられている。この予め定めた台数とは、この実施の形態においては、ブロックB1〜Bnの総数nに相当する台数以上であって、制動力調整装置2の総数(m×n)より少ない台数である。
制御装置6は、制動力制御コントローラ18と、時分割制御コントローラ19とを備えている。制動力制御コントローラ18は、複数の制動力調整装置2を制御するための制御信号を生成する機能を有している。この制御信号は、シリアル方式のデジタル信号である。この制御信号には、制御対象となる制動力調整装置2の識別アドレスと、制御対象となる制動力調整装置2の作動内容とが含まれている。作動内容としては、例えばブレーキトルクのトルク設定値が挙げられる。
【0022】
時分割制御コントローラ19は、制御信号を信号線5に送出する時期を決める機能を有している。詳述すると、時分割制御コントローラ19は、先の制御信号を送出した後に、先の制御信号に含まれている作動内容を実行してブレーキトルク(制動力)が変わるために必要な作動時間が経過するまで待機する。そして、時分割制御コントローラ19は、この作動時間が経過した後に次の制御対象の制御信号を送出する。
【0023】
<制動力調整装置の説明>
次に制動力調整装置2の構成を
図2〜
図11を参照して詳細に説明する。制動力調整装置2は、
図2において中央部に位置するモータ11と回転軸21とを備えており、回転軸21にブレーキトルクを付与するとともに、このブレーキトルクの大きさをモータ11によって調整する装置である。
図2は、モータ11の一部を省略した状態で描いてある。
【0024】
モータ11は、減速機(図示せず)と、モータ11の動作を制御する制御回路22とを内蔵している。このモータ11は、
図3〜
図5に示すように、この制動力調整装置2の一端部(
図3〜
図5においては左側の端部)に配置され、モータ取付板23を介して後述するケース24に支持されている。以下において、この制動力調整装置2の構成部品を説明するにあたっては、
図3〜
図5において左側を「一端側」とし、これとは反対側を「他端側」として説明する。モータ11の出力軸25には、
図3に示すように、回転軸21の軸線Cとは直交する方向に延びるトルクアーム26が取付けられている。トルクアーム26は、出力軸25と一体に回転する。
【0025】
回転軸21は、他端部(
図3においては右側の端部)に被制動部材27が接続されており、他端側において、この制動力調整装置2の固定部材31に一対の軸受32,33によって回転自在に支持されている。回転軸21は、被制動部材27と一体に回転する。
被制動部材27は、詳細には図示してはいないが、例えばリールやボビンなどである。これらのリールやボビンは、テープやケーブル、糸などの長尺材料が巻き付けられており、この長尺材料が引かれて消費されることによって回転する。
【0026】
この実施の形態による制動力調整装置2は、この被制動部材27が回転するときにブレーキトルクを付与するとともに、このブレーキトルクを調整して長尺材料の張力を調整する。
リールやボビンなどの被制動部材27を用いて長尺材料を供給する材料供給装置34は、多数の被制動部材27を使用する。これらの被制動部材27は、それぞれ制動力調整装置2に接続されている。
【0027】
<固定部材の説明>
制動力調整装置2の固定部材31は、回転軸21が挿通される貫通穴35を有する第1の円筒部36と、この第1の円筒部36の一端部から径方向の外側に延びる第1の円板部37とを有している。回転軸21は、第1の円筒部36に軸受32,33を介して回転自在に支持されている。第1の円筒部36および第1の円板部37は、回転軸21と同一軸線上に位置付けられている。
また、この固定部材31は、他端部において、被制動部材27を有する材料供給装置34の支持板38に支持されている。
【0028】
第1の円板部37の一端側の端面には、複数の第1の永久磁石41がそれぞれ固着されている。これらの第1の永久磁石41は、
図9に示すように、第1の円板部37の周方向(回転軸21の回転方向)に並ぶ状態で第1の円板部37に固定されている。これらの第1の永久磁石41の磁極は、回転軸21の軸線方向において、第1の永久磁石41の両端部に設けられている。この磁極の極性は、第1の円板部37の周方向に交互に変えられている。
【0029】
第1の円板部37の外周部には、
図4および
図5に示すように、ケース24が固定用ボルト42によって固定されている。ケース24は、非磁性材によって円筒状に形成され、一端側が第1の円板部37から突出する状態で第1の円板部37に取付けられている。上述したモータ取付板23は、ケース24の外周部に取付用ボルト43によって取付けられている。
【0030】
ケース24は、2つの機能を有している。第1の機能は、上述した第1の永久磁石41を含むブレーキトルク発生部44を囲む機能である。第2の機能は、後述する機械式ロック機構45の一部としての機能で、一端部の端面で後述する押圧板46を受ける機能である。
ブレーキトルク発生部44は、3つの機能部品によって構成されている。第1の機能部品は、上述した複数の第1の永久磁石41である。第2の機能部品は、第1の永久磁石41から制動力調整装置2の一端側に所定の距離だけ離れて位置する複数の第2の永久磁石47である。第3の機能部品は、第1の永久磁石41と第2の永久磁石47との間に位置するヒステリシス板48である。
【0031】
<可動部材の説明>
第2の永久磁石47は、第1の永久磁石41と対向する状態で可動部材51の第2の円板部52に固定されている。可動部材51は、回転軸21が挿通された第2の円筒部53と、この第2の円筒部53の他端部から径方向の外側に延びる第2の円板部52と、第2の円筒部53の一端部に固着されたばね受け板54とによって構成されている。第2の円板部52と第2の円筒部53は、回転軸21と同一軸線上に位置付けられている。また、この実施の形態による第2の円板部52と第2の円筒部53は、1つの可動ベース55として一体に形成されている。
【0032】
第2の円筒部53は、回転軸21に一対の軸受56,57を介して回転自在に支持されている。このため、可動部材51は、回転軸21の軸線回りに変位可能になる。第2の円筒部53の外周部には、後述する押圧板46が軸受58を介して第2の円筒部53の周方向と軸線方向とに移動自在に支持されている。第2の円筒部53の一端部であって、第2の円筒部53を周方向に3等分する位置には、
図6に示すように、それぞれねじ孔59が設けられている。
【0033】
第2の円板部52は、円板状に形成され、第1の永久磁石41から固定部材31とは反対側へ所定の距離だけ離間した位置に配置されている。この第2の円板部52は、ケース24によって径方向の外側から覆われている。
この第2の円板部52の他端部の端面に複数の第2の永久磁石47がそれぞれ固着されている。これらの第2の永久磁石47は、第1の永久磁石41と同様に、第2の円板部52の周方向(回転軸21の回転方向)に並ぶ状態で第2の円板部52に固定されている。これらの第2の永久磁石47の磁極は、回転軸21の軸線方向において、第2の永久磁石47の両端部に設けられている。この磁極の極性は、第2の円板部52の周方向に交互に変えられている。
【0034】
第2の円板部52の一端面、すなわち後述する押圧板46と対向する端面であって、第2の円板部52を周方向に3等分する位置には、
図6に示すように、後述するカム機構61(
図4,5参照)の一部を構成する第1の凹部62と、この第1の凹部62の底に開口する第1の貫通孔63とが形成されている。
【0035】
ばね受け板54は、円環板状に形成され、中空部に回転軸21の一端部が挿入される状態で固定用ボルト64(
図4,5参照)によって第2の円筒部53に固定されている。固定用ボルト64は、ばね受け板54の第2の貫通孔65に通されてねじ孔59に螺着されている。第2の貫通孔65は、ばね受け板54を周方向に3等分する位置にそれぞれ設けられている。すなわち、ばね受け板54は、3本の固定用ボルト64によって可動ベース55に固定されている。これら3箇所の第2の貫通孔65よりばね受け板54の径方向の外側には、第3の貫通孔66がそれぞれ形成されている。
【0036】
また、ばね受け板54の他端部であって、周方向に並ぶ3つの第3の貫通孔66どうしの間には、円形凹部67がそれぞれ形成されている。これらの円形凹部67には、それぞればね部材68が装着されている。これらのばね部材68は、圧縮コイルばねからなり、ばね受け板54の円形凹部67と後述する押圧板46の円形凹部69とに挿入されてばね受け板54と押圧板46との間に圧縮状態で設置されている。このばね部材68は、押圧板46をケース24に向けて付勢している。
【0037】
さらに、ばね受け板54の外周部であって、第3の貫通孔66と円形凹部67との間となる1箇所には、
図2および
図3に示すように、ばね受け板54の径方向に延びる溝71が形成されている。この溝71は、ばね受け板54の軸線方向から見て外周側が開放されたU字状に形成されている。この溝71の中には、ボールベアリング72が転動自在に挿入されている。
【0038】
このボールベアリング72は、軸線が回転軸21の軸線Cと平行になる状態で段付きボルト73によってトルクアーム26の揺動端部に支持されている。ボールベアリング72とトルクアーム26との間にはベアリングカラー74が介装されている。
トルクアーム26は、ばね受け板54とモータ11との間に配置されており、モータ11の出力軸25に接続された基端部を中心にして回る。トルクアーム26が回ることにより、ボールベアリング72が溝71の壁を押しながら溝71に対してばね受け板54の周方向と径方向とに移動する。
【0039】
すなわち、モータ11の出力軸25の回転に伴って、ばね受け板54を含む可動部材51と第2の永久磁石47とが回転軸21を中心として回る。モータ11と、トルクアーム26およびボールベアリング72とは、可動部材51を変位させる駆動装置75を構成している。モータ11の動作は、
図1に示す制御装置6から送られた制御信号に基づいてモータ11内の制御回路22によって制御される。制御回路22によるモータ11の制御に関する説明は後述する。
【0040】
ヒステリシス板48は、磁性材によって円環板状に形成され、回転軸21が貫通するとともに回転軸21と同一軸線上に位置する状態で第1および第2のハブ76,77によって回転軸21に固定されている。ヒステリシス板48は、回転軸21と一体に回転する。この実施の形態においては、このヒステリシス板48が本発明でいう「回転部材」に相当する。
このヒステリシス板48と第1の永久磁石41との間と、ヒステリシス板48と第2の永久磁石47との間とには、それぞれ所定の隙間が形成されている。ヒステリシス板48の軸線方向への移動は、回転軸21の一端部と他端部とにそれぞれ設けられたサークリップ78,79と、これらのサークリップ78,79どうしの間に設けられた2組の軸受32,33,56,57と、第1および第2のハブ76,77と、一対の軸受どうしの間に設けられたカラー81,82などによって規制されている。
【0041】
<押圧板の説明>
押圧板46は、円環板状に形成され、可動部材51の第2の円板部52と隣接する位置に配置されており、上述したように第2の円筒部53に移動自在に支持されている。押圧板46の外径は、上述したケース24の外径より僅かに小さい径である。押圧板46は、ケース24と接触可能な外縁部46aを有している。
この押圧板46の一端部であって、押圧板46を周方向に3等分する位置には、
図4,5および
図7に示すように、ばね部材68の他端部が挿入される円形凹部69がそれぞれ形成されている。また、押圧板46の他端面、すなわち可動部材51の第2の円板部52と対向する端面であって、押圧板46の軸線方向から見て3箇所の円形凹部69どうしの間には、後述するカム機構61の一部を構成する第2の凹部83と、これらの第2の凹部83の底に開口するねじ孔84とが設けられている。第2の凹部83とねじ孔84は、押圧板46を周方向に3等分する位置であって、径方向において、上述した第1の凹部62と同一の位置に位置付けられている。
【0042】
<カム機構の説明>
カム機構61は、
図8に示すように、可動部材51の第2の円板部52に設けられた第1の凹部62と、押圧板46に設けられた第2の凹部83と、これらの第1および第2の凹部62,83に挿入されて保持されたボール85とによって構成されている。また、このカム機構61は、押圧板46と、ばね部材68と、ケース24などともに機械式ロック機構45を構成するものである。
【0043】
第1の凹部62と第2の凹部83は、開口形状が円形となる凹部で、それぞれ壁面がテーパー面になるように形成されている。また、第1および第2の凹部62,83の深さは、
図4に示すように、押圧板46の外縁部46aがケース24に当接している状態で第1および第2の凹部62,83の中でボール85が自由に移動できるような深さである。
【0044】
第2の凹部83に開口するねじ孔84には、
図4および
図5に示すように、調整ねじ86が螺着されている。この調整ねじ86は、第2の凹部83の実質的な底を構成している。このため、調整ねじ86のねじ込み量を変えることによって、第2の凹部83の中で移動するボール85の移動距離を変えることができ、カム機構61の応答性を調整することができる。
【0045】
このカム機構61においては、駆動装置75の動力が可動部材51に伝達されて第2の円板部52が押圧板46に対して第2の円筒部53の周方向に移動して変位したときに、第1の凹部62の壁面が実質的に傾斜カムとして機能し、第2の凹部83に収容されている状態のボール85を押す。このとき、ボール85は、第1の凹部62の開口側に向けて壁面に沿って移動し、第2の凹部83の底に押し付けられる。そして、第2の円板部52が更に変位することによって、ボール85と押圧板46とが一体となってばね部材68のばね力に抗して更に移動する。この結果、押圧板46が第2の円板部52から離れる方向に移動する。このため、カム機構61を含む機械式ロック機構45は、駆動装置75の動作中は可動部材51を固定部材31に対して変位自在とする。
【0046】
一方、第2の円板部52の変位が終了して駆動装置75が停止し、第2の円板部52が停止すると、ボール85が第1および第2の凹部62,83の底に収容されるように、押圧板46が第2の円筒部53の周方向に変位しながら第2の円板部52に向けて移動する。この移動は、押圧板46の外縁部46aがケース24に当接するまで行われる。押圧板46がばね部材68のばね力によってケース24に押し付けられることにより、押圧板46と、第2の円板部52を有する可動部材51とが円筒部の周方向へ不必要に移動することができなくなる。この状態において、カム機構61は、可動部材51と押圧板46とを周方向の同一位置に保持する。このため、機械式ロック機構45は、駆動装置75の停止に伴って可動部材51を固定部材31に対して固定する。
【0047】
<制御回路の説明>
モータ11に設けられている制御回路22は、制御装置6から送られた制御信号に基づいてモータ11のON、OFFと、モータ11の回転方向、モータ11の回転角などを制御する。また、制御回路22は、個別に識別アドレスが設定されており、制御信号中に自らの識別アドレスが含まれているときにのみ、その制御信号に含まれるモータ11の作動内容に基づいてモータ11を動作させる。制御回路22は、制御信号に含まれていた作動内容がブレーキトルクのトルク設定値である場合には、モータ11を動作させ、このトルク設定値が得られる角度となるように可動部材51を変位させる。
【0048】
<制動力調整装置の動作の説明>
この実施の形態による制動力調整装置2においては、回転軸21が被制動部材27とともに回転し、ヒステリシス板48が第1および第2の永久磁石41,47に対して回転することによって、ヒステリシス板48にブレーキトルクが付与される。ブレーキトルクの大きさは、第2の円筒部53の周方向における第1の永久磁石41に対する第2の永久磁石47の位置に依存して増減する。
【0049】
ブレーキトルクは、第1の永久磁石41と第2の永久磁石47とが回転軸21の軸線方向から見て同一の位置であって、これらの第1および第2の永久磁石41,47の互いに対向する磁極の極性が異なる状態で最小になる。すなわち、第1の永久磁石41のN(S)極と、第2の永久磁石47のS(N)極とが互いに対向するときにブレーキトルクが最小になる。このブレーキトルクは、第2の永久磁石47が上述したようにブレーキトルクが最小になる位置から第1の永久磁石41に対して第2の円筒部53の周方向に変位することにより増大する。そして、このブレーキトルクは、第1の永久磁石41と第2の永久磁石47とが回転軸21の軸線方向から見て同一の位置であって、これらの第1および第2の永久磁石41,47の同じ極性の磁極どうしが対向する状態で最大になる。
【0050】
この実施の形態による制動力調整装置2において、モータ11が停止している状態(可動部材51にモータ11から回転力が付与されていない状態)においては、カム機構61で押圧力が生じることがなく、
図10に示すように、押圧板46の外縁部46aがばね部材68のばね力によってケース24に接触する。このように押圧板46がケース24に接触することにより、第2の円筒部53の軸線方向への押圧板46の移動が規制されるとともに、第2の円筒部53の周方向への押圧板46の移動が摩擦抵抗によって規制される。
図10に示す停止状態においては、第1の凹部62と第2の凹部83とが第2の円筒部53の周方向(
図10においては左右方向)において略同一の位置に位置している。
【0051】
押圧板46と可動部材51とはカム機構61のボール85を介して接続されている。このため、第2の円筒部53の周方向への押圧板46の移動が規制されることにより、可動部材51もこの周方向へは移動することができなくなる。この停止状態においては、可動部材51の周方向への位置が摩擦抵抗で保持され、ブレーキトルクが変わることがないから、モータ11への給電を絶つことができる。
【0052】
被制動部材27から引き出されている長尺材料の張力が不足している場合、制御装置6が制御の対象とする制動力調整装置2の識別アドレスと、ブレーキトルクが増大するようなモータ11の作動内容とを含む制御信号を送出する。制動力調整装置2の制御回路22は、制御信号中に自らの識別アドレスが含まれている場合に限り、この制御信号に基づいてモータ11を動作させる。すなわち、制御回路22は、ブレーキトルクを増大させる場合、出力軸25が目標とする回転角だけ例えば正転方向に回るようにモータ11の動作を制御する。なお、ブレーキトルクを減少させる場合には、制御回路22は、出力軸25が目標とする回転角だけ例えば逆転方向に回るようにモータ11の動作を制御する。この実施の形態においては、制動力調整装置2が所定数ずつn個のブロックB1〜Bnに分けられており、n個のブロックのそれぞれに同一の識別アドレスの制動力調整装置2が存在している。このため、このときは、ブロックB1〜Bnの総数に相当する台数の制動力調整装置2が一斉に動作を開始する。
【0053】
各制動力調整装置2においてモータ11の出力軸25が回ると、この回転がトルクアーム26を介してばね受け板54に伝達され、可動部材51が停止状態から
図11に示すように変位状態に移行し、出力軸25の回転角に応じた回転角だけ固定部材31に対して回る。このとき、可動部材51が固定部材31に対して
図11において上側に変位することにより、第1の凹部62の壁面がボール85を押し、ボール85がこの壁面に沿って転がる。そして、押圧板46がばね部材68のばね力に抗して回転軸21の軸線Cに沿って第2の円板部52から離間する方向に変位する(
図5参照)。この押圧板46は、ケース24から離れることにより、ボール85を介して可動部材51から伝達されている回転力によって可動部材51と同方向に変位する。
【0054】
モータ11の回転力で可動部材51が固定部材31に対して回ると、この回転に伴って第2の永久磁石47が第1の永久磁石41に対して回る。この結果、ブレーキトルクの大きさが変化する。制御回路22は、ブレーキトルクが目標値に達するような回転角だけ可動部材51が変位したときにモータ11を停止させる。
【0055】
モータ11が停止すると、ボール85が第2の凹部83の壁面を押すことがなくなり、モータ11の回転力による、押圧板46を第2の円板部52から離れる方向に押す押圧力が消失する。但し、第1の永久磁石41と第2の永久磁石47の互いに対向する磁極の極性により(磁石の反力により)カム機構61を介して押圧板46に押圧力が作用する。この磁極の極性による押圧板46を第2の円板部52から離れる方向に押す押圧力は、上述したモータ11の回転力による押圧板46に作用する同方向の押圧力より微小である。
【0056】
このため、
図10に示すように押圧板46がばね部材68のばね力によって押されてケース24に当接し、押圧板46の外縁部46aとケース24との摩擦抵抗により、押圧板46にボール85を介して接続されている可動部材51がモータ停止時の位置(変位後の位置)に保持される。すなわち、ばね部材68のばね力を原動力として固定部材31に対する可動部材51の相対的な回転が規制され、ブレーキトルクが一定になる。
【0057】
このように制動力調整装置2においてブレーキトルクの調整が行われた後に、次の制動力調整装置2を対象とする識別アドレスを含む制御信号が制御装置6から送出され、次の制動力調整装置2においてブレーキトルクの調整が行われる。この実施の形態においては、識別アドレスが異なる制御信号がm回送出されることによって、全ての制動力調整装置2においてブレーキトルクの調整が実施されたことになる。
【0058】
<この実施の形態による効果の説明>
この実施の形態による制動力調整装置の制御システム1においては、ブレーキトルクの調整を行う制動力調整装置2を識別アドレスによって特定する構成が採られている。このため、同時に動作するモータ11の個数を制限することができる。
したがって、この実施の形態によれば、多数の制動力調整装置2を装備しても消費電力量が増大することがない制動力調整装置の制御システムを提供することができる。また、この実施の形態による制御システム1を採用することにより、全ての制動力調整装置2が同時に動作する場合と較べると、電源装置4や配線機器の容量を小さくすることができ、装置全体の小型、軽量化と、低コスト化とを図ることができる。
【0059】
この実施の形態による制御装置6は、制御信号を送出した後に、可動部材51の変位が完了するために必要な時間が経過するまで待機し、この時間が経過した後に次の制御対象に対する制御信号を送出する。
このため、複数のモータ11が順番に動作するようになるから、消費電力量が安定し、小容量の電源装置4を使用することが可能になる。
【0060】
この実施の形態による複数の制動力調整装置2は、回転する一つの回転台7に搭載され、電力線3は、回転台7に設けられた電力用スリップリング12と、この電力用スリップリング12と電源装置4とを接続する固定側電力線部13と、電力用スリップリング12と複数の制動力調整装置2とを接続する回転側電力線部14とによって構成されている。信号線5は、回転台7に設けられた信号用スリップリング15と、この信号用スリップリング15と制御装置6とを接続する固定側信号線部16と、信号用スリップリング15と複数の制動力調整装置2とを接続する回転側信号線部17とによって構成されている。
このため、全ての制動力調整装置2が電源装置4および制御装置6に対して回転する構成を採るにあたって、スリップリングの数が電源装置4と制御装置6との数と等しくなるから、より一層の小型、軽量化と、低コスト化とを図ることができる。
【0061】
この実施の形態による制動力調整装置2は、複数のブロックB1〜Bnに複数台ずつ分けられている。このブロックB1〜Bn内の複数の制動力調整装置2は、互いに異なる識別アドレスを有している。また、このブロックB1〜Bn内の制動力調整装置2に用いられている複数の識別アドレスは、全てのブロックB1〜Bnにおいて用いられている。
この実施の形態においては、各ブロックB1〜Bnにおいて制動力調整装置2が1台ずつ動作する。すなわち、ブロックB1〜Bnの数と同数の制動力調整装置2が同時に動作する。このため、消費電力量を可及的少なく抑えながら、複数の制動力調整装置2において制動力の調整を能率よく行うことができる。