(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
バッテリ遮断装置の用途の1つは、建設機械の長期休車時に、バッテリの放電等を抑制することである。この理由は、バッテリを搭載した一般の輸送機器と同様に、長期休車時に、バッテリ電圧が次第に低下するという問題が生じるからである。バッテリ電圧の低下原因には、例えばバッテリの自然放電や電装機器のメモリを保持するバックアップ電流等が考えられる。そこで、バッテリと各種電装機器を接続する電気的結線の途中にバッテリ遮断装置を設け、長期休車時には、バッテリ遮断装置を遮断することで、バッテリの放電等を抑制することができる。
【0006】
また、バッテリ遮断装置は、サービスマンによる建設機械のメンテナンス作業(電気的な修理作業や本体改造時の溶接作業など)のときに、サービスマンを感電から保護する役割と、溶接機からの電流の回り込みによる電装機器の破損防止の役割とを有している。さらに、バッテリ遮断装置は、オペレータによる一日の作業終了時に遮断することで、日常的なバッテリの放電抑制や盗難防止の目的としての機能も有する。
【0007】
ところで、建設機械は、例えば消耗部品の交換時期を予測したり、故障発生時のトラブルシューティングを迅速に行うためのアラームメールの配信、所定の期間の車体稼働データをレポート(デイリーレポートやマンスリーレポート)としてユーザに提出するなどのようなサービスを提供している。そのため、建設機械は、車体情報として、機械の稼働情報や位置情報、および、故障発生時の情報を記録し、定期的(例えば、1日1回決まった時間に)または必要時にサーバにデータ送信する機能を有する通信端末を搭載している。同時に、サーバ側から、任意に通信端末に保存された車体データをダウンロードできる機能も有している。
【0008】
この通信端末は、他の電装機器と同様にバッテリからの電力供給により動作している。そのため、バッテリ遮断装置を遮断すると、通信端末の電力供給も遮断されるため定期的にデータを送信したり、任意のタイミングで車体情報をサーバからダウンロードすることができなくなる。
【0009】
通信端末からデータを送信できないと、サーバ側でもデータを正常に収集できないため、その期間の車体データが不明となる。一方、サーバがデータを収集できない原因は単一ではなく、例えば車体が休車状態(ユーザが作業終了時にバッテリ遮断装置を遮断した)となったため、車体の電波状況が悪く通信できないため、通信端末等の機器が故障したためのように、複数の原因が考えられる。これに対し、バッテリ遮断装置を遮断したことによって、通信端末からデータを送信できない場合には、サーバがデータを収集できない原因が外部から一切判別できない。この結果、ユーザに提供する稼働状況や故障状況のレポートが不確かなものとなってしまう。
【0010】
ところで、特許文献1に記載されたタイマ付き回路遮断スイッチを、通信端末を備えた建設機械に適用すると、設定された時間以内では、通信端末に電源電力が供給される。しかしながら、設定された時間を過ぎてしまえば、バッテリからの電力供給がなくなり、通信端末は停止する。従って、このような構成では、必要なときに通信端末からデータを送信できないという課題については、本質的な解決には至らない。
【0011】
バッテリ遮断装置を遮断しても、タイマ等の設定時間に影響されず、通信端末に電源が供給され続ければ、車体データをサーバに送信することができる。この場合、前述の休車状態をサーバ側で収集することが可能となり、ユーザに提出する前述した各種サービスの情報として活用することができる。
【0012】
例えば、専用バッテリを有する通信端末を建設機械に搭載すれば、バッテリ遮断装置の操作に影響されずに、通信端末に電力を供給することができる。この場合には、車体の休車状態を判別する解決手段になり得る。しかしながら、専用バッテリの寿命による交換や保守、その他メンテナンスが必要となり容易な解決手段とは言えない。
【0013】
オペレータによる作業終了時には、日々の盗難防止やバッテリの放電抑制を目的として、バッテリ遮断装置を利用する。このため、その際に通信端末だけの電源を生かすことができれば、毎日の稼働データやアラームメール配信、稼働情報レポート等の、建設機械がユーザに提供するサービスを行うことができる。
【0014】
一方、サービスマンによるメンテナンス作業時や建設機械の長期休車時には、感電や溶接時等の機器の破損防止、および、バッテリの長期的な放電を抑制することを目的として、通信端末を含む全ての電源を遮断する必要がある。
【0015】
本発明は上述した従来技術の問題に鑑みなされたもので、本発明の目的は、通信端末を除いて電装機器の電源を遮断することと、通信端末を含めて電装機器の電源を遮断することとが選択可能な建設機械を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上述した課題を解決するために、本発明は、車体に搭載された電装機器と、前記車体の情報をサーバに送信する通信端末と、前記電装機器および前記通信端末に電力を供給するバッテリと、を備えた建設機械であって、前記電装機器と前記バッテリのプラス端子とを接続するプラス側主結線と、前記プラス側主結線に設けられ、前記電装機器と前記バッテリのプラス端子とを接続または遮断するプラス側遮断スイッチと、前記プラス側遮断スイッチよりも下流側に位置して前記プラス側遮断スイッチに直列接続され、前記電装機器と前記バッテリのプラス端子とを接続または遮断するキースイッチと、前記プラス側遮断スイッチよりも上流側の位置で前記通信端末と前記バッテリのプラス端子とを接続するプラス側副結線と、前記バッテリのマイナス端子とグランドとを接続するマイナス側主結線と、前記マイナス側主結線に設けられ、前記バッテリのマイナス端子とグランドとを接続または遮断するマイナス側遮断スイッチと、を備え
、前記電装機器への電力供給と前記通信端末への電力供給との両方を維持するために、前記プラス側遮断スイッチおよび前記マイナス側遮断スイッチの両方が共に接続された状態と、前記車体のメンテナンスのために、前記プラス側遮断スイッチおよび前記マイナス側遮断スイッチの両方が共に遮断された状態と、前記車体が休車状態で前記通信端末への電力供給を維持させるために、前記マイナス側遮断スイッチが接続され前記プラス側遮断スイッチが遮断された状態と、のいずれかの状態に切換可能に設けられていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、オペレータやサービスマンの用途に合わせて、プラス側遮断スイッチとマイナス側遮断スイッチを個別に遮断状態または接続状態にすることができる。このため、マイナス側遮断スイッチが接続状態で、プラス側遮断スイッチを遮断状態にすることによって、盗難防止やバッテリの放電を抑制しながら、通信端末の送信機能を保持することができる。
【0018】
また、マイナス側遮断スイッチを遮断することで、車体の長期休車時の放電防止およびサービスマンによるメンテナンス作業時の安全(感電や溶接時等の機器の破損)を確保することもできる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態による建設機械として油圧ショベルを例に挙げ、添付図面に従って詳細に説明する。
【0021】
図1に示すように、油圧ショベル1は、自走可能なクローラ式の下部走行体2と、移動手段となる下部走行体2上に旋回装置3を介して旋回可能に搭載された上部旋回体4と、上部旋回体4の前側に設けられ掘削作業等を行う多関節構造の作業装置5とを備えている。下部走行体2および上部旋回体4は、油圧ショベル1の車体を構成している。下部走行体2は、走行動作を行うための油圧モータ2Aを備えている。旋回装置3は、旋回動作を行うための油圧モータ3Aを備えている。なお、下部走行体2としてクローラ式を例示したが、ホイール式でもよい。
【0022】
作業装置5は、フロントアクチュエータ機構である。作業装置5は、例えばブーム5A、アーム5B、バケット5Cと、これらを駆動するブームシリンダ5D、アームシリンダ5E、バケットシリンダ5Fとによって構成されている。作業装置5は、上部旋回体4の旋回フレーム6に取付けられている。
【0023】
上部旋回体4には、原動機としてのエンジン7と、エンジン7によって駆動される油圧ポンプ8(メインポンプ)とが搭載されている。油圧ポンプ8によって送られた作動油によって、下部走行体2と、上部旋回体4と、作業装置5とがそれぞれ独立して動作する。
【0024】
具体的には、下部走行体2は、走行用の油圧モータ2Aに油圧ポンプ8から作動油が供給されることによって、一対のクローラ2B(
図1は片側のみ図示)を走行駆動する。上部旋回体4は、旋回用の油圧モータ3Aに油圧ポンプ8から作動油が供給されることによって、旋回駆動する。また、シリンダ5D〜5Fは、油圧ポンプ8から供給される作動油によって、伸長または縮小する。これにより、作業装置5は、俯仰の動作を行い、掘削、整地等の作業を行う。
【0025】
次に、本実施の形態による油圧ショベル1のうち電源遮断回路に関する構成を、
図2および
図3を用いて説明する。
【0026】
図2に示すように、油圧ショベル1は、車体に搭載された第1,第2の電装機器11,12と、車体の情報をサーバ(図示せず)に送信する通信端末15と、電装機器11,12および通信端末15に電力を供給するバッテリ16と、を備えている。また、油圧ショベル1は、車体に搭載された第1,第2の制御装置13,14をさらに備えている。第1,第2の制御装置13,14も、バッテリ16から電力が供給される。電装機器11,12および制御装置13,14は、通信端末15とは異なる機能を有している。即ち、電装機器11,12は、無線通信以外の機能を有するものとして、例えば車体の付随的な機能である照明、音響、空調等の制御を行うもの、エンジン7の始動を行うものが該当する。制御装置13,14は、無線通信以外の機能を有するものとして、例えば車体の駆動制御(エンジン7や車体全体の制御)を行うものが該当する。電装機器11,12、制御装置13,14、通信端末15およびバッテリ16は、油圧ショベル1の車体として、例えば上部旋回体4に搭載されている。電装機器11,12、制御装置13,14および通信端末15は、グランドとなる車体に接続されている。
【0027】
第1の電装機器11は、例えば音響機器が相当する。電装機器11は、例えば音量、ラジオの選局、プリセット情報等のような各種の設定情報を記憶するメモリ11Aを有している。第1の電装機器11は、音響機器に限らず、例えば空調機器であってもよい。この場合、メモリ11Aには、エアコンの温度、風向、風量等のような各種の設定情報が記憶される。電装機器11には、その駆動と停止を単独で切り換えるためのスイッチ11Bが別途設けられている。スイッチ11Bは、キースイッチ19よりも下流側(バッテリ16から遠い側)に位置して、電装機器11に対して個別に電力を供給する線路に設けられている。
【0028】
第2の電装機器12は、例えばエンジン始動装置が相当する。第2の電装機器12は、キースイッチ19が図示しないスタートポジションに切り換わったときに、エンジン7に対して始動制御を行う。
【0029】
第1の制御装置13は、例えばエンジンコントローラが相当する。第1の制御装置13は、例えばエンジン回転数等を検出する各種のセンサ(図示せず)に接続されている。第1の制御装置13は、センサからの検出信号等に基づいて、エンジン7の運転を制御する。
【0030】
第2の制御装置14は、例えば車体コントローラが相当する。第2の制御装置14は、車載向け多重通信方式のネットワーク(CAN:Controller Area Network)により第1の制御装置13(エンジンコントローラ)に接続されている。第2の制御装置14は、例えば車体の走行速度、油圧ポンプ8の吐出圧等を検出する各種のセンサ(図示せず)に接続されている。第2の制御装置14は、第1の制御装置13から入力される情報(例えば、エンジン回転数等)およびセンサからの検出信号等に基づいて、車体システム全体を制御する。
【0031】
通信端末15は、衛星から位置情報を取得するGPSアンテナ15Aと、例えば地上の基地局や衛星を介してサーバ(いずれも図示せず)と通信する通信用アンテナ15Bとを備えている。通信端末15は、例えば油圧ショベル1の稼動日報、位置情報のような車体の情報を記憶するメモリ15Cを有している。なお、GPSアンテナ15Aは、位置情報に限らず、時刻情報を衛星から取得してもよい。
【0032】
バッテリ16は、例えば鉛蓄電池のような各種の二次電池によって構成されている。バッテリ16は、電装機器11,12および通信端末15に電気的に接続されている。これに加えて、バッテリ16は、制御装置13,14に電気的に接続されている。バッテリ16は、電装機器11,12、制御装置13,14および通信端末15に駆動用の電力を供給する。バッテリ16は、電装機器11,12、制御装置13,14および通信端末15に接続されるプラス端子16Aと、グランドに接続されるマイナス端子16Bとを有している。プラス側主結線17は、電装機器11,12および制御装置13,14と、バッテリ16のプラス端子16Aとを接続している。
【0033】
プラス側遮断スイッチ18は、プラス側主結線17に設けられている。プラス側遮断スイッチ18は、電装機器11,12および制御装置13,14と、バッテリ16のプラス端子16Aとを接続または遮断する。これにより、プラス側遮断スイッチ18は、メモリ11Aを含めて、電装機器11,12および制御装置13,14に対する電力供給を許可または停止する。また、プラス側遮断スイッチ18は、マイナス側遮断スイッチ23と共に、複合スイッチ24に設けられている。オペレータが複合スイッチ24を手動操作することによって、プラス側遮断スイッチ18は、接続状態と遮断状態とが切り換わる。
【0034】
キースイッチ19は、プラス側遮断スイッチ18よりも下流側に位置して、プラス側遮断スイッチ18に直列接続されている。具体的には、キースイッチ19は、プラス側遮断スイッチ18よりも下流側に位置して、プラス側主結線17に設けられている。キースイッチ19は、電装機器11,12と、バッテリ16のプラス端子16Aとを接続または遮断する。これにより、キースイッチ19は、電装機器11,12に対する電力供給を許可または停止する。また、キースイッチ19は、第1の電装機器11のメモリ11A、制御装置13,14の起動および停止を指令する機能も有する。
【0035】
キースイッチ19のオン操作およびオフ操作により、キーオン信号が、電装機器11のメモリ11A、制御装置13,14、通信端末15に出力される。キースイッチ19は、エンジン7の始動および停止を指示するスイッチ(例えば、イグニションキースイッチ)である。キースイッチ19をエンジンスタート位置(図示せず)に操作することによって、エンジン始動装置からなる第2の電装機器12によって、エンジン7が始動する。
【0036】
プラス側副結線20は、プラス側遮断スイッチ18よりも上流側(バッテリ16に近い側)の位置で通信端末15とバッテリ16のプラス端子16Aとを接続している。
図2は、プラス側副結線20が、プラス側遮断スイッチ18よりも上流側の位置でプラス側主結線17から分岐した場合を例示している。これに限らず、プラス側副結線20は、バッテリ16のプラス端子16Aに直接的に接続されてもよい。
【0037】
プラス側副結線20は、通信端末15をバッテリ16のプラス端子16Aに直接的に接続している。このため、通信端末15は、プラス側遮断スイッチ18およびキースイッチ19の操作の影響を一切受けずに、バッテリ16から電力が供給されている。
【0038】
プラス側分岐線21は、プラス側遮断スイッチ18とキースイッチ19との間でプラス側主結線17から分岐している。プラス側分岐線21は、電装機器11のメモリ11Aおよび制御装置13,14に接続されている。このため、プラス側遮断スイッチ18が接続状態のときには、電装機器11のメモリ11Aおよび制御装置13,14は、キースイッチ19の操作の影響を一切受けずに、バッテリ16から電力が供給されている。
【0039】
即ち、電装機器11のメモリ11Aおよび制御装置13,14は、キースイッチ19を介さずに、プラス側遮断スイッチ18を介してバッテリ16に接続されている。このため、電装機器11のメモリ11Aおよび制御装置13,14は、キースイッチ19がオフ(遮断状態)に切り換えられても、バッテリ16からの電力供給が遮断されない。これにより、キースイッチ19のオフ操作による作動停止の際に、電装機器11のメモリ11Aおよび制御装置13,14は、例えば設定情報(音量、選局等)、時刻情報、制御情報を含む各種データのバックアップを行うことができる。
【0040】
マイナス側主結線22は、バッテリ16のマイナス端子16Bとグランドとを接続している。このとき、グランドは、油圧ショベル1の車体が相当する。このため、マイナス側主結線22は、例えば上部旋回体4の旋回フレーム6に接続されている。
【0041】
マイナス側遮断スイッチ23は、マイナス側主結線22に設けられている。マイナス側遮断スイッチ23は、バッテリ16のマイナス端子16Bとグランドとを接続または遮断する。これにより、マイナス側遮断スイッチ23は、電装機器11,12、制御装置13,14および通信端末15に対する電力供給を許可または停止する。また、マイナス側遮断スイッチ23は、プラス側遮断スイッチ18と共に、複合スイッチ24に設けられている。オペレータが複合スイッチ24を手動操作することによって、マイナス側遮断スイッチ23は、接続状態と遮断状態とが切り換わる。
【0042】
複合スイッチ24には、プラス側遮断スイッチ18およびマイナス側遮断スイッチ23が設けられている。
図3に示すように、複合スイッチ24は、マイナス側遮断スイッチ23およびプラス側遮断スイッチ18を両方とも接続状態とする第1切換位置P1(接続位置)と、マイナス側遮断スイッチ23を接続状態としプラス側遮断スイッチ18を遮断状態とする第2切換位置P2(片側遮断位置)と、マイナス側遮断スイッチ23およびプラス側遮断スイッチ18を両方とも遮断状態とする第3切換位置P3(両側遮断位置)と、を有している。
【0043】
このとき、複合スイッチ24は、3つの切換位置P1〜P3を選択的に切換え操作するための回転式のレバー24Aを備えている。レバー24Aが中立位置に配置されたときに、複合スイッチ24は、第1切換位置P1となる。レバー24Aが中立位置から一方向(
図3中の右側)に回転操作されたときに、複合スイッチ24は、第2切換位置P2となる。レバー24Aが中立位置から他方向(
図3中の左側)に回転操作されたときに、複合スイッチ24は、第3切換位置P3となる。即ち、第2切換位置P2と第3切換位置P3とは、レバー24Aを回転操作するときの方向が、第1切換位置P1を挟んで反対方向になっている。
【0044】
次に、本実施の形態による電源遮断回路について、その動作を、
図2ないし
図5を用いて説明する。
【0045】
エンジン7の作動状態では、複合スイッチ24は第1切換位置P1に設定されている。このとき、
図2に示すように、プラス側遮断スイッチ18、マイナス側遮断スイッチ23およびキースイッチ19は、いずれも接続状態である。このため、電装機器11,12、制御装置13,14および通信端末15は、バッテリ16から電力が供給されている。
【0046】
キースイッチ19がオフされると、エンジン7が停止する。このとき、第1の電装機器11およびエンジン始動装置である第2の電装機器12は、バッテリ16と遮断され、バッテリ16からの電力供給が停止される。一方、電装機器11のメモリ11A、第1の制御装置13(エンジンコントローラ)、第2の制御装置14(車体コントローラ)、通信端末15は、バッテリ16からの電力供給が維持されている。
【0047】
オペレータが作業を終了し、車体が休車状態になる場合には、オペレータは複合スイッチ24を第2切換位置P2に切り換える。これにより、
図4に示すように、マイナス側遮断スイッチ23が接続された状態で、プラス側遮断スイッチ18は切断される。プラス側遮断スイッチ18が切断されると、電装機器11のメモリ11A、制御装置13,14は、バッテリ16からの電力供給が停止される。これにより、車体の暗電流が低減されるから、バッテリ16の放電を最大限に抑制することができ、いわゆるバッテリ上がりを防止することができる。一方、通信端末15は、引き続きバッテリ16からの電力供給が維持される。このため、通信端末15は、GPSアンテナ15Aによって位置情報等の取得が可能である。これに加えて、通信端末15は、メモリ15Cに記憶された車体の情報(例えば、機械の稼動日報、位置情報等)を、通信用アンテナ15Bを用いてサーバに送信することが可能である。
【0048】
次に、電気的なメンテナンスや修理作業を行うとき、車体改造に伴い溶接機を使用するとき等には、サービスマンは複合スイッチ24を第3切換位置P3に切り換える。これにより、
図5に示すように、プラス側遮断スイッチ18とマイナス側遮断スイッチ23の両方が切断される。スイッチ18,23が切断されると、全ての電装機器11,12、制御装置13,14および通信端末15は、総合的にバッテリ16と遮断され、バッテリ16からの電力供給が停止される。従って、サービスマンを感電から保護することができる。また、例えばグランドとなる旋回フレーム6等に対して溶接作業を行うときでも、溶接棒WRからの電流iをマイナス側遮断スイッチ23等によって遮断することができる。このため、溶接棒WRによる電流iが、バッテリ16を介して電装機器11,12、制御装置13,14および通信端末15に回り込むことがない。この結果、電装機器11,12、制御装置13,14および通信端末15の破損を防ぐことが可能となる。
【0049】
かくして、本実施の形態による油圧ショベル1は、電装機器11,12とバッテリ16のプラス端子16Aとを接続するプラス側主結線17と、プラス側主結線17に設けられ、電装機器11,12とバッテリ16のプラス端子16Aとを接続または遮断するプラス側遮断スイッチ18と、プラス側遮断スイッチ18よりも下流側に位置してプラス側遮断スイッチ18に直列接続され、電装機器11,12とバッテリ16のプラス端子16Aとを接続または遮断するキースイッチ19と、プラス側遮断スイッチ18よりも上流側の位置で通信端末15とバッテリ16のプラス端子16Aとを接続するプラス側副結線20と、バッテリ16のマイナス端子16Bとグランドとを接続するマイナス側主結線22と、マイナス側主結線22に設けられ、バッテリ16のマイナス端子16Bとグランドとを接続または遮断するマイナス側遮断スイッチ23と、を備えている。
【0050】
このとき、プラス側遮断スイッチ18とマイナス側遮断スイッチ23は、個別に切断または接続することができる。このため、油圧ショベル1を稼動するときには、オペレータは、プラス側遮断スイッチ18とマイナス側遮断スイッチ23を両方とも接続する。これにより、キースイッチ19を接続することによって、電装機器11,12にバッテリ16からの電力を供給し、電装機器11,12を駆動することができる。一方、キースイッチ19を切断することによって、電装機器11,12を停止させることができる。
【0051】
また、通常の車体稼動が終了したときには、オペレータは、マイナス側遮断スイッチ23を接続した状態で、プラス側遮断スイッチ18を切断することができる。これにより、通信端末15に対するバッテリ16からの電力供給を維持した状態で、電装機器11,12を停止させることができる。この結果、通信端末15は、送信機能が保持されるから、機械の稼動日報や位置情報のような油圧ショベル1の情報を、サーバに送信することができる。一方、電装機器11,12に対する電力供給が停止するので、暗電流を低減することができ、バッテリ16の放電を最小限に抑えることが可能となる。
【0052】
さらに、電気的なメンテナンスや修理作業および本体改造のように溶接機を使用するときには、サービスマンは、プラス側遮断スイッチ18とマイナス側遮断スイッチ23を両方とも切断する。これにより、サービスマンを感電から保護することができるのに加え、溶接機等による電流の回り込みから、車載した電装機器11,12等の破損を防ぐことも可能となる。
【0053】
また、プラス側遮断スイッチ18およびマイナス側遮断スイッチ23は、複合スイッチ24に設けられ、複合スイッチ24は、プラス側遮断スイッチ18およびマイナス側遮断スイッチ23を両方とも接続状態とする第1切換位置P1と、マイナス側遮断スイッチ23を接続状態としプラス側遮断スイッチ18を遮断状態とする第2切換位置P2と、プラス側遮断スイッチ18およびマイナス側遮断スイッチ23を両方とも遮断状態とする第3切換位置P3と、を有している。
【0054】
従って、複合スイッチ24を切換操作することによって、プラス側遮断スイッチ18とマイナス側遮断スイッチ23を一緒に切換操作することができる。ここで、マイナス側遮断スイッチ23とプラス側遮断スイッチ18とを別個に設けた場合には、これらを個別に切り換えるため、例えばマイナス側遮断スイッチ23の切断を意図して、プラス側遮断スイッチ18を切断してしまう可能性がある。これに対し、複合スイッチ24を用いてマイナス側遮断スイッチ23とプラス側遮断スイッチ18を一緒に切換操作するから、スイッチ18,23の誤切断や誤接続を抑制することができる。
【0055】
また、第1の電装機器11は、メモリ11Aを有し、メモリ11Aは、プラス側遮断スイッチ18とキースイッチ19との間の位置でプラス側主結線17から分岐したプラス側分岐線21に接続されている。このため、キースイッチ19を切断したときでも、メモリ11Aにバッテリ16から電力を供給して、メモリ11Aに記憶した各種の情報等を保持することができる。
【0056】
さらに、プラス側分岐線21は、建設機械に搭載された制御装置13,14に接続されている。このため、キースイッチ19を切断したときでも、制御装置13,14を動作させることができる。従って、キースイッチ19のオフ操作によって油圧ショベル1の作動を停止させるときには、制御装置13,14は、データのバックアップを行うことができる。また、プラス側分岐線21は、プラス側遮断スイッチ18の下流側に接続されているから、プラス側遮断スイッチ18を切断することによって、電装機器11,12に加えて、メモリ11Aおよび制御装置13,14に流れる暗電流も抑制することができる。
【0057】
また、通信端末15は、衛星から位置情報を取得するGPSアンテナ15Aと、サーバとの間で通信を行う通信用アンテナ15Bとを備えている。このため、プラス側遮断スイッチ18やキースイッチ19が切断されたときでも、通信端末15は、GPSアンテナ15Aを用いて位置情報を取得することができると共に、通信用アンテナ15Bを用いて車体の情報をサーバに送信することができる。これらに加え、通信端末15は、通信用アンテナ15Bを用いてサーバからの指令等を受信することもできる。
【0058】
なお、前記実施の形態では、プラス側遮断スイッチ18およびマイナス側遮断スイッチ23は、複合スイッチ24に統合して設けられるものとした。本発明はこれに限らず、例えば、プラス側遮断スイッチ18およびマイナス側遮断スイッチ23は、別個に独立して設けられてもよい。この場合、プラス側遮断スイッチ18およびマイナス側遮断スイッチ23は、個別に切換え操作が可能となる。
【0059】
前記実施の形態では、建設機械としてクローラ式の油圧ショベル1を例に挙げて説明した。本発明はこれに限らず、電装機器、通信端末およびバッテリを備えた建設機械であればよく、例えばホイール式の油圧ショベル、ホイールローダ等の各種の建設機械に適用可能である。