特許第6872475号(P6872475)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6872475荷重センサおよび荷重センサ一体型多軸アクチュエータ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6872475
(24)【登録日】2021年4月21日
(45)【発行日】2021年5月19日
(54)【発明の名称】荷重センサおよび荷重センサ一体型多軸アクチュエータ
(51)【国際特許分類】
   G01L 5/00 20060101AFI20210510BHJP
   G01L 1/22 20060101ALI20210510BHJP
   B25J 15/06 20060101ALI20210510BHJP
   H05K 13/04 20060101ALI20210510BHJP
【FI】
   G01L5/00 L
   G01L1/22 F
   B25J15/06
   H05K13/04
【請求項の数】6
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-250058(P2017-250058)
(22)【出願日】2017年12月26日
(65)【公開番号】特開2019-117066(P2019-117066A)
(43)【公開日】2019年7月18日
【審査請求日】2020年3月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000114215
【氏名又は名称】ミネベアミツミ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】李 奎
(72)【発明者】
【氏名】江口 功太郎
【審査官】 大森 努
(56)【参考文献】
【文献】 特開平05−304395(JP,A)
【文献】 特開2014−018072(JP,A)
【文献】 特開昭54−012875(JP,A)
【文献】 特開平11−353110(JP,A)
【文献】 特開平05−288618(JP,A)
【文献】 特開2010−034121(JP,A)
【文献】 特開昭62−271689(JP,A)
【文献】 特開平05−016091(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0033585(US,A1)
【文献】 中国特許出願公開第105345830(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01L 1/22,5/00,
B25J 15/06,
H05K 13/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングに収容された状態で軸線方向へ直線移動する第1の軸状部材、前記第1の軸状部材と平行に配置されて所定の対象物に対して直線移動して該対象物を吸引する中空部が形成された中空状の第2の軸状部材、および、前記第1の軸状部材および前記第2の軸状部材を連結する連結部材を有する多軸アクチュエータに用いられる荷重センサであって、
前記第2の軸状部材の先端部に取り付けられる取付部と、
中央において前記取付部とは反対側に軸線方向に窪んだ凹部が形成され、前記取付部に連結されて荷重を測定する本体部と
を備え、
前記本体部は、
前記凹部を画成する周方向側の面を有する周壁部と、
前記凹部を画成するため、前記取付部と対向する側の面を有し、前記周壁部よりも薄く形成されて起歪体部分として機能する対向壁部と、
前記対向壁部から前記取付部の側へ突出して前記第2の軸状部材の先端部を収容すると共に、前記対向壁部から前記取付部とは反対の側へ突出し、その先端部が前記対象物に押し付けられたとき前記軸線方向に沿って全体が移動可能な筒状の吸着部と、
前記吸着部の周囲で前記対向壁部に設けられたひずみゲージと
を有する、荷重センサ。
【請求項2】
前記本体部は、前記取付部を介して前記第2の軸状部材に取り付けられる、請求項1に記載の荷重センサ。
【請求項3】
前記吸着部は、前記第2の軸状部材の延長線上に位置する、請求項1または2に記載の荷重センサ。
【請求項4】
前記本体部は、前記ひずみゲージを所定のコーティング材で被覆する被覆部を有する、請求項1から3までのいずれか一項に記載の荷重センサ。
【請求項5】
前記ひずみゲージは、前記取付部に対向する前記対向壁部の面に設けられている、請求項1から4までのいずれか一項に記載の荷重センサ。
【請求項6】
ハウジングに収容された状態で軸線方向へ直線移動する第1の軸状部材と、
前記第1の軸状部材と平行に配置されて所定の対象物に対して直線移動して該対象物を吸引する中空部が形成された中空状の第2の軸状部材と、
前記第1の軸状部材および前記第2の軸状部材を連結する連結部材と、
前記第2の軸状部材の先端部に取り付けられた荷重センサと
を備え、
前記荷重センサは、
前記第2の軸状部材の先端部に取り付けられる取付部と、
中央において前記取付部とは反対側に軸線方向に窪んだ凹部が形成され、前記取付部に連結されて荷重を測定する本体部と
を有し、
前記本体部は、
前記凹部を画成する周方向側の面を有する周壁部と、
前記凹部を画成するため、前記取付部と対向する側の面を有し、前記周壁部よりも薄く形成されて起歪体部分として機能する対向壁部と、
前記対向壁部から前記取付部の側へ突出して前記第2の軸状部材の先端部を収容すると共に、前記対向壁部から前記取付部とは反対の側へ突出し、その先端が前記対象物に押し付けられたとき前記軸線方向に沿って全体が移動可能な筒状の吸着部と、
前記吸着部の周囲で前記対向壁部に設けられたひずみゲージと
を有する、荷重センサ一体型多軸アクチュエータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、荷重センサおよび荷重センサ一体型多軸アクチュエータに関し、例えば、電子部品(チップ)を基板に実装するチップマウンタとして使用される多軸アクチュエータにおいて、中空に形成された軸状部材の先端にチップを押し付けた状態で吸着して基板に実装する場合のチップに対する押付力(荷重)を検出する荷重センサおよび荷重センサ一体型多軸アクチュエータに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、チップマウンタに組み込まれる多軸アクチュエータとして、リニアモータアクチュエータがある。このリニアモータアクチュエータは、直線的な推力が得られるリニアモータを用いて軸状部材を軸線方向へ直線運動させるものである(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014−18072号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した特許文献1に記載のリニアモータアクチュエータでは、中空に形成された軸状部材の先端にチップを押し付けた際、真空発生装置によってエアーを吸引することにより当該チップを吸着するが、押付力が不十分であると吸着し損なうおそれがあり、押付力が強すぎるとチップを破損してしまうおそれがあった。すなわち、リニアモータアクチュエータにおいては、適正な押付力でチップを押し付けられるように押付力(荷重)を正確に検出する必要があった。
【0005】
そこで、本発明は、かかる問題点に鑑み、対象物に対する押付力の荷重を正確に検出し得る荷重センサおよび荷重センサ一体型多軸アクチュエータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の荷重センサにおいては、ハウジングに収容された状態で軸線方向へ直線移動する第1の軸状部材、前記第1の軸状部材と平行に配置されて所定の対象物に対して直線移動する中空部が形成された中空状の第2の軸状部材、および、前記第1の軸状部材および前記第2の軸状部材と連結する連結部材を有する多軸アクチュエータに用いられる荷重センサであって、前記第2の軸状部材の先端部に取り付けられる取付部と、中央において前記取付部とは反対側に軸線方向に窪んだ凹部が形成され、前記取付部に連結される本体部とを備え、前記本体部は、前記凹部を画成する周方向側の面を有する周壁部と、前記凹部を画成するため、前記取付部と対向する側の面を有し、前記周壁部よりも薄く形成されて起歪体部分として機能する対向壁部と、前記対向壁部から前記取付部の側へ突出すると共に、前記対向壁部から前記取付部とは反対の側へ突出し、前記第2の軸状部材の前記中空部と連通された状態で、その先端部が前記対象物に押し付けられたとき前記軸線方向に沿って全体が移動可能な筒状の吸着部と、前記吸着部の周囲で前記対向壁部に設けられたひずみゲージとを有する。
【0007】
本発明において、前記本体部は、前記取付部を介して前記第2の軸状部材に取り付けられることが好ましい。
【0008】
本発明において、前記吸着部は、前記第2の軸状部材の延長線上に位置することが好ましい。
【0009】
本発明において、前記本体部は、前記ひずみゲージを所定のコーティング材で被覆する被覆部を有することが好ましい。
【0010】
本発明において、前記ひずみゲージは、前記取付部に対向する前記対向壁部の面に設けられていることが好ましい。
【0011】
本発明の荷重センサ一体型多軸アクチュエータにおいては、ハウジングに収容された状態で軸線方向へ直線移動する第1の軸状部材と、前記第1の軸状部材と平行に配置されて所定の対象物に対して直線移動する中空部が形成された中空状の第2の軸状部材と、前記第1の軸状部材および前記第2の軸状部材を連結する連結部材と、前記第2の軸状部材の先端部に取り付けられた荷重センサとを備え、前記荷重センサは、前記第2の軸状部材の先端部に取り付けられる取付部と、中央において前記取付部とは反対側に軸線方向に窪んだ凹部が形成され、前記取付部に連結される本体部とを有し、前記本体部は、前記凹部を画成する周方向側の面を有する周壁部と、前記凹部を画成するため、前記取付部と対向する側の面を有し、前記周壁部よりも薄く形成されて起歪体部分として機能する対向壁部と、前記対向壁部から前記取付部の側へ突出すると共に、前記対向壁部から前記取付部とは反対の側へ突出し、前記第2の軸状部材の前記中空部と連通された状態で、その先端が前記対象物に押し付けられたとき前記軸線方向に沿って全体が移動可能な筒状の吸着部と、前記吸着部の周囲で前記対向壁部に設けられたひずみゲージとを有する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、対象物に対する押付力の荷重を正確に検出し得る荷重センサおよび荷重センサ一体型多軸アクチュエータを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施の形態に係る荷重センサ一体型多軸アクチュエータの全体構成を示す外観斜視図である。
図2】本発明の実施の形態に係る多軸アクチュエータの先端部を部分的に拡大して示す略線的斜視図である。
図3】本発明の実施の形態に係る多軸アクチュエータの先端部を部分的に拡大して断面にして示す略線的斜視図である。
図4】本発明の実施の形態に係る連結部材の構成を示す平面図である。
図5】本発明の実施の形態に係る荷重センサが吸引ロッドに取り付けられた状態における断面図である。
図6】本発明の実施の形態に係る荷重センサの分解斜視図である。
図7図6に示すA−A線に沿った測定部の断面図である。
図8】本発明の実施の形態に係る荷重センサの測定部が撓んだ状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<実施の形態>
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の実施の形態に係る荷重センサ一体型多軸アクチュエータの全体構成を示す外観斜視図である。図2は、本発明の実施の形態に係る多軸アクチュエータの先端部を部分的に拡大して示す略線的斜視図である。図3は、本発明の実施の形態に係る多軸アクチュエータの先端部を部分的に拡大して断面にして示す略線的斜視図である。図4は、本発明の実施の形態に係る連結部材の構成を示す平面図である。図5は、本発明の実施の形態に係る荷重センサが吸引ロッドに取り付けられた状態における断面図である。図6は、本発明の実施の形態に係る荷重センサの分解斜視図である。図7は、図6に示すA−A線に沿った測定部の断面図である。図8は、本発明の実施の形態に係る荷重センサの測定部が撓んだ状態を示す断面図である。
【0015】
<荷重センサ一体型多軸アクチュエータの全体構成>
図1に示すように、荷重センサ一体型多軸アクチュエータ10は、例えば電子部品(チップ)等の対象物を基板上にマウントするチップマウンタに組み込まれて用いられる。
【0016】
荷重センサ一体型多軸アクチュエータ10は、例えば3相モータ(図示せず)を内蔵したハウジング11と、当該3相モータによって軸線方向へ相対的に直線移動する第1の軸状部材としての駆動ロッド12と、当該駆動ロッド12に対して平行に配置され、チップC(図8参照)を吸引する第2の軸状部材としての吸引ロッド22と、駆動ロッド12および吸引ロッド22を先端側で一体に連結する連結部材30と、吸引ロッド22の先端部22aに取り付けられて、先端でチップCを押し付けたときの荷重を検出すると共に当該チップCを吸着する荷重センサ40と、を主に有している。
【0017】
ハウジング11は、上述した3相モータを内蔵する金属または樹脂等からなる筐体であり、駆動ロッド12を軸線方向に沿って相対的に直線移動させることが可能な状態で保持している。なお、ハウジング11は、保持板24(後述する)を介して駆動ロッド12を保持している。
【0018】
実際上、ハウジング11の内部において、駆動ロッド12の周囲には、U相、V相およびW相からなる3相コイル(図示せず)が配置されており、当該3相コイルに電流が流されると、ハウジング11に対して駆動ロッド12が軸線方向へ直線移動する。
【0019】
駆動ロッド12は、軸線方向に沿って延在する円柱状からなる金属または樹脂等の棒状部材であり、保持板24を介してハウジング11に保持された状態において、所定のストローク範囲で直線移動する。また、駆動ロッド12は、図2および図3に示すように、先端部12aの端面から軸線方向へ向かって所定径および所定深さの凹部12bが形成されている。
【0020】
吸引ロッド22は、軸線方向に沿って延在する金属または樹脂等からなる中空の円筒状部材であり、駆動ロッド12と平行に配置されている。吸引ロッド22は、保持板24を介してケーシング26に取り付けられている。吸引ロッド22は、駆動ロッド12に対して平行に配置されている。
【0021】
吸引ロッド22は、その後端がホース等を介して図示しない真空ポンプ等に接続されている。吸引ロッド22は、一端から他端にわたって延在する中空部22hを有する中空状の筒状体である。また、吸引ロッド22の先端部22aの外周面には雄ネジ部22bが形成されている。
【0022】
図1に示したように、ケーシング26は、金属または樹脂等からなり、吸引ロッド22を軸線方向へ相対移動自在に支持する貫通孔26hが形成されており、駆動ロッド12の軸線方向への移動に伴って吸引ロッド22を軸線方向へ移動可能に支持する。
【0023】
保持板24は、金属または樹脂等からなる直方体形状を有し、ハウジング11およびケーシング26の双方に対して一体に取り付けられている。保持板24は、駆動ロッド12および吸引ロッド22を軸線方向へ移動可能に支持すると共に、互いの位置関係を保持した状態で、かつ、駆動ロッド12を中心として吸引ロッド22が旋回してしまうことを抑制する。
【0024】
図2に示したように、連結部材30は、駆動ロッド12および吸引ロッド22の先端部22aを連結して固定する金属または樹脂等からなる略直方体形状の板状部材である。連結部材30は、駆動ロッド12を連結部材30に対して軸線方向へ相対移動させることを防止し、かつ、吸引ロッド22を連結部材30に対して軸線方向へ相対移動させることを防止する。
【0025】
図3および図4に示すように、連結部材30は、駆動ロッド12の先端部12aの端面と表面30aとが当接した状態で一体に連結して支持する第1連結部としての駆動ロッド連結部31、および、吸引ロッド22が表面30aから裏面30bまで貫通した状態で一体に連結して支持する第2連結部としての吸引ロッド連結部32を有している。
【0026】
駆動ロッド連結部31は、駆動ロッド12の軸線方向の延長線上に位置する連結部材30の一方部分であり、吸引ロッド連結部32は、吸引ロッド22の軸線方向の延長線上に位置する連結部材30の他方部分である。すなわち連結部材30は、駆動ロッド連結部31および吸引ロッド連結部32が一体化された一つの剛体として形成されている。この連結部材30は、射出成形または切削によって形成することが可能である。
【0027】
連結部材30の駆動ロッド連結部31および吸引ロッド連結部32は、両者の間に境界があって分離されている訳ではなく、連結部材30のほぼ中心で仮想的に2つに分けられた機能部である。
【0028】
なお、連結部材30の形状は、略直方体形状に限らない。例えば、連結部材30は、略立方体形状であってもよく、または、所定の厚さを有する平面視略円形状、平面視略楕円形状であってもよい。
【0029】
駆動ロッド連結部31は、駆動ロッド12と対向する部位において、表面30a側から反対側の裏面30bまで貫通した貫通孔31hが形成されている。駆動ロッド連結部31の貫通孔31hには、駆動ロッド12と駆動ロッド連結部31とを連結するためのボルト315が挿通される。
【0030】
ボルト315の雄ネジ部315aと、駆動ロッド12の先端部12aの凹部12bの内周面に形成された雌ネジ部(図示せず)とが螺合される。かくして、駆動ロッド12は、連結部材30の表面30aに当接された状態で駆動ロッド連結部31と一体に連結されて支持され、当該連結部材30に対して軸線方向へ相対移動することが抑制されている。
【0031】
吸引ロッド連結部32は、吸引ロッド22の先端部22aの外周面に形成された雄ネジ部22bと螺合する雌ネジ部(図示せず)が内周面を有する貫通孔32hが形成されている。貫通孔32hは、表面30aから裏面30bへ貫通している。また、吸引ロッド連結部32は、貫通孔32hが形成されている部位において、表面30aに向かって窪んで形成された凹部32sが裏面30bに形成されている。
【0032】
吸引ロッド連結部32では、貫通孔32hの雌ネジ部と吸引ロッド22の雄ネジ部22bとが螺合され、かつ、貫通孔32hから突出した吸引ロッド22の先端部22aが、後述する荷重センサ40に連結される。かくして、吸引ロッド22は、吸引ロッド連結部32と一体に連結して支持され、当該連結部材30に対して軸線方向へ相対移動することが抑制されている。
【0033】
荷重センサ40は、連結部材30から突出した吸引ロッド22の先端部22aに取り付けられ、駆動ロッド12の直線運動に伴って吸引ロッド22が直線運動し、当該チップCに押し付けられた際、当該チップCに対する押付力の荷重を検出する。
【0034】
荷重センサ40は、平面視円形状を有し、図5および図6に示すように、吸引ロッド22の先端部22aに取り付けられる取付部41と、連結部材30とは反対側で当該取付部41と一体に取り付けられて荷重を測定する測定部(本体部)42とを有する。取付部41と測定部42との間にはシール部材47が設けられている。取付部41および測定部42とは、複数のボルト(図示せず)により互いに連結されている。
【0035】
取付部41は、金属または樹脂等により形成された所定の厚さを有する平面視円形状の部材であり、円板状部41aと円筒状部41bとを備えている。円板状部41aは、測定部42と同一外径の直径を有する円板状部材である。円筒状部41bは、取付部41の中心に一体に設けられており、荷重センサ40の表面40aの側に、当該表面40aから連結部材30の凹部32sを臨むように突出した突出部分である(図3参照)。
【0036】
また、取付部41の円板状部41aおよび円筒状部41bの双方の中心には貫通孔41hが形成されており、当該貫通孔41hは、円板状部41aおよび円筒状部41bを軸線方向に貫いて形成されている。円筒状部41bの貫通孔44hには、吸引ロッド22の先端部22aが挿通される。
【0037】
貫通孔41hの内径は、吸引ロッド22の先端部22aの外径よりも僅かに小さく形成されており、吸引ロッド22の先端部22aは貫通孔41hに対して締まり嵌めにより固定される。ただし、これに限らず、貫通孔41hの内径は、吸引ロッド22の先端部22aの外径と同じであって、中間嵌めによって固定されてもよい。これにより、吸引ロッド22が荷重センサ40に対して軸線方向へ相対移動することが抑制されている。
【0038】
なお、取付部41の外周側の周端部には、当該取付部41と測定部42とを互いに連結するためのボルト(図示せず)が挿通される複数の貫通孔41cが互いに等間隔に形成されている。
【0039】
シール部材47は、例えば、樹脂により形成されたリング状の平板部材である。シール部材47は、取付部41と測定部42との間において、空気等の流体の流出または流入を防いでいる。シール部材47には、厚さ方向に貫通した複数の貫通孔47aが互いに等間隔に形成されている。貫通孔47aには、取付部41と測定部42とを互いに連結するためのボルトが挿通される。
【0040】
図6および図7に示すように、測定部42の中央部分には、表面421sから軸線方向に沿って取付部41とは反対側へ向かって窪み、取付部41に向かって開口した凹部(凹部空間)420が形成されている。
【0041】
凹部420は、周壁部421と、底壁部(対向壁部)422とによって画成された空間である。凹部420は、平面視円環形状である。ここで「軸線方向」とは、測定部42の厚さ方向を意味する。
【0042】
測定部42の周壁部421は、測定部42の外周面421aと、当該外周面421aよりも内周側に位置する内周面(凹部420を画成する周方向側の面)421bとによって区切られた所定の厚さを有する壁部である。この周壁部421には、取付部41の貫通孔41cおよびシール部材47の貫通孔47aを抜けたボルトが挿通される複数の挿通孔421cが互いに等間隔で形成されている。挿通孔421cの内周面にはボルトが螺合する雌ネジ部(図示せず)が形成されている。
【0043】
測定部42の底壁部422は、凹部420の底部を画成する部分であり、取付部41と対向した底面422bを有している。底壁部422は、周壁部421よりも軸線方向における壁厚が薄く形成された部位であり、起歪体部分として機能する。底壁部422は、測定部42の他の部分、具体的には、周壁部421よりも容易に撓む可撓性を持っていればよく、その壁厚については特に限定されない。
【0044】
図7に示すように、周壁部421の内周面421bと、後述する吸着部423のボス部424の外周面424aとの間を延在する底壁部422の径方向の長さ422lは、軸線方向に対して垂直方向に延びる周壁部421の径方向の長さ421lよりも長く形成されている(421l<422l)。
【0045】
底壁部422は、後述するひずみゲージ43〜46を配置することが可能なスペースを持ち、かつ、測定部42のうち底壁部422を除く他の部分よりもより容易に撓むことができればよい。したがって、その場合、底壁部422の径方向の長さ422lは、周壁部421の径方向の長さ421lと同じ、または周壁部421の径方向の長さ421lよりも短くてもよい。
【0046】
なお、測定部42においては、周壁部421および底壁部422の間に境界があって分離されている訳ではなく、説明の便宜上、起歪体部分として機能する壁厚が薄い部分(底壁部422)と、起歪体部分として機能しない壁厚が厚い部分(周壁部421)との間を仮想的に2つに分けている。
【0047】
図5に示したように、底壁部422の底面422bは、後述するひずみゲージ43〜46が貼付される領域であり、当該ひずみゲージ43〜46にはシリコンのコーティング材430が被覆されている。これにより、ひずみゲージ43〜46に対する防塵性および防錆性を向上することが可能となる。
【0048】
測定部42は、ボス部424および押付部425からなる吸着部423を有している。ボス部424および押付部425は、底壁部422の中央において吸引ロッド22の延長線上、具体的には、吸引ロッド22と同軸上において互いに一体に形成されている。
【0049】
ボス部424は、凹部420の開口へ向かって、つまり、取付部41へ向かって底壁部422から突出した部位であり、所定内径の収容部424hを有している。ボス部424の収容部424hには、吸引ロッド22の先端部22aの一部が収容されるようになっている。ボス部424の収容部424hの断面形状は、吸引ロッド22の断面形状に対応した円形状である。
【0050】
押付部425は、荷重センサ40の裏面40bの側で、底壁部422の中央から取付部41とは反対側へ向かって突出した部位であり、ボス部424の収容部424hと連通する所定内径の貫通部425hが形成されている。すなわち、押付部425は、吸引ロッド22の中空部22hと連通した状態で、その先端がチップCに押し付けられたとき軸線方向に沿って全体が移動可能な円筒状部分である。なお、ボス部424の収容部424hおよび押付部425の貫通部425hは、同軸線上に形成されている。
【0051】
また、押付部425における貫通部425hの内径は、ボス部424の収容部424hの内径よりも小さく、かつ、吸引ロッド22の外径よりも小さく、さらに、吸引ロッド22の中空部22hの内径とほぼ同じである。ただし、特にこれに限定されるものではない。なお、押付部425の外径は、チップCのサイズに応じた大きさであり、ボス部424の外径よりも小さい。ただし、これに限るものではなく、押付部425の外径は、ボス部424の外径より大きくてもよく、また、ほぼ同じであってもよい。因みに、押付部425の先端には、チップCを吸着するための吸着パッド(図示せず)が取り付けられていてもよい。
【0052】
ボス部424の収容部424hの内径は、吸引ロッド22の外径よりも大きく設定されており、ボス部424の収容部424hの内周面と吸引ロッド22の外周面とは接触せず、両者の間には隙間が形成されている。また、吸引ロッド22の先端部22aの端面は、収容部424hを形成しているボス部424の内周面に接触していない。つまり、吸引ロッド22は、取付部41の貫通孔41hにおいて荷重センサ40に連結されているが、測定部42とは非接触である。
【0053】
取付部41と対向するボス部424の端面424sは、周壁部421の端面(測定部42の表面)421sよりも僅かに低く、端面424sと端面421sとは面一ではない。ボス部424は、取付部41に向かって移動した際に端面424sが取付部41に接触して、底壁部422が許容範囲を超えて変形することを防止するストッパの機能を有する。なお、ボス部424に必ずしも取付部41に接触するようなストッパ機能を持たせなくてもよい。
【0054】
荷重センサ40の裏面40bを基準としたボス部424の高さは、周壁部421の高さよりも少し低くなっている。これにより、取付部41の裏面41dとボス部424の端面424sとの間には、隙間(空間)423sが確保されている。かくして、吸着部423の押付部425の先端部がチップCに押し付けられた際、吸着部423の押付部425は、隙間423s分だけ軸線方向において取付部41に向かって変位することが可能である。
【0055】
図8に示すように、駆動ロッド12の軸線方向における直線運動に伴う吸引ロッド22の直線運動により、荷重センサ40の吸着部423の押付部425の先端部がチップCに押し付けられ、チップCからの反力(荷重)が当該押付部425へ伝達される。押付部425への反力の伝達により、吸着部423は、隙間423sの分だけ取付部41に向かって移動し、その移動に伴い測定部42の底壁部422が撓んで変形する(歪む)。
【0056】
ひずみゲージ43〜46は、吸着部423がチップCからの反力によって軸線方向へ移動する際、最も強く撓む部分d1、d3に対して貼付されている。ここで、測定部42の底壁部422のうち撓む部分の形状は断面略S字状となり、比較的大きく撓む部分d1、d3は、測定部42の底壁部422が強く曲がった部分であり、曲がりの少ない平坦部分d2よりも比較的高い応力が生じる応力集中部位である。
【0057】
ひずみゲージ43〜46は、内部に設置された抵抗素子が測定部42の底壁部422に生じる撓み(歪み)と共に伸縮されることによって抵抗値が変化することを利用するものであり、所謂ブリッジ回路が構成されている。ブリッジ回路では、ひずみゲージ43〜46の抵抗素子による電圧の変化に基づいて撓み(歪み)に応じた荷重を測定することが可能である。
【0058】
荷重センサ一体型多軸アクチュエータ10では、駆動ロッド12を押し下げたことに連動して連結部材30と共に吸引ロッド22が押し下げられ、吸引ロッド22の先端部22aに取り付けられた荷重センサ40の吸着部423の押付部425をチップCに押し付ける。このとき、チップCからの反力により、吸着部423は、取付部41に向かって隙間423sの分だけ移動し、チップCからの反力が押付部425を介して底壁部422に負荷となって伝達される。
【0059】
このとき、チップCからの反力によって測定部42の底壁部422だけが撓むため、この撓む部分(歪む部分)d1、d3にひずみゲージ43〜46が予め貼り付けられている。この撓む部分d1、d3は、周壁部421よりも肉厚の薄くなった測定部42の底壁部422の部分であり、起歪体部分として機能する。
【0060】
なお、測定部42の底壁部422の底面422bにおける撓む部分(歪む部分)d1、d3に対してひずみゲージ43〜46が貼付されているが、これに限らず、底壁部422の底面422bとは反対側の荷重センサ40の裏面40bのうち撓む部分(歪む部分)d1、d3にひずみゲージ43〜46が貼付されていてもよく、測定部42の吸着部423に対する荷重を正確に測定できれば、ひずみゲージ43〜46の貼付位置は特に限定されない。
【0061】
また、測定部42の周壁部421には、ひずみゲージ43〜46に接続されたケーブルCaを凹部420から外部へと側方に導出する導出孔421hが形成されている。ケーブルCaは、図示しない線路を介してひずみゲージ43〜46と電気的に接続されており、当該ひずみゲージ43〜46からの電気信号を外部機器へ伝送する。導出孔421は、ケーブルCaが通された状態において、コーティング材430により完全に被覆されている。これにより、導出孔421を通じての空気等の流体の出入りを防ぐことができる。
【0062】
以上の構成において、荷重センサ一体型多軸アクチュエータ10に用いられる荷重センサ40は、チップCを吸着する吸着部423が設けられた測定部42を有する。この荷重センサ40では、ひずみゲージ43〜46は、チップCに押し付けられる吸着部423の周囲の起歪体部分として機能する測定部42の底壁部422に設けられているので、チップCに対する吸着部423の押付力を正確に測定することができる。
【0063】
測定部42は、直接的に吸引ロッド22に連結されておらず、取付部41を介して間接的に吸引ロッド22に取り付けられている。かくして、例えば、吸引ロッド22の直進運動による影響がダイレクトに測定部42に伝達されることを回避することができ、測定部42においてはチップCに対する押圧力だけを純粋に測定することができるので、荷重センサ40は正確な測定結果を得ることができる。
【0064】
吸着部423は、駆動ロッド12の直進運動と連動する吸引ロッド22の延長線上に設けられているので、荷重センサ40では、測定部42の吸着部423によるチップCへの押圧力を正確に測定することができる。
【0065】
<他の実施の形態>
なお、上述した実施の形態においては、荷重センサ40は、吸引ロッド22の先端部22aに嵌め合いによって連結するようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、吸引ロッド22の先端部22aの外周面に雄ネジ部を設け、かつ、荷重センサ40の取付部41の貫通孔41hの内周面に雌ネジ部を設けて、荷重センサ40を吸引ロッド22に螺合させるようにしてもよい。
【0066】
また、上述した実施の形態においては、吸引ロッド22および荷重センサ40の取付部41を嵌め合いにより連結した場合について述べたが、荷重センサ40を取付部41の円筒状部41bにおいて連結部材30に直接的に連結させてもよい。
【0067】
また、上述した実施の形態においては、ひずみゲージ43〜46をコーティング材430によって被覆するようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、ひずみゲージ43〜46に対する防塵性および防錆性を向上することが不要な環境下であれば、コーティング材430によって被覆しなくてもよい。
【0068】
以上、本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明は上記の実施の形態に係る荷重センサ一体型多軸アクチュエータ10および荷重センサ40に限定されるものではなく、本発明の概念および特許請求の範囲に含まれるあらゆる態様を含む。また、上述した課題および効果の少なくとも一部を奏するように、各構成を適宜選択的に組み合わせてもよい。例えば、上記実施の形態における各構成要素の形状、材料、配置、サイズ等は、本発明の具体的使用態様によって適宜変更され得る。
【符号の説明】
【0069】
10……荷重センサ一体型多軸アクチュエータ、11……ハウジング、12……駆動ロッド(第1の軸状部材)、22……吸引ロッド(第2の軸状部材)、22a……先端部、22h……中空部、24……保持板、26……ケーシング、30……連結部材、40……荷重センサ、41……取付部、42……測定部(本体部)、43〜46……ひずみゲージ、420……凹部、421……周壁部、421b……内周面(周方向側の面)、422……底壁部(対向壁部(起歪体部分))、422b……底面(対向する側の面)、423……吸着部、423s……隙間(空間)、424……ボス部、425……押付部、430……コーティング材、C……チップ(対象物)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8