【実施例】
【0051】
以下、本発明にかかるアルカリ電池用セパレータの具体的な各種実施例、比較例、従来例について、詳細に説明する。
なお、以下に説明する本発明の各実施例のアルカリ電池用セパレータは、長網抄紙機あるいは長網円網抄紙機、短網抄紙機等を用い抄紙法にて不織布を得た。即ち、湿式不織布でセパレータを構成した。
【0052】
〔セパレータの評価方法〕
実施例、比較例、従来例のそれぞれのアルカリ電池用セパレータの特性の具体的な測定は、以下の条件及び方法で行った。
【0053】
〔CSF値〕
「JIS P8121−2『パルプ−ろ水度試験方法−第2部:カナダ標準ろ水度法』」に規定された方法で、セパレータのCSF値を測定した。
【0054】
〔厚さ〕
「JIS C 2300−2 『電気用セルロース紙-第2部:試験方法』 5.1 厚さ」に規定された、「5.1.1 測定器及び測定方法 a外側マイクロメータを用いる場合」のマイクロメータを用いて、「5.1.3 紙を折り重ねて厚さを測る場合」の10枚に折り重ねる方法で、セパレータの厚さを測定した。
【0055】
〔密度〕
「JIS C 2300−2 『電気用セルロース紙-第2部:試験方法』 7.0A 密度」のB法に規定された方法で、絶乾状態のセパレータの密度を測定した。
【0056】
〔塗布量〕
耐アルカリ性樹脂の塗布量、若しくは、耐アルカリ性樹脂と添加剤との混合物の塗布量は、以下のように求めた。
塗布量(g/m
2)=(W2−W1)/S
塗布量は、本実施の形態例のセパレータを定寸(250mm×250mm)に切り取り、この試験片を用いて測定した。
具体的には、W1として基材の質量(g)を用い、W2として塗布後のシートの質量(g)を用い、Sとして測定面積(0.0625m
2)用いて、塗布量を計算した。
なお、ここでのシート質量は全て、105℃で1時間乾燥後に測定した、乾燥質量である。
【0057】
〔添加剤含有率〕
耐アルカリ性樹脂に添加する添加剤の含有率は、以下のように求めた。
添加剤含有率(質量%)=Z2/Z1×100
添加剤含有率は、Z1として上述したように測定した塗布量(g)を用い、Z2として添加剤の質量(g)を用いて、計算した。
Z2は、塗布液として、耐アルカリ性樹脂と添加剤とを混合する際に測定した。
なお、これらの質量は全て乾燥質量であり、塗布液の濃度に関わらず、セパレータに塗布乾燥した後の固形分の比率を表す。
【0058】
〔寸法変化率〕
セパレータの寸法変化率は、以下の方法で測定した。
本実施の形態例のセパレータを定寸(100mm×100mm)に切り取り、面積を測定した。次に70℃の40質量%水酸化カリウム(KOH)水溶液中に8時間浸漬して、浸漬後の試験片の面積をKOH水溶液に濡れた状態で測定し、下記式により面積収縮率を算出して、これを寸法変化率とした。
面積収縮率(%)={(A1−A2)/A1}×100
A1として、40質量%KOH水溶液浸漬前の面積を用い、A2として、40質量%KOH水溶液浸漬後の面積を用いて、面積収縮率を計算した。
【0059】
〔湿潤強度〕
セパレータから幅15mmの試験片を縦方向に取って、試験片を40%KOH水溶液に3分間浸漬した後、試験片に付着した過剰の40%KOH水溶液をろ紙で吸い取った。この40%KOH水溶液で濡れた試験片の引張強さを「JIS P 8113『紙及び板紙−引張特性の試験方法−第2部:定速伸張法』」に規定の方法に準じて測定して、セパレータの湿潤強度とした。
【0060】
〔保液率〕
セパレータを50mm×50mmの正方形に切り取り、乾燥後の質量を測定した後、40%KOH 水溶液に10分間浸漬した。この試験片を45度の角度に傾斜させたガラス板に貼り付けて3分間固定し、過剰の40%KOH水溶液を流下させて取り除き、試験片の質量を測定し、次式により保液率を求めた。
保液率(%)=(X2−X1)/X1×100
X1として浸漬前の質量(乾燥後の質量)を用い、X2として浸漬後の質量を用いて、保液率を算出した。
【0061】
〔電気抵抗〕
40%KOH水溶液に浸漬された、約2mmの間隔で平行する白金電極(白金黒付けした直径20mmの円板形状の電極)の間にセパレータを挿入し、この挿入に伴う電極間の電気抵抗(mΩ)の増加をセパレータの電気抵抗とした。なお、電極間の電気抵抗は1000Hzの周波数でLCRメータを用いて測定した。
本測定方法は電気抵抗の呼称としたが、電解液(40%KOH水溶液)中でのセパレータのイオン抵抗を測定する方法である。
【0062】
〔遮蔽性〕
電池系内に金属イオンが存在すると、電極材(主には負極の亜鉛)とのイオン化傾向の差により針状の結晶(デンドライド)が析出する。セパレータの遮蔽性が低いと、このデンドライドにより、ショートに至る場合がある。
ここでは、セパレータの遮蔽性を判断する指標として、耐デンドライド性を測定した。具体的には、以下の方法で測定した。
セパレータから、100×100mmの試験片を切り取り、アルカリ電池用亜鉛の上に載せた。次にセパレータ上に銅粉を10個載せ、セパレータを電解液(40%KOH水溶液)で濡らし、20℃環境下で120時間静置した。
その後、セパレータを取り出し、銅粉を置いた面の反対面までデンドライドが貫通している箇所の個数を計数した。
【0063】
〔液滴消失時間〕
セパレータ表層に耐アルカリ樹脂層が形成された場合、セパレータの表裏で電解液の浸透性が異なる。ここでは、耐アルカリ性樹脂の塗布によって表層に耐アルカリ性樹脂層が形成されていることを確認する手法として、液滴消失時間(秒)を測定した。
具体的には、以下の方法で測定した。
セパレータに、電解液(40%KOH水溶液)を50μl滴下し、滴下された液滴がセパレータに染み込み、消失するまでの時間を測定した。この測定を表面及び裏面でそれぞれ行い、これらの面を「A面」、「B面」と表記した。
【0064】
〔実施例1〕
マーセル化針葉樹クラフトパルプを叩解したCSF値450mlの原料10質量%、ポリプロピレン繊維50質量%、ナイロン繊維40質量%を混合して短網抄紙し、基材を得た。この基材に、ポリビニルアルコールを溶解した塗工液を塗布し、乾燥させることで、厚さ15μm、密度0.25g/cm
3、塗布量0.1g/m
2、寸法変化率2.5%、湿潤強度6.5N、保液率500%、電気抵抗9.0mΩ、遮蔽性1個、液滴消失時間A面60秒、B面20秒のセパレータを得た。
【0065】
〔実施例2〕
実施例1と同じ原料を用いて短網抄紙した基材に、ポリビニルアルコールとポリアクリル酸とを溶解した塗工液を塗布し、乾燥させることで、厚さ15μm、密度0.25g/cm
3、塗布量1.0g/m
2、寸法変化率2.5%、湿潤強度6.4N、保液率500%、電気抵抗8.2mΩ、遮蔽性1個、液滴消失時間A面65秒、B面20秒のセパレータを得た。なお、この塗工層の添加剤含有率は90.0%であった。
【0066】
〔実施例3〕
実施例1と同じ原料を用いて短網抄紙した基材に、ポリビニルアルコールとポリアクリル酸とを溶解した塗工液を塗布し、乾燥させることで、厚さ15μm、密度0.25g/cm
3、塗布量1.1g/m
2、寸法変化率2.5%、湿潤強度6.4N、保液率500%、電気抵抗8.2mΩ、遮蔽性1個、液滴消失時間A面65秒、B面20秒のセパレータを得た。なお、この塗工層の添加剤含有率は90.9%であった。
【0067】
〔実施例4〕
針葉樹サルファイト溶解パルプ70質量%と、再生セルロース繊維であるリヨセル繊維を30質量%混合して叩解した、CSF値0mlの原料を用いて長網抄紙し、基材を得た。この基材に、ポリエチレンエマルションとポリアクリル酸溶液とを混合した塗工液を塗布し、乾燥させることで、厚さ60μm、密度0.65g/cm
3、塗布量4.0g/m
2、寸法変化率1.1%、湿潤強度15.0N、保液率480%、電気抵抗17.0mΩ、遮蔽性0個、液滴消失時間A面400秒、B面200秒のセパレータを得た。なお、この塗工層の添加剤含有率は50.0%であった。
【0068】
〔実施例5〕
マーセル化針葉樹クラフトパルプを叩解したCSF値300mlの原料を80質量%と、ナイロン繊維20質量%を混合した原料を用いて円網抄紙し、基材を得た。この基材に、ポリプロピレンエマルションとポリアクリル酸溶液とを混合した塗工液を塗布し、乾燥させることで、厚さ100μm、密度0.35g/cm
3、塗布量5.0g/m
2、寸法変化率1.5%、湿潤強度9.0N、保液率500%、電気抵抗14.0mΩ、遮蔽性1個、液滴消失時間A面70秒、B面18秒のセパレータを得た。なお、この塗工層の添加剤含有率は90.0%であった。
【0069】
〔実施例6〕
マーセル化針葉樹クラフトパルプを、CSF値0mlを示した後も更に叩解した、CSF値300mlの原料を用いて長網抄紙し、基材を得た。この基材に、ポリビニルアルコールとポリメタクリル酸とを混合した塗工液を塗布し、乾燥、キャレンダ処理することで、厚さ50μm、密度0.70g/cm
3、塗布量3.0g/m
2、寸法変化率1.4%、湿潤強度13.0N、保液率400%、電気抵抗16.0mΩ、遮蔽性0個、液滴消失時間A面350秒、B面220秒のセパレータを得た。なお、この塗工層の添加剤含有率は66.7%であった。
【0070】
〔実施例7〕
マーセル化針葉樹クラフトパルプを叩解したCSF値100mlの原料を80質量%と、アセタール化ポリビニルアルコール繊維20質量%を混合した原料を用いて長網抄紙し、基材を得た。この基材に、ポリビニルアルコールとポリアクリル酸ナトリウムとを混合した塗工液を塗布し、乾燥させることで、厚さ30μm、密度0.55g/cm
3、塗布量10.0g/m
2、寸法変化率1.0%、湿潤強度12.0N、保液率430%、電気抵抗14.0mΩ、遮蔽性0個、液滴消失時間A面280秒、B面110秒のセパレータを得た。なお、この塗工層の添加剤含有率は90.0%であった。
【0071】
〔実施例8〕
マーセル化針葉樹クラフトパルプを、CSF値0mlを示した後も更に叩解した、CSF値100mlの原料を用いて長網抄紙し、基材を得た。この基材に、カルボン酸変性ポリビニルアルコールとポリアクリル酸とを混合した塗工液を塗布し、乾燥することで、厚さ40μm、密度0.60g/cm
3、塗布量5.0g/m
2、寸法変化率2.0%、湿潤強度17.0N、保液率420%、電気抵抗19.5mΩ、遮蔽性0個、液滴消失時間A面550秒、B面190秒のセパレータを得た。なお、この塗工層の添加剤含有率は2.0%であった。
【0072】
〔実施例9〕
マーセル化針葉樹クラフトパルプ50質量%とマーセル化広葉樹サルファイトパルプ50質量%とを混合して、CSF値0mlを示した後も更に叩解した、CSF値100mlの原料を用いて長網抄紙し、基材を得た。この基材に、ポリビニルアルコールとポリアクリル酸とを混合した塗工液を塗布し、乾燥することで、厚さ40μm、密度0.60g/cm
3、塗布量5.0g/m
2、寸法変化率2.0%、湿潤強度17.0N、保液率430%、電気抵抗20.3mΩ、遮蔽性0個、液滴消失時間A面570秒、B面220秒のセパレータを得た。なお、この塗工層の添加剤含有率は2.0%であった。
【0073】
〔実施例10〕
マーセル化針葉樹クラフトパルプをCSF値が0mlを示した後も更に叩解し、上昇に転じたCSF値700mlの原料を用いて長網抄紙した層と、同原料を350mlに叩解した原料を用いて円網抄紙した層を抄き合わせ、セパレータ基材を得た。この基材に、ポリビニルアルコールとポリアクリル酸とを混合した塗工液を塗布し、乾燥することで、厚さ80μm、密度0.53g/cm
3、塗布量14.0g/m
2、寸法変化率1.5%、湿潤強度16.0N、保液率450%、電気抵抗19.0mΩ、遮蔽性0個、液滴消失時間A面430秒、B面30秒のセパレータを得た。なお、この塗工層の添加剤含有率は71.4%であった。
【0074】
〔実施例11〕
マーセル化針葉樹クラフトパルプを、CSF値0mlを示した後も更に叩解した、CSF値650mlの原料を用いて長網抄紙し、基材を得た。この基材に、ポリビニルアルコールとポリアクリル酸とを混合した塗工液を塗布し、乾燥することで、厚さ140μm、密度0.90g/cm
3、塗布量25.0g/m
2、寸法変化率0.8%、湿潤強度18.0N、保液率330%、電気抵抗20.4mΩ、遮蔽性0個、液滴消失時間A面560秒、B面280秒のセパレータを得た。なお、この塗工層の添加剤含有率は80.0%であった。
【0075】
〔実施例12〕
実施例11と同じ原料を用いて長網抄紙し、基材を得た。この基材に、ポリビニルアルコールとポリアクリル酸とを混合した塗工液を塗布し、乾燥することで、厚さ130μm、密度0.85g/cm
3、塗布量5.5g/m
2、寸法変化率0.9%、湿潤強度20.0N、保液率350%、電気抵抗24.0mΩ、遮蔽性0個、液滴消失時間A面520秒、B面265秒のセパレータを得た。なお、この塗工層の添加剤含有率は9.1%であった。
【0076】
〔比較例1〕
マーセル化針葉樹クラフトパルプ90質量%とコットンリンターパルプ10質量%とを混合し、CSF値0mlを示した後も更に叩解した、CSF値300mlの原料を用いて長網抄紙し、基材を得た。この基材に、ポリビニルアルコールとポリアクリル酸とを混合した塗工液を塗布し、乾燥することで、厚さ60μm、密度0.50g/cm
3、塗布量4.0g/m
2、寸法変化率4.0%、湿潤強度15.0N、保液率380%、電気抵抗16.0mΩ、遮蔽性0個、液滴消失時間A面420秒、B面240秒のセパレータを得た。なお、この塗工層の添加剤含有率は50.0%であった。
【0077】
〔比較例2〕
マーセル化針葉樹クラフトパルプを叩解し、CSF値450mlの原料を用いて長網抄紙し、基材を得た。この基材に、ポリビニルアルコールとポリアクリル酸とを混合した塗工液を塗布し、乾燥することで、厚さ40μm、密度0.40g/cm
3、塗布量30.0g/m
2、寸法変化率1.6%、湿潤強度22.0N、保液率420%、電気抵抗31.0mΩ、遮蔽性0個、液滴消失時間A面620秒、B面90秒のセパレータを得た。なお、この塗工層の添加剤含有率は80.0%であった。
【0078】
〔比較例3〕
マーセル化針葉樹クラフトパルプを、CSF値0mlを示した後も更に叩解した、CSF値100mlの原料を用いて長網抄紙し、厚さ40μm、密度0.60g/cm
3、塗布量0.0g/m
2、寸法変化率2.0%、湿潤強度3.0N、保液率410%、電気抵抗12.0mΩ、遮蔽性0個、液滴消失時間A面190秒、B面190秒のセパレータを得た。
【0079】
〔比較例4〕
マーセル化針葉樹クラフトパルプを、CSF値0mlを示した後も更に叩解した、CSF値750mlの原料を用いて長網抄紙し、基材を得た。この基材に、ポリビニルアルコールとポリアクリル酸とを混合した塗工液を塗布し、乾燥することで、厚さ130μm、密度0.85g/cm
3、塗布量5.5g/m
2、寸法変化率1.1%、湿潤強度18.0N、保液率350%、電気抵抗23.0mΩ、遮蔽性4個、液滴消失時間A面500秒、B面250秒のセパレータを得た。なお、この塗工層の添加剤含有率は9.1%であった。
【0080】
〔比較例5〕
マーセル化針葉樹クラフトパルプを叩解した、CSF値550mlの原料を用いて長網抄紙し、基材を得た。この基材に、ポリビニルアルコールとポリアクリル酸とを混合した塗工液を塗布し、乾燥することで、厚さ60μm、密度0.40g/cm
3、塗布量4.0g/m
2、寸法変化率2.5%、湿潤強度8.0N、保液率480%、電気抵抗16.0mΩ、遮蔽性4個、液滴消失時間A面360秒、B面150秒のセパレータを得た。なお、この塗工層の添加剤含有率は50.0%であった。
【0081】
〔比較例6〕
マーセル化針葉樹クラフトパルプを、CSF値0mlを示した後も更に叩解した、CSF値100mlの原料5質量%、ポリプロピレン繊維50質量%、アセタール化ポリビニルアルコール繊維45質量%を混合して長網抄紙し、基材を得た。この基材に、ポリビニルアルコールとポリアクリル酸とを混合した塗工液を塗布し、乾燥させることで、厚さ50μm、密度0.40g/cm
3、塗布量3.0g/m
2、寸法変化率1.1%、湿潤強度11.0N、保液率490%、電気抵抗15.0mΩ、遮蔽性4個、液滴消失時間A面300秒、B面90秒のセパレータを得た。なお、この塗工層の添加剤含有率は66.7%であった。
【0082】
〔従来例1〕
マーセル化針葉樹クラフトパルプ45質量%を、CSF値0mlを示した後も更に叩解したCSF値50mlまで叩解した原料と、ナイロン繊維45質量%、ポリビニルアルコールバインダ繊維10質量%とを混合して円網抄紙し、厚さ100μm、密度0.60g/cm
3、寸法変化率3.0%、湿潤強度4.0N、保液率400%、電気抵抗30.8mΩ、遮蔽性2個、液滴消失時間A面580秒、B面580秒のセパレータを得た。
【0083】
〔従来例2〕
厚さ30μmのセロハンと、従来例1のセパレータを貼りあわせ、従来例2のセパレータを得た。厚さ130μm、密度0.81g/cm
3、寸法変化率3.0%、湿潤強度10.0N、保液率250%、電気抵抗32.6mΩ、遮蔽性0個、液滴消失時間A面1200秒、B面580秒のセパレータを得た。
【0084】
以上記載の実施例1乃至実施例12、比較例1乃至比較例6、従来例1及び従来例2の各例のアルカリ電池用セパレータの評価結果を、表1に示す。
【0085】
【表1】
【0086】
各実施例は、従来例1及び従来例2と比べ、電気抵抗が小さく、従来例1よりも遮蔽性、湿潤強度に優れ、従来例2よりも保液性の高い、良好なセパレータである。
また、各実施例は、繊維全体に対する耐アルカリ性セルロース繊維の含有割合が10%以上であり、アルカリ電解液中での安定性に優れるため、いずれの例でも寸法安定性に問題なく、電池を組む際、組んだ後の、セパレータの寸法変化に由来する不具合は生じないと推測できる。
従来例と各実施例との比較から、本実施例のセパレータは、アルカリ電池用セパレータとして要求される特性を満足すると推測できる。
【0087】
比較例1は、耐アルカリ性の低い、コットンパルプを含有した基材を使用している。
このため、アルカリ電解液中での収縮が大きく、電池を組んだ際に電解質がこぼれる等の不具合が予想される。
【0088】
比較例2は、耐アルカリ性樹脂層の含有量が30.0g/m
2である。
このため、電気抵抗値が増大し、従来例と同等の値となった。
各実施例と比較例2との比較から、耐アルカリ性樹脂層の含有量は0.1〜25.0g/m
2が好ましいとわかる。
【0089】
比較例3は、耐アルカリ性樹脂層を有していない。このため、従来例と比べて湿潤強度が低い。
【0090】
比較例4のセパレータは、各実施例と比べて遮蔽性が低い。耐アルカリ性セルロース繊維をCSF値が0mlを示した後も叩解し、CSF値が750mlとなったため、耐アルカリ性セルロース繊維の微細な繊維が抄紙ワイヤー(抄紙網)から抜け落ちてしまい、遮蔽性が低下した。
また、比較例5は、CSF値が550mlである。このため、繊維の微細化が不足し、遮蔽性が低下したと考えられる。
以上から、耐アルカリ性セルロース繊維のCSF値は、500〜0ml、0mlを示した後も更に叩解を進めたCSF値700mlまでの範囲が好ましいとわかる。
【0091】
比較例6のセパレータは、耐アルカリ性セルロース繊維の含有割合が5質量%であり、遮蔽性が低い。
このことから、耐アルカリ性セルロース繊維の含有割合は、10質量%以上が好ましいとわかる。
【0092】
実施例1乃至実施例3は、類似の基材層を持つ、耐アルカリ性樹脂層の添加剤の含有率が異なるセパレータである。
実施例2及び実施例3は、実施例1よりも電気抵抗値が小さい。
このことから、添加剤を使用することにより、耐アルカリ性樹脂層の電気抵抗値の低減が可能とわかる。
また、実施例2と実施例3とを比べると、実施例3の方が添加剤の含有率は高いが、電気抵抗値は同じである。このことから、添加剤の含有率が90.0質量%を超過しても、更なる抵抗値の低減はできないとわかる。
そして、実施例1乃至実施例3は、厚さ15μm、密度0.25g/cm
3のセパレータである。これらの基材よりも更に厚さを薄く、或いは密度を低くすると、遮蔽性が低下し、従来例1と同等の遮蔽性になると推測される。
【0093】
実施例4及び実施例5等から、ポリビニルアルコールのみでなく、ポリエチレン及びポリプロピレンも、本発明の耐アルカリ性樹脂層に適するとわかる。
実施例6及び実施例7から、添加剤としてポリアクリル酸のみでなく、ポリメタクリル酸や、ポリアクリル酸塩も問題なく使用できるとわかる。
【0094】
実施例8と実施例9とは、耐アルカリ性樹脂種のみ異なる例である。カルボン酸変性ポリビニルアルコールを含有する実施例8のセパレータの方が、より電気抵抗値が低いとわかる。
【0095】
実施例11と実施例12との基材層は、厚さと密度が異なる。両者の耐アルカリ性樹脂層は、添加剤の含有量から、実施例11の電気抵抗値が小さい事が推測できる。
しかし、セパレータの電気抵抗値は、実施例11の方が大きい。これは、基材の厚さと密度との影響と考えられる。仮に、実施例11よりも厚い、或いは、密度の高い基材では、従来例と比べて電気抵抗値の低減が困難と推測できる。
【0096】
各実施例の保液量、液滴消失時間は、従来例と比べ目立って劣るものではなく、これらの特性も電池セパレータとしての要求を満足すると考えられる。
【0097】
以上、本実施の形態例によれば、電解液中での強度、寸法安定性、化学的安定性に優れ、遮蔽性も高い、良好なアルカリ電池用セパレータが提供できる。
また、このセパレータを用いたアルカリ電池の、抵抗値及びショート不良率を低減できる。