(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6872497
(24)【登録日】2021年4月21日
(45)【発行日】2021年5月19日
(54)【発明の名称】加工空間の高さ位置固定機
(51)【国際特許分類】
B29C 33/02 20060101AFI20210510BHJP
B29C 35/02 20060101ALI20210510BHJP
B29L 30/00 20060101ALN20210510BHJP
【FI】
B29C33/02
B29C35/02
B29L30:00
【請求項の数】13
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-561659(P2017-561659)
(86)(22)【出願日】2016年5月25日
(65)【公表番号】特表2018-519184(P2018-519184A)
(43)【公表日】2018年7月19日
(86)【国際出願番号】DE2016000224
(87)【国際公開番号】WO2016188510
(87)【国際公開日】20161201
【審査請求日】2018年12月19日
(31)【優先権主張番号】102015007201.3
(32)【優先日】2015年5月28日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】513044038
【氏名又は名称】ハールブルク・フロイデンベルガー マシーネンバウ ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100154612
【弁理士】
【氏名又は名称】今井 秀樹
(74)【代理人】
【識別番号】100091867
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 アキラ
(72)【発明者】
【氏名】バールケ シュテファン
【審査官】
浅野 昭
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2015/0079210(US,A1)
【文献】
特開昭63−197605(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 33/00−33/76
B29C 35/00−35/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも加硫プロセスの間に加工空間構成要素を固定するための、タイヤ加硫機の内部の加工空間の高さ位置固定機であって、それにより、閉鎖状態において前記加工空間の高さ程度を定める少なくとも1つの定められた高さ間隔Hが固定可能である高さ位置固定機にして、
複数の固定手段が少なくとも1つの加工空間構成要素に設けられていること、及び、解除可能な固定にして発生する力を受容する固定がもたらされるように前記複数の固定手段が形成されている高さ位置固定機であって、
前記固定手段が少なくともテンションケーシングの領域に設けられており、前記固定手段が前記テンションケーシングの内側壁部の少なくとも一部分に設けられており、前記固定手段が、少なくとも1つの長手方向及び左右方向ノッチ組み合わせ部を有し、
前記テンションケーシングが、カバープレートを有する中空シリンダであり、前記固定手段が、前記中空シリンダの内側壁部の下側領域に配設されており、
可動なバヨネットリングを有し、
前記固定手段が、前記可動なバヨネットリングの領域に配設された突起部と共同してバヨネットロックをもたらす、ことを特徴とする高さ位置固定機。
【請求項2】
請求項1に記載の加工空間の高さ位置固定機において、
前記固定手段が、前記加工空間構成要素の高さ位置の固定を互いにもたらすこと、を特徴とする高さ位置固定機。
【請求項3】
請求項1に記載の加工空間の高さ位置固定機において、
前記長手方向及び左右方向ノッチ組み合わせ部が、少なくとも2つの、互いに軸方向に並んでいる左右方向ノッチを有しており、その結果前記テンションケーシングと加工空間構成要素の1つとの係合によって少なくとも2つの定められた高さ間隔での閉鎖状態の固定がもたらされていること、を特徴とする高さ位置固定機。
【請求項4】
請求項1に記載の加工空間の高さ位置固定機において、
前記固定手段が、複数の長手方向及び左右方向ノッチ組み合わせ部を有すること、を特徴とする高さ位置固定機。
【請求項5】
請求項4に記載の加工空間の高さ位置固定機において、
前記複数のノッチ組み合わせ部が、前記テンションケーシングの内側壁部の周囲で、対称又は非対称に配設されていること、を特徴とする高さ位置固定機。
【請求項6】
請求項1に記載の加工空間の高さ位置固定機において、
前記バヨネットリングが、端面側の迫持受け肩部を有し、前記バヨネットリングは、前記端面側の迫持受け肩部を介して前記加工空間のベースプレートに可動的に固定されていること、を特徴とする高さ位置固定機。
【請求項7】
請求項6に記載の加工空間の高さ位置固定機において、
前記バヨネットリングは、回転自由度を有して可動的に固定されており、その結果、前記バヨネットリングは、前記固定手段が前記加工空間構成要素の軸方向の可動性をもたらす位置、及び、ロック位置の間で、回動可能であること、を特徴とする高さ位置固定機。
【請求項8】
請求項7に記載の加工空間の高さ位置固定機において、
前記回転自由度が約1/8πの円弧量に沿った線分に対応すること、を特徴とする高さ位置固定機。
【請求項9】
請求項8に記載の加工空間の高さ位置固定機において、
前記固定手段が、ロック位置におけるテンションケーシングの張力を受容可能であるように、形成されていること、を特徴とする高さ位置固定機。
【請求項10】
請求項1に記載の加工空間の高さ位置固定機において、
前記固定手段が、前記加工空間のベースプレートに対する前記加工空間構成要素の高さ位置の固定をもたらすこと、を特徴とする高さ位置固定機。
【請求項11】
請求項1に記載の加工空間の高さ位置固定機を有している、タイヤ加硫機の加工空間のためのテンションケーシング。
【請求項12】
請求項11に記載のテンションケーシングを有しているタイヤ加硫機のための加工空間。
【請求項13】
請求項12に記載の加工空間を有しているタイヤ加硫機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも加硫プロセスの間に加工空間構成要素を固定するための、タイヤ加硫機内部の加工空間の高さ位置固定機に関するものであり、それにより、閉鎖状態において少なくとも1つの定められた高さ間隔Hが固定可能であり、その際固定手段は、少なくとも1つの加工空間構成要素に当接して設けられておりまた解
除可能な固定及び発生する力を受容する固定がサポートされているように形成されている。
【背景技術】
【0002】
例えば自動車やオートバイといった車両用のタイヤの製造とは、多数の製造工程及び加工工程(処理工程)で構成されるきわめて複雑なプロセスである。その理由は、タイヤがきわめて多数の、異なる個々の構成要素で構成された、複雑な構造を有することにある。更に、これらの多数の構成要素は、いわゆる加硫のための圧力及び温度の作用下で、互いに結合されなければならない。加硫工程は完成したタイヤの材料特性及びグリップ性能にとって重要である。
【0003】
この理由から、生タイヤ(グリーンタイヤ)から完成したタイヤへの加硫工程は、タイヤを製造するための基本的な製造工程の1つである。そのために生タイヤは、例えばタイヤ金型といったタイヤ加硫機の内部に存在する型へ入れられ、その後、材料に応じた加硫温度へと加熱され、また、生タイヤ内側で加硫圧力の作用を受ける。加硫温度及び加硫圧力に到るために、適切な熱媒体が、対応的な温度及び圧力作用下で、生タイヤの内部空間へもたらされる。
【0004】
加硫の基本的な目的は、一度又は複数の時間的なインターバルでの温度印加及び圧力印加によって事実上生タイヤを「完成まで焼く」ことであり、それはすなわち、生タイヤの複数の構成要素を互いに結合しそしてベース材料並びにゴム層/天然ゴム層に架橋結合によって弾性的な特性を与えることである。そのためには、実際の圧力印加及び温度印加に加えて更に、架橋結合のためにベースとなる原材料に対して調整された異なる複数の添加物、また場合によっては架橋促進剤が必要となる。
【0005】
エラストマー材料の加硫を実行するためには、相当な熱エネルギーを材料内へもたらさなければならない。加硫されるべき生タイヤを内側で加硫温度及び加硫圧力で作用させることは、大抵の場合そのために十分ではない。
【0006】
加硫プロセスにとって必要な熱エネルギー及び圧力印加を実現するために、代替的に又は追加的に、生タイヤの外側へ加硫機内で生タイヤへの圧力作用及び/又は温度作用が企図される。通常はそのために加工空間(処理空間)が設置されており、当該加工空間は、タイヤ型(タイヤモールド)を有しており、また開放或いは閉鎖され得るので、加硫されるべき生タイヤを装入し、加硫し、そして取り出すことが可能である。
【0007】
生タイヤの特に厚い範囲が走行面である。側壁部(サイドウォール部)は比較的薄く形成されている。スチールベルト、ベルトオーバーレイヤーのような走行面の領域に配される追加のタイヤの構成要素、及び、側壁部と比べて著しく厚いゴム/ラバー層が、この明らかな厚みの差の原因となる。この著しく厚いゴム層/ラバー層がより厚い壁厚を有している主な理由の一つは、それが加硫プロセスの間に作製される実際のタイヤ断面(タイヤプロフィール)を有することである。そのために、走行面領域或いはそこに設けられる厚壁状のゴム塊/ラバー塊は、可塑的に流れることが出来るまで、そして加硫圧によってタイヤ加硫機の生タイヤモールドの輪郭のネガティブ金型内へと押し込まれ得るまで、加熱されなければならない。可塑的流動性は、幅広領域において、材料の上昇的な加熱に伴って増加するので、プロフィール形成(輪郭形成、溝形成)を信頼性高く作製可能とするためには、より僅かなプレス圧が必要となる。
【0008】
加工空間内部の、或いはタイヤモールド内部の温度にして、200°Cまでの温度範囲の、往々にして約160°Cの範囲の、必要とされる加硫温度に基いて、通常、空間温度を有するタイヤ加硫機の周辺と機械内部の間には、著しい温度勾配が存在する。この状況は、可能な限りエネルギー効率的な資源の保護を考慮した、機械を駆動するための基本的な要請に加えて、特にはタイヤ加硫機の加工空間の表面を介した対流による熱損失が減少されなければならないことの、主たる要因である。
【0009】
多くのタイヤ加硫機は、加工空間が機能的な中心的構成要素であるように、構成されている。加工空間は直接、加硫されるべき生タイヤの収容部、又は、タイヤモールド、又は所謂コンテナとして利用され、また当該加工空間は、その空間的な延伸部において、モールド押圧プレートを備えるベースプレート、及び、モールド対向押圧プレート、並びに、特にはシリンダ状のテンションケーシング(引張側面カバー)によって画定されている。加工空間の空間を画定する全ての構成部材は、とりわけ対流によって、熱損失に関与する。その際特には、著しく大きな表面積を有するテンションケーシングが大きな熱損失の原因となる。
【0010】
対流によって引き起こされる熱損失のみがタイヤ加硫機のエネルギーバランスに直接的な影響を及ぼすわけではない。加工空間のサイズ、特には加工空間の空間ボリュームも同様に、この点に関して重要な要因である。理想的な場合では、その都度加硫されるべき生タイヤが、追加的に周囲を被うコンテナ或いはタイヤモールドと共に、又はそれらなしで、収容可能であるように、加工空間は寸法決定されている。その際、加工空間が開放及び閉鎖されなければならない点について、考慮されていなければならない。また同様に、加工空間の負荷除去及び負荷印加による生タイヤ或いは完成したタイヤの処理を保証するために、少なくとも開放位置では、処理空間が支援されていなければならない。
【0011】
特にはタイヤの寸法が選択的に異なる場合においては、エネルギー的に有利にまた機能的に合目的にタイヤの加硫を実行出来るように、少なくとも加工空間の高さ及び/又はその内径が適切な措置によって調節可能(作用可能)及び適合可能であることが必要である。
【0012】
加工空間に対する更なる要求基準は、加硫されるべき生タイヤの内側及び/又は外側の圧力印加である。加硫プロセスのために必要な熱エネルギー及び圧力印加を実現するため、代替的に又は追加的に生タイヤの外側に加硫機内で、生タイヤに対して圧力及び/又は温度を作用させることが企図される。そのために、通常は加工チャンバーが設置されており、当該加工チャンバーはタイヤモールド(タイヤ型)と称され、また、開放及び閉鎖することが可能であるので、加硫されるべき生タイヤを装入し、加硫し、そして取り出すことが出来る。
【0013】
圧力が全方向位に広がる一般的な物理的法則に従い、加工空間、及び/又は、加工チャンバー、或いは、タイヤモールドは、プレス力及び押圧力を、半径方向においてもまた同様に軸方向においても、支持及び受容しなければならない。その結果、タイヤモールドを開放及び閉鎖するための移動装置は、タイヤモールドが加硫されるべき生タイヤの回転軸に沿って配設されているか、又は当該回転軸に対して垂直に配設されているかとは無関係に、通常は、少なくとも1つの割型を移動するための力を付加しなければならないだけでなく、タイヤを加硫する際の閉鎖力に関して十分に寸法決定されていなければならない。数キロニュートン(kN)にも達する閉鎖力に基いて、例えばトグル機構構造(倍力機構構造)又はスピンドルのような機械的な解決手段に加えて、大抵は高圧流体シリンダが用いられる。
【0014】
この種の装置は、たしかに移動機能(運動機能)も閉鎖力機能も統合しているが、軸方向に非常に高い構造高を有しており、また、それぞれの実施に応じて、半径方向の力や高温或いは温度勾配に敏感である。
【0015】
閉鎖力機能を移動機能から装置技術的に分離することが、これらの複合的な問題を克服するためのアプローチの一つであり得る。そのように機能を分離する場合、選択的にロック機能が補足的に提供されなければならず、当該ロック機能は特定の前提条件下では移動装置内に実装されていてもよい。
【0016】
移動機能から分離されて実現されるべき閉鎖力機能のための適した又有利な閉鎖力ユニットを作成するため、特にはプランジャシリンダ動作に基づくリニアドライブ(リニア駆動部、線形駆動部)を構造上タイヤ加硫機へ組み込むことが提案される。そのために、少なくとも1つの流体シリンダが、タイヤ加硫モールド及び/又は機械構成要素の、統合的な構成部材として、設計されている。
【0017】
ピストン及び場合によってはピストンロッド並びにシリンダハウジングからなる流体シリンダを、個別の買い入れ部品として取り入れるのではなく、流体的なリニアドライブを、基体プレート又はベースプレートに一体的な様態で構成することが企図される。
【0018】
一体的な構成様態は、ベースプレートをシリンダハウジングとして直接利用することによって、実現可能である。そのために、流体的なリニアドライブの必要数に応じて、ベースプレートに複数の孔が導入され、それらの孔は流体的なリニアドライブの実施形態に応じて貫通孔及び/又はめくら穴として設計され得るものである。この様態では、ピストン‐ピストンロッド‐リニアドライブと同様に、プランジャシリンダ動作に基づくピストン‐リニアドライブを組み込むことが可能である。
【0019】
閉鎖力機能を提供するためにその種の閉鎖力ユニットが用いられる場合、タイヤモールド或いは加工空間の開閉を実行するため、また従ってタイヤ加硫機のキャビティの開閉を実行するめには、移動機能を実現する移動装置が更に付加されなければならない。
【0020】
移動機能を提供するための移動装置は、一体的な又は個別の様態でリニア駆動部及びリニアガイドユニットを備えた、閉鎖力ユニットとは連結されていない装置によって、構成されていてもよい。そのためには、流体シリンダ、電気的リニアドライブ、スピンドル及びボールスクリュースピンドル(ボールローラスピンドル)或いはガイドといった、多岐にわたる可能性が考えられる。
【0021】
閉鎖力機能及び移動機能の機能分離と関連して、多くの場合において、更なる機能的な課題:加工空間を形成する構成要素のうち少なくとも1つの高さ位置の固定、が解決されなければならない。多くの場合において移動装置を高さ位置の固定のために設計することは出来ないので、又はそのために設計することは経済的ではないので、このような固定は、閉鎖力に逆らって及び/又は加工空間内圧によって結果的に生じる圧力に逆らって、実行されなければならない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
本発明の課題は、加工空間を形成する構成要素のうち少なくとも1つのための高さ位置固定機にして、上述の機能を少なくとも部分的に実現し、また費用効率の高い全体構成をサポートするような高さ位置固定機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0023】
この課題を解決するため、本発明に従う教唆は、統合(一体化)された固定手段にして、閉鎖力ユニットの摩擦的に結合する少なくとも1つの構成要素と協働する固定手段を備えているテンションケーシングを、提案する。
【0024】
この目的に適したテンションケーシングは、特にはシリンダ状の構成要素であって、当該構成要素は形状に関して少なくとも部分的に加工空間を画定し、また、十分に大きな機械的安定性(堅牢性)、発生する温度勾配に対する耐性(抵抗性)、及び、構造的な一体性を有している。
【0025】
本発明は、固定手段が加工空間の構造的に統合された構成要素であること、また特には、固定手段がこの加工空間の少なくとも1つの構成要素としてのテンションケーシングの構造的に統合された構成要素であること、を企図している。
【0026】
固定手段は、バヨネット方式に類似した機構によって、構造的に実現されている。そのために、加工空間を
画定している構成要素内に少なくとも1つの突起部(突出部)が設けられ、当該突起部は、例えばノーズ状又はピン状のオーバーハングの形状を有しており、また、テンションケーシング内の少なくとも1つの対応する長手方向及び左右方向ノッチ組み合わせ部と、共に作用する。少なくとも1つの長手方向ノッチは、少なくとも1つの突起部のノッチ組み合わせ部内への機能的な係合の際に、高さ位置の変位のための自由度をサポートするために利用される。少なくとも1つの左右方向ノッチ成分は、突起部の係合の際に、高さ位置の調整を実現する。
【0027】
タイヤ加硫時に少なくとも一時的に、加工空間のテンションケーシングに発生する大きな張力を受容することが出来るように、並びに、一般的に非常に大きな力及び圧力の負荷を、構造欠損なしにまた非常に数多くのロードサイクルの枠内で受容することが出来るように、固定手段は、堅牢性に対して十分に寸法決定されている。
【0028】
本発明の格別に有利な構成においては、少なくとも2つの固定手段にして、それらがそれぞれ、長手方向及び左右方向ノッチ組み合わせ部と突起部の少なくとも1つの組み合わせから構成されている固定手段を設けることが、考えられている。この様態では、複数の構成要素内での望まれない曲げ応力が減少され得る。更に、少なくとも2つの点を含むこの固定は静力学的に定められているので、加工空間が閉じられた状態にある間のより均等な負荷分配が獲得される。
【0029】
本発明の別の有利な構成においては、少なくとも1つの突起部に機能的に対応している少なくとも1つの長手方向及び左右方向ノッチ組み合わせ部をテンションケーシングの内側に配設することが企図されている。この構成バリエーションでは、少なくとも1つの対応する突起部は、半径方向外側に延伸する様態で形成されている。テンションケーシングの内側に固定手段を配設することは、空間節約的でまた簡潔な全体構成を支援(促進)する。更に、一方では線力の偏向を最小化することによって、また他方では曲げ応力を回避することによって、応力特性は部材内で均一となる。
【0030】
発生する力を支持的な様態で最適に受容出来るように、1つの構成バリエーションでは、少なくとも1つの突起部がタイヤ加硫機のベースプレートに配置されていることが企図されている。機能技術的にはモールド押圧プレートの迫持受け部(橋台部)としてのベースプレートであって、また従って閉鎖力ユニットの力作用の受容部としてのベースプレートは、この様態において、閉鎖力、押圧力及びプレス力が加工空間の領域に制限或いは限定され得ることをもたらす。その結果、タイヤ加硫機の保持部材及び/又は移動装置は、それらのそれぞれの機能のみに関連して寸法決定される。それにより、コストが削減された構成様態が促進され、また、より大きな自由な加工空間が獲得される。
【0031】
本発明の別の着想は、高さ位置固定機の調整可能性である。異なる高さ位置での固定は、簡潔且つ迅速な様態での寸法の異なるタイヤの加硫を促進し、また、タイヤ製造設備の簡潔なバッチ交換を可能とする。高さ位置固定機の調整可能性のために、長手方向及び左右方向ノッチの組み合わせ部が適切な様態で構成されていることが企図され得る。そのために、少なくとも2つの左右方向ノッチが少なくとも1つの長手方向ノッチに割り当てられ得て、またそれらは、少なくとも1つの突起部が選択的に第1又は第2の左右方向ノッチ内に入り込みまた係合することが出来るように、構成され得る。少なくとも2つの左右方向ノッチは、テンションケーシングの軸方向の延伸部にて異なる高さ位置に配されているので、その結果テンションケーシングの少なくとも2つの互いに異なる高さ位置が固定され得る。
【0032】
タイヤ加硫機の加工空間のテンションケーシングのための、本発明に従う高さ位置固定機の実施例が図面に示されている。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】タイヤ加硫機200の加工空間30のテンションケーシング50の高さ位置を固定するための本発明に従う固定手段300の実施例を、x−z平面に部分断面を含む斜視全体図で示す。
【
図2】閉鎖状態にある加工空間の斜視断面図を示しめしており、当該加工空間は少なくともテンションケーシング50の内側面に設けられている固定手段300を備え、当該固定手段300は少なくとも1つの長手方向及び左右方向ノッチ組み合わせ部320及び少なくとも1つの突起部の形態をしている。
【
図3】部分的に開放した状態の加工空間30の斜視断面の側面図を示しており、当該加工空間30は、少なくとも1つの長手方向及び左右方向ノッチ組み合わせ部320及び少なくとも1つの突起部の形態をした固定手段300にして、少なくともテンションケーシングの内側面に設けられた固定手段300を備えている。
【
図4】開放した状態の加工空間30の斜視断面図を側面図で示す。
【
図5】閉鎖状態にある加工空間30の斜視断面図を側面図で示しており、当該加工空間30はベースプレート10に対してテンションケーシング50の第1の高さ位置で固定されている。
【
図6】閉鎖状態にある加工空間30の斜視断面図を側面図で示しており、当該加工空間30はベースプレート10に対してテンションケーシング50の第2の高さ位置で固定されている。
【
図7】閉鎖状態にある加工空間30の斜視断面図を側面図で示しており、当該加工空間30はベースプレート10に対してテンションケーシング50の第3の高さ位置で固定されている。
【発明を実施するための形態】
【0034】
図1は、タイヤ加硫機200の加工空間30のテンションケーシング50の高さ位置を固定するための本発明に従う固定手段300実施例を、x−z平面に部分断面を含む斜視全体図で示している。
【0035】
タイヤ加硫機或いはタイヤ熱プレス機200は、この例においては、有柱プレス機として構成されており、その保持性の全体構成において、柱110、横梁80及びベースプレート10を備えるマシンベッド110を有している。
【0036】
タイヤ加熱プレス機200が、例えばフレームプレス機又はペデスタルプレス機として構成されている場合、柱の代わりに、フレーム枠又はペデスタル台が用いられ、それらは往々にしてマシンベッドの統合された構成要素でありまた保持及びガイドの役割を担う。タイヤ加熱プレス機200の全ての実施形態には、加工空間30を設けることが可能である。
【0037】
タイヤ加硫機200の機能的な中心的構成要素は、加工空間であり、当該加工空間は、モールド押圧プレート40、或いはベースプレート10、及びモールド対向押圧プレート60並びに特にはシリンダ状のテンションケーシング50によってその空間的な延伸部を画定されている。加硫空間30の画定に加え、テンションケーシング50には、更に2つの機能的な役割が割り当てられている。つまり、生タイヤの加硫時の加硫空間30内部の押圧力のため、テンションケーシング50は結果的に生じる軸方向での力(張力)を受容し、また当該テンションケーシング50は、加硫空間30内で発生する、160°Cまでの温度の、部分的にはそれ以上の温度の、加硫温度に関して断熱的に作用する。
【0038】
モールド押圧プレート40は、軸線方向に変位可能であり、また同様に、力の作用も可能でもあり、その結果、加硫空間30には押圧力が発生可能であり、そしてその容積が調整可能である。モールド対向押圧プレート60は、モールド押圧プレートに対して、事実上、閉鎖力及びプレス力のための迫持受け部であり、その際、テンションケーシング50はプレート10、40、60の間の締結結合(摩擦的結合)をもたらす。
【0039】
特には、テンションケーシング50はモールド対向押圧プレート60に固定されており、また、共通の構成ユニットとして軸方向に移動可能である。モールド対向押圧プレート60はテンションケーシング50と共に合同で横梁80を介して2つの柱110によって移動される。
【0040】
移動装置は、テンションケーシング50を備えるモールド対向押圧プレート60の構成ユニットのための軸方向の移動駆動部(アキシャルムーブメントドライブ)によって、形成され、またこの例においては、2つの流体シリンダ90によって実現されており、それらはマシンベッド100に対して横梁と作用連結しており、また特には複動式である。
【0041】
図2は、閉鎖状態にある加工空間30の斜視断面図を示しめしており、当該加工空間30は、少なくとも1つの長手方向及び左右方向ノッチ組み合わせ部320及び少なくとも1つの突起部の形態をした固定手段300を備えており、当該固定手段300は少なくともテンションケーシング50の内側面に設けられている。
【0042】
加工空間30の基本的な構成要素はベースプレート30、モールド押圧プレート40、モールド対向押圧プレート60及びテンションケーシング50である。また、モールド押圧プレート40及び/又はモールド対向押圧プレート60にタイヤ割型を固定するために、追加的なアダプタープレート70が設けられていてもよい。
【0043】
ベースプレート10は、保持ベースとして、生タイヤを加工及び加硫するための更なる構成ユニットのために、加工空間30に隣接して位置決めされており、また熱的な観点でそれと端面側で接続している。
図2に示されている例は、モールド押圧プレート40の下方での垂直で同心な配置によって、ベースプレート10の加工空間30と隣接した位置決めを実現している。
【0044】
少なくとも1つの長手方向及び左右方向ノッチ組み合わせ部320に対応するする少なくとも1つの突起部310は、バヨネットリング311に取り付けられているか、又は、それと一体的な構成要素である。バヨネットリング311は、好ましくはベースプレート10に対して回転自由度を有して可動的に取り付けられており、
その際場合によっては回転自由度は約1/8πの円弧量に沿った線分に対応する、また、固定手段300がロック位置と係合状態にある場合には、端面側の迫持受け肩部312を介して生じる、テンションケーシング50の張力及び支持力(反力)を受容することが出来る。
【0045】
対応する固定手段300の機能的な協働作用から、少なくとも1つの突起部310が少なくとも1つの長手方向及び左右方向ノッチ組み合わせ部320へ係合している間、2つの位置状態が実現可能であり、その際、
‐突起部の係合が長手方向ノッチの領域内で行われている場合は、ベースプレート10に対するテンションケーシング50の高さ位置調整が、存在している軸方向の自由度によって支援(サポート)されており、
‐突起部の係合が左右方向ノッチの領域内で行われている場合は、ベースプレート10に対するテンションケーシング50の高さ位置は、形状拘束的に妨げられている軸方向の自由度により、抑えられており、固定手段は従ってロック位置に存在している。
【0046】
少なくとも1つの突起部310の、長手方向ノッチの領域から左右方向ノッチの領域への位置変更は、適切な円弧量でバヨネットリング311を回転させることによって、達成される。突起部が周方向で左右方向ノッチと揃って位置決めされている場合、回転運動は初期化され得る。
【0047】
図3は、部分的に開放した状態の加工空間30の斜視断面の側面図を示しており、当該加工空間30は、少なくとも1つの長手方向及び左右方向ノッチ組み合わせ部320及び少なくとも1つの突起部の形態をした固定手段300にして、少なくともテンションケーシングの内側面に設けられた固定手段300を備えている。
【0048】
図3からは、本発明のこの実施例が、テンションケーシング50の周囲で(
図3では対称に)分配された複数の、長手方向及び左右方向ノッチ組み合わせ部320にして、それぞれに軸方向で高さを揃えバヨネットリング311に対応する様態で配された突起部310と、協働する組み合わせ部320を有していることが見て取れる。固定手段300、310、320の複数配置に伴い、非常に大きな局所的な最大負荷が低減され得るので、静的に定められた負荷分布が支援されている。
【0049】
更に、この典型的な実施例は、軸方向に互いに平行に並んで配されたそれぞれ3つの左右方向ノッチ320を示しており、それらは、突起部310が係合状態へともたらされ得るような形状で形成されている。この様態では、3つの固定位置での高さ位置調整が可能である。
【0050】
図4は開放した状態の加工空間30の斜視断面図を側面図で示しており、それはベースプレート10及びテンションケーシング50の間の可能な最大の開放幅を有している。図示されている開放された加工空間30は、プレス構造技術的には1つのキャビティであり、また、図示されている開放状態での加工機能の実現を可能にする、特には生タイヤに負荷を掛けること及び/又は加硫された完成したタイヤから負荷を除くことを可能とする。
【0051】
図5は、閉鎖状態にある加工空間30の斜視断面図を側面図で示しており、当該加工空間30はベースプレート10に対してテンションケーシング50の第1の高さ位置H1で固定されている。固定手段310、320は、実矧ぎ継ぎのような形状に起因する固定様態で互いに係合しているので、その結果軸方向に向けられた長手方向力はベースプレート10及びテンションケーシング50の間で伝達可能である。
【0052】
図6及び
図7は、
図5と類似の、ベースプレート10に対する、テンションケーシング50の支援されている更なる高さ位置固定H2、H3を示している。それらの図面に示されている実施例は左右方向ノッチを有しており、それらはH1>H2>H3で高さ位置の寸法を支持するように、互いに配されている。