(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
さらに、前記作業毎に、前記状態データに格納される情報の所在を示す所在情報と、前記作業を進めるための判定内容、前記判定内容に応じて行われる処理とが格納される状態データ判定テーブルを備え、
前記フロー制御部は、前記状態データ判定テーブルを参照して、特定した前記作業に必要となる前記情報を前記状態データから取得して、前記判定内容に従って前記作業を進め、前記処理を行う
請求項3に記載の管理サーバ。
前記作業を進めた結果は、前記状態データにより実行された前記作業、前記第1入力データにより実行された前記作業、及び前記第2入力データにより実行された前記作業毎に異なる表示態様で前記後方支援者端末及び前記保守員端末に表示される
請求項1〜4のいずれか一項に記載の管理サーバ。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための形態について、添付図面を参照して説明する。本明細書及び図面において、実質的に同一の機能又は構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複する説明を省略する。
【0013】
[一実施の形態]
<管理システムの全体構成例>
図1は、管理システムの全体構成例を示すブロック図である。
始めに、本実施の形態に係る管理システム20の構成例を説明する。管理システム20は、現地作業部10、管理サーバ9、後方支援者端末8を備える。
【0014】
現地作業部10は、例えば、昇降機1、監視装置2及び保守員端末3が設けられる建物内を示す領域である。なお、保守員が昇降機1を保守する場所を「現地」とも呼ぶ。保守には、例えば、昇降機1の点検、昇降機1の構成部品の交換、構成部品の調整等の作業が含まれる。
【0015】
昇降機1は、例えば、不図示の呼び釦が押されることにより、呼び釦の設置階まで乗りかごを移動させるエレベーターである。そして、昇降機1は、乗りかごに乗車した客が乗りかご内の行先釦を押すことにより、行先釦で示される行先階まで乗りかごを昇降させる。なお、昇降機1は、例えば、建物の上階床と下階床との間に設置される傾斜型の乗客コンベア、いわゆるエスカレーターであってもよい。
【0016】
監視装置2は、現地作業部10に設けられる。この監視装置2は、監視対象である昇降機1の昇降動作、ドア開閉動作等の昇降機1の状態を監視する。そして、監視装置2は、昇降機1から取得した状態データ11を管理サーバ9に送信する。
【0017】
保守員端末3は、昇降機1に対する作業が行われる現地作業部10にて昇降機1を保守する保守員が操作する端末である。保守員が、現地作業部10に到着した後、保守員の操作により保守員端末3からFTA制御部7に入力データが入力される。保守員端末3は、FTA制御部7に入力する入力データの入力元の一つである。この保守員端末3は、保守員入力部3aと保守員出力部3bを備える。
【0018】
保守員入力部3aは、保守員が、点検又は故障対応の作業を行う際に入力した点検結果、作業報告等の操作を受け付ける。保守員入力部3aに入力された点検結果、作業報告等を示す入力データは、不図示のネットワークを通じて管理サーバ9のFTA制御部7に送信される。
保守員出力部3bは、FTA制御部7から受信したデータを、保守員インターフェースと呼ばれる入出力インターフェースW1(後述する
図10を参照)に出力する。
【0019】
管理サーバ9は、昇降機1の状態を管理するサーバである。管理サーバ9は、例えば、Webサーバである。このため、監視装置2、保守員端末3及び後方支援者端末8が、不図示のネットワークを通じて管理サーバ9にアクセスし、管理サーバ9に対して各種データの送受信を行うことが可能である。管理サーバ9は、データ管理部4、原因機器推定部5、FTA選定部6及びFTA制御部7を備える。
【0020】
データ管理部4は、昇降機1の状態を監視する監視装置2から昇降機1の状態を示す状態データ11を受信し、状態データ11を管理する。このデータ管理部4は、例えば、昇降機1に異常が発生したことを監視装置2が検出した時点、すなわち、昇降機1に故障が起こったタイミングで、監視装置2から送信される状態データ11を収集する。また、データ管理部4は、例えば、不図示のコールセンターの担当者が、現地作業部10にいる昇降機1の管理者又は利用者から連絡を受けたタイミングで、監視装置2から状態データ11を収集することもできる。
【0021】
原因機器推定部5は、データ管理部4により管理される状態データ11を読み出す。そして、原因機器推定部5は、データ管理部4から取得した状態データ11に基づいて、昇降機1に異常を生じさせた原因機器を推定する。
【0022】
FTA選定部6(フロー選定部の一例)は、原因機器推定部5により推定された原因機器に対応するFTA(Fault Tree Analysis)ワークフロー(ワークフローの一例)を選定する。このとき、FTA選定部6は、推定結果テーブルF20(後述する
図5を参照)を参照してFTAワークフローを選定する。
【0023】
FTA制御部7(フロー制御部の一例)は、FTA選定部6により選定されたFTAワークフローを構成する作業のうち、状態データ11を用いて実行可能な段階まで作業を進める。このとき、FTA制御部7は、状態データ判定テーブルF21(後述する
図6を参照)を参照して、FTAワークフローの各作業を実行する。その後、FTA制御部7は、データ管理部4とは異なる入力元(保守員端末3又は後方支援者端末8)から入力される入力データを用いて以降の作業を進める。
【0024】
そして、FTA制御部7は、状態データ11又は入力データを用いて実行可能な段階まで作業を進めた結果を、保守員端末3に出力し、保守員端末3から入力される入力データを受け付ける。また、FTA制御部7は、作業を進めた結果を後方支援者端末8に出力することもできる。このようにFTA制御部7は、FTAワークフローの作業が実行される度に、作業を進めた結果を、後方支援者端末8及び保守員端末3に出力する。これにより、後方支援者端末8及び保守員端末3は、FTAワークフローの作業進捗を共有することができる。FTAワークフローを構成する具体的な作業については、後述する
図7にて説明する。
【0025】
FTA制御部7には、3種類の入力元からデータが入力される。3種類の入力元から入力されるデータは、それぞれデータ管理部4から読み出される状態データ11と、現地にいる保守員が保守員入力部3aから入力したデータ(第2入力データの一例)と、現地以外の場所から後方支援者が後方支援者入力部8aから入力したデータ(第1入力データの一例)である。このため、FTA制御部7は、FTA選定部6を通じてデータ管理部4から取得される状態データ11、保守員端末3から入力されるデータ、及び後方支援者端末8から入力されるデータに対する入出力をも制御する。
【0026】
後方支援者端末8は、保守員による昇降機1の作業を支援する後方支援者により操作される端末であり、後方支援者が待機する不図示の監視センターに設けられる。後方支援者端末8は、FTA制御部7に入力する入力データの入力元の一つである。後方支援者は、昇降機1の故障対応について保守員と同等以上の知見を持ち、後方支援者端末8に表示されるFTAワークフローに基づいて故障対応に必要な作業を実行することができる。後方支援者端末8は、保守員が現地に到着するまでの間に、後方支援者が入力可能な範囲まで事前に昇降機1の点検を行うための後方支援に用いられる。この後方支援者端末8は、後方支援者入力部8aと後方支援者出力部8bを備える。
【0027】
後方支援者入力部8aは、後方支援者がFTAワークフローの作業を進める際に入力した操作を受け付ける。後方支援者入力部8aに入力された操作を示す入力データは、不図示のネットワークを通じて管理サーバ9のFTA制御部7に送信される。
後方支援者出力部8bは、FTA制御部7から受信したデータを、後方支援者インターフェースと呼ばれる入出力インターフェースW1(後述する
図10を参照)に出力する。後方支援者出力部8bに出力される画面の内容は、保守員端末3の保守員出力部3bに出力される画面の内容と同じものとしてもよい。
【0028】
次に、管理システム20の動作例について説明する。
昇降機1にて故障が発生し、又はコールセンターの担当者が現地からの連絡を受けた際に、監視装置2は、故障した際に昇降機1の内部から出力された信号データを含む状態データ11をデータ管理部4に送信する。また、監視装置2は、昇降機1に故障が発生した後、昇降機1が復帰するまでの間、昇降機1の状態データ11をデータ管理部4に連続して送信してもよい。これにより、FTA制御部7がFTAワークフローの作業を自動的に実行し、保守員による点検等の作業が行われた後に、状態データ11を用いて自動化できる作業をFTA制御部7が改めて実行することができる。このため、FTA制御部7が自動的にFTAワークフローの作業を実行可能な範囲を広げることができる。
【0029】
データ管理部4は、監視装置2から収集した状態データ11を原因機器推定部5に送信する。原因機器推定部5は、データ管理部4から取得した状態データ11を使って原因機器の推定を行う。FTA選定部6は、原因機器推定部5が推定した原因機器と、昇降機1の故障時にデータ管理部4から収集した状態データ11とを用いて、昇降機1の故障対応に適したFTAワークフローを選定する。そして、FTA制御部7は、FTA選定部6により選定されたFTAワークフローと、FTA制御部7に入力されたデータを用いて、FTAワークフローの各作業に対する入力処理を行う。そして、FTA制御部7は、処理結果を保守員端末3及び後方支援者端末8に出力する。この処理結果は、後述する
図10に示す入出力インターフェースW1に表示される。
【0030】
<計算機のハードウェア構成例>
次に、管理システム20の各装置を構成する計算機Cのハードウェア構成を説明する。
図2は、計算機Cのハードウェア構成例を示すブロック図である。
【0031】
計算機Cは、いわゆるコンピュータとして用いられるハードウェアである。計算機Cは、バスC4にそれぞれ接続されたCPU(Central Processing Unit:中央処理装置)C1、ROM(Read Only Memory)C2、RAM(Random Access Memory)C3を備える。さらに、計算機Cは、表示装置C5、入力装置C6、不揮発性ストレージC7、ネットワークインターフェースC8を備える。
【0032】
CPU C1は、本実施の形態に係る各機能を実現するソフトウェアのプログラムコードをROM C2から読み出して実行する。RAM C3には、演算処理の途中に発生した変数やパラメーター等が一時的に書き込まれる。表示装置C5は、例えば、液晶ディスプレイモニタであり、計算機Cで行われる処理の結果等を、保守員又は後方支援者に表示する。入力装置C6には、例えば、キーボード、マウス等が用いられ、保守員又は後方支援者が所定の操作入力、指示を行うことが可能である。例えば、計算機Cが保守員端末3、後方支援者端末8に適用される場合、保守員入力部3a及び後方支援者入力部8aが入力装置C6に該当し、保守員出力部3b及び後方支援者出力部8bが表示装置C5に該当する。なお、表示装置C5と入力装置C6とは、重ね合わせて一体化することで、例えば、情報の表示とタッチ入力が可能なタッチパネルディスプレイ装置として構成することができる。監視装置2、管理サーバ9は、表示装置C5及び入力装置C6を備えない構成としてよい。
【0033】
不揮発性ストレージC7としては、例えば、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、フレキシブルディスク、光ディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、CD−R、磁気テープ、不揮発性のメモリ等が用いられる。この不揮発性ストレージC7には、OS(Operating System)、各種のパラメーターの他に、計算機Cを機能させるためのプログラムが記録されている。ROM C2、不揮発性ストレージC7は、CPU C1が動作するために必要なプログラムやデータ等を永続的に記録しており、計算機Cによって実行されるプログラムを格納したコンピュータ読取可能な非一過性の記録媒体の一例として用いられる。
【0034】
ネットワークインターフェースC8には、例えば、NIC(Network Interface Card)等が用いられ、端子が接続されたLAN(Local Area Network)、専用線等を介して各種のデータを装置間で送受信することが可能である。
【0035】
<3つの入力元からデータが入力する処理の例>
次に、FTAワークフローについて説明する前提として、FTA制御部7に複数の入力元からデータが入力される際の処理について説明する。
図3は、FTA制御部7にて行われる、複数の入力元から入力されるデータの入力処理の例を示すフローチャートである。この処理は、FTA制御部7がFTAワークフローを実行する際に、FTAワークフローを構成する作業が、異なる入力元からFTA制御部7に入力したどのデータからの値に基づいて実行されたかを後の処理で判断するためのフラグを立てる処理である。このため、
図3に示す処理は、FTAワークフローの作業毎に行われる。フラグは、FTA制御部7により、例えば、管理サーバ9に設けられるRAM C3に対して、FTAワークフローを構成する作業毎に設けられたワーク領域に記憶され、適宜参照される。
【0036】
始めに、FTA制御部7は、データ管理部4から読み出される状態データ11が入力されたか否かを判定する(S1)。状態データ11が入力されたと判定した場合(S1のYES)、FTA制御部7は、状態データ11の入力処理を開始する(S2)。同時に、FTA制御部7に入力された値が状態データ11からであることが分かるようにするため、状態データフラグを立てて(S3)、入力処理を終了する。
【0037】
ステップS1にて、状態データ11が入力されていないと判定した場合(S1のNO)、FTA制御部7は、保守員端末3を使用する保守員からデータが入力されたか否かを判定する(S4)。保守員からデータが入力されたと判定した場合(S4のYES)、FTA制御部7は、保守員用の入出力インターフェースW1(後述する
図10を参照)を保守員端末3に表示し、保守員にデータの入力を促す(S5)。同時に、FTA制御部7に入力した値が保守員により入力されたことが分かるようにするため、保守員データフラグを立てて(S6)、入力処理を終了する。
【0038】
ステップS4にて、保守員からデータが入力されていないと判定した場合(S4のNO)、FTA制御部7は、後方支援者端末8を使用する後方支援者からデータが入力されたか否かを判定する(S7)。後方支援者からデータが入力されたと判定した場合(S7のYES)、FTA制御部7は、後方支援者用の入出力インターフェースW1を後方支援者端末8に表示し、後方支援者にデータの入力を促す(S8)。同時に、FTA制御部7に入力された値が後方支援者により入力されたことが分かるようにするため、後方支援者データフラグを立てて(S9)、入力処理を終了する。なお、ステップS7にて、後方支援者からデータが入力されていないと判定した場合(S7のNO)、FTA制御部7は、入力処理を終了する。
【0039】
<状態データ>
次に、状態データ11のデータ構成例を説明する。
図4は、状態データ11の構成例を示す説明図である。
状態データ11は、様々な種類のデータを連結したデータ内容だけで構成される。しかし、説明に用いるため、
図4では、データ内容の開始アドレスを表す対応データアドレスを付して状態データ11を表す。
【0040】
対応データアドレスが「10−1」の位置には、現地データが格納される。現地データとは、例えば、現地から収集されるデータである。例えば、昇降機1に故障が発生した際、この故障の内容を示す情報が現地データと呼ばれる。
対応データアドレスが「10−2」の位置には、原因機器推定部5により推定される原因機器に同一故障が頻発しているかを示すデータが格納される。同一故障が頻発している場合には、例えば、短期間に何度も同一故障が発生していれば、監視装置2により、昇降機1に同一故障が頻発していることを表す「YES」に対応する符号「y」が格納される。
【0041】
対応データアドレスが「10−3」の位置には、監視装置2が昇降機1から取得するかご位置データが格納される。かご位置データは、昇降機1の乗りかごのかご位置を表す。
対応データアドレスが「10−4」の位置には、監視装置2が昇降機1から取得するガバナスイッチデータ(図中では、「ガバナSWデータ」と記載)が格納される。ガバナスイッチデータは、昇降機1に設置されるガバナスイッチの状態を表す。
対応データアドレスが「10−5」の位置には、監視装置2が昇降機1から取得するガバナスイッチONデータが格納される。ガバナスイッチONデータは、ガバナスイッチがONされているかを表すデータであり、ガバナスイッチがONされている場合、bit状態として「1」が格納される。
【0042】
<2種類のテーブル>
次に、管理サーバ9で用いられる2種類のテーブルの構成例について、
図5と
図6を参照して説明する。これら2種類のテーブルは、管理サーバ9内の不揮発性ストレージC7に予め設けられる。
図5は、推定結果テーブルF20の構成例を示す説明図である。
推定結果テーブルF20は、フローID、作業ID、原因機器の各フィールドを有している。
フローID F20−1には、FTAワークフローに一意に付されるフローIDが格納される。FTAワークフローは、複数種類あるが、本実施の形態では、フローIDが「TS1」であるFTAワークフローが用いられる。フローIDが「TS1」であるFTAワークフローは、後述する
図7にて、FTAワークフローF23として内容を説明する。
【0043】
作業ID F20−2には、フローIDにより特定されるFTAワークフローを構成する作業を一意に特定するための作業IDが格納される。本実施の形態では、フローIDが「TS1」であるFTAワークフローF23に含まれる作業IDが作業ID F20−2に格納される。
【0044】
原因機器F20−3には、作業IDで特定される作業が行われる際に確認される機器を示す情報が原因機器として格納される。本実施の形態では、原因機器として、ロータリーエンコーダ、ガバナSW(スイッチ)等の具体的な機器名称が原因機器F20−3に格納されているが、原因機器を特定するコード、製品番号等が格納されてもよい。
【0045】
原因機器推定部5により推定される原因機器と、作業IDとが、原因機器F20−3及び作業ID F20−2により紐付けられる。また、原因機器推定部5により推定される原因機器と、フローIDとが、原因機器F20−3及びフローID F20−1により紐付けられる。なお、フローID F20−1に格納されるフローIDは、後述する
図7のFTAワークフローF23におけるフローID F23−1に示されるフローIDとも紐付けられる。
【0046】
このように推定結果テーブルF20には、推定された原因機器、原因機器の動作を確認するためのFTAワークフローF23における作業を特定する作業IDとが格納される。このため、原因機器推定部5により原因機器が推定されると、FTA選定部6は、推定された原因機器に対応するフローIDによりFTA制御部7が実行するFTAワークフローを選定する。そして、FTA制御部7は、推定結果テーブルF20を参照して、原因機器推定部5が推定した原因機器に対して行われる作業をFTAワークフロー内で特定して作業を進めることができる。
【0047】
図6は、状態データ判定テーブルF21の構成例を示す説明図である。
状態データ判定テーブルF21は、フローID、作業ID、作業条件、作業判定、対応データアドレス、作業処理の各フィールドを有する。
【0048】
フローID F21−1には、FTAワークフローを特定するためのフローIDが格納される。この状態データ判定テーブルF21においても、フローIDが「TS1」であるFTAワークフローを用いた例について説明する。
【0049】
作業ID F21−2には、FTAワークフローを構成する作業を特定するための作業IDが格納される。
作業条件F21−3には、作業ID毎の作業条件が格納される。ある作業において、作業条件F21−3に格納された値に基づいて作業を実行するための判定を行う場合に参照される値が作業条件として格納される。
作業判定F21−4には、作業を進めるための判定方法が格納される。
【0050】
対応データアドレスF21−5には、状態データ11において、作業に必要なデータの開始アドレスが格納される。
作業処理F21−6には、作業判定F21−4に格納される判定方法の判定結果が肯定的な内容である場合に、FTA制御部7がどのように作業を進めるかを表す処理の内容が格納される。
【0051】
このように状態データ判定テーブルF21には、作業毎に、状態データ11に格納される情報の所在を示す所在情報と、作業を進めるための判定内容、判定内容に応じて行われる処理とが格納される。そして、FTA制御部7は、状態データ判定テーブルF21を参照して、特定した作業に必要となる情報を状態データ11から取得し、判定内容に従って作業を進め、処理を行うことが可能である。
【0052】
<FTAワークフロー>
次に、FTAワークフローF23について説明する。
図7は、FTAワークフローF23の処理の例を示すフローチャートである。ここでは、FTA制御部7にて処理が制御されるFTAワークフローF23に入力するデータの流れについて、適宜、状態データ判定テーブルF21を参照して説明する。
【0053】
FTAワークフローF23は、FTA選定部6により決定された、FTAワークフロー毎に割り振られるフローID F23−1で管理される。
図7に示すFTAワークフローのフローID F23−1は、「TS1」である。
【0054】
FTAワークフローF23は、複数の作業により構成されている。
図5と
図6に示したフローIDが「TS1」であるFTAワークフローF23は、図中に「F1」〜「F19」が割り振られた複数の作業で構成される。また、各作業は、作業毎に付加される楕円内に書かれた作業ID F23−2で管理される。
【0055】
FTAワークフローF23では、処理が開始されると(F1)、現地作業部10の状態(図中では、「現地状態」と記載)の確認が行われ(F2)、データ管理部4から取得される状態データ11から現地データが読み出される(F3)。ここで、
図6の状態データ判定テーブルF21を参照すると、作業F3は、作業ID「3」に該当する。そして、作業判定F21−4では、現地データの収集があるか判定され、現地データを収集できた場合には、作業処理F21−6で示されるように、作業ID「3」の作業F3がスキップされ、次の作業F4が行われる。
【0056】
作業F3の後、現地データに基づいて同一故障が頻発しているか否かが判定される(F4)。ここで、
図6の状態データ判定テーブルF21を参照すると、作業F4は、作業ID「4」に該当する。そして、作業判定F21−4では、同一故障が頻発しているか判定され、状態データ11に同一故障が頻発していることを示す「y」が格納されていれば、作業処理F21−6で示されるように、作業ID「4」の作業F4がスキップされ、次の作業F6が行われる。
【0057】
このため、作業F4にて同一故障が頻発していると判定された場合(F4のYES)、乗りかごの位置を示すかご位置データが確認される(F6)。状態データ判定テーブルF21を参照すると、作業F6は、作業ID「6」に該当する。そして、作業判定F21−4では、かご位置データの収集があるか判定される。かご位置データを収集できた場合には、作業処理F21−6で示されるように、作業ID「6」の作業F6がスキップされ、次の作業F7が行われる。作業F1から作業F6のかご位置データの確認までは、FTA制御部7により自動的に進められ、又は後方支援者により一つずつの作業が確認して進められる。
【0058】
一方、作業F7から作業F9までの処理は、現地作業部10に到着した保守員により実際に原因機器を目視することで行われる。このため、保守員により乗りかごのかご位置が目視で確認される(F7)。その後、保守員は、かご位置寸法にズレが生じているか否かを判定し(F8)、ズレが生じていれば(F8のYES)、ロータリーエンコーダを交換する(F9)。
【0059】
一方、かご位置寸法にズレが生じていなければ(F8のNO)、接続子Aにて接続される作業F10、F13を経て、状態データ11に格納されたガバナスイッチデータの確認が行われる(F11)。なお、同一故障が頻発していないと判定された場合でも(F4のNO)、ガバナスイッチデータの確認が行われる(F11)。ここで、作業F11のガバナスイッチデータの確認は、FTA制御部7、又は後方支援者により行われる処理である。状態データ判定テーブルF21を参照すると、作業F11は、作業ID「11」に該当する。そして、作業判定F21−4では、ガバナスイッチデータの収集があるか判定され、ガバナスイッチデータを収集できた場合には、作業処理F21−6で示されるように、作業ID「11」の作業F11がスキップされ、次の作業F12が行われる。
【0060】
そして、ガバナスイッチがONしているか否かが判定される(F12)。作業F12のガバナスイッチのONの確認についても、FTA制御部7、又は後方支援者により行われる処理であり、状態データ11に格納されたガバナスイッチONデータに基づいて処理が行われる。状態データ判定テーブルF21を参照すると、作業F12は、作業ID「12」に該当する。そして、作業判定F21−4では、ガバナスイッチONデータのbit状態が判定される。作業条件F21−3で示されるようにbit状態が「1」であれば、作業処理F21−6で示されるように、ガバナスイッチがONしていることが自動入力された状態で保守員端末3及び後方支援者端末8の入出力インターフェースW1にFTAワークフローF23が表示される。そして、次の作業F14が行われる。作業F11から作業F12までの作業についても、FTA制御部7により自動的に進められる。また、作業F11から作業F12までの作業は、後方支援者が一つずつの作業を確認して進めることもできる。
【0061】
一方、作業F14から作業F19までの処理は、現地作業部10に到着した保守員により実際に原因機器を目視することで行われる。このため、作業F12にてガバナスイッチがONしていると判定されると(F12のYES)、保守員によりガバナスイッチが外れているか否かが目視で判定される(F14)。ガバナスイッチが外れていれば(F14のYES)、保守員は、ガバナを交換する(F19)。一方、ガバナスイッチが外れていなければ(F14のNO)、保守員は、セット寸法の調整を行う(F18)。
【0062】
一方、作業F12にてガバナスイッチがONしていないと判定されると(F12のNO)、保守員によりガバナスイッチが外れているか否かが目視で判定される(F15)。ガバナスイッチが外れていれば(F15のYES)、保守員は、セット寸法の調整を行う(F16)。一方、ガバナスイッチが外れていなければ(F14のNO)、保守員は、ケーブルの確認を行う(F17)。
【0063】
図3を参照して説明したように、保守員端末3又は後方支援者端末8を通じて保守員入力部3a又は後方支援者入力部8aからデータが入力されると、FTA制御部7は、FTAワークフローF23の各作業を行う。一方、データ管理部4が現地の監視装置2から収集した状態データ11が存在すれば、FTA制御部7は、事前に下記2種類の処理を実施する。
ここで、
図7にて説明したFTAワークフローF23における各作業の内容と、推定結果テーブルF20及び状態データ判定テーブルF21の内容とを踏まえ、管理サーバ9が状態データ11を用いて行う2つの状態データ処理について、
図8と
図9を参照して説明する。
【0064】
<第1の状態データ処理の例>
図8は、状態データ11が入力されたときに行われる第1の状態データ処理の例を示すフローチャートである。
データ管理部4に状態データ11が存在すると、FTA制御部7は、状態データ判定テーブルF21に格納される各種のデータに従って、FTAワークフローF23に対する状態データ11の入力処理を行う(S11)。
図4に示したように、状態データ11には昇降機1の各機器の状態を示す複数のデータが格納されている。このため、FTA制御部7は、状態データ11のどの位置のデータを利用するか、対応データアドレスF21−5に示される開始アドレスを用いて決定する(S12)。
【0065】
上述したようにFTA制御部7が利用するデータの開始アドレスは、状態データ判定テーブルF21にて予め設定された値である。このため、FTA制御部7は、対応データアドレスF21−5に示される開始アドレスに基づいて、状態データ11から取出したデータをFTAワークフローF23に入力する処理を行う。
【0066】
次に、FTA制御部7は、状態データ判定テーブルF21のフローID F21−1と対応データアドレスF21−5とに基づいて、FTA制御部7が実施すべき作業を示す作業ID F21−2を決定する(S13)。そして、FTA制御部7は、状態データ判定テーブルF21の作業条件F21−3に設定された値と、作業判定F21−4に規定される判定方法に基づいて、対応データアドレスF21−5を用いて開始アドレスを決定したデータの条件を判定するための判定方法を決定する(S14)。
【0067】
そして、FTA制御部7は、データが、決定された判定方法に示される条件を満たすか判定する(S15)。データが条件を満たさなければ(S15のNO)、FTA制御部7は、本処理を終了する。なお、作業条件F21−3に条件が規定されていない作業であっても、そのまま本処理を終了する。
【0068】
一方、データが条件を満たせば(S15のYES)、FTA制御部7は、作業処理F21−6に示される作業処理に従って、判定対象である作業IDで示される処理を行い(S16)、本処理を終了する。作業処理F21−6に格納される処理は、例えば、作業IDに対応する作業のスキップ、又は予めデータを入出力インターフェースW1に自動入力する処理などであり、作業に合わせて予め設定される。
【0069】
例えば、データ管理部4に状態データ11が存在し、対応データアドレスF21−5に「10−2」が入力されていれば、FTA制御部7により、作業IDが「4」で示される「同一故障が頻発しているか否か」の判断が行われる(F4)。ここで、状態データ11の対応データアドレス「10−2」に、作業判定F21−4が正であることを示す「y」が格納されていれば、FTA制御部7は、作業IDが「6」で示される次の作業にスキップする。
【0070】
また、対応データアドレスF21−5に「10−5」が入力されていれば、FTA制御部7は、作業IDが「12」で示される「ガバナスイッチがオンしているか否か」の判断を行う(F12)。ここで、状態データ11の対応データアドレス「10−5」に、作業判定F21−4が正であることを示すbit状態「1」が格納されていれば、入出力インターフェースW1には、ここまでの作業が実行されたことを示す表示態様でFTAワークフローF23が表示される。
【0071】
<第2の状態データ処理の例>
図9は、
図8の処理に続いて行われる第2の状態データ処理の例を示すフローチャートである。
【0072】
始めに、FTA制御部7は、原因機器推定部5によって故障の原因として推定された原因機器から、故障が発生したと考えられる最有力の原因機器を選定する(S21)。そして、FTA制御部7は、選定した原因機器と、推定結果テーブルF20の原因機器F20−3とを照合する(S22)。そして、FTA制御部7は、原因機器推定部5によって推定された原因機器と、推定結果テーブルF20の原因機器F20−3に格納されたいずれかの原因機器とが一致するか否かを判断する(S23)。
【0073】
原因機器推定部5により推定された原因機器と、推定結果テーブルF20の原因機器F20−3に格納されたいずれかの原因機器とが一致しなければ(S23のNO)、フローID F20−1で示されるフローIDが「TS1」であるFTAワークフローF23を用いることができないので、本処理を終了する。
【0074】
一方、原因機器推定部5により推定された原因機器と、推定結果テーブルF20の原因機器F20−3に格納されたいずれかの原因機器とが一致すれば、FTA制御部7は、フローIDが「TS1」であるFTAワークフローF23を用いて処理を続けることが可能である。このため、FTA制御部7は、FTA選定部6により選定されたFTAワークフローF23における作業の開始位置を、フローID F20−1に示される作業ID F20−2の作業IDの位置に変更する(S24)。例えば、原因機器推定部5で推定された原因機器が「配線」であった場合、原因機器F20−3に格納される「配線」と一致する。このため、フローIDが「TS1」であるFTAワークフローF23が選定される。そして、作業ID F20−2は「12」と決定されるため、FTAワークフローF23のF12に作業の開始位置が変更される。
【0075】
次に、FTA制御部7は、2種類のテーブル(推定結果テーブルF20、状態データ判定テーブルF21)を参照して、状態データ11を反映したFTAワークフローF23を、保守員端末3及び後方支援者端末8の入出力インターフェースW1に出力する。これにより、保守員及び後方支援者によるFTAワークフローF23の自動入力、及び共有を実現することが可能となる。
【0076】
<入出力インターフェース>
図10は、保守員端末3及び後方支援者端末8に表示される入出力インターフェースW1の例を示す説明図である。入出力インターフェースW1は、保守員端末3に出力されたときには、
図3にて説明した保守員インターフェースと呼ばれ、後方支援者端末8に出力されたときには、同じく
図3にて説明した後方支援者インターフェースと呼ばれる。
【0077】
入出力インターフェースW1は、保守員端末3及び後方支援者端末8に同じ内容で同時に表示される。このため、保守員端末3及び後方支援者端末8から入力される内容に応じて、表示される内容も変わる。入出力インターフェースW1の右側は、保守員又は後方支援者が操作入力可能な保守員入力部3a又は後方支援者入力部8aを表し、故障への対応時刻、対応場所、対応号機、保守員名、後方支援者名、現在までの作業の完了状況、現地にて保守員が確認すべき作業の内容等が表示される。入出力インターフェースW1の左側は、保守員出力部3b又は後方支援者出力部8bを表し、保守員又は後方支援者が確認可能なFTAワークフローF23が表示される。なお、入出力インターフェースW1に表示されるFTAワークフローF23は、
図7のFTAワークフローF23から「F1」〜「F19」のステップ番号、及び作業IDを除いたものとなる。
【0078】
後方支援者及びFTA制御部7は、保守員が現地作業部10に到着するまでの間に進められる段階までFTAワークフローF23の作業を進めておく。このため、保守員が、現地作業部10に到着すると、既に後方支援者及びFTA制御部7により作業が進められた状態でFTAワークフローF23が保守員端末3に表示される。このことは、入出力インターフェースW1の右側に「ガバナSWデータの確認まで完了」と表示されるメッセージにより示される。そして、
図3に示した処理により入力されるフラグに基づいて、FTA制御部7により進められた作業、及び後方支援者により進められた作業が異なる表示態様で表示される。
図10では、状態データ11及び後方支援者により進められた作業が色つきの枠で表示されたり、この枠に付加されたメッセージにより、既に作業が実行された箇所、何により作業が進められたかを表す情報が明示されている。
【0079】
入出力インターフェースW1には、状態データ11により実行された作業、後方支援者端末8からの入力データにより実行された作業、及び保守員端末3からの入力データにより実行された作業毎に異なる表示態様で表示される。現地作業部10にいる保守員でなければ確認できない事項(例えば、ガバナSWの目視による確認作業)については、FTAワークフローF23の作業が点滅したり、色つきで表示されたりする。
【0080】
入出力インターフェースW1の右側には、保守員に指示される作業の内容を表すメッセージ、例えば、「ガバナSWがONしていると判定したので、実際の状況を確認してください。」が示される。このため、保守員は、保守員端末3に表示されたFTAワークフローF23及びメッセージに基づいて作業を行い、確認結果を入力することで以降の作業を進めることができる。保守員により行われた作業や、どこまで作業が進んだかは、後方支援者端末8にリアルタイムで表示されるため、後方支援者が作業の進捗状況をチェックすることが可能である。
【0081】
以上説明した一実施の形態に係る管理システム20では、データ管理部4により現地の監視装置2から収集した状態データ11を参照して、原因機器推定部5が原因機器の推定を行うことができる。そして、FTA選定部6が、原因機器推定部5により推定された原因機器に基づいて、FTAワークフローを選定する。また、FTA制御部7が、データ管理部4から読み出した状態データ11を用いてFTAワークフローの作業を判定し、進めることが可能な作業を自動的に処理しておくことが可能となる。
【0082】
さらに、管理システム20では、FTA選定部6により選定されたFTAワークフローに対する入力を後方支援者が操作する後方支援者端末8にも展開する。これにより、保守員が現地作業部10に到着するまでに、後方支援者によって事前に作業が進められる。このため、保守員の現地における作業を削減することが可能となる。さらには、現地作業部10における保守員の作業時間を低減し、昇降機1の不稼動時間の削減を実現することも可能となる。
【0083】
なお、本発明は上述した実施の形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した本発明の要旨を逸脱しない限りその他種々の応用例、変形例を取り得ることは勿論である。
例えば、上述した実施の形態は本発明を分かりやすく説明するために装置及びシステムの構成を詳細かつ具体的に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されない。また、ここで説明した実施の形態の構成の一部について、他の構成の追加、削除、置換をすることも可能である。
また、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしも全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には殆ど全ての構成が相互に接続されていると考えてもよい。