(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しつつ説明する。なお、本実施の形態では、作業機械の一例として、フロント装置の先端に作業具としてバケットを備える油圧ショベルを例示して説明するが、ブレーカやマグネットなどのバケット以外のアタッチメントを備える油圧ショベルに本発明を適用することも可能である。また、クレーン車のように作業アームを備えた、油圧ショベル以外の作業機械(作業機械を含む)に本発明を適用することも可能である。
【0011】
図1は、本実施の形態に係る作業機械の一例である油圧ショベルの外観を模式的に示す側面図である。また、
図2は、本実施の形態に係る油圧回路システムの要部を本発明の関連構成とともに抜き出して模式的に示す図である。
【0012】
図1において、油圧ショベル100は、垂直方向にそれぞれ回動する複数の被駆動部材(ブーム31、アーム33、バケット(作業具)35)を連結して構成された多関節型のフロント装置30と、車体を構成する上部旋回体20及び下部走行体10とを備えており、上部旋回体20は下部走行体10に対して旋回可能に設けられている。上部旋回体20は、基部となる旋回フレーム21上に各部材を配置して構成されており、上部旋回体20を構成する旋回フレーム21が下部走行体10に対して旋回可能となっている。また、フロント装置30のブーム31の基端は上部旋回体20の前部に垂直方向に回動可能に支持されており、アーム33の一端はブーム31の基端とは異なる端部(先端)に垂直方向に回動可能に支持されており、アーム33の他端にはバケット35が垂直方向に回動可能に支持されている。
【0013】
ブーム31、アーム33、バケット35、上部旋回体20、及び下部走行体10は、油圧アクチュエータであるブームシリンダ32、アームシリンダ34、バケットシリンダ36、旋回モータ23、及び左右の走行モータ11(ただし、一方の走行モータのみ図示)によりそれぞれ駆動される。上部旋回体20を構成する旋回フレーム21上には、原動機であるエンジン22とともに、ブームシリンダ32、アームシリンダ34、バケットシリンダ36、旋回モータ23及び左右の走行モータ11などの各油圧アクチュエータ11,23,32,34,36を駆動するための油圧回路システム40が搭載されている。
【0014】
図2において、油圧回路システム40は、油圧ショベル100の全体の動作を制御する車体コントローラ49から信号路25aを介して入力される制御信号に基づいて制御されるエンジンコントローラ25と、エンジン22の動作を制御するエンジンコントローラ25から信号路22aを介してガバナ24に入力される制御信号に基づいて動作するエンジン22と、エンジン22によって駆動される1つ以上(本実施の形態では1つの場合を例示する)の可変容量型の油圧ポンプ41と、エンジン22によって駆動される固定容量型のパイロットポンプ44と、パイロットポンプ44からトルク制御電磁弁45を介して入力されるパイロット圧(制御信号)に基づいて、油圧ポンプ41の傾転角(吐出流量)を制御するレギュレータ46と、油圧ショベル100全体の動作を制御する車体コントローラ49から信号路45aを介して入力される制御信号(ポンプトルク制御指令)に基づいて、レギュレータ46に入力される制御信号(パイロット圧)を制御するトルク制御電磁弁45と、エンジン22によって駆動される油圧ポンプ41から各油圧アクチュエータ11,23,32,34,36に供給される作動油の方向及び流量を制御するコントロールバルブ(流量制御弁)42とを備えている。なお、
図2においては図示及び説明の簡単のため、油圧アクチュエータ11,23,32,34,36を油圧アクチュエータ43a,43bで代表して表現する。すなわち、油圧アクチュエータ43a,43bは油圧アクチュエータ11,23,32,34,36の何れかに該当する。
【0015】
オペレータが搭乗する運転室(キャブ)57には、油圧アクチュエータ23,32,34,36を操作するための操作信号を出力する複数の操作レバー装置(操作装置)50(本実施の形態では1つのみを代表して図示する)が設けられている。コントロールバルブ42は、エンジン22によって駆動されるパイロットポンプ44から吐出され図示しない油路から操作レバー装置50を介して出力される操作信号(パイロット圧)により行われる。図示はしないが複数の操作レバー装置50はそれぞれ前後左右に傾倒可能であり、それぞれオペレータにより操作される操作レバー装置50の操作方向及び操作量に応じたパイロット圧(操作信号)に基づいてコントロールバルブ42を制御することにより、各油圧アクチュエータ23,32,34,36の動作が制御される。つまり、操作レバー装置50の前後方向または左右方向に、油圧アクチュエータ23,32,34,36の操作がそれぞれ割り当てられている。操作レバー装置50からコントロールバルブ42に出力される操作信号の信号路には、操作信号としてのパイロット圧(すなわち、操作レバー装置50の操作量)を検出する圧力センサ(操作量検出装置)53a,53bが設けられており、検出結果はそれぞれ信号路53f,53gを介して車体コントローラ49に入力される。
【0016】
なお、操作レバー装置50は電気信号方式であってもよく、オペレータにより操作される操作レバー装置50の操作信号であるレバーの傾倒量、すなわちレバー操作量を電気的に検知する検出装置を含み、検出装置が検出したレバー操作量を制御装置である車体コントローラ49に電気配線を介して出力し、車体コントローラ49で電磁比例弁などを制御することによって各油圧アクチュエータ23,32,34,36を駆動するように構成しても良い。
【0017】
また、運転室(キャブ)57内には、車体コントローラ49から信号路55aを介して入力される制御信号に基づいて油圧ショベル100に関する種々の情報や設定画面等を表示するためのモニタ(表示装置)55と、モニタ55に表示される各種設定画面を操作する制御信号を信号路56eを介して車体コントローラ49に出力する操作スイッチ56とが配置されており、操作レバー装置50には油圧アクチュエータ23,32,34,36の操作と並行して(すなわち、操作レバー装置50の操作と同時に)操作できるように、操作レバー装置50の操作信号の信号路50a,50bに対し別個独立した操作信号の信号路58aを有したレバースイッチ58(一時解除スイッチ)が配置されている。操作スイッチ56は、モニタ55に表示される各種設定画面等を操作するためのものであり、例えば、モニタ55に表示されるカーソル等の指示表示の位置を上下方向に移動させる方向指示ボタン56a,56bや、選択した内容を決定する決定ボタン56c、選択した内容をキャンセルしたり前の処理に戻ったりするキャンセルボタン56dなどを備えている。
【0018】
なお、操作スイッチ56は、モニタ55に表示される内容の操作を行えれば良いため、上記の構成に限られるものではなく、例えば、回転スイッチを回転および押下することにより選択や決定を行うよう構成を採用しても良い。
【0019】
車体コントローラ49は、油圧ショベル100全体の動作を制御するものであり、油圧ポンプ41の吸収馬力が所定の値になるようにP−Q等馬力曲線(油圧ポンプ41の吐出圧と吐出流量の関係を示す特性線)に従ってエンジン22の回転数や油圧ポンプ41の吐出流量を制御する。
【0020】
図3は、車体コントローラを示す機能ブロック図である。また、
図4は、ポンプトルク制御指令補正部の処理内容を示す図である。
【0021】
図3において、車体コントローラ49は、動作状態判定部61、稼動時間記憶部62、燃料消費量記憶部63、入出力制御部64、期間設定部65、動作割合算出部66、目標燃費低減係数算出部67、目標燃費低減率設定部68、ポンプ出力低減率算出部69、パラメータ記憶部70、モード設定部71、ポンプトルク制御指令補正部72、及び、ポンプトルク指令生成部73を有している。
【0022】
動作状態判定部61は、圧力センサ(操作量検出装置)53a,53bで検出される操作レバー装置50の操作量に基づいて、油圧ショベル100の動作状態を判定し、判定結果をポンプトルク制御指令補正部72に出力する。油圧ショベル100の動作状態は、操作レバー装置50のそれぞれの操作の有無や操作量に基づいて定められる。すなわち、より具体的には、油圧ショベル100の動作状態は、アイドル状態や、フロント装置30による掘削等の動作(フロント動作)、旋回動作、走行動作などの作業内容と、操作レバー装置50の操作量とにより定義されており、本実施の形態においては、各動作状態が動作状態A、動作状態B、動作状態C、及び、その他の動作状態の4つのグループに分けられて定義されている(後の
図4等参照)。例えば、動作状態Aとしては、走行操作がなされた状態(走行動作)と、フロント動作又は旋回動作のレバー操作がなされた状態であって、レバー操作量が予め定めたレバー操作量大閾値以上である動作状態(以降、旋回動作と併せてフロント動作レバー操作量大と称する)とが定義されている。同様に、動作状態Bとしては、フロント動作又は旋回動作のレバー操作がなされた状態であって、レバー操作量が予め定めたレバー操作量大閾値未満で、かつ、レバー操作量が予め定めたレバー操作量小閾値よりも大きい動作状態(以降、旋回動作と併せてフロント動作レバー操作量中と称する)が定義され、動作状態Cとしては、フロント動作又は旋回動作のレバー操作がなされた状態であって、レバー操作量が予め定めたレバー操作量小閾値以下である動作状態(以降、旋回動作と併せてフロント動作レバー操作量小と称する)が定義されている。また、その他の動作状態としては、走行動作やフロント動作、旋回動作のレバー操作がなされていないアイドル状態などが定義される。
【0023】
稼動時間記憶部62は、動作状態判定部61で判定された各動作状態の稼動時間を記憶するものであり、車体コントローラ49に内蔵された時計機能(図示せず)による各時刻における動作状態を記憶する。稼動時間記憶部62に記憶された各時刻における動作状態の情報は、動作割合算出部66に出力される。
【0024】
燃料消費量記憶部63は、エンジンコントローラ25で制御されるエンジン22の燃料消費量を記憶するものであり、車体コントローラ49に内蔵された時計機能(図示せず)による各時刻における燃料消費量を記憶する。燃料消費量記憶部63に記憶された各時刻における燃料消費量の情報は、動作割合算出部66に出力される。
【0025】
入出力制御部64は、モニタ55への各種設定画面の表示や、操作スイッチ56やレバースイッチ58からの入力信号に基づくモニタ55の表示の変更、操作スイッチ56やレバースイッチ58により入力される各種設定情報の出力等を行うものであり、入力装置である操作スイッチ56やレバースイッチ58、表示装置であるモニタ55などと共に、オペレータへの情報の提示やオペレータからの入力を制御するGUI(Graphical User Interface)を構成している。なお、本実施の形態においては、モニタ55と操作スイッチ56とを別体とする場合を例示したが、これらの機能をタッチパネルで構成しても良い。
【0026】
動作割合算出部66は、稼動時間記憶部62からの各時刻における動作状態の情報と燃料消費量記憶部63からの各時刻における燃料消費量の情報とに基づいて、期間設定部65で設定された期間(設定期間)における、動作状態判定部61で判定された動作状態ごとのエンジン22による燃料消費量の割合、すなわち、動作状態ごとの単位時間当たりの燃料消費量である動作割合を算出するものである。期間設定部65では、オペレータにより操作スイッチ56で任意に入力された過去の一定の期間を設定期間として設定される。なお、期間設定部65への設定期間の設定が成されない場合には、過去の直近の1日間(24時間)や、過去の直近の1週間などの期間が設定期間として設定される。動作割合算出部66では、期間設定部65で設定された設定期間について、動作状態ごとの燃料消費量を積算することによって動作割合を算出し、目標燃費低減係数算出部67に出力する。また、動作割合算出部66で算出された動作割合は、入出力制御部64を介してモニタ55に表示され、オペレータは設定期間に応じてどのような動作割合が算出されたかを確認することができる。
【0027】
図5〜
図7は、動作割合の例を示す図であり、
図5は動作割合1を、
図6は動作割合2を、
図7は動作割合3をそれぞれ例示する図である。
【0028】
図5において、動作割合1は、期間設定部65で設定された設定期間において、アイドル状態、走行動作、フロント動作レバー操作量大、フロント動作レバー操作量中、及び、フロント動作レバー操作量小の各動作(状態)の偏りが比較的少ない動作割合を示している。また、
図6において、動作割合2は、動作割合1と比較して設定期間におけるアイドル状態における燃料消費量の割合が多く、また、フロント動作レバー操作量大の動作の割合が少ない動作割合を示している。すなわち、動作割合2のような動作割合を示す場合は、設定期間において負荷の小さい作業を少量行うような比較的作業負荷の軽い作業を行った場合であるといえる。また、
図7において、動作割合3は、動作割合2と比較して設定期間におけるフロント動作レバー操作量中の動作の割合が少なく、また、フロント動作レバー操作量大の動作の割合が大きい動作割合を示している。すなわち、動作割合3のような動作割合を示す場合は、設定期間においてフロント動作による掘削や旋回動作による積み込みなどの負荷の大きい作業(動作状態がフロント動作レバー操作量大である作業)を多く行うような比較的作業負荷の重い作業を行った場合であるといえる。
【0029】
目標燃費低減係数算出部67は、動作割合算出部66で算出された動作割合に基づき、予め経験的に設定されてパラメータ記憶部70に記憶された目標燃費低減係数算出テーブルを用いて、目標燃費低減係数を算出する。
【0030】
図8Aは、目標燃費低減係数と燃費低減度合との関係の一例及び各目標燃費低減係数の関係の一例を示す図であり、
図8Bは目標燃費低減係数算出テーブルの一例を示す図である。また、
図9は、目標燃費低減係数算出部における目標燃費低減係数算出処理を示すフローチャートである。
【0031】
図8Bに示すように、目標燃費低減係数算出テーブルは、各動作状態に対する目標燃費低減係数を動作割合ごとに定めたものである。例えば、
図8Bにおいて、動作割合1の場合には、動作状態が走行動作の目標燃費低減係数はAとなり、動作状態がフロント動作レバー操作量大の目標燃費低減係数はAとなり、動作状態がフロント動作レバー操作量中の目標燃費低減係数はBとなり、動作状態がフロント動作レバー操作量小の目標燃費低減係数はCとなる。同様に、
図8Bにおいて、動作割合2の場合には、動作状態が走行動作の目標燃費低減係数はAとなり、動作状態がフロント動作レバー操作量大の目標燃費低減係数はAとなり、動作状態がフロント動作レバー操作量中の目標燃費低減係数はB’となり、動作状態がフロント動作レバー操作量小の目標燃費低減係数はC’となる。また、
図8Bにおいて、動作割合3の場合には、動作状態が走行動作の目標燃費低減係数はAとなり、動作状態がフロント動作レバー操作量大の目標燃費低減係数はA’となり、動作状態がフロント動作レバー操作量中の目標燃費低減係数はB’となり、動作状態がフロント動作レバー操作量小の目標燃費低減係数はC’となる。
【0032】
図8Bに示した各目標燃費係数A,A’,B,B’,C,C’は、例えば、
図8Aに示すような関係、すなわち、A<A’<B<B’<C<C’の関係が成り立つように設定される。後述するように、最終的な燃費低減度合は、目標燃費係数が大きくなるに応じて大きくなる。また、目標燃費係数Aの場合の燃費低減度合と目標燃費係数A’の場合の燃費低減度合の差の大きさをΔA、目標燃費係数Bの場合の燃費低減度合と目標燃費係数B’の場合の燃費低減度合の差の大きさをΔB、目標燃費係数Cの場合の燃費低減度合と目標燃費係数C’の場合の燃費低減度合の差の大きさをΔCとすると、ΔA<ΔB<ΔCの関係が成り立つように各目標燃費係数A,A’,B,B’,C,C’は設定される。
【0033】
例えば、フロント動作レバー操作量大の動作状態については燃費を低減させることに伴う作業速度の低下への影響が大きいので、このことをオペレータが鑑みた場合には、オペレータは(例えば、動作割合1に対して)、フロント動作レバー操作量小、又は、フロント動作レバー操作量中における燃費低減割合(すなわち、目標燃費低減係数)を増加させるため、動作割合算出部66において動作割合2が出力されるような設定期間を設定すれば良い。
【0034】
なお、動作割合3においては、アイドル状態とフロント動作レバー操作量大の動作状態が占める割合が大きい分、フロント動作レバー操作量小やフロント動作レバー操作量中が占める割合が小さくなり、フロント動作レバー操作量小やフロント動作レバー操作量中の動作状態で燃料を低減しただけでは燃費低減の効果としては不十分である可能性があるので、フロント動作レバー操作量大の動作状態においても燃費低減割合(すなわち、目標燃費低減係数)を動作割合1,2より増加させている。ただし、
図8Aに示したように、フロント動作レバー操作量大の動作状態においては燃費を低減させることに伴う作業速度の低下への影響が大きいので、フロント動作レバー操作量小やフロント動作レバー操作量中の動作状態の燃費低減割合(すなわち、目標燃費低減係数)よりもフロント動作レバー操作量大の動作状態の燃費低減割合(すなわち、目標燃費低減係数)を小さく設定している。
【0035】
また、走行動作もフロント動作レバー操作量大の動作状態と同様に、燃費を低減させることに伴う作業速度の低下への影響が大きいので、上述した実施例におけるフロント動作レバー操作量大のときと同様の目標燃費低減係数を設定することが考えられる。
【0036】
図9において、目標燃費低減係数算出部67は、まず、動作割合算出部66で算出された動作割合について、アイドル状態の動作割合が動作割合全体の30%以上であるかどうかを判定し(ステップS100)、判定結果がYESの場合には、フロント動作レバー操作量大の動作割合が動作割合全体の30%以上であるかどうかを判定する(ステップS110)。
【0037】
ステップS110での判定結果がYESの場合には、動作割合算出部66で算出された動作割合が動作割合1から動作割合3のうち最も近いのは動作割合3であると判定し、目標燃費低減係数算出テーブルの動作割合3に対応する目標燃費低減係数をポンプ出力低減率算出部69に出力する(ステップS111)。また、ステップS110での判定結果がNOの場合には、動作割合算出部66で算出された動作割合が動作割合1から動作割合3のうち最も近いのは動作割合2であると判定し、目標燃費低減係数算出テーブルの動作割合2に対応する目標燃費低減係数をポンプ出力低減率算出部69に出力する(ステップS112)。
【0038】
また、ステップS100での判定結果がNOの場合、すなわち、動作割合算出部66で算出された動作割合のアイドル状態の動作割合が動作割合全体の30%未満である場合には、動作割合算出部66で算出された動作割合が動作割合1から動作割合3のうち最も近いのは動作割合1であると判定し、目標燃費低減係数算出テーブルの動作割合1に対応する目標燃費低減係数をポンプ出力低減率算出部69に出力する(ステップS101)。
【0039】
ポンプ出力低減率算出部69は、目標燃費低減係数算出部67で算出された目標燃費低減係数に基づき、予め定められてパラメータ記憶部70に記憶されたポンプ出力低減率基本値算出テーブル(
図10参照)、ポンプ出力低減率算出テーブル(
図11参照)、及び、燃費低減率下限値Zと、目標燃費低減率設定部68で設定された目標燃費低減率Yとを用いてポンプトルク低減率を算出し、ポンプトルク制御指令補正部72に出力する。目標燃費低減率設定部68では、オペレータにより操作スイッチ56で任意に入力された目標燃費が目標燃費低減率として設定される。
【0040】
図10は、ポンプ出力低減率基本値算出テーブルの一例を示す図である。また、
図11は、ポンプ出力低減率算出テーブルの一例を示す図である。なお、
図11においては、目標燃費低減係数算出部67で
図8Bにおける動作割合1の目標燃費低減係数が算出された場合を例示している。
【0041】
ポンプ出力低減率算出部69では、まず、
図10に示したポンプ出力低減率基本値算出テーブルにより、目標燃費低減係数算出部67で算出された目標燃費低減係数に基づいて、ポンプ出力低減率基本値を算出する。このとき、ポンプ出力低減率基本値算出テーブルの傾きXが、
図11のポンプ出力低減率算出テーブルの目標燃費低減係数−ポンプ出力低減率基本値比率Xとなる。
【0042】
続いて、ポンプ出力低減率算出部69では、
図11に示したポンプ出力低減率算出テーブルのように、動作状態ごとにポンプ出力低減係数を算出し、ポンプ出力低減係数の値に応じてポンプ出力低減率を算出する。すなわち、目標燃費低減係数に目標燃費低減率を燃費低減率下限値で除したものを乗じてポンプ出力低減係数を算出し、ポンプ出力低減係数が1未満である場合には、ポンプ出力低減率に目標燃費低減係数−ポンプ出力低減率基本値比率を乗じてポンプ出力低減率を算出し、ポンプ出力低減係数が1以上である場合にはポンプ出力低減率を1とする。
【0043】
具体的には、
図11に例示した走行動作、フロント動作レバー操作量大、フロント動作レバー操作量中、フロント動作レバー操作量小の各動作状態に応じてポンプ出力低減率を以下のように算出する。
<動作状態:走行動作>
A×Y÷Z<1の場合:A1=A×Y÷Z×X
A×Y÷Z≧1の場合:A1=1
<動作状態:フロント動作レバー操作量大>
A×Y÷Z<1の場合:A1=A×Y÷Z×X
A×Y÷Z≧1の場合:A1=1
<動作状態:フロント動作レバー操作量中>
B×Y÷Z<1の場合:B1=B×Y÷Z×X
B×Y÷Z≧1の場合:B1=1
<動作状態:フロント動作レバー操作量小>
C×Y÷Z<1の場合:C1=C×Y÷Z×X
C×Y÷Z≧1の場合:C1=1
ポンプトルク制御指令補正部72は、ポンプ出力低減率算出部69で動作状態ごとに算出されたポンプ出力低減率(本実施の形態では、A1,B1,C1)と、動作状態判定部61で判定された動作状態(本実施の形態では、走行動作、フロント動作レバー操作量大、フロント動作レバー操作量中、フロント動作レバー操作量小)と、モード設定部71で設定された省燃費モードの有効又は無効の設定とに基づいて、ポンプトルク指令生成部73からトルク制御電磁弁45に出力されるポンプトルク指令値を補正する。
【0044】
モード設定部71では、オペレータにより操作スイッチ56で入力された省燃費モードの有効又は無効の設定、或いは、省燃費モードの一時解除スイッチであるレバースイッチ58で入力された省燃費モードの無効の設定が省燃費モードの状態として設定される。
【0045】
図12は、省燃費モードの有効(ON)又は無効(OFF)の設定処理を示すフローチャートである。
【0046】
図12において、モード設定部71では、モニタ55に表示される設定画面(図示せず)等を参照してオペレータが操作スイッチ56により省燃費モードの有効の設定を入力したかどうかを判定し(ステップS200)、判定結果がNOの場合には、省燃費モードを無効(OFF)に設定してポンプトルク制御指令補正部72に出力する(ステップS201)。また、ステップS200での判定結果がYESの場合、すなわち、省燃費モードの有効の設定が入力された場合には、一時解除スイッチであるレバースイッチ58が操作されたかどうかを判定し(ステップS210)、判定結果がNOの場合には、省燃費モードを有効(ON)に設定してポンプトルク制御指令補正部72に出力する(ステップS211)また、ステップS210での判定結果がYESの場合、すなわち、レバースイッチ58が操作されたと判定された場合には、レバースイッチ58が操作されてから所定の期間(例えば、10秒)が経過したかどうかを判定し(ステップS220)、判定結果がNOの場合には、判定結果がYESになるまで、すなわち、レバースイッチ58が操作されてから所定時間(例えば、10秒)が経過するまで省燃費モードを無効(OFF)に設定してポンプトルク制御指令補正部72に出力する(ステップS221)。また、ステップS220での判定結果がYESの場合、すなわち、レバースイッチ58が操作されてから所定時間(例えば、10秒)が経過した場合には、省燃費モードを吸光(ON)に設定してポンプトルク制御指令補正部72に出力する(ステップS211)。
【0047】
図4において、ポンプトルク制御指令補正部72は、動作状態選択機能部72aと、省燃費モード選択機能部72bと、ポンプ出力低減率積算機能部72cとを有している。
【0048】
動作状態選択機能部72aは、ポンプ出力低減率算出部69で動作状態ごとに算出された複数のポンプ出力低減率のうち、何れのポンプ出力低減率を用いるかを動作状態判定部61の判定結果に基づいて選択する。すなわち、動作状態選択機能部72aは、例えば、動作状態判定部61の判定結果が動作状態Aである場合にはポンプ出力低減率算出部69で動作状態Aに対して算出されたポンプ出力低減率A1を選択する。同様に、動作状態判定部61の判定結果が動作状態Bである場合にはポンプ出力低減率算出部69で動作状態Bに対して算出されたポンプ出力低減率B1を、動作状態判定部61の判定結果が動作状態Cである場合にはポンプ出力低減率算出部69で動作状態Cに対して算出されたポンプ出力低減率C1をそれぞれ選択する。なお、動作状態判定部61の判定結果がその他の動作状態である場合には、予め定めて定数記憶部72dに記憶したポンプ出力低減率「1」を選択する。
【0049】
省燃費モード選択機能部72bは、動作状態選択機能部72aで選択されたポンプ出力低減率を有効とするかどうかをモード設定部71の設定に基づいて選択する。すなわち、省燃費モード選択機能部72bは、例えば、モード設定部71の設定が省燃費モードの有効(ON)である場合には動作状態選択機能部72aで選択されたポンプ出力低減率を選択し、モード設定部71の設定が省燃費モードの無効(OFF)である場合には予め定めて定数記憶部72eに記憶したポンプ出力低減率「1」を選択する。
【0050】
ポンプ出力低減率積算機能部72cは、省燃費モード選択機能部72bで選択されたポンプ出力低減率を、ポンプトルク指令生成部73で生成されたポンプトルク指令値(基本値)に積算することにより補正してポンプトルク指令値(補正値)とし、トルク制御電磁弁45に出力する。
【0051】
以上のように構成した本実施の形態の作用効果を説明する。
【0052】
図13は、省燃費モードにおける油圧ポンプのP−Q等馬力曲線の変化の一例を示す図である。
【0053】
本実施の形態に係る油圧ショベル100においては、運転室57に設けられた操作スイッチ56によって省燃費モードを有効(ON)にすることで、作業状態に応じて油圧ポンプ41の吸収馬力を減少させることによって単位時間あたりの燃料消費量(所謂、燃費)を抑制する省燃費モードに移行する。このとき、
図13に示すように、油圧ポンプ41のポンプ吐出圧力Pとポンプ吐出流量Qの積が通常運転時よりも小さな所定の一定値となる省燃費モード用のP−Q等馬力曲線に基づいて油圧ポンプ41を制御するので、通常運転時よりも油圧アクチュエータ23,32,34,36の出力を抑制させることがで、単位時間当たりの燃料消費量を抑制することができる。
【0054】
また、省燃費モードでは、油圧ショベル100の動作状態ごとの単位時間当たりの燃料消費量である動作割合を算出し、この動作割合を用いて目標燃費低減係数を算出し、目標燃費低減係数を用いてポンプトルク指令の補正に用いるポンプ出力低減率の算出を行い、油圧ショベル100の動作状態に応じてポンプ出力低減率を選択して用いる。このとき、省燃費モードにおいても可能な限り作業速度を低下させたくない動作状態(例えば、走行動作やフロント動作レバー操作量大)などについては、省燃費モードにおいてもポンプ出力の低減を必要最小限にして油圧ショベル100の作業現場における最大作業速度の低下をできるだけ抑制するようにし、他の作業状態(例えば、フロント動作レバー操作量中やフロント動作レバー操作量小)でポンプ出力の低減を行うようにすることができる。すなわち、動作状態に応じて燃料消費量の抑制と最大作業速度の低減とのバランスを考慮して省燃費モードでのポンプ出力低減率の算出を行うことができるので、作業効率の低下を抑制しつつ省燃費モードにおいて燃費を抑制することができる。
【0055】
また、オペレータにより操作スイッチ56で任意に入力された過去の一定の期間を設定期間として設定し、この設定期間に基づいて動作割合を算出するので、油圧ショベル100の現在の作業内容に近い、より適切な動作割合を算出することができるので、省燃費モードにおける燃費の抑制をより精度良く行うことができる。
【0056】
また、省燃費モードにおいて、オペレータにより省燃費モードの一時解除スイッチであるレバースイッチ58で省燃費モードの無効の設定が入力された場合には、所定の時間(例えば、10秒)だけ省燃費モードを無効とするので、通常運転時の最大作業速度が必要な場面では、レバースイッチ58の操作によって一時的に省燃費モードを解除することができ、作業の利便性を出来るだけ損なうことなく、また、作業効率の低下をより精度良く抑制しつつ、省燃費モードにおける燃費の抑制をより精度良く行うことができる。
【0057】
次に上記の各実施の形態の特徴について説明する。
【0058】
(1)上記の実施の形態では、原動機(例えば、エンジン22)と、前記原動機により駆動される1つ以上の可変容量型の油圧ポンプ41と、前記油圧ポンプから吐出される圧油により駆動される複数の油圧アクチュエータ(例えば、ブームシリンダ32、アームシリンダ34、バケットシリンダ36、旋回モータ23、及び、左右の走行モータ11)と、
前記複数の油圧アクチュエータによって駆動されるフロント装置30と、前記複数のアクチュエータをそれぞれ操作するための複数の操作装置(例えば、操作レバー装置50)と、前記複数の操作装置から出力される操作信号に基づいて前記油圧ポンプから前記複数の油圧アクチュエータに供給される圧油の流量をそれぞれ制御する流量制御弁(例えば、コントロールバルブ42)と、前記操作装置から出力される操作信号を検出する操作量検出装置(例えば、圧力センサ53a,53b)と、前記油圧ポンプの動作を前記油圧ポンプの吸収馬力が所定の値になるように前記油圧ポンプにおける吐出圧と吐出流量の関係を示した
特性線に従って制御するためのポンプトルク指令値を出力する車体コントローラ49とを備えた作業機械において、前記車体コントローラは、
前記操作量検出装置で検出された前記操作装置の操作信号に基づいて、前記複数の操作装置のそれぞれの操作の有無や操作量に基づいて定められる
前記フロント装置複数の動作状態のうち、何れの動作状態であるのかを判定する動作状態判定部61と、予め定めた期間における動作状態
ごとの燃料消費量の割合である動作割合を算出する動作割合算出部66と、
前記複数の動作状態のそれぞれに対応する目標燃費低減係数を作業速度と燃費低減度合とを考慮して前記動作割合ごとに定めた目標燃費低減係数算出テーブルと、前記動作割合算出部で算出された前記動作割合
とを用いて、前記複数の動作状態のそれぞれに対する目標燃費低減係数を算出する目標燃費低減係数算出部67と、
前記作業機械のオペレータにより目標燃費として予め入力された目標燃費低減率と
、前記目標燃費低減係数算出部で算出された前記目標燃費低減係数と
、予め設定した前記目標燃費低減係数とポンプ出力低減率基本値との比率とに基づいて、前記複数の
動作状態ごとにポンプ出力低減率を算出するポンプ出力低減率算出部69と
、前記ポンプ出力低減率算出部で算出された前記複数のポンプ出力低減率のうち
、前記動作状態判定部で判定された前記動作状態に対応する前記ポンプ出力低減率に基づいて前記ポンプトルク指令値を補正するポンプトルク制御指令補正部72とを有するものとした。
【0059】
これにより、作業速度の低下を抑制しつつ燃料消費量を抑制することができる。
【0060】
(2)また、上記の実施の形態では、(1)の作業機械において、オペレータによる入力装置(例えば、操作スイッチ56)の操作に基づいて、過去の一定の期間を設定する期間設定部65を備え、前記車体コントローラ49の動作割合算出部66は、前記期間設定部で設定された期間に基づいて前記動作割合を算出するものとした。
【0061】
これにより、より適切な動作割合を算出することができ、省燃費モードにおける燃費の抑制をより精度良く行うことができる。
【0062】
(3)また、上記の実施の形態では、(1)の作業機械において、前記操作装置(例えば、操作レバー装置50)と並行しての操作が可能な一時解除スイッチ(例えば、レバースイッチ58)を備え、前記車体コントローラ49のポンプトルク制御指令補正部72は、前記一時解除スイッチが操作された場合に前記ポンプトルク指令補正部による前記ポンプトルク指令値の補正を無効にするものとした。
【0063】
これにより、作業の利便性を出来るだけ損なうことなく、また、作業効率の低下をより精度良く抑制しつつ、省燃費モードにおける燃費の抑制をより精度良く行うことができる。
【0064】
<付記>
なお、上記の実施の形態においては、エンジン等の原動機で油圧ポンプを駆動する一般的な油圧ショベルを例に挙げて説明したが、油圧ポンプをエンジン及びモータで駆動するハイブリッド式の油圧ショベルや、油圧ポンプをモータのみで駆動する電動式の油圧ショベル等にも本発明が適用可能であることは言うまでもない。
【0065】
また、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内の様々な変形例や組み合わせが含まれる。また、本発明は、上記の実施の形態で説明した全ての構成を備えるものに限定されず、その構成の一部を削除したものも含まれる。また、上記の各構成、機能等は、それらの一部又は全部を、例えば集積回路で設計する等により実現してもよい。また、上記の各構成、機能等は、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行することによりソフトウェアで実現してもよい。