特許第6872526号(P6872526)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6872526付加製造装置の粉体搬送システム及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6872526
(24)【登録日】2021年4月21日
(45)【発行日】2021年5月19日
(54)【発明の名称】付加製造装置の粉体搬送システム及び方法
(51)【国際特許分類】
   B65G 53/42 20060101AFI20210510BHJP
   B22F 7/02 20060101ALI20210510BHJP
   B29C 64/20 20170101ALI20210510BHJP
   B33Y 30/00 20150101ALI20210510BHJP
【FI】
   B65G53/42
   B22F7/02
   B29C64/20
   B33Y30/00
【請求項の数】12
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2018-504194(P2018-504194)
(86)(22)【出願日】2016年7月27日
(65)【公表番号】特表2018-524245(P2018-524245A)
(43)【公表日】2018年8月30日
(86)【国際出願番号】US2016044262
(87)【国際公開番号】WO2017019769
(87)【国際公開日】20170202
【審査請求日】2019年4月25日
(31)【優先権主張番号】62/197,153
(32)【優先日】2015年7月27日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】515313837
【氏名又は名称】ディーエムジー モリ ユーエスエイ
【氏名又は名称原語表記】DMG Mori USA
(74)【代理人】
【識別番号】100104662
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 智司
(72)【発明者】
【氏名】ハイアット エイ グレゴリー
(72)【発明者】
【氏名】ベネット リン ジェニファー
【審査官】 小川 悟史
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2003/0206820(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0145683(US,A1)
【文献】 特開2007−167809(JP,A)
【文献】 特開2009−28701(JP,A)
【文献】 特開2009−255079(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22F 7/02
B33Y 30/00
B65G 53/00−53/28
B65G 53/32−53/66
B29C 64/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
付加製造装置の加工チャンバと、
付加製造装置のキャリアガス源と、
加工チャンバ内に配設され、付加製造工程の間に加工チャンバ内に配設される基板に粉体を向けるように構成された付加製造装置のノズルと、
第1の粉体を保持するように構成された付加製造装置の粉体フィーダと、
前記キャリアガス源及び前記粉体フィーダと流体連通する入力部と、前記ノズルと流体連通する出力部とを有する粉体搬送管路と、
前記粉体搬送管路に配設され、前記粉体搬送管路の前記入力部と流体連通する流入口と、前記粉体搬送管路の前記出力部と流体連通する第1流出口と、第2流出口とを有する粉体制御弁であって、前記流入口から入る入力流体流を、前記第1流出口に供給される出力流体流と前記第2流出口に供給される戻り流体流とに分けるように構成された再循環状態を有する粉体制御弁と、
前記粉体制御弁の前記第2流出口と流体連通する戻り管路と、
前記粉体フィーダから独立して設けられ、前記戻り管路を介して前記粉体制御弁と流体連通する粉体戻りタンクとを備え
前記粉体制御弁は、前記入力流体流をすべて前記第1流出口に送る第1状態と、前記入力流体流をすべて前記第2流出口に送る第2状態との2つの状態をとることができる粉体搬送システム。
【請求項2】
前記粉体制御弁は、可変出力流体流及び可変戻り流体流を提供するように構成された絞り弁からなる請求項1記載の粉体搬送システム。
【請求項3】
前記粉体制御弁は、第1状態と第2状態とを有するバイナリ弁からなる請求項1記載の粉体搬送システム。
【請求項4】
前記粉体戻りタンクは、前記付加製造装置の前記粉体フィーダと接続管路を介して流体連通し、前記接続管路には戻り弁が配設されている請求項1記載の粉体搬送システム。
【請求項5】
前記粉体戻りタンクの内部と前記粉体戻りタンクの外部とを流体連通する排気ポートをさらに備えた請求項1記載の粉体搬送システム。
【請求項6】
前記排気ポートは、前記付加製造装置の加工チャンバに流体連結された請求項記載の粉体搬送システム。
【請求項7】
前記キャリアガス源を前記粉体搬送管路から独立して前記ノズルに流体連結する補給管路をさらに備えた請求項1記載の粉体搬送システム。
【請求項8】
第2の粉体を分配する第2粉体フィーダと、
前記キャリアガス源及び前記第2粉体フィーダと流体連通する入力部と、前記ノズルと流体連通する出力部とを有する第2粉体搬送管路と、
前記第2粉体搬送管路に配設され、前記第2粉体搬送管路の前記入力部と流体連通する流入口と、前記第2粉体搬送管路の前記出力部と流体連通する第1流出口と、第2流出口とを有する第2粉体制御弁であって、その前記流入口から入る第2入力流体流を、その前記第1流出口に供給される第2出力流体流とその前記第2流出口に供給される第2戻り流体流とに分けるように構成された再循環状態を有する第2粉体制御弁と、
前記第2粉体制御弁の前記第2流出口と流体連通する第2戻り管路と、
前記第2粉体フィーダから独立して設けられ、前記第2戻り管路を介して前記第2粉体制御弁と流体連通する第2粉体戻りタンクとをさらに備えた請求項1記載の粉体搬送システム。
【請求項9】
前記粉体搬送管路の前記出力部と前記第2粉体搬送管路の前記出力部の両方に流体連通する混合チャンバをさらに備えた請求項記載の粉体搬送システム。
【請求項10】
付加製造装置のノズルに粉体を搬送する方法であって、
粉体搬送管路の入力部を通るキャリアガスの入力流体流を供給することと、
粉体フィーダから前記入力流体流に粉体を分配することと、
前記粉体搬送管路に配設された粉体制御弁により、前記入力流体流を、前記粉体搬送管路の出力部を通る出力流体流と、戻り管路を通る戻り流体流とに分けることと、
前記出力流体流を前記ノズルに送ることと、
前記戻り流体流を粉体フィーダから独立して設けられた粉体戻りタンクに送ることを備え
前記粉体制御弁は、前記入力流体流がすべて前記出力流体流に送られる搬送状態と、前記入力流体流がすべて前記戻り流体流に送られる戻り状態とを有する方法。
【請求項11】
前記粉体制御弁は、前記出力流体流及び前記戻り流体流の流量を調整するために調節することができる請求項10記載の方法。
【請求項12】
戻り粉体を前記粉体戻りタンクから前記付加製造装置の粉体フィーダに移送することをさらに備えた請求項10記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して、付加製造に関し、より具体的には、付加製造装置で用いられる粉体搬送システム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、荒加工技術(例えば、鋳造、転造、鍛造、押出成形、スタンピング)と仕上げ加工技術(例えば、機械加工、溶接、はんだ付け、研磨)の組み合わせにより材料を所望の形状及び組立部品に加工している。最終的な使用可能な形態(「ネットシェイプ」)の複雑な組立部品を生産するには、適切な形状の所望の材料で部品を形成することだけでなく、部品に所望の冶金的特性(例えば、様々な熱処理、加工硬化、複雑なミクロ組織)の組み合わせを与えることも必要である場合が多く、通常、時間、工具及び労力の点でかなりの投資が必要である。
【0003】
前記荒処理及び仕上げ処理の1つまたは複数は、コンピュータ数値制御(CNC)工作機械などの製造センタを用いて行うことができる。CNC工作機械は、製造過程を自動化するために、精密にプログラムされた指令を用いる。このような指令は、コンピュータ支援設計(CAD)及び/またはコンピュータ支援製造(CAM)プログラムを用いて生成することができる。CNC機械の例として、ミーリング加工機、旋盤、ミルターン加工機、プラズマ切断機、放電加工機(EDM)及びウォータージェット切断機が挙げられるが、これらに限定されない。複数の異なる加工処理を実施可能な、複数の工具タイプを有する単一の機械を提供するCNCマシニングセンタが開発されている。このようなマシニングセンタは、基本的に、1つまたは複数の工具を保持する主軸保持部やタレット保持部などの1つまたは複数の工具保持部と、一対のチャックなどのワーク保持部とを含むことができる。ワーク保持部は、工具がワークに当接して、該ワークから材料が除去される除去製造処理を行う間、静止状態であっても移動(並進移動及び/または回転移動)してもよい。
【0004】
原価、費用、複雑さやその他の要因から、従来の除去製造工程のすべてまたはその一部の代わりとなるであろう付加製造技術が開発されている。ワークから材料を正確に除去することを重視している除去製造処理とは対照的に、付加製造処理は、通常はコンピュータ制御環境において、材料の連続層を作成することにより材料を付加して三次元物体を形成するものである。付加製造技術は、効率を改善し、無駄を削減することができ、その上、従来の製造技術を用いた場合には複数の構成部品から組み立てなくてはならない複雑な構造を継ぎ目なく構成することを可能にするなどして製造能力を拡大することができる。本明細書及び添付の請求項では、「複数」という語は、一貫して、「2つ以上」を意味すると解釈される。除去処理を付加技術で置き換え可能な状況は、付加処理での使用に利用可能な材料の範囲や、付加技術を用いて達成可能なサイズ及び表面仕上げ、材料を付加できる速度などのいくつかの要因に依存している。付加処理は、すぐに使用できる状態の複雑な精密ネットシェイプ構成品を有利に加工することができる。しかしながら、場合によっては、このような付加処理は、ある程度の仕上げを必要とする「ニアネットシェイプ」製品を生産することもできる。
【0005】
付加製造技術には、レーザー焼結,レーザー溶融,電子ビーム溶解などの粉末床溶融結合処理、レーザー直接積層,レーザークラッディングなどの指向性エネルギー堆積処理、熱溶解積層などの材料押出、連続式またはドロップ・オン・デマンド式を含む材料噴射、結合剤噴射、液槽重合、超音波積層造形を含むシート積層が含まれるが、これらに限定されない。いくつかの指向性エネルギー堆積処理では、基板材料の小溜まりを溶かすレーザーの集束ビームに1つまたは複数のノズルから粉体が注入される。この溜まりに接触する粉体が溶けて、基板上に堆積物を生成する。
【0006】
付加製造装置で用いられる材料堆積システムは、通常、開ループ制御を用いて、ノズルに対して一定の粉体流量を提供する。この方法は、堆積ヘッドと基板との相対移動の速度の加速または減速時など、定常状態が乱れたときに、堆積軌道形態にムラを生じることがある。より最近では、粉体を搬送する速度を調整できるフィードバックシステムを用いた材料堆積システムが提案されている。しかしながら、従来の粉体搬送システムは、粉体要求の変化に適応するのが遅く、これにより、付加製造処理を遅らせる、且つ/または堆積された付加材料にムラを生じる場合がある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示のある特定の態様に従い、キャリアガス源、粉体フィーダ及びノズルを有する付加製造装置の粉体搬送システムが提供される。このシステムは、前記キャリアガス源及び前記粉体フィーダと流体連通する入力部と、前記ノズルと流体連通する出力部とを有する粉体搬送管路を含む。該粉体搬送管路には粉体制御弁が配設されており、該粉体制御弁は、前記粉体搬送管路の入力部と流体連通する流入口と、前記粉体搬送管路の出力部と流体連通する第1流出口と、第2流出口とを有し、前記流出口から入る入力流体流を、前記第1流出口に供給される出力流体流と前記第2流出口に供給される戻り流体流とに分けるように構成された再循環状態を有する。前記粉体制御弁の戻りポートには戻り管路が流体連通し、前記戻り管路には収集器が流体連通する。
【0008】
本開示の付加的な態様に従い、付加製造装置のノズルに粉体を搬送する方法であって、粉体搬送管路の入力部を通るキャリアガスの入力流体流を供給することと、前記入力流体流に粉体を混入させることと、前記入力流体流を、前記粉体搬送管路の出力部を通る出力流体流と戻り管路を通る戻り流体流とに分けることを含む方法が提供される。この方法は、さらに、前記出力流体流を前記ノズルに送ることと、前記戻り流体流を収集器に送ることを含む。
【図面の簡単な説明】
【0009】
開示する方法及び装置のより完全な理解のために、以下の添付図面により詳細に図示した実施形態を参照すべきである。
【0010】
図1】本開示の一実施形態にかかる粉体移送システムを含む材料堆積装置の概略図である。
【0011】
図2図1の粉体移送システムの拡大概略図である。
【0012】
図3】本開示の別の実施形態にかかる粉体移送システムを含む材料堆積装置の概略図である。
【0013】
図4】本開示のさらに別の実施形態にかかる粉体移送システムを含む材料堆積装置の概略図である。
【0014】
図5】ここに開示する粉体移送システムで用いる粉体制御弁の一実施形態の斜視図である。
【0015】
図6】ここに開示する粉体移送システムで用いる粉体制御弁の代替実施形態の斜視図である。
【0016】
図7】ここに開示する粉体移送システムで用いる粉体制御弁のさらに別の代替実施形態の斜視図である。
【0017】
図面は必ずしも正確な縮尺ではないこと、及び、開示した実施形態は、図式的に、また、部分図で図示されていることもあることが理解されるべきである。場合によっては、開示した方法及び装置の理解に必要でない詳細、または他の詳細の認識を困難にするような詳細は、省略されている可能性がある。当然のことながら、本開示はここに図示した特定の実施形態に限定されないことが理解されるべきである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
ここに開示する方法と併せて任意の適切な付加製造装置を採用することができる。いくつかの実施形態では、付加製造処理を行うように構成されたコンピュータ数値制御機械を用いて方法を行うが、ロボットシステムなどの他のタイプのシステムを用いてもよい。前記機械は、本願の譲受人であるDMG/Mori Seiki USAから複数のバージョンが入手可能なNTシリーズ機とすることができる。或いは、DMG/Mori SeikiのDMU−65(5軸立形の工作機械)工作機械、または、軸の向きまたは数が異なる他の工作機械を、ここに開示する装置及び方法と併せて用いてもよい。
【0019】
図1に、キャリアガス源12と、粉体フィーダ14と、ノズル16とを有する付加製造システムの粉体搬送システム10を概略的に図示している。ノズル16は、付加製造システムの加工チャンバ15内に配設することができる。ノズル16は、ビルド物体を作成するために付加材料層が形成される基板17に向けることができる。したがって、エネルギービーム源及び/またはガイドや集束光学機器(図示せず)などの付加製造システムの他の構成要素も加工チャンバ15内に設けることができる。
【0020】
粉体搬送管路18は、キャリアガス源12及び粉体フィーダ14と流体連通する入力部18Aと、ノズル16と流体連通する出力部18Bとを有する。キャリアガス源12は、入力部18Aを通るキャリアガスの入力流体流を生成し、粉体フィーダ14は、入力流体流に粉体粒子が混入して該入力流体流によって運ばれるように、入力流体流に粉体を導入する。前記キャリアガスは、アルゴン、窒素、ヘリウム、二酸化炭素、または、これらのガスを混合したものを含む他のガスとすることができる。
【0021】
システム10は、さらに、入力流体流をノズル16に向けられる出力流体流と戻り流体流とに分けるフローセパレータを含むことができる。図1の実施形態では、フローセパレータは、粉体制御弁20として示されている。より具体的には、図2に最も良く示すように、粉体制御弁20は、粉体搬送管路18に配設され、入力部18Aと流体連通する入力ポート22と、出力部18Bと流体連通する出力ポート24と、戻りポート26とを有する。
【0022】
粉体制御弁20は、再循環状態に設定することができ、該再循環状態では、粉体制御弁20は、入力ポート22から入る入力流体流を出力ポート24に供給される所望の出力流体流と戻りポート26に供給される所望の戻り流体流とに分けるように構成されている。いくつかの実施形態では、所望の出力及び戻り流体流は固定されている。例えば、所望の出力流体流は、入力流体流の3分の2に固定することができ、所望の戻り流体流は、入力流体流の3分の1に固定することができる。所望の出力及び戻り流体流に対して他の固定比率を用いてもよい。固定された所望の流体流を提供する実施形態では、粉体制御弁20は、単一の動作位置を有することができる。或いは、粉体制御弁20は、2つの動作位置を有するバイナリ弁とすることができる。第1の動作位置では、バイナリ弁は、所望の固定流を搬送することができ、一方、第2の動作位置では、バイナリ弁は、デフォルト流を提供する、例えば、入力流体流の100%を戻りポート26に向けることができる。或いは、バイナリ弁は、入力流体流をすべて出力ポート24に向ける第1の動作位置と、入力流をすべて戻りポート26に向ける第2動作位置とを有することができる。
【0023】
他の実施形態では、所望の出力及び戻り流体流は可変である。例えば、所望の出力及び戻り流体流は、入力流体流の割合として表すことができ、所望の出力流体流及び所望の戻り流体流の個々の割合は、時間とともに変化することができる。可変の所望の流体流を提供する実施形態では、粉体制御弁20は、出力流体流及び戻り流体流に対して可変流量を提供するために調節することができるアナログまたは絞り弁とすることができる。より具体的には、粉体制御弁20は、出力ポート24と戻りポーと26とに向けられる入力流体流の割合を変更するために調節することができる。
【0024】
固定された所望の流体流または可変の所望の流体流のいずれかを提供するために用いることができる弁の例として、三方弁、サーボ弁、比例弁、分配弁、電子制御弁または他のタイプの流体流規制装置が挙げられる。またさらに、粉体制御弁20は、所望の固定または可変流体流を実現するために複数の弁を含むことができる。
【0025】
粉体制御弁20の戻りポート26を通るように方向づけられた粉体は、収集して再利用するために戻り管路30を通すことができる。図1及び図2に示すように、戻り管路30は、粉体制御弁20の戻りポート26と流体連通する。戻り管路30は、戻り流体流を収集器に向ける。該収集器は、図1の実施形態においては粉体フィーダ14である。他の実施形態では、収集器は、以下に詳しく論じるように、専用の粉体戻りタンクとすることができる。
【0026】
動作時、入力流体流は粉体制御弁20を通過し、このとき、該入力流体流を出力流体流と戻り流体流とに分けることができる。戻り流体流は、キャリアガス中の粉体粒子の懸濁を維持するのに十分である最小戻り流量を維持するように設定することができ、よって、戻り流体流中の粉体を再利用のために収集することができる。さらに、入力流体流は、その時点でノズルにおいて必要とされる粉体の質量流量より大きい粉体の質量流量を運ぶのに十分であるように選択することができる。尚、余剰分は戻り管路30を通るように方向づけられる。よって、付加処理における外乱または堆積パラメータの変更により必要とされる粉体の量が増加または減少した場合、その増加または減少した粉体要求に迅速に応じるように粉体制御弁20を動作させることができる。
【0027】
粉体制御弁20の実施形態例を図5乃至図7に図示している。例えば、図5には、粉体制御弁20を、出力管54及び戻り管56に対して相対的にスライド移動可能な入力管52を有するスライド弁アセンブリ50として示している。出力管54は、粉体搬送管路18の出力部18Bと流体連通することができ、一方、戻り管56は、戻り管路30と流体連通することができる。入力管52を出力及び戻り管54,56に対して相対的に位置決めするために、入力管52にはスライドアクチュエータ58が連結されている。スライドアクチュエータ58は、入力流体流がすべて出力管54に進入する、または、入力流体流がすべて戻り管56に進入する、または、入力流体流が部分的に入力管52及び戻り管56の両方に進入するように、入力管52を位置決めすることができる。
【0028】
図6には、粉体制御弁20をぜん動ポンプアセンブリ60として図示している。粉体搬送管路18の入力部18Aは、T分岐62の流入口端に接続されており、一方、粉体搬送管路18の出力部18B及び戻り管路30は、T分岐62の流出口端に接続されている。出力部18Bの柔軟部分には出力ぜん動ポンプ64が係合しており、戻り管路30の柔軟部分には戻りぜん動ポンプ66が係合している。ぜん動ポンプ64,66にはシューを有する回転子(図示せず)が設けられており、該回転子は、それぞれ、シューを回転させながら前記柔軟部分を挟んで巻き、これにより、出力部18B及び戻り管路30内で流体流を前進させるように構成されている。ポンプ64,66は、出力部18B及び戻り管路30内を通る所望の流体流を生み出すように順次または同時に動作するように、別々に制御することができる。ぜん動ポンプを用いることにより、粉体及びキャリアガスが搬送管路18及び戻り管路30内に完全に封じ込められ、これにより、粉体とぜん動ポンプアセンブリ60との潜在的な相互汚染が避けられる。
【0029】
必要に応じて、粉体搬送システム10は、ノズル16に対してキャリアガス補給を提供し、これにより、ノズルからの搬送速度を一定とすることができる。図1に示すように、キャリアガス補給管路40は、キャリアガス源12などのキャリアガス源をノズル16に流体連結することができる。ノズル16への補給キャリアガス流を制御するために、補給管路40に補給弁42が配設されている。補給弁42は、粉体制御弁20の状態を基に補給キャリアガスをノズル16に提供するように制御することができる。例えば、粉体制御弁20が、入力流体流の20%を粉体搬送管路18の出力部18Bに搬送する(したがって、入力流体流の80%が戻り管路30に向けられる)ように構成されている場合、補給弁42は、ノズル16が入力流体流の100%に等しいキャリアガス流を有効に受けとれるように、入力流体流の80%に等しい純粋キャリアガス流を提供するように駆動することができる。よって、粉体制御弁20の状態に関わらず、ノズル内を通る全ガス流は一定のままであり、よって、ノズル速度も一定のままである。
【0030】
図7には、代替的な粉体制御弁20を、逆ぜん動ポンプアセンブリ70の形態で図示している。この実施形態では、粉体搬送管路18の入力部18Aは、Y分岐72の流入口端に接続されており、一方、粉体搬送管路18の出力部18B及び戻り管路30は、Y分岐72の流出口端に接続されている。Y分岐72は、図示のように、流入口端が流出口端の下方に位置するような姿勢である。出力部18Bの柔軟部分には出力ぜん動ポンプ74が係合しており、戻り管路30の柔軟部分には戻りぜん動ポンプ76が係合している。ぜん動ポンプ74,76は、図6の実施形態に関して前述したものと同様に動作し、回転子が、それぞれ、各管の柔軟部分を挟んで巻くシュー(図示せず)を回転させて出力部18B及び戻り管路30内で流体流を前進させる。
【0031】
図3は、ノズル116への出力流体流量を、より広い流量の範囲において素早く切り替えることができる、代替実施形態にかかる粉体搬送システム100を図示している。このシステム100は、キャリアガス源112及び粉体フィーダ114と流体連通する第1,第2及び第3搬送管路118A,118B,118Cを含んでいる。図3には単一のキャリアガス源112及び粉体フィーダ114を示しているが、各搬送管路118A,118B,118Cが専用のガス源及び粉体フィーダを有していてもよく、これにより、堆積させる合金の混合物を変動させることが可能となる。第1,第2及び第3搬送管路118A,118B,118Cに、それぞれ、第1,第2及び第3粉体制御弁120A,120B,120Cを配設することができる。粉体制御弁120A,120B,120Cの下流にそれぞれ位置する搬送管路118A,118B,118Cの出力部は、混合チャンバ140と流体連通する。混合チャンバ140はノズル116と流体連通する。粉体制御弁120A,120B,120Cも、粉体戻りタンク135につながる戻り管路130と流体連通する。いくつかの実施形態では、粉体戻りタンク135は、システムの適切な動作を確実にもたらすために大気圧以下に維持することができる。ノズル116は、付加製造システムの加工チャンバ115内に配設され、ビルド物体を作成するために付加材料層が形成される基板117に向けられる。したがって、動力源や集束光学機器(図示せず)などの付加製造システムの他の構成要素も、加工チャンバ115内に設けることができる。
【0032】
第1,第2及び第3搬送管路118A,118B,118Cは、それぞれ異なる入力流を提供するサイズとすることができる。例えば、第1搬送管路118Aは、第1粉体制御弁120Aに第1流量Aを提供するサイズとすることができる。第2搬送管路118Bは、第2粉体制御弁120Bに、第1流量Aと異なる第2流量Bを提供するサイズとすることができる。例えば、第2流量“B”は、第1流量Aの2倍とすることができる。またさらに、第3搬送管路118Cは、第1及び第2流量A及びBと異なる第3流量Cを提供するサイズとすることができる。例えば、第3流量Cは、第1流量Aの4倍とすることができる。流量が異なる搬送管路を設けることにより、図3の粉体搬送システムは、ノズル116に搬送される粉体の量を素早く切り替えることができる。いくつかの実施形態では、粉体制御弁120A,120B,120Cはバイナリであり、よって、入力流がすべて戻り管路130に向けられるオフ位置と、入力流が部分的に戻り管路130と混合チャンバ140の両方に向けられる動作位置との間で移動可能である。したがって、バイナリ弁を用いる場合、このシステムは、ノズル116に搬送される粉体の量の変更を瞬時に行うことができる。これらのバイナリ弁を用いる実施形態では、様々な個々の粉体制御弁120A,120B,120Cまたはこれらの組み合わせを開くことにより最大7つのそれぞれ異なる正確な流量が得られること、及び、流量の切り替えが事実上瞬時に行われることが認識されるであろう。或いは、粉体制御弁120A,120B,120Cは、戻り管路130及び混合チャンバ140への出力流量の変更をより段階的または傾斜的に行う調節弁とすることができる。
【0033】
図4には、異なる粉体材料の使用が可能であり、戻り回路を通してより直接的に粉体を回収する、さらなる実施形態にかかる粉体搬送システム200を図示している。このシステム200は、同じまたは異なるキャリアガス源212と流体連通する第1及び第2搬送管路218A,218Bを含んでいる。第1及び第2搬送管路218A,218Bには、それぞれ、第1及び第2粉体フィーダ214A,214Bが連通する。
【0034】
第1搬送管路218Aには第1粉体制御弁220Aが配設されており、該第1粉体制御弁220Aは、第1搬送管路218Aの出力部を介して第1ノズル216Aと流体連通する。第1粉体制御弁220Aは、第1粉体戻り管路230Aを介して第1粉体戻りタンク235Aとも連通する。
【0035】
第2搬送管路218Bには第2粉体制御弁220Bが配設されており、該第2粉体制御弁220Bは、第2搬送管路218Aの出力部を介して第1ノズル216Aと流体連通することができる。或いは、極細線で示すように、第2粉体制御弁220Bは、第1ノズル216Aとは別個の第2ノズル216Bと流体連通することができる。第1及び第2粉体制御弁220A,220Bがともに第1ノズル216Aと連通する場合、出力流体流をノズル216Aに到達する前に混合するために混合チャンバ240を設けることができる。第2粉体制御弁220Bは、第2粉体戻り管路230Bを介して第2粉体戻りタンク235Bとも連通する。
【0036】
第1及び第2ノズル216A,216Bは、付加製造システムの加工チャンバ215内に配設し、ビルド物体を作成するために付加材料層が形成される基板217に向けることができる。したがって、動力源や集束光学機器(図示せず)などの付加製造システムの他の構成要素も加工チャンバ215内に設けることができる。
【0037】
第1及び第2粉体戻りタンク235A,235Bは、戻り流体流からキャリアガスを分離し、これにより、該タンク235A,235Bを減圧し、戻り粉体をタンク235A,235B内に蓄積させるように構成することができる。例えば、各タンクは、排気ポート236Bで図示するように、周囲環境と流体連通した通気または排気ポートを含み、これにより、戻りキャリアガスを大気中に放出することができる。或いは、戻りキャリアガスは、排気ポート236で図示するように、排気ポートを加工チャンバ215に流体連結するなどして付加製造システムで再利用することができる。どちらの実施形態でも、排気ポートは、粉体戻りタンク235A,235Bを減圧し、戻り流体流から戻りキャリアガスを分離して、粉体をタンク内に蓄積させる。
【0038】
第1及び第2粉体戻りタンク235A,235Bは、さらに、タンク235A,235Bからフィーダ214A,214Bへの粉体の移送を可能にすることにより、収集した粉体の再利用を容易にするように構成することができる。図4に示すように、第1及び第2粉体戻りタンク235A,235Bは、それぞれ、接続管路237A,237Bを介して第1及び第2粉体フィーダ214A,214Bと流体連通する。粉体搬送システムの動作中、第1及び第2粉体フィーダ214A,214Bはキャリアガス源212により加圧され、一方、粉体戻りタンク235A,235Bは減圧され、これにより、タンクからフィーダへの粉体の移送を防止することができる。粉体をタンクからフィーダに流入させるために、接続管路237A,237Bに戻り弁238A,238Bを配設することができる。より具体的には、戻り弁238A,238Bは、粉体フィーダ214A,214Bが加圧されていないまたは負圧であるときに開いて、粉体を戻りタンク235A,235Bから流出させることができる。戻り弁238A,238Bは、自動機械的作動(すなわち、粉体の質量がフィーダ内の圧力超えたときに開く逆止弁または重力駆動式の弁など)、手動機械的作動(すなわち、使用者により直接開かれる)、手動電気的作動(すなわち、弁に連結されたアクチュエータを作動させる)、自動電気的作動(すなわち、弁に連結されたアクチュエータを作動させるセンサ)、または他の動作スキームにより動作させることができる。
【0039】
第1及び第2粉体フィーダ214A,214Bに2つの異なる粉体が提供される場合、合金混合物をすぐさま変更することができる。すなわち、第1及び第2粉体制御弁220A,220Bを調節することにより、第1ノズル216Aに提供される第1粉体と第2粉体の比を調整することができる。
【0040】
或いは、第1及び第2粉体フィーダ214A,214Bの両方に同じ粉体が提供される場合、粉体搬送システム200は、粉体フィーダ214A,214B間で切り替えることによって連続的に動作させることができる。すなわち、第1粉体フィーダ214Aがノズルに粉体を供給している間、第2粉体フィーダ214Bをオフラインにして補充することができ、この逆も然りである。2つの粉体フィーダ214A,214B間で切り替えることにより、ノズルに粉体を連続的に供給することができる。
【産業上の利用可能性】
【0041】
ここで説明した粉体搬送システム及び方法は、3Dプリンタなどの付加製造装置のノズルに粉体流を提供するために用いることができる。
【0042】
ここに引用した、出版物、特許出願及び特許を含むすべての参考文献は、参照により引用される。ある特定の実施形態を「好ましい」実施形態とする記述、及び、実施形態、特徴または範囲を好ましいとする他の記載は、制限的なものと見なされず、請求項は、現在あまり好ましくないと考えられ得る実施形態を包含すると見なされる。ここに説明したすべての方法は、特に記載のない限り、または、文脈により明確に否定されない限り、任意の適切な順序で行うことができる。ここに挙げたすべての例、または例示的な文言(例えば、「など」)の使用は、開示した主題を明確にすることを意図しており、請求の範囲に制限を課すものではない。実施形態例の性質または利点に関するここでの陳述は、制限的なものであることを意図しておらず、添付の請求項は、このような陳述により制限されると見なされるべきではない。より広く言えば、明細書におけるどの文言も、非請求要素を請求項に記載された主題の実施に必要不可欠であると示していると解釈されるべきでない。請求の範囲は、適用法により認められている場合、そこに挙げた主題のすべての変更形態及び同等物を含む。さらに、そのすべての可能な変形形態おける上述した要素のどのような組み合わせも、特に記載のない限り、または、文脈により明確に否定されない限り、請求項に包含される。加えて、様々な実施形態の態様を相互に組み合わせる、または相互に代用することができる。ここでの参考文献または特許についての記述は、「先行」と示されていたとしても、当該参考文献または特許は本開示に対する先行技術として利用可能であるという容認を構成することを意図するものではない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7