特許第6872527号(P6872527)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6872527
(24)【登録日】2021年4月21日
(45)【発行日】2021年5月19日
(54)【発明の名称】ゾニサミド含有経皮吸収型貼付製剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/423 20060101AFI20210510BHJP
   A61K 9/70 20060101ALI20210510BHJP
   A61K 47/22 20060101ALI20210510BHJP
   A61K 47/32 20060101ALI20210510BHJP
   A61K 47/14 20060101ALI20210510BHJP
   A61P 25/08 20060101ALN20210510BHJP
   A61P 25/16 20060101ALN20210510BHJP
【FI】
   A61K31/423
   A61K9/70 401
   A61K47/22
   A61K47/32
   A61K47/14
   !A61P25/08
   !A61P25/16
【請求項の数】17
【全頁数】27
(21)【出願番号】特願2018-507446(P2018-507446)
(86)(22)【出願日】2017年3月24日
(86)【国際出願番号】JP2017012055
(87)【国際公開番号】WO2017164381
(87)【国際公開日】20170928
【審査請求日】2020年2月6日
(31)【優先権主張番号】特願2016-62531(P2016-62531)
(32)【優先日】2016年3月25日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000215958
【氏名又は名称】帝國製薬株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002912
【氏名又は名称】大日本住友製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002837
【氏名又は名称】特許業務法人アスフィ国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100075409
【弁理士】
【氏名又は名称】植木 久一
(74)【代理人】
【識別番号】100129757
【弁理士】
【氏名又は名称】植木 久彦
(74)【代理人】
【識別番号】100115082
【弁理士】
【氏名又は名称】菅河 忠志
(74)【代理人】
【識別番号】100125243
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 浩彰
(72)【発明者】
【氏名】猪尾 勝幸
(72)【発明者】
【氏名】高野 大樹
【審査官】 福山 則明
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2014/021393(WO,A1)
【文献】 国際公開第2013/128562(WO,A1)
【文献】 特開2015−221767(JP,A)
【文献】 国際公開第2020/013241(WO,A1)
【文献】 中国特許出願公開第111770749(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00−31/80
A61K 9/00− 9/72
A61K 47/00−47/69
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記を含有する粘着剤層を含む、経皮吸収型貼付製剤:
ゾニサミドまたはそのアルカリ金属塩、
ピロリドン基を有する(メタ)アクリル系共重合体を含む粘着剤、および
N−アルキルピロリドンを含み、前記N−アルキルピロリドンが、N−ラウリルピロリドン、N−オクチルピロリドン、N−へプチルピロリドン、N−ヘキシルピロリドン、N−ノニルピロリドン、N−デシルピロリドン、N−ウンデシルピロリドン、N−トリデシルピロリドン、N−テトラデシルピロリドン、N−ペンタデシルピロリドン、N−ヘキサデシルピロリドン、N−ヘプタデシルピロリドン、またはN−オクタデシルピロリドンである経皮吸収促進剤。
【請求項2】
前記N−アルキルピロリドンが、N−ラウリルピロリドン、またはN−オクチルピロリドンである、請求項に記載の経皮吸収型貼付製剤。
【請求項3】
前記N−アルキルピロリドンが、N−ラウリルピロリドンである、請求項記載の経皮吸収型貼付製剤。
【請求項4】
前記粘着剤が、ピロリドン基を有する(メタ)アクリル系共重合体、およびカルボキシル基を有する(メタ)アクリル系共重合体を含有する、請求項1〜のいずれか一項に記載の経皮吸収型貼付製剤。
【請求項5】
前記経皮吸収促進剤が、N−ラウリルピロリドン、並びに
モノラウリン酸ポリエチレングリコール、ラウロマクロゴール、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、オレイン酸オレイル、およびラウリン酸ヘキシルよりなる群から選択される少なくとも1種以上を含有する、請求項1〜のいずれか一項に記載の経皮吸収型貼付製剤。
【請求項6】
前記経皮吸収促進剤が、N−ラウリルピロリドン、およびミリスチン酸イソプロピルを含有する、請求項に記載の経皮吸収型貼付製剤。
【請求項7】
前記ピロリドン基を有する(メタ)アクリル系共重合体が、アクリル酸2−エチルヘキシル・ビニルピロリドン共重合体、アクリル酸ヒドロキシエチル・ビニルピロリドン共重合体、アクリル酸ブチル・ビニルピロリドン共重合体、アクリル酸シクロヘキシル・ビニルピロリドン共重合体、メタクリル酸2−エチルヘキシル・ビニルピロリドン共重合体、メタクリル酸シクロヘキシル・ビニルピロリドン共重合体、アクリル酸2−エチルヘキシル・メチルビニルピロリドン共重合体、アクリル酸2−エチルヘキシル・アクリル酸ヒドロキシエチル・ビニルピロリドン共重合体、アクリル酸2−エチルヘキシル・アクリル酸・ビニルピロリドン共重合体、アクリル酸ブチル・アクリル酸・ビニルピロリドン共重合体、またはアクリル酸2−エチルヘキシル・アクリル酸・メチルビニルピロリドン共重合体である、請求項1〜のいずれか一項に記載の経皮吸収型貼付製剤。
【請求項8】
前記ピロリドン基を有する(メタ)アクリル系共重合体が、アクリル酸2−エチルヘキシル・ビニルピロリドン共重合体である、請求項に記載の経皮吸収型貼付製剤。
【請求項9】
前記カルボキシル基を有する(メタ)アクリル系共重合体が、アクリル酸・アクリル酸オクチルエステル共重合体、アクリル酸2−エチルヘキシル・酢酸ビニル・アクリル酸共重合体、アクリル酸2−エチルヘキシルエステル・アクリル酸メチル・アクリル酸・メタクリル酸グリシジル共重合体、アクリル酸・アクリル酸ブチル共重合体、アクリル酸・アクリル酸ヒドロキシエチル共重合体、またはアクリル酸2−エチルヘキシル・酢酸ビニル・アクリル酸ブチル・アクリル酸共重合体である、請求項のいずれか一項に記載の経皮吸収型貼付製剤。
【請求項10】
前記カルボキシル基を有する(メタ)アクリル系共重合体が、アクリル酸・アクリル酸オクチルエステル共重合体である、請求項に記載の経皮吸収型貼付製剤。
【請求項11】
前記経皮吸収型貼付製剤における前記ゾニサミドまたはそのアルカリ金属塩の含有量が、ゾニサミド換算で、前記粘着剤層全量に対して、1質量%〜20質量%である、請求項1〜10のいずれか一項に記載の経皮吸収型貼付製剤。
【請求項12】
前記経皮吸収型貼付製剤における前記粘着剤の含有量が、前記粘着剤層全量に対して、30質量%〜98質量%である、請求項1〜11のいずれか一項に記載の経皮吸収型貼付製剤。
【請求項13】
前記経皮吸収型貼付製剤における前記経皮吸収促進剤の含有量が、前記粘着剤層全量に対して、1質量%〜40質量%である、請求項1〜12のいずれか一項に記載の経皮吸収型貼付製剤。
【請求項14】
前記経皮吸収型貼付製剤における前記粘着剤の配合量が、前記ゾニサミドまたはそのアルカリ金属塩1質量部に対して、1.5質量部〜40質量部である、請求項1〜13のいずれか一項に記載の経皮吸収型貼付製剤。
【請求項15】
前記経皮吸収型貼付製剤における前記経皮吸収促進剤の配合量が、前記ゾニサミドまたはそのアルカリ金属塩1質量部に対して、0.05質量部〜40質量部である、請求項1〜14のいずれか一項に記載の経皮吸収型貼付製剤。
【請求項16】
前記粘着剤が、アクリル酸2−エチルヘキシル・ビニルピロリドン共重合体およびアクリル酸・アクリル酸オクチルエステル共重合体を含み、
前記経皮吸収促進剤が、N−ラウリルピロリドンおよびミリスチン酸イソプロピルを含み、ゾニサミドまたはそのアルカリ金属塩1質量部に対して、前記粘着剤の配合量が10質量部〜25質量部であり、前記経皮吸収促進剤の配合量が1質量部〜10質量部である、請求項1に記載の経皮吸収型貼付製剤。
【請求項17】
前記粘着剤層の厚みが、30μm〜200μmである、請求項1〜16のいずれか一項に記載の経皮吸収型貼付製剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゾニサミドまたはそのアルカリ金属塩、粘着剤、および経皮吸収促進剤を含有する粘着剤層を備えた経皮吸収型貼付製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
ゾニサミド(化学名:3−スルファモイルメチル−1,2−ベンズイソオキサゾールまたは1,2−ベンズイソオキサゾール−3−メタンスルホンアミド)は、現在、小児または成人のてんかん発作(部分発作、全般発作、混合発作)治療薬またはパーキンソン病治療薬として、世界各国にて広く使用されている。日本国内ではエクセグラン(登録商標)の販売名にて、てんかん発作の予防薬として使用されており、トレリーフ(登録商標)の販売名にて、パーキンソン病治療薬として経口投与剤が提供されている。
【0003】
近年、ゾニサミドを配合した経皮吸収型貼付製剤について検討が行われている。特許文献1には、乳酸、並びにα―モノイソステアリルグリセリルエーテルおよびラウロマクロゴール等の吸収促進剤を配合したゾニサミド含有経皮吸収型製剤が開示されている。また、特許文献2には、特定のエーテル型添加剤を含有するゾニサミド含有経皮吸収型製剤が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2012/105625号パンフレット
【特許文献2】国際公開第2014/021393号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般に、経皮吸収型貼付製剤は、血中薬物濃度を持続的に維持できることや、嚥下困難な患者への投与が可能である等の点で、経口投与型製剤よりも優れている。一方、経皮吸収型貼付製剤は、皮膚のバリア機能を回避して薬物を投与する必要があるため、薬物種によっては有効量を体内へ送り込むことが困難である。また、高い経皮吸収性を付与するためには、多くの薬物を製剤中に溶解状態で含有させる必要がある。しかしながら、吸収促進剤、粘着剤等の基剤成分によっては、製剤の保存中に粘着剤中に薬物の結晶が析出する等して、安定性を保持することが困難である。一方、皮膚のバリア機能を弱める効果を期待して吸収促進剤を製剤中に添加すると、皮膚刺激等の副作用が発生する場合が多い。
【0006】
上記特許文献1および特許文献2に記載されている経皮吸収型貼付製剤は、一定の経皮吸収性を示すものではあるが、安全性および経皮吸収性をさらに向上させた経皮吸収型貼付製剤が望まれている。
【0007】
本発明の目的は、ゾニサミドまたはそのアルカリ金属塩を含む経皮吸収型貼付製剤であって、製剤中に高濃度の薬物を溶解状態で保持することができ、十分かつ持続的な薬効を発揮するゾニサミド含有経皮吸収型貼付製剤を提供することにある。さらに、本発明の目的は、長時間投与においても、皮膚刺激性が低く、安全性の高いゾニサミド含有経皮吸収型貼付製剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、鋭意検討を行った結果、粘着剤としてピロリドン基を有する(メタ)アクリル系共重合体(以下、ピロリドン基含有(メタ)アクリル系共重合体と呼ぶ場合がある。)と、経皮吸収促進剤としてN−アルキルピロリドンとを組み合わせて用いることで、長時間、高濃度のゾニサミドを溶解状態に保持することができ、十分かつ持続的な経皮吸収性を実現できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
さらに、上記粘着剤に、カルボキシル基を有する(メタ)アクリル系共重合体(以下、カルボキシル基含有(メタ)アクリル系共重合体と呼ぶ場合がある。)を含有させることにより、長時間に亘って、薬物の透過性を低下させることなく、皮膚刺激性を抑え、高い安全性を実現した。
【0010】
すなわち、本発明は、以下の通りである。
【0011】
[項1]下記を含有する粘着剤層を含む、経皮吸収型貼付製剤:
ゾニサミドまたはそのアルカリ金属塩、
ピロリドン基を有する(メタ)アクリル系共重合体を含む粘着剤、および
N−アルキルピロリドンを含む経皮吸収促進剤。
【0012】
[項2]前記N−アルキルピロリドンが、N−ラウリルピロリドン、N−オクチルピロリドン、N−へプチルピロリドン、N−ヘキシルピロリドン、N−ノニルピロリドン、N−デシルピロリドン、N−ウンデシルピロリドン、N−トリデシルピロリドン、N−テトラデシルピロリドン、N−ペンタデシルピロリドン、N−ヘキサデシルピロリドン、N−ヘプタデシルピロリドン、またはN−オクタデシルピロリドンである、項1に記載の経皮吸収型貼付製剤。
【0013】
[項3]前記N−アルキルピロリドンが、N−ラウリルピロリドン、またはN−オクチルピロリドンである、項2に記載の経皮吸収型貼付製剤。
【0014】
[項4]前記N−アルキルピロリドンが、N−ラウリルピロリドンである、項3に記載の経皮吸収型貼付製剤。
【0015】
[項5]前記粘着剤が、ピロリドン基を有する(メタ)アクリル系共重合体、およびカルボキシル基を有する(メタ)アクリル系共重合体を含有する、項1〜4のいずれか一項に記載の経皮吸収型貼付製剤。
【0016】
[項6]前記経皮吸収促進剤が、N−ラウリルピロリドン、並びに
モノラウリン酸ポリエチレングリコール、ラウロマクロゴール、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、オレイン酸オレイル、およびラウリン酸ヘキシルよりなる群から選択される少なくとも1種以上を含有する、項1〜5のいずれか一項に記載の経皮吸収型貼付製剤。
【0017】
[項7]前記経皮吸収促進剤が、 N−ラウリルピロリドン、並びに
モノラウリン酸ポリエチレングリコール、およびミリスチン酸イソプロピルよりなる群から選択される少なくとも1種以上を含有する、項6に記載の経皮吸収型貼付製剤。
【0018】
[項8]前記経皮吸収促進剤が、N−ラウリルピロリドン、およびミリスチン酸イソプロピルを含有する、項7に記載の経皮吸収型貼付製剤。
【0019】
[項9]前記ピロリドン基を有する(メタ)アクリル系共重合体が、アクリル酸2−エチルヘキシル・ビニルピロリドン共重合体、アクリル酸ヒドロキシエチル・ビニルピロリドン共重合体、アクリル酸ブチル・ビニルピロリドン共重合体、アクリル酸シクロヘキシル・ビニルピロリドン共重合体、メタクリル酸2−エチルヘキシル・ビニルピロリドン共重合体、メタクリル酸シクロヘキシル・ビニルピロリドン共重合体、アクリル酸2−エチルヘキシル・メチルビニルピロリドン共重合体、アクリル酸2−エチルヘキシル・アクリル酸ヒドロキシエチル・ビニルピロリドン共重合体、アクリル酸2−エチルヘキシル・アクリル酸・ビニルピロリドン共重合体、アクリル酸ブチル・アクリル酸・ビニルピロリドン共重合体、またはアクリル酸2−エチルヘキシル・アクリル酸・メチルビニルピロリドン共重合体である、項1〜8のいずれか一項に記載の経皮吸収型貼付製剤。
【0020】
[項10]前記ピロリドン基を有する(メタ)アクリル系共重合体が、アクリル酸2−エチルヘキシル・ビニルピロリドン共重合体、アクリル酸ヒドロキシエチル・ビニルピロリドン共重合体、アクリル酸ブチル・ビニルピロリドン共重合体、メタクリル酸2−エチルヘキシル・ビニルピロリドン共重合体、アクリル酸2−エチルヘキシル・メチルビニルピロリドン共重合体、アクリル酸2−エチルヘキシル・アクリル酸ヒドロキシエチル・ビニルピロリドン共重合体、またはアクリル酸2−エチルヘキシル・アクリル酸・ビニルピロリドン共重合体である、項9に記載の経皮吸収型貼付製剤。
【0021】
[項11]前記ピロリドン基を有する(メタ)アクリル系共重合体が、アクリル酸2−エチルヘキシル・ビニルピロリドン共重合体である、項10に記載の経皮吸収型貼付製剤。
【0022】
[項12]前記カルボキシル基を有する(メタ)アクリル系共重合体が、アクリル酸・アクリル酸オクチルエステル共重合体、アクリル酸2−エチルヘキシル・酢酸ビニル・アクリル酸共重合体、アクリル酸2−エチルヘキシルエステル・アクリル酸メチル・アクリル酸・メタクリル酸グリシジル共重合体、アクリル酸2−エチルヘキシル・アクリル酸・ビニルピロリドン共重合体、アクリル酸2−エチルヘキシル・アクリル酸・メチルビニルピロリドン共重合体、アクリル酸ブチル・アクリル酸・ビニルピロリドン共重合体、アクリル酸・アクリル酸ブチル共重合体、アクリル酸・アクリル酸ヒドロキシエチル共重合体、またはアクリル酸2−エチルヘキシル・酢酸ビニル・アクリル酸ブチル・アクリル酸共重合体である、項5〜11のいずれか一項に記載の経皮吸収型貼付製剤。
【0023】
[項13]前記カルボキシル基を有する(メタ)アクリル系共重合体が、アクリル酸・アクリル酸オクチルエステル共重合体、アクリル酸2−エチルヘキシル・酢酸ビニル・アクリル酸共重合体、アクリル酸2−エチルヘキシルエステル・アクリル酸メチル・アクリル酸・メタクリル酸グリシジル共重合体、アクリル酸・アクリル酸ブチル共重合体、アクリル酸・アクリル酸ヒドロキシエチル共重合体、またはアクリル酸2−エチルヘキシル・酢酸ビニル・アクリル酸ブチル・アクリル酸共重合体である、項5〜11のいずれか一項に記載の経皮吸収型貼付製剤。
【0024】
[項14]前記カルボキシル基を有する(メタ)アクリル系共重合体が、アクリル酸・アクリル酸オクチルエステル共重合体、またはアクリル酸2−エチルヘキシル・酢酸ビニル・アクリル酸共重合体である、項12記載の経皮吸収型貼付製剤。
【0025】
[項15]前記カルボキシル基を有する(メタ)アクリル系共重合体が、アクリル酸・アクリル酸オクチルエステル共重合体である、項14記載の経皮吸収型貼付製剤。
【0026】
[項16]前記経皮吸収型貼付製剤における前記ゾニサミドまたはそのアルカリ金属塩の含有量が、ゾニサミド換算で、前記粘着剤層全量に対して、1質量%〜20質量%である、項1〜15のいずれか一項に記載の経皮吸収型貼付製剤。
【0027】
[項17]前記経皮吸収型貼付製剤における前記ゾニサミドまたはそのアルカリ金属塩の含有量が、ゾニサミド換算で、前記粘着剤層全量に対して、3質量%〜10質量%である、項16に記載の経皮吸収型貼付製剤。
【0028】
[項18]前記経皮吸収型貼付製剤における前記粘着剤の含有量が、前記粘着剤層全量に対して、30質量%〜98質量%である、項1〜15いずれか一項に記載の経皮吸収型貼付製剤。
【0029】
[項19]前記経皮吸収型貼付製剤における前記粘着剤の含有量が、前記粘着剤層全量に対して、60質量%〜85質量%である、項1〜15、17または18のいずれか一項に記載の経皮吸収型貼付製剤。
【0030】
[項20]前記経皮吸収型貼付製剤における前記ピロリドン基を有する(メタ)アクリル系共重合体の含有量が、前記粘着剤層全量に対して、50質量%〜85質量%である、項1〜15、または17〜19のいずれか一項に記載の経皮吸収型貼付製剤。
【0031】
[項21]前記経皮吸収型貼付製剤における前記ピロリドン基を有する(メタ)アクリル系共重合体の含有量が、前記粘着剤層全量に対して、50質量%〜70質量%である、項1〜19のいずれか一項に記載の経皮吸収型貼付製剤。
【0032】
[項22]前記経皮吸収型貼付製剤における前記カルボキシル基含有(メタ)アクリル系共重合体の含有量が、前記粘着剤層全量に対して、1質量%〜20質量%である、項1〜17または21のいずれか一項に記載の経皮吸収型貼付製剤。
【0033】
[項23]前記経皮吸収型貼付製剤における前記カルボキシル基含有(メタ)アクリル系共重合体の含有量が、前記粘着剤層全量に対して、5質量%〜15質量%である、項1〜17または19〜22のいずれか一項に記載の経皮吸収型貼付製剤。
【0034】
[項24]前記経皮吸収型貼付製剤における前記経皮吸収促進剤の含有量が、前記粘着剤層全量に対して、1質量%〜40質量%である、項1〜17、22または23のいずれか一項に記載の経皮吸収型貼付製剤。
【0035】
[項25]前記経皮吸収型貼付製剤における前記経皮吸収促進剤の含有量が、前記粘着剤層全量に対して、25質量%〜35質量%である、項1〜17または22〜24のいずれか一項に記載の経皮吸収型貼付製剤。
【0036】
[項26]前記経皮吸収型貼付製剤における前記N−アルキルピロリドンの含有量が、前記粘着剤層全量に対して、1質量%〜30質量%である、項1〜17または21〜25のいずれか一項に記載の経皮吸収型貼付製剤。
【0037】
[項27]前記経皮吸収型貼付製剤における前記N−アルキルピロリドンの含有量が、前記粘着剤層全量に対して、13質量%〜20質量%である、項1〜17または21〜26のいずれか一項に記載の経皮吸収型貼付製剤。
【0038】
[項28]前記経皮吸収型貼付製剤における前記粘着剤の配合量が、前記ゾニサミドまたはそのアルカリ金属塩1質量部に対して、1.5質量部〜40質量部である、項1〜27のいずれか一項に記載の経皮吸収型貼付製剤。
【0039】
[項29]前記経皮吸収型貼付製剤における前記粘着剤の配合量が、前記ゾニサミドまたはそのアルカリ金属塩1質量部に対して、10質量部〜25質量部である、項28に記載の経皮吸収型貼付製剤。
【0040】
[項30]前記経皮吸収型貼付製剤における前記経皮吸収促進剤の配合量が、前記ゾニサミドまたはそのアルカリ金属塩1質量部に対して、0.05質量部〜40質量部である、項1〜29のいずれか一項に記載の経皮吸収型貼付製剤。
【0041】
[項31]前記経皮吸収型貼付製剤における前記経皮吸収促進剤の配合量が、前記ゾニサミドまたはそのアルカリ金属塩1質量部に対して、0.1質量部〜30質量部である、項1〜30のいずれか一項に記載の経皮吸収型貼付製剤。
【0042】
[項32]前記経皮吸収型貼付製剤における前記経皮吸収促進剤の配合量が、前記ゾニサミドまたはそのアルカリ金属塩1質量部に対して、1質量部〜10質量部である、項31に記載の経皮吸収型貼付製剤。
【0043】
[項33]前記粘着剤が、ピロリドン基を有する(メタ)アクリル系共重合体を含み、
前記経皮吸収促進剤が、N−ラウリルピロリドンを含み、
前記ゾニサミドまたはそのアルカリ金属塩1質量部に対して、前記粘着剤の配合量が1.5質量部〜40質量部であり、前記経皮吸収促進剤の配合量が1質量部〜30質量部である、項1に記載の経皮吸収型貼付製剤。
【0044】
[項34]前記粘着剤が、アクリル酸2−エチルヘキシル・ビニルピロリドン共重合体を含み、
前記経皮吸収促進剤が、N−ラウリルピロリドンを含み、
前記ゾニサミドまたはそのアルカリ金属塩1質量部に対して、前記粘着剤の配合量が5質量部〜30質量部であり、前記経皮吸収促進剤の配合量が1質量部〜20質量部である、項1に記載の経皮吸収型貼付製剤。
【0045】
[項35]前記粘着剤が、アクリル酸2−エチルヘキシル・ビニルピロリドン共重合体を含み、
前記経皮吸収促進剤が、N−ラウリルピロリドンおよびミリスチン酸イソプロピルを含み、前記ゾニサミドまたはそのアルカリ金属塩1質量部に対して、前記粘着剤の配合量が10質量部〜30質量部であり、前記経皮吸収促進剤の配合量が1質量部〜15質量部である、項1に記載の経皮吸収型貼付製剤。
【0046】
[項36]前記粘着剤が、アクリル酸2−エチルヘキシル・ビニルピロリドン共重合体およびアクリル酸・アクリル酸オクチルエステル共重合体を含み、
前記経皮吸収促進剤が、N−ラウリルピロリドンおよびミリスチン酸イソプロピルを含み、前記ゾニサミドまたはそのアルカリ金属塩1質量部に対して、前記粘着剤の配合量が10質量部〜25質量部であり、前記経皮吸収促進剤の配合量が1質量部〜10質量部である、項1に記載の経皮吸収型貼付製剤。
【0047】
[項37]前記粘着剤が、アクリル酸2−エチルヘキシル・ビニルピロリドン共重合体およびアクリル酸・アクリル酸オクチルエステル共重合体を含み、
前記経皮吸収促進剤が、N−ラウリルピロリドンおよびミリスチン酸イソプロピルを含み、前記ゾニサミドまたはそのアルカリ金属塩1質量部に対して、前記アクリル酸2−エチルヘキシル・ビニルピロリドン共重合体の配合量が10質量部〜20質量部であり、前記アクリル酸・アクリル酸オクチルエステル共重合体の配合量が1質量部〜3質量部であり、前記N−ラウリルピロリドンの配合量が1質量部〜5質量部であり、前記ミリスチン酸イソプロピルの配合量が1質量部〜5質量部である、項1に記載の経皮吸収型貼付製剤。
【0048】
[項38]粘着剤層(ゾニサミドまたはそのアルカリ金属塩と、経皮吸収促進剤と、粘着剤と、必要に応じて他の添加剤を含む層)の厚みが、30μm〜200μmである、項1〜37のいずれか一項に記載の経皮吸収型貼付製剤。
【発明の効果】
【0049】
本発明のゾニサミド含有経皮吸収型貼付製剤は、特定の粘着剤と特定の経皮吸収促進剤を組み合わせて構成されているため、安全でかつ長時間、優れた経皮吸収性を発揮することができる。
【発明を実施するための形態】
【0050】
以下、本発明の好適な実施形態に関して詳細に説明する。
【0051】
1.ゾニサミドまたはそのアルカリ金属塩
本発明では、ゾニサミド(化学名:3−スルファモイルメチル−1,2−ベンズイソオキサゾール、または1,2−ベンズイソオキサゾール−3−メタンスルホンアミド)またはそのアルカリ金属塩が用いられる。好ましくは、ゾニサミドが挙げられる。
【0052】
ゾニサミドのアルカリ金属塩として、ナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩が挙げられる。好ましくは、ナトリウム塩およびカリウム塩が挙げられる。より好ましくは、ナトリウム塩が挙げられる。ゾニサミドは例えば、特公昭60−33114号公報、特公昭61−59288号公報および米国特許第4,172,896号明細書に記載の方法に従って製造することができる。
【0053】
ゾニサミドまたはそのアルカリ金属塩は、結晶多型が存在する場合があり、本発明におけるゾニサミドには、あらゆる結晶形のものが含まれる。
【0054】
本発明のゾニサミドは、水和物および溶媒和物の一方又は両方の形で存在することもあるので、ゾニサミドまたはそのアルカリ金属塩の水和物および溶媒和物の一方又は両方もまた本発明の化合物に包含される。
【0055】
本発明における薬物の溶解とは、製剤中にすべての薬物が溶解している状態の他、薬物の一部が溶解している状態を意味する。
【0056】
本発明の経皮吸収型貼付製剤におけるゾニサミドまたはそのアルカリ金属塩の含有量(ゾニサミドアルカリ金属塩の場合は、ゾニサミドに換算したときの値)は、粘着剤層の全量を100質量%としたときの質量%として把握され、製剤化が可能な限り特に限定されない。経皮吸収型貼付製剤におけるゾニサミドまたはそのアルカリ金属塩の含有量として好ましくは、1質量%〜20質量%が挙げられる。より好ましくは、3質量%〜20質量%が挙げられる。さらに好ましくは、3質量%〜15質量%が挙げられる。最も好ましくは、3質量%〜10質量%が挙げられる。
【0057】
経皮吸収型貼付製剤におけるゾニサミドまたはそのアルカリ金属塩の含有量の下限として好ましくは、1質量%以上が挙げられる。より好ましくは、3質量%以上が挙げられる。
【0058】
経皮吸収型貼付製剤におけるゾニサミドまたはそのアルカリ金属塩の含有量の上限として好ましくは、20質量%以下、より好ましくは15質量%以下、さらに好ましくは10質量%以下、さらにより好ましくは6質量%以下が挙げられる。
【0059】
なお、ゾニサミドまたはそのアルカリ金属塩の含有量が1質量%未満であると、持続的な経皮吸収効果が得られない。一方、ゾニサミドまたはそのアルカリ金属塩の含有量が20質量%を超えると、薬物の溶解性が不十分となるおそれがある。
【0060】
2.粘着剤
本発明の経皮吸収型貼付製剤の基剤成分である粘着剤は、ピロリドン基を有する(メタ)アクリル系共重合体を含有する。ゾニサミドは難溶解性の薬物であり、粘着剤がピロリドン基を有していない場合、薬物の十分な溶解性を得ることができない。ピロリドン基含有(メタ)アクリル系共重合体を用いることで、粘着剤に対するゾニサミドの溶解性を向上させることができる。
【0061】
本発明の経皮吸収型貼付製剤における粘着剤の含有量として、好ましくは、粘着剤層の全量を100質量%としたとき、30質量%〜98質量%が挙げられる。より好ましくは、40質量%〜95質量%が挙げられる。さらに好ましくは、50質量%〜90質量%が挙げられる。最も好ましくは、60質量%〜85質量%が挙げられる。
【0062】
本発明の経皮吸収型貼付製剤における粘着剤の配合量として好ましくは、ゾニサミドまたはそのアルカリ金属塩1質量部に対して、1.5質量部〜40質量部の割合が挙げられる。より好ましくは、5質量部〜30質量部の割合が挙げられる。さらに好ましくは、10質量部〜30質量部の割合が挙げられる。最も好ましくは、10質量部〜25質量部の割合が挙げられる。
【0063】
本発明のピロリドン基含有(メタ)アクリル系共重合体は、ピロリドン基を有していれば特に限定されない。ピロリドン基を有する(メタ)アクリル系共重合体は、少なくとも1種以上の(メタ)アクリル酸エステル系モノマーと、少なくとも1種以上のピロリドン基を有するモノマー(以下、ピロリドン基含有モノマーと呼ぶ場合がある。)との共重合体である。
【0064】
なお、ピロリドン基含有(メタ)アクリル系共重合体は、カルボキシル基を有していてもよい。
【0065】
上記(メタ)アクリル酸エステル系モノマーとして、アクリル酸、メタクリル酸、またはこれらの誘導体が挙げられる。これらは、それぞれ単独で、あるいは2種類以上を組み合わせて使用することができる。上記誘導体として、アクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステルが挙げられる。
【0066】
アクリル酸エステルの具体例として、好ましくは、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸n−ヘキシル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸イソオクチル、アクリル酸イソノニル、アクリル酸n−デシル、アクリル酸イソデシル、アクリル酸ヒドロキシエチル、アクリル酸シクロヘキシルが挙げられる。
【0067】
メタクリル酸エステルの具体例として、好ましくは、メタクリル酸−n−デシル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸イソデシル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸シクロヘキシルなどが挙げられる。
【0068】
なお、(メタ)アクリル酸エステルは、それぞれ単独で、あるいは2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0069】
上記ピロリドン基含有モノマーの具体例として、好ましくは、ビニルピロリドン、またはメチルビニルピロリドンが挙げられる。より好ましくは、N−ビニル−2−ピロリドンが挙げられる。
【0070】
なお、ピロリドン基含有モノマーは、それぞれ単独で、あるいは2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0071】
ピロリドン基を有する(メタ)アクリル系共重合体の具体例として、好ましくは、アクリル酸2−エチルヘキシル・ビニルピロリドン共重合体、アクリル酸ヒドロキシエチル・ビニルピロリドン共重合体、アクリル酸ブチル・ビニルピロリドン共重合体、アクリル酸シクロヘキシル・ビニルピロリドン共重合体、メタクリル酸2−エチルヘキシル・ビニルピロリドン共重合体、メタクリル酸シクロヘキシル・ビニルピロリドン共重合体、アクリル酸2−エチルヘキシル・メチルビニルピロリドン共重合体、アクリル酸2−エチルヘキシル・アクリル酸ヒドロキシエチル・ビニルピロリドン共重合体、アクリル酸2−エチルヘキシル・アクリル酸・ビニルピロリドン共重合体、アクリル酸ブチル・アクリル酸・ビニルピロリドン共重合体、またはアクリル酸2−エチルヘキシル・アクリル酸・メチルビニルピロリドン共重合体が挙げられる。
【0072】
ピロリドン基を有する(メタ)アクリル系共重合体の具体例として、より好ましくは、アクリル酸2−エチルヘキシル・ビニルピロリドン共重合体、アクリル酸ヒドロキシエチル・ビニルピロリドン共重合体、アクリル酸ブチル・ビニルピロリドン共重合体、メタクリル酸2−エチルヘキシル・ビニルピロリドン共重合体、アクリル酸2−エチルヘキシル・メチルビニルピロリドン共重合体、アクリル酸2−エチルヘキシル・アクリル酸ヒドロキシエチル・ビニルピロリドン共重合体、またはアクリル酸2−エチルヘキシル・アクリル酸・ビニルピロリドン共重合体が挙げられる。
【0073】
ピロリドン基を有する(メタ)アクリル系共重合体の具体例として、さらに好ましくは、アクリル酸2−エチルヘキシル・ビニルピロリドン共重合体が挙げられる。
【0074】
本発明に用いられるピロリドン基含有(メタ)アクリル系共重合体の粘着剤は、市販品を用いることができる。具体的には、例えば、コスメディ社製のMAS683などのアクリル系粘着剤が挙げられる。
【0075】
本発明の経皮吸収型貼付製剤におけるピロリドン基含有(メタ)アクリル系共重合体の含有量(単独で含むときは当該単独の含有量であり、2種類以上の成分を含むときはそれらの合計量である。)として、好ましくは、粘着剤層の全量を100質量%としたとき、30質量%〜98質量%が挙げられる。より好ましくは、40質量%〜95質量%が挙げられる。さらに好ましくは、50質量%〜90質量%が挙げられる。さらにより好ましくは、50質量%〜85質量%が挙げられる。最も好ましくは、50質量%〜70質量%が挙げられる。
【0076】
経皮吸収型貼付製剤におけるピロリドン基含有(メタ)アクリル系共重合体の含有量の下限として、好ましくは30質量%以上が挙げられる。より好ましくは40質量%以上が挙げられる。さらに好ましくは50質量%以上が挙げられる。
【0077】
経皮吸収型貼付製剤におけるピロリドン基含有(メタ)アクリル系共重合体の含有量の上限として、好ましくは98質量%以下が挙げられる。より好ましくは95質量%以下が挙げられる。さらに好ましくは90質量%以下が挙げられる。さらにより好ましくは85質量%以下が挙げられる。最も好ましくは70質量%以下が挙げられる。
【0078】
なお、ピロリドン基含有(メタ)アクリル系共重合体の含有量が30質量%未満であると、粘着剤層の凝集力が十分でなく肌に粘着剤が残るという問題、または薬物の溶解性の低下によって、結晶が析出する等の問題が生じる。一方、ピロリドン基含有(メタ)アクリル系共重合体の含有量が98質量%を超えると、薬物濃度が低くなり、製剤からの薬物放出性が低くなるため、十分な薬物の経皮吸収性が得られない。
【0079】
本発明の経皮吸収型貼付製剤における、粘着剤であるピロリドン基含有(メタ)アクリル系共重合体の配合量(単独で含むときは当該単独の含有量であり、2種類以上を含むときはこれらの合計量である。)として好ましくは、ゾニサミドまたはそのアルカリ金属塩1質量部に対して、1.5質量部〜40質量部の割合が挙げられる。より好ましくは、5質量部〜30質量部の割合が挙げられる。さらに好ましくは、10質量部〜30質量部の割合が挙げられる。最も好ましくは、10質量部〜20質量部の割合が挙げられる。
【0080】
本発明に用いられる粘着剤は、ピロリドン基を有する(メタ)アクリル系共重合体に加え、さらに、カルボキシル基含有(メタ)アクリル系共重合体を含むことが好ましい。経皮吸収促進剤の種類または添加量によっては、皮膚刺激性が懸念されるが、適量のカルボキシル基含有(メタ)アクリル系共重合体を共存させることにより、薬物の経皮吸収性を向上させるとともに、吸収促進剤による皮膚刺激性を抑制することが可能である。カルボキシル基含有(メタ)アクリル系共重合体は、カルボキシル基を有していれば特に限定されず、アクリル酸の共重合相手成分中にカルボキシル基を有していてもよい。カルボキシル基含有(メタ)アクリル系共重合体として、少なくとも2種以上の(メタ)アクリル酸系モノマーの共重合体、または少なくとも1種以上の(メタ)アクリル酸系モノマーと酢酸ビニルモノマーとの共重合体が挙げられる。
【0081】
上記(メタ)アクリル酸系モノマーとして、アクリル酸、メタクリル酸、またはこれらの誘導体が挙げられる。誘導体の具体例として、(メタ)アクリル酸エステル系モノマーが挙げられる。
【0082】
アクリル酸エステルの具体例として、好ましくは、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸n−ヘキシル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸イソオクチル、アクリル酸イソノニル、アクリル酸n−デシル、アクリル酸イソデシル、アクリル酸ヒドロキシエチルが挙げられる。
【0083】
メタクリル酸エステルの具体例として、メタクリル酸−n−デシル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸イソデシル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸グリシジルなどが挙げられる。
【0084】
(メタ)アクリル酸エステル系モノマーの具体例として、好ましくは、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸オクチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸シクロヘキシル、メタアクリル酸オクチル、メタアクリル酸2−エチルヘキシル、メタアクリル酸ブチル、またはメタアクリル酸シクロヘキシルが挙げられる。
【0085】
なお、(メタ)アクリル酸エステルは、それぞれ単独で、あるいは2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0086】
カルボキシル基含有(メタ)アクリル系共重合体の具体例として、好ましくは、アクリル酸・アクリル酸オクチルエステル共重合体、アクリル酸2−エチルヘキシル・酢酸ビニル・アクリル酸共重合体、アクリル酸2−エチルヘキシルエステル・アクリル酸メチル・アクリル酸・メタクリル酸グリシジル共重合体、アクリル酸2−エチルヘキシル・アクリル酸・ビニルピロリドン共重合体、アクリル酸2−エチルヘキシル・アクリル酸・メチルビニルピロリドン共重合体、アクリル酸ブチル・アクリル酸・ビニルピロリドン共重合体、アクリル酸・アクリル酸ブチル共重合体、アクリル酸・アクリル酸ヒドロキシエチル共重合体、またはアクリル酸2−エチルヘキシル・酢酸ビニル・アクリル酸ブチル・アクリル酸共重合体が挙げられる。
【0087】
カルボキシル基含有(メタ)アクリル系共重合体の具体例として、より好ましくは、アクリル酸・アクリル酸オクチルエステル共重合体、アクリル酸2−エチルヘキシル・酢酸ビニル・アクリル酸共重合体、アクリル酸2−エチルヘキシルエステル・アクリル酸メチル・アクリル酸・メタクリル酸グリシジル共重合体、アクリル酸・アクリル酸ブチル共重合体、アクリル酸・アクリル酸ヒドロキシエチル共重合体、またはアクリル酸2−エチルヘキシル・酢酸ビニル・アクリル酸ブチル・アクリル酸共重合体が挙げられる。
【0088】
カルボキシル基含有(メタ)アクリル系共重合体の具体例として、さらに好ましくは、アクリル酸・アクリル酸オクチルエステル共重合体、またはアクリル酸2−エチルヘキシル・酢酸ビニル・アクリル酸共重合体が挙げられる。
【0089】
カルボキシル基含有(メタ)アクリル系共重合体の具体例として、さらにより好ましくは、アクリル酸・アクリル酸オクチルエステル共重合体が挙げられる。
【0090】
なお、ピロリドン基含有(メタ)アクリル系共重合体とカルボキシル基含有(メタ)アクリル系共重合体の両方に分類されるものは、ピロリドン基含有(メタ)アクリル系共重合体として用いても良いし、カルボキシル基含有(メタ)アクリル系共重合体として用いても良い。
【0091】
本発明に用いられるカルボキシル基含有(メタ)アクリル系共重合体の粘着剤は、市販品を用いることができる。カルボキシル基含有(メタ)アクリル系共重合体の具体例として、ヘンケル社のDuro−Tak 87−200A、Duro−Tak 87−2194、Duro−Tak 87−2353、Duro−Tak 87−2051、またはDuro−Tak 87−235A等が挙げられる。
【0092】
本発明の経皮吸収型貼付製剤におけるカルボキシル基含有(メタ)アクリル系共重合体の含有量(単独で含むときは当該単独の含有量であり、2種類以上を含むときはこれらの合計量である。)として、好ましくは、粘着剤層の全量を100質量%としたとき、20質量%以下が挙げられる。より好ましくは、1質量%〜20質量%が挙げられる。さらに好ましくは、5質量%〜20質量%が挙げられる。さらにより好ましくは、5質量%〜15質量%が挙げられる。
【0093】
経皮吸収型貼付製剤におけるカルボキシル基含有(メタ)アクリル系共重合体の含有量の下限として好ましくは、1質量%以上が挙げられる。より好ましくは、5質量%以上が挙げられる。
【0094】
経皮吸収型貼付製剤におけるカルボキシル基含有(メタ)アクリル系共重合体の含有量の上限として好ましくは、20質量%以下が挙げられる。より好ましくは、15質量%以下が挙げられる。
【0095】
なお、カルボキシル基含有(メタ)アクリル系共重合体の含有量が1質量%未満であると、吸収促進剤の皮膚刺激性に対する抑制効果が低くなる。一方、カルボキシル基含有(メタ)アクリル系共重合体の含有量が20質量%を超えると、相対的にピロリドン基含有(メタ)アクリル系共重合体の含有量が低下し、薬物の溶解性が低下し、結晶が析出する等の好ましくない影響が生じる。
【0096】
本発明の経皮吸収型貼付製剤における、粘着剤であるカルボキシル基を有する(メタ)アクリル系共重合体の配合量(単独で含むときは当該単独の含有量であり、2種類以上を含むときはこれらの合計量である。)として好ましくは、ゾニサミドまたはそのアルカリ金属塩1質量部に対して、20質量部以下の割合が挙げられる。より好ましくは、10質量部以下の割合が挙げられる。さらに好ましくは、0.05質量部〜5質量部の割合が挙げられる。最も好ましくは、1質量部〜3質量部の割合が挙げられる。
【0097】
3.経皮吸収促進剤
本発明の経皮吸収型貼付製剤は、経皮吸収促進剤として、N−アルキルピロリドンを含む。N−アルキルピロリドンを用いることにより、十分かつ持続的な薬物経皮吸収を実現することができる。
【0098】
N−アルキルピロリドンの「アルキル」は、「アルキル基」を意味し、直鎖状または分枝鎖状の飽和炭化水素基を意味する。例えば、「C1−30アルキル基」とは炭素原子数が1〜30のアルキル基を意味する。他の数字の場合も同様である。N−アルキルピロリドンの「アルキル」として好ましくは、「C1−25アルキル基」が挙げられる。より好ましくは、「C3−20アルキル基」が挙げられる。さらに好ましくは、「C5−15アルキル基」が挙げられる。最も好ましくは、「C6−15アルキル基」が挙げられる。
【0099】
N−アルキルピロリドンの具体例として好ましくは、N−ラウリルピロリドン、N−オクチルピロリドン、N−へプチルピロリドン、N−ヘキシルピロリドン、N−ノニルピロリドン、N−デシルピロリドン、N−ウンデシルピロリドン、N−トリデシルピロリドン、N−テトラデシルピロリドン、N−ペンタデシルピロリドン、N−ヘキサデシルピロリドン、N−ヘプタデシルピロリドン、またはN−オクタデシルピロリドンが挙げられる。より好ましくは、N−ラウリルピロリドン、またはN−オクチルピロリドンが挙げられる。さらに好ましくは、N−ラウリルピロリドンが挙げられる。
【0100】
本発明の経皮吸収型貼付製剤における経皮吸収促進剤は、粘着剤層の全量を100質量%としたとき、好ましくは、1質量%〜40質量%が挙げられる。より好ましくは、5質量%〜40質量%が挙げられる。さらに好ましくは、15質量%〜35質量%が挙げられる。最も好ましくは、25質量%〜35質量%が挙げられる。
【0101】
本発明の経皮吸収型貼付製剤における、経皮吸収促進剤の配合量として好ましくは、ゾニサミドまたはそのアルカリ金属塩1質量部に対して、0.05質量部〜40質量部の割合が挙げられる。より好ましくは、0.1質量部〜30質量部の割合が挙げられる。さらに好ましくは、0.5質量部〜30質量部の割合が挙げられる。さらにより好ましくは、1質量部〜30質量部の割合が挙げられる。より一層好ましくは、1質量部〜20質量部の割合が挙げられる。さらに一層好ましくは、1質量部〜15質量部の割合が挙げられる。最も好ましくは、1質量部〜10質量部の割合が挙げられる。
【0102】
本発明の経皮吸収型貼付製剤におけるN−アルキルピロリドンの含有量(単独で含むときは当該単独の含有量であり、2種類以上を含むときはこれらの合計量である。)は、粘着剤層の全量を100質量%としたとき、好ましくは、1質量%〜30質量%が挙げられる。より好ましくは、5質量%〜30質量%が挙げられる。さらに好ましくは、13質量%〜25質量%が挙げられる。最も好ましくは、13質量%〜20質量%が挙げられる。
【0103】
経皮吸収型貼付製剤におけるN−アルキルピロリドンの含有量の下限として好ましくは、1質量%以上が挙げられる。より好ましくは、5質量%以上が挙げられる。さらに好ましくは、13質量%以上が挙げられる。
【0104】
経皮吸収型貼付製剤におけるN−アルキルピロリドンの含有量の上限として好ましくは、30質量%以下が挙げられる。より好ましくは、25質量%以下が挙げられる。さらに好ましくは、20質量%以下が挙げられる。
【0105】
なお、N−アルキルアルキルピロリドンの含有量が1質量%未満であると、十分な薬物の経皮吸収性が得られない。さらに一方、N−アルキルピロリドンの含有量が30質量%を超えると、発赤、浮腫等の皮膚刺激性の問題が生じるおそれがある。
【0106】
本発明の経皮吸収型貼付製剤における、経皮吸収促進剤であるN−アルキルピロリドンの配合量(単独で含むときは当該単独の含有量であり、2種類以上を含むときはこれらの合計量である。)として好ましくは、ゾニサミドまたはそのアルカリ金属塩1質量部に対して、1質量部〜30質量部の割合が挙げられる。より好ましくは、1質量部〜20質量部の割合が挙げられる。さらに好ましくは、1質量部〜10質量部の割合が挙げられる。最も好ましくは、1質量部〜5質量部の割合が挙げられる。
【0107】
本発明に用いられる経皮吸収促進剤は、さらに、N−アルキルピロリドン以外の吸収促進剤(以下、他の吸収促進剤と呼ぶ場合がある。)を含んでいてもよい。他の吸収促進剤の具体例として、好ましくは、モノラウリン酸ポリエチレングリコール、ラウロマクロゴール、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、オレイン酸オレイル、ラウリン酸ヘキシル、セバシン酸ジエチル、アジピン酸ジイソプロピル、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、POE硬化ヒマシ油、モノオレイン酸ソルビタン、モノラウリン酸ソルビタン、POEステアリルエーテル、およびモノステアリン酸PEGよりなる群から選択される少なくとも1種以上が挙げられる。より好ましくは、モノラウリン酸ポリエチレングリコール、ラウロマクロゴール、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、オレイン酸オレイル、およびラウリン酸ヘキシルよりなる群から選択される少なくとも1種以上が挙げられる。さらに好ましくは、モノラウリン酸ポリエチレングリコール、およびミリスチン酸イソプロピルよりなる群から選択される少なくとも1種以上が挙げられる。最も好ましくは、ミリスチン酸イソプロピルを含むことが挙げられる。
【0108】
本発明の経皮吸収型貼付製剤における他の吸収促進剤(単独で含むときは当該単独の含有量であり、2種類以上を含むときはこれらの合計量である。)の含有量は、粘着剤層の全量を100質量%としたとき、好ましくは、1質量%〜30質量%が挙げられる。より好ましくは、5質量%〜30質量%が挙げられる。さらに好ましくは、10質量%〜30質量%が挙げられる。最も好ましくは、10質量%〜20質量%が挙げられる。
【0109】
経皮吸収型貼付製剤における他の吸収促進剤の含有量の下限として好ましくは、1質量%以上が挙げられる。より好ましくは、5質量%以上が挙げられる。さらに好ましくは、10質量%以上が挙げられる。
【0110】
経皮吸収型貼付製剤における他の吸収促進剤の含有量の上限として好ましくは、30質量%以下が挙げられる。より好ましくは、20質量%以下が挙げられる。
【0111】
なお、他の吸収促進剤の含有量が1質量%未満であると、十分な薬物の経皮吸収性が得られない場合がある。一方、上記他の吸収促進剤の含有量が30質量%を超えると、発赤、浮腫等の皮膚刺激性の問題が生じる上に、製剤物性が悪化し、製剤の貼付後、糊残り等が生じるおそれがある。
【0112】
本発明の経皮吸収型貼付製剤における、上記他の吸収促進剤(単独で含むときは当該単独の含有量であり、2種類以上を含むときはこれらの合計量である。)の配合量として好ましくは、ゾニサミドまたはそのアルカリ金属塩1質量部に対して、0.1質量部〜20質量部の割合が挙げられる。より好ましくは、1質量部〜10質量部の割合が挙げられる。最も好ましくは、1質量部〜5質量部の割合が挙げられる。
【0113】
ゾニサミドまたはそのアルカリ金属塩、経皮吸収促進剤、粘着剤等の含有量は、以下に述べるような添加剤を加える場合、添加剤を加えた粘着剤層全体(支持体と剥離ライナーは含まない)に対する質量%と理解すべきである。
【0114】
4.その他
本発明の製剤は、上記のゾニサミドまたはそのアルカリ金属塩、経皮吸収促進剤、および粘着剤を含有する粘着剤層を備える。本発明の製剤には、上記の他、経皮吸収型貼付製剤に通常用いられる添加剤を、必要に応じて、本発明の作用を阻害しない範囲で含むことができる。
【0115】
例えば、上記アクリル系粘着剤を粘着基剤として用い、粘着基剤の接着性・安定性の調整のために、ポリイソブチレン、ポリブテン、流動パラフィン等の軟化剤、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール等の水溶性高分子、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等のセルロース誘導体、無水ケイ酸、軽質無水ケイ酸等のケイ素化合物、シリカ類等の無機充填剤、およびジブチルヒドロキシトルエン等の酸化防止剤を適量含有させることができる。さらに必要に応じて防腐剤、清涼剤、殺菌剤、着香剤、および着色剤を適量含んでもよい。
【0116】
以上、本発明の製剤を構成する成分について説明した。
【0117】
本発明の経皮吸収型貼付製剤は、上述したゾニサミドまたはそのアルカリ金属塩、経皮吸収促進剤および粘着剤を含む粘着剤組成物を粘着剤層とし、これを支持体上に積層し、粘着剤層の上に剥離ライナーを被覆した積層構造体として用いることができる。使用に際しては、剥離ライナーを剥がして、粘着剤層の面を所望の皮膚に貼り付ければよい。
【0118】
本発明に用いられる支持体は、特に限定されず、貼付剤用として通常用いられる伸縮性または非伸縮性のものが用いられる。支持体の具体例として好ましくは、ポリエチレンテレフタレート(以下、PETと呼ぶ場合がある)、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブタジエン、エチレン酢酸ビニル共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリエステル、ナイロン、ポリウレタン等の合成樹脂で形成されたフィルムもしくはシート、またはこれらの積層体、多孔質膜、発泡体、織布、不織布、あるいは紙材が挙げられる。
【0119】
本発明の経皮吸収型貼付製剤に使用される剥離ライナーは、貼付剤用として通常用いられているものであれば特に限定されない。剥離ライナーの具体例として、好ましくはポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、紙等が挙げられる。より好ましくは、ポリエチレンテレフタレートが挙げられる。剥離ライナーは剥離力を最適にするため、必要に応じてシリコン処理を行ってもよい。
【0120】
本発明の経皮吸収型貼付製剤は、例えば以下の方法によって製造することができる。
【0121】
ゾニサミドまたはそのアルカリ金属塩、経皮吸収促進剤および粘着剤(必要に応じて他の添加成分)を、適当な溶媒に溶解させて粘着剤溶液を得る。上記溶媒は、構成成分の種類によって適宜最適なものを選択すればよいが、例えば、トルエン、酢酸エチル、N−メチル−2−ピロリドン、エタノール、またはメタノール等を単独で、または2種以上を混合して用いることができる。次に、このようにして得られた粘着剤溶液を、剥離ライナーまたは支持体上に伸展して溶媒を乾燥、除去した後、支持体または剥離ライナーと貼り合わせることにより、本発明の経皮吸収型貼付製剤を得ることができる。
【0122】
粘着剤層(ゾニサミドまたはそのアルカリ金属塩、経皮吸収促進剤、および粘着剤、ならびに必要に応じて他の添加剤を含む層)の厚みとして好ましくは、30μm〜200μmが挙げられる。より好ましくは、50μm〜200μmが挙げられる。さらに好ましくは、50μm〜150μmが挙げられる。
【0123】
上記粘着剤層の厚みが30μm未満であると、薬物放出の持続性が低下する。好ましくは30μm以上、より好ましくは50μm以上である。一方、上記粘着剤層の厚みが200μmを超えると、粘着剤層中の薬物含量が増え、残存する薬物量が増加したり、製造コストの増加を招く。好ましくは200μm以下、より好ましくは150μm以下である。
【0124】
本願は、2016年3月25日に出願された日本国特許出願第2016−062531号に基づく優先権の利益を主張するものである。2016年3月25日に出願された日本国特許出願第2016−062531号の明細書の全内容が、本願に参考のため援用される。
【実施例】
【0125】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、以下では特に断らない限り、「%」は粘着剤層の全量を100質量%としたときの「質量%」を意味する。
【0126】
検討1−1:各種吸収促進剤の検討
ゾニサミドまたはそのアルカリ金属塩として、ゾニサミドを用いて以下の実験を行った。
【0127】
実施例1
ゾニサミド4gおよびN−ラウリルピロリドン(N−ラウリル−2−ピロリドン)7.5gを、N−メチル−2−ピロリドン20mLに溶解し、主薬溶液を調製した。主薬溶液と、ピロリドン基含有(メタ)アクリル系共重合体(アクリル酸2−エチルヘキシル・ビニルピロリドン共重合体)88.5gを溶解させた酢酸エチル溶液295gとを混合し、さらに酢酸エチルを加えて全量400gとし、均一になるまで撹拌混合して、粘着剤溶液を得た。次に、この粘着剤溶液を適量、剥離ライナー(PETフィルム)上に伸展した後、N−メチル−2−ピロリドンと酢酸エチルとを乾燥により除去し、厚さ50μmの粘着剤層を形成した。次いで、支持体(PETフィルム)を貼り合わせることにより、実施例1を得た。表1に各成分の含有量を示す。なお、表1中、空欄は添加していないことを示す。
【0128】
比較例1
N−ラウリルピロリドンを使用せず、ピロリドン基含有(メタ)アクリル系共重合体の含有量を表1に示す含有量としたこと以外は、実施例1と同様の製法により比較例1を得た。表1に各成分の含有量を示す。
【0129】
比較例2〜4
N−ラウリルピロリドンの代わりに表1に記載の経皮吸収促進剤を使用したこと以外は、実施例1と同様の製法により比較例2〜4を得た。表1に各成分の含有量を示す。
【0130】
比較例5〜13
N−ラウリルピロリドンの代わりに表1に記載の経皮吸収促進剤を使用し、ピロリドン基含有(メタ)アクリル系共重合体と経皮吸収促進剤の含有量を表1に示す含有量としたこと以外は、実施例1と同様の製法により比較例5〜13を得た。表1に各成分の含有量を示す。
【0131】
実施例2
ピロリドン基含有(メタ)アクリル系共重合体と上記N−ラウリルピロリドンの含有量を表2に示す含有量としたこと以外は、実施例1と同様の製法により実施例2を得た。表2に各成分の含有量を示す。なお、表2中、空欄は添加していないことを示す。
【0132】
比較例14〜19
上記N−ラウリルピロリドンの代わりに表2に記載の経皮吸収促進剤を使用し、上記ピロリドン基含有(メタ)アクリル系共重合体と経皮吸収促進剤の含有量を表2に示す含有量としたこと以外は、実施例1と同様の製法により比較例14〜19を得た。表2に各成分の含有量を示す。
【0133】
ゾニサミドのインビトロヘアレスラット皮膚透過性試験
本発明の経皮吸収型貼付製剤におけるゾニサミドの経皮吸収性を検討するため、実施例1、2、および比較例1〜19の製剤について、ヘアレスラットにおけるインビトロ皮膚透過性試験を行った。雄性ヘアレスラット(HWY系、7週齢)の腹部摘出皮膚をフランツ型拡散セルにセットし、円形(φ14mm)に裁断した上記の各試験製剤を貼付した。レセプター側にはリン酸緩衝生理食塩水を満たし、ウォータージャケットには、37℃の温水を還流した。経時的にレセプター液をサンプリングし、皮膚を透過したゾニサミドの含有量を液体クロマトグラフ法により測定して、試験開始24時間後の累積薬物透過量を算出した。液体クロマトグラフ法の条件は以下のとおりである。
〔HPLC測定条件〕
カラム :ACQUITY BEH C18カラム(粒子径1.7μm、内径×長さ;2.1×100mm)
流速 :0.4mL/min
カラム温度:30℃
波長 :285nm
移動相 :メタノール/水/酢酸=18:82:1
【0134】
これらの結果を表1、2に示す。
【0135】
【表1】
【0136】
【表2】
【0137】
表1、2より、以下のように考察することができる。
【0138】
表1の実施例1は、本発明の構成要件を満たす例であり、比較例1〜13は本発明で規定する経皮吸収促進剤(N−アルキルピロリドン)を使用していない例、または他の経皮吸収促進剤を使用した例である。実施例1は、比較例1〜13よりも累積薬物透過量が大きく増加し、優れた経皮吸収性を示した。
【0139】
このうち比較例5〜13は、経皮吸収促進剤の含有量が10質量%であり、実施例1(7.5質量%)よりも経皮吸収促進剤の含有量が多い例である。実施例1は、比較例5〜13よりも経皮吸収促進剤の含有量が少ないにもかかわらず、比較例5〜13の約1.2〜4倍の経皮吸収性を示した。
【0140】
表2の実施例2は、本発明の構成要件を満たす例であり、比較例14〜19は、本発明で規定する経皮吸収促進剤(N−アルキルピロリドン)を使用せずに他の経皮吸収促進剤を使用した例である。実施例2は、他の経皮吸収促進剤を用いた比較例14〜19の約1.7〜4.8倍の経皮吸収性を示した。
【0141】
以上より、本発明では、粘着剤としてピロリドン基含有(メタ)アクリル系共重合体を使用するだけでは不十分であり、経皮吸収促進剤としてN−ラウリルピロリドン(N−アルキルピロリドン)を使用することが経皮吸収性の向上に重要である。
【0142】
検討1−2:N−ラウリルピロリドンと他の吸収促進剤の組み合わせ、およびピロリドン基含有(メタ)アクリル系共重合体とカルボキシル基含有(メタ)アクリル系共重合体の組み合わせの検討
【0143】
実施例3〜7
表3に記載の経皮吸収促進剤を使用し、ピロリドン基含有(メタ)アクリル系共重合体と経皮吸収促進剤の含有量を表3に示す含有量としたこと以外は、実施例1と同様の製法により実施例3〜7を得た。表3に各成分の含有量を示す。なお、表3中、空欄は添加していないことを示す。
【0144】
比較例20
N−ラウリルピロリドンの代わりに表3に記載の経皮吸収促進剤を使用し、ピロリドン基含有(メタ)アクリル系共重合体、および経皮吸収促進剤の含有量を表3に示す含有量としたこと以外は、実施例1と同様の製法により比較例20を得た。表3に各成分の含有量を示す。
【0145】
実施例8〜11
表4に記載の経皮吸収促進剤を使用して、ゾニサミド、ピロリドン基含有(メタ)アクリル系共重合体、経皮吸収促進剤の含有量を表4に示す含有量としたこと以外は、実施例1と同様の製法により実施例8〜11を得た。表4に各成分の含有量を示す。なお、表4中、空欄は添加していないことを示す。
【0146】
実施例12
カルボキシル基含有(メタ)アクリル系共重合体(アクリル酸・アクリル酸オクチルエステル共重合体)を使用し、ゾニサミド、アクリル系共重合体、および経皮吸収促進剤の含有量を表4に示す含有量としたこと以外は、実施例1と同様の製法により実施例12を得た。表4に各成分の含有量を示す。
【0147】
実施例13〜21
表4に記載の経皮吸収促進剤を使用し、アクリル系共重合体、および経皮吸収促進剤の含有量を表4に示す含有量としたこと以外は、実施例12と同様の製法により実施例13〜21を得た。表4に各成分の含有量を示す。
【0148】
比較例21
N−ラウリルピロリドンの代わりに表4に記載の経皮吸収促進剤を使用し、ゾニサミド、ピロリドン基含有(メタ)アクリル系共重合体、および経皮吸収促進剤の含有量を表4に示す含有量としたこと以外は、実施例1と同様の製法により比較例21を得た。表4に各成分の含有量を示す。
【0149】
ゾニサミドのインビトロヘアレスラット皮膚透過性試験
実施例3〜21および比較例20、21の製剤について、上記インビトロヘアレスラット皮膚透過性試験と同様な方法にて、ヘアレスラットにおけるインビトロ皮膚透過性試験を行った。表3、4に結果を示す。
【0150】
【表3】
【0151】
【表4】
【0152】
表3、4より、以下のように考察することができる。
【0153】
表3の実施例3〜7は、本発明で規定する経皮吸収促進剤(N−アルキルピロリドン)と他の経皮吸収促進剤を使用した本発明の構成要件を満たす例である。また、表3の比較例20は、本発明で規定する経皮吸収促進剤を使用せずに他の経皮吸収促進剤を2種類使用した例である。実施例3〜7は、比較例20よりも、累積薬物透過量が増加し、優れた経皮吸収性を示した。このうち、他の経皮吸収促進剤としてミリスチン酸イソプロピルを使用した実施例4は、最も累積薬物透過量が高くなっていた。
【0154】
以上より、本発明では、N−ラウリルピロリドンおよびその他の経皮吸収促進剤を使用することも有効であることが明らかとなった。特にN−ラウリルピロリドンとミリスチン酸イソプロピルの組み合わせが経皮吸収性の向上に有効であることが明らかとなった。
【0155】
表4の実施例8〜11は、本発明で規定する経皮吸収促進剤(N−アルキルピロリドン)と、他の経皮吸収促進剤を1種または2種使用した本発明の構成要件を満たす例である。また、表4の比較例21は、本発明で規定する経皮吸収促進剤を使用せずに他の経皮吸収促進剤を2種類使用した例である。実施例8〜11は、比較例21よりも、累積薬物透過量が増加し、優れた経皮吸収性を示した。
【0156】
表4の実施例12は、粘着剤として、ピロリドン基含有(メタ)アクリル系共重合体およびカルボキシル基含有(メタ)アクリル系共重合体を用い、さらに、本発明で規定する経皮吸収促進剤(N−アルキルピロリドン)を使用した本発明の構成要件を満たす例である。実施例12は、比較例21よりも、累積薬物透過量が増加し、優れた経皮吸収性を示した。
【0157】
表4の実施例13〜21は、粘着剤として、ピロリドン基含有(メタ)アクリル系共重合体およびカルボキシル基含有(メタ)アクリル系共重合体を用い、さらに、本発明で規定する経皮吸収促進剤(N−アルキルピロリドン)および他の経皮吸収促進剤を1種または2種使用した本発明の構成要件を満たす例である。実施例13〜21は、比較例21よりも、累積薬物透過量が増加し、優れた経皮吸収性を示した。
【0158】
表4の実施例11および実施例17を比較すると、カルボキシル基含有(メタ)アクリル系共重合体を含む実施例17は、実施例11よりも、累積薬物透過量が増加し、優れた経皮吸収性を示した。
【0159】
以上より、本発明では、粘着剤としてピロリドン基含有(メタ)アクリル系共重合体に加えて、カルボキシル基含有(メタ)アクリル系共重合体を使用することも経皮吸収性の向上に有効であることが明らかとなった。
【0160】
検討2:皮膚刺激性に関する検討
比較例22
N−ラウリルピロリドンの代わりに表5に記載の経皮吸収促進剤を使用し、ピロリドン基含有(メタ)アクリル系共重合体および経皮吸収促進剤の含有量を表5に示す含有量としたこと以外は、実施例1と同様の製法により比較例22を得た。表5に各成分の含有量を示す。なお、表5中、空欄は添加していないことを示す。
【0161】
ウサギ皮膚一次刺激性試験
実施例2、11、および17、比較例1、および22の各製剤についてウサギ皮膚一次刺激性試験を行った。それぞれの貼付剤を除毛したウサギの背部に24時間貼付し、下記のDraize法に従って、剥離後1時間後、24時間後、48時間後における紅斑評点と浮腫評点を加えた平均値より皮膚一次刺激指数(Primary Irritation Index:P.I.I.)を求めた。P.I.I.値を表5に示す。また、安全性評価基準を表6に示す。なお、実施例11のP.I.I.値に関しては、剥離後の糊残りが生じたので参考値とした。
(評価基準と評点)
紅斑および痂皮の形成
紅斑なし:0
非常に軽度な紅斑(かろうじて識別できる):1
はっきりした紅斑:2
中等度から強度な紅斑:3
強度な紅斑から軽度な痂皮形成(深部損傷):4
浮腫の形成
浮腫なし:0
非常に軽度な浮腫(かろうじて識別できる):1
軽度な浮腫(はっきりとした膨隆による明確な縁が識別できる):2
中等度名浮腫(約1mmの膨隆):3
強度な浮腫(1mm以上の膨隆と曝露範囲を越えた広がり):4
【0162】
【表5】
【0163】
【表6】
【0164】
表5の実施例2、11、および17は、本発明の構成要件を満たす例である。表5の比較例22は、本発明で規定する経皮吸収促進剤(上記N−ラウリルピロリドン)の代わりにラウロマクロゴール(BL-4.2)を使用した例である。ラウロマクロゴール(BL-4.2)を含む比較例22の刺激指数が5.8であるのに対し、本発明の実施例2および11は、経皮吸収促進剤の含有量が比較例22と同量若しくはそれ以上であるにもかかわらず、刺激指数がそれぞれ2.0前後であり、安全性が高いことが明らかとなった。
【0165】
さらに、上記カルボキシル基含有アクリル系粘着剤を含む実施例17の刺激指数は0.9と極めて安全性が高いことが明らかとなった。表4に示すとおり、実施例17は実施例11より経皮吸収性が優れており、カルボキシル基含有アクリル系粘着剤を含むことで、経皮吸収性が向上するとともに、皮膚刺激を低減させることができた。
【0166】
経皮吸収促進剤を含有しない比較例1の刺激指数が1.5であるのに対し、実施例17の刺激指数は0.9であり、カルボキシル基含有アクリル系粘着剤を含むことで、経皮吸収促進剤を含有しない製剤よりも安全性が高くなった。