特許第6872535号(P6872535)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6872535アシルゲルマニウム光開始剤およびその調製のための方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6872535
(24)【登録日】2021年4月21日
(45)【発行日】2021年5月19日
(54)【発明の名称】アシルゲルマニウム光開始剤およびその調製のための方法
(51)【国際特許分類】
   C07F 7/30 20060101AFI20210510BHJP
   C08F 2/50 20060101ALI20210510BHJP
【FI】
   C07F7/30 CCSP
   C08F2/50
【請求項の数】20
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2018-514367(P2018-514367)
(86)(22)【出願日】2016年9月26日
(65)【公表番号】特表2018-534249(P2018-534249A)
(43)【公表日】2018年11月22日
(86)【国際出願番号】EP2016072835
(87)【国際公開番号】WO2017055209
(87)【国際公開日】20170406
【審査請求日】2019年9月25日
(31)【優先権主張番号】15187284.3
(32)【優先日】2015年9月29日
(33)【優先権主張国】EP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】501151539
【氏名又は名称】イフォクレール ヴィヴァデント アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Ivoclar Vivadent AG
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】モスツナー, ノルベルト
(72)【発明者】
【氏名】ランパース, アイリス
(72)【発明者】
【氏名】フィッシャー, ウルス カール
(72)【発明者】
【氏名】シュテューガー, ハラルド
(72)【発明者】
【氏名】ハース, ミヒャエル
(72)【発明者】
【氏名】ゲシャイト−デムナー, ゲオルク
【審査官】 磯貝 香苗
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−228005(JP,A)
【文献】 特開2008−088432(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07F
C08F
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I)によるアシルゲルマニウム化合物であって、
[RAr−(C=O)−]−Ge (I)
式中、変数は以下の意味を有する:
Arは、R基でm回置換されていてよく、環中に1個または複数のヘテロ原子を含有することができる、6〜18個の環炭素原子を有する単環式または多環式炭化水素基であり、ここで、
mは0〜6の整数であり、Ar中の置換可能な水素原子の数より大きいことはあり得ず、
Rは、ハロゲン、NR、OH、OSiR、(C=O)R、CN、NO、CF、COOR、または、直鎖状、分枝状もしくは環状であってよく、1個もしくは複数のO原子で介在されていてよく、ラジカル重合性基を含有することができるC〜C20−アルキル、−アルケニル、−アルコキシもしくは−アルケノキシ基、または=Oであり、ここで、
〜Rは、互いに独立に、それぞれの場合、H、または直鎖状もしくは分枝状C〜C12−アルキル基であり、
は、H、直鎖状もしくは分枝状C〜C12−アルキル基、またはSiRであり、ここで、
は、直鎖状または分枝状C〜C10−アルキル基であり、
該単環式炭化水素基が、芳香環であり、該多環式炭化水素基が、少なくとも1つの芳香環を含有し、
Rが=Oである場合、Ar中の芳香環が、該R基によって置換され得ない、
アシルゲルマニウム化合物。
【請求項2】
一般式(I)によるアシルゲルマニウム化合物であって、
[RAr−(C=O)−]−Ge (I)
式中、変数が以下の意味を有する:
Arは、Rでm回置換されていてよい芳香族C〜C10基であり、
mは1〜3の整数であり、
Rは、Cl、NR、OSiR、(C=O)R、CN、NO、CF、COOR、または、直鎖状、分枝状もしくは環状であってよく、1個もしくは複数のO原子で介在されていてよく、ラジカル重合性基含有することができるC〜C10−アルキル、−アルケニル、−アルコキシもしくは−アルケノキシ基でありここで、
〜Rは、互いに独立に、それぞれの場合、H、または直鎖状もしくは分枝状C〜C−アルキル基であり、
は、H、直鎖状もしくは分枝状C〜C−アルキル基、またはSiRであり、
は、直鎖状または分枝状C〜Cアルキル基である、
アシルゲルマニウム化合物。
【請求項3】
前記ラジカル重合性基が、ビニル、メタクリレート、(メタ)アクリルアミドもしくはN−アルキルアクリルアミドである、請求項2に記載のアシルゲルマニウム化合物。
【請求項4】
非環状基の場合、前記ラジカル重合性基が末端にある、請求項3に記載のアシルゲルマニウム化合物。
【請求項5】
前記変数が以下の意味を有する:
Arは、Rでm回置換されていてよいフェニル基、ピリジル基、ナフチル基、アントリル基、アントラキノニル基であり、ここで、
mは1〜3の整数であり、
Rは、NR、CN、NO、CF末端のラジカル重合性基有することができるC〜C−アルキル基またはC〜C−アルコキシ基であり、ここで、
は、H、または〜C−アルキル基である、
請求項1〜4のいずれか一項に記載のアシルゲルマニウム化合物。
【請求項6】
前記C〜C−アルキル基またはC〜C−アルコキシ基が、直鎖状である、請求項5に記載のアシルゲルマニウム化合物。
【請求項7】
前記末端のラジカル重合性基が、ビニル、アクリレート、またはメタクリレートである、請求項5または6に記載のアシルゲルマニウム化合物。
【請求項8】
が、直鎖状C〜C−アルキル基である、請求項5〜7のいずれか一項に記載のアシルゲルマニウム化合物。
【請求項9】
組成物の全質量に対して、0.001〜5wt%の、請求項1〜のいずれか一項に記載の式(I)のアシルゲルマニウム化合物および少なくとも1つの重合性結合剤を含有する組成物。
【請求項10】
重合性結合剤として、少なくとも1つのラジカル重合性モノマーおよび/またはプレポリマーを含有する、請求項に記載の組成物。
【請求項11】
結合剤として、少なくとも1つの単官能性もしくは多官能性(メタ)アクリレートまたはその混合物を含有する、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
それぞれの場合、前記組成物の全質量に対して、
0.001〜5wt%の式(I)のアシルゲルマニウム化合物、
10〜99.9wt%の重合性結合剤、
0〜85wt%のフィラー
を含有する、請求項9〜11の一項に記載の組成物。
【請求項13】
ラジカル重合の開始剤としての、請求項1〜のいずれか一項に記載の式(I)によるアシルゲルマンの使用。
【請求項14】
式I’の(アリールアシル)(アルキル)4−kゲルマン(k=1〜4)の調製のための方法であって、式(R’Si)GeR”4−k(II)の(トリアルキルシリル)ゲルマンが、塩基の存在下で、アリールアシルハライド(III)と反応させられてI’、
【化8】


(式中、
R’は、1〜6個のC原子を有するアルキル基であり、
R”は、1〜12個のC原子を有するアルキル基であり、
XはF、Cl、BrまたはIであり、
kは1〜4の整数であり、
Ar、mおよびRは、請求項1〜8のいずれか一項に与えられた意味を有する)
を形成する、方法。
【請求項15】
アルカリ金属アルコレート、アルカリ金属アミドまたはアルカリ金属有機化合物が塩基として使用される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
以下の化合物:
【化9】


の1つが式IIIのアリールアシルハライドとして使用される、請求項14または15に記載の方法。
【請求項17】
トリメチルシリルゲルマン(R’Si)GeR”4−k(II)が、最初に前記塩基と反応させられて(R’Si)k−1R”4−kGeM(ここで、Mは金属イオンである)を形成し、次いで、(R’Si)k−1R”4−kGeMが前記式(III)のアシルハライドで式I’の化合物へ転換させられる、請求項14〜16の一項に記載の方法。
【請求項18】
式(II)の化合物が、式ClGeR”4−k(IV)の塩化ゲルマニウムを式R’SiCl(V)のトリアルキルシリルクロリドと反応させることによって調製される:
【化10】


請求項14〜17の一項に記載の方法。
【請求項19】
式(MeSi)GeR”4−k(II’)のトリメチルシリルゲルマンが、最初にカリウムtert−ブチレート(KOtBu)と反応させられ、次いで式(III)のアシルハライド(X=FまたはCl)と反応させられる、請求項14〜18の一項に記載の方法。
【請求項20】
式I’の化合物を得るために、式(R’Si)Geのテトラ(トリアルキルシリル)ゲルマンが、塩基の存在下で、式(III)のアシルハライドと反応させられる、請求項14〜19の一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重合開始剤としてアシルゲルマニウム化合物を含有する重合性組成物に関する。これらの組成物は、接着剤、コーティング、セメント、複合材料、成形部品、例えばロッド、プレート、ディスクまたはレンズ等、特に歯科材料の調製に特に適している。
【背景技術】
【0002】
使用される光開始剤は、光多反応性(photopolyreaktionsfaehigen)樹脂の硬化に決定的役割を果たす。紫外線(UV)または可視光での照射によって、この光開始剤は光を吸収し、重合開始種を形成する。ラジカル重合の場合、これらはフリーラジカルである。光開始剤は、ラジカル形成の化学的機構に基づいて、2つの部類に分けられる。
【0003】
ノリッシュI型光開始剤は、照射されると、単分子結合開裂によってフリーラジカルを形成する。照射されると、ノリッシュII型光開始剤は二分子反応を施され、そこで、励起状態にある光開始剤は、第2の分子、共開始剤と反応し、電子およびプロトン移動によって重合開始基を形成する。I型およびII型光開始剤は、紫外線硬化のために使用されており;今日まで、ビスアシルジアルキルゲルマニウム化合物は別として、II型光開始剤は、ほぼ例外なく、可視光範囲について使用されている。
【0004】
紫外線硬化は、高い反応速度によって特徴付けられ、例えば木材、金属またはガラスなどの異なる基材のコーティングのためにしばしば使用される。したがって、例えば欧州特許出願公開第1247843A2号において、紫外線硬化コーティング材料が記載されており、そこでは、ジエトキシフェニルアセトフェノンまたはアシルもしくはビスアシルホスフィンオキシドなどのI型光開始剤が使用されている。
【0005】
国際公開第01/51533A1号は、紫外線硬化木材−コーティング材料を記載しており、そこでは、アシルホスフィンオキシド、α−ヒドロキシアルキルフェノンまたはα−ジアルコキシアセトフェノンも光開始剤として使用されている。とりわけ、薄い層厚さを有する透明コーティングは、紫外線の低波長のため、紫外線硬化により生成することができる。顕著なシェーディングまたは色素沈着、およびより厚い層厚さにより、紫外線硬化の限界に達する。明らかに低下された透明性を有するそうした光多反応性樹脂は、紫外線で不完全にしか硬化しない。
【0006】
例えば、光硬化性歯牙充填材料の硬化などのように、より大きい全体硬化深さ(groessere Durchhaertungstiefen)が必要とされる場合、可視光が照射用に使用される。このために最も頻繁に使用される光開始剤系は、英国特許第1408265号に記載されているような、α−ジケトンとアミン共開始剤の組合せである。
【0007】
この光開始剤系が使用されている歯科用組成物は、例えば、米国特許第4,457,818号または同第4,525,256号に開示されており、そこでは、好ましくはカンファーキノンがα−ジケトンとして使用される。カンファーキノンは、468nmの波長で吸収極大を有する。結果として、カンファーキノンは、その開始剤系が完全には漂白されないので、カンファーキノン/アミンで開始される材料が、硬化後、しばしば、黄色気味となるという欠点とともに、強い黄色の着色を示す(N. Moszner、R. Liska、Photoinitiators for direct adhesive restorative materials、In: Basics and Applications of Photopolymerization Reactions、1巻;Fouassier、J.-P., Allonas, X.編、Research Signpost、Kerala、2010年、93〜114頁)。この漂白挙動は、特に、完全に重合した材料の明るい白色シェードの場合非常に不都合である。さらに、酸性接着剤で使用する場合、カンファーキノンアミン系は、ラジカル形成アミン成分がプロトン化し、それによって、ラジカル形成について部分的に不活性化されるという欠点を有する。
【0008】
光開始剤としてのゲルマニウム化合物の使用は公知である。ビスアシルジアルキルゲルマニウム化合物は、とりわけ、青色光範囲での硬化のための効率的なノリッシュI型光開始剤である(B.Ganster、U. K. Fischer、N. Moszner、R. Liska、New photocleavable structures、Diacylgerman-based photoinitiators for visible light curing、Macromolecules 41巻(2008年)2394〜2400頁;N. Moszner、U.K. Fischer、B. Ganster、R. Liska、V. Rheinberger、Benzoyl germanium derivatives as novel visible light photoinitiators for dental materials Dent. Mater. 24巻(2008年)901〜907頁;N. Moszner、F. Zeuner、I. Lamparth、U. K. Fischer、Benzoylgermanium derivatives as novel visible-light photoinitiators for dental composites、Macromol. Mater. Eng. 294巻(2009年)877〜886頁)。
【0009】
欧州特許出願公開第1905413A1号および同第1905415A1号は、可視光で歯科材料を硬化させるための光開始剤として適しているモノ−、ビス−およびトリアシルゲルマニウム化合物を開示している。それらの合成は、コストが高く、ジチアン保護基技術、およびカラムクロマトグラフィーを使用した精製を使用して、高価なジアルキルゲルマニウムジハライドから出発して実施される。
【0010】
欧州特許出願公開第2103297A1号により、複数のゲルマニウム原子を含有する適切なアシルゲルマニウム化合物は光開始剤として公知である。
【0011】
国際公開第2015/067815A1号は、式RGe(CO)GeRを有するビス(ゲルミル)ケトンおよびその調製のための方法を開示している。これらのビス(ゲルミル)ケトンは、歯科材料用の光開始剤として適することも意図されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】欧州特許出願公開第1247843A2号明細書
【特許文献2】国際公開第01/51533A1号
【特許文献3】英国特許第1408265号明細書
【特許文献4】米国特許第4,457,818号明細書
【特許文献5】米国特許第4,525,256号明細書
【特許文献6】欧州特許出願公開第1905413A1号明細書
【特許文献7】欧州特許出願公開第1905415A1号明細書
【特許文献8】欧州特許出願公開第2103297A1号明細書
【特許文献9】国際公開第2015/067815A1号
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】N. Moszner、R. Liska、Photoinitiators for direct adhesive restorative materials、In: Basics and Applications of Photopolymerization Reactions、1巻;Fouassier、J.-P., Allonas, X.編、Research Signpost、Kerala、2010年、93〜114頁
【非特許文献2】B.Ganster、U. K. Fischer、N. Moszner、R. Liska、New photocleavable structures、Diacylgerman-based photoinitiators for visible light curing、Macromolecules 41巻(2008年)2394〜2400頁
【非特許文献3】N. Moszner、U.K. Fischer、B. Ganster、R. Liska、V. Rheinberger、Benzoyl germanium derivatives as novel visible light photoinitiators for dental materials Dent. Mater. 24巻(2008年)901〜907頁
【非特許文献4】N. Moszner、F. Zeuner、I. Lamparth、U. K. Fischer、Benzoylgermanium derivatives as novel visible-light photoinitiators for dental composites、Macromol. Mater. Eng. 294巻(2009年)877〜886頁)
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の目的は、改善された反応性および硬化特徴によって特徴付けられ、特に、長波長範囲内の可視光によって活性化され得る可視範囲のための光開始剤を提供することである。本発明のさらなる目的は、アシルゲルマンの調製のための簡易化されたプロセスを提供することである。
【0015】
この目的は、一般式(I):
[RAr−(C=O)−]−Ge (I)
に対応するテトラまたはテトラキス−アシルゲルマンによって達成され、
ここで、これらの変数は以下の意味を有する:
Arは、R基でm回置換されていてよく、その環中に1個もしくは複数のヘテロ原子を含有することができる、6〜18個の環炭素原子を有する単環式または多環式炭化水素基であり、ここで、
mは、0〜6の整数であり、Ar中の置換可能な水素原子の数より大きいことはあり得ず、
Rは、ハロゲン、NR、OH、OSiR、(C=O)R、CN、NO、CF、COOR、直鎖状、分枝状もしくは環状であってよく、1個もしくは複数のO原子で介在されていてよく、ラジカル重合性基を有することができるC〜C20−アルキル、−アルケニル、−アルコキシもしくは−アルケノキシ基、または=Oであり、ここで、
〜Rは、互いに独立に、それぞれの場合、H、または直鎖状もしくは分枝状C〜C12−アルキル基であり、
は、H、直鎖状もしくは分枝状C〜C12−アルキル基、またはSiRであり、ここで、
は直鎖状または分枝状C〜C10アルキル基である。
【0016】
複数のR基が存在する(m>1)場合、これらは、異なっていても、好ましくは同一であってもよい。R基中に置換基として存在することができる好ましいラジカル重合性基は、ビニル、スチリル、アクリレート(CH=CH−CO−O−)、メタクリレート(CH=C(CH)−CO−O−)、アクリルアミド(CH=CH−CO−NR−(R=HまたはC〜C−アルキルである))、メタクリルアミド(CH=C(CH)−CO−NH−)、特に好ましくは(メタ)アクリレート、メタクリルアミドおよび/またはN−アルキルアクリルアミドである。R基(単数または複数)は、好ましくは0〜3個、特に0〜1個のラジカル重合性基を含む。非環状基では、重合性基は、好ましくは、末端に配置される。
【0017】
化学命名法の規則によれば、Arが置換されていない基である化合物は、テトラアシルゲルマンと称されるべきであり、Arが置換されている化合物は、テトラキス(アシル)ゲルマンと称されなければならない。簡単にするために、ここでは、テトラアシルゲルマンという用語を、両方の化合物群のために使用する。
【0018】
Arは、少なくとも1つの芳香環、特に好ましくは芳香族炭化水素基を含有する多環式炭化水素基であることが好ましい。少なくとも1つの芳香環を有する好ましい多環式炭化水素基は、アントラキノンおよびナフトキノンである。ベンゼン基に加えて、特に、ナフタレン、アントラセン、フェナントレンおよびナフタセン基などの縮合芳香族基が芳香族炭化水素基として好ましい。
【0019】
Arは、環中に、1個または複数、好ましくは1〜2個のヘテロ原子を含有することができる。好ましいヘテロ原子はO、S、特に好ましくはNである。特に好ましいヘテロ芳香族基は、ピリジン、ピリミジンおよびキノリンである。
【0020】
例えばラセミ化合物などの、種々の立体異性形態のすべての立体異性形態および混合物は、式(I)および本明細書で示される他の式によって包含される。これらの式は、化学原子価理論に適合する化合物だけを包含する。例えば、mは、Ar基中の置換可能な水素原子の数より大きくてはならない。Rが2つの結合を介してArと結合している場合、可能なR基の最大数は、それに応じてより少なくなる。
【0021】
ある基がOなどのヘテロ原子によって介在され得る表示は、そのO原子が、その基の炭素鎖または炭素環中に挿入されている、すなわち、炭素原子によってその両側が隣接されていることを意味するものと理解されるべきである。したがって、ヘテロ原子の数は、炭素原子の数より少なくとも1個少なく、そのヘテロ原子は末端にあってはならない。炭素原子およびヘテロ原子を含有する炭化水素基の場合、ヘテロ原子の数は、置換基に関係なく、炭素原子の数より常に少ない。
【0022】
ハロゲン(Halと略記される)は、好ましくはF、Cl、BrまたはI、特にF、Cl、非常に好ましくはClを表す。
【0023】
変数が以下の意味を有する一般式(I)に対応するテトラアシルゲルマンが特に好ましい:
Arは、Rでm回置換されていてよい芳香族C〜C10基であり、ここで、
mは1〜3の整数であり、
Rは、Cl、NR、OSiR、(C=O)R、CN、NO、CF、COOR、または、直鎖状、分枝状もしくは環状であってよく、1個もしくは複数のO原子で介在されていてよく、ラジカル重合性基、好ましくはビニル、メタクリレート、(メタ)アクリルアミドもしくはN−アルキルアクリルアミドを含有することができるC〜C10−アルキル、アルケニル、アルコキシもしくはアルケノキシ基であり、ここで、非環状基の場合のラジカル重合性基は、好ましくは末端にあり、ここで、
〜Rは、互いに独立に、それぞれの場合、H、または直鎖状もしくは分枝状C〜C−アルキル基であり、
は、H、直鎖状もしくは分枝状C〜C−アルキル基、またはSiRであり、
は直鎖状または分枝状C〜Cアルキル基である。
【0024】
一般式(I)によるテトラアシルゲルマンは、その変数が、以下の意味を有することがさらに好ましい:
Arは、Rでm回置換されていてよいフェニル基、ピリジル基、ナフチル基、アントリル基、アントラキノニル基であり、ここで、
mは1〜3の整数であり、
Rは、NR、CN、NO、CF、好ましくは直鎖状であり、末端のラジカル重合性基、好ましくはビニル、アクリレート、メタクリレートを有することができるC〜C−アルキル基またはC〜C−アルコキシ基であり、ここで、
は、H、または好ましくは直鎖状C〜C−アルキル基である。
【0025】
Arがフェニル基であり、m=1である場合、R基は、イル位に対してパラ位に位置することが好ましく、m=2または3である場合、R基は、イル位に対してオルト位およびパラ位に位置することが好ましい。個々の変数の好ましい意味、および特に好ましい意味は、それぞれの場合、互いに独立に選択され得る。
【0026】
非常に好ましいのは、Arが、Rでm回置換されているフェニル基である式(I)の化合物である。mは好ましくは1〜3、特に好ましくは1であり、Rは好ましくは電子供与基、特にアルコキシ基である。
【0027】
本発明によれば、400nm〜700nm、特に好ましくは400〜550nmで吸収極大を有する式(I)の化合物、例えば、テトラベンゾイルゲルマニウムまたはテトラ(4−メトキシベンゾイル)ゲルマニウムなどが好ましい。式(I)の化合物の吸収スペクトルは、R基を選択することによって、標的化した仕方で調節され得る。例えば、NOまたはCN置換基は吸収スペクトルの深色移動をもたらす。すなわち、R基の1つまたは複数がCNである化合物は、より長い波長を有する光を吸収し、その結果、重合を、より長い波長範囲の可視光によって開始させることができる。
【0028】
一般式(I)のテトラアシルゲルマンは、最新技術で公知ではなく、従来の方法で調製することはできない。これらの化合物は、高い反応性、すなわち優れた重合開始効果、および可視光での照射による良好な全体硬化深さによって特徴付けられる。これは、歯科材料の場合、特に歯牙充填複合材料の場合だけでなく、非歯科的使用の場合にも大きな利点である。
【0029】
驚くべきことに、塩基およびアリールアシルハライド(III)の存在下で、式(R’Si)GeR”4−k(II)の(トリアルキルシリル)ゲルマンを反応させることによって、式I’の(アリールアシル)(アルキル)4−kゲルマンを調製できることを見出した。
【化1】
ここで:
R’は、1〜6個、好ましくは1〜4個のC原子を有するアルキル基、特に好ましくはCHであり、
R”は、1〜12個、好ましくは1〜6個、特に好ましくは1〜4個のC原子を有するアルキル基、非常に好ましくはCH、CまたはCであり、
Xは、F、Cl、BrまたはI、好ましくはFまたはClであり、
kは1〜4の整数であり、
Rは上記の意味を有する。
【0030】
R’およびR”の場合、直鎖状アルキル基がすべての場合において好ましい。
【0031】
アルカリ金属アルコレート、特に好ましくはカリウムtert−ブチレート、アルカリ金属アミド、特に好ましくはリチウムジイソプロピルアミド、またはアルカリ金属有機化合物、特に好ましくはn−ブチルリチウムは、塩基として使用するのに好ましい。
【0032】
式IIIの好ましいアリールアシルハライドは、ArおよびR基の好ましい定義および特に好ましい定義から直接誘導される。以下の化合物はこの例である:
【化2】
【0033】
最初に、トリメチルシリルゲルマン(R’Si)GeR”4−k(II)を塩基と反応させて(R’Si)k−1R”4−kGeM(ここで、Mは金属イオン、好ましくはアルカリ土類、特にアルカリ金属イオンである)を形成させ、次いで、(R’Si)k−1R”4−kGeMを、式(III)のアシルハライドで、式(R’Si)k−1R”4−kGe(C=O)ArRの化合物へ転換させることが好ましい。この方法では、式(II)の(R’Si)基は、逐次的に、−(C=O)ArR基と交換される。中間生成物(R’Si)k−1R”4−kGeMは好ましくは単離されない。
【0034】
本発明による方法で、式(I’)のアシルゲルマンを、高純度および良好な収率で調製することができる。特別な利点は、硫黄含有保護基を使用したコストの高い保護基技術の使用を回避できることである。硫黄含有不純物は、非常な困難を伴ってしか、生成物から除去することができず、微量の硫黄含有基であっても、最終生成物に不快な臭気をもたらす。
【0035】
式(I’)のアシルゲルマンの合成に必要な出発材料(R’Si)GeR”4−k(II)は、好ましくは、対応する塩化ゲルマニウムClGeR”4−k(IV)を、式R’SiBrのトリアルキルシリルブロミド、または好ましくは式R’SiCl(V)のトリアルキルシリルクロリドと反応させることによって調製することができる:
【化3】
【0036】
このため、最初に、R’SiBr、または好ましくはR’SiCl(好ましくは0.9〜1.1k、特に好ましくは0.99k当量)を、好ましくは、適切な溶媒中の微細に分散したLi(好ましくは1.7〜2.2k、特に好ましくは1.85k当量)の懸濁液に加え、次いで塩化ゲルマニウム(好ましくは1当量)の溶液をゆっくり加える。それぞれの場合、エーテル、特に好ましくはTHFを溶媒として使用することが好ましい。使用される溶媒の量は、好ましくは20〜40ml/gのLi、非常に好ましくは30ml/gのLi、または1〜5ml/gのGeCl、非常に好ましくは2.5ml/gのGeClである。反応温度は、好ましくは+30〜−100℃、特に好ましくは−78℃である。生成混合物の後処理は、好ましくは珪藻土(Celite(登録商標))による濾過、好ましくはHSO/氷の混合物での酸加水分解、相分離、および続く、好ましくは蒸留による溶媒の除去によって実施することが好ましい。生成物は、結晶化、昇華または蒸留によって有利に単離することができる。
【0037】
本発明による方法の特に好ましい実施形態によれば、式(I’)のアシルゲルマンは、トリメチルシリルゲルマン(MeSi)GeR”4−k(II’)をカリウムtert−ブチレート(KOtBu)と反応させ、次いでその中間体をアシルハライド(III)(X=FまたはCl)と反応させることによって調製することができる:
【化4】
【0038】
(MeSi)k−1R”4−kGeKを形成させるために、(MeSi)GeR”4−k(好ましくは1当量)およびKOtBu(好ましくは0.9〜4当量、特に好ましくは1.1当量)を、最初に、適切な溶媒に溶解し、反応が完了するまで混合することが好ましい。溶媒として、エーテル、特に好ましくはDME(ジメトキシエタン)を使用することが好ましい。使用される溶媒の量は、好ましくは10〜60ml/gのKOtBu、特に好ましくは20ml/gのKOtBuである。反応温度は、好ましくは+80〜−30℃、特に好ましくは+25℃であり、反応時間は、好ましくは0.5〜3時間、特に好ましくは1時間である。
【0039】
次いで、式(I’)のアシルゲルマンを得るために、アシルハライド(III)(好ましくは1.0〜1.5当量)を加え、反応が完了するまで撹拌する。アシルハライド(III)は、そのままでも、また溶液でも使用することができ、ここで、溶媒の量は、好ましくは0〜200ml、特に好ましくは100ml/mmolのアシルハライドである。エーテル、特に好ましくはジエチルエーテルを溶媒として使用することが好ましい。反応温度は、好ましくは+30〜−100℃、非常に好ましくは−78℃である。反応時間は、好ましくは0.5〜48時間、特に好ましくは24時間である。生成混合物の後処理は、好ましくはHSO/氷の混合物での酸加水分解、相分離、および例えば蒸留による溶媒の除去によって実施することが好ましい。生成物は、カラムクロマトグラフィーおよび結晶化によって、好ましくは結晶化だけによって単離することができる。
【0040】
同様に、モノアシルトリアルキルゲルマン、ビスアシルジアルキルゲルマンおよびトリスアシルモノアルキルゲルマンを、式(II)のモノ、ビス−、トリ−またはテトラ(トリアルキルシリル)ゲルマンを式(III)のアシルハライドと反応させることによって、直接、保護基技術なしで生成させることができる。
【0041】
k=4である式(I’)のテトラアシルゲルマンは、本方法によって初めて到達可能である。このため、式(R’Si)Geのトリアルキルシリルゲルマニウムを、上記したような仕方で、塩基の存在下で式(III)の芳香族アリールハライドと反応させる。トリアルキルシリルゲルマニウム(R’Si)Geは、四塩化ゲルマニウムを、R’SiClおよび金属Liと反応させることによって調製することができる。
【0042】
式(I)のテトラアシルゲルマンは、テトラキス(トリメチルシリル)ゲルマニウム(MeSi)Geをカリウムtert−ブチレート(KOtBu)と反応させ、次いで、式(III)のアシルハライド(X=FまたはCl)と反応させることによって、上記したように特に有利に調製することができる:
【化5】
【0043】
アシルハライド(III)を、好ましくは1.0〜5当量、特に好ましくは4.1当量の量で加え、反応が完了するまで混合する。アシルハライドは、説明したようにそのままでも、また溶液でも使用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0044】
一般式(I)のテトラアシルゲルマンおよび式(I’)の(アシル)(アルキル)4−kゲルマンは、重合のための光開始剤として、特に、ラジカル重合、光付加およびチオール−エン反応(重付加)のための開始剤として特に適している。光での照射によって、これらの開始剤で、その開始剤が変色をもたらすことなく、大きい全体硬化深さを達成することができることを見出した。これは、多くの技術的材料、特に医療用材料において大きな利点である。
【0045】
一般式(I)および(I’)の化合物は、歯科材料、骨セメント、非常に特別にはコンタクトレンズ、眼内レンズまたは他の医療用成形部品、例えば、イヤーシェル、軟骨埋込物および人工組織部品などの調製に特に適している。
【0046】
可視波長範囲の光での硬化による大きな全体硬化深さも、技術的用途における実質的な利点である。したがって、式(I)および(I’)の開始剤は、例えば、印刷用インクまたは塗料、ニス、接着剤の調製のため、プリント板、集積回路、フォトレジスト、はんだ付けマスク(soldering mask)、カラープリンター用インクの調製のため、ホログラフィックデータ保存用材料として、ナノサイズの微小電気機械エレメント、光導波路、成形部品の調製のため、および情報媒体の光学的調製のためなどの、複数の非医療用途にも適している。主要な応用分野は、例えば精密成形部品およびセラミック素地の技術的成形部品の光造形法的調製における光開始剤としての使用である。
【0047】
本発明による組成物は、その組成物の全質量に対して、好ましくは、0.001〜5wt%、特に好ましくは0.01〜1.0wt%の式(I)または(I’)のアシルゲルマニウム化合物を含有する。式(I)または(I’)のアシルゲルマニウム化合物に加えて、その組成物は、重合性結合剤も好ましくは含有する。好ましい結合剤は、ラジカルおよび/またはカチオン重合性モノマーおよび/またはプレポリマー、特に好ましくはラジカル重合性モノマー、ラジカル重合性プレポリマーまたはその混合物である。
【0048】
単官能性もしくは多官能性(メタ)アクリレートまたはその混合物は、ラジカル重合性結合剤として特に適している。単官能性(メタ)アクリル化合物は、1個の重合性基を有する化合物を意味し、ポリ官能性(メタ)アクリレート化合物は、2個またはそれよりも多くの、好ましくは2〜3個の重合性基を有する化合物を意味する。
【0049】
この関連における例は、メチル、エチル、ヒドロキシエチル、ブチル、ベンジル、テトラヒドロフルフリルまたはイソボルニル(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ビス−GMA(メタクリル酸とビスフェノールAジグリシジルエーテルの付加生成物)、UDMA(2−ヒドロキシエチルメタクリレートと2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートの付加生成物)、ジ−、トリ−もしくはテトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ならびにグリセロールジ−およびトリ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレートまたは1,12−ドデカンジオールジ(メタ)アクリレートである。2個またはそれよりも多くの、好ましくは2〜3個のラジカル重合性基を有する少なくとも1つのラジカル重合性モノマーを含有する組成物が、特に好ましい。ポリ官能性モノマーは架橋特性を有する。
【0050】
加水分解的に安定なモノ(メタ)アクリレートなどの加水分解的に安定な希釈性モノマー、例えば、メシチルメタクリレートまたは2(アルコキシメチル)アクリル酸、例えば2−(エトキシメチル)アクリル酸、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸、N−モノもしくはジ置換アクリルアミド、例えば、N−エチルアクリルアミド、N,N−ジメタクリルアミド、N−(2−ヒドロキシエチル)アクリルアミドまたはN−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)−アクリルアミドなど、あるいはN−モノ置換メタクリルアミド、例えば、N−エチルメタクリルアミドまたはN−(2−ヒドロキシエチル)メタクリルアミドなども、またN−ビニルピロリドンまたはアリルエーテルも、ラジカル重合性結合剤として使用することができる。加水分解的に安定な架橋性モノマーの好ましい例は、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸およびジイソシアネートのウレタン、例えば2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートまたはイソホロンジイソシアネート;例えば、1,6−ビス(3−ビニル−2−ピロリドニル)ヘキサンなどの架橋性ピロリドン、またはメチレンもしくはエチレンビスアクリルアミドなどの商業的に入手可能なビスアクリルアミド、あるいは例えば、N,N’−ジエチル−1,3−ビス(アクリルアミド)プロパン、1,3−ビス(メタクリルアミド)プロパン、1,4−ビス(アクリルアミド)ブタンなどのビス(メタ)アクリルアミド、または、対応するジアミンと(メタ)アクリル酸クロリドの反応によって合成できる1,4−ビス(アクリロイル)ピペラジンである。
【0051】
例えば、単官能性もしくは多官能性ビニルシクロプロパンまたは二環式シクロプロパン誘導体(ドイツ特許第19616183C2号または欧州特許出願公開第1413569A1号参照)、または環状アリルスルフィド(米国特許第6,043,361号または同第6,344,556号参照)などの公知の低収縮性のラジカル開環重合性モノマーも、ラジカル重合性結合剤として使用することができる。これらのモノマーを、上記に列挙したジ(メタ)アクリレート架橋剤と組み合わせて使用することもできる。適切な開環重合性モノマーは、ビニルシクロプロパン、例えば1,1−ジ(エトキシカルボニル)−もしくは1,1−ジ(メトキシカルボニル)−2−ビニルシクロプロパン、または1−エトキシカルボニル−もしくは1−メトキシカルボニル−2−ビニルシクロプロパンカルボン酸とエチレングリコール、1,1,1−トリメチロールプロパン、1,4−シクロヘキサンジオールもしくはレゾルシノールのエステルである。適切な二環式シクロプロパン誘導体は、2−(ビシクロ[3.1.0]ヘキサ−1−イル)アクリル酸メチルもしくはエチルエステル、または3位でジ置換されているそれらの誘導体、例えば(3,3−ビス(エトキシカルボニル)−ビシクロ[3.1.0]ヘキサ−1−イル)アクリル酸メチルもしくはエチルエステルである。適切な環状アリルスルフィドは、2−(ヒドロキシメチル)−6−メチレン−1,4−ジチエパンまたは7−ヒドロキシ−3−メチレン−1,5−ジチアシクロオクタンと2,2,4−トリメチルヘキサメチレン−1,6−ジイソシアネートの付加生成物、または非対称ヘキサメチレンジイソシアネートトリマー(例えば、Bayer AGからのDesmodur(登録商標)VP LS2294)である。
【0052】
ビニルエステル、ビニルカーボネートおよびビニルカルバメートをベースとした配合物もラジカル重合性モノマーとして好ましい。さらに、スチレン、スチレン誘導体もしくはジビニルベンゼン、不飽和ポリエステル樹脂およびアリル化合物、または例えばドイツ特許第19903177C2号に記載されている、例えば3−(メタクリロイルオキシ)プロピルトリメトキシシランなどの適切なメタクリル酸シランから調製できるラジカル重合性ポリシロキサンを、モノマーとして使用することができる。
【0053】
さらに、上記のモノマーと、接着性モノマーとも称されるラジカル重合性酸性基含有モノマーの混合物も、ラジカル重合性結合剤として使用することができる。好ましい酸性基含有モノマーは、重合性カルボン酸、例えばマレイン酸、アクリル酸、メタクリル酸、2−(ヒドロキシルメチル)アクリル酸、4−(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメリット酸無水物、10−メタクリロイルオキシデシルマロン酸、N−(2−ヒドロキシ−3−メタクリロイルオキシプロピル)−N−フェニルグリシンまたは4−ビニル安息香酸である。
【0054】
ラジカル重合性ホスホン酸モノマー、特にビニルホスホン酸、4−ビニルフェニルホスホン酸、4−ビニルベンジルホスホン酸、2−メタクリロイルオキシエチルホスホン酸、2−メタクリルアミドエチルホスホン酸、4−メタクリルアミド−4−メチル−ペンチル−ホスホン酸、2−[4−(ジヒドロキシルホスホリル)−2−オキサ−ブチル]−アクリル酸もしくは2−[2−ジヒドロキシホスホリル)−エトキシメチル]−アクリル酸エチルまたは2,4,6−トリメチルフェニルエステルも、接着性モノマーとして適している。
【0055】
さらに、酸性の重合性リン酸エステル、特に2−メタクリロイルオキシプロピルモノもしくはジハイドロジェンホスフェート、2−メタクリロイルオキシエチルモノもしくはジハイドロジェンホスフェート、2−メタクリロイルオキシエチルフェニルハイドロジェンホスフェート、ジペンタエリスリトール−ペンメタクリロイルオキシホスフェート、10−メタクリロイルオキシデシル−ジハイドロジェンホスフェート、ジペンタエリスリトール−ペンタメタクリロイルオキシホスフェート、リン酸モノ−(1−アクリロイル−ピペリジン−4−イル)−エステル、6−(メタクリルアミド)ヘキシルジハイドロジェンホスフェートおよび1,3−ビス−(N−アクリロイル−N−プロピル−アミノ)−プロパン−2−イル−ジハイドロジェンホスフェートは、接着性モノマーとして適している。
【0056】
さらに、重合性スルホン酸、特にビニルスルホン酸、4−ビニルフェニルスルホン酸または3−(メタクリルアミド)プロピルスルホン酸は、接着性モノマーとして適している。
【0057】
単官能性もしくは多官能性メルカプト化合物と、二官能性もしくは多官能性不飽和モノマー、とりわけ、すべてのアリルまたはノルボルネン化合物の混合物を含有するチオール−エン樹脂は、重付加によって硬化可能な結合剤として特に適している。
【0058】
単官能性もしくは多官能性メルカプト化合物の例は、o、mもしくはp−ジメルカプトベンゼン、およびチオグリコールまたは3−メルカプトプロピオン酸と、エチレン、プロピレンもしくはブチレングリコール、ヘキサンジオール、グリセロール、トリメチロールプロパンまたはペンタエリスリトールとのエステルである。
【0059】
二官能性もしくは多官能性アリル化合物の例は、アリルアルコールとジもしくはトリカルボン酸、例えばマロン酸、マレイン酸、グルタル酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、フタル酸、テレフタル酸または没食子酸のエステル、および単官能性もしくは三官能性アリルエーテル、例えば、ジアリルエーテル、α,ω−ビス[アリルオキシ]アルカン、レゾルシンもしくはハイドロキノンジアリルエーテルおよびピロガロールトリアリルエーテルなど、または、例えば、1,3,5−トリアリル−1,3,5−トリアジン−2,4,6−(1H,3H,5H)−トリオン、テトラアリルシランもしくはテトラアリルオルトシリケートなどの他の化合物である。
【0060】
二官能性もしくは多官能性ノルボルネン化合物の例は、シクロペンタジエンまたはフランと、二官能性もしくは多官能性(メタ)アクリレートとのディールス・アルダー付加生成物、ならびに5−ノルボルネン−2−メタノールまたは5−ノルボルネン−2−オールと、それぞれ、例えばマロン酸、マレイン酸、グルタル酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、フタル酸、テレフタル酸または没食子酸などのジもしくはポリカルボン酸との、およびジもしくはポリイソシアネート、例えばヘキサメチレンジイソシアネートまたはその環状トリマー、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、トルイレンジイソシアネートまたはイソホロンジイソシアネートとのエステルおよびウレタンである。
【0061】
一般式(I)のアシルゲルマニウム化合物に加えて、本発明による組成物は、紫外または可視範囲のための公知の光開始剤(J.P. Fouassier、J.F. Rabek(編)、Radiation Curing in Polymer Science and Technology、II巻、Elsevier Applied Science、London and New York 1993年参照)、例えば:ベンゾインエーテル、ジアルキルベンジルケタール、ジアルコキシアセトフェノン、アシルまたはビスアシルホスフィンオキシド、α−ジケトン、例えば9,10−フェナントレンキノン、ジアセチル、フリル、アニシル、4,4’−ジクロロベンジルおよび4,4’−ジアルコキシベンジル、およびカンファーキノンも有利に含有することができる。
【0062】
二重硬化のために、本発明による組成物は、一般式(I)のテトラアシルゲルマンおよび/または式I’の(アシル)(アルキル)4−kゲルマンに加えて、アゾ化合物、例えば2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)(AIBN)もしくはアゾビス−(4−シアノ吉草酸)、または過酸化物、例えば過酸化ジベンゾイル、過酸化ジラウロイル、過オクタン酸tert−ブチル、過安息香酸tert−ブチルまたはジ−(tert−ブチル)−ペルオキシドを含有することもできる。過酸化物による開始を加速するために、芳香族アミンとの組合せを使用することもできる。有益であることがすでに証明されている酸化還元系は:過酸化ベンゾイルと、アミン、例えばN,N−ジメチル−p−トルイジン、N,N−ジヒドロキシエチル−p−トルイジン、p−ジメチルアミノ安息香酸エチルエステルまたは構造的に関連した系の組合せである。さらに、過酸化物、および例えばアスコルビン酸、バルビツレートまたはスルフィン酸などの還元剤からなる酸化還元系、あるいはヒドロペルオキシドと還元剤および触媒的金属イオンの組合せ、例えばクメンヒドロペルオキシド、チオ尿素誘導体および銅(II)−アセチルアセトネートの混合物なども二重硬化に適している。
【0063】
本発明によれば、1つまたは複数のフィラー、好ましくは有機または無機の微粒子状フィラーを含有する組成物が好ましい。好ましい無機微粒子状フィラーは、10〜200nmの平均粒径を有する、発熱性ケイ酸または沈降ケイ酸、ZrOおよびTiO、またはSiO、ZrOおよび/もしくはTiOの混合酸化物などの酸化物ベースの非晶質の球形ナノ微粒子状フィラー、0.2〜5μmの平均粒子サイズを有する、石英、ガラスセラミックまたはガラス粉末などのミニフィラー、ならびに、三フッ化イッテルビウムまたはナノ微粒子状酸化タンタル(V)または硫酸バリウムなどのX線不透明フィラーである。さらに、繊維状フィラー、例えばナノ繊維、ガラス繊維、ポリアミドまたは炭素繊維も使用することができる。
【0064】
非歯科使用のためには、上記の材料に加えて、ホモおよび/またはコポリマー、好ましくはポリ((メタ)アクリレート)、ビニルポリマー、好ましくはポリスチレンもしくはポリビニルアセテート、または縮合ポリマー、好ましくはポリエステルが、フィラーとして適している。これらのフィラーは、0.5〜100μmの間の平均粒子サイズを有する粉末として好ましくは使用される。それらは、モノマー中に部分的に可溶性である。
【0065】
さらに、本発明による組成物は、必要なら、例えば安定剤、紫外線吸収剤、染料もしくは顔料などのさらなる添加剤、ならびに例えば、水、エタノール、アセトンおよび/もしくは酢酸エチルなどの溶媒、またはスリップ添加剤を含有することができる。
【0066】
本発明による材料は:
(a)0.001〜5wt%の一般式(I)のテトラアシルゲルマン(単数または複数)、
(b)10〜99.9wt%のラジカル重合性結合剤、
(c)0〜85wt%のフィラー、および、任意選択で
(d)0〜70wt%の添加剤(単数または複数)
を好ましくは含有する。
【0067】
別段の指定のない限り、すべての百分率は、その材料の全質量に対するものである。
【0068】
歯科用セメントとして特に適している材料は:
(a)0.001〜5wt%の一般式(I)のテトラアシルゲルマン(単数または複数)、
(b)10〜50wt%のラジカル重合性結合剤、
(c)40〜70wt%のフィラー、および
(d)0〜5wt%の添加剤
を好ましくは含有する。
【0069】
歯科用複合材料として特に適している材料は:
(a)0.001〜5wt%の一般式(I)のテトラアシルゲルマン(単数または複数)、
(b)10〜40wt%のラジカル重合性結合剤、
(c)50〜70wt%のフィラー、および
(d)0〜5wt%の添加剤(単数または複数)
を好ましくは含有する。
【0070】
歯科用コーティング材料として特に適している材料は:
(a)0.001〜5wt%の一般式(I)のテトラアシルゲルマン(単数または複数)、
(b)20〜99.9wt%のラジカル重合性結合剤、
(c)0〜20wt%のナノ微粒子状フィラー、および
(d)0.01〜2wt%の添加剤(単数または複数)、
(e)0〜70wt%の溶媒
を好ましくは含有する。
【0071】
歯科用接着剤として特に適している材料は:
(a)0.001〜5wt%の一般式(I)のテトラアシルゲルマン(単数または複数)、
(b)20〜98.99wt%のラジカル重合性結合剤、
(c)0〜20wt%のナノ微粒子状フィラー、
(d)0.01〜2wt%の添加剤、
(e)0〜50wt%の溶媒、および
(f)1〜20wt%のラジカル重合性接着性モノマー
を好ましくは含有する。
【0072】
歯科補綴物または外科成形体用の材料は:
(a)0.001〜5wt%の一般式(I)のテトラアシルゲルマン(単数または複数)、
(b)30〜99.9wt%のラジカル重合性結合剤、
(c)0〜60wt%のフィラー(単数または複数)、および、任意選択で
(d)0〜3wt%の添加剤(単数または複数)
を好ましくは含有する。
【0073】
プラスチック成形部品用の材料は:
(a)0.001〜5wt%の一般式(I)のテトラアシルゲルマン(単数または複数)、
(b)30〜99.9wt%のラジカル重合性結合剤、
(c)0〜60wt%のフィラー、および、任意選択で
(d)0〜15wt%の添加剤(単数または複数)
を好ましくは含有する。
【0074】
セラミック素地用の材料は:
(a)0.001〜5wt%の一般式(I)のテトラアシルゲルマン(単数または複数)、
(b)0〜40wt%のラジカル重合性結合剤、
(c)40〜90wt%のフィラー、および、任意選択で
(d)0〜20wt%の添加剤(単数または複数)
を好ましくは含有する。
【0075】
一般式(I)のテトラアシルゲルマンを光開始剤として含有する本発明による材料は、光重合物、複合材料、セメント、コーティング材料、プライマーまたは接着剤の調製のために使用され得る。それらは、医療分野における使用、とりわけ、歯科材料、例えば充填複合材料、固定用セメント、接着剤、補綴材料、ベニアリング材料、クラウンもしくはインレーまたはコーティングの調製に特に適している。
【0076】
歯科材料は、主に、損傷した歯を修復するための歯科医による口腔内用途に、すなわち、例えば、歯科用セメント、充填複合材料およびベニアリング材料としての治療用途に適している。しかし、それらは、口腔外で、例えば、歯科修復物、例えば補綴物、人工歯、インレー、アンレー、クラウンおよびブリッジの製造または補修においても使用され得る。
【0077】
さらに、本発明による材料は、外科において、例えば、組織再生での医療での使用のため、補聴器の調製のために、または、眼科において、眼内レンズもしくはコンタクトレンズの調製のために適している。
【0078】
技術的用途では、一般式(I)のテトラアシルゲルマンは、成形体、原型、または地の調製のための光造形法または3次元印刷において、コーティングの分野において、またはマイクロエレクトロニクス、例えば、フォトレジスト技術において、光開始剤として使用され得る。
【0079】
本発明を、実施例を参照して、以下でさらに詳細に説明する。
【実施例】
【0080】
実施例1:
テトラベンゾイルゲルマン(TBGe)の合成
【化6】
【0081】
a)テトラキス(トリメチルシリル)ゲルマン[(MeSi)Ge]の合成
10.00g(1.4mol)のリチウムを、滴下漏斗および均圧管を備えたフラスコに入れ、300mLの乾燥THFを加えた。トリメチルクロロシラン(95ml、0.75mol)を急速に滴下添加し、−78℃で10min撹拌した。次いで、四塩化ゲルマニウム(21ml、0.19mol、THF中1:5で希釈)を、−78℃(約2時間)で非常にゆっくり滴下添加した。添加が終了したら、反応溶液を室温に加熱し、さらに12時間撹拌した。後処理のため、反応混合物を最初にCeliteで濾過し、次いで1M HSO/氷に注ぎ入れた。滴下漏斗中で相分離した後、水相をジエチルエーテルで3回抽出し、合わせた有機相を無水NaSOで脱水し、濾過し、溶媒をロタベーパー(Rotavapor)中で除去した。精製のため、粗生成物を昇華させた(p<5mbar;T>150℃)。昇華後の収量は26.8g(MeSi)Ge(42%)であった。
【0082】
【数1】
【0083】
b)テトラベンゾイルゲルマン(TBGe)の合成
3.00g(8.21mmol;1.00当量)のテトラキストリメチルシリルゲルマンおよび1.01gのKOtBu(9.03mmol;1.1当量)をシュレンクフラスコに秤量し、20mlのエチレングリコールジメチルエーテル(DME)に溶解させた。反応溶液が清澄な黄色〜オレンジ色になったとき、反応は完了した。約1時間後、4.18g(33.66mmol、4.1当量)のフッ化ベンゾイルをシリンジで添加した。反応溶液は黒色になり、添加が完了した後、オレンジ色になった。次いで、反応溶液を室温で終夜撹拌した。3%のHSOでの水による後処理後、相を分離し、水相を、ジエチルエーテルで3回抽出した。合わせた有機相を無水硫酸ナトリウムで脱水し、揮発成分をロータリーエバポレーターで除去した。得られた粗生成物をアセトンから再結晶化させ、1.70gの純粋なテトラベンゾイルゲルマン(42%)を結晶性の黄色固体(融点:82.5〜83.0℃)として得た。
【0084】
【数2】
【0085】
実施例2:
テトラキス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)ゲルマン(TMGe)の合成
【化7】
2.77g(7.66mmol;1.00当量)の(MeSi)Geおよび0.94gのKOtBu(8.4mmol;1.1当量)をシュレンク容器に秤量し、15mlのDMEに溶解させた。反応溶液が清澄な黄色〜オレンジ色になったとき、反応は完了した。約1時間後、得られた溶液を、80mlジエチルエーテル中の1.66g(0.91mmol、1.2当量)の2,4,6−トリメチルベンゾイルクロリドの−78℃に冷却された溶液にゆっくり滴下添加し、得られた混合物を室温で終夜撹拌した。3%のHSOでの水による後処理後、相を分離し、水相を、ジエチルエーテルで3回抽出した。合わせた有機相を無水硫酸ナトリウムで脱水し、揮発成分をロータリーエバポレーターで除去した。3.85gの質量を有する形成された粗生成物は、36%のテトラアシルゲルマニウムおよび64%のモノアシルゲルマニウム化合物を含有しており、これを、シリカゲルでのカラムクロマトグラフィー(勾配:ヘプタン、トルエン)によって分離した。次いで、アセトンからの再結晶化を実施し、1.58g(24%)のテトラキス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)ゲルマンを結晶性の黄色固体(融点:198〜199℃)として得た。
【0086】
【数3】
【0087】
実施例3:
実施例1および2からのテトラベンゾイルゲルマン(TBGe)またはテトラキス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)ゲルマン(TMGe)を使用した光硬化性樹脂の調製
【0088】
種々の光硬化性樹脂系を、ジメタクリレートビス−GMA(メタクリル酸とビスフェノール−A−ジグリシジルエーテルの付加生成物))、UDMA(2−ヒドロキシエチルメタクリレートと2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートの付加生成物)およびDMA(デカンジオール−1,10−ジメタクリレート)の混合物(質量%で与えられた値)、およびGe開始剤であるテトラベンゾイルゲルマン(TBGe)、テトラキス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)ゲルマン(TMGe)およびジベンゾイルジエチルゲルマン(DBEGe、参照として)(表1)から調製した。樹脂系R1およびR4(0.29mmol/100g)またはR2、R3およびR5(0.59mmol/100g)は、同一モル量の光開始剤を含有する。
【表1】
【0089】
試験片を、歯科用光源(Spectramat(登録商標)、Ivoclar Vivadent AG)で3分間、2回照射された材料から作製し、それによって硬化させた。曲げ強度および曲げ弾性率を、ISO標準ISO4049(歯科−ポリマーベースの充填、修復および合着材料)にしたがって、試験片を室温(RT)で24時間貯蔵後に、または37℃、水(WS)中で24時間貯蔵後に、決定した(表2)。
【表2】
【0090】
表2の結果は、光開始剤として本発明によるテトラ(ベンゾイル)ゲルマンTBGeを有する樹脂R1およびR3が、同じモル濃度の光開始剤を有する公知のジ(ベンゾイル)ゲルマンDBEGeをもとにした参照樹脂R4およびR5と比較して(R1をR4と、またはR2をR5と比較する)、改善された強度およびより高い弾性率を有する光重合物をもたらすことを証明している。
【0091】
実施例4:
実施例1および2からのテトラベンゾイルゲルマン(TBGe)またはテトラキス(2,4,6トリメチルベンゾイル)ゲルマン(TMGe)を使用した光硬化性樹脂の調製
【0092】
複合材料ペーストK1〜K5を、ロールミル(「Exakt」モデル、Exakt Apparatebau、Norderstedt)を用いて、実施例3による樹脂R1〜R5から調製した。それぞれの場合、36.44wt%の樹脂R1〜R5に、52.22wt%のシラン化されたガラスフィラーGM27884(1.0μm、Schott)、4.02wt%のシラン化されたガラスフィラーGM G018−056(1.0μm、Schott)、4.02wt%のシラン化されたSiO−ZrO混合酸化物Spherosil(Transparent Materials、USA)、0.80wt%のシラン化された発熱性ケイ酸OX−50(Degussa)および2.50wt%の三フッ化イッテルビウムYbF(Sukgyung、South Korea)を充填した。実施例3と同様にして、試験片をペーストから調製し、硬化させ、曲げ強度および弾性率を決定した(表3)。
【表3】
【0093】
表3の結果は、光開始剤として本発明によるテトラ(ベンゾイル)ゲルマンTBGeを有する複合材料ペーストK1およびK3が、同一モル濃度の光開始剤を有する公知のジ(ベンゾイル)ゲルマンDBEGeをもとにした参照ペーストK4およびK5と比較して(K1をK4と、またはK2をK5と比較する)、硬化後、改善された強度およびより高い弾性率を有する複合材料をもたらすことを証明している。
本発明の実施形態において、例えば以下の項目が提供される。
(項目1)
一般式(I)によるアシルゲルマニウム化合物であって、
[RAr−(C=O)−]−Ge (I)
式中、変数は以下の意味を有する:
Arは、R基でm回置換されていてよく、環中に1個または複数のヘテロ原子を含有することができる、6〜18個の環炭素原子を有する単環式または多環式炭化水素基であり、ここで、
mは0〜6の整数であり、Ar中の置換可能な水素原子の数より大きいことはあり得ず、Rは、ハロゲン、NR、OH、OSiR、(C=O)R、CN、NO、CF、COOR、または、直鎖状、分枝状もしくは環状であってよく、1個もしくは複数のO原子で介在されていてよく、ラジカル重合性基を含有することができるC〜C20−アルキル、−アルケニル、−アルコキシもしくは−アルケノキシ基、または=Oであり、ここで、
〜Rは、互いに独立に、それぞれの場合、H、または直鎖状もしくは分枝状C〜C12−アルキル基であり、
は、H、直鎖状もしくは分枝状C〜C12−アルキル基、またはSiRであり、ここで、
は、直鎖状または分枝状C〜C10−アルキル基である、
アシルゲルマニウム化合物。
(項目2)
前記変数が以下の意味を有する:
Arは、Rでm回置換されていてよい芳香族C〜C10基であり、
mは1〜3の整数であり、
Rは、Cl、NR、OSiR、(C=O)R、CN、NO、CF、COOR、または、直鎖状、分枝状もしくは環状であってよく、1個もしくは複数のO原子で介在されていてよく、ラジカル重合性基、好ましくはビニル、メタクリレート、(メタ)アクリルアミドもしくはN−アルキルアクリルアミドを含有することができるC〜C10−アルキル、−アルケニル、−アルコキシもしくは−アルケノキシ基であり、ここで、非環状基の場合、前記ラジカル重合性基は好ましくは末端にあり、ここで、
〜Rは、互いに独立に、それぞれの場合、H、または直鎖状もしくは分枝状C〜C−アルキル基であり、
は、H、直鎖状もしくは分枝状C〜C−アルキル基、またはSiR10であり、
は、直鎖状または分枝状C〜Cアルキル基である、
項目1に記載のアシルゲルマニウム化合物。
(項目3)
前記変数が以下の意味を有する:
Arは、Rでm回置換されていてよいフェニル基、ピリジル基、ナフチル基、アントリル基、アントラキノン−イル基であり、ここで、
mは1〜3の整数であり、
Rは、NR、CN、NO、CF、好ましくは直鎖状であり、末端のラジカル重合性基、好ましくはビニル、アクリレート、メタクリレートを有することができるC〜C−アルキル基またはC〜C−アルコキシ基であり、ここで、
は、H、または好ましくは直鎖状C〜C−アルキル基である、
項目1または2に記載のアシルゲルマニウム化合物。
(項目4)
組成物の全質量に対して、0.001〜5wt%の、項目1〜3のいずれか一項に記載の式(I)のアシルゲルマニウム化合物および少なくとも1つの重合性結合剤を含有する組成物。
(項目5)
重合性結合剤として、少なくとも1つのラジカル重合性モノマーおよび/またはプレポリマーを含有する、項目4に記載の組成物。
(項目6)
結合剤として、少なくとも1つの単官能性もしくは多官能性(メタ)アクリレートまたはその混合物を含有する、項目5に記載の組成物。
(項目7)
それぞれの場合、前記組成物の全質量に対して、
0.001〜5wt%の式(I)のアシルゲルマニウム化合物、
10〜99.9wt%の重合性結合剤、
0〜85wt%のフィラー
を含有する、項目4〜6の一項に記載の組成物。
(項目8)
ラジカル重合の開始剤としての、式(I)によるアシルゲルマンの使用。
(項目9)
式I’の(アリールアシル)(アルキル)4−kゲルマン(k=1〜4)の調製のための方法であって、式(R’Si)GeR”4−k(II)の(トリアルキルシリル)ゲルマンが、塩基の存在下で、アリールアシルハライド(III)と反応させられてI’、
【化8】

(式中、
R’は、1〜6個のC原子を有するアルキル基であり、
R”は、1〜12個のC原子を有するアルキル基であり、
XはF、Cl、BrまたはIであり、
kは1〜4の整数であり、
Rは、項目1、2または3に与えられた意味を有する)
を形成する、方法。
(項目10)
アルカリ金属アルコレート、アルカリ金属アミドまたはアルカリ金属有機化合物が塩基として使用される、項目9に記載の方法。
(項目11)
以下の化合物:
【化9】

の1つが式IIIのアリールアシルハライドとして使用される、項目9または10に記載の方法。
(項目12)
トリメチルシリルゲルマン(R’Si)GeR”4−k(II)が、最初に前記塩基と反応させられて(R’Si)k−1R”4−kGeM(ここで、Mは金属イオンである)を形成し、次いで、(R’Si)k−1R”4−kGeMが前記式(III)のアシルハライドで式(I)の化合物へ転換させられる、項目9〜11の一項に記載の方法。
(項目13)
式(II)の化合物が、式ClGeR”4−k(IV)の塩化ゲルマニウムを式R’SiCl(V)のトリアルキルシリルクロリドと反応させることによって調製される:
【化10】

項目9〜12の一項に記載の方法。
(項目14)
式(MeSi)GeR”4−k(II’)のトリメチルシリルゲルマンが、最初にカリウムtert−ブチレート(KOtBu)と反応させられ、次いで式(III)のアシルハライド(X=FまたはCl)と反応させられる、項目9〜13の一項に記載の方法。
(項目15)
式(I)の化合物を得るために、式(R’Si)Geのテトラ(トリアルキルシリル)ゲルマンが、塩基の存在下で、式(III)のアシルハライドと反応させられる、項目9〜14の一項に記載の方法。