【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の目的は、改善された反応性および硬化特徴によって特徴付けられ、特に、長波長範囲内の可視光によって活性化され得る可視範囲のための光開始剤を提供することである。本発明のさらなる目的は、アシルゲルマンの調製のための簡易化されたプロセスを提供することである。
【0015】
この目的は、一般式(I):
[R
mAr−(C=O)−]
4−Ge (I)
に対応するテトラまたはテトラキス−アシルゲルマンによって達成され、
ここで、これらの変数は以下の意味を有する:
Arは、R基でm回置換されていてよく、その環中に1個もしくは複数のヘテロ原子を含有することができる、6〜18個の環炭素原子を有する単環式または多環式炭化水素基であり、ここで、
mは、0〜6の整数であり、Ar中の置換可能な水素原子の数より大きいことはあり得ず、
Rは、ハロゲン、NR
12、OH、OSiR
23、(C=O)R
3、CN、NO
2、CF
3、COOR
4、直鎖状、分枝状もしくは環状であってよく、1個もしくは複数のO原子で介在されていてよく、ラジカル重合性基を有することができるC
1〜C
20−アルキル、−アルケニル、−アルコキシもしくは−アルケノキシ基、または=Oであり、ここで、
R
1〜R
3は、互いに独立に、それぞれの場合、H、または直鎖状もしくは分枝状C
1〜C
12−アルキル基であり、
R
4は、H、直鎖状もしくは分枝状C
1〜C
12−アルキル基、またはSiR
53であり、ここで、
R
5は直鎖状または分枝状C
1〜C
10アルキル基である。
【0016】
複数のR基が存在する(m>1)場合、これらは、異なっていても、好ましくは同一であってもよい。R基中に置換基として存在することができる好ましいラジカル重合性基は、ビニル、スチリル、アクリレート(CH
2=CH−CO−O−)、メタクリレート(CH
2=C(CH
3)−CO−O−)、アクリルアミド(CH
2=CH−CO−NR
6−(R
6=HまたはC
1〜C
8−アルキルである))、メタクリルアミド(CH
2=C(CH
3)−CO−NH−)、特に好ましくは(メタ)アクリレート、メタクリルアミドおよび/またはN−アルキルアクリルアミドである。R基(単数または複数)は、好ましくは0〜3個、特に0〜1個のラジカル重合性基を含む。非環状基では、重合性基は、好ましくは、末端に配置される。
【0017】
化学命名法の規則によれば、Arが置換されていない基である化合物は、テトラアシルゲルマンと称されるべきであり、Arが置換されている化合物は、テトラキス(アシル)ゲルマンと称されなければならない。簡単にするために、ここでは、テトラアシルゲルマンという用語を、両方の化合物群のために使用する。
【0018】
Arは、少なくとも1つの芳香環、特に好ましくは芳香族炭化水素基を含有する多環式炭化水素基であることが好ましい。少なくとも1つの芳香環を有する好ましい多環式炭化水素基は、アントラキノンおよびナフトキノンである。ベンゼン基に加えて、特に、ナフタレン、アントラセン、フェナントレンおよびナフタセン基などの縮合芳香族基が芳香族炭化水素基として好ましい。
【0019】
Arは、環中に、1個または複数、好ましくは1〜2個のヘテロ原子を含有することができる。好ましいヘテロ原子はO、S、特に好ましくはNである。特に好ましいヘテロ芳香族基は、ピリジン、ピリミジンおよびキノリンである。
【0020】
例えばラセミ化合物などの、種々の立体異性形態のすべての立体異性形態および混合物は、式(I)および本明細書で示される他の式によって包含される。これらの式は、化学原子価理論に適合する化合物だけを包含する。例えば、mは、Ar基中の置換可能な水素原子の数より大きくてはならない。Rが2つの結合を介してArと結合している場合、可能なR基の最大数は、それに応じてより少なくなる。
【0021】
ある基がOなどのヘテロ原子によって介在され得る表示は、そのO原子が、その基の炭素鎖または炭素環中に挿入されている、すなわち、炭素原子によってその両側が隣接されていることを意味するものと理解されるべきである。したがって、ヘテロ原子の数は、炭素原子の数より少なくとも1個少なく、そのヘテロ原子は末端にあってはならない。炭素原子およびヘテロ原子を含有する炭化水素基の場合、ヘテロ原子の数は、置換基に関係なく、炭素原子の数より常に少ない。
【0022】
ハロゲン(Halと略記される)は、好ましくはF、Cl、BrまたはI、特にF、Cl、非常に好ましくはClを表す。
【0023】
変数が以下の意味を有する一般式(I)に対応するテトラアシルゲルマンが特に好ましい:
Arは、Rでm回置換されていてよい芳香族C
6〜C
10基であり、ここで、
mは1〜3の整数であり、
Rは、Cl、NR
12、OSiR
23、(C=O)R
3、CN、NO
2、CF
3、COOR
4、または、直鎖状、分枝状もしくは環状であってよく、1個もしくは複数のO原子で介在されていてよく、ラジカル重合性基、好ましくはビニル、メタクリレート、(メタ)アクリルアミドもしくはN−アルキルアクリルアミドを含有することができるC
1〜C
10−アルキル、アルケニル、アルコキシもしくはアルケノキシ基であり、ここで、非環状基の場合のラジカル重合性基は、好ましくは末端にあり、ここで、
R
1〜R
3は、互いに独立に、それぞれの場合、H、または直鎖状もしくは分枝状C
1〜C
8−アルキル基であり、
R
4は、H、直鎖状もしくは分枝状C
1〜C
8−アルキル基、またはSiR
53であり、
R
5は直鎖状または分枝状C
1〜C
5アルキル基である。
【0024】
一般式(I)によるテトラアシルゲルマンは、その変数が、以下の意味を有することがさらに好ましい:
Arは、Rでm回置換されていてよいフェニル基、ピリジル基、ナフチル基、アントリル基、アントラキノニル基であり、ここで、
mは1〜3の整数であり、
Rは、NR
12、CN、NO
2、CF
3、好ましくは直鎖状であり、末端のラジカル重合性基、好ましくはビニル、アクリレート、メタクリレートを有することができるC
1〜C
3−アルキル基またはC
1〜C
3−アルコキシ基であり、ここで、
R
1は、H、または好ましくは直鎖状C
1〜C
3−アルキル基である。
【0025】
Arがフェニル基であり、m=1である場合、R基は、イル位に対してパラ位に位置することが好ましく、m=2または3である場合、R基は、イル位に対してオルト位およびパラ位に位置することが好ましい。個々の変数の好ましい意味、および特に好ましい意味は、それぞれの場合、互いに独立に選択され得る。
【0026】
非常に好ましいのは、Arが、Rでm回置換されているフェニル基である式(I)の化合物である。mは好ましくは1〜3、特に好ましくは1であり、Rは好ましくは電子供与基、特にアルコキシ基である。
【0027】
本発明によれば、400nm〜700nm、特に好ましくは400〜550nmで吸収極大を有する式(I)の化合物、例えば、テトラベンゾイルゲルマニウムまたはテトラ(4−メトキシベンゾイル)ゲルマニウムなどが好ましい。式(I)の化合物の吸収スペクトルは、R基を選択することによって、標的化した仕方で調節され得る。例えば、NO
2またはCN置換基は吸収スペクトルの深色移動をもたらす。すなわち、R基の1つまたは複数がCNである化合物は、より長い波長を有する光を吸収し、その結果、重合を、より長い波長範囲の可視光によって開始させることができる。
【0028】
一般式(I)のテトラアシルゲルマンは、最新技術で公知ではなく、従来の方法で調製することはできない。これらの化合物は、高い反応性、すなわち優れた重合開始効果、および可視光での照射による良好な全体硬化深さによって特徴付けられる。これは、歯科材料の場合、特に歯牙充填複合材料の場合だけでなく、非歯科的使用の場合にも大きな利点である。
【0029】
驚くべきことに、塩基およびアリールアシルハライド(III)の存在下で、式(R’
3Si)
kGeR”
4−k(II)の(トリアルキルシリル)ゲルマンを反応させることによって、式I’の(アリールアシル)
k(アルキル)
4−kゲルマンを調製できることを見出した。
【化1】
ここで:
R’は、1〜6個、好ましくは1〜4個のC原子を有するアルキル基、特に好ましくはCH
3であり、
R”は、1〜12個、好ましくは1〜6個、特に好ましくは1〜4個のC原子を有するアルキル基、非常に好ましくはCH
3、C
2H
5またはC
4H
9であり、
Xは、F、Cl、BrまたはI、好ましくはFまたはClであり、
kは1〜4の整数であり、
Rは上記の意味を有する。
【0030】
R’およびR”の場合、直鎖状アルキル基がすべての場合において好ましい。
【0031】
アルカリ金属アルコレート、特に好ましくはカリウムtert−ブチレート、アルカリ金属アミド、特に好ましくはリチウムジイソプロピルアミド、またはアルカリ金属有機化合物、特に好ましくはn−ブチルリチウムは、塩基として使用するのに好ましい。
【0032】
式IIIの好ましいアリールアシルハライドは、ArおよびR基の好ましい定義および特に好ましい定義から直接誘導される。以下の化合物はこの例である:
【化2】
【0033】
最初に、トリメチルシリルゲルマン(R’
3Si)
kGeR”
4−k(II)を塩基と反応させて(R’
3Si)
k−1R”
4−kGeM(ここで、Mは金属イオン、好ましくはアルカリ土類、特にアルカリ金属イオンである)を形成させ、次いで、(R’
3Si)
k−1R”
4−kGeMを、式(III)のアシルハライドで、式(R’
3Si)
k−1R”
4−kGe(C=O)ArR
mの化合物へ転換させることが好ましい。この方法では、式(II)の(R’
3Si)基は、逐次的に、−(C=O)ArR
m基と交換される。中間生成物(R’
3Si)
k−1R”
4−kGeMは好ましくは単離されない。
【0034】
本発明による方法で、式(I’)のアシルゲルマンを、高純度および良好な収率で調製することができる。特別な利点は、硫黄含有保護基を使用したコストの高い保護基技術の使用を回避できることである。硫黄含有不純物は、非常な困難を伴ってしか、生成物から除去することができず、微量の硫黄含有基であっても、最終生成物に不快な臭気をもたらす。
【0035】
式(I’)のアシルゲルマンの合成に必要な出発材料(R’
3Si)
kGeR”
4−k(II)は、好ましくは、対応する塩化ゲルマニウムCl
kGeR”
4−k(IV)を、式R’
3SiBrのトリアルキルシリルブロミド、または好ましくは式R’
3SiCl(V)のトリアルキルシリルクロリドと反応させることによって調製することができる:
【化3】
【0036】
このため、最初に、R’
3SiBr、または好ましくはR’
3SiCl(好ましくは0.9〜1.1k、特に好ましくは0.99k当量)を、好ましくは、適切な溶媒中の微細に分散したLi(好ましくは1.7〜2.2k、特に好ましくは1.85k当量)の懸濁液に加え、次いで塩化ゲルマニウム(好ましくは1当量)の溶液をゆっくり加える。それぞれの場合、エーテル、特に好ましくはTHFを溶媒として使用することが好ましい。使用される溶媒の量は、好ましくは20〜40ml/gのLi、非常に好ましくは30ml/gのLi、または1〜5ml/gのGeCl
4、非常に好ましくは2.5ml/gのGeCl
4である。反応温度は、好ましくは+30〜−100℃、特に好ましくは−78℃である。生成混合物の後処理は、好ましくは珪藻土(Celite(登録商標))による濾過、好ましくはH
2SO
4/氷の混合物での酸加水分解、相分離、および続く、好ましくは蒸留による溶媒の除去によって実施することが好ましい。生成物は、結晶化、昇華または蒸留によって有利に単離することができる。
【0037】
本発明による方法の特に好ましい実施形態によれば、式(I’)のアシルゲルマンは、トリメチルシリルゲルマン(Me
3Si)
kGeR”
4−k(II’)をカリウムtert−ブチレート(KOtBu)と反応させ、次いでその中間体をアシルハライド(III)(X=FまたはCl)と反応させることによって調製することができる:
【化4】
【0038】
(Me
3Si)
k−1R”
4−kGeKを形成させるために、(Me
3Si)
kGeR”
4−k(好ましくは1当量)およびKOtBu(好ましくは0.9〜4当量、特に好ましくは1.1当量)を、最初に、適切な溶媒に溶解し、反応が完了するまで混合することが好ましい。溶媒として、エーテル、特に好ましくはDME(ジメトキシエタン)を使用することが好ましい。使用される溶媒の量は、好ましくは10〜60ml/gのKOtBu、特に好ましくは20ml/gのKOtBuである。反応温度は、好ましくは+80〜−30℃、特に好ましくは+25℃であり、反応時間は、好ましくは0.5〜3時間、特に好ましくは1時間である。
【0039】
次いで、式(I’)のアシルゲルマンを得るために、アシルハライド(III)(好ましくは1.0〜1.5当量)を加え、反応が完了するまで撹拌する。アシルハライド(III)は、そのままでも、また溶液でも使用することができ、ここで、溶媒の量は、好ましくは0〜200ml、特に好ましくは100ml/mmolのアシルハライドである。エーテル、特に好ましくはジエチルエーテルを溶媒として使用することが好ましい。反応温度は、好ましくは+30〜−100℃、非常に好ましくは−78℃である。反応時間は、好ましくは0.5〜48時間、特に好ましくは24時間である。生成混合物の後処理は、好ましくはH
2SO
4/氷の混合物での酸加水分解、相分離、および例えば蒸留による溶媒の除去によって実施することが好ましい。生成物は、カラムクロマトグラフィーおよび結晶化によって、好ましくは結晶化だけによって単離することができる。
【0040】
同様に、モノアシルトリアルキルゲルマン、ビスアシルジアルキルゲルマンおよびトリスアシルモノアルキルゲルマンを、式(II)のモノ、ビス−、トリ−またはテトラ(トリアルキルシリル)ゲルマンを式(III)のアシルハライドと反応させることによって、直接、保護基技術なしで生成させることができる。
【0041】
k=4である式(I’)のテトラアシルゲルマンは、本方法によって初めて到達可能である。このため、式(R’
3Si)
4Geのトリアルキルシリルゲルマニウムを、上記したような仕方で、塩基の存在下で式(III)の芳香族アリールハライドと反応させる。トリアルキルシリルゲルマニウム(R’
3Si)
4Geは、四塩化ゲルマニウムを、R’
3SiClおよび金属Liと反応させることによって調製することができる。
【0042】
式(I)のテトラアシルゲルマンは、テトラキス(トリメチルシリル)ゲルマニウム(Me
3Si)
4Geをカリウムtert−ブチレート(KOtBu)と反応させ、次いで、式(III)のアシルハライド(X=FまたはCl)と反応させることによって、上記したように特に有利に調製することができる:
【化5】
【0043】
アシルハライド(III)を、好ましくは1.0〜5当量、特に好ましくは4.1当量の量で加え、反応が完了するまで混合する。アシルハライドは、説明したようにそのままでも、また溶液でも使用することができる。