【実施例】
【0227】
以下の実施例は、当業者に、本発明の方法および組成物を、どのようにして作製および使用するのかについての、完全な開示および記載をもたらすように明示されるものであり、本発明者らが、自らの発明と考えるものの範囲を限定することを意図するものではない。使用される数(例えば、量、温度など)に関しては、精度を確保するように努めているが、一部の実験の誤差および偏差については、説明するものとする。そうでないことが指し示されない限りにおいて、部は、重量部であり、分子量は、平均分子量であり、温度は、摂氏度であり、室温は、約25℃であり、圧力は、大気圧または大気圧付近である。
【0228】
(実施例1:LAG3に対するヒト抗体の作出)
LAG3に対するヒト抗体は、マウスFc領域へとカップリングさせた、GenBank受託番号:NP_002277.4(配列番号582)のうちの、ほぼアミノ酸29〜450の範囲のLAG3の断片を使用して作出した。免疫原は直接、免疫応答を刺激するアジュバントと共に、US8502018B2に記載されている、VELOCIMMUNE(登録商標)マウス(すなわち、ヒト免疫グロブリンの重鎖可変領域およびカッパ軽鎖可変領域をコードするDNAを含む操作マウス)またはWO2013022782に記載されている、ヒト化Universal Light Chain(ULC)VelocImmune(登録商標)マウスへと投与した。抗体の免疫応答は、LAG3特異的イムノアッセイによりモニタリングした。所望の免疫応答を達成したら、脾臓細胞を採取し、それらの生存度を保存し、ハイブリドーマ細胞系を形成するように、マウス骨髄腫細胞と融合させた。LAG3特異的抗体を産生する細胞系を同定するように、ハイブリドーマ細胞系をスクリーニングおよび選択した。この技法および上記で記載した免疫原を使用して、いくつかの抗LAG3キメラ抗体(すなわち、ヒト可変ドメインと、マウス定常ドメインとを保有する抗体)を得、このようにして、VELOCIMMUNE(登録商標)マウスから作出した例示的な抗体を、H1M14985N、H1M14987N、H2M14811N、H2M14885N、H2M14926N、H2M14927N、H2M14931N、H2M18336N、H2M18337N、およびH4H14813Nと命名した。
【0229】
抗LAG3抗体はまた、参照によりその全体において本明細書に具体的に組み込まれる米国特許第7,582,298号において記載されている通り、骨髄腫細胞への融合を伴わずに、抗原陽性B細胞(免疫化されたマウスのいずれかに由来する)からも直接単離した。この方法を使用して、いくつかの完全ヒト抗LAG3抗体(すなわち、ヒト可変ドメインと、ヒト定常ドメインとを保有する抗体)を得、この方式で作出した例示的な抗体を、以下:H4H15477P、H4H15483P、H4H15484P、H4H15491P、H4H17823P、H4H17826P2、H4H17828P2、H4sH15460P、H4sH15462P、H4sH15463P、H4sH15464P、H4sH15466P、H4sH15467P、H4sH15470P、H4sH15475P、H4sH15479P、H4sH15480P、H4sH15482P、H4sH15488P、H4sH15496P2、H4sH15498P2、H4sH15505P2、H4sH15518P2、H4sH15523P2、H4sH15530P2、H4sH15555P2、H4sH15558P2、H4sH15567P2、およびH4H17819Pの通りに命名した。
【0230】
例示的な抗体であるH4sH15496P2、H4sH15498P2、H4sH15505P2、H4sH15518P2、H4sH15523P2、H4sH15530P2、H4sH15555P2、H4sH15558P2、およびH4sH15567P2は、ULC Velocimmune(登録商標)マウスに由来するB細胞から作出した。
【0231】
本実施例の方法に従い作出される、例示的な抗体の生物学的特性を、下記に明示される実施例に詳細に記載する。
【0232】
(実施例2:重鎖可変領域および軽鎖可変領域のアミノ酸配列およびヌクレオチド配列)
表1は、本発明の選択された抗LAG3抗体の、重鎖可変領域および軽鎖可変領域ならびにCDRの、アミノ酸配列の識別子を明示する。対応する核酸配列の識別子は、表2に明示する。
【表1-1】
【表1-2】
【表2-1】
【表2-2】
【0233】
本明細書では、以下の命名法:Fc接頭辞(例えば、「H1M」、「H4sH」、「H4H」など)、その後に数字による識別子(例えば、表1に示す、「14813」、「17828」など)、その後に「P」、「P2」、または「N」の接尾辞に従い、抗体に言及することが典型的である。こうして、本明細書では、この命名法に従い、抗体に、例えば、「H4sH14813N」、「H4H17819P」、「H4H17828P2」などとして言及することができる。本明細書で使用される抗体の呼称における、H4sHおよびH4Hの接頭辞は、抗体の特定のFc領域のアイソタイプを指し示す。例えば、「H4sH」抗体は、US20140243504(その全体において本明細書に組み込まれる)において開示されている通り、2つまたはこれを超えるアミノ酸変化を伴うヒトIgG4 Fcを有し、「H4H」抗体は、ヒンジ領域内にセリンからプロリンへの変異(S108P)を伴うヒトIgG4 Fcを有し、「H1M」抗体は、マウスIgG1Fcを有し、「H2M」抗体は、マウスIgG2 Fc(抗体呼称中の第1の「H」により表示される通り、全ての可変領域は、完全ヒト可変領域である)を有する。当業者により察知される通り、特定のFcアイソタイプを有する抗体は、異なるFcアイソタイプを伴う抗体へと転換することができる(例えば、マウスIgG1 Fcを伴う抗体は、ヒトIgG4を伴う抗体へと転換することができるなど)が、いずれにせよ、可変ドメイン(CDRを含む)(表1に、数字による識別子で示す)は、依然として同じであり、抗原への結合特性は、Fcドメインの性質に拘わらず、同一であるかまたは実質的に同様であることが予測される。
【0234】
ある特定の実施形態では、マウスIgG1 Fcを伴う、選択された抗体を、ヒトIgG4 Fcを伴う抗体へと転換した。ある特定の実施形態では、抗体は、US20100331527(その全体において本明細書に組み込まれる)において開示される通り、2つまたはこれを超えるアミノ酸変化を伴うヒトIgG4 Fcを含む。一実施形態では、IgG4 Fcドメインは、二量体の安定化を促進するように、ヒンジ領域内にセリンからプロリンへの変異(S108P)を含む。ある特定の実施形態では、本発明の抗体のFc領域は、配列番号569、570、571、572、または573のアミノ酸配列を含む。表3は、ヒトIgG4 Fcを伴う、選択された抗LAG3抗体の、重鎖配列および軽鎖配列のアミノ酸配列の識別子を明示する。
【表3】
【0235】
表3中の各重鎖配列は、可変領域(V
HまたはHCVR;HCDR1、HCDR2、およびHCDR3を含む)および定常領域(C
H1ドメイン、C
H2ドメイン、およびC
H3ドメインを含む)を含んだ。表3中の各軽鎖配列は、可変領域(V
LまたはLCVR;LCDR1、LCDR2、およびLCDR3を含む)および定常領域(C
L)を含んだ。配列番号577は、アミノ酸1〜123を含むHCVRと、アミノ酸124〜449を含む定常領域とを含んだ。配列番号578は、アミノ酸1〜107を含むLCVRと、アミノ酸108〜214を含む定常領域とを含んだ。配列番号579は、アミノ酸1〜123を含むHCVRと、アミノ酸124〜450を含む定常領域とを含んだ。配列番号580は、アミノ酸1〜119を含むHCVRと、アミノ酸120〜445を含む定常領域とを含んだ。配列番号581は、アミノ酸1〜107を含むLCVRと、アミノ酸108〜214を含む定常領域とを含んだ。
【0236】
以下の実施例で使用される対照構築物
比較を目的として、以下の実験には、2つの対照構築物(抗LAG3抗体):「対照薬(comparator)1」:WO2010/019570に従い、抗体「25F7」のV
H/V
L配列を有する、LAG3に対するヒトモノクローナル抗体;および「対照薬2」:US2014/0093511に従い、抗体「v3.5」のV
H/V
L配列を有する、LAG3に対するヒトモノクローナル抗体を含めた。
【0237】
(実施例3:表面プラズモン共鳴により決定される、抗体の、LAG3への結合)
抗原の、精製抗LAG3抗体への結合についての、結合の会合速度定数および解離速度定数(それぞれ、k
aおよびk
d)、平衡解離定数および解離半減期(それぞれ、K
Dおよびt
1/2)は、BiaCore 4000測定器上またはBiaCore T200測定器上の、リアルタイム表面プラズモン共鳴バイオセンサーアッセイを使用して決定した。それぞれ、マウスFcまたはヒトFcと共に発現させる、約50〜85RUの抗LAG3モノクローナル抗体を捕捉するのに、BiaCoreセンサー表面を、ウサギ抗マウスポリクローナル抗体(GE;型番BR−1008−38)、またはマウス抗ヒトFcモノクローナル抗体(GE;型番BR−1008−39)で誘導体化した。抗LAG3抗体への結合について試験されるLAG3試薬は、C末端のmyc−myc−ヘキサヒスチジンタグ(hLAG3−mmh;配列番号574)と共に発現させる、組換えヒトLAG3、およびC末端のマウスIgG2a mFcタグ(hLAG3−mFc;配列番号575)と共に発現させる組換えヒトLAG3を含んだ。異なる濃度(50、25、12.5、および6.25nM)のLAG3試薬を、BiaCore T200上の流量50μL/分で、抗LAG3モノクローナル抗体を捕捉した表面上に注入した。LAG3試薬の、捕捉されたモノクローナル抗体への結合は、4分間にわたりモニタリングし、HBSTランニングバッファー(0.01MのHEPES pH7.4、0.15MのNaCl、3mMのEDTA、0.05%v/vのSurfactant P20)中でそれらの抗体からの解離は、8分間にわたりモニタリングした。実験は、25℃および37℃で実施した。動力学的な会合速度定数(k
a)および解離速度定数(k
d)は、Scrubber2.0c曲線当てはめソフトウェアを使用して、1:1結合モデルに照らして、データを加工し、これに当てはめることにより決定した。次いで、結合解離平衡定数(K
D)および解離半減期(t
1/2)を、K
D(M)=k
d/k
aおよびt
1/2(分)=[ln2/(60
*k
d)]としての動力学的な速度定数から計算した。
【0238】
25℃および37℃における、異なる抗LAG3モノクローナル抗体の、単量体(mmHでタグ付けした)または二量体(mFcでタグ付けした)のLAG3試薬への結合についての結合動態パラメータを、表4〜7に示す。
【表4】
【0239】
表4は、25℃において、本発明の全ての抗LAG3抗体が、49pM〜10nMの範囲のK
D値で、hLAG3−mmhに結合したのに対し、比較薬は、0.58nMおよび0.8nMのK
D値で結合したことを示す。
【表5】
【0240】
表5は、37℃において、本発明の全ての抗LAG3抗体が、32pM〜7.66nMの範囲のK
D値で、hLAG3−mmhに結合したのに対し、比較薬は、2.1nMおよび3.0nMのK
D値で結合したことを示す。
【0241】
表4および5のデータは、全ての抗LAG3抗体が、25℃および37℃のいずれにおいても、単量体のhLAG3−mmhに、極めて類似したアフィニティーで結合することを指し示す。
【表6】
【0242】
表6は、25℃において、本発明の全ての抗LAG3抗体が、4.3pM〜1.0nMの範囲のK
D値で、hLAG3二量体タンパク質に結合したのに対し、比較薬は、97pMおよび0.16nMのK
D値で結合したことを示す。
【表7】
【0243】
表7は、37℃において、本発明の全ての抗LAG3抗体が、4.0pM〜0.9nMの範囲のK
D値で、hLAG3二量体タンパク質に結合したのに対し、比較薬は、0.26nMおよび0.45nMのK
D値で結合したことを示す。
【0244】
表6および7のデータは、全ての抗LAG3抗体が、25℃および37℃のいずれにおいても、hLAG3二量体試薬に、類似したアフィニティーで結合することを指し示す。
【0245】
(実施例4:Octetによる、抗LAG3抗体の間の交差競合)
2つの抗体が、単量体ヒトLAG3(hLAG3.mmh)への結合について、互いと競合するのかどうかについて評価するため、Octet RED384バイオセンサー(Pall ForteBio Corp.)上の、リアルタイム無標識バイオレイヤー干渉アッセイを使用して、抗LAG3モノクローナル抗体の間の結合の競合を決定した。交差競合実験は、1000rpmの速度でプレートを振とうさせながら、0.01MのHEPES pH7.4、0.15MのNaCl、0.05%v/vの界面活性剤であるTween−20、0.1mg/mLのBSA(Octet HBS−P緩衝液)中、25℃で行った。全ての被験抗LAG3抗体および被験hLAG3溶液は、Octet HBS−P緩衝液中で処方した。2つの抗体が、hLAG3への結合について、互いと競合することが可能であるのかどうかについて評価するため、まず、約0.6〜0.85nMのhLAG3.mmhを、5μg/mLのhLAG3を含有するウェルから、抗HisでコーティングされたOctetバイオセンサーチップ上に、75秒間にわたり捕捉した。hLAG3を捕捉したOctetバイオセンサーチップを、50ug/mlの、第1の抗LAG3モノクローナル抗体(本実施例では、mAb−1と称する)を含有するウェル内に、5分間にわたり浸漬し、その後に第2の抗LAG3モノクローナル抗体(本実施例では、mAb−2と称する)を含有するウェル内に浸漬することにより飽和させた。各ステップの間に、Octetバイオセンサーチップを、HBS−P緩衝液中で、30秒間にわたり洗浄した。
【0246】
リアルタイムの結合応答を、実験の経過中にモニタリングし、あらゆるステップの終了時における結合応答を記録した。hLAG3の、mAb−1への結合の応答、次いで、遮断mAbへの結合の応答を、バックグラウンドの結合に照らして補正し、比較し、異なる抗Lagモノクローナル抗体の競合的/非競合的挙動を決定した。
【0247】
表8は、結合の順序に依存しない、いずれの方向にも競合する抗体の関連性を明白に規定する。
【表8】
【0248】
(実施例5:フローサイトメトリーにより決定される、抗体の、LAG3を過剰発現する細胞への結合)
組換えhLAG3(NCBI受託番号:NP_002277.4)、またはサルLAG3(mfLAG3)[アカゲザル(Macaca mulata)配列:NCBI受託番号:XP_001108923.1に基づき、アミノ酸74位における「X」を、プロリンで置きかえるように、カニクイザル配列:NCBI受託番号:XP_005570011.1をさらに修飾した](配列番号576)を、細胞表面において発現する安定的な細胞系である、HEK293細胞(HEK293;ATCC番号:CRL−1573)を開発し、本発明の抗LAG3モノクローナル抗体の結合特異性を、フローサイトメトリー解析により決定するのに使用した。
【0249】
抗LAG3抗体の結合を、以下の通りに評価した。hLAG3またはmfLAG3を発現する、安定的なHEK293細胞を、D−PBS(Irvine Scientific型番9240)で1回洗浄し、トリプシン処理し(Specialty Media型番SM−2004−C)、HEK293細胞の培養培地(DME+10%FBS+P/S/G+非必須アミノ酸)でブロッキングした。遠心分離の後、細胞を、染色緩衝液(D−PBS+2%のFBS)中1mL当たりの細胞2.0×10
6個で再懸濁させた。抗体なしで緩衝液だけの対照を含む、抗LAG3抗体およびアイソタイプ対照を、染色緩衝液中に、5pM〜100nMの範囲の用量で系列希釈した。系列希釈された抗体を、細胞懸濁物へと添加し、氷上で15〜30分間にわたりインキュベートした。細胞を遠心分離し、ペレットを、染色緩衝液で洗浄して、結合しなかった抗体を除去した。その後、細胞を、ヒトFcを認識するアロフィコシアニンコンジュゲート二次F(ab’)2(Jackson ImmunoResearch;型番109−136−170)と共に、氷上で、15〜30分間にわたりインキュベートした。細胞を遠心分離し、ペレットを、染色緩衝液で洗浄して、結合しなかった二次F(ab’)2を除去し、Cytofix(BD Biosciences;型番554655)と、染色緩衝液との1:1希釈物で一晩にわたり固定した。翌日、固定された細胞を遠心分離し、ペレットを、染色緩衝液で洗浄し、再懸濁させ、濾過した。蛍光測定値を、HyperCyt(登録商標)血球計算器上で収集し、ForeCyt(商標)(IntelliCyt;Albuquerque、NM)により解析して、平均値蛍光強度(MFI)を決定した。EC
50値は、GraphPad Prismを使用して、11点の反応曲線についての、4パラメータのロジスティック方程式から計算した。EC
50は、最大結合シグナルの50%が検出される抗体濃度として規定した。各抗体についてのMFI比は、抗体濃度を100nMとするときのMFIを、抗体濃度を0nMとするときのMFIで除することにより計算した。
【表9】
【0250】
表9に示される通り、比較薬およびアイソタイプ対照は、FACS解析により測定可能な、野生型の親HEK293細胞への結合を何ら実証しなかった。計算されたMFI比は、1.0〜1.6倍の間の範囲であった。野生型細胞上で大きな比を示す抗LAG3抗体は少数であったことから、非特異的結合が示唆され、計算されたMFI比は、0.9〜8.2倍の間の範囲であった。これらの染色条件下では、抗LAG3抗体ならびに比較薬についてのEC
50値は、決定されなかった。
【表10】
【0251】
表10に示される通り、アイソタイプ対照は、測定可能な、HEK293/hLag3細胞への結合を何ら実証しなかった。本発明の15の抗LAG3抗体全ては、300pM〜7.9nMの範囲のEC
50値で、HEK293/hLag3細胞への著明な結合を示した。計算されたMFI比は、62〜414倍の範囲であった。比較薬のEC
50値は、結合アッセイにおいて、0.65nMおよび0.75nMであり、MFI比は、いずれの抗体についても、200倍未満であった。
【表11】
【0252】
表11に示される通り、アイソタイプ対照は、測定可能な、HEK293/mfLag3細胞への結合を何ら実証しなかった。本発明の15の抗LAG3抗体のうちの合計13は、900pM〜10nMを超える範囲のEC
50値で、HEK293/mfLAG3細胞への著明な結合を示した。計算されたMFI比は、8.8倍〜21.5倍の範囲であった。比較薬のEC
50値は、10nMを超え、計算されたMFI比は、6.7倍および8.6倍であった。
【0253】
(実施例6:電気化学発光イムノアッセイにより決定される、抗体の、LAG3を過剰発現する細胞への結合)
抗LAG3モノクローナル抗体のパネルが、細胞表面において発現したLAG3に結合する能力について調べるため、電気化学発光ベースの検出プラットフォーム[Meso Scale Diagonostics、Rockville、MD;MSD]内で、ヒトおよびサルのLAG3を発現する細胞系を活用するin vitro結合アッセイを開発した。
【0254】
安定的なHEK293(ATCC番号:CRL−1573)細胞系は、組換えhLAG3(NCBI受託番号:NP_002277.4)、またはサルLAG3(mfLAG3)[アカゲザル(Macaca mulata)配列:NCBI受託番号:XP_001108923.1に基づき、アミノ酸74位における「X」を、プロリンで置きかえるように、カニクイザル配列Macaca fascicularis:NCBI受託番号:XP_005570011.1を修飾した](配列番号576)を発現するレンチウイルスの形質導入により作出した。蛍光活性化細胞分取(FACS)により検出可能なLAG3の発現をもたらさない親HEK293細胞系を、バックグラウンド結合対照として、実験に含めた。非類縁のヒトIgG4およびhIgG4を、アイソタイプ対照抗体として含めた。
【0255】
実験は、以下の手順に従い実行した。上記で記載した3つの細胞系に由来する細胞を、Ca
2+/Mg
2+を伴わない、1倍濃度のPBS緩衝液中で1回すすぎ、その後にEnzyme Free Cell Dissociation Solutionと共に、37℃で10分間にわたるインキュベーションを行った。剥がした細胞を、Ca
2+/Mg
2+を伴う、1倍濃度のPBSで、1回洗浄し、Cellometer(商標)Auto T4細胞カウンター(Nexcelom Bioscience)でカウントした。細胞洗浄緩衝液中、ウェル1つ当たりの細胞約10,000個を、96ウェル炭素電極プレート(MULTI−ARRAY high bind plate;MSD)へと播種し、37℃で1時間にわたりインキュベートして、細胞の接着を可能とした。非特異的結合部位を、PBS中に2%のBSA(w/v)により、室温で、1時間にわたりブロッキングした。プレートに結合した細胞へと、系列希釈物中1.7pM〜100nMの範囲の抗LAG3抗体の溶液と、抗体の存在しない溶液とを、二連で添加し、プレートを、室温で1時間にわたりインキュベートした。次いで、AquaMax2000プレート洗浄機(MDS Analytical Technologies)を使用して、結合しなかった抗体を除去するように、プレートを洗浄した。プレートに結合した抗体は、室温で1時間にわたる、SULFO−TAG(商標)コンジュゲート抗ヒトIgG抗体(MSD)により検出した。洗浄の後、製造元の推奨する手順に従い、Read Buffer(MSD)によりプレートを展開し、SECTOR Imager 6000(MSD)測定器により発光シグナルを記録した。直接的な結合シグナル(相対光単位:RLUによる)を、抗体濃度の関数として解析し、データを、GraphPad Prism(商標)ソフトウェアを使用する、S字型用量反応モデル(4パラメータのロジスティックモデル)により当てはめた。各抗体の効力は、EC
50を計算することにより決定した。HEK293−hLAG3細胞およびHEK293−mfLAG3細胞への結合についてのEC
50は、最大結合シグナルの50%が検出される抗体濃度として規定した。100nMの抗体の、HEK293−hLAG3細胞またはHEK293−mfLAG3細胞への結合により検出されるシグナルの、HEK293親細胞への結合により検出されるシグナルと比較した比を、LAG3結合の特異性の指標として記録した。最高抗体濃度(100nM)で、比が2倍より小さい場合、抗体を、非特異的(NS)として結論付けた。
【0256】
結合結果を、表12にまとめる。
【表12】
【0257】
表12に示す通り、抗体の効力は、HEK293−hLAG3細胞への結合についてのEC
50値を690pM〜52nMとする範囲であり、抗体の全ては、100nMの抗体による結合で、ヒトLAG3を発現する細胞への、親HEK293細胞と比較して、>2倍の結合である特異的結合をもたらした。抗体のうちの7つだけが、7.9nM〜74nMの範囲のEC
50値で、HEK293−mfLAG3細胞に特異的に結合した。比較薬の、HEK293−hLag3細胞上の結合効力は、約4.0nMおよび7.0nMであった。比較薬は、HEK293−mfLag3細胞への特異的結合を示さなかった。非関与性対照の、HEK293−hLAG3細胞およびHEK293−mfLAG3細胞への結合は、H4Hアイソタイプ対照およびH4sHアイソタイプ対照結合により予測される通り、非特異的であり、比を、HEK293親細胞の、0.7〜1.1倍の範囲とする結合であった。
【0258】
(実施例7:細胞接着アッセイにおける、LAG3の、MHCクラスIIへの結合の遮断)
細胞接着アッセイを活用して、抗LAG3モノクローナル抗体が、ヒトMHCIIまたはマウスMHCIIを発現する細胞(それぞれ、RAJI細胞およびA20細胞)の、マイクロタイタープレート上に付着させたhLAG3発現HEK293細胞への接着を遮断する能力を測定した(Huardらによる、Eur J Immunol.、1995年、25巻:2718〜21頁において記載されているアッセイに基づく)。
【0259】
安定的なHEK293(ATCC番号:CRL−1573)細胞系は、組換えhLAG3(NCBI受託番号:NP_002277.4)、またはマウスLAG3(mLAG3)(GenBank受託番号:NP_032505.1)を発現するレンチウイルスの形質導入により作出した。親HEK293細胞系は、蛍光活性化細胞分取(FACS)技術により検出可能なヒトLAG3の発現をもたらさず、MHCIIを発現するRAJI細胞およびA20細胞の接着についてのLAG3の要求を裏付けるのに使用した。
【0260】
実験は、以下の手順に従い実行した。コンフルエンシー未満のHEK293−hLAG3発現細胞を、1倍濃度のPBSで1回洗浄し、トリプシン処理し、1,200rpmで5分間にわたり遠心分離した。細胞ペレットを、1倍濃度のPBS中に再懸濁させ、その後、細胞数を決定するようにカウントした。適切な数の細胞を単離し、各ウェルが、100μLの細胞1.2×10
4個を含有するように、完全培地(DME+10%FBS+ペニシリン/ストレプトマイシン/グルタミン)中に再懸濁させた。細胞を、滅菌のNunclon(商標)Delta 96−Well MicroWell(商標)Black Optical Bottom Plates(Thermo Scientific)へと播種した。辺縁効果を回避するように、プレートの縁辺のウェルは、アッセイデザインに含めなかった。ウェルの縁辺へは、細胞の代わりに、1倍濃度のPBS 100μLを添加した。播種されたHEK293−hLAG3細胞は、37℃、5%のCO
2で、一晩にわたりインキュベートした。インキュベーションの後、これらの細胞を、抗LAG3抗体およびアイソタイプ対照で処置した。
【0261】
処置日には、全ての抗体を、RPMI培地(FBSまたは補充物質を添加しない)中で系列希釈(1:3)した。9点の希釈物を、45pM〜300nMの間の範囲とし、最後の希釈点は、mAbを含有しなかった。RAJI細胞を使用する接着アッセイにおいて、H4sH抗体について調べるために、9点の希釈物を、23pM〜150nMの間の範囲とし、最後の希釈点は、mAbを含有しなかった。最終容量を50μLとする抗LAG3抗体またはアイソタイプ対照を、HEK293−hLAG3細胞へと添加し、37℃、5%CO
2で、1時間にわたりインキュベートした。播種したHEK293−LAG3細胞を、被験抗体または対照抗体と共にインキュベートする一方、以下の手順を使用して、非接着性B細胞(RAJI細胞またはA20細胞)を、Calcein AMで標識した。RAJI懸濁細胞およびA20懸濁細胞を採取し、1,200rpmで、5分間にわたり遠心分離した。細胞ペレットを、1倍濃度のPBS中に再懸濁させ、カウントした。細胞を、RPMIで洗浄し、RPMI中に、1ml当たりの細胞10
6個の濃度で再懸濁させた。細胞懸濁物1ml当たりのCalcein AM 5μLを添加することにより、細胞を標識し、37℃、5%のCO
2で、30分間にわたりインキュベートした。標識された細胞を、RPMIで1回洗浄し、遠心分離し、1倍濃度のPBSで洗浄し、PBS中に1ml当たりの細胞5×10
6個の濃度で再懸濁させた。その後、Calcein AMで標識された細胞1ml当たり10μLのBD Pharmingen Fc Block(0.5mg/mL)を添加し、これを、RTで、10分間にわたりインキュベートした。Calcein AMで染色され、Fcを遮断されたRAJI細胞またはA20細胞を、RPMI中に、1ml当たりの細胞3×10
6個の最終濃度まで再懸濁させ、その後、接着アッセイにおいて使用した。
【0262】
1時間にわたる、LAG3抗体によるHEK293−LAG3細胞の処置の終了時に、標識されたRAJI細胞またはA20細胞50μlを、各ウェルへと、ウェル1つ当たりの細胞1.5×10
5個の密度で添加した。標識された懸濁細胞を、HEK293単層と共に、37℃、5%のCO
2で、1時間にわたりインキュベートした。ウェルを、RPMIで4回にわたり、静かに洗浄し、各回の洗浄後に、プレートを、ペーパータオルで拭い、その後にPBSで2回にわたり洗浄することにより、接着しなかった細胞を洗い落とした。最終容量を200μlとするPBSを、各ウェルへと添加し、励起/発光波長を485nm/535nmとして、VICTOR(商標)X5 Multilabel Plate Reader上で、Calcein AM蛍光を読み取った。IC
50値は、GraphPad Prismを使用して、9点の反応曲線についての、4パラメータのロジスティック方程式を使用して計算した。IC
50は、HEK細胞の、RAJI細胞またはA20細胞への接着の50%遮断が観察される抗体濃度として規定した。
【0263】
細胞ベースの接着アッセイを使用して、抗LAG3抗体が、LAG3の、ヒトMHCIIおよびマウスMHCIIの両方への結合を遮断する能力について評価した。アッセイは、蛍光標識されたMHCIIを内因的に発現する細胞[ヒトMHCII(RAJI)またはマウスMHCII(A20)]の、ヒトLAG3を発現するように操作された細胞への結合のフォーマットを活用した。LAG3抗体が、この相互作用を遮断する能力を評価し、結果を、表13に示す。
【表13】
【0264】
表13に示す通り、アイソタイプ対照は、RAJI細胞またはA20細胞の、HEK293−hLAG3細胞への結合の、測定可能な遮断を何ら実証しなかった。本発明の全てのLAG3抗体は、最高の抗体濃度で、RAJI細胞またはA20細胞の、HEK293−hLAG3細胞への接着のうちの92〜98%を遮断し、IC50値は、RAJI細胞接着については、2.5nM〜31nMの範囲であり、A20細胞の、HEK293−hLAG3細胞への接着については、3.6nM〜30nMの範囲であった。比較薬のIC50値は、RAJI細胞の接着については、3.4nMおよび7.2nMであり、A20細胞の、HEK293−Lag3細胞への接着については、5.1nMおよび9.6nMであった。
【0265】
(実施例8:T細胞/APCルシフェラーゼレポーターアッセイにおける、LAG3により誘導されるT細胞の下方調節の遮断)
T細胞活性化は、抗原提示細胞(APC)上の、主要組織適合性複合体クラスIまたはII(MHCIまたはMHCII)タンパク質により提示される特定のペプチドを認識する、T細胞受容体(TCR)を刺激することにより達成される(Goldrathら、1999年、Nature、402巻、255〜262頁)。活性化したTCRは、今度はアクチベータータンパク質1(AP−1)、活性化T細胞の核因子(NFAT)、または活性化B細胞の核因子カッパ軽鎖エンハンサー(NFκB)などの転写因子により駆動されるレポーター遺伝子によりモニタリングされうる、シグナル伝達イベントのカスケードを誘発する。T細胞の応答は、T細胞上で構成的または誘導的に発現する、共受容体の関与を介して精緻化される。1つのこのような受容体は、T細胞活性の負の調節因子である、LAG3である。LAG3は、そのリガンドであるMHCIIであって、APCまたはがん細胞を含む標的細胞上で発現するMHCIIと相互作用し、TCRシグナロソーム(signalosome)により誘発される正のシグナルを断絶させることにより、T細胞の活性化を阻害する(Workmanら、2002年、J Immunol、169巻:5392〜5395頁)。
【0266】
抗LAG3抗体が、T細胞内でLAG3により媒介されるシグナル伝達をアンタゴナイズする能力を特徴付けるために、2つの哺乳動物細胞系:Jurkat由来T細胞(下記で記載される、クローンJRT3.T3.5)およびHEK293バックグラウンド内の操作APC(下記で記載される)に由来する混合培養物を活用することにより、APCとT細胞との相互作用により誘導されるT細胞シグナル伝達を測定するように、LAG3T細胞/APCレポーターアッセイを開発した(
図1)。
【0267】
第1の構成要素には、LAG3T細胞/APCレポーターバイオアッセイのためのT細胞系を、以下の通りに開発した。Jurkat由来のT細胞クローンである、JRT3.T3.5(ATCC番号:TIB−153)にまず、製造元の指示書に従い、Cignal Lenti AP−1 Luc reporter(Qiagen(Sabiosciences);型番CLS−011L)を形質導入した。レンチウイルスは、最小CMVプロモーターの制御下にあるホタルルシフェラーゼ遺伝子、TPA誘導性転写応答エレメント(TRE)のタンデムリピート、およびピューロマイシン耐性遺伝子をコードする。抗生物質による選択の後、レポーター細胞のピューロマイシン耐性プールを、ヒトCD28(NP_006130.1)、Ob2F3 TCRのアルファサブユニットおよびベータサブユニット(アルファ:AGA92550.1、ベータ:AAA61026.1)、ヒトLAG3キメラ(ヒトLAG3の細胞外ドメイン(NP_002277.4)と、ヒトCD300aの膜貫通/細胞質ドメイン(181〜299のアミノ酸;受託番号NP009192.2)とを含む)、およびヒトPD−1(受託番号NP_005009.2)の形質導入によりさらに操作した。タンパク質の発現は、各ラウンドの形質導入の後における、FACS解析により確認した。その後、単一のクローンである、JRT3.T3/AP1−Luc/CD28/hLAG3−CD300aキメラ/hPD−1クローン2D2を作出し、T細胞/APCレポーターバイオアッセイにおいて使用した。細胞系は、本実施例では選択培地と称する、100ug/mLのハイグロマイシン+500ug/mLのG418+1ug/mLのピューロマイシンを補充した、RPMI+10%のFBS+ペニシリン/ストレプトマイシン/グルタミン(P/S/G)中で維持した。本明細書では、これらの細胞を、レポーターT細胞と称する。
【0268】
第2の構成要素には、LAG3T細胞/APCレポーターバイオアッセイのためのAPC細胞系を、以下の通りに作出した。ヒトCD20(番号:NP_068769.2)を発現する、安定的なHEK293細胞系(ATCC番号:CRL−1573)に、ヒトMHCIIサブユニットである、HLA−DR2A(NP_061984.2)およびHLA−DR2B(NP_002115)を形質導入した。HLA−DR2陽性細胞を、FACSにより単離し、結果として得られる細胞系である、HEK293/CD20/HLA−DR2を、本実施例では選択培地と称する、DME+10%+P/S/G+非必須アミノ酸(100ug/mLのハイグロマイシン+500ug/mLのG418を補充した)中で維持した。本明細書では、これらの細胞を、APC細胞と称する。
【0269】
TCRによるシグナル伝達を誘発するために、T細胞とAPCとを係合させるのに、2つの手法:(1)二特異性方式;および(2)ペプチドパルシング方式を使用した。このバイオアッセイでは、抗LAG3抗体は、LAG3/MHCII間の相互作用を遮断し、CD300a分子の細胞質ゾルテールにより送達される阻害性シグナル伝達を失効化させることにより、T細胞活性をレスキューし、その後、AP1−Lucシグナル伝達を増大させた。T細胞活性化は、ルシフェラーゼ読み出しによりモニタリングした。
【0270】
二特異性方式:この方式では、T細胞上のCD3に結合する1つのFabアームと、HEK293細胞上のCD20に結合する第2のFabとから構成される、二特異性抗体(CD3×CD20二特異性抗体;例えば、US20140088295に開示されている)を活用した。二特異性分子の存在は、免疫学的シナプスの形成と、操作T細胞上のCD3分子のクラスタリングに起因する、TCR複合体の活性化とを結果としてもたらす。
【0271】
スクリーニングの前日に、操作レポーターT細胞を、選択培地中、1mL当たりの細胞5×10
5個へと培養し、翌日のバイオアッセイで試験した。抗LAG3抗体のEC
50値は、一定濃度のCD3×CD20二特異性抗体(100pM)の存在下で決定した。以下の順序で、試薬を添加した。抗Lag3抗体およびアイソタイプ対照を、10%のFBSおよびペニシリン/ストレプトマイシン/グルタミンを補充した、RPMI1640(アッセイ培地)中で系列希釈した。10点の希釈物を、15pM〜100nMの間の範囲とし、最後の希釈点は、mAbを含有しなかった(緩衝液単独の対照)。系列希釈した抗体を、一定濃度(100pM)の二特異性抗体を含有する、96ウェル白色平底プレート内の、対応するウェルへと添加した。一晩にわたり培養したレポーターT細胞を、アッセイ培地中、1mL当たり2×10
6個で再懸濁させ、二特異性抗体を加えた抗LAG3抗体を含有するプレートへと添加し、37℃/5%のCO2で、30分間にわたりインキュベートした。レポーターT細胞の最終濃度は、ウェル1つ当たり5×10
4個であった。
【0272】
次に、APC細胞を、D−PBS(Irvine Scientific;型番9240)で1回洗浄し、トリプシン処理し(Specialty Media;型番SM−2004−C)、アッセイ培地でブロッキングした。遠心分離の後、細胞を、アッセイ培地中、1mL当たり4×10
5個で再懸濁させ、レポーターT細胞を含有するプレートへと添加し、二特異性抗体を加えた抗LAG3抗体と共にインキュベートした。APC細胞の最終濃度は、ウェル1つ当たり1×10
4個であった。プレートを、37℃、5%のCO2で、4〜6時間にわたりインキュベートした。ONE−Glo(商標)(Promega;型番E6051)試薬を添加した後で、AP1−Luc活性を検出し、相対光単位(RLU)を、Victor照度計上で捕捉した。全ての試料を、二連で試験した。
【0273】
MBP85−99を使用するペプチドパルシング方式:TCRは、特定のMHC/ペプチド複合体を認識し、T細胞の活性化をもたらす。このアッセイで使用されるOb2F3 TCRヘテロ二量体は、MBP85−99ペプチド(ミエリン塩基性タンパク質:NP_001020272;配列番号583)と複合体形成させた、MHCIIタンパク質である、HLA−DR2ABと相互作用することが報告されている。
【0274】
スクリーニングの前日に、操作レポーターT細胞を、二特異性方式について上記で記載した通りに調製した。APC細胞を、対応する抗生物質含有細胞培養培地中、37℃/5%のCO2で、0.2μMのMBP85−99ペプチド(Celtek HLA−DR2 MBP85−99(DMSO中);ER−15;ロット番号:140411;分子量:1797.1g/モル)により、一晩にわたりパルシングした。抗LAG3抗体のEC
50値は、パルシングされたAPC1×10
4個の存在下で決定した。以下の順序で、試薬を添加した。抗LAG3抗体および対照を、アッセイ培地中で系列希釈した。抗LAG3抗体の10点の系列希釈物を、15pM〜100nMの間の範囲とし、最後の希釈点は、mAbを含有しなかった。抗体を、96ウェル白色平底プレート内の、対応するウェルへと添加した。一晩にわたり培養したレポーターT細胞を、アッセイ培地中、1mL当たり2×10
6個で再懸濁させ、プレートへと添加し、37℃、5%のCO
2で、30分間にわたりインキュベートした。レポーターT細胞の最終濃度は、ウェル1つ当たりのT細胞5×10
4個であった。次に、MBP85−99ペプチドでパルシングされたAPC細胞を、D−PBS(Irvine Scientific;型番9240)で1回洗浄し、トリプシン処理し(Specialty Media;型番SM−2004−C)、アッセイ培地でブロッキングした。遠心分離の後、細胞を、アッセイ培地中、1mL当たり4×10
5個で再懸濁させ、抗LAG3に、ペプチドでパルシングされたレポーターT細胞を加えたプレートへと添加した。APC細胞の最終濃度は、ウェル1つ当たり1×10
4個であった。アッセイプレートを、37℃/5%のCO2で、4〜6時間にわたりインキュベートした。ONE−Glo(商標)(Promega;型番E6051)試薬を添加した後で、AP1−Luc活性を検出し、相対光単位(RLU)を、Victor照度計上で捕捉した。全ての試料を、二連で試験した。
【0275】
EC
50値は、GraphPad Prismを使用して、10点の反応曲線についての、4パラメータのロジスティック方程式から決定した。スクリーニングされた各抗体のRLU値は、対照である、mAbを含有しない最後の系列希釈物を、100%とすることにより正規化したものであるが、これは、理論的には、二特異性分子(二特異性方式における)、またはMBP85−99ペプチドでパルシングされたAPCにより誘発される、最大のAP1−Luc応答を提示するはずである。結果を表14にまとめる。
【表14】
【0276】
表14に示す通り、T細胞/APCバイオアッセイで試験した、本発明の全ての抗Lag3 mAbは、LAG3/HLA−DR2による阻害を、アッセイのペプチド方式では、135pM〜8.83nMの範囲のEC
50値でレスキューし、アッセイの二特異性方式では、87pM〜100nMを超える範囲のEC
50値でレスキューしたが、比較薬は、280pMおよび350pMのEC
50値を呈示した。被験アイソタイプ対照は、バイオアッセイにおいて、著明なレスキュー活性を示さなかった。さらなる実験では、抗PD−1抗体(REGN2810;本明細書の実施例12に記載される)添加は、T細胞活性化のレスキューを増強しなかった。
【0277】
第2の実験では、HEK293/CD20/HLA−DR2細胞系に、レンチウイルス(pLVX)ベクター系へとクローニングした、ヒトPD−L1遺伝子(受託番号NP_054862.1のアミノ酸1〜290)を形質導入した。上記で記載した通り、hLAG−3およびAP−1により駆動されるルシフェラーゼレポーターを発現する、Jurkat由来のT細胞を、ヒトMHCII/ペプチド複合体を発現する、PD−L1陽性抗原提示細胞と共にインキュベートした。このアッセイでは、抗LAG−3抗体は、T細胞の活性を、抗PD−1抗体(REGN2810;本明細書の実施例12で記載される)の存在下に限りレスキューし、抗PD−1抗体の非存在下では、レスキューしなかった。まとめると、抗LAG−3抗体は、このT細胞アッセイでは、LAG−3/MHCII阻害性シグナル伝達を遮断することにより、T細胞の活性化をレスキューし、抗PD−1抗体と相乗的に作用した。
【0278】
(実施例9:抗LAG3抗体は、刺激されたカニクイザルCD4+およびCD8+ T細胞への結合を提示する)
本実施例では、FACSを介して、選択された抗LAG3抗体が、LAG3を発現するカニクイザルCD4+および/またはCD8+ T細胞に結合する能力について評価した。
【0279】
まず、T細胞を、カニクイザル全血液(Bioreclamation、Westbury、NY)から単離した。略述すると、2匹のカニクイザルドナーに由来する全血液を、PBS中で1:1に希釈し、85%のFicoll−Paque溶液上に重層させた。標準的な手順に従い、赤血球を単核細胞から分離し、汎T細胞単離キット(Miltenyi Biotech)を使用して、T細胞を単離した。
【0280】
T−cell Activation/Expansion kit for non−human primate(Miltenyi Biotech)を使用して、単離されたT細胞を活性化させた。細胞−ビーズ混合物を、完全培地中、1mL当たりの細胞1×10
6個の濃度で再懸濁させた。72時間のインキュベーション後、ビーズを除去し、活性化させたT細胞を、完全培地中、96時間にわたり拡大した。
【0281】
次に、FACSを介して、生細胞と死細胞とを識別するように、上記で記載した、各ドナーに由来する、刺激したカニクイザルT細胞を、LIVE/DEAD色素(Molecular Probes)で染色した。その後、CD4およびCD8について陽性および陰性の細胞集団の検出を可能とするように、細胞を、PEコンジュゲート抗CD8およびFITCコンジュゲート抗CD4と共に、氷上で15分間にわたり共インキュベートした。
【0282】
抗LAG3抗体の、既に単離されたカニクイザルCD4+およびCD8+ T細胞への結合について評価するために、抗LAG3抗体およびアイソタイプ対照を、ブロッキング緩衝液中で系列希釈し、100nM〜50pMの範囲の最終用量を含む96ウェルV字底プレート内に播種した。次に、Zenon Alexa−Fluor 647(Molecular Probes)を使用して、系列希釈された抗体を直接標識し、カニクイザルCD4+/CD8+ T細胞懸濁物と共に、氷上で、15〜30分間にわたりインキュベートした。細胞を遠心分離し、ペレットを、染色緩衝液で洗浄して、結合しなかった抗体を除去し、Cytofix(BD Biosciences)と染色緩衝液との1:1希釈物で12時間にわたり固定した。インキュベーション時間後、固定緩衝液を除去し、ペレットを、染色緩衝液中で再懸濁させ、濾過し、蛍光測定のために使用した。
【0283】
蛍光測定値を、Fortessa(Becton Dickinson)上で収集し、データを、FlowJoにより解析して、平均値蛍光強度(MFI)を決定した。EC
50値は、GraphPad Prismを使用して、11点の反応曲線についての、4パラメータのロジスティック方程式から計算した。各抗体についてのMFI比は、抗体濃度を11.1nMとするときのMFIを、抗体濃度を0nMとするときのMFI(陰性対照)で除することにより計算した。
【表15】
【0284】
既に示した通り、抗LAG3抗体である、H4sH15482PおよびH4sH14813Nは、操作カニクイザルLAG3−HEK293細胞系への結合を提示した。本実施例では、H4sH15482PおよびH4sH14813Nは、CD4+ LAG3発現カニクイザルT細胞およびCD8+ LAG3発現カニクイザルT細胞への特異的な結合を、1.1nM〜85pMの範囲のEC
50で裏付けた(表15)。まとめると、本実施例で記載した、選択された抗LAG3抗体は、カニクイザル活性化CD4+およびCD8+ T細胞上で発現するLAG3との交差反応性を示す。これに対し、比較薬1は、カニクイザルCD8+ T細胞に対する結合だけを裏付けた。
【0285】
(実施例10:in vivoにおける、抗LAG3抗体の、Colon 26腫瘍に対する有効性)
単独の抗マウスLAG3抗体および抗マウスPD−1抗体と組み合わせた抗マウスLAG3抗体の、in vivoにおける有効性について、Colon 26前臨床相乗作用腫瘍モデルにおいて研究した。
【0286】
BALB/cマウスは、Taconic Biosciencesから購入した。BALB/cマウス系統に由来するマウス腺癌細胞系である、Colon 26は、American Type Culture Collection(ATCC)から購入した。0日目、50匹のBALB/cマウスの皮下に、Colon 26細胞(BALB/c系統に由来する、マウス腺癌系)1×10
6個を植え込んだ。8日目に、平均腫瘍容量を50mm
3とするマウス40匹を選択し、4つの処置群(群1つ当たりのN=10)へと無作為化した。14、17、21、24、および28日目に、マウスに、以下の抗体:群1:ラットIgG2aアイソタイプ対照抗体(クローン2A3、BioXCell;型番BE0089)およびmIgG1アイソタイプ対照抗体(クローンMOPC−21、BioXCell;型番BE0083);群2:抗マウスPD−1抗体(ラットIgG2a抗マウスPD−1抗体、クローンRPMI−14、BioXCell;型番BE0089)およびmIgG1アイソタイプ対照抗体;群3:抗マウスLAG3抗体(ラットIgG1抗マウスLAG3抗体、クローンC9B7W、BioXCell;型番BE0174)およびラットIgG2a対照抗体;群4:抗マウスPD−1抗体および抗マウスLAG3抗体を投与した。全ての抗体は、腹腔内注射により、10mg/kgで投与した。腫瘍容量は、毎週2回ずつ、実験の持続期間(42日間)にわたるカリパー測定によりモニタリングした。
【0287】
抗マウスPD−1抗体で処置されたマウスでは、腫瘍の増殖の有意な低減が観察され(
図2A〜2B)、10匹中5匹のマウスが、実験の終了時の45日目までに、無腫瘍となった。抗マウスLAG3抗体で処置されたマウスのサブセットでもまた、腫瘍の増殖の低減が観察され、10匹中3匹のマウスが、45日目までに、無腫瘍となった。これと対照的に、抗LAG3と抗PD−1抗体との組み合わせ処置は、いずれの単剤療法よりも優れており、10匹中8匹のマウスが、実験の終了時に、無腫瘍となったことから、抗LAG3および抗PD−1による処置の強力な相加効果が示唆される。対照群では、実験の終了時において、無腫瘍マウスは見られなかった。組み合わせ療法で処置されたマウスでは、35日目までに、腫瘍容量の、統計学的に有意な低減(p<0.05、
図2B)が見られたが、単剤療法で処置されたマウスでは、これが見られなかった。効果的な腫瘍の排除にも拘らず、体重減少の証拠は観察されなかった(示していない)。こうして、確立されたColon 26腫瘍モデルでは、抗PD−1抗体と抗LAG3抗体との組み合わせレジメンは、対応する単剤療法より有意に有効であった。
【0288】
in vivoにおける、抗マウスPD−1抗体および抗マウスLAG3抗体の活性はまた、4T1、RENCA、およびA20による前臨床相乗作用腫瘍モデルでも研究した。両方の抗体による組み合わせ処置は、単一の抗体処置と比較して、少なくとも相加的な抗腫瘍効果を結果としてもたらした(データは示さない)。
【0289】
(実施例11:in vivoにおける、抗マウスLAG3抗体の、MC38腫瘍に対する有効性)
抗マウスPD−1遮断抗体および抗マウスLAG3遮断抗体を使用して、C57BL/6マウスにおいて確立されたMC38腫瘍に対する、PD−1およびLAG3の二重遮断の効果を検討した。
【0290】
C57BL/6マウスは、Taconic Biosciencesから購入した。C57BL/6マウス系統に由来するマウス腺癌細胞系である、MC38は、米国国立保健研究所への寄託物から得た。抗LAG3抗体および抗PD−1抗体ならびに対照は、実施例10で記載した通りに得た。
【0291】
0日目、50匹のC57BL/6マウスの脇腹の皮下に、MC38細胞3×10
5個を植え込んだ。8日目に、平均腫瘍容量を45mm
3とするマウス40匹を選択し、4つの処置群(群1つ当たりのN=10)へと無作為化した。8、12、15、19、および23日目に、マウスに、以下の抗体:群1:ラットIgG2aアイソタイプ対照抗体およびmIgG1アイソタイプ対照抗体;群2:抗マウスPD−1抗体およびmIgG1抗体;群3:抗マウスLAG3抗体およびラットIgG2a抗体;群4:抗マウスPD−1抗体および抗マウスLAG3抗体を投与した。全ての抗体は、腹腔内注射により、10mg/kgで投与した。腫瘍容量は、毎週2回ずつ、実験の持続期間(28日間)にわたるカリパー測定によりモニタリングした。
【0292】
抗PD−1抗体療法は、マウスのサブセット内の腫瘍の増殖を著明に低減し(p<0.0001;23日目)(
図3A〜3B)、10匹中2匹のマウスが、実験の終了時に、無腫瘍となった。抗LAG3抗体による単剤療法が、有意な抗腫瘍効果を示さなかった(実験終了時に無腫瘍のマウスは、10匹中0匹であった)のに対し、抗LAG3抗体と、抗PD−1抗体との組み合わせは、抗PD−1療法単独より優れていたことから、相乗効果が指し示される。
【0293】
組み合わせた抗PD−1抗体および抗LAG3抗体の免疫調節特性について調べるため、処置されたマウスの脾臓内および流入領域リンパ節(DLN)内のT細胞マーカーを検討した(
図4)。腫瘍保有マウスの脾臓および流入領域リンパ節を、切除により除去し、15mLのRPMI1640 Glutamax I培地(Invitrogen)に入れた。全RNAを単離し、マウスCD8β[プローブ:AGCAGCTCTGCCCTCAT(配列番号584)、フォワードプライマー:GCTCTGGCTGGTCTTCAGTATG(配列番号585)、リバースプライマー:TTGCCGTATGGTTGGTTTGAAC(配列番号586)]およびマウスIFNγ(Mm01168134_m1、Applied Biosystems)に特異的なプライマー/プローブミックスを使用して、RT−PCR Taqman解析を実施した。マウスシクロフィリンB転写物発現レベルに対して、試料を正規化した。TaqMan解析は、組み合わせ処置群における、マウスのDLN内および脾臓内の両方のCD8+ T細胞の拡大、ならびに組み合わせで処置された動物および単一の抗PD−1で処置された動物の両方における、T細胞エフェクター分子であるIFNγの産生の増大を裏付けたことから、PD−1およびLAG3の遮断は、T細胞の増殖およびエフェクター機能を増大させることが指し示される。
【0294】
(実施例12:in vivoにおける、抗ヒトLAG3抗体の、MC38腫瘍に対する有効性)
この実験では、本発明の例示的な抗ヒトLAG3抗体の、MC38腫瘍に対する有効性について研究した。抗ヒトLAG3 mAbは、マウスLAG3に結合しない。したがって、これらの抗体の、マウスのin vivoにおける抗腫瘍特性について研究するために、ヒトLAG3タンパク質を発現するようにヒト化されたマウスを使用した。本明細書の実験のために、VelociGene(登録商標)技術(Valenzuelaら、2003年、Nat. Biotechnol.、21巻:652〜659頁)を使用して、ヒトPD−1およびヒトLAG3の細胞外部分、ならびにこれらのタンパク質のマウス形の膜貫通部分および細胞内部分を発現する二重ヒト化マウスを作出した。
【0295】
VelociGene(登録商標)技術を使用して、マウスPdcd1遺伝子およびマウスLag3遺伝子の細胞外ドメインを、ヒトPD−1遺伝子およびヒトLAG3遺伝子の対応する領域で置きかえるように、二重ヒト化LAG3/PD−1マウスを操作した(2015年11月20日に出願された、米国特許出願第62/258,181号)。ヒト化PD−1およびヒト化LAG3の発現は、抗CD3/抗CD28抗体による刺激の後における、ヒト化マウスT細胞上のPD−1タンパク質およびLAG3タンパク質の発現を検討することにより確認した。ヒトPD−1タンパク質およびLAG3タンパク質の、対応するマウスリガンドとの相互作用は、細胞接着アッセイにおいて、ヒトLAG3の、マウスMHCIIへの結合について調べることにより検証し、SPR−Biacore結合研究において、ヒトPD−1の、マウスPD−L1への結合について調べることにより検証した。
【0296】
本研究のために使用される、例示的な抗LAG3抗体は、ヒトLAG3に特異的に結合する完全ヒト抗体であり、配列番号420−422−424−428−430−432のHCDR1−HCDR2−HCDR3−LCDR1−LCDR2−LCDR3、および配列番号418/426のHCVR/LCVR(H4sH15482Pとしてもまた公知であり、本明細書の下記では、「mAb1」と称する)を含む。
【0297】
抗ヒトPD−1抗体は、参照によりその全体において本明細書に組み込まれる、米国特許出願公開第US20150203579号において開示されている。本実施例で使用される抗PD−1抗体は、H4H7798N(US20150203579において開示されている;REGN2810としてもまた公知である。より具体的には、H4H7798Nは、US20150203579において開示されている、配列番号330の重鎖と、配列番号331の軽鎖とを含む)である。REGN2810(抗hPD−1)は、高アフィニティーで、ヒトPD−1に結合し、PD−1の、PD−L1およびPD−L2との相互作用を遮断する。
【0298】
腫瘍の免疫原性を増大させるために、ニワトリオボアルブミンを発現するように、マウス結腸腺癌細胞を操作した(MC38.Ova)。
【0299】
0日目、LAG3
hum/humPD−1
hum/humマウスの皮下に、MC38.Ova細胞1.5×10
6個を植え込み、3つの処置群へと無作為化した(群1つ当たりのN=7)。3、6、10、14、および17日目に、腹腔内注射により、マウスに、mAb1(抗hLAG3)(25mg/kg)、REGN2810(抗hPD−1)(10mg/kg)、またはアイソタイプ対照抗体(25mg/kg)を投与した。腫瘍容量は、毎週2回ずつ、実験の持続期間(24日間)にわたるカリパー測定によりモニタリングした。
【0300】
0日目、LAG3
hum/humPD−1
hum/hum二重ヒト化マウスに、MC38.Ova細胞を接種し、3、6、10、14、および17日目に、腹腔内経路を介して、mAb1(抗hLAG3)(25mg/kg)、REGN2810(抗hPD−1)(10mg/kg)、またはアイソタイプ対照(25mg/kg)を投与した。REGN2810(抗hPD−1)は、部分的な腫瘍増殖の阻害を示し(
図5)、7匹中2匹のマウスで腫瘍退縮が観察されたのに対し、アイソタイプ対照群では、いずれのマウスも無腫瘍ではなかった。25mg/kgのmAb1(抗hLAG3)による単剤療法は、腫瘍の増殖に対して著明な効果を示さず、実験の終了時までに無腫瘍となったマウスは、7匹中1匹だけであった。マウスの体重は、mAb1(抗hLAG3)処置、REGN2810(抗hPD−1)処置、またはアイソタイプ対照処置による影響を受けなかった。
【0301】
(実施例13:in vivoにおける、抗ヒトLAG3抗体と抗ヒトPD−1抗体との組み合わせの、MC38腫瘍に対する有効性)
この実験では、二重ヒト化LAG3
hum/humPD−1
hum/humマウスにおける、REGN2810(抗hPD−1)と組み合わせたmAb1(抗hLAG3)の、MC38.Ova腫瘍に対する有効性について研究した。二重ヒト化マウスについては、本明細書の実施例12に記載されている。
【0302】
本研究のために使用される、例示的な抗LAG3抗体は、ヒトLAG3に特異的に結合する完全ヒト抗体であり、配列番号420−422−424−428−430−432のHCDR1−HCDR2−HCDR3−LCDR1−LCDR2−LCDR3、および配列番号418/426のHCVR/LCVR(H4sH15482Pとしてもまた公知であり、本明細書の下記では、「mAb1」と称する)を含む。
【0303】
本実施例で使用される抗PD−1抗体は、H4H7798N(US20150203579において開示されている;REGN2810としてもまた公知である)。REGN2810(抗hPD−1)は、高アフィニティーで、ヒトPD−1に結合し、PD−1の、PD−L1およびPD−L2との相互作用を遮断する。
【0304】
0日目、マウスの皮下に、MC38.Ova細胞1×10
6個を植え込み、4つの処置群(対照群では、N=7であり、mAb1(抗hLAG3)処置群、REGN2810(抗hPD−1)処置群、およびmAb1(抗hLAG3)+REGN2810(抗hPD−1)組み合わせ処置群では各々、N=12である)へと無作為化した。3、7、10、14、および17日目に、腹腔内注射により、マウスに、mAb1(抗hLAG3)(25mg/kg)、REGN2810(抗hPD−1)(10mg/kg)、mAb1(抗hLAG3)(25mg/kg)とREGN2810(抗hPD−1)(10mg/kg)との組み合わせ、またはアイソタイプ対照(25mg/kg)を投与した。腫瘍容量は、毎週2回ずつ、実験の持続期間(32日間)にわたるカリパー測定によりモニタリングし、無腫瘍動物を、腫瘍の再発の非存在について、最長で80日間にわたりモニタリングした。
【0305】
REGN2810(抗hPD−1)単剤療法は、腫瘍の増殖阻害を結果としてもたらし(
図6A〜6B)、動物12匹中2匹(17%)において腫瘍の退縮をもたらしたのに対し、mAb1(抗hLAG3)は、それほど有効ではなく、先行する実験の所見を確認した。腫瘍の退縮は、mAb1(抗hLAG3)で処置されたマウス12匹中1匹だけで観察された。アイソタイプ対照群では、32日目においても、無腫瘍マウスは見られなかった。これに対し、mAb1(抗hLAG3)とREGN2810(抗hPD−1)との組み合わせは、MC38.Ova腫瘍の増殖の頑健な阻害を裏付け、実験の終了時までに、12匹中5匹(42%)の無腫瘍マウスを結果としてもたらした。無腫瘍マウスのいずれも、植込み後80日間にわたり、腫瘍の再発を示さなかったことから、長期にわたり持続する組み合わせ免疫療法の効果が指し示される。テューキーの検定後多重比較を伴う一元ANOVAは、22日目の、mAb1(抗hLAG3)とREGN2810(抗hPD−1)との組み合わせ処置群における腫瘍容量の、mAb1(抗hLAG3)単剤療法(p<0.05)またはアイソタイプ対照(p<0.01)と比較した有意差を明らかにした(
図6B)。REGN2810(抗hPD−1)単剤療法もまた、腫瘍の増殖の、アイソタイプ対照と比べた有意な低減を示した(p<0.05)。mAb1(抗hLAG3)とREGN2810(抗hPD−1)との組み合わせ処置はまた、ログランク(マンテル−コックス)検定により解析される通り、動物の生存率の有意な改善(p<0.0001)も結果としてもたらした(
図6C)。組み合わせ療法の有効性の改善にも拘らず、体重減少の証拠は観察されなかった(データは示さない)。まとめると、mAb1(抗hLAG3)とREGN2810(抗hPD−1)との組み合わせは、REGN2810(抗hPD−1)単剤療法またはmAb1(抗hLAG3)単剤療法と比較した、腫瘍増殖の低減、腫瘍排除の改善、および生存の改善を含む有効性の改善を結果としてもたらした。
【0306】
(実施例14:MC38腫瘍に対する、抗LAG3抗体と抗PD−1抗体との組み合わせについての用量設定研究)
本実施例は、in vivoの二重ヒト化LAG3
hum/humPD−1
hum/humマウスにおける、MC38.Ova腫瘍に対する、抗ヒトPD−1と抗ヒトLAG3抗体との組み合わせの有効性を測定する用量設定実験のセットについて記載する。二重ヒト化マウスについては、本明細書の実施例12に記載されている。
【0307】
本研究のために使用される、例示的な抗LAG3抗体は、ヒトLAG3に特異的に結合する完全ヒト抗体であり、配列番号420−422−424−428−430−432のHCDR1−HCDR2−HCDR3−LCDR1−LCDR2−LCDR3、および配列番号418/426のHCVR/LCVR(H4sH15482Pとしてもまた公知であり、本明細書の下記では、「mAb1」と称する)を含む。
【0308】
本実施例で使用される抗PD−1抗体は、H4H7798N(US20150203579において開示されている;REGN2810としてもまた公知である)である。REGN2810(抗hPD−1)は、高アフィニティーで、ヒトPD−1に結合し、PD−1の、PD−L1およびPD−L2との相互作用を遮断する。
【0309】
第1の実験では、REGN2810(抗hPD−1)を滴定し、10mg/kgおよび1mg/kgの用量レベルで、いずれの用量群も、単剤およびmAb1(抗hLAG3)(25mg/kg)との組み合わせとして調べた。両方の組み合わせ処置群の結果を、REGN2810(1mg/kgまたは10mg/kg)またはmAb1(25mg/kg)の単剤療法と比較して、相加的/相乗的な抗腫瘍効果が観察されるのかどうかを決定した。また、アイソタイプ対照抗体(25mg/kg)による処置についても調べた。0日目、LAG−3 hum/hum PD−1 hum/humマウスに、MC38.Ova細胞を植え込み、6つの処置群(アイソタイプ対照群では、N=6であり、mAb1処置群、REGN2810処置群、またはREGN2810+mAb1処置群では、N=12である)へと無作為化した。3、7、10、14、および17日目に、腹腔内注射により、マウスに、mAb1(25mg/kg);REGN2810(10mg/kg);REGN2810(1mg/kg);mAb1(25mg/kg)+REGN2810(10mg/kg);mAb1(25mg/kg)+REGN2810(1mg/kg);またはアイソタイプ対照(25mg/kg)を投与した。腫瘍容量は、36日間にわたりモニタリングし、無腫瘍動物を、最長で80日間にわたりモニタリングした。
【0310】
表16は、研究中の多様な時点における平均値腫瘍容量を示し、36日目における無腫瘍マウスの数を、表17に示す。
【表16】
【表17】
【0311】
1mg/kgのREGN2810単剤療法は、36日間にわたり最小限の腫瘍退縮を示すにとどまり、アイソタイプ対照処置群についての結果と同様であった(
図7A〜7B)。36日目に無腫瘍のマウスは、REGN2810(1mg/kg)群およびアイソタイプ対照群のそれぞれにおいて、12匹中2匹(約16%)および6匹中0匹(0%)であった。これに対し、mAb1(25mg/kg)処置群、REGN2810(10mg/kg)処置群、およびREGN2810(1mg/kg)+mAb1(25mg/kg)処置群は、22日間にわたり、腫瘍の増殖の同様の低減を裏付けた(
図7A)。36日目に、mAb1(25mg/kg)処置が、12匹中1匹(約8%)の無腫瘍マウスを結果としてもたらしたのに対し、REGN2810(10mg/kg)群およびREGN2810(1mg/kg)+mAb1(25mg/kg)群のそれぞれでは、12匹中4匹(約33%)および12匹中3匹(25%)のマウスが無腫瘍であった。全体では、mAb1(25mg/kg)+REGN2810(10mg/kg)が、MC38.Ova腫瘍の増殖の最も頑健な低減を裏付け、12匹中6匹(50%)のマウスが、36日目までに無腫瘍となった。無腫瘍マウスのいずれも、処置の中止にも拘らず、植込み後80日間にわたり、腫瘍の再発を示さなかったことから、長期にわたり持続する組み合わせ免疫療法の効果が指し示される。mAb1(25mg/kg)+REGN2810(10mg/kg)処置はまた、ログランク(マンテル−コックス)検定により解析される通り、動物の生存率の有意な改善(p=0.0197)も結果としてもたらした(
図7C)。体重減少の証拠もまた、観察されなかった。
【0312】
第2の実験では、mAb1(抗hLAG3)を滴定し、25mg/kgおよび5mg/kgの用量レベルで、いずれの用量群も、単剤およびREGN2810(抗hPD−1)(10mg/kg)との組み合わせとして調べた。両方の組み合わせ処置群の結果を、mAb1(5mg/kgまたは25mg/kg)、またはREGN2810(10mg/kg)の単剤療法と比較して、相加的/相乗的な抗腫瘍効果が観察されるのかどうかを決定した。また、アイソタイプ対照抗体(25mg/kg)による処置についても調べた。0日目、LAG−3 hum/hum PD−1 hum/humマウスに、MC38.Ova細胞を植え込み、6つの処置群(アイソタイプ対照群では、N=6であり、mAb1処置群、REGN2810処置群、またはREGN2810+mAb1処置群では、N=12である)へと無作為化した。3、7、10、14、および17日目に、腹腔内注射により、マウスに、mAb1(5mg/kg);mAb1(25mg/kg);REGN2810(10mg/kg);mAb1(5mg/kg)+REGN2810(10mg/kg);mAb1(25mg/kg)+REGN2810(10mg/kg);またはアイソタイプ対照(25mg/kg)を投与した。腫瘍容量は、31日間にわたりモニタリングした。
【0313】
5mg/kgのmAb1単剤療法は、アイソタイプ対照処置群と同様の、最小限の腫瘍退縮を示すにとどまった。mAb1(25mg/kg)+REGN2810(10mg/kg)の組み合わせは、最も頑健な腫瘍の低減を示した(
図8A)。強力な組み合わせ効果はまた、mAb1(5mg/kg)+REGN2810(10mg/kg)処置群によっても裏付けられた。23日目に測定された腫瘍容量を、
図8Bに示す。抗LAG−3抗体とREGN2810との組み合わせもまた、動物の生存の有意な改善を示した(p<0.001;マンテル−コックスによるログランク検定により解析される)(
図8C)。結果は、強力な組み合わせ効果が、低用量の抗LAG3抗体でもなおみられることを示す。本明細書に示される結果に基づくと、腫瘍に対する処置レジメンにおいて、抗PD−1抗体と組み合わせた、高用量の抗LAG3抗体を使用する必要はない可能性がある。
【0314】
まとめると、二重ヒト化LAG3/PD−1マウスによるMC38.ova腫瘍モデルにおける、REGN2810(抗hPD−1)とmAb1(抗hLAG3)との組み合わせであって、マウス受容体と交差しない臨床抗体についての試験を可能とする組み合わせは、REGN2810(抗hPD−1)単剤療法およびmAb1(抗hLAG3)単剤療法と比較して、腫瘍増殖の低減および生存の改善を含む用量依存的な有効性の改善を裏付けた。REGN2810(抗hPD−1)およびmAb1(抗hLAG3)の組み合わせの、前臨床状況における、頑健な抗腫瘍有効性は、組み合わせがん免疫療法としての、それらの臨床開発を支持する。
【0315】
(実施例15:in vivoにおける、抗ヒトLAG3抗体と抗ヒトPD−1抗体との組み合わせの、確立されたMC38腫瘍に対する有効性)
この実験では、二重ヒト化LAG3
hum/humPD−1
hum/humマウスにおける、REGN2810(抗hPD−1)と組み合わせたmAb1(抗hLAG3)の、確立されたMC38.Ova腫瘍に対する有効性について検討した。二重ヒト化マウスについては、本明細書の実施例12に記載されている。
【0316】
本研究のために使用される、例示的な抗LAG3抗体は、ヒトLAG3に特異的に結合する完全ヒト抗体であり、配列番号420−422−424−428−430−432のHCDR1−HCDR2−HCDR3−LCDR1−LCDR2−LCDR3、および配列番号418/426のHCVR/LCVR(H4sH15482Pとしてもまた公知であり、本明細書の下記では、「mAb1」と称する)を含む。
【0317】
本実施例で使用される抗PD−1抗体は、H4H7798N(US20150203579において開示されている;REGN2810としてもまた公知である)。REGN2810(抗hPD−1)は、高アフィニティーで、ヒトPD−1に結合し、PD−1の、PD−L1およびPD−L2との相互作用を遮断する。
【0318】
0日目、LAG−3
hum/humPD−1
hum/humマウスの皮下に、MC38.Ova細胞を接種した。10日目に、平均腫瘍容量を100mm
3とするマウスを選択し、4つの処置群へと無作為化した。10、14、17、22日目に、IP注射により、マウスに、mAb1(25mg/kg;N=9)、REGN2810(10mg/kg;N=10)、mAb1(25mg/kg)+REGN2810(10mg/kg)組み合わせ(N=11)、またはアイソタイプ対照抗体(25mg/kg;N=7)を投与した。腫瘍容量は、腫瘍植込み後28日間にわたりモニタリングした。
【0319】
MC38.ova腫瘍を保有するヒト化マウスの、抗hPD−1抗体と抗hLAG−3抗体との組み合わせによる処置は、腫瘍内T細胞および末梢T細胞の活性化を惹起した。REGN2810単剤療法が、部分的な腫瘍増殖の阻害を結果としてもたらしたのに対し、mAb1単剤療法は、アイソタイプ対照で処置されたマウスと比較して、平均値腫瘍容量の低減を示さなかった(
図9)。これに対し、mAb1(25mg/kg)とREGN2810(10mg/kg)との組み合わせは、MC38.Ova腫瘍の増殖の頑健な阻害を裏付けた。ボンフェローニによる検定後多重比較を伴う、一元分散分析(ANOVA)は、mAb1とREGN2810との組み合わせ群における平均値腫瘍容量の、mAb1単剤療法(p<0.01)またはアイソタイプ対照(p<0.05)と比較した有意差を明らかにした(
図10)。組み合わせ療法を、REGN2810単剤療法と比較したところ、実験経過にわたる全体的な平均値腫瘍容量は、組み合わせ療法で小さかったが、この差違は、統計学的有意性に到達しなかった。抗LAG−3抗体とREGN2810との組み合わせはまた、動物の生存率の有意な増大ならびに生存の持続期間の有意な延長も結果としてもたらした(p<0.01;マンテル−コックスによるログランク検定により解析される)。25日目には、対照および単剤療法と比較して、組み合わせ療法で処置されたマウスのうちの50%が生存してした(
図11)。この結果に基づくと、組み合わせ処置は、それぞれの単剤療法と比較して、相加的で用量依存的な抗腫瘍効果を呈示した。
【0320】
(実施例16:カニクイザルにおける、抗LAG−3抗体の薬物動態)
雌カニクイザル(用量群1つ当たりの動物5匹)への1.0、5.0、または15.0mg/kgの単回の静脈内(IV)用量の後で、抗LAG3抗体mAb1の薬物動態(PK)を特徴づけた。機能的なmAb1濃度を決定するための血液試料を、多様な時点において、全ての動物から回収した。血清中の機能的なmAb1の濃度は、酵素免疫測定アッセイ(ELISA)を使用して決定した。血清中の抗mAb1抗体は、電気化学発光ベースの架橋イムノアッセイを使用して解析した。PKパラメータは、ノンコンパートメント解析(NCA)を使用して推定した。平均値濃度−時間プロファイルは、短い初期分布相、その後の線形ベータ排出相により特徴づける(
図12)。標的により媒介されるクリアランス相は、8週間の研究持続期間にわたり観察されなかった。平均値AUC
infは、被験用量レベルにわたり同等のAUC
inf/用量値により裏付けられる通り、用量に比例して増大した。平均値全身クリアランス(CL)値が、3つの用量群について同等であったことは、この所見と符合する。加えて、3つの用量群のベータ相半減期(t
1/2)も、10.8〜11.5日間の範囲で同等であった。結果に基づき、最大で50mg/kgの無有害作用量(no−observed−adverse−effect level)(NOAEL)を確立することができた。これらの結果は、mAb1が、本研究の条件下で、線形動態を裏付けることを指し示した。
【0321】
(実施例17:カニクイザルにおける、抗LAG3抗体の毒物学評価)
mAb1についての、in vivo毒物学および毒物動態学(toxicokinetic)プロファイルを、雄および雌のカニクイザルによる、4週間、反復用量、GLP準拠の毒物学研究時に評価した。サル(群1つ当たり性別当たりの動物5匹)には、IV注入により、毎週0、2、10、または50mg/kgのmAb1を施した。毒性の評価は、死亡、瀕死状態、臨床観察、体重、食物消費、眼科検査、ECGの評価、呼吸数、パルスオキシメトリー、体温、および血圧の評価、神経科検査に基づいた。臨床病理学パラメータ(血液学、凝固、臨床化学、および尿検査)および免疫表現型解析もまた評価した。肉眼的剖検検査(gross necropsy examination)、臓器重量の測定、および組織病理学的評価も行った。完全剖検は、投与期間の終了時、または8週間にわたる回復期間の終了時において実施した。選択された臓器を秤量し、組織を肉眼的に検討し、顕微鏡的にも検討した。
【0322】
mAb1は、カニクイザルへの毎週のIV注入を介して投与される場合、評価される全ての用量レベルで十分に耐容性を示した。mAb1は、十分に耐容性を示し、評価される安全性パラメータのいずれにおいても、mAb1に関連する変化が存在しなかったため、研究についての無有害作用量(NOAEL)は、本研究で投与された最高用量である、1用量当たり50mg/kgであると考えられる。
【0323】
(実施例18:抗LAG3抗体であるH4sH15482Pの、hLAG3の細胞外ドメインへの結合についての、水素/重水素交換(H/D)ベースのエピトープマッピング)
ヒトLAG3細胞外ドメイン(ヒトLAG3のアミノ酸Leu23〜Leu450;UniProt受託番号:P18627;C末端にヒトIgG1タグを伴って作製された(「hLag3.Fc」)(R&D Systems、Minneapolis、MN)(配列番号587)であって、抗LAG3抗体H4sH15482Pが相互作用するヒトLAG3細胞外ドメインのアミノ酸残基を決定するように、実験を行った。この目的で、質量分析(HDX−MS)を伴う、水素/重水素(H/D)交換エピトープマッピングを活用した。HDX法についての一般的な記載は、Ehring(1999年)、Analytical Biochemistry、267巻(2号):252〜259頁;およびEngenおよびSmith(2001年)、Anal. Chem.、73巻:256A〜265A頁において明示されている。
【0324】
実験手順
HDX−MS実験は、重水素を標識化するためのLeaptec HDX PALシステム、試料の消化およびローディングのためのWaters Acquity M−Class(Auxiliary solvent manager)、解析用カラム勾配のためのWaters Acquity M−Class(μBinary solvent manager)、ならびに消化したペプチドの質量測定のためのSynapt G2−Si質量分析計からなる統合型Waters HDX/MSプラットフォーム(Waters Corporation、Milford、MA)上で実施した。
【0325】
標識化溶液は、D
2O下、pD7.0、10mMのPBS緩衝液中で調製した。重水素による標識化のために、抗Lag3抗体である、H4sH15482Pと共に、1:1のモル比であらかじめ混合された、3.8μLのhLAG3.Fc(1μL当たり5ピコモル)またはhLAG3.Fcを、56.2μLのD
2O標識化溶液と共に、多様な時点でインキュベートした(例えば、非重水素化対照=0秒間、重水素による標識化:1分間および20分間)。重水素化は、50μLの試料を、あらかじめ冷却したクエンチ緩衝液(100mMのリン酸緩衝液、pH2.5中、0.2MのTCEP、6Mのグアニジン塩酸塩)50μLへと移すことによりクエンチした。混合物を、1.0℃で、4分間にわたりインキュベートした。次いで、クエンチされた試料を、オンラインの、ペプシン/プロテアーゼXIII消化のための、Waters HDX Managerへと注入した。消化されたペプチドを、0℃で、ACQUITY UPLC BEH C18 1.7μm、2.1×5mm VanGuard pre−column(Waters Corporation)へと捕捉し、5%〜40%のB相(移動相A:水中に0.1%のギ酸、移動相B:アセトニトリル中に0.1%のギ酸)による、9分間にわたる勾配分離のために、解析用カラムACQUITY UPLC BEH C18 1.7μm、1.0×50mmへと溶出させた。質量分析計は、コーン電圧を37V、走査時間を0.5秒間に設定し、質量/電荷範囲を50〜1700トムソン単位(Th)に設定した。
【0326】
H4sH15482Pが相互作用するヒトLag3のペプチド残基を同定するために、非重水素化試料に由来するLC−MS
Eデータを加工し、ヒトLAG3の配列を含むデータベースに照らして検索し、配列を、ペプシンで消化し、Waters ProteinLynx Global Server(PLGS)ソフトウェアを使用してランダム化した。同定されたペプチドを、DynamXソフトウェアへとインポートし、2つの基準:1)アミノ酸1つ当たりの最小限の産物=0.2、および2)複製ファイル閾値=3によりフィルタリングした。次いで、DynamXソフトウェアにより、各時点において、三連で、複数の時点にわたり、保持時間および高質量精度(<10ppm)に基づき、各ペプチドによる重水素の取込みを、自動的に決定した。
【0327】
結果
MS
Eデータの収集とカップリングさせた、オンラインのペプシン/プロテアーゼXIIIカラムを使用して、ヒトLAG3に由来する、合計123ペプチドを、抗体の非存在下または存在下で、再現可能に同定し、78.3%の配列カバレッジを表示した。4つのLag−3ペプチドは、H4sH15482Pに結合すると、重水素の取込みを著明に低減した(p値<0.05として、セントロイドデルタ値>0.8ダルトン)。記録されたペプチド質量は、3つの複製物に由来する、セントロイドMH
+質量の平均値に対応する。hLAG3.Fc(配列番号587)のアミノ酸34〜77に対応するこれらのペプチドは、H4sH15482Pに結合すると、重水素化速度を低下させた。これらの同定された残基はまた、Uniprot登録番号:P18627(LAG3_HUMAN;配列番号588)により規定され、表18でも例示される、ヒトLAG3の残基28〜71にも対応する。
【表18】
【0328】
(実施例19:進行性悪性疾患を有する患者における、抗LAG3抗体についての臨床試験)
本実施例は、進行性悪性疾患を有する患者における、単剤療法としての抗LAG3抗体、および抗PD−1抗体と組み合わせた抗LAG3抗体の安全性、耐容性、および抗腫瘍活性について評価する臨床試験について記載する。
【0329】
本研究のために使用される、例示的な抗LAG3抗体は、ヒトLAG3に特異的に結合する完全ヒト抗体であり、配列番号420−422−424−428−430−432のHCDR1−HCDR2−HCDR3−LCDR1−LCDR2−LCDR3、および配列番号418/426のHCVR/LCVR(H4sH15482Pとしてもまた公知であり、本明細書の下記では、「mAb1」と称する)を含む。
【0330】
本実施例で使用される抗PD−1抗体は、H4H7798N(US20150203579において開示されている;REGN2810としてもまた公知である)である。REGN2810(抗hPD−1)は、高アフィニティーで、ヒトPD−1に結合し、PD−1の、PD−L1およびPD−L2との相互作用を遮断する。
【0331】
研究の目的
研究の主要目的は、以下の通りである。
【0332】
用量漸増フェーズにおいて:リンパ腫を含む、進行性悪性疾患を有する患者における、単剤療法としてのmAb1およびREGN2810と組み合わせたmAb1の、フェーズ2のための用量を決定するために、安全性および薬物動態(PK)について評価すること。エンドポイントは、用量制限毒性(DLT)率、有害事象(AE)(免疫関連AEを含む)、重篤な有害事象(SAE)、死、および検査室異常(有害事象共通用語規準(Common Terminology Criteria for Adverse Events)[CTCAE]にしたがってグレード3またはこれを超える)、ならびに薬物動態を含む。
【0333】
用量拡大フェーズにおいて:ORRにより測定される、単独およびREGN2810と組み合わせたmAb1の予備的な抗腫瘍活性について評価する(コホートごとに個別に)こと。エンドポイントは、充実性腫瘍における応答評価基準(Response Evaluation Criteria in Solid Tumors)(RECIST)1.1に基づく全奏効率(ORR)(Eisenhauerら、2009年、Eur. J. Cancer、45巻:228〜247頁)(充実性腫瘍)、およびルガノ基準(Chesonら、2014年、J. Clin. Oncol.、32巻:3059〜3068頁)(リンパ腫)を含む。
【0334】
副次的目的は、(a)充実性腫瘍における免疫関連応答評価基準(immune−related Response Evaluation Criteria in Solid Tumors)(irRECIST)に基づくORR(Wolchokら、2009年、Clin. Cancer Res.、15巻:7412〜7420頁;Nishinoら、2013年、Clin. Cancer Res.、19巻:3936〜3943頁)、最良全奏効(best overall response)(BOR)、応答持続期間(duration of response)(DOR)、病勢コントロール率(disease control rate)、ならびにRECIST、irRECIST、およびルガノ基準に基づくPFS(Chesonら、2014年、J. Clin. Oncol.、32巻:3059〜3068頁)により測定される、単独およびREGN2810と組み合わせたmAb1の予備的な抗腫瘍活性について評価する(コホートごとに個別に)こと;(b)用量漸増フェーズで決定した、各拡大コホート内の安全性プロファイルを特徴付けること;(c)単剤療法としてのmAb1、ならびに組み合わせて施される場合のmAb1およびREGN2810のPKを特徴付けること;および(d)mAb1およびREGN2810に対する抗薬物抗体(ADA)により測定される免疫原性について評価することである。
【0335】
研究の探索的目的は、(a)腫瘍容量について評価すること;(b)ベースラインにおいて、処置の間に、および進行時に、単剤療法としてのmAb1またはREGN2810と組み合わせたmAb1で処置された患者から得られた、血清、血漿、末梢血単核細胞(PBMC)、および腫瘍組織試料(保管腫瘍組織を含む)における、REGN2810の薬力学効果を探索すること;および(c)(i)循環腫瘍核酸;(ii)PBMCサブセットの分布ならびに目的の免疫チェックポイント分子および他のバイオマーカーの発現;(iii)腫瘍RNAの発現;(iv)腫瘍浸潤リンパ球(CD8+ T細胞、CD4+ T細胞、調節性T細胞、およびB細胞、骨髄由来細胞、NK細胞など、他の、組織透過性の亜型)の数および分布;(v)PD−1、PD−L1、LAG3、および、おそらく、他のチェックポイントモジュレーターの発現レベル(メッセンジャーRNAおよび/またはタンパク質);(vi)公知のがん遺伝子および潜在的な腫瘍ネオ抗原における変異;ならびに(vii)腫瘍の変異負荷を含みうるがこれらに限定されない、目的のバイオマーカーについて、予測可能性および臨床応答との相関について評価することである。
【0336】
研究デザイン
これは、進行性悪性疾患を有する患者において、単剤療法として投与されるmAb1またはREGN2810と組み合わせて投与されるmAb1の、安全性、耐容性、活性、およびPKについてのフェーズ1、ファースト・イン・ヒューマン(first−in−human)(FIH)、オープンラベル、多施設の用量漸増研究である。単剤療法としてのmAb1および3.0mg/kgの用量のREGN2810と組み合わせたmAb1の、3つの用量レベル(1.0、3.0、および10mg/kg)を調べる。
【0337】
最長で28日間にわたるスクリーニング期間の後、患者に、21日間ずつの処置サイクルを、最大で17サイクルにわたり(最大で、のべ51週間にわたる処置)施し、その後に24週間にわたる追跡期間を設けた。各患者には、21日ごとに、mAb1(±REGN2810)を施す。
【0338】
処置は、51週間にわたる処置期間が完了するか、または疾患の進行、許容されない毒性、同意の取下げが生じるまで、もしくは研究の中止基準が満たされるまで継続される。応答評価は、研究薬の投与の遅延に関わらず、最初の24週間は6週間ごとであり、次いで、その後の27週間は9週間ごとである。最短で24週間にわたる処置(最小で8処置サイクル)の後、完全寛解(CR)が確認された患者は、処置を中断し、全ての関与性の研究評価を継続するように選び出すことができる。同様に、医師による診察の後、最短で24週間にわたり処置された患者であって、安定病態(SD)または部分奏効(PR)が3回連続の腫瘍評価にわたり維持されている患者も、処置は中断するが、全ての関与性の研究評価を継続するように選び出すことができる。奏効を経ているが、その後、進行している患者には、進行時において、腫瘍生検が要求される。4用量のmAb1単剤療法に耐容性を示し、少なくともSDの初回腫瘍評価を有するが、その後、進行性疾患(PD)を実証している患者は、リンパ球活性化遺伝子2(LAG−3)の遮断とプログラム細胞死1(PD−1)の遮断との組み合わせによる応答「をレスキューし」ようとする試みにおいて、3.0mg/kgのREGN2810を、その時点まで安全に投与されている、最高用量(既知の場合)のmAb1に追加する選択肢を有する。安全性の評価は、各研究薬を投与する来院時に行う。
【0339】
用量漸増
3つの、用量漸増による、単剤療法コホートおよび組み合わせ療法コホートを登録するように計画する(3mg/kgのREGN2810を伴うかまたは伴わない、1.0、3.0、および10mg/kgのmAb1)。登録される第1のコホートには、mAb1単剤療法を、1.0mg/kgで施す。その後における、さらなる各コホートの登録は、先行するコホート内で観察される用量制限毒性(DLT)の数により制限されうる。必要な場合は、用量漸減コホート(3mg/kgのREGN2810を伴うかまたは伴わない、0.3mg/kgのmAb1)を登録する。
【0340】
用量漸増の規則
mAb1単剤療法コホートおよびmAb1+REGN2810コホートの両方で、全ての用量レベルについて評価するために、従来の3+3デザインの改変形(「4+3」)を使用する。各用量レベルにおいて、最小で3例の患者は、DLTについて評価可能であることが要求されるが、患者が、DLTについて評価可能となる前に中止する場合、患者の安全性を維持しながら、フェーズ1における用量漸増の効率を最大化するには、各用量レベルにおいて、4例の患者を登録する。DLTの評価期間は、28日間である。用量レベルの耐容性は、全ての潜在的なDLT評価可能患者が、28日間のDLT期間を、DLTを伴わずに(3例中0例、または4例中0例)完了した場合に限り達成される。3例の患者が、DLTを経ずにDLT期間を完了したが、4例目の患者が、DLT評価期間内にある場合、用量レベルの耐容性は、4例目の患者が、DLT評価期間を完了するか、またはDLTについて評価可能となる前に治療を中断した場合に限り達成される。DLT評価可能患者3または4例のうち、1例にDLTが見られる場合は、合計7例の患者となるように、4または3例のさらなる患者(それぞれ)を登録する。同様に、6例中1例または7例中1例のDLTも、耐容性を示し得ると考えられる。評価可能患者2〜7例中2例のDLTは、最大耐量(MTD)を超えているであろう。耐容性を示した最高用量レベルで、安全性についてさらに評価するために、DLT評価可能患者がのべ6〜10例となるように、さらなる患者3〜4例を登録する。6〜8例中0〜1例、または9〜10例中2例のDLTは、許容可能であると考えられるであろう。安全性についてさらに評価するために、後援者の裁量(研究者による診察)により、さらなる患者3例を、任意の用量レベルで登録することができる。
【0341】
1.0mg/kgのmAb1(用量レベル1;DL1)が安全(患者3〜7例の後で)であるとみなされる場合、登録は、3.0mg/kgのmAb1(DL2)で開始されるであろう。DL2における患者4例の登録後、第1の組み合わせコホート(1.0mg/kgのmAb1+3.0mg/kgのREGN2810;DL3)における登録を始めることができる。3.0mg/kgのmAb1(DL2)が安全であるとみなされたら、10mg/kgのmAb1(DL4)への用量漸増を開始することができる。第2の組み合わせコホート(3.0mg/kgのmAb1+3.0mg/kgのREGN2810;DL5)は、DL2およびDL3の両方が安全であるとみなされた後に限り登録される。第3の組み合わせコホート(10mg/kgのmAb1+3.0mg/kgのREGN2810;DL6)は、DL4およびDL5の両方が安全であるとみなされた後に限り登録される。複数のコホートを同時に開く場合は、番号の小さなコホート(すなわち、DL3よりもDL2またはDL4よりもDL3)を優先する。
【0342】
用量制限毒性
用量漸増または新たな組み合わせ療法を開始するために、安全性を決定するためのDLT観察期間を、サイクル1、1日目から始まる28日間であって、研究薬(必要に応じて、REGN2810を伴うかまたは伴わないmAb1)の最初の2用量の安全性および耐容性をモニタリングすることを意図する28日間と規定する。DLTについて評価可能であるには、患者は、DLT期間を完了する前に、研究薬の、少なくとも最初の2用量(すなわち、1日目および22日目)を施され、初回の投与の後、少なくとも28日間にわたりモニタリングされ、2回目の投与から、またはDLT(下記で規定する)を経てから、少なくとも7日間にわたりモニタリングされなければならない。研究薬の2回目の用量の、35日目を越えた投与における遅延、および/または研究薬の中断は、研究薬関連であるならば、DLTと考えられる。したがって、その2回目の用量が遅延した患者、およびAEを経た患者では、DLT観察期間の持続期間が長くなり、事象がDLTであったのかどうかを決定するためには、持続期間も評価しなければならない。
【0343】
用量#2を、ウィンドウ(window)内で投与できない(研究薬の毒性に起因して)ことに加えて、DLTは一般に、研究薬に関連する以下の毒性のうちのいずれかとしても規定される。
【0344】
非血液学的毒性:
・グレード≧2のブドウ膜炎
・グレード≧3の任意の非血液学的毒性(アミラーゼまたはリパーゼ無症状性の上昇など、臨床的に重要でない検査室異常を除く)
【0345】
血液学的毒性:
・>7日間にわたり持続する、グレード4の好中球減少症
・グレード4の血小板減少症
・出血を伴う、グレード3の血小板減少症
・グレード≧3の発熱性好中球減少症、または感染症の記録を伴う、グレード≧3の好中球減少症
【0346】
DLTの定義を満たすirAEおよび非irAEのいずれも、DLTであると考えられる。
【0347】
最大耐量
MTDとは、評価可能患者6〜7例中2例またはこれを超えるDLTに起因して、投与を停止させるレベルのすぐ下の用量レベルと規定され、単剤療法および組み合わせ療法について個別に決定される。しかし、REGN2810および他のPD−1/PD−L1抗体による単剤療法に起因して、AEの既知の発生のために、組み合わせコホートについて、MTDを決定し、用量レベルにおける、さらなる患者の追加を決定するときに、組み合わせ毒性の強度、頻度、および新規性を考慮することができる。DLTのために用量漸増を停止させない場合、MTDは、決定されていないと考えられる。最高用量レベルに耐容性を示すとみなされた単剤療法コホートおよび組み合わせコホートの各々には、さらに3例の患者を登録する(すなわち、これらのコホートの各々における患者は6〜10例となる)。mAb1の単剤療法またはREGN2810との組み合わせ療法のための用量漸増を、DLTのために、1.0mg/kgで停止させる場合、コホートを、0.3mg/kgの用量で登録する。mAb1の単剤療法または組み合わせ療法のための用量漸増を、DLTのために、3.0または10mg/kgの用量レベルで停止させる場合、新たに登録された患者(それぞれ、単剤療法コホートまたは組み合わせ療法コホートにおける)には、mAb1の用量を、既に調べた用量レベルへと低減する。いかなる患者も、組み合わせ療法を、単剤療法として耐容性を示すことができなかったmAb1の用量で開始することを許容されない。
【0348】
推奨フェーズ2用量
拡大コホートのためのRP2Dは、MTDまたは被験最高用量より高用量ではなく、単剤療法コホートおよび組み合わせ療法コホートで異なりうる。RP2Dの決定は、安全性データおよびPKデータに基づく。
【0349】
単剤療法コホート内の患者であって、4用量のmAb1に耐容性を示し、少なくともSDの初回腫瘍評価を有するが、その後、PDを実証している患者は、LAG−3の遮断とPD−1の遮断との組み合わせによる応答「をレスキューし」ようとする試みにおいて、3.0mg/kgのREGN2810を、その時点まで安全に投与されている、最高用量(既知の場合)のmAb1に追加する選択肢を有する。
【0350】
拡大コホート
mAb1の耐容性を、単独およびREGN2810との組み合わせで確立したら、えり抜きの適応[非小細胞肺がん(NSCLC)、明細胞腎臓がん(ccRCC)、トリプルネガティブ乳がん(TNBC)、黒色腫、およびびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)]において、単剤療法または組み合わせ療法を使用する複数の拡大コホートを登録し、安全性についてさらに評価し、LAG3を発現または過剰発現することが公知であり;単独であるかまたはREGN2810と組み合わせたmAb1の抗腫瘍活性が生じうる腫瘍における抗腫瘍活性についての予備的な証拠を得る。拡大コホートへの登録は、用量漸増が完了した後で始める。RP2Dを確認した後で、サイモン(Simon、1989年、Controlled Clinical Trials、10巻:1〜10頁)による2段階のデザインを活用する、さらなる、10の拡大コホート(表19)を登録する。患者を、患者の腫瘍型、既往の抗PD−1/抗プログラム細胞死リガンド1(PD−L1)療法の存在または非存在、治療レジメンの、その患者への適切性についての研究者の評価、割りつけられた処置コホートにおける患者枠の利用可能性に基づき、具体的な処置コホートへと割りつける。サイモンによる2段階のデザインの第1段階で、個々の拡大コホートにおいて、安全性問題が発生した場合は、登録を中止することができる。研究者と、Regeneron社との議論の後、同用量または低用量のmAb1で、登録を再開することができる。中止を惹起する安全性問題は、早期の安全性事象を含む場合もあり、後期の安全性事象を含む場合もあろう。患者を、mAb1(用量漸増所見により決定された用量)の単剤療法またはmAb1と3mg/kgのREGN2810との組み合わせで、Q3Wで、最大で51週間にわたり処置する。各拡大コホートのための第2段階の登録は、第1段階で、最小数の腫瘍応答が観察された場合に限り行う。
【表19】
【0351】
研究集団
用量漸増フェーズにおける研究集団:進行性悪性疾患を有する患者であって、抗LAG3薬および/またはPD−1/PD−L1阻害剤による既往の治療を施されておらず、かつ、標準治療の候補者ではないか、または臨床有益性をもたらすことが予測される実施可能な治療が存在しない患者、および治癒不能であり、標準治療(standard therapy)にも拘わらす、応答しなかったか、または腫瘍の進行を示した悪性疾患を伴う患者。
【0352】
用量拡大コホートにおける研究集団:えり抜きの悪性疾患を伴う患者であって、抗LAG3薬による既往の治療を施されておらず、
・過去に、抗PD−1/PD−L1による治療を施されていないが、抗PD−1ベースの治療を施すのに適切な候補者である患者(コホート1、3、5、6、および9);
または
・過去に、抗PD−1/PD−L1ベースの治療を施され、抗PD−1/PD−L1療法時の、少なくとも3カ月間にわたり、客観的応答(CRまたはPR)もしくはSDを確認したが、その後、その治療時に進行した患者、または最良の応答として、SDもしくはPRを示し、その後、6カ月間にわたり安定的応答を示した患者(コホート2、4、7、および10);
または
・標準治療の候補者ではないか、または臨床有益性をもたらすことが予測される実施可能な治療が存在せず、かつ、mAb1単剤療法に適切な患者(コホート8)。
【0353】
組入れ基準:患者は、研究への組入れに適格であるためには、以下の基準:
1.≧18歳の男女であること;
2.用量漸増コホート:腫瘍の進行が実証された悪性疾患(リンパ腫を含む)についての、組織学的または細胞学的に確認された診断を伴う患者であって、標準治療(standard of care)による、代替的な治療的選択肢が存在しないか、または治癒の潜在的可能性を伴う、代替的な標準治療(standard of care)が存在せず(すなわち、標準治療(standard therapy)にも拘わらす、腫瘍進行に応答できなかったか、またはこれを発症し)、かつ、過去に、PD−1/PD−L1阻害剤で処置されていない患者。これらの患者は、RECIST 1.1基準またはルガノ基準に従う、測定可能な疾患を要求しない。
3.用量拡大コホート:RECIST 1.1基準またはルガノ基準に従う、測定可能な疾患を伴う以下の腫瘍のうちの1つについての、組織学的または細胞学的に確認された診断を伴う患者であって、以下の基準を満たす患者。
i.抗PD−1/PD−L1を経ていない、病期IIIBまたはIVのNSCLCを患う患者であって、転移性疾患のための既往の治療を伴わないか、または1つの白金含有レジメンの後で、疾患の進行/再発を伴う患者(コホート1);
ii.抗PD−1/PD−L1を経た
*、病期IIIBまたはIVのNSCLCを患う患者であって、転移性疾患のための、2つを超えない既往の治療を伴う患者(コホート2);
iii.抗PD−1/PD−L1を経ていない、明細胞の構成要素を伴う、進行ccRCCまたは転移性ccRCCを患う患者であって、抗血管新生治療の、1つ〜2つの既往のレジメンを施された患者(コホート3);
iv.抗PD−1/PD−L1を経た
*、明細胞の構成要素を伴う、進行ccRCCまたは転移性ccRCCを患う患者であって、抗血管新生治療の、1つ〜2つの既往のレジメンを施された患者(コホート4);
v.抗PD−1/PD−L1を経ていない、転移性TNBC(エストロゲン、プロゲステロン、およびヒト表皮増殖因子受容体2陰性である)を患う患者であって、5つまたはこれより少ない、既往の一連の治療を施された患者(コホート5);
vi.抗PD−1/PD−L1を経ていない、進行黒色腫または転移性黒色腫を患う患者であって、転移性疾患のための、2つを超えない既往のレジメンを施された患者(コホート6);
vii.抗PD−1/PD−L1を経た
*、進行黒色腫または転移性黒色腫を患う患者であって、転移性疾患のための、2つを超えない既往のレジメンを施された患者(コホート7);
viii.抗PD−1/PD−L1を経ていない、再発性/不応性のDLBCLを患う患者であって、自家幹細胞移植の後で進行しているか、またはその候補者ではない患者(コホート8および9)
ix.抗PD−1/PD−L1を経た
*、再発性/不応性のDLBCLを患う患者であって、自家幹細胞移植の後で進行しているか、またはその候補者ではない患者(コホート10);
注:
*抗PD−1/PD−L1を経たとは、抗PD−1/PD−L1療法に耐容性を示したか、または耐容性を示しつつあり(すなわち、毒性のために中断せず)、
a.イメージングの反復により確認されるCR/PR、または疾患進行の前における、初回用量から、少なくとも12週間にわたるSD。疾患進行は、抗PD−1/PD−L1による治療中であるか、または最終回の用量から12週間以内に起こったものでなければならない。
b.抗PD−1/PD−L1療法中における、その後6カ月間にわたる安定的な応答(ベースラインから、70%を超えない低下)を伴う、最良の応答としてのSDまたはPR
のいずれかにより病勢コントロールを示していることと規定される。
4.Eastern Cooperative Oncology Group performance statusが0または1であること;
5.平均余命が少なくとも3カ月間であること;
6.以下の通りの、十分な臓器機能および骨髄機能:(a)ヘモグロビン≧9.0g/dL;(b)1L当たりの絶対好中球カウント≧1.5×10
9個;(c)1L当たりの血小板カウント≧75×10
9個;(d)血清クレアチニン≦1.5×正常上限(ULN)または1.73m
2当たり1分間当たりの推定糸球体濾過率>50mL;(e)総ビリルビン≦1.5×ULN;(f)アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼおよびアラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)≦3×ULN、または肝転移の場合、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼおよびアラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)≦5×ULN;および/または(g)アルカリホスファターゼ≦2.5×ULN(または肝転移または骨転移の場合、アルカリホスファターゼ≦5.0×ULN);
7.診療所への来院および研究に関連する手順を遵守する意思があり、そうすることが可能であること;
8.署名したインフォームドコンセントを提出すること
を満たさなければならない。
【0354】
除外基準:以下の基準:1.別の研究で、現在処置を施されているか、または研究治療の初回用量から4週間以内に、治験薬についての研究に参加し、処置を施されたか、もしくは治験デバイスを使用したか、または研究治療の初回用量から3週間以内に、承認されている全身療法による処置を施されたか、または研究治療の初回用量から5半減期以内に、任意の既往の全身療法を施された(いずれかより長期の期間内に施された)こと。拡大コホート2、4、7、10(抗PD−1/PD−L1を経た)に限り、薬物の半減期または承認状態に関わらず、既往の抗PD−1/PD−L1療法が、研究治療の初回の投与から3週間以内に施されていてはいけない;2.LAG−3をターゲティングする、任意の生物学的分子または低分子による既往の処置;3.無作為化の前2週間以内の放射線療法、および放射線に起因する任意のAEから、ベースラインへと回復していないこと;4.拡大コホートだけ:進行しているか、または能動的な処置を要求する、別の悪性疾患であって、治癒をもたらす可能性のある治療を受けた非黒色腫性皮膚がん(non−melanomatous skin cancer)、もしくは原位置子宮頸癌、または登録前の少なくとも2年間にわたり、効果的に処置され、決定的な局所コントロールを伴うとみなされた、任意の他の腫瘍を除く悪性疾患;5.処置されていないか、または活性の中枢神経系転移。中枢神経系転移を過去に処置された患者も、安定であり(すなわち、研究処置の初回用量の前、少なくとも6週間にわたり、イメージングによる進行の証拠を伴わず、いかなる神経学的症状も、ベースラインに戻っており)、新たな中枢神経系転移の証拠または中枢神経系転移の拡大の証拠がみられず、REGN2810の初回用量の前4週間以内に、中枢神経系転移の管理のために、全身コルチコステロイドを要求しないという条件で参加しうる;6.インフォームドコンセントの前年における、脳炎、髄膜炎、またはコントロール不能の発作;7.irAEの危険性を示唆しうる、全身免疫抑制処置による処置を要求した、著明な自己免疫疾患の、進行中の証拠または近年(5年以内)の証拠。以下:白斑、消散した小児喘息、ホルモン置換法だけを要求した甲状腺機能低下症、全身処置を要求しない1型糖尿病または乾癬は、除外を要さない;8.研究薬の初回用量前1週間以内の、コルチコステロイド治療(1日当たり>10mgのプレドニゾンまたは同等物)。短期クールのステロイドを要求する患者は、除外されない;9.間質性肺疾患または活動性の非感染性肺炎の、既知の既往歴または任意の証拠(過去5年間における);10.コントロール不能の、ヒト免疫不全ウイルス感染、B型肝炎の感染、もしくはC型肝炎の感染;または免疫不全症の診断;11.全身療法を要求する、活動性の感染;12.研究投薬の開始予定の30日以内における、生ワクチンの施与;13.スクリーニングの前4週間以内における、大手術、直視下生検、または著明な外傷損傷;14.研究治療の初回用量の前9カ月以内の心筋梗塞;15.既往の同種幹細胞移植;16.研究者の見解では、研究への参加を、患者の最良の利益としない、任意の医学的状態;17.抗体処置に帰せられる、アレルギー性過敏性反応または急性過敏性反応の記録;18.ドキシサイクリンまたは他のテトラサイクリン抗生物質に対する既知のアレルギー;19.研究の要件に適う参加を妨げる、公知の精神科障害または物質乱用障害;20.研究中に避妊を行うことを望まない、性的に活動的な男性または出産の潜在的可能性がある女性。研究の計画された期間(スクリーニング来院〜研究薬の最終用量の180日後)内に、妊娠しているか、授乳しているか、もしくは妊娠が予想される女性、または子供の父親となる予定の男性;21.初回の処置の開始前、研究の間、および研究薬の最終用量を投与した後、少なくとも6カ月間にわたり、適切な避妊を行うことを望まない、性的に活動的な男性または出産の潜在的可能性がある女性であることのうちのいずれかを満たす患者は、研究から除外されるであろう。
【0355】
研究処置
単剤療法:mAb1を、外来患者の状況において、以下の単剤療法用量:
・DL1:51週間にわたり、21日ごとに30分間にわたる、1.0mg/kgのmAb1のIV注入
・DL2:51週間にわたり、21日ごとに30分間にわたる、3.0mg/kgのmAb1のIV注入
・DL4:51週間にわたり、21日ごとに30分間にわたる、10mg/kgのmAb1のIV注入
・DL−1m:51週間にわたり、21日ごとに30分間にわたる、0.3mg/kgのmAb1のIV注入(必要な場合)
で、最大51週間まで、21日ごとに30分間にわたるmAb1の静脈内(IV)注入により投与する。
【0356】
組み合わせ療法:組み合わせ療法のための、研究薬投与の順序は、最初にmAb1、その後に同日のREGN2810である。研究薬を、外来患者の状況において、最大51週間まで、21日ごとに各々30分間にわたるIV注入により投与する。割りつけが予定される組み合わせレジメンは、
・DL3:51週間にわたり、21日ごとに30分間にわたる、1.0mg/kgのmAb1、および3.0mg/kgのREGN2810のIV注入
・DL5:51週間にわたり、21日ごとに30分間にわたる、3.0mg/kgのmAb1、および3.0mg/kgのREGN2810のIV注入
・DL6:51週間にわたり、21日ごとに30分間にわたる、10.0mg/kgのmAb1、および3.0mg/kgのREGN2810のIV注入
・DL−1c:51週間にわたり、21日ごとに30分間にわたる、0.3mg/kgのmAb1、および3.0mg/kgのREGN2810のIV注入(必要な場合)
を含む。
【0357】
研究エンドポイント
主要エンドポイント
用量漸増フェーズにおける主要エンドポイント:DLT率、有害事象(AE;免疫関連AEを含む)、重篤な有害事象(SAE)、死、および検査室異常(有害事象共通用語規準[CTCAE]にしたがってグレード3またはこれを超える)、ならびにPK
【0358】
用量拡大フェーズにおける主要エンドポイント:RECIST 1.1(充実性腫瘍)およびルガノ基準(リンパ腫)に基づく客観的奏効率(ORR)
【0359】
副次的エンドポイント
充実性腫瘍における免疫関連応答評価基準(irRECIST)に基づくORR;RECIST、irRECIST、およびルガノ基準に基づく、最良全奏効(BOR)、応答持続期間(DOR)、病勢コントロール率、および無増悪生存(PFS);AE(免疫関連AEを含む)、SAE、死、および検査室異常(CTCAEにしたがってグレード3またはこれを超える);PKおよびADA
【0360】
手順および評価
mAb1単独またはREGN2810と組み合わせたmAb1の安全性および耐容性を、AEについての臨床評価、ならびにバイタルサイン(体温、血圧、脈、および呼吸)、身体検査(完全検査および限定検査)、12リード式心電図(ECG)、および標準的な血液学、化学、および尿検査を含む検査室評価を含む臨床評価の測定の繰り返しによりモニタリングする。
【0361】
血清試料中およびADA(抗mAb1または抗REGN2810)試料中の、機能的なmAb1および機能的なREGN2810を決定するための血液試料を回収する。血清試料および血漿試料を、さらなるバイオマーカーの解析のために回収する。mAb1処置およびREGN2810処置への曝露、臨床活性、または基礎疾患に関する、推定薬力学バイオマーカー、予測バイオマーカー、および予後診断バイオマーカーを、血清中、血漿中、末梢血単核細胞(PBMC)中、および腫瘍組織中で調べる。抗腫瘍活性について、CTおよびMRIにより評価する。ゲノムDNA試料を、任意選択の薬理遺伝学的副次研究に同意した患者から回収する。
【0362】
結果
研究では、mAb1の投与は、安全であり、進行性悪性疾患を有する患者により、十分に耐容性を示すことが予測される。3mg/kgのREGN2810との組み合わせは、非小細胞肺がん、黒色腫、明細胞腎臓がん、B細胞リンパ腫、または乳がんなどの充実性腫瘍を伴う患者におけるORRにより評価される通り、腫瘍退縮をもたらすことが予測される。
【0363】
本発明の範囲は、本明細書で記載される具体的実施形態により限定されない。実際、本発明前出の記載および添付の図面から、当業者には、本明細書で記載される改変に加えて、多様な改変が明らかとなるであろう。このような改変は、添付の特許請求の範囲内に収まることが意図される。