(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6872538
(24)【登録日】2021年4月21日
(45)【発行日】2021年5月19日
(54)【発明の名称】メディア伝送システムにおけるビデオビットストリームのランダムアクセス及び再生方法
(51)【国際特許分類】
H04N 19/85 20140101AFI20210510BHJP
H04N 19/70 20140101ALI20210510BHJP
【FI】
H04N19/85
H04N19/70
【請求項の数】9
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2018-518423(P2018-518423)
(86)(22)【出願日】2016年10月12日
(65)【公表番号】特表2018-534850(P2018-534850A)
(43)【公表日】2018年11月22日
(86)【国際出願番号】KR2016011422
(87)【国際公開番号】WO2017065491
(87)【国際公開日】20170420
【審査請求日】2019年7月11日
(31)【優先権主張番号】10-2015-0142468
(32)【優先日】2015年10月12日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】503447036
【氏名又は名称】サムスン エレクトロニクス カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100121382
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 託嗣
(72)【発明者】
【氏名】チェ,ビョン−ドゥ
(72)【発明者】
【氏名】パク,キョン−モ
(72)【発明者】
【氏名】ペ,ジェ−ヒョン
(72)【発明者】
【氏名】ソ,ヨン−ワン
(72)【発明者】
【氏名】ソン,ジェ−ヨン
(72)【発明者】
【氏名】ヤン,ヒョン−ク
【審査官】
岩井 健二
(56)【参考文献】
【文献】
特開2014−072854(JP,A)
【文献】
特開2008−067364(JP,A)
【文献】
国際公開第2014/107250(WO,A1)
【文献】
国際公開第2013/044075(WO,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2015/0237377(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2015/0085938(US,A1)
【文献】
Sachin Deshpande and Andrew Segall,On Leading Pictures,Joint Collaborative Team on Video Coding (JCT-VC) of ITU-T SG 16 WP 3 and ISO/IEC JTC 1/SC 29/WG 11,9th Meeting: Geneva, Switzerland,2012年 4月,JCTVC-I0275,pp.1-3
【文献】
Kimihiko Kazui et.al.,AHG9: Simple HEVC stream editing,Joint Collaborative Team on Video Coding (JCT-VC) of ITU-T SG 16 WP 3 and ISO/IEC JTC 1/SC 29/WG 11,11th Meeting: Shanghai, CN,2012年10月,JCTVC-K0140,pp.1-14
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 19/00 − 19/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
グループオブピクチャ(GOP)を配信するビットストリームを再生する方法であって、
第1のピクチャにランダムアクセスが発生する場合、前記第1のピクチャに続く少なくとも一つの第2のピクチャのネットワーク抽出層(NAL)ユニットヘッダーをパーシングして前記少なくとも一つの第2のピクチャのNALユニットタイプを決定するステップと、
前記決定されたNALユニットタイプに基づいて前記少なくとも一つの第2のピクチャを前記ビットストリームから除去するステップと、
前記少なくとも一つの第2のピクチャが除去された前記ビットストリームを復号化し表示するステップと、
を有し、
前記第1のピクチャは、前記ビットストリームから除去された少なくとも一つの前記第2のピクチャを復元するために必要とされる時間に相当する復元時間に、追加的に反復して表示されることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記NALユニットタイプが前記少なくとも一つの第2のピクチャが前記第1のピクチャのリーディングピクチャであることを示す場合に、前記少なくとも一つの第2のピクチャは前記ビットストリームから除去されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記少なくとも一つの第2のピクチャの前記NALユニットタイプは、ランダムアクセス復号可能リーディングピクチャ(RADLピクチャ)またはランダムアクセススキップリーディングピクチャ(RASLピクチャ)であることを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記第1のピクチャは少なくとも一つのリーディングピクチャを有するクリーンランダムアクセス(CRA)ピクチャであることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記ランダムアクセスは前記ビットストリームのスイッチングにより発生することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項6】
グループオブピクチャ(GOP)を配信するビットストリームを再生する装置であって、
前記ビットストリームを受信する送受信部と、
第1のピクチャにランダムアクセスが発生する場合、前記第1のピクチャに続く少なくとも一つの第2のピクチャのネットワーク抽出層(NAL)ユニットヘッダーをパーシングして前記少なくとも一つの第2のピクチャのNALユニットタイプを決定し、前記決定したNALユニットタイプに基づいて前記少なくとも一つの第2のピクチャを前記ビットストリームから除去し、前記少なくとも一つの第2のピクチャが除去された前記ビットストリームを復号化し表示する制御部と、
を含み、
前記制御部は、前記ビットストリームから除去された少なくとも一つの前記第2のピクチャを復元するために必要とされる時間に相当する復元時間に、前記第1のピクチャを追加的に反復して表示する制御を実行することを特徴とする装置。
【請求項7】
前記NALユニットタイプが、前記少なくとも一つの第2のピクチャが前記第1のピクチャのリーディングピクチャであることを示す場合に、前記制御部は前記少なくとも一つの第2のピクチャを前記ビットストリームから除去することを特徴とする請求項6に記載の装置。
【請求項8】
前記少なくとも一つの第2のピクチャの前記NALユニットタイプはランダムアクセス復号可能リーディングピクチャ(RADLピクチャ)またはランダムアクセススキップリーディングピクチャ(RASLピクチャ)であることを特徴とする請求項7に記載の装置。
【請求項9】
前記第1のピクチャは少なくとも一つのリーディングピクチャを有するクリーンランダムアクセス(CRA)ピクチャであることを特徴とする請求項6に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リアルタイムマルチメディアトランスポートプロトコルにおけるメディア再生方法に関するもので、特に、MPEG(Moving Picture Experts Group)メディアトランスポート(MMT)プロトコルにより伝送されるビットストリームのランダムポイントにアクセスして、より高速にメディアを再生するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
MMTにおいて、SAP(Stream Access Point)タイプ2、SAPタイプ3に対応する位置(ポイント)でランダムアクセス(random access)が発生する場合、端末は、イントラランダムアクセスポイント(IRAP)ピクチャ(picture)を復元できる。
【0003】
端末は、復元されたIRAPピクチャに関連するリーディングピクチャ(leading picture)をすべて復号化(decoding)した後に、表示順序に従ってリーディングピクチャを表示し、その後IRAPピクチャを表示するようになる。すなわち、ランダムアクセスの発生により、端末が関連リーディングピクチャを復号化する時間だけの遅延が発生している。
【0004】
したがって、チャンネルスイッチングまたはビットストリームスイッチングによりランダムアクセスが発生する場合、端末がIRAPピクチャを復元するためには、リーディングピクチャの個数だけ(復号化及び/または表示による)遅延時間が長くなるという問題が発生する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、上記した従来技術の問題点を解決するために、本発明の目的は、端末がビットストリームでランダムアクセスを実行する場合に、リーディングピクチャの復号化により発生する遅延を減少させる方法を提供することにある。
【0006】
本発明の他の目的は、端末がビットストリームにランダムアクセスすることで発生する遅延を減少させる場合に、PT(Presentation Time)同期化を保証する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記のような目的を達成するために、本発明の一態様によれば、グループオブピクチャ(GOP)を配信するビットストリームを再生する方法が提供される。その方法は、第1のピクチャにランダムアクセスが発生する場合、第1のピクチャに続く少なくとも一つの第2のピクチャのネットワーク抽出層(NAL)ユニットヘッダーをパーシングして、少なくとも一つの第2のピクチャのNALユニットタイプを決定するステップと、決定されたNALユニットタイプに基づいて少なくとも一つの第2のピクチャをビットストリームから除去するステップと、少なくとも一つの第2のピクチャが除去されたビットストリームを復号化し表示するステップと、を有する。
【0008】
本発明の他の態様によれば、グループオブピクチャ(GOP)を配信するビットストリームを再生する装置が提供される。上記装置は、ビットストリームを受信する送受信部と、第1のピクチャにランダムアクセスが発生する場合、第1のピクチャに続く少なくとも一つの第2のピクチャのネットワーク抽出層(NAL)ユニットヘッダーをパーシングして、少なくとも一つの第2のピクチャのNALユニットタイプを決定し、決定したNALユニットタイプに基づいて少なくとも一つの第2のピクチャをビットストリームから除去し、少なくとも一つの第2のピクチャが除去されたビットストリームを復号化し表示する制御部とを含む。
【0009】
本発明は、端末のビデオストリーム再生方法において、SAPタイプ2,3のランダムアクセスポイント(RAP)にランダムアクセスが発生したときに、ビットストリーム中のNALユニットヘッダーをパーシングしてリーディングピクチャの有無を把握し、リーディングピクチャが存在する場合、復号化の前にリーディングピクチャに対応するNALユニットデータを除去し、後続するトレイルピクチャ(trail picture)を復号し表示する方法を提供する。
【0010】
また、本発明は、リーディングピクチャを除去してIRAPピクチャ及びトレイルピクチャを表示する場合、サーバ側で受信した復号化されたピクチャの構成(composition)PTをリーディングピクチャの個数だけ操り上げて表示する方法を提供する。
【0011】
さらに、本発明は、IRAPピクチャを復号化し、IRAPピクチャをリーディングピクチャの個数だけ操り上げて表示し、IRAPピクチャをリーディングピクチャの個数だけ反復して表示するステップをさらに有する方法を提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、ビデオストリームに対するランダムアクセスの発生時に、ビットストリーム中においてIRAPピクチャ以後にリーディングピクチャが存在する場合、リーディングピクチャを処理し、ビデオシーケンスを表示できる。それによって、本発明による端末は、高速なランダムアクセス再生を可能にし、SAPタイプ2、またはSAPタイプ3のビットストリームに対してランダムアクセスを実行できる。
【0013】
本発明による端末は、SAPタイプ2,3に対応するRAPへのランダムアクセスが発生したときに、ビデオビットストリーム中のNALユニットヘッダーをパーシング(parsing)することで、リーディングピクチャの存在有無を把握できる。リーディングピクチャが存在する場合に、端末は、復号化する前にリーディングピクチャに対応するNALユニットデータを除去することで、続くトレイルピクチャを高速に復号し表示できる。
【0014】
本発明による端末は、リーディングピクチャを除去し、IRAPピクチャ及びトレイルピクチャを表示する場合、サーバから受信した復号化されたピクチャの既存の構成PTを、リーディングピクチャの個数だけ操り上げることができる。
【0015】
本発明による端末は、リーディングピクチャを除去しIRAPピクチャを復号化した後に、IRAPピクチャをリーディングピクチャの個数だけ操り上げて表示し、IRAPピクチャをリーディングピクチャの個数だけ反復して表示し、その後、トレイルピクチャを復号し表示することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】GOP内のクリーンランダムアクセス(CRA)ピクチャの復号化と表示を、リーディングピクチャに関連して示す図である。
【
図2】ランダムアクセススキップリーディング(Random Access Skipped Leading、RASL)ピクチャと、ランダムアクセス復号可能リーディング(Random Access Decodable Leading、RADL)ピクチャとの関係を説明する図である。
【
図3】IRAPピクチャを表示するまで発生する遅延を示す図である。
【
図4】ビットストリームからリーディングピクチャを除去する方法を例示する図である。
【
図5】ビットストリーム中のリーディングピクチャを除去し、IRAPピクチャを反復表示する方法を示す図である。
【
図6】本発明による端末のランダムアクセスをサポートするビットストリーム再生方法を示す図である。
【
図7】本発明の実施形態により、GOP伝送ビットストリームを再生する端末の構成を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の望ましい実施形態を添付の図面を参照して詳細に説明する。
【0018】
下記の説明で、本発明に関連した公知の機能又は構成に関する具体的な説明が本発明の要旨を不明にすると判断された場合に、その詳細な説明を省略する。また、後述する用語は、本発明の機能を考慮して定義されたものであって、ユーザー、オペレータの意図、又は慣例によって変化しうる。したがって、上記用語は、本明細書の全体内容に基づいて定義されなければならない。
【0019】
本発明の詳細な説明に先立って、本明細書で使用される一部用語に対して解析可能な意味の例を提示する。しかしながら、以下に提示する解析例に限定されるものではないことに注意すべきである。
【0020】
サーバは、端末と通信する一つのエンティティであって、基地局、NodeB(NB)、eNodeB(eNB)、AP(Access Point)とも称される。
【0021】
ユーザー装置(端末)(User Equipment)は、基地局と通信する一つのエンティティであって、UE、移動局(MS)、移動装備(ME)、デバイス、ターミナルと称されることもできる。
【0022】
ISOBMFF(ISO Base Media File Format)で定義した6個のSAPタイプのうち、タイプ1のみをサポートするMMTシステムは、各MPU(Media Processing Unit)の最初のサンプルをランダムアクセスポイント(RAP)アクセスユニット(AU)として指定し、シグナリングメッセージを通じて第1のAUのプレゼンテーション時間(PT)を知らせる。
【0023】
SAPタイプ1は、最も広く使われるランダムアクセス方式ではあるが、SAPタイプ2〜6が有する高速なアクセス、高いコーディング効率等の長所はサポートしない。特に、SAPタイプ2、タイプ3は、HEVC(High Efficiency Video Coding)で定義されたCRA(Clean Random Access)、BLA(Broken Link Access)のようなリーディングピクチャハンドリングを通じて、SAPタイプ1に比べて高いコーディング利得を、オープンGOP(Group Of Picture)を通じて可能にする。ここで、リーディングピクチャは、表示順序上、特定ピクチャより先にある(leading)ピクチャを意味する。
【0024】
図1A及び
図1Bは、GOP内のCRAピクチャの復号化と表示を、リーディングピクチャに関連して示す。
【0025】
図1Aはピクチャの復号順序(decoding order)を説明し、
図1Bはピクチャの表示順序を説明する。
図1A及び
図1Bは、例として、UEがCRAピクチャ100、Bピクチャ102、Bピクチャ104をこの順序で復号するが、Bピクチャ102、Bピクチャ104、CRAピクチャ100の順序で表示する場合を示す。Bピクチャ102及びBピクチャ104は、CRAピクチャ100のリーディングピクチャである。ここで、POC(Picture Of Count)は、ピクチャの表示順序を指示する値として理解できる。Bピクチャ102はPOC14を、Bピクチャ104はPOC15、CRAピクチャ100はPOC16を有する。
【0026】
CRAピクチャ100は、次のような特徴を有する。CRAピクチャ100は、符号化されたビデオシーケンスの中でランダムアクセスポイントとして指定される場合、直ちにCRAピクチャ100から復号化開始を可能に(facilitates)するピクチャである。CRAを利用する方法は、IDR(Instantaneous Decoding Refresh)より(6%程度)向上したコーディング効率を有する。CRA方法は、関連するCRAピクチャ100のリーディングピクチャ(例えば、Bピクチャ102)が、CRAピクチャ100以前の復号化されたピクチャ(例えば、Bピクチャ106、Bピクチャ108)を参照として使用することを可能にする。
図1Aにおいて、曲線矢印110,112は、Bピクチャ102が以前に復号化されたピクチャ106,108を参照として利用することを示す。CRAピクチャ100がランダムアクセスされると、復号順及び出力順(または表示順)においてCRAピクチャ100に続くピクチャが復号可能となる。
【0027】
例として、ISOBMFFで定義されたSAPタイプの特徴を以下の表に列挙する。
【0029】
<表1>において、T
SAPは、特定PT以後の復号可能時間の合計を示す。T
DECは、復号可能なピクチャの最も早いPTを示す。T
EPTは、復号可能な/復号不可能なピクチャの最も早いPTを示す。T
PTFは、RAPのPTを示す。
【0030】
例として、HEVCで定義されたRAPタイプを、以下の表に列挙する。
【0032】
例として、HEVCで定義されたリーディングピクチャのタイプを、以下の表に列挙する。
【0034】
図2は、RASLピクチャとRADLピクチャとの関係を示す。
【0035】
RADLピクチャ(Random Access Decodable Leading picture)及びRASLピクチャ(Random Access Skipped Leading picture)には、次のような特徴がある。RAPピクチャから復号化が開始される場合、RADLピクチャは、正確に復号可能なピクチャである。RAPピクチャにランダムアクセスが発生する場合、RASLピクチャは、正確に復号化されないピクチャである。任意のピクチャがリーディングピクチャである場合、リーディングピクチャは、RADLピクチャまたはRASLピクチャであり得る。
図2において、RAPピクチャがCRAピクチャ100である場合、Bピクチャ102とBピクチャ104は、CRAピクチャ100以後に復号化されるピクチャであるため、復号可能なピクチャ、すなわちRADLピクチャである。一方、Bピクチャ106とBピクチャ108は、CRAピクチャ100以前に復号化されなければならないピクチャであるので、RAPピクチャがCRAピクチャ100である場合、復号不可能なピクチャ、すなわちRASLピクチャである。
【0036】
上記したように、MMTにおいて、SAPタイプ2(すなわち、リーディングピクチャを有するIDRピクチャ)、SAPタイプ3(すなわち、リーディングピクチャを有するCRAまたはBLAピクチャ)に対応するピクチャにランダムアクセスが発生した場合、端末は、ランダムアクセスが発生したピクチャ(すなわち、IRAPピクチャ)に関連したリーディングピクチャをすべて復号化した後に表示順序に従ってリーディングピクチャを表示し、IRAPピクチャを表示している。したがって、端末は、ピクチャを表示するまでにリーディングピクチャによる遅延を経験する。
【0037】
図3A及び
図3Bは、IRAPピクチャを表示するまでに生じる遅延の例を示す。
【0038】
図3Aは復号順序の例を示し、
図3Bは表示順序の例を示す。ビットストリーム内で第1のピクチャ300にランダムアクセスが発生したが、第1のピクチャ300がランダムアクセス不可能なピクチャである場合、ランダムアクセスが可能なIRAPピクチャ302が復号化されるまでの遅延310が生じることがある。さらに、端末は、IRAPピクチャ302に関連したリーディングピクチャ304,305,306,307を復号化しなければならないので、関係のあるリーディングピクチャ304,305,306,307を復号化する時間だけの遅延312が発生しうる。例えば、チャンネルスイッチング又はビットストリームスイッチングによりランダムアクセスが発生する場合、端末がIRAPピクチャを復元するまでに、リーディングピクチャの個数に相当する遅延時間が発生しうる。遅延時間314が経過した後に、端末は、リーディングピクチャ304,305,306,307を表示し、IRAPピクチャ302を表示できる。ここで、トレイルピクチャ308は、IRAPピクチャ302に関係なく復号化及び表示されるピクチャを意味する。
【0039】
本発明は、リーディングピクチャの復元(すなわち、復号化及び表示)により発生するランダムアクセスの遅延時間を短縮する技術(方法及び装置)を提案する。
【0040】
本発明による第1の技術は、ビットストリーム中のリーディングピクチャを除去することにある。
【0041】
図4A及び
図4Bは、ビットストリーム中のリーディングピクチャを除去する方法の例を示す。
【0042】
図4Aはピクチャの復号順序を説明し、
図4Bはピクチャの表示順序を説明する。
【0043】
この方法で、ランダムアクセスが発生する場合、端末は、ビットストリームから一部ピクチャ(すなわち、ランダムアクセスが発生したIRAPピクチャのリーディングピクチャ)を表示せずに除去する。
【0044】
具体的に、ランダムアクセスが発生する場合、端末は、ピクチャごとにNAL(Network Abstraction Layer)ユニットヘッダー(NUH)に記録されるNALユニットタイプ(NUT)に基づいて、リーディングピクチャ402,403,404,405が存在するか否かを判定できる。HEVCビットストリームの場合、RAPピクチャの後に続くトレイルピクチャ408,409は、リーディングピクチャ402,403,404,405との依存性(dependency)がない。そのため、ビットストリーム中において、RADLピクチャ及びRASLピクチャのようなリーディングピクチャ402,403,404,405がすべて除去されても、トレイルピクチャ408,409の復号化に影響を与えない。したがって、上記方法による端末は、復号化する前にビットストリーム中のリーディングピクチャ402,403,404,405を除去することによって、リーディングピクチャ402,403,404,405の復号化により発生する遅延時間をなくすことができる。これによって、本発明の方法による端末は、IRAPピクチャ400だけでなく後に続くトレイルピクチャ408,409をより高速に復元(復号化及び表示)可能になる。
【0045】
具体的に、IRAPピクチャ、リーディングピクチャ(例えば、RADLピクチャ、RASLピクチャ)、及びトレイルピクチャのタイプは、符号化されたビットストリームのNUTにより識別できる。例えば、HEVCの場合、ピクチャタイプは、NUHの6NUTビットにて信号化できる。また、ISOBMFFに格納されたHEVCビットストリームの場合、端末は、HEVCConfigurationBoxのHEVCDecoderConfigurationRecordにおいて、NALユニットごとのNUT情報を識別することができる。
【0046】
端末は、NUT情報に基づいてビットストリーム中のリーディングピクチャを除去し、直ちに(リーディングピクチャの復号化及び表示による遅延時間なしに)IRAPピクチャとトレイルピクチャを表示可能になる。
【0047】
このとき、端末は、リーディングピクチャ402,403,404,405の個数だけ表示時間410を計算し、トレイルピクチャ408,409を既存のサーバ側から提供されたトレイルピクチャの構成PTから計算された表示時間410だけ繰り上げて表示できる。すなわち、端末は、IRAPピクチャ400を復号化した後、リーディングピクチャ402,403,404,405を復号化することなくすぐにIRAPピクチャ400を表示し、トレイルピクチャ408,409をIRAPピクチャ400の直後に復号し表示することができる。
【0048】
上記の第1の方法において、端末がIRAPピクチャを表示し、その直後にトレイルピクチャを表示する場合、以後のすべてのピクチャのPTを繰り上げなければならない。複数の機器がビットストリームをプレゼンテーションする場合に、いくつかのピクチャのPTが繰り上げられたことによりビットストリームが変更された場合、機器間でプレゼンテーションの同期が得られないことがある。そのため、本発明の第2の方法では、IRAPピクチャの次に表示されるトレイルピクチャのPTを操り上げることなく、IRAPピクチャのみを直ちに表示する。第2の方法では、端末は、リーディングピクチャの表示時間中にIRAPピクチャを繰り返し表示した後、トレイルピクチャの元々のPTにおいて、続く復号化されたトレイルピクチャを表示できる。
【0049】
図5A及び
図5Bは、ビットストリーム中のリーディングピクチャを除去してIRAPピクチャを反復して表示する方法の例を示す。
【0050】
図5Aはピクチャの復号順序を説明し、
図5Bはピクチャの表示順序を説明する。
【0051】
本発明の方法で、ランダムアクセスが発生した場合、端末は、DPBに格納された一部ピクチャ(すなわち、ランダムアクセスが発生したIRAPピクチャのリーディングピクチャ)を表示せずに除去する。
【0052】
具体的には、ランダムアクセスが発生した場合、端末は、各ピクチャのNUHに記録されたNUTによって、リーディングピクチャ502,503,504,505が存在するか否かを判定できる。HEVCビットストリームの場合、RAPピクチャの後に続くトレイルピクチャ508,509は、リーディングピクチャ502,503,504,505との依存性がない。従って、RADLピクチャ及びRASLピクチャのようなリーディングピクチャ502,503,504,505がすべて除去されても、トレイルピクチャ508,509の復号化に影響を与えない。したがって、この方法による端末は、復号化する前に、ビットストリーム中のリーディングピクチャ502,503,504,505を除去し、それによってリーディングピクチャ502,503,504,505の復号化により発生する遅延時間をなくすことができる。このように、本発明の方法による端末は、IRAPピクチャ500をより高速に復元(復号化及び表示)可能になる。
【0053】
具体的に、IRAPピクチャ、リーディングピクチャ(例えば、RADLピクチャ、RASLピクチャ)、及びトレイルピクチャのタイプは、符号化されたビットストリームのNUTにより識別できる。例えば、HEVCの場合、当該タイプは、NUHの6NUTビットにて信号化できる。また、ISOBMFFに格納されたHEVCビットストリームの場合、端末は、HEVCConfigurationBoxのHEVCDecoderConfigurationRecordにおいて、NALユニットごとのNUT情報を識別できる。
【0054】
端末は、NUT情報に基づいてビットストリーム中のリーディングピクチャを除去後直ちに(リーディングピクチャの復号化及びディスプレイによる遅延時間なしに)、IRAPピクチャを表示可能になる。
【0055】
このとき、端末は、リーディングピクチャ502,503,504,505の個数に相当する長さの表示時間510の間にIRAPピクチャを反復して表示する。端末は、サーバにて示されたトレイルピクチャの既存の構成PTにおいて、トレイルピクチャ508,509を表示できる。すなわち、端末は、リーディングピクチャ502,503,504,505を復号化することなく、IRAPピクチャ500を復号後直ちに表示し、トレイルピクチャ508,509を構成PTに表示することにより、機器間でプレゼンテーションを同期化できないとの問題を回避できる。
【0056】
この場合、端末は、すべての他のトレイルピクチャ508のPTを操り上げることができなくても、IRAPピクチャ500に対しては遅延時間をなくしてPTを操り上げることができる。そのため、チャンネルスイッチングなどの理由でランダムアクセスが発生したときに、最初のピクチャをできるだけ早く表示できるとの効果がある。すなわち、時間遅延中に何らの画面も表示されないとの現象を回避できる。
【0057】
図6は、本発明による端末のランダムアクセスをサポートするビットストリーム再生方法を示す。
【0058】
端末は、第1のピクチャ(例えば、CRAピクチャのようなIRAPピクチャ)にランダムアクセスが発生した場合、第1のピクチャに続く第2のピクチャのNALユニットヘッダーをパーシングして第2のピクチャのNUTを決定できる(600)。例えば、ビットストリームのスイッチングまたは伝送チャンネルのスイッチングが発生した場合に、ビットストリームにランダムアクセスが発生しうる。
【0059】
端末は、決定したNUTに基づいて、第2のピクチャをビットストリームから除去できる(602)。第2のピクチャは、表示順において、第1のピクチャ以前のリーディングピクチャであり得る。例えば、第2のピクチャのNUTは、RADLピクチャまたはRASLピクチャを指示できる。
【0060】
端末は、第2のピクチャが除去されたビットストリーム中の第1のピクチャ及び第1のピクチャに続くトレイルピクチャを復号化し表示できる(604)。このとき、リーディングピクチャに対応する第2のピクチャがビットストリームから除去されているので、第1のピクチャの表示PTは、第1のピクチャの構成PTよりも早い。具体的に、第1のピクチャは、構成PTよりも早く、第2のピクチャを復元するのに必要な時間までに表示される。
【0061】
このとき、トレイルピクチャの表示PTは繰り上げられることもあり、そうでないこともある。例えば、第1のピクチャの表示が第2のピクチャの復元に必要な時間だけ反復して表示される場合、トレイルピクチャのPTは繰り上げられない。
【0062】
図7は、本発明の実施形態により、GOP伝送ビットストリームを再生する端末の構成を概略的に示す。
【0063】
端末700は、他の通信装置またはネットワークのエンティティからビットストリームを受信する送受信部720と、端末700のすべての動作を制御する制御部710を含むことができる。本発明の第1の方法及び第2の方法で説明した端末のすべての動作は、制御部710の制御により実行されることが理解できる。しかしながら、制御部710及び送受信部720は、必ずしも別の装置で実現されなければならないものではなく、単一チップのような一つの構成部で実現されてもよい。
【0064】
図1乃至
図7に示したピクチャ復号化/表示例示図、方法例示図、装置構成図は、本発明の権利範囲を限定するための意図がないことに留意すべきである。すなわち、
図1乃至
図7に記載された特定ピクチャまたは特定構成部が本発明の実施のための必須構成要素であると解析されてはならなく、一部構成要素のみを含んでも本発明の本質を外れない範囲内で実現することができる。
【0065】
上記した動作は、該当プログラムコードを格納したメモリ装置を通信システムのエンティティ、機能、基地局、または端末装置内の任意の構成部に具備することで実現できる。すなわち、エンティティ、機能、基地局、または端末装置の制御部はメモリ装置内に格納されたプログラムコードをプロセッサ又はCPUにより読み出して実行することによって、上記した動作を実行できる。
【0066】
本明細書で説明されるエンティティ、機能、基地局、または端末装置の多様な構成部と、モジュールはハードウェア回路、例えば相補性金属酸化膜半導体ベースの論理回路、ファームウェア、ソフトウェア及び/またはハードウェアとファームウェア及び/又は機械読み取り可能な媒体に挿入されたソフトウェアとの組み合わせのようなハードウェア回路を用いて動作することもできる。例えば、多様な電気構造及び方法は、トランジスタ、論理ゲート、注文型半導体のような電気回路を用いて実施できる。
【0067】
以上、本発明の詳細な説明においては具体的な実施形態に関して説明したが、特許請求の範囲を外れない限り、様々な変更が可能であることは、当該技術分野における通常の知識を持つ者には明らかである。したがって、本発明の範囲は、前述の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載及びこれと均等なものに基づいて定められるべきである。