(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6872543
(24)【登録日】2021年4月21日
(45)【発行日】2021年5月19日
(54)【発明の名称】マウスが自身で方向付けを行う能力についての特性を表すための測定型デバイス
(51)【国際特許分類】
A01K 29/00 20060101AFI20210510BHJP
A01K 15/02 20060101ALI20210510BHJP
A01K 1/03 20060101ALI20210510BHJP
【FI】
A01K29/00 C
A01K15/02 Z
A01K1/03 A
【請求項の数】13
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2018-522868(P2018-522868)
(86)(22)【出願日】2016年7月22日
(65)【公表番号】特表2018-522589(P2018-522589A)
(43)【公表日】2018年8月16日
(86)【国際出願番号】EP2016067520
(87)【国際公開番号】WO2017017010
(87)【国際公開日】20170202
【審査請求日】2019年5月9日
(31)【優先権主張番号】1557093
(32)【優先日】2015年7月24日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】515031137
【氏名又は名称】ユニヴェルシテ ドュ モンペリエ
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITE DE MONTPELLIER
(73)【特許権者】
【識別番号】518027461
【氏名又は名称】アンセル(アンスティテュ ナシオナル ドゥ ラ サンテ エ ドゥ ラ ルシェルシェ メディカル)
【氏名又は名称原語表記】INSERM(Institut National de la Sante et de la Recherche Medicale)
(73)【特許権者】
【識別番号】518027472
【氏名又は名称】エコール プラティーク デ オート エチュード
【氏名又は名称原語表記】ECOLE PRATIQUE des HAUTES ETUDES
(74)【代理人】
【識別番号】100139594
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 健次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100185915
【弁理士】
【氏名又は名称】長山 弘典
(74)【代理人】
【識別番号】100090251
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 憲一
(72)【発明者】
【氏名】モーリス,タンギー
【審査官】
坂田 誠
(56)【参考文献】
【文献】
特表2005−529580(JP,A)
【文献】
特開2007−306860(JP,A)
【文献】
特開2014−132834(JP,A)
【文献】
特開2000−201560(JP,A)
【文献】
特表2015−514682(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2014/0167958(US,A1)
【文献】
中国特許出願公開第101884306(CN,A)
【文献】
Gordon Winocur et al.,A study of remote spatial memory in aged rats,Neurobiology of Aging,NL,ELZEVIER,2010年 1月,Volume 31, Issue 1,p.143-150
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01K 29/00
A01K 1/03
A01K 15/02
A01K 67/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1匹のマウスの地形学的記憶を研究するためのデバイス(100)であって、
前記デバイスは、
−少なくとも1つの側が開口している、広場(150)と呼ばれる中央空間;
−前記広場(150)の周囲に位置する、ハウス(111〜115)と呼ばれる複数の閉鎖空間であって、前記ハウス(111〜115)が、1つの側が開放され、更に街路(161〜165,171〜175,181〜185)と呼ばれる少なくとも1つの交通空間に接続され、それによって少なくとも1匹のマウスが広場(150)に到達することができる、前記閉鎖空間;および
−前記複数のハウス(111〜115)に位置する、少なくとも1匹のマウスに対する複数の刺激手段(121〜125);
を含み、
前記少なくとも1つの交通空間(161〜165,171〜175,181〜185)が、前記広場(150)と各ハウス(111〜115)との間の距離が同じ長さになるように配置される迷路を形成し、各ハウス(111〜115)が、少なくとも2つの同じ距離の直接路を介して、前記広場(150)からアクセス可能であり、各ハウス(111〜115)をその広場(150)に接続する全ての直接路が、等しい長さであることを特徴とする、前記デバイス。
【請求項2】
−前記複数の刺激手段(121〜125)を用いて、前記少なくとも1匹のマウスの活動を測定するために配置される複数のセンサ(131〜135);および
−前記複数のセンサ(131〜135)によって行われた測定から、前記デバイス(100)内の少なくとも1匹のマウスの行動パラメータを決定するために配置される処理ユニット;
を更に含むことを特徴とする、請求項1に記載のデバイス(100)。
【請求項3】
前記複数の刺激手段(121〜125)が、飼料ディスペンサー(124)を含むこと;および
前記複数のセンサ(131〜135)が、前記少なくとも1匹のマウスによって食べられた飼料の量、および/または前記飼料ディスペンサーの使用回数、および/またはそれを使用するのに費やされた時間を測定するために配置される少なくとも1つのセンサを含むこと;
を特徴とする、請求項1又は2に記載のデバイス(100)。
【請求項4】
前記飼料ディスペンサー(124)が、
−飼料用の主リザーバ、
−前記主リザーバに接続された供給リザーバ、および
−前記主リザーバと前記供給リザーバとの間に位置するフラップであって、そのフラップがその供給リザーバ内に存在する飼料のレベルに応じて自動的に開閉するように構成される、前記フラップ、
を含むことを特徴とする、請求項3に記載のデバイス(100)。
【請求項5】
前記複数の刺激手段(121〜125)が、少なくとも1つの液体ディスペンサー(125)を含むこと、そして
前記複数のセンサ(131〜135)が、前記少なくとも1匹のマウスによって飲まれた液体の量、および/または前記液体ディスペンサーの使用回数、および/またはそれを使用するのに費やされた時間を測定するために配置される少なくとも1つのセンサを含むこと;
を特徴とする、請求項2〜4のいずれか一項に記載のデバイス(100)。
【請求項6】
前記液体ディスペンサー(125)が、
−液体を含む少なくとも1つのリザーバ、および
−前記リザーバの底部に位置する乳首、
を含むことを特徴とする、請求項5に記載のデバイス(100)。
【請求項7】
前記複数の刺激手段(121〜125)がプラットフォームを含み、そのプラットフォームが、前記少なくとも1匹のマウスが通過できるように配置された少なくとも1つのチューブを含むこと;および
前記複数のセンサ(131〜135)が、前記少なくとも1つのチューブ内における前記少なくとも1匹のマウスの活動を測定するためのカメラを含むこと;
を特徴とする、請求項2〜6のいずれか一項に記載のデバイス(100)。
【請求項8】
前記複数の刺激手段(121〜125)が、少なくとも1つの回転カゴを含む走行型プラットフォームを含むこと;および
前記複数のセンサ(131〜135)が、実際の回転数、および/または平均速度、および/または瞬間速度、および/または各回転カゴを使用する時間を測定するための少なくとも1つのセンサを含むこと;
を特徴とする、請求項2〜7のいずれか一項に記載のデバイス(100)。
【請求項9】
前記複数の刺激手段(121〜125)が透かし型ケージを含み、そのケージが、別のマウスを受け入れるのに適した寸法であり、かつ、前記ハウス(111〜115)に位置する少なくとも1匹のマウスが、そのケージ内に位置する他のマウスに接触することを可能にするように配置されること;および
前記複数のセンサ(131〜135)が、マウスの交流を測定するためのカメラを含むこと;
を特徴とする、請求項2〜8のいずれか一項に記載のデバイス(100)。
【請求項10】
前記複数のセンサ(131〜135)が、迷路内の前記少なくとも1匹のマウスの動きを検出および測定するための少なくとも1つのセンサ(210)を含むことを特徴とする、請求項2〜9のいずれか一項に記載のデバイス(100)。
【請求項11】
前記デバイス(100)の床(230)の少なくとも一部が、赤外線放射を透過する材料で作られていることを特徴とする、請求項1〜10のいずれか一項に記載のデバイス(100)。
【請求項12】
−デバイス(100)の床(230)の下に位置し、かつ前記デバイス(100)の床(230)を均一に照明するために配置される、少なくとも1つの赤外線源(221〜224)、
−前記デバイス(100)の床(230)の上方に位置し、かつ、前記デバイス(100)の床上の影を検出することによって前記迷路内の前記少なくとも1匹のマウスの動きを測定するために配置される、赤外線放射を感知する少なくとも1つのカメラ(210)、
を含むことを特徴とする、請求項1〜11のいずれか一項に記載のデバイス(100)。
【請求項13】
請求項10〜12のいずれか一項に記載のデバイス(100)内において、少なくとも1匹のマウスが自身の方向付けを行う能力を評価するための方法であって、
前記方法が、
−学習時間と呼ばれる所定の時間で、前記デバイス(100)内において前記少なくとも1匹のマウスを放置することからなる、少なくとも1つの学習工程、
−欠乏時間と呼ばれる時間で、前記少なくとも1匹のマウスに水および/または飼料を与えない工程、
−検査工程であって、この工程中において、少なくとも1匹のマウスが前記デバイス(100)内に戻される検査工程を含み、
前記処理ユニットが、各ハウス(111〜115)への路で発生したエラーの数、および/または各ハウス(111〜115)に入るための移動時間、および/または経路を決定する、前記方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地形学的記憶と空間的記憶を必要とする迷路内において、少なくとも1匹のマウスが自身で方向付けを行う能力を研究するためのデバイスに関する。
【0002】
本発明は、研究室用の測定機器の分野に関し、より詳細には、実験動物における行動および学習の分析を目的とするものである。
【背景技術】
【0003】
公知の方法では、病理学的老化または例えばアルツハイマー型の認知症に関する発症の初期兆候は、身近な環境において方向感覚{ほうこう かんかく}を失うことである。しかし、現在のところ、身近な環境、すなわち、動物がかなり以前に慣れ親しんでいたものである環境でその方角を見つけるための能力をそのような個々で特徴付けることに取り組む動物実験において、行動手順は存在しない。
【0004】
中央プラットフォームと、飼料を含有する様々な箱(その箱は、不透明なドアを備えたチャネルによって、その中央プラットフォームに接続される)とを含むデバイスが知られている(中国特許出願公開第101884306号明細書)。
【0005】
迷路によって構成され、モータに接続された中央回転デバイスを含む、動物のための記憶訓練デバイスも知られている(米国特許出願公開第2013/0233249号明細書)。
【0006】
隣接するケージ間が特にハシゴによって連絡する数列の積み重ねられたトレーニングボックスを備えるラット用迷路型デバイスも知られている(中国実用新案第201995441号明細書)。
【0007】
G.Winocurら,Neurobiology of Aging,31(2010),143−150,“A study of remote spatial memory in aged rats(老化ラットにおける遠隔空間的記憶の研究)”,31(2010)、143−150に関する公知の文献が存在する。この文献では、ラットの集団が、ラットの特定の要求(遊ぶ、食べる、飲む、交流する)のうちの1つを満たすことを可能にする複数の区画を含む複雑な環境に入れられる。ラットが常にすべての区画を見ることができるので、この文献によって、複雑な環境中におけるラットの方向機能を試験することはできない。さらに、区画内のラットに提供される様々な活動は記録されておらず、前記活動の使用についての量的なデータは測定されていない。最後に、この試験はラットについてのみ記載されており、マウスには適していない。これまで、この試験は、海馬病変後の薬理学的研究において使用されてきたが、アルツハイマー病の状況では用いられていない。
【0008】
実際、現時点で使用されている行動試験(活動、記憶、不安、ストレスへの反応、嗜癖など)は、使用される動物種に依存し、または検討中の種のうちの使用される品種でさえも大きく依存する。したがって、ラットおよびマウスを対象とした試験は頻繁に異なる。この理由としては、マウスの方が、ラットよりも例えば移動性があり探索的であるが、これに対して、ラットの方は一連の工程においては有能であるからである。したがって、複雑な行動応答の測定は、検討中の種に特に適した新しい行動試験の開発を必要とする。
【0009】
現在、様々な動物行動試験が、行動神経薬理学において使用されている。しかしながら、特に、マウスの地形的記憶にはどれも取り組んでいない。参考試験は、空間的記憶、例えば、リチャードモリス(Richard Morris)によって普及された円形型スイミングプールでの学習、または参照記憶と作業記憶のエラーを同時に解析できる8本のアームを備えた放射状アーム迷路の学習に取り組んでいる。これらの試験は、ラットおよびマウスに使用されるという利点を有する。しかし、これらの試験は、本質的には、学習の欠陥を測定するのに適している。
【0010】
本発明の目的は、上記の問題に少なくとも大部分は対応し、さらに他の利点を提供することである。
【0011】
本発明の別の目的は、アルツハイマー病をモデルとするトランスジェニックマウスの全ての系統に使用可能な試験を直接提供することである。本発明の別の目的は、マウス個体群の方向付け能力をより効果的かつ正確に測定することである。
【0012】
本発明の別の目的は、マウス個体群における、自閉症、および/または摂食行動、および/または社会的相互作用、および/または運動科学、および/またはうつ状態の特性を表すことを可能にする試験を提供することである。
【0013】
本発明の別の目的は、複雑な環境におけるマウスの挙動を分析するための新規な自動プラットフォームを提供することである。
【0014】
前述の目的の少なくとも1つが、少なくとも1匹のマウスの地形学的記憶を研究するためのデバイスであって、
前記デバイスは、
−少なくとも1つの側が少なくとも部分的に閉鎖および開口している、広場と呼ばれる中央空間;
−前記広場の周囲に位置し、ハウスと呼ばれる複数の閉鎖空間であって、前記ハウスが、一方の側が開放され、更に街路と呼ばれる少なくとも1つの交通空間に接続され、それによって少なくとも1匹のマウスが広場に到達することができる、前記閉鎖空間;および
−前記複数のハウスに位置する、少なくとも1匹のマウスに対する複数の刺激手段;
を含み、
前記少なくとも1つの交通空間が、広場と各ハウスとの間の距離が同じ長さになるように配置される迷路を形成し、各ハウスが、少なくとも2つの同じ距離の直接路を介して、広場からアクセス可能であり、各ハウスをその広場に接続する全ての直接路が、等しい長さである、前記デバイスによって達成される。場合により、これらの交通空間は、マウスが採用する探索を分析するために、或る規定された位置をドアによって閉じることができる。
【0015】
したがって、マウス個体群を特別な構造の中に置くことが可能であり、この特別な構造によって、方向付け能力、前記構造の地形的記憶、および特に、マウスが活動と報酬とを見つけるであろうハウスの地形的記憶を刺激する。好ましくは、6〜8匹の個々のマウスが前記構造内に配置される。
【0016】
広場は、覆われていない中央空間であり、デバイスの交通空間に通ずる少なくとも1つの側で開口している。 マウスは、実験の開始時において広場に置かれる。
【0017】
ハウスは、広場の周囲に位置し、広場から等距離にある。すなわち、ハウスに到達するための可能な路の長さは、デバイスの中心から開始した場合において、すべてのハウスで同じである。したがって、健康なマウスが、デバイスに慣れ親しんでいなくても、いずれかのハウスに到達する可能性は同じである。
【0018】
直接路は、あるポイントから別のポイントに行くために取られる街路の最小の組み合わせによって構成される。直接路とは、少なくとも1匹のマウスが、Uターンを行わずにおよび/または所望の場所に通じない街路を経ずに、できるだけ早く、所定の目的地(ハウスのうちの1つ)に到着するための経路である。
【0019】
交通空間は、少なくとも1匹のマウスが採用した探索を分析するために、或る位置でドアによって一時的または永久的に閉じることができる。
【0020】
好ましくは、すべてのハウスは、単一の高さ(seul niveau)に位置し、および/または星方式によって広場の周囲に分布し、各ハウスは、それぞれ、前記星の1点に配置される。有利には、広場は、五芒星方式に従って構成される。
【0021】
より詳細には、本発明の第1の観点によるデバイスは、
−好ましくはハウスに位置し、前記の刺激手段を用いて少なくとも1匹のマウスの活動を測定するために配置される、複数のセンサ;および
−前記複数のセンサによって行われた測定から、前記デバイス内の少なくとも1匹のマウスの行動パラメータを決定するためにプログラムされる、処理ユニット;
を更に含む。
【0022】
処理ユニットは、デバイスの様々なセンサおよび/または機器および/またはカメラによって戻された情報を処理するようにプログラムされている。好ましくは、前記の戻された情報はリアルタイムで処理される。処理ユニットは、すべての機器データから関心のある情報を選択することを可能にする特別なプロトコルに従って収集された情報を記録するようにプログラムされる。非限定的な例として、プロトコルによって、ユーザが、デバイス上の関心領域、マウス監視閾値、取得時間、センサの取得頻度、および/またはカメラのサンプリング頻度を表示することを可能にする。
【0023】
有利には、デバイスは、センサおよび/またはカメラおよび/または光源および/またはデバイスの動作パラメータを変更するように配置された制御ユニットをさらに含むことができる。制御ユニットは、有線または無線によって、カメラおよび/または光源および/またはセンサおよび/または機器の少なくとも一部に接続され、構成パラメータを送信し、および/またはデータを受信するように構成される。
【0024】
デバイス内のマウスの活動は、デバイス内に位置する複数のセンサを用いて、種々のハウスおよび交通空間の両方で測定され、すなわち、そのデバイス内のマウスの挙動に関する量的または定量化可能なデータを収集することを可能にする。非限定的な例として、以下のパラメータは、最終的に、定量可能な方法で、マウスの挙動の或る観点およびハウス内での方向付けについてのそれらの能力の或る観点についての特性を表すことを可能にする:
−各マウスが各ハウスに入る回数。
−種々のハウスに行くための移動時間、
−種々のハウスに到達するためのエラーの数(ここで、エラーは、ハウスに到達する最短経路と異なる街路に入るもとしてみなされる)、
−交通空間内を移動した合計の経路、
−各交通空間に入った回数、
−デバイス内の各マウスの位置、
−マウスの移動、
−各マウスの移動速度、
−デバイスに存在する異なるマウス間の相互作用、
−交通空間内において各マウスが行ったUターンの数と位置、
−デバイス内の各マウスの回復活動(redressements)の数と位置、
−デバイス内の各マウスのグルーミング活動の数と位置、
−各ハウスで過ごす時間。
【0025】
それらは、センサによって直接測定されたパラメータ、ビデオモニタリング、または測定後に計算されたデータの抽出であり得る。
【0026】
この目的のために、マウスは、好ましくは2つのフェーズを含む特定のプロトコルに従って、それに導入される:
−習得の第1フェーズ;このフェーズでは、好ましくは数匹のグループ(たとえば、6〜8匹)で、マウスが自由にデバイスおよび様々なハウスを探索する。したがって、この第1フェーズによって、デバイスに導入されたマウスは、種々のハウスの場所、ハウスに導く種々の経路を覚えて、さらにマウスがハウスを見つける活動の種類に慣れることができる。
−マウスの地形的記憶のシミュレーションの第2フェーズ。このフェーズでは、特定のハウスに優先的に到達することを試みようとする状態にマウスが置かれる。
【0027】
学習の第1フェーズは、期間が変化するいくつかのセッションを含む。例えば、学習フェーズは、1日、1週間、2週間または4週間である期間の1つ、4つ、8つまたは16つのセッションを、それぞれ含むことができる。
【0028】
第2フェーズは、好ましくは、最後の学習セッションの後の或る時間(例えば、24時間、48時間または7日間)で行われる。これは、変化する期間で異なる試験条件下での、種々の試験セッションを含むことができる。
【0029】
実験条件によって、マウスの特定の欲求を生み出すこと、特に、マウスがデバイス内で見出すことができる1つの活動または1つの刺激について生み出すことを可能にする。 例えば、マウスに対して、数時間(例えば、およそ20時間)飲物または飼料を与えないことができる。
【0030】
好ましくはマウスの記憶および/またはマウスが方向付けを見つける能力に関して、特定の欠陥を引き起こすために、マウスに特定の処理を行うこともできる。非限定的な例として、アルツハイマー病の非トランスジェニックモデルにおいてまたはトランスジェニック動物(例えば、ヒト突然変異型のAPP(アミロイド前駆体タンパク質)を過剰発現しかつアルツハイマー病を自発的に誘発する動物)が最初の症状を発症する年齢での病理学的状態を誘導することによって、マウスの地形的記憶の質を試験することができる。
【0031】
或るマウスは、或る行動の違いを際立たせるために、いずれのストレスも与えないで第2フェーズを行うこともできる。
【0032】
第2フェーズの間において、マウスを個別にまたは集団でデバイスに戻すことができる。
【0033】
本発明によるデバイスは、例えば、C57BL/6またはSwissなどの任意の種類の系統のマウスを研究するのに適している。
【0034】
より詳細には、複数の刺激手段は、以下の手段の少なくとも1つを含む:
−少なくとも1匹のマウスに飼料を与えること、および/または
−少なくとも1匹のマウスに飲物を与えること、および/または
−少なくとも1匹のマウスを遊ばせること、および/または
−少なくとも1匹のマウスを走らせること、および/または
−別のマウスの存在下に、少なくとも1匹のマウスを置くこと、
−各刺激手段は1つのハウスの中で利用され、各ハウスは1つのタイプの刺激手段のみを含むこと。
従って、明確に規定された独立した刺激によって、少なくとも1匹のマウスを刺激することが可能となり、これによって複数のストレス状況を作り出し、更に少なくとも1匹のマウスの一般的な行動(より詳細には、デバイス内においてマウスが方向付けを見つける能力)に対する1つ以上の欠乏で生じる影響を測定することを可能にする。
【0035】
したがって、本デバイスによって、自閉症、および/またはマウスの摂食行動、および/またはマウスの社会的交流、および/または運動科学、および/またはマウス個体群のうつ状態についての特性を表すための試験を行うことが可能である。
【0036】
好ましくは、複数の刺激手段は、飼料分配器を含み、そして、その複数のセンサが、少なくとも1匹のマウスによって食べられた飼料の量、および/または前記飼料分配器の使用回数、および/またはそれを使用するのに費やされた時間を測定するために配置される少なくとも1つのセンサを含む。
【0037】
さらに、少なくとも1匹のマウスに飼料を与えるための手段を含むハウスに行くための移動時間ならびにそこに到着するまでのエラーの数は、測定および計算される2つのパラメータである。
【0038】
特定の実施態様において、前記飼料分配器が、
−飼料用の主リザーバ、
−前記主リザーバに接続された供給リザーバ、および
−前記主リザーバと前記供給リザーバとの間に位置するフラップであって、そのフラップがその供給リザーバ内に存在する飼料のレベルに応じて自動的に開閉するように構成される、(電動化されているか、または電動化されていない)前記フラップ、
を備える。
【0039】
有利には、本発明の種々の実施態様に適用可能である、複数の刺激手段が、少なくとも1つの飲物分配器を含み、そして、その複数のセンサが、少なくとも1匹のマウスによって飲まれた液体の量、および/または前記飲物分配器の使用回数、および/またはそれを使用するのに費やされた時間を測定するために配置される少なくとも1つのセンサを含む。
【0040】
さらに、少なくとも1匹のマウスに飲物を与えるための手段を含むハウスに行くための移動時間ならびにそこに到着するまでのエラーの数は、測定および計算される2つのパラメータである。
【0041】
特定の実施態様では、少なくとも1匹のマウスに飲物を与えるための手段は、
−液体を含む少なくとも1つのリザーバ、および
−前記リザーバの底部に位置する乳首、
を備えることができる。
好ましくは、マウスについての普通の水または砂糖水を摂取することの比較研究を行うことによってマウスの快楽状態を測定することができるようにするために、飲物を与えるための手段は少なくとも2つのリザーバを含む。
【0042】
好ましくは、本発明の種々の実施態様に適用可能である、複数の刺激手段が、少なくとも1匹のマウスが通過できるように配置された少なくとも1つのチューブを含むゲーム型プラットフォームを含む。
【0043】
有利には、少なくとも1つのチューブは透光性材料で作られ、その結果、そのチューブ(例えば、プラスチックガラス、ガラス、または赤外光を透過するプラスチックで作られたチューブ)の内部に存在するマウスを見ることができる。
【0044】
この場合には、複数のセンサが、少なくとも1つのチューブ内の少なくとも1匹のマウスの活動を測定するためのカメラを含むこともできる。
【0045】
有利には、複数の刺激手段が、少なくとも1つの回転カゴを含む走行型プラットフォームを備え、そして、この有利な態様は、本発明の種々の実施態様に適用可能である。
【0046】
この場合には、複数のセンサが、実際の回転数、および/または平均速度、および/または瞬間速度、および/または各回転カゴを使用する時間を測定するための少なくとも1つのセンサも含むことができる。
【0047】
好ましくは、複数の刺激手段が透かし型ケージを備え、そのケージが別のマウスを受け入れるのに適する寸法であり、かつ前記ハウスに位置する少なくとも1匹のマウスがそのケージ内に位置する他のマウスに接触することを可能にするように配置され、そして、この好適態様は、本発明のすべての実施態様と両立することができる。
【0048】
ケージは、ハウスに入るマウスがケージに入れられたマウスと交流すること、好ましくは、鼻の端部および/または少なくとも1つの足の端部と接触することができるような方法で、ハウスのうちの1つに配置される。
【0049】
好ましくは、ケージは格子でできており、その格子の目によってマウス同士のこうした物理的接触を確立することができる。
【0050】
この場合には、複数のセンサは、少なくとも1匹のマウスと別のマウスとの交流を測定するためのカメラを備えることができる。
特に、以下の追加のパラメータ:
−飲まれた水の回数と量、
−食べられた飼料の回数と量、
−回転カゴの回転数、身体活動の時間、
−社会的交流の時間、
−トンネルで過ごす時間
によって、定量可能な方法で、マウスの挙動についての或る観点、およびそのデバイス内における方向性の能力についての或る観点に関する特性を表すことが最終的に可能となる。
【0051】
特に、複数のセンサが、迷路内の前記少なくとも1匹のマウスの動きを検出および測定するための少なくとも1つのセンサ(210)を含み、そして、この態様は、本発明の種々の実施態様に適用可能である。この目的のために、迷路の床上の少なくとも1匹のマウスによって作られた影を検出し追跡するために、迷路内の少なくとも1匹のマウスの動きを検出し測定する少なくとも1つのセンサが配置され、この影の検出および追跡は、例えばマウスの重心を測定すること、または一般的な方法を用いてデバイスとマウスとの関係をより正確に追跡するためにマウスの鼻を測定することによって行われる。
【0052】
このセンサによって、より詳細には、迷路内の少なくとも1匹のマウスの動き、および迷路(街路および/またはハウス)内のマウスの振舞いを測定することが可能となる。上述したように、これらの測定、および/または各ハウスおよび各活動に関して行われた測定によって、特にデバイスに導入された複数のマウスの各マウスについて測定されたデータの統計的処理を用いて特にそのようなマウスの地形的記憶の質についての特性を表すことを可能にする一定のパラメータを計算することができる。
【0053】
さらに、ハウス(そのハウスは、少なくとも1匹のマウスに飲物および飼料を与えるための手段をそれぞれ含む)に行くための移動時間、ならびにハウスに到着するまでのエラーの数は、測定および計算される2種類のパラメータである。
【0054】
この場合には、前記デバイスの床の少なくとも一部が、赤外線放射を透過する材料で作ることができる。
【0055】
好ましくは、本デバイスはさらに、
−デバイスの第1の側に位置し、かつ前記デバイスの床を均一に照明するために配置される、少なくとも1つの赤外線源、および
−前記デバイスの第2の側に位置する赤外線放射を感知し、かつ前記デバイスの床上の影を検出することによって、前記迷路内の前記少なくとも1匹のマウスの動きを測定するために配置される、少なくとも1つのカメラ、
を備えることができる。
したがって、デバイス内の各マウスの経路を正確に測定することが可能であり、各マウスはさらに任意のマーカーによって識別することができる。
【0056】
好ましくは、赤外線を発するダイオードは、本発明によるデバイスの床をバックライトで照らすように配置されている。赤外線カメラは、デバイスのすべての要素において少なくとも1匹のマウスを追跡するのに十分な高さに配置される。このデバイスは、好ましくは、赤外線放射を透過するプラスチックによって構成されている。
【0057】
本発明の別の観点(なお、この別の観点は、第1観点の実施態様のうちのいずれか1つに適用可能である)によれば、(前記請求項のいずれか一項に記載の)本発明によるデバイス内において、少なくとも1匹のマウスが自身の方向付けを行う能力を評価するための方法であって、
前記方法が、
−学習時間と呼ばれる所定の時間で、前記デバイス内において前記少なくとも1匹のマウスを放置することからなる、少なくとも1つの学習工程、
−欠乏時間(periode dite de privation)と呼ばれる時間で、前記少なくとも1匹のマウスに水および/または飼料を与えない工程、
−検査工程であって、この工程中において、少なくとも1匹のマウスが前記デバイス(100)内に戻される検査工程、
を含み、
前記処理ユニットが、各ハウスへの路で行ったエラーの数、および/または各ハウスに入るための移動時間、および/または経路を決定する、前記方法
が提案される。
【図面の簡単な説明】
【0058】
本発明の他の利点および特徴は、一方では以下の説明から明らかとなり、他方では添付の概略図を参照して示されかつ非制限的に与えられたいくつかの実施態様から明らかになるであろう。
−
図1は、本発明によるデバイスの上面図を示す。
−
図2は、本発明によるデバイスの輪郭図を示す。
−
図3は、水を与えられず更にデバイスに慣れ親しんでから24時間後に試験した動物の能力を示す。
−
図4は、飼料を与えられず更にデバイスに慣れ親しんでから24時間後に試験した動物の能力を示す。
−
図5は、水を与えられず更にデバイスに慣れ親しんでから24時間後に試験され、更に急性のアルツハイマー病モデルで汚染し7日後に再び試験した、健康な動物に対する振舞い;並びに判別指数を示す。
【0059】
以下に説明する実施態様は、決して限定的ではない。特に、記載された他の特徴とは別に、以下に記載された特徴の選択肢のみ(但し、この特徴の選択肢が、技術的な利点を与えるのに十分であるか、または従来技術の状態と本発明とを区別するのに十分である場合に限る)を含む本発明の変形例を想像することは可能である。この選択肢は、構造的な詳細を有しない少なくとも1つの、好ましくは機能的な特性を含むか、または、構造的な詳細の一部のみ(但し、この部分のみが、技術的な優位性を与えるのに十分であるか、または従来技術の状態と本発明とを区別するのに十分である場合に限る)を含む。
【0060】
特に、記載された全ての変形例および全ての実施態様は、技術的な観点からこの組み合わせに異論がなければ、相互に組み合わせることができる。
【0061】
図面において、いくつかの図面に共通の構成要素は同じ参照を有する。
【0062】
図1および
図2を参照すると、本発明によるデバイス100は、複数のハウス111〜115(ここでは5個)を含み、これらのハウスは、広場(agora)150と呼ばれる中央空間の周りに分布され、かつ街路(streets)と呼ばれる交通手段161〜165,171〜175,181〜185(なお、この交通手段は、迷路を形成する)によって相互に接続されている。
【0063】
このようにして形成された迷路は、好ましくは、五芒星の形状であり、ハウス111〜115のそれぞれがその形状の頂点を占有する。
障害物141〜145は、その五芒星の両腕の中央に位置され、更に、その障害物によって、特に2つの交通ループ(loops):
−交通手段161〜165を含み、それによって2つの連続するハウスを接続するための最短手段を規定する、外側交通ループ;
−その五芒星の中心に位置され、広場175を取り囲む、内側交通ループ171〜175;
を規定することが可能となる。
【0064】
外側交通ループ161〜165は、障害物141〜145を回避することを可能にする通路(passageways)181〜185を介して、内側交通ループ171〜175に接続される。
【0065】
好ましくは、外側交通ループを形成する交通手段161〜165の外側の側壁は、少なくとも一匹のマウスがデバイス100を乗り越えて逃げ出すことができないような高さである。
【0066】
有利には、外側交通ループを形成する交通手段161〜165の外側の側壁は、透光性材料で作成されており、そして、この透光性材料によって、内部を移動する少なくとも1匹のマウスを観察することができ、更に、動物が部屋およびデバイスの輪郭に関連する外部参照ポイントを利用することによってこうした外側交通路(outer traffic path)に関する空間的記憶を利用することを可能にし、すなわち前記デバイスの地図作成記憶および/または地形的記憶を強化することを可能にする。
【0067】
したがって、ハウス111〜115は、すべて広場150から等しい距離に位置され、広場150からそのハウスに到達するために同じ数の可能な路を有している。直接路はすべて同じ長さである。言い換えれば、ハウス111〜115は、広場150からハウスに到達する確率がそれぞれ同じであるように配置される。
【0068】
ハウス111〜115は、少なくとも1匹のマウスが入り込み、その内部を移動できるのに十分な大きさである。特に、少なくとも1匹のマウスが直立することができるのに十分な高さである。
【0069】
有利には、ハウスの側面の寸法は、300mmの高さに対して、約280mm×160mmである。
【0070】
各ハウス111〜115は、少なくとも1匹のマウスが出入りすることを可能にする開口部241〜245を有する。
【0071】
各ハウス111〜115の各開口部241〜245は、交通スペース161〜165上で開口し、少なくとも1匹のマウスがデバイス100内を歩き回ることを可能にする。
【0072】
本発明によるデバイス100は、複数の交通スペース161〜165および171〜175、ハウス111〜115、および障害物141〜145を含む迷路の形をとる。
【0073】
図1および
図2に示す実施態様では、障害物141〜145は、マウスが後ろ足で直立していても、向こう側のハウス111〜115を見ることができない高さである。通常、障害物の高さは、少なくともハウスの高さ(例えば、300mm)に等しい。
【0074】
図1および
図2に示される実施例では、各ハウス111〜115は、マウスのための刺激手段を含む。この手段によって、マウスの感覚の少なくとも1つを刺激し、および/またはその手段が活動を実行することを可能にする。
【0075】
したがって、ハウス111は、少なくとも1つの回転カゴ121を備え、少なくとも1匹のマウスがそのカゴに入り、そのカゴの中で走ることがでる。その回転カゴは、固定された回転軸を中心に回転する。このハウス111は、以下の段落ではRUNと呼ばれる。
【0076】
さらに、ハウス111は、前記回転カゴを用いてマウスの活動を測定するための少なくとも1つのセンサ131を備えることもできる。通常、限定されないが、少なくとも1つのセンサ131は、平均および瞬間回転速度、加速度、実際の回転数を測定するための回転計、および前記回転カゴを使用する期間を測定するためのクロノメータを測定するために、回転カゴに取り付けられた速度センサタイプとすることができる。Biosebの自発回転カゴに基づくシステムを想定することができる(
www.bioseb.com/bioseb/anglais/default/item id=40.php)。
【0077】
ハウス112は、そのハウス112の空間の少なくとも一部を占めるケージ122を備え、マウスがそのケージに入れられる。好ましくは、そのマウスは、デバイス100内を動き回るマウスとは反対の性であるマウスである。そのケージに閉じ込められたマウスが、ハウス112に入る少なくとも1匹のマウスと交流できるように、ケージ122が配置されている。通常、ケージ122は、ケージ122の両側に格子を備え、その格子の目は、マウス同士が鼻の端部を押しておよび/またはマウス同士が物理接触を行うのに十分な空間を有している。このハウス112は、以下の段落ではINTERACTと呼ばれる。
【0078】
さらに、ハウス112は、ハウス112内のマウスの活動(より具体的には、ケージ122内に閉じ込められたマウスとの交流)を測定するための少なくとも1つのセンサ132も含むことができる。通常、限定されないが、少なくとも1つのセンサ132は、ハウス112内のマウスの挙動を研究しおよび/または或る特定の振舞いを特定するためのカメラタイプであり、このカメラタイプは、或る行動の病理学または行動の逸脱(例えば、格子の後ろの小室に置かれた動物とマウスとの間の直接的な接触時間および数)を明らかにする。
【0079】
ハウス113は、少なくとも1つの活動チューブ123を備え、少なくとも1匹のマウスがその活動チューブに入り歩くことができ、更にマウスは自由に通り抜けることができる。好ましくは、少なくとも1本のチューブは、床に対して、水平および/またはわずかに上昇するように位置されている。このハウス113は、次の段落ではPLAYと呼ばれる。
【0080】
さらに、ハウス113は、例えば透明なプラスチックガラスで作られた少なくとも1つの活動チューブ123を用いてマウスの活動を測定するための、少なくとも1つのセンサ133を備えることもできる。通常、限定はされないが、少なくとも1つのセンサ133は、そのチューブ内での少なくとも1匹のマウスの挙動および/または或る特定の振舞いを研究し、更にカメラタイプであり、このカメラタイプは、或る行動の病理学または行動の逸脱(例えば、少なくとも1つのチューブ内で過ごした時間、および/または少なくとも1匹のマウスがそのチューブに入る回数)を明らかにするためのカメラタイプである。
【0081】
ハウス114は、マウスが完全に自主的に食べることができるように配置された飼料ディスペンサー124を備える。好ましくは、飼料ディスペンサー124は、自動の顆粒ディスペンサータイプであり、このディスペンサーは、飼料顆粒用の主リザーバと、第2リザーバが空になるかまたは一定のしきい値より低い場合に第2リザーバを満たすことを可能にする自動ドアを介して、主リザーバに接続された第2リザーバとを含む。したがって、少なくとも1匹のマウスは、第2リザーバから自由に食べることができる。このハウス114は、以下の段落ではEATと呼ばれる。
【0082】
さらに、ハウス114は、ディスペンサー124を用いてマウスの活動を測定するための少なくとも1つのセンサ134を含むこともできる。通常、限定はされないが、少なくとも1つのセンサ134は、各摂取時に少なくとも1匹のマウスによって摂取された飼料の量、そのマウスが前記ディスペンサー124を使用する回数、および/またはその使用時間を測定するために配置することができる。さらに、少なくとも1つのセンサ134によって、各飼料の摂取量(各一口)、その日時、その期間、および摂取量を測定することも可能である。Research Diets Inc.のBioDAQタイプの自動システムを使用することができる(http://www.researchdiets.com/biodaq/applications/food−water−intake)。
【0083】
最後に、ハウス115は、少なくとも1つの液体ディスペンサー125を含む。好ましくは、ハウス115は、快楽の測定を行うことができるようにするための2個のディスペンサー125を備える。第1ディスペンサーは、例えば砂糖水(溶液)を含み、第2ディスペンサーは、普通の水(溶液)を含む。好ましくは、ディスペンサー125は、少なくとも1匹のマウスの食用に適する液体を含む。ディスペンサー125は、所定の体積の液体を収容するように構成されたリザーバと、少なくとも1匹のマウスが自主的に飲むことを可能にするピペットとを含むことができる。このハウス115は、以下の段落ではDRINKと呼ばれる。
【0084】
さらに、ハウス115は、液体ディスペンサー125を用いてマウスの活動を測定するための、少なくとも1つのセンサ135を備えることもできる。通常、限定はされないが、少なくとも1つのセンサ135は、少なくとも1匹のマウスによって摂取された水の各部分の容量、そのマウスが前記ディスペンサー125を使用する回数、および/またはその使用時間を測定するために配置することができる。Research Diets Inc.のBioDAQタイプの自動システムを使用することができる(http://www.researchdiets.com/biodaq/applications/food−water−intake)。
【0085】
図2に示すように、本発明によるデバイス100は、デバイス100内の少なくとも1匹のマウスの一般的な活動(特に、迷路におけるその動き)を測定するように配置された環境センサ210と呼ばれる少なくとも1つのセンサも備えることができる。
【0086】
有利には、少なくとも1つのセンサ210は、デバイス100を少なくとも部分的にカバーする視野をもつカメラタイプとすることができる。
【0087】
賢明なやり方で、少なくとも1匹のマウスの動きを、床230上における少なくとも1匹のマウスによって作られた影を追跡することを基本とする技術によって測定することができる。この目的のために、少なくとも1つの照明源221〜224がデバイス100の一方の側に配置され、この結果、後者の床を均一に照らすようになる。
【0088】
好ましくは、少なくとも1つの照明源221〜244は、前記デバイスの床の下に位置される。
【0089】
有利には、床230の照明によってマウスが混乱せずおよび/または影響されないようにするために、少なくとも1つの照明源221〜224は赤外線源タイプである。
【0090】
この特定の実施態様では、床230は、少なくとも1つの照明源221〜224によって放射される放射線を透過して、更に少なくとも1つの環境センサ210は、赤外線放射を感知する。したがって、少なくとも1匹のマウスが床を移動するときには、センサ210は、前記マウスの位置では光を少なく検出する。したがって、迷路全体にわたる少なくとも1匹のマウスの動きを、効率的にかつ低コストで測定することが可能である。
【0091】
また、このデバイスは、各ハウス111〜115内に位置される様々なセンサ121〜125によって、ならびに少なくとも1つの環境センサ210によって測定されたすべてのデータを利用することが可能な処理ユニットも備える。測定されたデータは、ユーザによって定義されたプロトコル(関心領域の図、動物の閾値、取得期間、情報収集の時間間隔などの観察)によって収集される。最終データは、ユーザが独自の計算マクロを適用できるように、非常に汎用的な形式で表計算ソフトの形で提示されることが好ましい。
【0092】
限定的ではない例として、一組のセンサ121〜125,210のデータから、以下のパラメータを計算することができる。
− 各ハウス111〜115および広場150に入った回数;
− ハウス111〜115(より詳細には、少なくとも1匹のマウスが飲んで(115)食べる(114)ことができるハウス)に入って過ごす時間;
− ハウス111〜115(より詳細には、少なくとも1匹のマウスが飲んで(115)食べる(114)ことができるハウス)に到達するまでのエラー数;
− デバイス100内に存在する各マウスが辿った全ての路;
− 各交通空間161〜165,171〜175,181〜185に入った回数;
− デバイス100内の各マウスの進行速度;
− デバイス100に存在する各マウス間の交流;
− 各マウスの回復活動の数と場所;
− 各マウスのグルーミング活動の数と場所;
− デバイス100内の各マウスの路の変更(Uターン)の数および位置;
− 水の摂取の回数および量、ならびにそれに付随するハウスで過ごした時間;
− 飼料摂取の回数および量、ならびにそれに付随するハウスで過ごした時間;
−回転カゴの回転数、身体活動の時間、ならびにそれに付随するハウスで過ごした時間;
− 社会的交流の時間、およびそれに付随するハウスで過ごした時間;
− トンネルで過ごした時間、およびそれに付随するハウスで過ごした時間。
【0093】
したがって、本発明は、少なくとも1匹のマウスが迷路内でその方向を見つける能力を研究するためのデバイスであって、前記デバイスは、中心広場の周りに分布した複数のハウスを含み、このデバイスにおいて、刺激手段によって、少なくとも1匹のマウスの或る活動を行ったりおよび/または或る主要なニーズを満たしたりすることができる。各ハウスは、さらに、前記ハウス内におけるマウスの活動(より詳細には、刺激手段の使用)を測定するための少なくとも1つのセンサを含む。最後に、センサによって、デバイス内の各マウスの動きを検出して測定することを可能にする。したがって、これらの測定に由来する定量的パラメータは、少なくとも1匹のマウスの地理記憶の質を際立たせることを可能にする。
【0094】
次に、本発明によるデバイスの試験および使用についてのいくつかの実施例を説明する:
−4日間慣れ親しませた後におけるマウスの行動:
最初の一連の実験の過程において、マウスを4日間(1日4時間)訓練し、マウスをデバイス内で自由に動かせるようにした。最後の訓練セッションの24時間後に、動物を別々にデバイスに入れ、マウスの探索を測定し、10分間分析した。各ハウスに入るまでの待ち時間、入った回数、各ハウスで過ごした合計時間を表1に示す。
【表1】
【0095】
マウスは、様々なハウスを異なる方法で探索する傾向があり、RUNのハウスに入った場合には数値が最も高く、DRINKのハウスに入った場合には得点が最も低い。
−4日間慣れ親しませた後におけるマウスのデバイスについての記憶:
次に、マウスの地形学習を試験する。そのマウスは、デバイスに戻される前に水または飼料を20時間与えられていない。慣れ親しませる期間は、0日から1日、1,2または4週間に変化させた。この実験では、動物の振舞い(より具体的には、DRINKまたはEATのハウスに入るまでの待ち時間、ならびに広場と各ハウスとの間で発生したエラー数)を測定および分析した。
【0096】
飲物を与えられていない動物の結果を
図3に示し、飼料を与えられていない動物について得られた結果を
図4に示す。それぞれ結果は、対照動物(Ctl)と比較されている。
【0097】
図3に示すように、与えられている動物は、慣れ親しませる期間に関わらず、適度な振舞いを示すように見える(DRINKのハウスに入るための平均待ち時間は156秒であり、平均エラー数は27である(待ち時間については、R2=0.012、エラー数については、R2=0.183である))。一方、水を与えられていない動物は、慣れ親しませる期間によって顕著に減少する(慣れ親しませる期間が1日後、2または4週間後に顕著に減少する)待ち時間およびエラー数を示す。エラーのプロファイルは、セッションで顕著に減少する(R2=0.563)。
【0098】
図4は、飼料を与えられていない動物の振舞いを示す。与えられている動物は、慣れ親しませる期間に関わらず、EATのハウスに入るための待ち時間の点で、適度な振舞いを示す(平均148秒、R2=0.002)。しかしながら、驚くべきことに、エラー数は、セッションによって減少する(R2=0.847)。一方、飼料を与えられていない動物は、特に2または4週間の慣れ親しませた期間の後に、待ち時間およびエラー数が顕著に減少することを示す。さらに、待ち時間およびエラー数は、慣れ親しませていない対照動物よりも低い。与えられていない動物に関する測定のプロファイルは、セッション数によって顕著に減少する(待ち時間については、R2=0.381、エラー数については、R2=0.343)。
−アミロイド毒性に伴う地形についての方向感覚の喪失:
ここでの目的は、アルツハイマー型の病理学的状態が、マウスにおける局所的記憶の忘却を誘発することができるか否かを決定することである。この目的のために、一組の動物を2週間にわたってデバイスに慣れ親しませた。その後、水を与えられていないようにした後の最初に、動物の学習を試験した。最後に、脳室内経路によって、Aβ25−35ペプチドのオリゴマーの調製物を注射した。この調製物は、実験室でよく使用されるアルツハイマー病の急性モデルを表す。
【0099】
結果を
図5に示す。 DRINKのハウスの場所を自分のものにし、更に試験日において与えられた対照群よりも顕著に低い待ち時間を示した動物については、アミロイドペプチドの注射は、対照ペプチドで処置した群では観察されない健忘症を誘発する。対照ペプチドで処置した群は、常に、慣れ親しんだ後に8日間経過しても、DRINKのハウスを覚えておくのに効率的であるか、あるいはより効率的である。
【0100】
簡単な計算によって、方向感覚の喪失についての指数(DI)を定義することができる。
DI=(PT7/PT0)−(PT7/PT0)
対照群
ここで、PT7=Aβ
25−35ペプチド注射後に7日間経過した際の記憶検査値、および
PT0=Aβ
25−35の注射直前の記憶検査値。
【0101】
したがって、この指数は、対照動物(水を与えられ、非毒性のSc.Aβペプチドを注射されたマウス)では0であり、アミロイドペプチドAβ
25−35で処置した動物では顕著に高くなる。これによって、候補となる薬物分子が、この指標(すなわち、地形についての方向感覚の喪失)の増加を軽減するかまたは阻止するかどうかを試験するための薬理学的研究を提案することを可能にする。
【0102】
したがって、本発明によるデバイスの慣れ親しみは、豊かで複雑な環境を構成し、そして脳可塑性および海馬の神経形成に影響を及ぼす。
【0103】
したがって、本発明は、特に神経薬理学および臨床前動物研究の観点における、動物行動の定量的測定を可能にし、特に、複雑な環境における自発的で潜在的な探索に基づく学習プロセスおよびこの環境下でのマウスの慣れ親しみのプロセスについての測定を目的としている。
【0104】
本デバイスは、(水または飼料に関する)健忘症試験において、慣れ親しませた動物の行動と慣れ親しませていない動物の行動との間の有意差を測定することを可能にする。慣れ親しませる期間は、1日から4週間、またはより長い期間にわたって変化させることができる。
【0105】
本発明のデバイスは、(特に、年齢、 健忘症の薬理学的モデル(例えば、スコポラミンによる治療)、認知症の薬理学的および遺伝的モデル(ここではアミロイドペプチドの注射で示されているが、アルツハイマー病のトランスジェニック系も示す)、および他の衰弱させる状態(例えば、ストレスを受けた動物または抑うつ状態の動物)に関係する)認知障害の影響を測定する。
【0106】
したがって、本発明は、特に、アルツハイマー病の重要な早期兆候の1つ、すなわち空間についての方向感覚の喪失の症状を分析することを可能にする。
【0107】
実施態様の1つによれば、本発明のデバイスは、自閉症を特徴付けることを可能にする。
【0108】
他の実施態様の1つによれば、本発明のデバイスは、摂食行動を特徴付けることを可能にする。
【0109】
もう1つの他の実施形態によれば、本発明のデバイスは、社会的交流を特徴付けることを可能にする。
【0110】
もう1つの他の実施形態によれば、本発明のデバイスは、運動科学を特徴付けることを可能にする。
【0111】
もう1つの他の実施形態によれば、本発明のデバイスは、マウス個体群のうつ状態を特徴付けることを可能にする。
【0112】
もちろん、本発明は、上記の実施例に限定されず、本発明の範囲を逸脱することなく、これらの実施例に対して多くの調節を行うことができる。特に、本発明についての種々の特性、形態、変形例、および実施態様は、それらが相いれないかまたは相互に排他的でない限り、様々な組み合わせに従って互いに組み合わせることができる。特に、上述の全ての変形例および実施形態は、相互に組み合わせることができる。