(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6872546
(24)【登録日】2021年4月21日
(45)【発行日】2021年5月19日
(54)【発明の名称】圧力調整装置
(51)【国際特許分類】
H01M 50/317 20210101AFI20210510BHJP
F16K 17/02 20060101ALI20210510BHJP
F16K 1/00 20060101ALI20210510BHJP
【FI】
H01M2/12 102
F16K17/02 Z
F16K1/00 A
【請求項の数】8
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2018-524549(P2018-524549)
(86)(22)【出願日】2016年7月28日
(65)【公表番号】特表2018-525805(P2018-525805A)
(43)【公表日】2018年9月6日
(86)【国際出願番号】EP2016068026
(87)【国際公開番号】WO2017017199
(87)【国際公開日】20170202
【審査請求日】2018年12月7日
(31)【優先権主張番号】102015214256.6
(32)【優先日】2015年7月28日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】518032889
【氏名又は名称】ビメッド テクニク アレトラー サナイ ベ ティジャーレット エー. エス.
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(72)【発明者】
【氏名】アルブクレク、ユルマズ
(72)【発明者】
【氏名】ケンプ、 クラウス
【審査官】
高木 康晴
(56)【参考文献】
【文献】
特表2013−534028(JP,A)
【文献】
国際公開第2009/001947(WO,A1)
【文献】
特開2009−151944(JP,A)
【文献】
国際公開第2006/004143(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/317
H01M 10/30
H01M 10/34
F16K 1/00
F16K 17/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気化学装置のケーシング(26)内の内圧を調整するための圧力調整装置(10)であって、
前記ケーシング(26)のケーシング開口部(34)に固定されるケーシング挿入体(12)であって、前記ケーシング(26)は内部空間(28)を有し、前記ケーシング挿入体(12)の中心軸(14)を囲むように延在する弁座(36)を備えるケーシング挿入体(12)と、
前記弁座(36)に密着している静止位置と、前記弁座(36)から離れた動作位置との何れか一つをとるように構成されているとともに、前記静止位置から前記動作位置へと遷移するときは前記ケーシング挿入体(12)の中心軸(14)に沿って移動する弁体(40)と、
前記弁体(40)上に形成されたガス流通間隙(47)と、
前記ケーシング(26)の前記内部空間(28)と前記電気化学装置の周辺領域(30)との間のガス交換を行うとともに前記ガス流通間隙(47)を閉鎖するように構成された少なくとも1つのガス透過膜(44)であって、前記弁体(40)が静止位置にあるときは、ガスは、前記ケーシング(26)の内部空間(28)から前記ガス透過膜(44)を通って前記電気化学装置の周辺領域(30)へとガス交換路(66)に沿って導かれるガス透過膜(44)と、
内圧に対抗して作用し、前記内圧が限界内圧を超過しない限りは、前記弁体(40)を静止位置に留める押圧力発生装置(60)と、を備え、
前記押圧力発生装置(60)は、前記ケーシング(26)の前記内圧が前記限界内圧を超えたとき、前記押圧力発生装置(60)の閉鎖力が前記弁体(40)の前記ケーシング(26)の前記内部空間(28)側の面である密封面(42)に加わる圧力によって発生する開放力に打ち負かされて、前記密封面(42)に加わる圧力によって記弁体(40)を前記静止位置から前記動作位置に移動させるとともに、前記弁体(40)が前記動作位置にある時、前記押圧力発生装置(60)は、前記弁体(40)とは接触せず、且つ前記弁体(40)には作用しないように構成されている
ことを特徴とする、圧力調整装置(10)。
【請求項2】
前記密封面(42)は、少なくとも部分的に前記ガス透過膜(44)の表面によって形成されていることを特徴とする、請求項1に記載の圧力調整装置(10)。
【請求項3】
前記密封面(42)は、全体的または基本的には全体的に前記ガス透過膜(44)によって形成されていることを特徴とする、請求項2に記載の圧力調整装置(10)。
【請求項4】
前記ガス透過膜(44)が、前記ケーシング挿入体(12)の前記中心軸(14)に沿って延在する前記弁体(40)の動作軸に対して垂直に延びる膜面上に広がることを特徴とする、請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の圧力調整装置(10)。
【請求項5】
前記ガス透過膜(44)および前記中心軸(14)が互いに同軸配置されていることを特徴とする、請求項4に記載の圧力調整装置(10)。
【請求項6】
前記ケーシング挿入体(12)に、前記弁体(40)、および前記弁体(40)と接続された前記ガス透過膜(44)の配置に用いられる内部空間(24)が含まれることを特徴とする、請求項1に記載の圧力調整装置(10)。
【請求項7】
前記ガス交換路(66)は、前記ケーシング挿入体(12)の前記中心軸(14)に対して平行であり、且つ前記弁体(40)が動作位置にあるときは、前記ガス交換路(66)とは異なるとともに、前記弁体(40)の半径方向外側を通る流路(68)に沿ってガスが導かれることを特徴とする、請求項1〜請求項6のいずれか一項に記載の圧力調整装置(10)。
【請求項8】
前記流路(68)が、前記弁体(40)の周囲に沿って延びることを特徴とする、請求項7に記載の圧力調整装置(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気化学装置のケーシングの内部空間と前記装置の周辺領域との間のガス交換を行うためのガス透過膜を少なくとも1つ含む、電気化学装置のケーシング内の内圧を調整するための圧力調整装置に関する。
【背景技術】
【0002】
かかる装置は、通常、電池/蓄電池内部の圧力調整に用いられる。閉鎖式電池システムの内圧は、電池ケーシングの損傷を防止するために外圧に合わせて調整しなければならない。該内圧は、電池の使用領域に応じて外圧より大きい場合も小さい場合もある(移動式電池における大気の圧力差、温度差による圧力差)。
【0003】
圧力調整装置は、特許文献1により公知となっている。該公知の圧力調整装置においては、ガス透過膜がケーシング内圧に応じて変形し、限界圧力を超過すると、緊急排気針の先端によって破壊されるように設計されている。このため、ガス透過膜が、限界圧力を下回る時は無傷のままであり、限界圧力を超過した時にまさに緊急排気針によって破壊されるべく変形するように、ガス透過膜のサイズおよび材料、緊急排気針の形状、並びに緊急排気針からガス透過膜までの距離が、それぞれ精確に指定され、全体として相互に厳密に調整されていなければならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】欧州特許出願公開第2554882号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記に基づき、本発明は、簡単な方法で所定の限界内圧に応じて設計することのできる圧力調整装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的は、発明により、冒頭に記載の方式の圧力調整装置において、限界内圧を超過した時に、弁座に密接している静止位置から、弁座から離れた動作位置へと移動可能な弁体が圧力調整装置に含まれていること、および弁体にガス透過膜を用いて閉鎖されたガス流通間隙が設けられていることによって達成される。
【発明の効果】
【0007】
発明により、限界内圧を超過した時に静止位置から動作位置へと移動される弁体が配置されている。これによって、弁体が弁座から分離し、分離した弁体と弁座との間において流路が開放される。該流路によって大量のガスの迅速な排出が可能になる。
【0008】
電池の通常運転において、弁体は静止位置で弁座に密接しており、したがって、前述の流路は閉鎖されている。弁体にはガス透過膜を用いて閉鎖されたガス流通間隙が含まれる。弁体が静止位置ある間は、ガス交換がこの方法で行われ得る。
【0009】
発明による圧力調整装置においては、限界内圧を超過した場合にガス透過膜を破壊する必要がない。これによって、ガス交換能力を最大にするという点からガス透過膜を最適化することが可能になる。さらに、比較的頑健なガス透過膜も実現し得ることから、圧力調整装置の操作が簡素化される。
【0010】
したがって、ガス透過膜が一定の変型特性を有する必要がないことによって、所定の限界内圧に関する圧力調整装置の設計を、ガス透過膜のサイズおよび材料に関係なく行うことができる。その上、精確に配置された緊急排気針を設ける必要がない。
【0011】
発明により、電池の通常運転において大量のガス交換を可能にし、同時に、(例えば、欠陥のある電池セルの爆発によって引き起こされる)電池内圧の突然の爆発的上昇の際に、最短時間で大量のガスを排出して、電池全体の爆発の危険性を大幅に低下させることが可能である。
【0012】
該発明による圧力調整装置には、限界内圧の超過と同時に構成部分またはその一部が破壊されたり、吹き飛ばされたりすることがないという利点がある。この方法によって圧力調整装置の周辺領域は損傷を免れ、損傷を防ぐために、必要に応じて大量のガスの急速な排出を防止することのできる保護機構を配置しておく必要がない。
【0013】
好ましい実施形態の1つにおいて、弁体に内圧を受けるバルブ面が設けられていること、および該バルブ面が少なくとも部分的にガス透過膜の表面によって形成されていることが考えられている。この方法によって、バルブ面の少なくとも一部を、ガス透過膜の配置に用いることが可能である。その際、バルブ面におけるガス透過膜の割合が大きいほど、一定の大きさの弁体に対して提供可能なガス流通断面が大きくなる。したがって特に好ましいのは、バルブ面が、全体的に、または基本的には全体的にガス透過膜によって形成されていることである。
【0014】
ガス流通断面を大きくするために、ガス透過膜が、弁体の動作軸に設置された、特に該軸に対して垂直に延びる膜面に広がることもまた、好ましい。
【0015】
コンパクトな構造にしつつ、同時に最大のガス流通断面を獲得するために、ガス透過膜および動作軸は互いに同軸配置されている。
【0016】
弁体が破壊可能な接合部を用いて弁座に固定されていること、および限界内圧を超過すると該接合部が外れることが考えられ得る。しかし好ましいのは、圧力調整装置が、内圧に対抗して作用し、限界内圧を超過しない限りは、弁体を静止位置に留める
押圧力発生装置を有することである。かかる
押圧力発生装置として使用されるのは、特に、弁体と共同作用し、弁体を弁座の方向に圧するスプリングである。これには、弁体が繰り返し操作可能であるという利点がある。これが特に有利であるのは、ガス透過膜が頑健に設計されていることにより、限界内圧を超過した時に、単に弁体が動作位置に移動されるだけで、その場合にもガス透過膜が破壊されない場合である。これにより、再利用可能で、限界内圧の超過時における大量のガスの排出を何度も行うことのできる圧力調整装置の供給の可能性が開かれる。
【0017】
電気化学装置のケーシングへの圧力調整装置の取付けを容易にするために、圧力調整装置が、電気化学装置のケーシング開口部の表面または内部に固定することのできるケーシング連結部を有することが好ましい。
【0018】
かかるケーシング挿入体は、好ましくは、弁体、および弁体と接続されたガス透過膜の配置に用いられる内部空間を有する。
【0019】
該発明による圧力調整装置によって、弁体の静止位置においてはガス交換路に沿ってガスが導かれ、弁体の動作位置においてはガス交換路とは異なる流路に沿ってガスが導かれることが可能になる。したがって、圧力調整装置の通常運転(ガス交換路)、および圧力調整装置の非常時運転(流路)に対してそれぞれ最適化することのできる、異なる通路の供給が可能になる。
【0020】
特に好ましいのは、圧力調整装置の非常時運転の間に使用される流路が、弁体の周囲に沿って延びることである。
【0021】
本発明のさらなる特徴および利点は、好ましい実施例の図面と以下の説明において示される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】
図1は、弁体が静止位置にある、圧力調整装置の実施形態の1つの側面を示した図である。
【
図2】
図2は、弁体が動作位置にある、
図1に準じた圧力調整装置の側面を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1および
図2は、全体として引用符号10で示されている、ケーシング挿入体12を含む圧力調整装置10の実施形態の1つを示している。ケーシング挿入体12は、カバー部16から装着部18までの間で、中心軸14に沿って広がる。
【0024】
カバー部16はガス流通開口部20を少なくとも1つ備える。装着部18は圧入部またはネジ部22を1つ備える。
【0025】
ケーシング挿入体12はさらに、相互に接続された、相互に合流する複数のセクション24a、24b、24c、24dを含み、中心軸14に沿って延びる内部空間24を有する。
【0026】
圧力調整装置10は、電気化学装置、特に電池(その内部空間は図面において引用符号28で示されている)のケーシング26内の内圧を調整するために用いられる。ケーシング26の周辺領域は引用符号30で示されている。
【0027】
ケーシング26は、ケーシング開口部34を備えたケーシング壁32を有する。ケーシング挿入体12の装着部18は、ケーシング開口部34の境界部とネジ止め、圧着、および/またはスナップ留めされている。
【0028】
ケーシング挿入体12の、好ましくは内部空間26に面する端部に、弁座36が配置されている(
図2を参照)。弁座36は、好ましくは中心軸14を囲む環状に延び、同時に内部空間セクション24dの境界面となる。
【0029】
弁座36は、全体として引用符号40で示されている弁体のパッキン38(
図1を参照)と共同作用する。弁体40は、中心軸14に沿って可動である。弁体40は、ケーシング26の内部空間28に面する側に密封面42を有しており、該面の少なくとも一部、好ましくは全体がガス透過膜44の外側によって形成されている。ガス透過膜44は円板形状であることが好ましい。
【0030】
ガス透過膜44は接着などによって弁体40と固着されている。弁体40は、ガス透過膜44の内側46との流体連結が有効に行われるガス流通間隙47を有する。
【0031】
弁体40の、ケーシング26の周辺領域30の方向の端部には、弁体40の周囲に沿って、複数の固定要素48が分散配置されている。例えば相互に120度の角度間隔を開けて3つの固定要素48が配置されている。固定要素48は、好ましくは中心軸14に対して傾斜した固定面50を有する。
【0032】
固定面50は、スプリングアーム54によって形成される支持面52と共同作用する。スプリングアーム54は中心軸14に対して基本的に平行に延び、ケーシング挿入体12の段部58において支持されるリング体56から下へ突出する。
【0033】
スプリングアーム54は、支持面52を介して弁体40の固定面50に圧縮力を加え、これによって弁体40の
バルブ面42を弁座36の段部62(
図2を参照)に対して押し付ける
押圧力発生装置(Krafterzeugungseinrichtung)60となる。
【0034】
弁体40および
押圧力発生装置60は、例えば、ケーシング挿入体12と固定連結された回転防止部62を用いて、中心軸40での回転が防止されていることが好ましい。この方法により、固定要素48とスプリングアーム54は全体として単に弁体40の周囲の僅かな部分に広がるだけでよく、したがって、周方向に見て固定要素48同士の間、および周方向においてスプリングアーム54同士の間に、ガスの通流可能な隙間64を残すことが可能である。
【0035】
電気化学装置の通常運転において、弁体40は静止位置にある(
図1を参照)。内部空間28内の圧力が低いために、内部空間28内およびバルブ面42の内圧の増加によって引き起こされる開放力が、反対方向に作用する
押圧力発生装置60の力に打ち勝つには至らない。弁体
40の静止位置では、電気化学装置の内部空間28と周辺領域30との間の圧力調整を可能にするために、ガス透過膜44を通したガス交換が行われる。その際、交換されるべきガスは、基本的にケーシング挿入体12の中心軸14に対して平行に、ガス交換路66に沿って導かれている。ガス交換の過程において、ガスの通流は弁体40のガス流通間隙47も介して行われる。
【0036】
障害が発生した場合、電気化学装置の内部空間28内の圧力が急激に上昇する可能性がある。その場合、損傷を防止または軽減するために、迅速に大量のガスを電気化学装置の内部空間28から周辺領域30に排出することが望まれる。したがって、
押圧力発生装置60は、限界内圧に達した際には、
押圧力発生装置60の閉鎖力が、
バルブ面42にかかっている圧力およびそれによって発生する開放力に打ち負かされるように設計されている。この場合、弁体
40は、
弁座36に密接している静止位置(
図1を参照)から、弁座36から分離した動作位置(
図2を参照)に移動する。弁体40が静止位置から動作位置へと移動する過程において、スプリングアーム54は面52を通して放射状外側に弾性的に変形され、それによって固定要素48の固定面50は前記面52に沿って滑動することができ、弁体40がバルブ36から外れて中心軸14に対して平行な方向へ移動する。
【0037】
弁体40の動作位置においては、
図2において引用符号68で示されている、通常運転のガス交換路66とは異なる流路が生じる。流路68は内部空間28から出発し、内部空間セクション24dおよび隣接する放射状に広がる内部空間セクション24cを通って弁体40のパッキン38の周囲を放射状外側に向かい、周方向に見てスプリングアーム54と固定要素48との間を通り抜けて内部空間セクション24bの中心領域へ、そして最終的に内部空間セクション24aを通って周辺領域30へと通じる。
【0038】
流路68に沿ってガス透過膜44の周囲を通る流れには、短時間で大量のガスが排出され得るという利点がある。その際、ガス透過膜44が無傷のままであることが好ましい。
【0039】
図面に示した実施例においては、スプリングアーム54は放射状外側に反れた後、再び放射状内側に跳ね戻り、弁体40とは、弁体が動作位置にある場合は、もはや接触していない状態である。しかし、スプリングアーム54が固定要素48と接触した状態を保ち、大量のガスを排出して、弁体40の内部空間28内の圧力が低下した後、再び動作位置から静止位置へと自動的に移動されるように形成されていることが考えられ得る。
【0040】
図面に示した実施例においては、弁体40を手動で、または道具を用いて再び動作位置(
図2を参照)から静止位置(
図1を参照)へと押し付けることが可能である。弁体へは、内部空間セクション24aを介して容易に到達できる。