特許第6872555号(P6872555)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6872555スピロガルバノンを調製するためのプロセス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6872555
(24)【登録日】2021年4月21日
(45)【発行日】2021年5月19日
(54)【発明の名称】スピロガルバノンを調製するためのプロセス
(51)【国際特許分類】
   C07C 45/51 20060101AFI20210510BHJP
   C07C 49/557 20060101ALI20210510BHJP
   C07C 49/553 20060101ALI20210510BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20210510BHJP
【FI】
   C07C45/51
   C07C49/557CSP
   C07C49/553
   !C07B61/00 300
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2018-541124(P2018-541124)
(86)(22)【出願日】2017年2月13日
(65)【公表番号】特表2019-504847(P2019-504847A)
(43)【公表日】2019年2月21日
(86)【国際出願番号】EP2017053112
(87)【国際公開番号】WO2017140607
(87)【国際公開日】20170824
【審査請求日】2019年12月16日
(31)【優先権主張番号】1602644.5
(32)【優先日】2016年2月15日
(33)【優先権主張国】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】501105842
【氏名又は名称】ジボダン エス エー
(74)【代理人】
【識別番号】100102842
【弁理士】
【氏名又は名称】葛和 清司
(72)【発明者】
【氏名】エルウッド,シモン
(72)【発明者】
【氏名】ティアム,ウィリアム アレクサンダー
【審査官】 神谷 昌克
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−228482(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/043522(WO,A1)
【文献】 国際公開第2015/144832(WO,A1)
【文献】 特開昭50−105841(JP,A)
【文献】 特開昭60−224650(JP,A)
【文献】 European Journal of Inorganic Chemistry,2014年,pp.4394-4407
【文献】 Food and Chemical Toxicology,2013年,Vol.62,pp.S1-S44
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スピロガルバノンを製造する方法であって、以下:
(a)エチニルスピロデカノールをループ転位に供することで、式I
【化1】
で表される化合物を与えること;
(b)(a)の化合物をC1〜C4アルキルアセタールへ変換すること;
(c)前記アセタールを、弱酸触媒の存在下、アリルアルコールとのトランス−アセタール化反応に供すること;
(d)(c)の生成物を、酸触媒の存在下で加熱することで、アリルエノールエーテルを与えること;および
(e)(d)の生成物をクライゼン転位に供することで、スピロガルバノンを与えること、
というステップを含
式Iで表される化合物が、式IaおよびIb:
【化2】
で表される化合物から選択される、前記方法。
【請求項2】
ステップ(b)のアセタール形成が、強酸触媒の存在下、式Iで表される化合物とアルコールおよび対応するオルトギ酸トリアルキルとの反応によって引き起こされる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ステップ(b)が、0℃を下回る温度にて行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
ステップ(c)および(d)が、一緒に実施される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
式I
【化3】
で表される化合物であって、
式IaおよびIb:
【化4】
で表される化合物から選択される、前記化合物
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、スピロガルバノン(spirogalbanone)を調製するプロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
スピロガルバノン:
【化1】
は、香水製造業において極めて貴重な強いガルバノンノートを伴う芳香成分である。それは、2つの異性体、(1−(スピロ[4,5]デカ−6−エン−7−イル)−4−ペンテン−1−オンおよび1−(スピロ[4,5]デカ−7―エン−7−イル)−4−ペンテン−1−オン)で存在する。後者がより強力であり、およびこの2つは典型的には、市販の配合物中、40:60の重量比で生じている。完全な分離は可能ではあるが、ほとんど価値がない。
【0003】
スピロガルバノンの生産のために現在使用されている1つの典型的な方法は、次:
【化2】
のとおりにまとめられることができる。
【発明の概要】
【0004】
今や、スピロガルバノンは、新しくかつより効率的な方法によって製造され得ることが見出されている。したがって、以下のステップを含むスピロガルバノンを製造する方法が提供される:
(a)エチニルスピロデカノールをループ転位に供することで、式I
【化3】
で表される化合物を与えること;
(b)(a)の化合物をC1〜C4アルキルアセタールへ変換すること;
(c)前記アセタールを、穏やかな酸触媒の存在下、アリルアルコールとのトランス−アセタール化反応に供すること;
(d)(c)の生成物を、酸触媒の存在下で加熱することで、アリルエノールエーテルを与えること;および
(e)(d)の生成物をクライゼン転位に供することで、スピロガルバノンを与えること。
【発明を実施するための形態】
【0005】
ループ転位は、α,β−不飽和ケトンを与える、第3級α―アセチレンアルコールの酸触媒転位である(例えば、H. Rupe and K. Glenz, Justus Liebigs Ann. Chern., 436, 195 (1924)を参照)。
クライゼン転位は、アリルビニルエーテルが不飽和カルボニル化合物へ熱的に変換される[3,3]−シグマトロピー転位である。それは、最初にL.クライゼンによって、Berichte der deutschen chemischen Gesellschaft, 45, 3, pp. 3157-3166 (October-December 1912)に報告された。それはこれ以来、多くの研究および無数の変形の対象になっている。本開示において、それは、さらに下記に記載されるであろうとおり、最終段階を構成するものである。
【0006】
エチニルスピロデカノール(9−エチニルスピロ[4.5]デカン−9−オール)は、EP 0 913 383に記載される方法に従って調製されてもよい。
ループ転位において、エチニルスピロデカノールは、酸性水溶液の条件のもとで加熱される。使用される酸は、典型的にはギ酸および酢酸などの有機酸であり、その後加熱、およびアルカンでの抽出が続く。
段階(a)の生成物である式Iで表される化合物は、式Iで表される化合物(生成物の約75重量%を含む)と他の副生成物との混合物であり、この残りのほとんどはタール状残渣である。最終生成物の70〜75重量%を含む式Iで表される化合物は、フラッシュ蒸留の手段によって単離されてもよい。混合物は、約60〜65%の式Ibで表される化合物およびその残りの式Ia:
【化4】
を含む。
【0007】
表現「式Iで表される化合物」の使用は、以後、化合物IaおよびIbの両方を包含する意味において使用される。
スピロガルバノンの調製を進める前に蒸留によって式Iで表される化合物を単離することが可能であり、およびこれは、スピロガルバノンのわずかによりよい収率をもたらすだろうが、その調製は、粗生成物とともに進んでしまうことがある。
式Iで表される化合物は新規な化合物であり、それ自体が、フルーティ、カモミール、田園風の(agrestic)、レザー調の、脂肪質の、として記載される興味深い匂い特性を有している。したがって、上記に定義されるとおり、式Iで表される化合物もまた提供される。
【0008】
次いで、式Iで表される化合物は、以下の一連の反応:
− それらは、C1〜C4アルキルアセタールへ変換される;
− このアセタールは、穏やかな酸触媒の存在下、アリルアルコールとともにトランス−アセタール化される;
− その結果得られる生成物は、酸触媒の存在下で加熱されることで、アリルエノールエーテルを与える;および
− その結果得られる生成物は、クライゼン転位に供されることで、スピロガルバノンを与える、
に供される。
【0009】
「C1〜C4アルキルアセタール」は、式III
【化5】
式中R、Rは、同じかまたは異なるC1〜C4アルキルであってもよい、で表される化合物を意味することに注意すべきである。
【0010】
典型的な反応順序は、以下のスキーム:
【化6】
に示される。
【0011】
この例示において、C1〜C4アルキルは、2つのメチル基を含み、および両方のメチル基は、アリル基によって置換される。いくつかの場合において、一方のアルキル基しか置換されないが、これは、なおもスピロガルバノンのままである最終結果物には影響を及ぼさない。
この順序における様々なステップは、当該技術分野に周知であり、および当該技術分野の標準的な実務に従って行われ得る。それらは、中間体の精製または単離のいずれも必要なく、単一の反応槽中で連続的に実施されてもよい。下記に記載される方法は、所望する最終的な結果物獲得への多数の可能な経路の1つであり、これらのすべては本明細書中に包含される。
【0012】
アセタール形成は、いずれの好都合な方法によって達成されてもよく、具体的な方法は、強酸触媒の存在下での、親ケトン(parent ketone)とアルコールおよび対応するオルトギ酸トリアルキルとの反応である。いずれのかかる強酸触媒も使用されてもよく、具体的な例は、硫酸およびメタンスルホン酸などの液体触媒である。この反応は典型的には、低温にて、具体的には0℃未満で、より具体的には−10℃と−5℃との間で行われる。
(典型的にはおよそ6時間の)反応が完了したとき、触媒は、酢酸ナトリウムなどの塩基の添加によって中和される。
【0013】
トランスアセタール化ステップおよび除去ステップは、一緒に実施されてもよい。これは典型的には、穏やかな酸触媒およびアリルアルコールを混合物へ加えることによって達成される。温度は、アリルアルコール添加に先立ち20〜25℃まで上昇させられ、添加後にその温度を約130〜150℃まで徐々に上昇させ、およびそれをそこで維持し、その間アルコール性副産物を留出させる。この段階にとって典型的に好適な触媒は、クエン酸およびプロピオン酸を含む。
このステップの時間は変動し、6〜12時間が典型的であるが、12時間超も可能である。
【0014】
加熱は継続され、次いでクライゼン転位が自発的に起こる。
最終結果物は、95%より高い化学(モル)収率でのスピロガルバノンである。
上記で言及されたとおり、本方法は、より効率的かつより廉価な方法におけるスピロガルバノンの調製を許容する。
本開示は、すべての部が重量である以下の非限定例を参照してさらに記載される。
【0015】
(a)式Iで表される化合物の調製:
反応器を、714部 ギ酸および161部 水で満たした。温度を95〜100℃まで上昇させ、500部 エチニルスピロデカノール(86.6重量%)を30分の期間にわたり加えた。温度を、反応が完了するまで(約9時間)維持した。
次いで、反応混合物を30〜40℃まで冷却し、10%ブラインおよびヘプタンの各々250部を加えた。混合物を15分間撹拌し、15分間静置させ、その時点にて下(水)層を流出させた。次いでこの水層へ、さらに300部のヘプタンを加え、15分間の撹拌/15分間の静置/水層排出を繰り返した。その結果得られた2つの有機画分を合わせ、3回、各々250部 10%ブラインで洗浄した。溶媒をロータリーエバポレータ中で除去することで、481部の粗製材料が与えられた(65〜70%純粋)。粗製材料をフラッシュ蒸留することで、322部の式Iで表される化合物が与えられた(90%純度にて70%収率)。
【0016】
【化7】
【0017】
【化8】
【0018】
(b)スピロガルバノンの調製:
先に記載されたとおりに調製された式Iで表される化合物の362.1部を94.6部 メタノールとともに反応器へ加え、混合物を窒素下−8℃まで冷却した。次いで、2.8部 98%硫酸を加え、温度を−5〜−10℃の範囲内に維持した。この混合物へ、オルトギ酸トリメチルの252.8部を2時間の期間にわたり加え、混合物をこの温度にて3.5時間撹拌した。
次いで、温度を20分の期間にわたり0℃まで上昇させ、8.4部 酢酸ナトリウムを加えた。0℃での撹拌を30分間継続し、その時間の間、反応混合物の色が、灰黒色から透明な橙色へ変化した。pHを確認することでそれが最低3であることを確実にし、必要に応じてより多くの酢酸ナトリウムを加えることでこのpHを維持した。
【0019】
反応混合物の温度を20〜25℃まで上昇させ、249.7部 アリルアルコールおよび2.9部 クエン酸を加えた。次いで温度を、蒸留により、7時間の期間にわたり150℃まで緩やかに上昇させた。混合物を定期的にサンプリングし、GC分析によって確認した。生成物の量が同じ(1%差以内)ままであったとき、反応を40℃まで冷却することによって、および200部 ヘプタンおよび340部 水を加えることによって停止させた。混合物を15分間撹拌し、さらに15分間静置させ、下(水)層を排出した。このプロセスを、水層に対して100部ヘプタンで繰り返した。次いで、2つのヘプタン層を合わせ、340部の10%ブラインで洗浄し、その後300部 10%炭酸ナトリウム溶液による洗浄が続いた。
溶媒をロータリーエバポレータ中で留出させることで、484.3部 油が与えられた。
50部のパラフィン油を油に加え、混合物を、1mbar圧力での3cmビグリューカラムを用いるフラッシュ蒸留に供することで、画分中351.8部 スピロガルバノンが与えられた。収率は90.4%であった。
【0020】
【化9】
【0021】
【化10】