(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
遠心機(遠心分離機)においては、処理対象となる試料を内部に収容した状態のロータが高速で回転駆動される。この際、ロータは、下側からモータで回転駆動されるように遠心機本体中のロータ室に収容され、ロータ室の上側にはロータ室を封止するための蓋が開閉可能に設けられ、更に、蓋を閉じた状態で固定するためのロック機構が設けられている。こうした構成の遠心機の構造については、例えば特許文献1に記載されている。
【0003】
この遠心機を使用するに際しては、まず、蓋を開けた状態で、使用者がロータ室内のロータの内部に試料(正確には試料を収容した状態のチューブ)を設置する。その後に、使用者が、ロータの上部を封止してから、蓋を閉じることによって、ロータ室が封止される。その後、ロータを所定の回転速度、時間で駆動することによって、試料に遠心力が印加される。ロータの回転中に蓋が開くことがないように、蓋が閉じられた後は、ロック機構によって蓋は固定される。蓋の開閉作業において、蓋を閉じる際には、蓋を軽く閉じるまでの操作は手動で行われ、この状態から蓋を固定する操作は、ロック機構によって電動で行われる。
【0004】
特許文献1に記載の遠心機においては、蓋の下側には、係合孔が形成された1対のフックキャッチが設けられ、蓋の下側の遠心機本体側には、回動することによってそれぞれの係合孔に係合させることのできる1対のフック(駆動側フック、従動側フック)が設けられる。蓋を軽く閉じることにより、フックと係合可能な位置までフックキャッチが下降したことがセンサ(光学センサ)によって検出されると、ロック機構におけるモータ(ロック用モータ)が駆動されることによってフックが回動して係合孔に係合する。その後、フックが更に回動することによって、フックキャッチは下側に強く引き込まれる。これによって、蓋を強く閉じた状態で遠心機本体に固定することができる。
【0005】
ここで、蓋によってロータ室を十分に封止するために、遠心機本体側のロータ室周囲の上面にはパッキン(シール部材)が装着され、蓋が閉じた状態では蓋と遠心機本体側との間は、このパッキンによって封止される。上記の動作において、蓋が軽く閉じられた状態とは、蓋とパッキンとが軽く接した状態であり、フックキャッチが下側に引き込まれて蓋が強く閉じられた状態とは、蓋が下側に引き込まれることによってパッキンが潰れ、蓋と遠心機本体側との間が十分に封止された状態である。蓋を開ける際には、フックを上記とは逆向きに回動させることによって蓋の固定を解除し、その後に手動で蓋を開けることができる。
【0006】
この際、フックキャッチがフックと係合可能な位置まで下降したことがセンサによって確認されてからフックが回動するため、蓋の固定を確実に行うことができる。また、電動によって蓋を下側に引き込む力は、手動によって蓋を下側に押さえつける力よりも十分に大きく設定され、上記の構成により、閉じた状態での蓋の固定を強固に行うことができる。
【0007】
また、上記のように、蓋とパッキンとが軽く接する状態までの操作を手動で行わせてから、その後で電動による強い力で蓋を強く固定するという手順とすることによって、蓋とパッキンとの間に異物が存在した場合には、電動による強い力で蓋を下側に引き込む前に、使用者はこの異物の存在を認識することができる。このため、こうした構成とすることによって、蓋とパッキン(遠心機本体側)との間に異物を挟み込んだ状態で蓋を固定しようとする動作を行うことが防止でき、蓋によるロータ室の封止をより確実に行うことができる。あるいは、これによって、異物を挟み込んだ状態で蓋を下側に強く引き込む動作が防止されるため、異物によって蓋やロック機構、パッキン等が破損することも防止される。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施の形態となる遠心機(遠心分離機)の構成について説明する、この遠心機においては、試料を内部に収容する多数のチューブ(試料用容器)が用いられ、このチューブがロータ内に設置された状態でロータが高速で回転駆動される。ロータは遠心機本体において設けられた空間であるロータ室中に設置される。
図1は、この遠心機100の全体を示す斜視図であり、遠心分離処理時には、遠心機本体101中に設けられたロータ室(図示せず)は、上側から蓋102によって封止される。蓋102は、開閉可能とされ、蓋102を上側に開くことによって、使用者は、内部のロータ(図示せず)内にチューブを設置する、あるいは、ロータを交換する、等の作業を行うことができる。
【0017】
ロータを回転駆動して遠心分離処理を行う際には、ロータの温度を精密に制御する、あるいは高速で回転するロータの環境を一定に維持する等のために、必ず蓋102は閉じた状態とされる。このため、遠心機本体101には、蓋102を閉じた状態で固定するためのロック機構10が設けられ、蓋102が閉じて固定された状態でのみロータが回転駆動できる設定とされる。以上の構成については、特許文献1に記載の遠心機と同様である。蓋102は、水平方向においてロック機構10が設けられた側と反対側に設けられたヒンジ部(図示せず)を軸にして回動可能とされることによって、開閉可能とされる。
【0018】
この遠心機100は、ロック機構10及びこれに関わる蓋102の構造に特徴を有する。蓋102の下側には、蓋102が閉じた状態でロック機構10のある箇所において下側に突出するように設けられたフックキャッチ30が固定される。
図2は、フックキャッチ30とロック機構10の構造を示す側面図であり、この状態は、蓋102を閉める直前の状態を示しており、この場合のロック機構10は、フックキャッチ30とは当接せず、かつ駆動されないスタンバイ状態となっている。蓋102が全開の状態でフックキャッチ30が図示の範囲外の上側にある場合においても、ロック機構10の状態は
図2の状態となる。
【0019】
図2において、蓋102が閉じる際にフックキャッチ30は下降し、蓋102が開く際にはフックキャッチ30は上昇する。蓋102は、上側(蓋102が開く側)に付勢されているため、蓋102を閉じるためには、使用者が蓋102を下側に押さえつける操作が必要となる。このため、使用者がロータ内にチューブを設置する作業等を行う間は、蓋102は開いた状態で安定して維持され、使用者がこの作業を容易に行うことができる。フックキャッチ30は、その厚さ方向が
図2中の左右方向とされた板状であり、この厚さ方向を貫通する孔部である係合孔30Aをその下端のやや上側に具備する。
【0020】
また、遠心機本体101側に設けられたロック機構10は、蓋102が閉じた状態でフックキャッチ30と係合し、更にフックキャッチ30を下側に引き込んで固定することができる鉤状のフック11を具備する。フック11は、水平方向(
図2において紙面垂直方向)に沿ったフック軸(回動軸)11Aの周りで回動可能とされる。ただし、フック軸11Aにはバネ(弾性体)12が装着され、バネ12の両端部はそれぞれ遠心機本体101に固定されたロック機構筐体13側に係止される。このため、バネ12による弾性力以外の外力がフック11に加わらない状態では、フック11のフック軸11A周りの角度は、
図2に示された状態(初期位置)に維持され、フック11を
図2において時計回り、反時計回りのどちらに回動させようとした場合でも、バネ12によって、フック11にはこれを初期位置に戻そうとする力が働く。フックキャッチ30が下降した場合に、フックキャッチ30の下端と初期位置にあるフック11の上面(フック上面11B)とが当接するように、初期位置は設定される。
【0021】
また、ロック機構10において、フック11の下側には、モータ(ロック用モータ:図示せず)が設けられ、ロック用モータによって回転駆動されるロック用駆動軸14Aは、フック軸11Aと平行(
図2における紙面垂直方向)とされる。ロック用駆動軸14Aには、
図2における紙面方向に広がる略円板状のロータ15が固定される。フック11とロータ15とは、クランク16で連結される。このため、ロータ15には、その中心(ロック用駆動軸14A)から離間した箇所に紙面手前方向に突出するロータピン15Aが設けられ、クランク16における下端側には、ロータピン15Aと係合する孔部であるロータ側係合穴16Aが設けられる。このため、クランク16は、その下端側で、ロータピン15Aがロータ側係合穴16Aと係合することによって、ロータピン15Aの周りで回動可能な状態でロータ15に装着される。ただし、ロータ側係合穴16Aは、クランク16の長さ方向に沿って長くされた長穴形状とされる。このため、クランク16は、その長さ方向に沿って、ロータ側係合穴16Aの長径に対応した分だけロータ15に対して移動可能となる。
【0022】
また、クランク16の上端側にも円形のフック側係合穴16Bが設けられる。フック側係合穴16Bを図中紙面垂直方向で挿通するフック側係止ピン11Cによって、クランク16はフック11に対してフック側係止ピン11Cの周りで回動可能に装着される。このため、ロック用駆動軸14A(ロータ15)を回動させることによって、クランク16を介してフック11を回動させることができる。この際、前記のようにロータ側係合穴16Aを長穴形状としてロータピン15Aがロータ側係合穴16Aに遊嵌した状態とすることによって、ロック用駆動軸14A(ロータ15)が固定された状態でも、狭い角度範囲内においてはフック11を回動可能とすることができる。
【0023】
上記の構成により、
図2において、フック11を反時計回りに回動させた後でフックキャッチ30を下降させ、その後でフック11を時計回りに回動させることによって、フック11の先端部(フック先端部11D)を
図2における左側から右側に係合孔30Aを貫通させることができる。これによって、フックキャッチ30とフック11とを係合させ、上側に付勢された蓋102を係止し、蓋102が閉じた状態を維持することができる。
【0024】
また、このロック機構10においては、係合孔30Aがフック先端部11Dと係合可能な位置まで下降したか否かを認識するための第1光学センサ(第1のセンサ17を具備する。第1光学センサ17は、
図2における第1光学センサ17の左側における検知領域17Aにフックキャッチ30の一部が存在するか否かを光学的に検知する。また、このロック機構10は、フック11が初期位置から反時計回りに回動した状態にあるか否かを同様に検知するための第2光学センサ(第2のセンサ)18も具備する。第2光学センサ18は、
図2においてフック11よりも紙面奥側に設置され、第2光学センサ18よりも紙面手前側の検知領域18Aにフック11の一部が存在するか否かを光学的に検知する。
図2の状態においては、検知領域17Aにフックキャッチ30が存在しないことを第1光学センサ17が、検知領域18Aにフック11が存在しないことを第2光学センサ18が、それぞれ検知する。
【0025】
以下に、
図2の状態からフックキャッチ30を下降させた(蓋102を閉じた)際の、フック11等(ロック機構10)の動作について説明する。
【0026】
図2の状態(フック11が初期位置にある状態)において、フック上面11Bは、右側に傾斜するように形成されている。また、前記のように、ロック用駆動軸14A(ロータ15)が固定された場合でも、フック11は狭い角度範囲で回動可能である。このため、使用者が蓋102を閉じ、
図1の状態からフックキャッチ30が下降してフックキャッチ30の下端がフック上面11Bと当接した場合には、ロータ15が固定されていても、フックキャッチ30はバネ12に抗してフック11を
図2の状態から反時計回りに回動させることができる。
図3は、この状態を示す図である。この状態では、フック11はフックキャッチ30に押されて
図2の状態(初期位置)よりも反時計回りに回動する。ただし、フック11は初期位置に向けて付勢されるため、フック11は、フック先端部11Dがフックキャッチ30の図中左側面と当接する第1の位置となる。この状態で、フックキャッチ30を、その図中左側面をフック先端部11Dに対して摺動させて、更に下降させることができる。
図3においては、検知領域18Aにフック11が存在することを第2光学センサ18が検知する、すなわち、第2光学センサ18は、フック11が第1の位置にあることを検知する。
【0027】
この状態からフックキャッチ30を更に下降させて係合孔30Aがフック先端部11Dがある高さに来ると、フック11はバネ12によって初期位置側(この場合には時計回り)に付勢されているため、フック先端部11Dが図中左側から右側に係合孔30Aを貫通するように時計回りに回動する。
図4は、これによってフック11が再び初期位置となった状態を示す図である。前記の通り、蓋102は開く方向に付勢されておりフックキャッチ30は図中上側に付勢されるため、
図2の状態から
図3の状態とするためには、使用者が蓋102を下側に押さえつける操作が必要である。一方、
図4の状態においては、フック先端部11Dが係合孔30Aと係合するため、使用者が蓋102から手を離しても、蓋102はフック11によって係止されるため、フックキャッチ30が
図4の高さとなるように蓋102は維持される。
【0028】
ここで、
図2〜4の状態においては、ロータ15(ロック用駆動軸14A)は固定されており、上記のようなフック11の動きは、フックキャッチ30(蓋102)が下降する動作と、バネ12の弾性力によって実現される。
【0029】
図4の状態においては、フックキャッチ30が検知領域17Aに存在することを第1光学センサ17で確認することができる、すなわち、第1光学センサ17は、フック先端部11Dと係合孔30Aと係合可能な高さまでフックキャッチ30が下降したことを検知する。同時に、フック11が第1の位置にないため検知領域18Aにフック11が存在しないことを第2光学センサ18で確認することができる。このように検知領域17Aにフックキャッチ30が存在し、かつ検知領域18Aにフック11が存在しない状態は、
図2〜4の中で
図4のみである。このため、第1光学センサ17と第2光学センサ18を用いて、フック先端部11Dが係合孔30Aに係合した
図4の状態を認識することができる。
【0030】
第1光学センサ17、第2光学センサ18によって、フック先端部11Dが係合孔30Aに係合した
図4の状態が認識された場合に、ロック用モータを駆動し、ロック用駆動軸14A(ロータ15)を図中反時計回りに回動させる第3の動作を行った状態が
図5である。この状態では、ロータ15が反時計回りに回動することによってクランク16が押し上げられ、フック11は、初期位置から時計回りに回動した第2の位置となる。この際、係合孔30Aと係合したフック先端部11Bにおける係合孔30Aの下側の内面と当接する下面がこの回動の際に下降するように、フック先端部11Dの形状は設定される。このためには、フック11の下面におけるフック軸11Aからの距離が、図中反時計回り方向(第1の向き)に沿って次第に短くなるような形状とすればよい。この場合、フック11の回動に際して、フックキャッチ30は下側に引き込まれる。この際、ロック用駆動軸14Aに加えるトルクを十分大きく設定すれば、上記の操作によって使用者が蓋102を下側に押さえつける力よりも大きな力で、蓋102を下側に引き込むことができる。
【0031】
その後、この状態でロック用駆動軸14A又はロータ15を固定する、あるいは直接フック11を固定することによりこの状態を維持する動作(第4の動作)を行うことで、この状態で蓋102を固定することができる。このロック機構10においては、第1光学センサ17、第2光学センサ18によって
図4の状態(第2の動作が完了した状態)が認識された場合に、ロック用モータを駆動させる第3の動作を行い、
図5の状態(第3の動作が完了した状態)として蓋102を固定する(第4の動作を行う)ことができる。
【0032】
その後、蓋102を開ける際には、
図6に示されるように、
図5の状態からロック用駆動軸14A(ロータ15)を図中時計回りに回動させることによってフック11を反時計回りに回動させ、フック先端部11Dを係合孔30Aから係脱させる動作(第5の動作)を行わせればよい。これによって、蓋102は開閉可能となり、蓋102が開く側に付勢されていれば、フックキャッチ30及び蓋102は上昇し、蓋102が開く。このため、遠心機本体101において、ロック用駆動軸14Aをこのように動作させるためのスイッチを設ければ、蓋102を開けることができる。
図5の状態から
図6の状態となったことは、検知領域17Aにフックキャッチ30が存在しなくなったことを第1光学センサ17が、検知領域18Aにフック11が来たことを第2光学センサ18が、それぞれ検知することによって、認識することができる。
【0033】
その後、フックキャッチ30が十分に高い位置まで上昇した(蓋102が十分に開いた)状態において、ロック用駆動軸14Aを図中反時計回りに駆動してフック11を初期位置とする動作(第6の動作)を行わせることによって、ロック機構10を再び
図2のスタンバイ状態とすることができる。その後は、再び上記の動作を行わせることができる。
【0034】
なお、蓋102によって閉じられるロータ室の上側の開口部の周囲には弾性体で構成されたパッキン(シール部材)が装着されており、蓋102が閉じた状態では、遠心機本体101と蓋102との間はこのパッキンで封止される。パッキンは遠心機本体101側に装着され、上記の構成においては、
図4の状態において、このパッキンと蓋102が軽く接した状態となるように設定される。この場合、蓋102が強く引き込まれた
図5の状態においては、パッキンが上下方向で潰され、これによって蓋102と遠心機本体101との間の密封性を高めることができる。
【0035】
ここで、遠心機本体101(パッキン)と蓋102との間に異物が存在した状態で
図5のように蓋102を強く閉じて固定した場合には、ロータ室が封止されない、あるいはパッキンや遠心機本体101、蓋102が破損する場合がある。上記の構成において、
図2から
図4の状態とするまでには、使用者が蓋102を閉じる(フックキャッチ30を下側に移動させる)操作が必要であり、この際に蓋102に下向きに加えられる力は、
図5においてロック用モータによって蓋102に下向きに加えられる力よりも弱い。このため、上記のように異物が存在した場合には、力を加えても
図4の状態までフックキャッチ30を下降させることができない、あるいは極めて強い力を加えないと
図4の状態までフックキャッチ30を下降させることができない。前記の通り、
図4の状態になったか否かは、第1光学センサ17、第2光学センサ18によって認識することができるため、使用者は、蓋102に対する力の入れ具合と第1光学センサ17、第2光学センサ18の検知結果によって、上記のように異物が存在しているか否かを認識することができる。その後、蓋102を軽く閉じても
図4の状態とすることができれば、ここで使用者は蓋102から手を離し、その後の動作はロック用モータによって行われる。このため、上記の構成においては、異物の存在によってロータ室の密封性が低下する、あるいは異物によってパッキンや遠心機本体101、蓋102が破損することが抑制される。
【0036】
比較のために、一般的に使用される従来のロック機構50の構成の一例のスタンバイ状態における構造を
図2に対応させて
図7に示す。ここでは、上記と同様のフックキャッチ30が用いられ、同様にロック用モータも用いられる。このロック機構50においてフックキャッチ30(蓋102)を下側に強く引き込むために、上記と同様の形状の下面を具備するフック51が用いられ、フック51がフック軸51Aの周りで回動するようにロック用モータで駆動されることも同様である。この際に、上記と同様のロータ55がロック用駆動軸54Aに固定され、ロータ55に固定されたロータピン55A、フック51側に固定されたフック側係止ピン51Cにはクランク56が装着される。この構成において、ロック用駆動軸54Aを回動させることによってフック51を回動させることができる。これによって係合孔30Aにフック51を係合させた状態で、フック51を図中時計回りに回動させることによって、上記と同様にフックキャッチ30を下側に強く引き込むことができることも同様である。また、このロック機構50においても、蓋102を軽く閉じる操作が使用者の手によって行われた後に、ロック用モータによって強い力で蓋102が強く閉じた状態で固定することができる。
【0037】
このロック機構50において、蓋102を閉じる際には、
図4と同様に、フック51が係合孔30Aと係合可能な高さまでフックキャッチ30を下降させることが必要であり、この操作は作業者の手によって行われる。その後でロック用駆動軸54Aを回動させることによってフック51を時計回りに回動させ、フック51を係合孔30Aに係合させ、更にフック51を時計回りに回動させてフックキャッチ51を下側に強く引き込むことができる。この際にフック51を回動させる動作はロック用モータによって行われる。
【0038】
この際、係合孔30Aがフック51と係合可能でない高さにある場合にフック51を時計回りに回動させた場合にはフッック51は係合孔30Aに係合しない。この場合には蓋102を閉じて固定することができない、あるいはフック51は強いトルクで駆動されるため、フックキャッチ30やフック51が破損するおそれもある。
【0039】
こうした状況を防止して確実にフック51を係合孔30Aに係合させるために、上記と同様の第1光学センサ17を設け、第1光学センサ17によって、係合孔30Aがフック51と係合可能となる位置までフックキャッチ30が下降したことを確認することができる。このため、このロック機構50においても、上記と同様にフック51を確実に係合孔30Aに係合させ、その後にフックキャッチ30を下側に強く引き込むことができる。
【0040】
この場合において、フック51が係合孔30Aに係合するまでは、使用者は蓋102を押さえ続ける必要があることは、前記のロック機構10と同様である。しかしながら、このロック機構50においては、第1光学センサ17によって係合孔30Aがフック51と係合可能となる高さまでフックキャッチ30が下降したことを確認してから、更にフック51を時計回りに回動させてフック51を係合孔30Aに係合させるまで、使用者は蓋102を押さえ続ける必要がある。この際、フック51は強いトルクで駆動されるため、一般的にはその回動速度を速くすることはできない。更に、この場合には
図2の状況とは異なり、スタンバイ状態におけるフック51が下降するフックキャッチ30の障害とならない状態となっていることが必要である。このため、フック51の先端部は、
図7において、フックキャッチ30が下降した際の位置よりも左側に離間していることが必要である。このため、フック51を時計回りに回動させる動作を開始してからフック51が係合孔30Aに係合するまでに要する時間は長くなり、使用者はこの間にわたり蓋102を押さえ続ける必要がある。
【0041】
これに対して、上記のロック機構10においても、使用者が蓋102を閉じる(フックキャッチ30を下降させる)動作は、フック先端部11Dが係合孔30Aに係合するまで行われる。フック先端部11Dが係合孔30Aに係合するまでの間には、
図3に示されるようにフック11は一旦反時計回りに回動して第1の位置となり、その後に
図4に示されるように時計回りに回動して初期位置に戻る。従来のロック機構50においてはフック51がスタンバイ状態から係合孔30Aに係合するまでの動作はロック用モータにより駆動されたのに対し、上記のロック機構10においては、スタンバイ状態からフック先端部11Dが係合孔30Aに係合するまでの間においてフック11はロック用モータでは駆動されず、フックキャッチ30の下降する動作やバネ12の弾性力で駆動される。
【0042】
この際、フック11が第1の位置にある
図3の状態からフック11が初期位置となりフック先端部11Dが係合孔30Aに係合する
図4の状態までのフック11の回動角度は、フックキャッチ30の厚さに対応した非常に小さな角度となり、この動きはバネ12によって駆動される。このため、この場合にフック11が第1の位置から初期位置に移動するのに要する時間は非常に短く、使用者が蓋102を閉じてフックキャッチ30を下降させ、フック先端部11Dが係合孔30Aに係合可能な高さとなった直後には、自動的に
図4の状態が実現される。このため、ロック機構10を用いた場合には、実質的には、フック先端部11Dが係合孔30Aと係合可能な高さとなるまでフックキャッチ30を下降させる(蓋102を閉じる)までの間においてのみ、使用者は蓋102を押さえ続ければよい。すなわち、上記のロック機構10を用いた場合には、従来のロック機構50を用いた場合と比べて、蓋102を押さえ続ける時間を短くすることができる。これによって、使用者の負担を小さくすることができる。
【0043】
すなわち、上記のロック機構10を用いることにより、蓋102の固定を確実に行うことができ、かつ使用者の負担を小さくすることができる。
【0044】
加えて、上記のロック機構10を用いることにより、
図2から
図4までの一連の動作(蓋102の一時的な保持)をバネ12の復元力のみで行うことができるため、従来のロック機構50のようなロック用モータの制御を必要とせず一時的な蓋102の保持精度を向上することができる。
【0045】
上記の構成においては、フックキャッチ30を貫通する係合孔30Aにフック先端部11Dが係合する構成とされたが、フックがフックキャッチに係合可能であり、かつフックがフックキャッチに係合した状態でフックキャッチを下側に引き込む動作が可能な限りにおいて、フックやフックキャッチの形状は任意である。例えば、係合孔の代わりに、板状のフックキャッチに設けた切り欠き部分等やピンにフックを係合させてもよい。
【0046】
また、上記の例では、フック11の上面(フック上面11B)を、スタンバイ状態において上記のように第2の向き側に傾斜させ、かつクランク16のロータ側係合穴16Aを長穴形状とすることによってクランク16をロータ15に対して長さ方向の短い範囲で移動可能とすることによって、下降するフックキャッチ30と当接することによってフック11を第1の位置に移動させることができた。しかしながら、同様の動作が可能である限りにおいて、フックやフックキャッチの構造、あるいはフックとロック用モータとの間の連結構造等は任意である。例えば、上記の例では、ロータ15が固定された場合においてもフック11を狭い角度範囲で回動可能とするためにクランク16とロータ15(ロック用モータ側)とが遊嵌して連結された構成としたが、逆に、クランクとフックとが遊嵌して連結された構成としてもよい。あるいは、他の構成を用いて、ロック用モータ側が固定された場合においてもフックを狭い角度範囲で回動可能とすることができる。
【0047】
更に、上記の例では、フック11のフック軸11A周りの回動動作に際して、初期位置(スタンバイ状態、及びフック11と係合孔30Aとが係合した直後の状態における位置)、第1の位置(フック11が係合孔30Aと係合する直前の位置)、第2の位置(フックキャッチ30を下側に強く引き込む位置)が設定された。しかしながら、上記と同様にフックキャッチに係合し、その後にフックキャッチを引き込むことが可能な限りにおいて、フックが移動する方向は任意である。例えば、フックの移動方向が水平方向(フックキャッチの移動方向と交差する方向)となるような設定としてもよい。