特許第6872565号(P6872565)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6872565
(24)【登録日】2021年4月21日
(45)【発行日】2021年5月19日
(54)【発明の名称】共沸及び共沸様組成物
(51)【国際特許分類】
   C09K 3/00 20060101AFI20210510BHJP
【FI】
   C09K3/00 111B
【請求項の数】1
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2018-565725(P2018-565725)
(86)(22)【出願日】2018年6月25日
(65)【公表番号】特表2020-514421(P2020-514421A)
(43)【公表日】2020年5月21日
(86)【国際出願番号】CN2018000231
(87)【国際公開番号】WO2019114050
(87)【国際公開日】20190620
【審査請求日】2018年12月14日
(31)【優先権主張番号】201711337331.4
(32)【優先日】2017年12月14日
(33)【優先権主張国】CN
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】516137993
【氏名又は名称】浙江衢化▲弗▼化学有限公司
【氏名又は名称原語表記】ZHEJIANG QUHUA FLUOR−CHEMISTRY CO LTD
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】特許業務法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】楊 波
(72)【発明者】
【氏名】洪 江永
(72)【発明者】
【氏名】張 彦
(72)【発明者】
【氏名】欧陽 豪
(72)【発明者】
【氏名】付 金萍
【審査官】 柴田 啓二
(56)【参考文献】
【文献】 特開2017−201022(JP,A)
【文献】 特表2013−529233(JP,A)
【文献】 特開2012−140592(JP,A)
【文献】 特開平11−080717(JP,A)
【文献】 特開2012−207045(JP,A)
【文献】 特表2014−502303(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 3/00
C09K 5/00
C11D 7/30
C11D 7/50
CAplus(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
共沸及び共沸様組成物であり、ポリウレタンの発泡剤組成物であって、(E)−1,1,1,4,4,4−ヘキサフルオロ−2−ブテン90〜95重量%、(E)−1−クロロ−,3,3,3−トリフルオロプロピレン1〜重量%及び1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロプロパン1〜重量%からなり、前記組成物は、14psia±0.5psiaの圧力下で、沸点が8.0℃±0.5℃であり、露点から沸点を引算した値が0℃以上0.377℃以下である、ことを特徴とする共沸及び共沸様組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は共沸及び共沸様組成物に関し、特に(E)−1,1,1,4,4,4−ヘキサフルオロ−2−ブテン、(E)−1−クロロ−,3,3,3−トリフルオロプロピレン及び1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロプロパンからなる共沸及び共沸様組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
モントリオール議定書では、オゾン層破壊物質であるクロロフルオロカーボン(CFC)およびハイドロクロロフルオロカーボン(HCFC)の使用を徐々に停止することが規定されており、現在ポリウレタン発泡剤に広く使用されているHCFC−141bは、ハイドロクロロフルオロカーボンの1種であり、使用を速く廃棄すべきものである。したがって、過去10年ほど、フルオロカーボン産業では、適切な代替発泡剤を見つけるために努力してきた。沸点がそれぞれ8.5℃と32℃であるトランス(HFO−1336mzz(E))およびシス(HFO−1336mzz(Z))の2種類を有する1,1,1,4,4,4−ヘキサフルオロ−2−ブテン(HFO−1336mzz)は、分子内に二重結合を含んでいるため、大気中に放出された後すぐにOHラジカルと付加して酸化分解され、大気寿命が短く(20日)、地球温暖化係数(GWP≒9)が低い。優れた発泡性と断熱性を持ち、最も優れた代替品の1つとなり、第4世代の発泡剤に属し、市場での使用の将来性が期待できる。
【0003】
Z−HFO−1336mzzは、発泡剤に直接使用することができ、環境保全性と優れた断熱性を有する。該発泡剤は、室温で安定した液体であり、処方における含有量を調整することにより良好な発泡が得られ、金属材料、プラスチック、エラストマー材料及び、主なポリエーテルポリオール(たとえば、マンニッヒポリエーテル、スクロース型ポリエーテル、ポリアリレートなど)とともにポリウレタンフォームを生成すると、良好な性能を示した。現在使用されている発泡剤と比較して、該製品は、環境に優しく、優れた断熱性を有し、不燃性で、オゾンの消費がなく、低コストで他の液体発泡剤に取って代わることができ、応用の将来性が期待できる。E−HFO−1336mzzは冷媒として使用されてもよく、ほかのものと配合して発泡剤として使用されてもよい。しかし、HFO−1336mzz単一成分で形成される孔は、安定性が低く、断熱効果が低いため、他の成分と組み合わせて使用される場合が多い。
【0004】
中国特許出願公開第101743270号明細書および中国特許出願公開第101878253号明細書では、Z−HFO−1336と2つ以上の活性水素を有する活性水素含有化合物とを含む組成物を発泡剤として、適切なポリイソシアネートと反応させて、ポリウレタンまたはポリイソシアヌレートポリマーの独立気泡フォームを生成する。ポリイソシアネートに基づく独立気泡発泡体は、断熱目的で広く使用されており、省エネルギーの電気機器に使用することができ、ポリウレタンおよびポリイソシアヌレートシートは、優れた断熱性と耐荷重性のため、建設業界の屋根材やクラッド材に広く使用されている。
【0005】
さらに、中国特許出願公開第102015592号明細書では、Z−HFO−1336、ジエチルエーテル、2−クロロプロパンまたはペルフルオロ−2−メチル−3−ペンタノンの共沸混合物または共沸様混合物を発泡剤として、熱可塑性または熱硬化性フォームを製造する。
【0006】
さらに、中国特許第103228757号明細書において、クロロトリフルオロプロペンとヘキサフルオロブテンの組成物、好ましくは(E)−1,1,1,4,4,4−ヘキサフルオロ−2−ブテンが開示されており、クロロトリフルオロプロペンとして、1−クロロ−,3,3,3−トリフルオロプロペンが好ましく、組成物に存在する90重量%の1−クロロ−,3,3,3−トリフルオロプロペンはトランス異性体であり、低いオゾン破壊係数またはゼロオゾン破壊係数を満たすために、冷媒、熱伝達流体、発泡剤、溶媒および推進剤として使用することができる。
【0007】
さらに、中国特許出願公開第103370390号明細書には、トランス−1,1,1,4,4,4−ヘキサフルオロ−2−ブテンと水との共沸及び共沸様組成物が開示されており、これは製造工程でE−1,1,1,4,4,4−ヘキサフルオロ−2−ブテンと不純物を分離することができ、共沸混合物は発泡剤、推進剤、冷媒、希釈剤などとして使用できる。
【0008】
上記特許に開示された発泡剤組成物は、GWP値が高く、熱伝導率が高く、使用時に機械全体のエネルギー消費量が高いという欠点を有しているため、発泡性能及び環境性能により優れた発泡剤組成物の開発が求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、従来技術の欠点を克服して、GWP値が低く、熱伝達係数が小さく、エネルギー消費量が低い共沸及び共沸様組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記技術的問題を解決するために、本発明は以下の技術案により達成される。
発泡組成物であって、(E)−1,1,1,4,4,4−ヘキサフルオロ−2−ブテン(HFO−1336mzz(E))、(E)−1−クロロ−,3,3,3−トリフルオロプロピレン(HCFO−1233zd(E))及び1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロプロパン(HFC−236ea)からなる。
【0011】
本発明の好適な実施形態として、前記共沸及び共沸様組成物は、好ましくは、(E)−1,1,1,4,4,4−ヘキサフルオロ−2−ブテン80〜95重量%、(E)−1−クロロ−,3,3,3−トリフルオロプロピレン1〜19重量%及び1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロプロパン1〜10重量%からなり、前記組成物は、14psia±0.5psiaの圧力下で、沸点が8.5℃±0.5℃である。
【0012】
本発明の好適な実施形態として、前記共沸及び共沸様組成物は、好ましくは、(E)−1,1,1,4,4,4−ヘキサフルオロ−2−ブテン85〜95重量%、(E)−1−クロロ−,3,3,3−トリフルオロプロピレン1〜10重量%及び1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロプロパン1〜5重量%からなり、前記組成物は、14psia±0.5psiaの圧力下で、沸点が8.5℃±1℃である。
【0013】
本発明の好適な実施形態として、前記共沸及び共沸様組成物は、好ましくは、(E)−1,1,1,4,4,4−ヘキサフルオロ−2−ブテン90〜95重量%、(E)−1−クロロ−,3,3,3−トリフルオロプロピレン4〜9重量%及び1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロプロパン1〜2重量%からなり、前記組成物は、14psia±0.5psiaの圧力下で、沸点が8℃±0.5℃である。
【0014】
共沸(Azeotrope)については、気相と液相の組成が平衡状態で同じ混合液体に対応する温度が共沸温度または共沸点と呼ばれる。共沸混合物とは、一定の圧力下で沸騰するときに、組成および沸点を保持する二成分または多成分液体混合物をいう。全ての二成分液体混合物が共沸混合物を形成するわけではない。このような混合物の温度−成分相図は、気相線(気液混合物と気体との間の境界)と液相線(液体と気液混合物との間の境界)が同じ最高点または最低点を共有するという顕著な特徴を有する。このような点が最高点である場合、正の共沸混合物、このような点が最低点である場合、負の共沸混合物と呼ばれる。ほとんどの共沸混合物は負の共沸混合物であり、すなわち、最も低い沸点を有する。いずれの共沸混合物も特定の外圧に対するものであり、共沸成分と沸点が圧力によって異なる。共沸混合物がその共沸点に達すると、その沸騰による気体部分の組成の比率が液体部分の組成と全く同じであるため、溶液成分は蒸留によって分離することができない。すなわち、共沸混合物の2つ以上の成分は、単なる蒸留または分留によって分離することができない。
【0015】
共沸様組成物とは、沸騰または蒸発時に定沸特性又は分留しない傾向を有するので、沸騰または蒸発の間に形成される蒸気の組成は、初期液体の組成と同じまたは実質的に同じであり、液体の組成に変化があっても、無視できる程度の変化である。
【0016】
共沸混合物または共沸様混合物の本質的な特徴は、液体組成物の沸点が所定圧力で固定され、沸騰組成物より上の蒸気の組成が沸騰している液体組成物の組成とほぼ同じであることにある。
【0017】
共沸又は共沸様は圧力と組成の変化によるものであり、本発明に係る共沸及び共沸様組成物は、基本的に共沸又は共沸様の有効量の(E)−1,1,1,4,4,4−ヘキサフルオロ−2−ブテン、(E)−1−クロロ−,3,3,3−トリフルオロプロピレン及び1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロプロパンからなる。本発明に係る共沸及び共沸様組成物は多くの用途に使用することができ、たとえば、前記共沸及び共沸様組成物は、冷媒組成物、発泡剤組成物、噴霧組成物、ヒートポンプ組成物及び溶媒組成物のシステム組成物から選ばれる作動組成物として使用され得る。
【0018】
本発明の好適な一実施形態は、本発明の共沸及び共沸様組成物を含む冷媒組成物に関する。
【0019】
本発明の別の好適な実施形態は、本発明の共沸及び共沸様組成物を含む発泡組成物に関する。
【0020】
本発明の組成物は、HCFC−141b及びシンプレックスHFC−245faと比較して化学的安定性が良好であり、通常の条件下では分解が起こらず、ポリウレタンの発泡過程に使用される金属材料とは反応も表面腐食も起こらず、プラスチックやエラストマーへの影響がHCFC−141bに比べて小さく、発泡体の流動性、接着性、発泡製品の圧縮強度や引張り強度などの特性が向上して、泡の寸法安定性に優れ、発泡体材料の使用量も適切に減少させることができ、熱伝導率がHCFC−141bに近い。
【0021】
熱伝導率は、ポリウレタン硬質発泡プラスチックの断熱特性を評価する重要な指標である。本発明の混合物は、気相熱伝導率がHCFC−141bの気相熱伝導率よりわずかに高いが、発泡プラスチックの熱伝導率は発泡剤の熱伝導率だけでなく、セルの大きさ、密度および密度の均一性などの要素にも依存する。発泡調製法を改良することによって、より低い熱伝導率を有する発泡体を製造することができる。本発明の混合物を発泡させてなるポリウレタンフォームはセルが細くて、断熱性能がHCFC−141bによる発泡フォームと同等であり、エネルギー消費が約1%高く、それに対して、シクロペンタンの場合は、エネルギー消費は、HCFC−141bよりも10%、HFC−365mfcよりも7%、HFC−134aよりも13%高い。
【0022】
本発明の別の好適な実施形態は、本発明の共沸及び共沸様組成物を含む噴霧組成物に関する。
【発明の効果】
【0023】
本発明に係る組成物は、クロロトリフルオロプロペン、ヘキサフルオロブタジエン及びヘキサフルオロプロパンを含み、好ましくは、(E)−1,1,1,4,4,4−ヘキサフルオロ−2−ブテン、(E)−1−クロロ−,3,3,3−トリフルオロプロピレン及び1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロプロパンからなる共沸及び共沸様組成物であり、該共沸及び共沸様組成物は、GWP値が低く、熱伝達係数が小さく、エネルギー消費量が低いという利点を有し、CFC、HFCやHCFCの替代品として好適である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明を実施例にてさらに説明するが、本発明は前記実施例に制限されない。
【0025】
(参考例1)
所定の重量部で以下の成分を液相状態で物理的に混合して、共沸及び共沸様組成物を得た。材料の質量配合比率は、(E)−1,1,1,4,4,4−ヘキサフルオロ−2−ブテン80%、(E)−1−クロロ−,3,3,3−トリフルオロプロピレン19%、1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロプロパン1%であった。混合後にその性能を測定して、表1に示した。
【0026】
参考例2)
所定の重量部で以下の成分を液相状態で物理的に混合して、共沸及び共沸様組成物を得た。材料の質量配合比率は、(E)−1,1,1,4,4,4−ヘキサフルオロ−2−ブテン80%、(E)−1−クロロ−,3,3,3−トリフルオロプロピレン10%、1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロプロパン10%であった。混合後にその性能を測定して、表1に示した。
【0027】
(実施例3)
所定の重量部で以下の成分を液相状態で物理的に混合して、共沸及び共沸様組成物を得た。材料の質量配合比率は、(E)−1,1,1,4,4,4−ヘキサフルオロ−2−ブテン95%、(E)−1−クロロ−,3,3,3−トリフルオロプロピレン4%、1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロプロパン1%であった。混合後にその性能を測定して、表1に示した。
【0028】
(実施例4)
所定の重量部で以下の成分を液相状態で物理的に混合して、共沸及び共沸様組成物を得
た。材料の質量配合比率は、(E)−1,1,1,4,4,4−ヘキサフルオロ−2−ブテン
95%、(E)−1−クロロ−,3,3,3−トリフルオロプロピレン1%、1,1,1,2,
3,3−ヘキサフルオロプロパン4%であった。混合後にその性能を測定して、表1に示
した。
【0029】
(実施例5)
所定の重量部で以下の成分を液相状態で物理的に混合して、共沸及び共沸様組成物を得
た。材料の質量配合比率は、(E)−1,1,1,4,4,4−ヘキサフルオロ−2−ブテン
90%、(E)−1−クロロ−,3,3,3−トリフルオロプロピレン9%、1,1,1,2,
3,3−ヘキサフルオロプロパン1%であった。混合後にその性能を測定して、表1に示
した。
【0030】
(参考例6)
所定の重量部で以下の成分を液相状態で物理的に混合して、共沸及び共沸様組成物を得
た。材料の質量配合比率は、(E)−1,1,1,4,4,4−ヘキサフルオロ−2−ブテン
90%、(E)−1−クロロ−,3,3,3−トリフルオロプロピレン1%、1,1,1,2,
3,3−ヘキサフルオロプロパン9%であった。混合後にその性能を測定して、表1に示
した。
【0031】
(実施例7)
所定の重量部で以下の成分を液相状態で物理的に混合して、共沸及び共沸様組成物を得
た。材料の質量配合比率は、(E)−1,1,1,4,4,4−ヘキサフルオロ−2−ブテン
90%、(E)−1−クロロ−,3,3,3−トリフルオロプロピレン5%、1,1,1,2,
3,3−ヘキサフルオロプロパン5%であった。混合後にその性能を測定して、表1に示
した。
【表1】