特許第6872587号(P6872587)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6872587BS/CS右旋/左旋放送およびCATV用ブースター
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6872587
(24)【登録日】2021年4月21日
(45)【発行日】2021年5月19日
(54)【発明の名称】BS/CS右旋/左旋放送およびCATV用ブースター
(51)【国際特許分類】
   H04B 1/18 20060101AFI20210510BHJP
【FI】
   H04B1/18 B
【請求項の数】9
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2019-153364(P2019-153364)
(22)【出願日】2019年8月26日
(65)【公開番号】特開2021-34890(P2021-34890A)
(43)【公開日】2021年3月1日
【審査請求日】2020年1月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000109668
【氏名又は名称】DXアンテナ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000844
【氏名又は名称】特許業務法人 クレイア特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西村 将和
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 要二
【審査官】 大野 友輝
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−067636(JP,A)
【文献】 特許第5560471(JP,B2)
【文献】 特開2017−092903(JP,A)
【文献】 国際公開第2019/082485(WO,A1)
【文献】 特開2015−115867(JP,A)
【文献】 特開2005−192142(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 1/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
BS/CS−IFレベル調整用のブースターであって、
前記ブースターは、
BS/CS−IF信号をデジタル信号に変換するアナログデジタル変換器と、
前記デジタル信号を複数の放送チャンネルごとのデジタル信号に分離する分波器と、
前記分波器で分離された複数の放送チャンネルごとのデジタル信号のそれぞれのレベルを検出し、所定のレベルにレベル調整を行うレベル調整器と、
前記レベル調整器から出力される複数の放送チャンネルごとのデジタル信号を前記BS/CS−IF信号と同一の周波数配列を備えた1つのデジタル信号に合成する合成器と、
合成されたデジタル信号をアナログ信号に変換するデジタルアナログ変換器と、を含むブースター。
【請求項2】
前記分波器で分離された放送チャンネルごとの複数のデジタル信号のそれぞれは0Hzを中心とする帯域に変換された信号である、請求項1に記載のブースター。
【請求項3】
前記レベル調整器によるレベル調整は、それぞれの放送チャンネルの出力レベルが一定になるように設定される、請求項1または2に記載のブースター。
【請求項4】
前記レベル調整器によるレベル調整は、IF信号の周波数が高い放送チャンネルの出力レベルが、IF信号の周波数が低い放送チャンネルの出力レベルより大きくなるように設定される、請求項1または2に記載のブースター。
【請求項5】
前記レベル調整器は、それぞれの放送チャンネルごとに出力のON/OFF機能を備える、請求項1から4のいずれか1項に記載のブースター。
【請求項6】
前記レベル調整器は、ONしている放送チャンネルの数に合わせて、調整レベルを変更する、請求項5に記載のブースター。
【請求項7】
前記BS/CS−IF信号は、1032MHzから3224MHzまでの範囲の周波数帯域を含む、請求項1から6のいずれか1項に記載のブースター。
【請求項8】
2系統のブースターと、入力回路と、分配器と、2系統の帯域通過フィルタと、第1の混合器とを含み、
前記2系統のブースターのそれぞれは、請求項1から6のいずれか1項に記載のブースターであり、
前記2系統の帯域通過フィルタは、BS/CS右旋−IF帯域通過フィルタ、およびBS/CS左旋−IF帯域通過フィルタであって、
入力信号が、前記入力回路、および前記分配器を介して前記2系統の帯域通過フィルタのそれぞれに入力され、前記2系統の帯域通過フィルタの出力信号が前記2系統のブースターのそれぞれに入力され、
前記2系統のブースターの出力信号が前記第1の混合器を介して出力される、BS/CS右旋/左旋放送用ブースター。
【請求項9】
請求項8に記載のBS/CS右旋/左旋放送用ブースターに加えて、さらにCATV用ブースターおよび第2の混合器を備え、
前記第1の混合器の出力と前記CATV用ブースターの出力とが前記第2の混合器を介して出力される、BS/CS右旋/左旋放送およびCATV用ブースター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、BS/CS−IF信号のレベルを調整するBS/CS右旋/左旋放送およびCATV用ブースターに関する。
【背景技術】
【0002】
BS/CS−IF信号は周波数範囲が1032−3224MHzと広く、この信号を同軸ケーブルおよび分配器を経由して伝送する場合、伝送損失が信号の周波数、ないし放送チャンネルによって異なり、すべての周波数、ないしチャンネルにおいて、S/N比が良好で低歪のブースターを設計することが困難になっている。
【0003】
特許文献1(実用新案登録第3125859号公報)には、アナログ放送用UHF入力端子,UHF地上デジタル放送用UHF入力端子,アナログ放送用UHF信号と地上デジタル放送用UHF信号とを混合する周波数混合手段を設け,混合された信号を増幅して適正なレベルで出力するブースターが開示されている。
【0004】
特許文献2(特開2017−92903号公報)には、左旋円偏波のBS・CS衛星放送が増設される場合は、増設された第3ブースターで既設の信号(BS・CS−IF右旋)を分波出力し、既設の第1ブースターに入力して、信号(FM+UHF)と混合・増幅し、第3ブースターの混合入力に戻し、第3ブースターでは、信号(BS・CS−IF左旋)を増幅して、混合入力に入力された信号(FM+UHF+BS・CS−IF右旋)と混合して信号(FM+UHF+BS・CS−IF右旋+BS・CS−IF左旋)を出力するブースターが開示されている。
【0005】
特許文献3(特許第5560471号公報)には、第1及び第2ダウンコンバート段、第1及び第2アナログデジタル変換器、デジタルスイッチング及び信号プロセッサを備え、第1ダウンコンバート段は、複数の第1チャンネルを含む第1RF入力信号を受信するための入力を有する第1ダウンコンバータ回路を備え、第1ダウンコンバータ回路は、第1RF入力信号を、複数の第1チャンネルを含む第1IF信号に周波数ダウンコンバートし、第1アナログデジタル変換器は第1IF信号を第1デジタルIF信号に変換し、第2ダウンコンバータ段は、複数の第2チャンネルを含む第2RF入力信号を受信するための入力を有する第2ダウンコンバータ回路を備え、第2ダウンコンバータ回路は、第2RF入力信号を、複数の第2チャンネルを含む第2IF信号に周波数ダウンコンバートするチャンネルスタックシステムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実用新案登録第3125859号公報
【特許文献2】特開2017−92903号公報
【特許文献3】特許第5560471号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
BS/CS−IF信号を伝送する同軸ケーブル、分配器などの伝送路では、一般に信号の周波数が高くなると伝送損失が増加する傾向がある。この伝送損失を補償するためにブースターが設けられている。
【0008】
特許文献1に記載のブースターは、BS・CS−IF入力端子を備え,ブースター内部で,入力された全ての信号を増幅し,1つの出力端子から出力させる混合手段を設けている。また、特許文献1に記載のブースターでは、BS/CS−IF入力信号に対する利得を調整する第4の利得調整ボリュームが設けられている。しかし、現在はBS/CS−IF信号の周波数帯域が1032−3224MHzと広くなり、周波数の高い側の伝送損失が大きくなるため、特許文献1に記載のブースターでは、周波数の高い側の信号レベルが低くなり、該当する放送チャンネルのSN比が低下する。
【0009】
特許文献2に記載のブースターは、周波数の高い側の伝送損失が大きくなることを考慮し、BS右旋、CS右旋、BS左旋、およびCS左旋の各帯域において、周波数の高い側の出力レベルが大きくなるようにブースター出力の周波数特性が設定されている(図3(b)など参照)。したがって、伝送損失が大きい周波数の高い側の信号レベルを持ち上げることができている。
しかし、伝送損失の周波数特性は伝送路によって異なり、特に、地上波からBS左旋、あるいはCS左旋までの幅広い帯域の信号を伝送する伝送路においては、例えば特定の放送チャンネルの信号レベルが隣接するチャンネルよりも5dB程度大きくなる場合もある。その場合には、特許文献2図3(b)のような、周波数に対して線形にレベルを調整する方法では、上記特定の放送チャンネルの歪が大きくなり、その放送チャンネルが受信できなくなる。
実際、高層マンションの低層階など、ブースターで多段カスケードをする必要がある場合は、周波数に対して線形にレベルを調整する方法では、特定の放送チャンネルが受信できないという実態がある。
【0010】
特許文献3に記載のチャンネルスタックシステムは、BS/CS―IF信号を第1IF信号に周波数変換し、変換後の信号から所望のチャンネルの信号を抽出し、抽出した所望のチャンネルの信号を所望の周波数に周波数変換して出力するものである。しかし、特許文献3には、レベルを調整する機能は記載されていない。また、特許文献3に記載の発明は、抽出された各チャンネルを、単一ケーブルでの伝送に適した新たなコンポジット信号に組み立てることを目的としており、本発明のブースターのように、BS/CS―IF信号のすべてのチャンネル、あるいはBS/CS右旋―IF信号のすべてのチャンネルをそのままの周波数で出力することも記載されていない。さらに、特許文献3に記載の発明ではアナログの周波数変換回路が含まれており、ブースターの実装面積が大きくなるとの課題もある。
【0011】
本発明の主な目的は、特定の周波数帯域で伝送損失が急激に変化する伝送路の伝送損失を補償できるBS/CS右旋/左旋放送およびCATV用ブースターを提供することにある。
本発明の第2の目的は、入力される信号の中に増幅する必要のない放送チャンネルが含まれている場合に、増幅する必要のない放送チャンネルを除いて、増幅する必要のある信号だけを増幅するBS/CS右旋/左旋放送およびCATV用ブースターを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
(1)
一局面に従うブースターは、BS/CS−IFレベル調整用のブースターであって、BS/CS−IF信号をデジタル信号に変換するアナログデジタル変換器と、デジタル信号を複数の放送チャンネルごとのデジタル信号に分離する分波器と、分波器で分離された複数の放送チャンネルごとのデジタル信号のそれぞれのレベルを検出し、所定のレベルにレベル調整を行うレベル調整器と、レベル調整器から出力される複数の放送チャンネルごとのデジタル信号をもとのBS/CS−IF信号と同じ周波数配列を備えた1つのデジタル信号に合成する合成器と、合成されたデジタル信号をアナログ信号に変換するデジタルアナログ変換器と、を含む。
【0013】
伝送路の伝送損失が特定の周波数帯域で減少する、または増加するような周波数依存性を備える場合には、従来のアナログ回路での周波数特性の調整では伝送損失を補償することは困難である。また、もし対応できたとしても、それぞれの伝送路の特性に合わせて調整するには多大な時間とコストを要する。
これに対して、一局面に従うブースターでは、入力されたBS/CS−IF信号をアナログデジタル変換によってデジタル信号に変換し、複数の放送チャンネルごとの信号に分離する。そして、分離された放送チャンネルごとにそのレベルを検出し、検出結果に基づいてレベル調整を行うことで、伝送損失が特定の周波数帯域で変化する場合にも、各放送チャンネルのレベルを所定のレベルに調整することができる。そして、放送チャンネルごとに所定のレベルに調整された信号は、合成器でもとのBS/CS−IF信号と同じ周波数配列を備えた一つのデジタル信号に合成し、デジタルアナログ変換することによって、もとのBS/CS−IF信号と同じ周波数配列を備え、かつ各放送チャンネルの信号が所定のレベルに調整された信号とすることができる。
したがって、一局面に従うブースターは、周波数が高くなるにつれて伝送損失が単調に増加するだけでなく、特定の周波数帯域で伝送損失が急激に減少する、または増加するような周波数依存性を備える場合にも、伝送損失を補償することができる。
特に、高層マンションの低層階等においてBS右旋/左旋放送(4K8Kテレビ)を受信する場合、一部の放送チャンネルの伝送損失が低下し、信号レベルが突出していることがある。この場合、従来のアナログ回路での周波数特性の調整では信号レベルの突出したチャンネルを近傍のチャンネルと同じ程度増幅するため、突出した放送チャンネルの歪が大きくなり、結果的にそのチャンネルの放送が受信できなくなることがあった。これに対して、一局面に従うブースターでは、信号レベルが突出した放送チャンネルの増幅量を小さくして出力レベルが所定のレベルになるように調整するため、突出した放送チャンネルの歪を抑制することができ、該当するチャンネルの放送を受信することができる。
【0014】
(2)
第2の発明にかかるブースターは、一局面に従うブースターにおいて、分波器で分離された放送チャンネルごとの複数のデジタル信号のそれぞれが0Hzを中心とする帯域に変換された信号であってもよい。
【0015】
この場合、放送チャンネルごとの信号の周波数成分が低い周波数帯域に限定されているため、レベル調整器のレベル検出、およびレベル調整が容易となる。
【0016】
(3)
第3の発明にかかるブースターは、一局面または第2の発明に従うブースターにおいて、レベル調整器によるレベル調整が、それぞれの放送チャンネルの出力レベルが一定になるように設定されてもよい。
【0017】
ブースターの後段に接続されるセットトップボックス、あるいはテレビ受像機との間の伝送路が短い等の理由でブースター後段の伝送損失の周波数特性が平坦な場合には、それぞれの放送チャンネルの出力レベルを一定にすることによって、各放送チャンネルの信号のS/N比および歪特性を最適化することができる。
【0018】
(4)
第4の発明にかかるブースターは、一局面または第2の発明に従うブースターにおいて、レベル調整器によるレベル調整は、IF信号の周波数が高い放送チャンネルの出力レベルは、IF信号の周波数が低い放送チャンネルの出力レベルより大きくなるように設定されてもよい。
【0019】
ブースターとブースターの後段に接続されるセットトップボックス、あるいはテレビ受像機との間の伝送路が長く、周波数の高い側の伝送損失が周波数の低い側の伝送損失よりも大きくなる場合には、IF信号の周波数が高い放送チャンネルの出力レベルをIF信号の周波数が低い放送チャンネルの出力レベルより大きくなるように設定することによって、各放送チャンネルの信号のS/N比および歪特性を最適化することができる。
【0020】
(5)
第5の発明にかかるブースターは、一局面から第4の発明にかかるブースターにおいて、レベル調整器が、それぞれの放送チャンネルごとに出力のON/OFF機能を備えていてもよい。
【0021】
この場合、ブースターの後段に接続されるセットトップボックス、あるいはテレビ受像機からの要求に応じて必要な放送チャンネルのみをONし、不要な放送チャンネルは出力をOFFすることができ、消費電力の低減、および/または隣接放送チャンネルからの干渉による混変調歪の低減を図ることができる。
【0022】
(6)
第6の発明にかかるブースターは、第5の発明にかかるブースターにおいて、ONしている放送チャンネルの数に合わせて、調整レベルを変更してもよい。
【0023】
ONしている放送チャンネルの数が変化した場合、合成器出力の信号の大きさが変化する。したがって、合成器以降の信号のS/N比および歪特性を最適化するためには、レベル調整器の放送チャンネルごとの調整レベルを、ONしている放送チャンネルの数に合わせて、変更することが望ましい。例えば、ONしている各放送チャンネルのレベルを一定になるように調整する場合は、ONしている放送チャンネルの数が変化した場合、各放送チャンネルのレベルを、ONしている放送チャンネルの数の平方根の逆数に比例するように変更すれば合成器出力の信号の大きさを一定にすることができる。
【0024】
(7)
第7の発明にかかるブースターは、一局面から第6の発明にかかるブースターにおいて、BS/CS−IF信号は、1032MHzから3224MHzまでの範囲の周波数帯域を含んでもよい。
【0025】
この場合、例えば、BS/CS右旋−IF信号と、BS/CS左旋―IF信号とを1つのブースターで増幅することができる。
【0026】
(8)
第8の発明にかかるBS/CS右旋/左旋放送用ブースターは、2系統のブースターと、入力回路と、分配器と、2系統の帯域通過フィルタと、第1の混合器とを含み、2系統のブースターのそれぞれは、一局面から第6の発明にかかるブースターであり、2系統の帯域通過フィルタは、BS/CS右旋−IF帯域通過フィルタ、およびBS/CS左旋−IF帯域通過フィルタであって、入力信号が、入力回路、および分配器を介して2系統の帯域通過フィルタのそれぞれに入力され、2系統の帯域通過フィルタの出力信号が2系統のブースターのそれぞれに入力され、2系統のブースターの出力信号が第1の混合器を介して出力されてもよい。
【0027】
この場合、2系統のうちの1系統でBS/CS右旋−IF信号を処理し、残りの1系統でBS/CS左旋−IF信号を処理することができるため、それぞれの系統の第1のアナログ周波数変換器から第2のアナログ周波数変換器までの経路の信号の帯域を約1000MHz以内に限定することができ、例えば、アナログデジタル変換器、分波器、レベル調整器、合成器、およびデジタルアナログ変換器のクロック周波数を低く設定し、ブースターの電力消費を抑えることができる。
【0028】
(9)
第9の発明にかかるブースターは、BS/CS右旋/左旋放送およびCATV用ブースターであって、第8の発明にかかるBS/CS右旋/左旋放送用ブースターに加えて、さらに、CATV用ブースターおよび第2の混合器を備え、第1の混合器の出力とCATV用ブースターの出力とが第2の混合器を介して出力端子に出力されてもよい。
【0029】
この場合、CATV用ブースターとしては、既存のCATV用ブースターを使用することができる。また、CATV用ブースターはUHF/FM/V−LOW信号を増幅できることが望ましい。
UHF/FM/V−LOW信号を増幅できるCATV用ブースターを用いることにより、UHF/FM/V−LOW信号、BS/CS右旋−IF信号、およびBS/CS左旋−IF信号のすべての放送チャンネルの信号を適切な大きさに増幅することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】(a)は第1の実施形態のブースターの全体構成を示す図であり、(b)、(c)はそれぞれブースターへの入力信号、およびブースターからの出力信号のスペクトルの一例を示す図である。
図2】(a)は分波器の入出力を示す図であり、(b)、(c)はそれぞれ分波器への入力信号、および分波器からの出力信号のスペクトルの一例を示す図である。
図3】(a)はレベル調整器の入出力を示す図であり、(b)、(c)はそれぞれレベル調整器への入力信号、およびレベル調整器からの出力信号のスペクトルの一例を示す図である。
図4】(a)は合成器の入出力を示す図であり、(b)、(c)はそれぞれ合成器への入力信号、および合成器からの出力信号のスペクトルの一例を示す図である。
図5】(a)、(b)はそれぞれ、第2の実施形態のブースターへの入力信号、およびブースターからの出力信号のスペクトルの一例を示す図である。
図6】(a)、(b)はそれぞれ、第3の実施形態のブースターへの入力信号、およびブースターからの出力信号のスペクトルの一例を示す図である。
図7】第4の実施形態のBS/CS右旋/左旋放送用ブースターの全体構成を示す図である。
図8】第5の実施形態のBS/CS右旋/左旋放送およびCATV用ブースターの全体構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施形態について説明する。以下の説明では、同一の部品には同一の符号を付す。また、同符号の場合には、それらの名称および機能も同一である。したがって、それらについての詳細な説明は繰り返さないものとする。
【0032】
[第1の実施形態]
図1(a)は第1の実施形態のブースター200の全体構成を示す図であり、図1(b)、図1(c)はそれぞれブースター200への入力信号、およびブースター200からの出力信号のスペクトルの一例を示す図である。
【0033】
第1の実施形態のブースター200は、入力端子10、帯域通過フィルタ20、アナログデジタル変換器30、分波器40、レベル調整器50、合成器60、デジタルアナログ変換器70、帯域通過フィルタ80、および出力端子90を備える。
なお、アナログデジタル変換器30、分波器40、レベル調整器50、合成器60、およびデジタルアナログ変換器70は、例えば、DSP(デジタル信号処理プロセッサ)、ASIC(特定用途向け集積回路)、CPU、およびそれらの組み合わせからなるデジタル信号処理LSI100で構成される。
【0034】
第1の実施形態のブースター200には、1032MHzから3224MHzの範囲のBS/CS−IF信号が入力される。この帯域では、一般には高い周波数の方が、伝送損失が大きくなるが、伝送路によっては伝送損失が特定の周波数帯域で減少する、または増加するような周波数依存性を備える場合がある。図1(b)には、中間よりやや高い周波数において伝送損失が小さく、入力信号のスペクトルが盛り上がっている場合の入力信号のスペクトルの一例を示した。そして、図1(c)には、図1(b)の入力信号に対して、伝送損失の周波数依存性が第1の実施形態のブースター200によって補償された、出力信号のスペクトルの一例を示した。
【0035】
高層マンションの低層階等においてBS右旋/左旋放送(4K8Kテレビ)を受信する場合、図1(b)に記載のように、一部の放送チャンネルの伝送損失が低下し、入力の信号レベルが突出していることがある。この場合、従来のアナログ回路での周波数特性の調整では信号レベルの突出したチャンネルを近傍のチャンネルと同じ程度増幅するため、突出した放送チャンネルの歪が大きくなり、結果的にそのチャンネルの放送が受信できなくなる。
【0036】
これに対して、第1の実施形態のブースター200では、図1(c)に記載のように、突出した放送チャンネルの増幅量を小さくして出力レベルが他の放送チャンネルのレベルと同じになるように調整するため、突出した放送チャンネルの歪を抑制することができ、そのチャンネルの放送を受信することができる。
【0037】
デジタル信号処理LSI100は、アナログデジタル変換器30、分波器40、レベル調整器50、合成器60、およびデジタルアナログ変換器70を備える。ただし、分波器40、レベル調整器50、および合成器60はその機能を示すものであり、デジタル信号処理LSI100がDSPあるいはCPUで構成される場合には、ハードウエアとして分波器40、レベル調整器50、および合成器60が分かれているとは限らない。すなわち、例えば、1つのCPUが分波器40、レベル調整器50、および合成器60の機能を備えていてもよい。
【0038】
以下、図1から図4を参照し、信号の流れに沿って、ブースター200の動作を説明する。
入力信号は、図1に示すように、帯域通過フィルタ20を介してデジタル信号処理LSI100のアナログデジタル変換器30に入力され、デジタル信号に変換される。なお、帯域通過フィルタ20の代わりに低域通過フィルタを用いることもできる。
【0039】
アナログデジタル変換器30の出力は、分波器40に入力される。
図2(a)には、分波器40の入出力端子を示し、図2(b)には入力信号全体のスペクトル、図2(c)には出力信号のスペクトルの一例を示した。図2(b)に記載の入力信号は、放送チャンネルごとの信号に分波され、中心周波数が0Hzの帯域信号に変換されて出力される。図2(c)には、最も周波数の低い放送チャンネルに相当する信号(CH−A)のスペクトルと最も周波数の高い放送チャンネルに相当する信号(CH−B)のスペクトルとが記載されている。分波器40からは、放送チャンネル数に相当する数の信号が出力される。
【0040】
分波器40の出力の放送チャンネル数に相当する数の信号は、それぞれ、レベル調整器50に入力される。
図3(a)には、レベル調整器50の入出力端子を示し、図3(b)には入力信号のスペクトルの例、図3(c)には出力信号のスペクトルの例を示した。レベル調整器50には、必要な放送チャンネル数に相当する数の信号が入力され、それぞれの放送チャンネルの信号の大きさが検出され、所定のレベルになるようにレベル調整が行われ、出力される。
【0041】
レベル調整器50の入力信号である図3(b)では、最も周波数の低い放送チャンネルに相当する信号(CH−A)のスペクトルが最も周波数の高い放送チャンネルに相当する信号(CH−B)のスペクトルより大きくなっているが、レベル調整器50の出力信号である図3(c)では、レベル調整により、最も周波数の低い放送チャンネルに相当する信号(CH−A)のスペクトルと最も周波数の高い放送チャンネルに相当する信号(CH−B)のスペクトルとが同じ大きさになっている。なお、レベル調整器では、周波数の高い側の信号レベルを持ち上げるのではなく、それぞれの放送チャンネルの信号の大きさを検出し、所定のレベルになるようにレベル調整を行うため、例えば、図1(b)のように入力信号のスペクトルが特定の周波数帯域において大きくなっている場合にも、レベル調整器の出力レベルを一定とすることができる。
【0042】
レベル調整器50の放送チャンネル数に相当する数の信号は、それぞれ、合成器60に入力される。
図4(a)には、合成器60の入出力端子を示し、図4(b)には入力信号のスペクトルの一例、図4(c)には出力信号のスペクトルの一例を示した。合成器60には、所定のレベルの、必要な放送チャンネル数に相当する数の信号が入力され、1つの信号に合成されて、分波器40の入力と同じ周波数配列を備え、かつ、各放送チャンネルごとのスペクトルが所定のレベルに設定された信号が出力される。なお、図4(c)では、すべての放送チャンネルの信号が一定のスペクトルの大きさを備えているが、例えば、放送がない等の理由で伝送する必要のない放送チャンネルがある場合には該当する放送チャンネルの信号のスペクトルは小さくなっており、図4(c)のようにすべての放送チャンネルのスペクトルが一定になっているとは限らない。
【0043】
合成器60の出力のデジタル信号はデジタルアナログ変換器70でアナログ信号に変換され、帯域通過フィルタ80を介して、出力端子90から出力される。なお、帯域通過フィルタ20の代わりに低域通過フィルタを用いることもできる。
【0044】
以上の説明では、ブースター200の入力信号のスペクトルは、1032MHz−3224MHz、すなわち、BS/CS右旋−IF信号の最低周波数から、BS/CS左旋―IF信号の最高周波数までとしているが、ブースター200は、例えばBS右旋―IF信号、すなわち1032MHz−1489MHzの帯域の信号に用いることもできる。この場合、アナログデジタル変換器30、分波器40、レベル調整器50、合成器60、およびデジタルアナログ変換器70のクロック周波数を低く設定し、ブースター200の電力消費を抑えることができる。
【0045】
[第2の実施形態]
第2の実施形態のブースター200の構成は第1の実施形態のブースター200と同一である。第2の実施形態のブースター200の入力信号のスペクトルを図5(a)に、出力信号のスペクトルを図5(b)に示す。
第1の実施形態のブースター200では、出力信号の放送チャンネルごとのスペクトルの大きさが一定であるのに対して、第2の実施形態のブースター200では、周波数の高い側の放送チャンネルのスペクトルが周波数の低い側の放送チャンネルのスペクトルより大きくなっている。
【0046】
これは、ブースター200とブースター200の後段に接続されるセットトップボックス、あるいはテレビ受像機との間の伝送路が長く、周波数の高い側の伝送損失が問題となる場合に、ブースター200の周波数の高い側の放送チャンネルのスペクトルを大きくすることで、伝送損失を補償するためである。
第2の実施形態のブースター200は、レベル調整器50を、周波数の高い側の放送チャンネルのレベルが高くなるように設定することで実現できる。
【0047】
[第3の実施形態]
第3の実施形態のブースター200の構成は第1の実施形態のブースター200と同一である。第3の実施形態のブースター200の入力信号のスペクトルを図6(a)に、出力信号のスペクトルを図6(b)に示す。
第1の実施形態のブースター200では、入力側において信号が存在する放送チャンネルは出力側においても信号が存在するが、第3の実施形態のブースター200では、入力側において信号が存在する放送チャンネルであっても、出力側においては信号が存在しない場合がある。すなわち、第3の実施形態のブースター200では、例えばブースター200の後段に接続されるセットトップボックス、あるいはテレビ受像機からの要求に応じて必要な放送チャンネルのみをONし、不要な放送チャンネルは出力をOFFすることができる。
【0048】
第3の実施形態のブースター200は、レベル調整器50の放送チャンネルごとの出力をON/OFFすることによって実現できる。
この場合、不要な放送チャンネルの出力をOFFすることによって、消費電力の低減、および/または隣接放送チャンネルからの干渉による混変調歪の低減を図ることができる。
また、レベル調整器50の放送チャンネルごとの出力をON/OFFすることによって、ONしている放送チャンネルの数が変化した場合、合成器60以降の信号の大きさが変化する。
【0049】
したがって、合成器60以降の信号のS/N比および歪特性を最適化するためには、レベル調整器50の放送チャンネルごとの調整レベルを、ONしている放送チャンネルの数に合わせて、変更することが望ましい。
例えば、出力信号の放送チャンネルごとのスペクトルの大きさが一定である場合には、放送チャンネルごとの振幅を、ONしている放送チャンネルの数の平方根の逆数に比例するように設定すれば、合成器60以降の信号のパワーを一定にすることができる。
【0050】
[第4の実施形態]
図7には、第4の実施形態のBS/CS右旋/左旋放送用ブースター200の構成を示した。
第4の実施形態のブースター200は、2系統のアナログデジタル変換器30a、30b、分波器40a、40b、レベル調整器50a、50b、合成器60a、60b、およびデジタルアナログ変換器70a、70bを備える。
【0051】
第4の実施形態のブースター200は、さらに、入力端子10と2系統のアナログデジタル変換器30a、30bとの間に、入力回路110、分配器120、および2系統の帯域通過フィルタ20a、20bを備え、2系統のデジタルアナログ変換器70a、70bの後段に2系統の帯域通過フィルタ80a、80b、増幅器130a、130b、第1の混合器140、および増幅器150を備え、増幅器150の出力が出力端子90に接続される。
【0052】
入力回路110には入力減衰器、スイッチ、増幅器150等が含まれる。また、分配器120、2系統の帯域通過フィルタ20a、20bは、BS/CS−IF信号を、BS/CS右旋−IF信号とBS/CS左旋−IF信号とに分離するためのものであり、したがって、帯域通過フィルタ20aは通過帯域1032−2071MHz、帯域通過フィルタ20bは通過帯域2224−3224MHzである。ただし、例えばCS左旋―IF信号を増幅する必要がない場合には帯域通過フィルタ20bの通過帯域を2224−2681MHzとするなど、帯域通過フィルタ20a、20bの通過帯域はブースターの仕様に合わせて適宜変更してよい。
【0053】
第4の実施形態のブースター200は、BS/CS−IF信号をBS/CS右旋−IF信号とBS/CS左旋−IF信号とに分離してから、第1の実施形態のブースター200に入力することを特徴としており、第1の実施形態のブースター200の入力信号の周波数帯域を狭くすることで、アナログデジタル変換器30、分波器40、レベル調整器50、合成器60、およびデジタルアナログ変換器70のクロック周波数を低く設定し、ブースター200の電力消費を抑えることができる。
【0054】
[第5の実施形態]
図8には、第5の実施形態のBS/CS右旋/左旋放送およびCATV用ブースター160の構成を示した。
【0055】
第5の実施形態のブースター200は、第4の実施形態のBS/CS右旋/左旋放送用ブースターに加えて、さらに、CATV用の入力端子10a、CATV用ブースター160、およびCATV用ブースター160の出力と増幅器150の出力とが入力される第2の混合器170を備え、第2の混合器170の出力が出力端子90に接続される。
【0056】
CATV用ブースター160としては、既存のCATV用ブースターを使用することができる。また、CATV用ブースター160はUHF/FM/V−LOW信号を増幅できることが望ましい。
第5の実施形態のブースター200を用いることにより、UHF/FM/V−LOW信号、BS/CS右旋−IF信号、およびBS/CS左旋−IF信号のすべての放送チャンネルの信号を適切な大きさに増幅することができる。
【0057】
本発明において、ブースター200が『ブースター』に相当し、入力端子10、10aが『入力端子』に相当し、帯域通過フィルタ20、20a、20bが『帯域通過フィルタ』に相当し、アナログデジタル変換器30、30a、30bが『アナログデジタル変換器』に相当し、分波器40、40a、40bが『分波器』に相当し、レベル調整器50、50a、50bが『レベル調整器』に相当し、合成器60、60a、60bが『合成器』に相当し、デジタルアナログ変換器70、70a、70bが『デジタルアナログ変換器』に相当し、出力端子90が『出力端子』に相当し、入力回路110が『入力回路』に相当し、分配器120が『分配器』に相当し、第1の混合器140が『第1の混合器』に相当し、CATV用ブースター160が『CATV用ブースター』に相当し、第2の混合器170が『第2の混合器』に相当する。
【0058】
本発明の好ましい実施の形態は上記の通りであるが、本発明はそれだけに制限されない。本発明の精神と範囲から逸脱することのない様々な実施形態が他になされることは理解されよう。さらに、本実施形態において、本発明の構成による作用および効果を述べているが、これら作用および効果は、一例であり、本発明を限定するものではない。
【符号の説明】
【0059】
10、10a 入力端子
20、20a、20b 帯域通過フィルタ
30、30a、30b アナログデジタル変換器
40、40a、40b 分波器
50、50a、50b レベル調整器
60、60a、60b 合成器
70、70a、70b デジタルアナログ変換器
80、80a、80b 帯域通過フィルタ
90 出力端子
100 、100a、100b デジタル信号処理LSI
110 入力回路
120 分配器
130a、130b 増幅器
140 第1の混合器
150 増幅器
160 CATV用ブースター
170 第2の混合器
200 ブースター
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8