(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記中央部の断面における前記イオン伝導体の面積比(A)に対する、前記外周部の断面における前記イオン伝導体の面積比(B)の割合(B/A)は、0.99以下である、
請求項1に記載の電気化学セル用電解質。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係る電解質を用いた電気化学セルの一例である固体アルカリ形燃料電池100の実施形態について図面を参照しつつ説明する。固体アルカリ形燃料電池100は、水酸化物イオンをキャリアとするアルカリ形燃料電池(AFC)の一種である。
【0018】
(固体アルカリ形燃料電池100)
図1は、実施形態に係る固体アルカリ形燃料電池100の構成を示す断面図である。固体アルカリ形燃料電池100は、カソード2(第1電極の一例)、アノード3(第2電極の一例)、及び電解質4を備える。また、固体アルカリ形燃料電池100は、第1セパレータ11と、第2セパレータ12と、を備えている。カソード2、アノード3、及び電解質4は、燃料電池用接合体10を構成する。実際に使用する際は、複数の固体アルカリ形燃料電池100がスタックされる。詳細には、複数の燃料電池用接合体10が第1及び第2セパレータ11、12を介してスタックされる。
【0019】
(第1及び第2セパレータ11、12)
第1及び第2セパレータ11、12は、燃料電池用接合体10を厚さ方向(z軸方向)の両側から挟むように配置されている。第1セパレータ11は、カソード2に酸素(O
2)を含む酸化剤を供給するように構成されている。第1セパレータ11は、第1流路111を有している。第1流路111は、カソード2と対向している。この第1流路111には、酸素(O
2)を含む酸化剤が供給される。
【0020】
第2セパレータ12は、アノード3に水素原子(H)を含む燃料を供給するように構成されている。第2セパレータ12は、第2流路121を有している。第2流路121は、アノード3と対向している。この第2流路121には、水素原子(H)を含む燃料が供給される。例えば、第2流路121には、メタノールが供給される。
【0021】
複数の燃料電池用接合体10が第1及び第2セパレータ11,12を介してスタックされている場合は、第1セパレータ11は、第1流路111が形成される面とは反対側の面に第2流路が形成されている。また、第2セパレータ12は、第2流路121が形成される面とは反対側の面に第1流路が形成されている。
【0022】
第1セパレータ11と燃料電池用接合体10との間には、第1シール部材13aが配置されている。第1シール部材13aは、第1セパレータ11と燃料電池用接合体10との間の密着性を向上させて、酸化剤が外部へ漏出することを防止する。第2セパレータ12と燃料電池用接合体10との間には、第2シール部材13bが配置されている。第2シール部材13bは、第2セパレータ12と燃料電池用接合体10との間の密着性を向上させて、燃料が外部へ漏出することを防止する。
【0023】
第1及び第2シール部材13a、13bは、環状であり、燃料電池用接合体10の電解質4の外周部44に当接している。第1及び第2シール部材13a、13bとして、例えば、Oリング、ゴムシートなどを例示することができる。第1シール部材13aは、第1セパレータ11と一体的に構成されていてもよい。第2シール部材13bは、第2セパレータ12と一体的に構成されていてもよい。
【0024】
(燃料電池用接合体10)
燃料電池用接合体10は、カソード2、アノード3、及び電解質4を備える。燃料電池用接合体10は、下記の電気化学反応式に基づいて、比較的低温(例えば、50℃〜250℃)で発電する。ただし、下記の電気化学反応式では、燃料の一例としてメタノールが用いられている。
【0025】
・カソード2: 3/2O
2+3H
2O+6e
−→6OH
−
・アノード3: CH
3OH+6OH
−→6e
−+CO
2+5H
2O
・全体 : CH
3OH+3/2O
2→CO
2+2H
2O
【0026】
(カソード2)
カソード2は、電解質4の第1面41側(
図1の上面側)に配置されている。詳細には、カソード2は、電解質4の中央部43の第1面41上に配置されている。カソード2は、一般的に空気極と呼ばれる陽極である。
【0027】
固体アルカリ形燃料電池100の発電中、カソード2には、第1セパレータ11の第1流路111を介して酸素(O
2)を含む酸化剤が供給される。酸化剤としては、空気を用いるのが好ましく、空気は加湿されていることがより好ましい。カソード2は、内部に酸化剤を拡散可能な多孔質体である。カソード2の気孔率は特に制限されない。カソード2の厚みは特に制限されないが、例えば10〜200μmとすることができる。
【0028】
カソード2は、AFCに使用される公知の空気極触媒を含むものであればよく、特に限定されない。カソード触媒の例としては、白金族元素(Ru、Rh、Pd、Os、Ir、Pt)、鉄族元素(Fe、Co、Ni)等の第8〜10族元素(IUPAC形式での周期表において第8〜10族に属する元素)、Cu、Ag、Au等の第11族元素(IUPAC形式での周期表において第11族に属する元素)、ロジウムフタロシアニン、テトラフェニルポルフィリン、Coサレン、Niサレン(サレン=N,N’−ビス(サリチリデン)エチレンジアミン)、銀硝酸塩、及びこれらの任意の組み合わせが挙げられる。カソード2における触媒の担持量は特に限定されないが、好ましくは0.1〜10mg/cm
2、より好ましくは、0.1〜5mg/cm
2である。カソード触媒はカーボンに担持させるのが好ましい。カソード2ないしそれを構成する触媒の好ましい例としては、白金担持カーボン(Pt/C)、パラジウム担持カーボン(Pd/C)、ロジウム担持カーボン(Rh/C)、ニッケル担持カーボン(Ni/C)、銅担持カーボン(Cu/C)、及び銀担持カーボン(Ag/C)が挙げられる。
【0029】
カソード2の作製方法は特に限定されないが、例えば、カソード触媒及び所望により担体をバインダと混合してペースト状にする。そして、このペースト状混合物を電解質4の中央部43の第1面41上に塗布することにより形成することができる。
【0030】
(アノード3)
アノード3は、電解質4の第2面42側(
図1の下面側)に配置されている。詳細には、アノード3は、電解質4の中央部43の第2面42上に配置されている。アノード3は、一般的に燃料極と呼ばれる陰極である。
【0031】
固体アルカリ形燃料電池100の発電中、アノード3には、第2セパレータ12の第2流路121を介して、水素原子(H)を含む燃料が供給される。燃料としては、メタノールを用いるのが好ましい。アノード3は、内部に燃料を拡散可能な多孔質体である。アノード3の気孔率は特に制限されない。アノード3の厚みは特に制限されないが、例えば10〜500μmとすることができる。
【0032】
燃料は、アノード3において水酸化物イオン(OH
−)と反応可能な燃料化合物を含んでいればよく、液体燃料及び気体燃料のいずれの形態であってもよい。
【0033】
燃料化合物としては、例えば、(i)ヒドラジン(NH
2NH
2)、水加ヒドラジン(NH
2NH
2・H
2O)、炭酸ヒドラジン((NH
2NH
2)
2CO
2)、硫酸ヒドラジン(NH
2NH
2・H
2SO
4)、モノメチルヒドラジン(CH
3NHNH
2)、ジメチルヒドラジン((CH
3)
2NNH
2、CH
3NHNHCH
3)、及びカルボンヒドラジド((NHNH
2)
2CO)等のヒドラジン類、(ii)尿素(NH
2CONH
2)、(iii)アンモニア(NH
3)、(iv)イミダゾール、1,3,5−トリアジン、3−アミノ−1,2,4−トリアゾール等の複素環類化合物、(v)ヒドロキシルアミン(NH
2OH)、硫酸ヒドロキシルアミン(NH
2OH・H
2SO
4)等のヒドロキシルアミン類、及びこれらの組合せが挙げられる。これらの燃料化合物のうち炭素を含まない化合物(すなわち、ヒドラジン、水加ヒドラジン、硫酸ヒドラジン、アンモニア、ヒドロキシルアミン、硫酸ヒドロキシルアミン等)は、一酸化炭素による触媒被毒の問題が無いため特に好適である。
【0034】
燃料化合物は、そのまま燃料として用いてもよいが、水及び/又はアルコール(例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノールなどの低級アルコール等)に溶解させた溶液として用いてもよい。例えば、上記燃料化合物のうち、ヒドラジン、水化ヒドラジン、モノメチルヒドラジン及びジメチルヒドラジンは液体であるので、そのまま液体燃料として使用可能である。また、炭酸ヒドラジン、硫酸ヒドラジン、カルボンヒドラジド、尿素、イミダゾール、及び3−アミノ−1,2,4−トリアゾール、及び硫酸ヒドロキシルアミンは固体であるが水に可溶である。1,3,5−トリアジン及びヒドロキシルアミンは固体であるがアルコールに可溶である。アンモニアは気体であるが水に可溶である。このように、固体の燃料化合物は、水又はアルコールに溶解させて液体燃料として使用可能である。燃料化合物を水及び/又はアルコールに溶解させて用いる場合、溶液中の燃料化合物の濃度は、例えば1〜90重量%であり、好ましくは1〜30重量%である。
【0035】
また、メタノール、エタノール等のアルコール類やエーテル類を含む炭化水素系液体燃料、メタン等の炭化水素系ガス、或いは純水素などは、そのまま燃料として用いることができる。特に、本実施形態に係る固体アルカリ形燃料電池100に用いられる燃料としては、メタノールが好適である。メタノールは、気体状態、液体状態、及び、気液混合状態のいずれであってもよい。
【0036】
アノード3は、AFCに使用される公知のアノード触媒を含むものであればよく、特に限定されない。アノード触媒の例としては、Pt、Ni、Co、Fe、Ru、Sn、及びPd等の金属触媒が挙げられる。金属触媒は、カーボン等の担体に担持されるのが好ましいが、金属触媒の金属原子を中心金属とする有機金属錯体の形態としてもよく、この有機金属錯体を担体として担持されていてもよい。また、アノード触媒の表面には多孔質材料等で構成された拡散層を配置してもよい。アノード3及びそれを構成する触媒の好ましい例としては、ニッケル、コバルト、銀、白金担持カーボン(Pt/C)、パラジウム担持カーボン(Pd/C)、ロジウム担持カーボン(Rh/C)、ニッケル担持カーボン(Ni/C)、銅担持カーボン(Cu/C)、及び銀担持カーボン(Ag/C)が挙げられる。
【0037】
アノード3の作製方法は特に限定されないが、例えば、アノード触媒及び所望により担体をバインダと混合してペースト状にする。そして、このペースト状混合物を電解質4の中央部43の第2面42上に塗布することにより形成することができる。
【0038】
(電解質4)
電解質4は、カソード2とアノード3との間に配置される。電解質4は、カソード2及びアノード3のそれぞれに接続される。電解質4は、イオン伝導性を有する。電解質4は、膜状であって、第1面41と第2面42とを有している。第1面41と第2面42とは、互いに逆側を向いている。電解質4の第1面41側にはカソード2が配置されており、第2面42側にはアノード3が配置されている。
【0039】
図2は、電解質4の平面図である。なお、
図2の二点鎖線は、カソード2が配置される領域を表している。
図2に示すように、電解質4は、中央部43と、外周部44とを有している。中央部43は、厚さ方向視(z軸方向視)において、カソード2及びアノード3の両方と重複する領域である。外周部44は、厚さ方向視において、カソード2及びアノード3の少なくとも一方と重複しない領域である。外周部44は、その中央部43よりも外周側の領域である。外周部44は、枠状である。電解質4の外周部44上に、第1及び第2シール部材13a、13bが配置されている。
【0040】
図3は、電解質4の断面を拡大して示す模式図である。電解質4は、多孔質基材5(支持体の一例)と、イオン伝導体6とを有する。
【0041】
多孔質基材5は、イオン伝導体6を支持するように構成されている。詳細には、多孔質基材5は、三次元網目構造を有する。「三次元網目構造」とは、基材の構成物質が立体的かつ網目状に繋がった構造である。多孔質基材5は、連続孔5aを形成する。連続孔5aは、立体的かつ網目状に孔が繋がることによって構成されており、多孔質基材5の外表面に露出している。連続孔5aには、イオン伝導体6が含浸されている。
【0042】
多孔質基材5は、金属材料、セラミックス材料、及び高分子材料から選択される少なくとも1種によって構成することができる。
【0043】
多孔質基材5を構成する金属材料としては、ステンレス(Fe−Cr系合金、Fe−Ni−Cr系合金など)、アルミニウム、亜鉛、ニッケル、又は、チタンなどを用いることができる。このような金属材料は、セラミックス材料や高分子材料に比べて熱伝導性が高いため、多孔質基材5の放熱効率を向上させることができるとともに、多孔質基材5内の温度分布を低減させることができる。三次元網目構造を有する限り、多孔質基材5の形態は特に制限されず、例えば、多孔質金属材料(例えば、発砲金属材料)によって構成されるセル状又はモノリス状の構造物であってもよいし、細線金属材料によって構成されるメッシュ状の塊であってもよい。
【0044】
また、多孔質基材5が金属材料によって構成される場合、多孔質基材5の表面には絶縁膜が形成されていてもよい。絶縁膜は、Cr
2O
3、Al
2O
3、ZrO
2、MgO、MgAl
2O
4などによって構成することができる。多孔質基材5をステンレスによって構成する場合、ステンレスを酸化処理することにより、絶縁膜としてのCr
2O
3膜を簡便に形成することができる。ただし、本実施形態では、後述する第1及び第2膜状部62,63が、絶縁膜として機能するため、多孔質基材5の表面には、絶縁膜が形成されていなくてもよい。
【0045】
多孔質基材5を構成するセラミックス材料としては、アルミナ、ジルコニア、チタニア、マグネシア、カルシア、コージェライト、ゼオライト、ムライト、酸化亜鉛、炭化ケイ素、及びこれらの任意の組合せが挙げられる。
【0046】
多孔質基材5を構成する高分子材料としては、例えば、ポリスチレン、ポリエーテルサルフォン、ポリプロピレン、エポキシ樹脂、ポリフェニレンサルファイド、親水化したフッ素樹脂(四フッ素化樹脂:PTFE等、ポリフッ化ビニリデン)、セルロース、ナイロン、ポリエチレン及びこれらの任意の組合せが挙げられる。多孔質基材5をフレキシブル性の高分子材料で構成する場合には、気孔率を高めながら厚さを薄くしやすいため、水酸化物イオン伝導性を向上させることができる。高分子材料によって構成される多孔質基材5としては、リチウム電池用セパレータとして市販されているような微多孔膜を用いることができる。
【0047】
多孔質基材5の厚さは特に制限されないが、例えば、200μm以下とすることができ、好ましくは100μm以下、より好ましくは75μm以下、さらに好ましくは50μm以下、特に好ましくは25μm以下であり、5μm以下が最も好ましい。多孔質基材5の厚さの下限値は、用途に応じて適宜設定すればよいが、ある程度の堅さを確保するには1μm以上が好ましく、2μm以上がより好ましい。
【0048】
多孔質基材5の断面における連続孔5aの平均内径は特に制限されないが、例えば、0.001〜1.5μmとすることができ、好ましくは0.001〜1.25μm、より好ましくは0.001〜1.0μm、さらに好ましくは0.001〜0.75μm、特に好ましくは0.001〜0.5μmである。これらの範囲内とすることによって、多孔質基材5に支持体としての強度を付与しつつ、イオン伝導体6の緻密度を向上させることができる。連続孔5aの平均内径とは、多孔質基材5の断面を電子顕微鏡で観察した場合に、観察画像上で無作為に選出した20箇所における連続孔5aの円相当径を算術平均することによって得られる。連続孔5aの円相当径とは、観察画像において、連続孔5aの断面積と同じ面積を有する円の直径である。なお、電子顕微鏡の倍率は、連続孔5aの断面サイズに応じて適宜設定すればよい。
【0049】
連続孔5aの体積率は特に制限されないが、例えば、10〜60%とすることができ、好ましくは15〜55%、より好ましくは20〜50%である。これらの範囲内とすることによって、多孔質基材5に支持体としての強度を確保しつつ、イオン伝導体6の緻密度を向上させることができる。連続孔5aの体積率は、アルキメデス法により測定することができる。
【0050】
また、
図3では図示されていないが、多孔質基材5は、それ自体の内部に複数の細孔を有することが好ましい。複数の細孔は、多孔質基材5の内部において、互いに繋がっていてもよい。そして、各細孔は多孔質基材5の表面に開口する開気孔であって、各細孔にはイオン伝導体6が含浸していることがより好ましい。これによって、連続孔5a→多孔質基材5内の細孔→連続孔5aという短距離イオン伝導パスや、連続孔5a→多孔質基材5内の細孔→第2膜状部63、或いは、第1膜状部62→多孔質基材5内の細孔→第2膜状部63という長距離イオン伝導パスを形成することができる。その結果、複合部61内のイオン伝導可能領域が広がるため、電解質4全体としてのイオン伝導性を向上させることができる。
【0051】
イオン伝導体6は、水酸化物イオン伝導性を有する。固体アルカリ形燃料電池100の発電中、イオン伝導体6は、カソード2側からアノード3側に水酸化物イオン(OH
−)を伝導させる。イオン伝導体6の水酸化物イオン伝導率は特に制限されないが、0.1mS/cm以上が好ましく、より好ましくは0.5mS/cm以上、さらに好ましくは1.0mS/cm以上である。イオン伝導体6の水酸化物イオン伝導率は、高いほど好ましく、その上限値は特に制限されないが、例えば10mS/cmである。
【0052】
イオン伝導体6は、水酸化物イオン伝導性を有するセラミックス材料によって構成することができる。このようなセラミックス材料としては、層状複水酸化物(LDH:Layered Double Hydroxide)が好適である。
【0053】
LDHは、M
2+1−xM
3+x(OH)
2A
n−x/n・mH
2O(式中、M
2+は2価の陽イオン、M
3+は3価の陽イオンであり、A
n−はn価の陰イオン、nは1以上の整数、xは0.1〜0.4、mは水のモル数を意味する任意の整数である)の一般式で示される基本組成を有する。M
2+の例としてはMg
2+、Ca
2+、Sr
2+、Ni
2+、Co
2+、Fe
2+、Mn
2+、及びZn
2+が挙げられ、M
3+の例としては、Al
3+、Fe
3+、Ti
3+、Y
3+、Ce
3+、Mo
3+、及びCr
3+が挙げられ、A
n−の例としてはCO
32−及びOH
−が挙げられる。M
2+及びM
3+としては、それぞれ1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0054】
LDHは、複数の水酸化物基本層と、これら複数の水酸化物基本層間に介在する中間層とから構成される。中間層は、陰イオン及びH
2Oで構成される。水酸化物基本層は、例えば金属MがNi、Al、Tiの場合には、Ni、Al、Ti及びOH基を含む。以下、LDHの水酸化物基本層がNi、Al、Ti及びOH基を含む場合について説明する。
【0055】
LDH中のNiはニッケルイオンの形態を採りうる。LDH中のニッケルイオンは典型的にはNi
2+であると考えられるが、Ni
3+等の他の価数もありうるため、特に限定されない。LDH中のAlはアルミニウムイオンの形態を採りうる。LDH中のアルミニウムイオンは典型的にはAl
3+であると考えられるが、他の価数もありうるため、特に限定されない。LDH中のTiはチタンイオンの形態を採りうる。LDH中のチタンイオンは典型的にはTi
4+であると考えられるが、Ti
3+等の他の価数もありうるため、特に限定されない。水酸化物基本層は、Ni、Al、Ti及びOH基を主要構成要素として含むのが好ましいが、他の元素ないしイオンを含んでいてもよいし、不可避不純物を含んでいてもよい。不可避不純物は、製法上不可避的に混入されうる任意元素であり、例えば原料や基材に由来してLDH中に混入しうる。
【0056】
LDHの中間層は、陰イオン及びH
2Oで構成される。陰イオンは1価以上の陰イオン、好ましくは1価又は2価のイオンである。好ましくは、LDH中の陰イオンはOH
−及び/又はCO
32−を含む。
【0057】
上記のとおり、Ni、Al及びTiの価数は必ずしも定かではないため、LDHを一般式で厳密に特定することは非実際的又は不可能である。仮に水酸化物基本層が主としてNi
2+、Al
3+、Ti
4+及びOH基で構成されるものと想定した場合、LDHは、一般式:Ni
2+1−x−yAl
3+xTi
4+y(OH)
2A
n−(x+2y)/n・mH
2O(式中、A
n−はn価の陰イオン、nは1以上の整数、好ましくは1又は2であり、0<x<1、好ましくは0.01≦x≦0.5、0<y<1、好ましくは0.01≦y≦0.5、0<x+y<1、mは0以上、典型的には0を超える又は1以上の実数である)なる基本組成で表すことができる。もっとも、上記一般式はあくまで「基本組成」と解されるべきであり、Ni
2+、Al
3+、Ti
4+等の元素がLDHの基本的特性を損なわない程度に他の元素又はイオン(同じ元素の他の価数の元素又はイオンや製法上不可避的に混入されうる元素又はイオンを含む)で置き換え可能なものとして解されるべきである。
【0058】
電解質4の外周部44の断面におけるイオン伝導体6の面積比Bは、電解質4の中央部43の断面におけるイオン伝導体6の面積比Aよりも小さい。このように、中央部43の断面におけるイオン伝導体6の面積比Aよりも外周部44の断面におけるイオン伝導体6の面積比Bを小さくすることによって、燃料電池100の出力を向上させることができる。
【0059】
ここで、電解質4の中央部43の断面におけるイオン伝導体6の面積比Aは、以下のようにして求めることができる。まず、電解質4の中心近傍を通り且つ面内方向(xy面方向)と直交する面、例えばxz平面によって、
図3に示すような電解質4の切断面を形成する。この切断面のうち中央部43を、SEM、FE-SEM、TEM、又はクライオSEMなどで撮影して得られた画像データを2値化処理する。この2値化処理して得られたデータのうちイオン伝導体6の占める面積の割合をイオン伝導体6の面積比として算出する。なお、中央部43を、
図3のx方向において5分割した各領域の中心部分でイオン伝導体6の面積比を算出し、その平均値を中央部43の断面におけるイオン伝導体6の面積比Aとする。
【0060】
また、電解質4の外周部44の断面におけるイオン伝導体6の面積比は、以下のようにして求めることができる。上述したように形成された切断面のうち外周部44を、SEM、FE-SEM、TEM、又はクライオSEMなどで撮影し、得られた画像データを2値化処理する。この2値化処理して得られたデータのうちイオン伝導体6の占める面積の割合をイオン伝導体6の面積比として算出する。なお、外周部44を
図3のx方向において5分割した各領域の中心部分でイオン伝導体6の面積比を算出し、その平均値を外周部44の断面におけるイオン伝導体6の面積比Bとする。
【0061】
中央部43の断面におけるイオン伝導体6の面積比Aに対する、外周部44の断面におけるイオン伝導体6の面積比Bの割合(B/A)は、0.99未満とすることが好ましい。また、外周部44の断面におけるイオン伝導体6の面積比Bは、1%以上とすることが好ましい。
【0062】
イオン伝導体6は、複合部61、第1膜状部62、及び第2膜状部63を有する。なお、上述したイオン伝導体6の面積比A、Bは、複合部61において測定する。
【0063】
複合部61は、第1膜状部62と第2膜状部63との間に配置される。複合部61は、多孔質基材5内において、多孔質基材5に支持されている。詳細には、複合部61は、多孔質基材5の連続孔5a内に配置される。複合部61は、多孔質基材5の連続孔5a内に含浸されており、多孔質基材5と一体化している。このように、イオン伝導体6を多孔質基材5で支持することによって、イオン伝導体6の強度を向上できるため、イオン伝導体6を薄くすることができる。その結果、電解質4の低抵抗化を図ることができる。
【0064】
本実施形態において、複合部61は、多孔質基材5の連続孔5aの略全域に広がる。ただし、イオン伝導体6が第1膜状部62及び第2膜状部63の少なくとも一方を有さない場合、複合部61は、多孔質基材5の一部にのみ含浸されていてもよい。
【0065】
ここで、複合部61は、その内部に形成された複数の閉気孔611を有する。このような閉気孔611が複合部61の内部に形成されるため、固体アルカリ形燃料電池100の作動中に複合部61の含水状況の変動に起因する電解質4の体積変化を緩和させることができる。これにより、電解質4とカソード2との界面、又は/及び電解質4とアノード3との界面に応力が発生することを抑制できる。その結果、カソード2又は/及びアノード3から電解質4が剥離したり、電解質4自体が変形したりすることを抑制できる。
【0066】
さらに、閉気孔611が複合部61の内部に形成されることで、複合部61に柔軟性を付与することができるため、固体アルカリ形燃料電池100内の温度分布に起因して、カソード2と電解質4との界面、又は/及び、アノード3と電解質4との界面に熱応力が発生することを抑制できる。そのため、カソード2又は/及びアノード3から電解質4が剥離したり、或いは、電解質4自体が変形したりすることを抑制できる。
【0067】
閉気孔611は、多孔質基材5から離れている。すなわち、閉気孔611は、複合部61の内部に閉じこめられており、連続孔5aの内表面と直接的に接触しない。これによって、閉気孔611が多孔質基材5に直接接触する場合に比べて、電解質4に体積変化や変形が生じた場合に、多孔質基材5、複合部61及び閉気孔611の三者で作られる角部を起点として、複合部61が多孔質基材5から剥離することを抑制できる。
【0068】
各閉気孔611の平均円相当径は特に制限されないが、例えば、0.001〜1.0μmとすることができる。各閉気孔611の平均円相当径は、0.001μm以上が好ましく、0.002μm以上がより好ましい。これによって、複合部61の柔軟性をより向上させることができる。また、各閉気孔611の平均円相当径は、1.0μm以下が好ましく、0.8μm以下がより好ましい。
【0069】
各閉気孔611の平均円相当径は、電解質4の断面を20,000〜1,500,000倍の電子顕微鏡で観察し、無作為に選出した20個の閉気孔611の円相当径を算術平均することによって得られる。閉気孔611の円相当径とは、電解質4の断面において、閉気孔611と同じ面積を有する円の直径である。ただし、0.001μm以下の円相当径を有する閉気孔611は、複合部61の柔軟性向上への寄与が極めて小さいため、各閉気孔611の平均円相当径を求める際には除外するものとする。
【0070】
第1膜状部62は、複合部61のカソード2側に連なる。第1膜状部62は、膜状に形成される。第1膜状部62は、複合部61と一体的に形成される。第2膜状部63は、複合部61のアノード3側に連なる。第2膜状部63は、膜状に形成される。第2膜状部63は、複合部61と一体的に形成される。第1膜状部62及び第2膜状部63それぞれは、水酸化物イオン伝導性を有するセラミックス材料によって構成することができる。第1膜状部62及び第2膜状部63それぞれは、一様な平面状に形成されていてもよいし、縞状など所望の平面形状にパターン化されていてもよい。第1膜状部62及び第2膜状部63それぞれの厚さは特に制限されないが、例えば、10μm以下とすることができ、好ましくは7μm以下、より好ましくは5μm以下である。
【0071】
(イオン伝導体6の製造方法)
イオン伝導体6の作製方法は特に限定されないが、イオン伝導体6をLDHで構成する場合であって、LDHの水酸化物基本層がNi、Al、Ti及びOH基を含むとき、以下の工程(1)〜(4)で作製することができる。
【0073】
(2)多孔質基材5の全体にアルミナ及びチタニアの混合ゾルを含浸させて熱処理することでアルミナ・チタニア層を形成させる。後述するように、多孔質基材5の表面全体からLDHを成長させるには、多孔質基材5の表面全体にアルミナ・チタニア層を形成させることが重要となるため、アルミナ及びチタニアの混合ゾルを含浸させて熱処理することを複数回実施する。これにより、多孔質基材5の表面全体にアルミナ・チタニア層を形成することができる。
【0074】
ここで、例えば、上記熱処理を複数回実施するうちの全回もしくは一部の回で、外周部44のみをマスキングすることによって、外周部44におけるイオン伝導体6の面積比Bを、中央部43におけるイオン伝導体6の面積比Aよりも小さくすることができる。
【0075】
(3)ニッケルイオン(Ni
2+)及び尿素を含む原料水溶液に多孔質基材5を浸漬させる。
【0076】
(4)原料水溶液中で多孔質基材5を水熱処理して、LDHを多孔質基材5上及び多孔質基材5中に形成させることによって、複合部61、第1膜状部62、及び第2膜状部63を有するイオン伝導体6を形成する。この際、水熱処理時間および溶液濃度を適宜調整することによって、気孔が閉塞する前に反応を停止することで複合部61内に閉気孔611を形成させることができる。LDHは多孔質基材5の表面に形成されたアルミナ・チタニア層を核として成長するため、多孔質基材5の表面全体にアルミナ・チタニア層を形成させた場合においては、多孔質基材5の表面全体からLDHが成長することになる。その結果として、閉気孔611を多孔質基材5から離すことができる。
【0077】
(実施形態の変形例)
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
【0078】
変形例1
上記実施形態では、電解質4が支持体となっているが、燃料電池用接合体10の構成はこれに限定されない。例えば、
図4に示すように、アノード3が支持体となっていてもよい。この場合、アノード3の上面に電解質4が形成されている。この電解質4は、アノード3と同じ大きさか、アノード3よりも一回り小さい。そして、電解質4の上面に形成されるカソード2は、電解質4と同じ大きさか、電解質4よりも一回り小さい。
【0079】
本変形例では、カソード2は、電解質4よりも一回り小さい。この変形例において、電解質4の中央部43は、厚さ方向視(z軸方向視)において、カソード2と重複する部分である。そして、電解質4の外周部44は、厚さ方向視において、カソード2と重複していない部分である。なお、電解質4の外周部44は、厚さ方向視において、アノード3とは重複している。
【0080】
なお、カソード2が支持体となっていてもよい。また、燃料電池100は、支持体となる部材を別途有していてもよい。
【0081】
変形例2
電解質4は、多孔質基材5を有していなくてもよい。例えば、
図5に示すように、電解質4は、イオン伝導体6と、バインダ7とを有する。バインダ7は、イオン伝導体6の支持体として機能する。詳細には、バインダ7は、イオン伝導体6の構成粒子間に配置されている。バインダ7は、イオン伝導体6の各構成粒子同士を結着する。例えば、バインダ7は、LDH粒子同士を結着することによって、電解質4の形状を維持する。このようなバインダとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、スチレン−ブタジエンゴム、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、フッ化ビニリデン−クロロトリフルオロエチレン共重合体、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体、ポリクロロトリフルオロエチレン、フッ化ビニリデン−ペンタフルオロプロピレン共重合体、プロピレン−テトラフルオロエチレン共重合体、エチレン−クロロトリフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン−テトラフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン−パーフルオロメチルビニルエーテル−テトラフルオロエチレン共重合体、又はエチレン−アクリル酸共重合体などを挙げることができる。
【0082】
変形例3
上記実施形態では、閉気孔611は、多孔質基材5から離れていたが、
図6に示すように、閉気孔611は、多孔質基材5に接していてもよい。すなわち、閉気孔611は、連続孔5aの内表面と直接的に接触していてもよい。これによって、閉気孔611が多孔質基材5から離れている場合に比べて、閉気孔611の存在による多孔質基材5の拘束面積を低減できるため、多孔質基材5自体の柔軟性を向上させることができる。そのため、電解質4に体積変化や変形が生じた場合に、カソード2と電解質4との界面、又は/及び、アノード3と電解質4との界面に応力が発生することをより抑制できる。
【0083】
変形例4
上記実施形態では、電解質4は、複数の閉気孔611を有することとしたが、閉気孔611を少なくとも1つ有していれば、閉気孔611を全く有していない場合に比べて、複合部61に柔軟性を付与することができるため、電解質4の剥離を抑制できる。
【0084】
変形例5
上記実施形態では、閉気孔611の形状は断面が円形状に構成されていたが、閉気孔611の形状はこれに限定されない。例えば、閉気孔611は、断面が楕円形状となっていてもよいし、その他の形状であってもよい。
【0085】
変形例6
上記実施形態では、イオン伝導体6は、複合部61、第1膜状部62、及び第2膜状部63を有することとしたが、複合部61のみを有していてもよい。すなわち、イオン伝導体6は、第1膜状部62及び第2膜状部63の少なくとも一方を備えていなくてよい。
【0086】
変形例7
上記実施形態では、電解質4は単層として構成されているが、電解質4は複層であってもよい。
【0087】
変形例8
上記実施形態では、本発明に係る燃料電池を固体アルカリ形燃料電池に適用した実施形態を説明したが、本発明に係る燃料電池が適用される対象は固体アルカリ形燃料電池に限定されず、例えば、固体高分子形燃料電池などの他の燃料電池にも適用することができる。
【実施例】
【0088】
以下、本発明の実施例について説明する。ただし、本発明は以下に説明する実施例には限定されない。
【0089】
(固体アルカリ形燃料電池100の作製)
まず、ポリフッ化ビニリデンによって構成され、連続孔5aを有する多孔質基材5を用意した。
【0090】
次に、多孔質基材5の全体にアルミナ及びチタニアの混合ゾルを含浸させて、120℃で所定時間の熱処理工程を複数回繰り返すことによって、多孔質基材5の表面全体にアルミナ・チタニア層を形成した。
【0091】
次に、Ni
2+及び尿素を含む原料水溶液に多孔質基材5を浸漬させ、原料水溶液中で多孔質基材5を水熱処理することによって、LDHからなるイオン伝導体6を形成した。これにより、イオン伝導体6と多孔質基材5とを備える電解質4が形成された。なお、この電解質4を研磨することによって、厚さを約50μmとした。
【0092】
実施例1〜8及び比較例1〜5のそれぞれにおいて、中央部43のイオン伝導体6の面積比A、及び外周部44のイオン伝導体6の面積比Bは、表1に示す通りである。この各イオン伝導体6の面積比A,Bは、上述した熱処理工程において、外周部44のマスキングの有無、熱処理回数、及び熱処理時間を調整することによって、実施例1〜8及び比較例1〜5の電解質4を形成した。
【0093】
次に、炭素に担持されたカソード触媒(Pt/C)とバインダー(ポリフッ化ビニリデン)とを混合したペースト状混合物を電解質4の中央部43の第1面41上に塗布することによって、カソード2を形成した。
【0094】
次に、炭素に担持されたアノード触媒(Pt−Ru/C)とバインダー(ポリフッ化ビニリデン)とを混合したペースト状混合物を電解質4の中央部43の第2面42上に塗布することによって、アノード3を形成した。
【0095】
以上により、実施例1〜8及び比較例1〜5それぞれの燃料電池用接合体10を作製した。そして、実施例1〜8及び比較例1〜5それぞれの燃料電池用接合体10を、第1セパレータ11と第2セパレータ12とで挟むことによって、固体アルカリ形燃料電池100を作製した。なお、各実施例及び比較例において、イオン伝導体6の各面積比A,B以外は、基本的に同じ構成としている。
【0096】
(評価方法)
まず、固体アルカリ形燃料電池100を120℃に加熱した。次に、コンプレッサーを用いて、露点0℃以下の乾燥空気を適宜加湿した空気をカソード2に供給し、カソード2における空気利用率が50%となるように調整した。また、気化させたメタノールをアノード3に供給し、アノード3における燃料利用率が50%となるように調整した。
【0097】
そして、定格負荷(100mA/cm
2)で発電させながら、固体アルカリ形燃料電池100の出力を測定した。その測定結果を表1に示す。表1において、出力の評価は、面積比Aと面積比Bとが等しい比較例3,5,7の出力値を基準とした。そして、比較例1〜3、及び実施例1〜4では、比較例3の出力値を基準として、その基準に対して110%超であった場合を◎と評価し、105%超110%以下であった場合を〇と評価し、100%超105%以下であった場合を△と評価し、100%以下であった場合を×と評価した。また、比較例4〜5、及び実施例5〜8では、比較例5の出力値を基準として、その基準に対して110%超であった場合を◎と評価し、105%超110%以下であった場合を〇と評価し、100%超105%以下であった場合を△と評価し、100%以下であった場合を×と評価した。また、比較例6〜7、及び実施例9〜11では、比較例7の出力値を基準として、その基準に対して110%超であった場合を◎と評価し、105%超110%以下であった場合を〇と評価し、100%超105%以下であった場合を△と評価し、100%以下であった場合を×と評価した。
【0098】
【表1】
【0099】
表1に示すように、外周部44のイオン伝導体6の面積比Bを、中央部43のイオン伝導体6の面積比Aよりも小さくすることによって、燃料電池100の出力が向上することが分かった。具体的には、面積比Aに対する面積比Bの割合(B/A)を0.99以下とすることによって、燃料電池100の出力が向上することが分かった。これは、電解質4の中央部43の方が、外周部44に比べてイオンが流れやすくなり、その結果、経路の短い中央部43を優先してイオンが伝導してイオン伝導性が向上するためであると考えられる。
【0100】
また、実施例2と実施例3との比較、実施例6と実施例7との比較、及び実施例9と実施例10との比較から分かるように、外周部44におけるイオン伝導体6の面積比を20%以上とすることによって、燃料電池100の出力が向上することが分かった。外周部44がイオン伝導経路として十分に機能することで燃料電池100の出力が向上したものと考えられる。