特許第6872612号(P6872612)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6872612挿入体とポリマーとの間に接続を形成する方法、部材に挿入体を封止一体化する方法、および、装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6872612
(24)【登録日】2021年4月21日
(45)【発行日】2021年5月19日
(54)【発明の名称】挿入体とポリマーとの間に接続を形成する方法、部材に挿入体を封止一体化する方法、および、装置
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/14 20060101AFI20210510BHJP
   B29C 33/08 20060101ALI20210510BHJP
【FI】
   B29C45/14
   B29C33/08
【請求項の数】18
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2019-525903(P2019-525903)
(86)(22)【出願日】2017年10月2日
(65)【公表番号】特表2019-537528(P2019-537528A)
(43)【公表日】2019年12月26日
(86)【国際出願番号】EP2017074945
(87)【国際公開番号】WO2018091188
(87)【国際公開日】20180524
【審査請求日】2019年6月25日
(31)【優先権主張番号】102016222534.0
(32)【優先日】2016年11月16日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100177839
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 玲児
(74)【代理人】
【識別番号】100172340
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 始
(74)【代理人】
【識別番号】100182626
【弁理士】
【氏名又は名称】八島 剛
(72)【発明者】
【氏名】ローマン,ヴィクトール
(72)【発明者】
【氏名】バイエルマスター,ベルント
(72)【発明者】
【氏名】ラング,ノーマン
(72)【発明者】
【氏名】メナーヒャー,マルクス
(72)【発明者】
【氏名】ヤーンレ,ヘンドリック
【審査官】 今井 拓也
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭62−053311(JP,A)
【文献】 特開平11−105076(JP,A)
【文献】 特開2004−249681(JP,A)
【文献】 特開昭62−070402(JP,A)
【文献】 特開2015−214137(JP,A)
【文献】 特開2016−047601(JP,A)
【文献】 特開2012−101394(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/00 − 45/84
B29C 33/00 − 33/76
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
挿入体(1、1’、1’’)と、該挿入体を少なくとも部分的に取り囲むポリマー(3)との間に接続を形成する方法(100)であって、モノマー(2)を前記挿入体(1、1’、1’’)と接触させ(110)、続いて前記ポリマー(3)へと重合させる(120)、方法において、前記挿入体(1、1’、1’’)の温度Tを、前記モノマー(2)が前記ポリマー(3)への前記モノマーの発熱重合(120)中に最大限とる、および/または熱流が常に前記挿入体(1、1’、1’’)から前記モノマー(2)へ流れることを確保する少なくとも温度Tへ少なくとも一時的に上昇させ(130)、
前記挿入体(1、1’、1’’)の前記温度Tが、少なくとも、前記モノマー(2)が少なくとも前記挿入体(1、1’、1’’)との前記モノマーの全接触面(1a)に沿って重合される(120)までの間、前記温度T以上に保たれる(140)ことを特徴とする、方法(100)。
【請求項2】
前記モノマー(2)が前記挿入体(1、1’、1’’)との前記モノマーの全接触面(1a)に沿って重合された(120)後に、前記挿入体(1、1’、1’’)の前記温度Tを前記温度T未満に低減する(150)ことを特徴とする、請求項1に記載の方法(100)。
【請求項3】
少なくとも部分的に導電性または半導電性の挿入体(1、1’、1’’)が選択されることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法(100)。
【請求項4】
前記挿入体(1、1’、1’’)が、電流Iを印加することによって、抵抗および/または誘導加熱される(131)ことを特徴とする、請求項3に記載の方法(100)。
【請求項5】
前記挿入体(1、1’、1’’)を前記モノマー(2)に浸漬し(111)、前記ポリマー(3)により取り囲まれるべきでない前記挿入体(1、1’、1’’)の表面(1c)の少なくとも1つの領域(1b)を防護具(4)によって覆う(112)ことを特徴とする、請求項1から4のいずれか1項に記載の方法(100)。
【請求項6】
前記挿入体(1、1’、1’’)が、前記モノマー(2)の導入、および前記ポリマー(3)への前記モノマー(2)の重合(120)の後に、前記挿入体(1、1’、1’’)と前記ポリマー(3)との間に形状結合的な接続を形成する構造(1f)を備えることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法(100)。
【請求項7】
部材(5)に挿入体(1、1’、1’’)を封止一体化する方法(200)において、前記挿入体(1、1’、1’’)が下記Bに記載の方法でポリマー(3)により取り囲まれ、続いて前記部材(5)に打ち込まれる(210)、
B:挿入体(1、1’、1’’)と、該挿入体を少なくとも部分的に取り囲むポリマー(3)との間に接続を形成する方法(100)であって、モノマー(2)を前記挿入体(1、1’、1’’)と接触させ(110)、続いて前記ポリマー(3)へと重合させる(120)、方法において、前記挿入体(1、1’、1’’)の温度Tを、前記モノマー(2)が前記ポリマー(3)への前記モノマーの発熱重合(120)中に最大限とる、および/または熱流が常に前記挿入体(1、1’、1’’)から前記モノマー(2)へ流れることを確保する少なくとも温度Tへ少なくとも一時的に上昇させる(130)、方法(100)、
ことを特徴とする、方法(200)。
【請求項8】
部材(5)に挿入体(1、1’、1’’)を封止一体化する方法(200)において、前記挿入体(1、1’、1’’)が請求項1〜6に記載の方法でポリマー(3)により取り囲まれ、続いて前記部材(5)に打ち込まれる(210)ことを特徴とする、方法(200)。
【請求項9】
部材(5)に挿入体(1、1’、1’’)を封止一体化する方法(300)において、前記挿入体(1、1’、1’’)が、前記部材(5)を製造するための成形型に入れられ(310)、射出成形によりプラスチック(6)で取り囲むこと(320)と下記Bに記載のポリマー(3)で取り囲むこと(100)とを組み合わせることによって、前記プラスチック(6)から作られた部材(5)と封止接続される、
B:挿入体(1、1’、1’’)と、該挿入体を少なくとも部分的に取り囲むポリマー(3)との間に接続を形成する方法(100)であって、モノマー(2)を前記挿入体(1、1’、1’’)と接触させ(110)、続いて前記ポリマー(3)へと重合させる(120)、方法において、前記挿入体(1、1’、1’’)の温度Tを、前記モノマー(2)が前記ポリマー(3)への前記モノマーの発熱重合(120)中に最大限とる、および/または熱流が常に前記挿入体(1、1’、1’’)から前記モノマー(2)へ流れることを確保する少なくとも温度Tへ少なくとも一時的に上昇させる(130)、方法(100)、
ことを特徴とする、方法(300)。
【請求項10】
部材(5)に挿入体(1、1’、1’’)を封止一体化する方法(300)において、前記挿入体(1、1’、1’’)が、前記部材(5)を製造するための成形型に入れられ(310)、射出成形によりプラスチック(6)で取り囲むこと(320)と請求項1〜6のいずれか1項に記載のポリマー(3)で取り囲むこと(100)とを組み合わせることによって、前記プラスチック(6)から作られた部材(5)と封止接続されることを特徴とする、方法(300)。
【請求項11】
前記挿入体(1、1’、1’’)が、前記成形型に入れられる(310)前に前記ポリマー(3)により取り囲まれ(100)、前記ポリマー(3)が、前記射出成形により取り囲む(320)ときに前記プラスチックとの接触によって部分的に少し溶ける(330)ことを特徴とする、請求項9または10に記載の方法(300)。
【請求項12】
前記挿入体(1、1’、1’’)が、前記成形型に入れられる(310)前に前記モノマー(2)により取り囲まれ(110)、前記モノマー(2)を前記ポリマー(3)へと重合させる(120)ために、前記プラスチック(6)の供給(320)時または供給後に前記挿入体(1、1’、1’’)の温度を少なくともTへ上昇させることを特徴とする、請求項9または10に記載の方法(300)。
【請求項13】
部材(5)に挿入体(1、1’、1’’)を封止一体化する方法(400)において、前記挿入体(1、1’、1’’)を前記部材(5)と接合し(410)、続いて、下記Bに記載の方法でポリマー(3)と接続される(100)、
B: 挿入体(1、1’、1’’)と、該挿入体を少なくとも部分的に取り囲むポリマー(3)との間に接続を形成する方法(100)であって、モノマー(2)を前記挿入体(1、1’、1’’)と接触させ(110)、続いて前記ポリマー(3)へと重合させる(120)、方法において、前記挿入体(1、1’、1’’)の温度Tを、前記モノマー(2)が前記ポリマー(3)への前記モノマーの発熱重合(120)中に最大限とる、および/または熱流が常に前記挿入体(1、1’、1’’)から前記モノマー(2)へ流れることを確保する少なくとも温度Tへ少なくとも一時的に上昇させる(130)、方法(100)、
ことを特徴とする、方法(400)。
【請求項14】
部材(5)に挿入体(1、1’、1’’)を封止一体化する方法(400)において、前記挿入体(1、1’、1’’)を前記部材(5)と接合し(410)、続いて、請求項1〜6に記載の方法でポリマー(3)と接続される(100)ことを特徴とする、方法(400)。
【請求項15】
前記モノマー(2)を、前記部材(5)の内部を通る通路(5C)を介して前記挿入体と接触させる(110)ことを特徴とする、請求項13または14に記載の方法(400)。
【請求項16】
前記部材(5)が、3D印刷により前記挿入体(1、1’、1’’)の周りに作製され(411)、前記モノマー(2)を収容するための空間(5e)が前記挿入体(1、1’、1’’)の周りにあけられ、前記空間に前記モノマー(2)が導入される(110)ことを特徴とする、請求項13〜15のいずれか1項に記載の方法(400)。
【請求項17】
下記Bに記載の方法(100)を実施する装置(50)であって、複数の挿入体(1、1’、1’’)を供給可能な打抜き格子(11)のための移送装置(51)と、少なくともツーピースの(52a、52b)型(52)とを備え、前記型は、個別の挿入体(1、1’、1’’)を囲んで閉じることができ、かつ前記型(52)と前記挿入体(1、1’、1’’)との間の空間(54)にモノマー(2)のための供給路(53)を有する、装置において、前記型(52)により取り囲まれた前記挿入体(1、1’、1’’)の抵抗および/または誘導加熱(131)のための電力供給部(55)が設けられている、
B:挿入体(1、1’、1’’)と、該挿入体を少なくとも部分的に取り囲むポリマー(3)との間に接続を形成する方法(100)であって、モノマー(2)を前記挿入体(1、1’、1’’)と接触させ(110)、続いて前記ポリマー(3)へと重合させる(120)、方法において、前記挿入体(1、1’、1’’)の温度Tを、前記モノマー(2)が前記ポリマー(3)への前記モノマーの発熱重合(120)中に最大限とる、および/または熱流が常に前記挿入体(1、1’、1’’)から前記モノマー(2)へ流れることを確保する少なくとも温度Tへ少なくとも一時的に上昇させる(130)、方法(100)、
ことを特徴とする、装置(50)。
【請求項18】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法(100)を実施する装置(50)であって、複数の挿入体(1、1’、1’’)を供給可能な打抜き格子(11)のための移送装置(51)と、少なくともツーピースの(52a、52b)型(52)とを備え、前記型は、個別の挿入体(1、1’、1’’)を囲んで閉じることができ、かつ前記型(52)と前記挿入体(1、1’、1’’)との間の空間(54)に前記モノマー(2)のための供給路(53)を有する、装置において、前記型(52)により取り囲まれた前記挿入体(1、1’、1’’)の抵抗および/または誘導加熱(131)のための電力供給部(55)が設けられていることを特徴とする、装置(50)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特にプラスチックハウジングを通る電気ブッシング(elektrische Durchfuehrungen)のための、特に金属の挿入体と該挿入体を取り囲むポリマーとの永続的封止接続方法に関する。
【背景技術】
【0002】
導体路、センサ、および回路基板などの電子部品は、プラスチック支持体に埋め込まれているか、またはプラスチックハウジングに格納されていることがよくある。部品がその機能を果たすことができるように、支持体もしくはハウジングを通る金属導線の電気ブッシングが必要とされる。
【0003】
この場合、基本的に、金属とプラスチックとが異なる収縮を示すという問題が生じる。動作中に温度が変化したとき、または金属を射出成形により高温のプラスチックで取り囲み、続いてプラスチックを冷却したときにも、金属からプラスチックが離れることがあり得る。生じる隙間は支持体もしくはハウジングの封止効果を損ない、それによって、例えば水が浸入し、短絡によって電子部品が機能しなくなることがある。
【0004】
この問題に対処するためのいくつかの解決方法が知られている。例えば特許文献1からから知られているように、付加的シールを取り付けることによって、隙間を許容できるように構造を変更することができる。例えば、金属をOリング式に常に密に包囲するエラストマを射出成形によって一体成形することができる。特許文献2は、ホットメルト接着剤で隙間を封印することを開示する。特許文献3は、マイクロレーザ構造化(Mikro−Laser−Strukturierung)により、および電気めっきプロセスにより金属とプラスチックとの結合を向上させることを開示する。特許文献4は、温度が変化すると金属がプラスチックに押し込まれ、隙間の少なくとも一部を密封するように、金属を形成することを開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】独国実用新案第202006013243号明細書
【特許文献2】独国特許出願公開第10313832号明細書
【特許文献3】独国特許発明第102005033912号明細書
【特許文献4】欧州特許第1202852号明細書
【発明の概要】
【0006】
挿入体と挿入体を少なくとも部分的に取り囲むポリマーとの間に接続を作製する方法が本発明の範囲内で開発された。この場合、モノマーを挿入体と接触させ、続いてポリマーへと重合させる。
【0007】
この場合、モノマーは、特に重合を開始および/または維持する触媒との、および/または活性化剤との混合物として存在し得る。しかしモノマーは一成分であってもよい。モノマー中で、例えば触媒および/または活性化剤が化学結合されていてもよく、重合に必要な温度を超えると遊離されてもよい。モノマーの組成は本発明の主題ではないので、以下において「モノマー」しか話題にしない。
【0008】
モノマーは、特にポリアミド−6(PA6)へと重合するカプロラクタムであってもよい。
【0009】
本発明によれば、挿入体の温度Tを、モノマーがポリマーへの該モノマーの発熱重合中に最大限とる、および/または熱流が常に挿入体からモノマーへ流れることを確保する少なくとも温度Tへ少なくとも一時的に上昇させる。
【0010】
挿入体へのポリマーの最適な付着のために決定的に重要なのは、モノマーが、とりわけ挿入体との接触面において、ポリマーに完全に変換されていること、すなわち重合されることであるということがわかった。この接触面における2つの効果は重合を妨害し得る:
一方では、モノマー、活性化剤、または触媒が挿入体の材料と相互作用し得ることであり、それによって重合が阻止または減速されるか、あるいは早期に打ち切られる。これは、重合中に活性鎖末端を不活性化することによって、または重合中または重合前に活性化剤または触媒を不活性化することによって起こり得る。不活性化は、典型的には、挿入体とモノマー、活性化剤または触媒との間の酸化還元反応によって(特に金属の場合)、あるいは当該分野の専門家のあいだで「クエンチ(quenchen)」とも呼ばれる反応を不活性化する遊離プロトンによって起こる。他方では、挿入体の熱伝導性によって重合からエネルギーが奪い取られ得る。金属の酸化還元電位は高い熱伝導性と関連するので、遊離イオンを有する金属と接触したモノマーを完全に陰イオンへと重合することは、これまで非常に高いコストをかけてしか可能でなかった。
【0011】
驚くべきことに、挿入体の温度上昇が2つの妨害要因を同時に排除することがわかった。ほかでもない、少なくともTへの上昇によって、挿入体とモノマーとの間に生じ得る熱流がいつも挿入体からモノマーへ流れること、すなわちエネルギーを重合に供給だけして重合から奪い取らないことが確保される。このエネルギー供給はまたモノマー・分子の結合親和性を高めることをもたらす。したがって、所定のモノマー・分子については、挿入体のイオンと不都合にも相互作用する確率に比べて別のモノマー・分子に結合する確率のほうが有利にも高くなる。その結果として、モノマーが最後まで完全に重合し、特に良好に挿入体に付着する。したがって挿入体とポリマーとの収縮が異なる場合に、挿入体とポリマーとの間の接触面に作用するせん断力がポリマーの体積(Volumen)に伝わり、そこで分散し、その結果、挿入体とポリマーとの間の隙間形成には至らない。
【0012】
挿入体の温度を、例えば挿入体をモノマーと接触させた後に上昇させてもよい。これは、例えば1sから30sの時間、好ましくは1s未満の時間で行うことができる。選択される温度は、Tより高い、例えば少なくとも10K、好ましくは20〜40Kであってもよい。その場合、モノマーの重合が最適に加速され、その一方でモノマーが熱劣化されない。重合自体は、30s未満、または30s〜4min継続することができる。
【0013】
しかし、挿入体を、加熱された状態でモノマーと接触させることもできる。その場合、重合中にさらなる熱を供給できないという犠牲を払った分だけ装置構造が簡易になる。これに関して、避けられない熱損失に対する予備を確保するために、挿入体の温度を、Tを超えて30から50Kへ上昇させることが有利である。
【0014】
せん断力を受けるためには、とりわけ挿入体とポリマーとの間の接触面の強度が重要であるので、本発明の特に有利な一実施形態において、挿入体の温度Tは、少なくとも、モノマーが少なくとも挿入体とのモノマーの全接触面に沿って重合されるまでの間、温度T以上に保たれる。
【0015】
これには、以下でバリアとしての接触面が、挿入体への熱の流出に対してのみならず、挿入体のイオンとモノマー・分子との相互作用に対しても対抗作用するというさらに別の効果がある。最初にバリアが作製された場合、これまでのような程度の高温の必要がなくなる。したがって、モノマーが挿入体との全接触面に沿って重合された後に挿入体の温度Tを温度T未満に低減することが有利である。
【0016】
このようにすることで、挿入体としての特に繊細な電子素子を保護することができる。温度負荷が短時間であればあるほど高い温度が許される。
【0017】
ほかならぬ電気エネルギーまたは電気信号を絶縁支持体または絶縁ハウジングに通す場合には、例えば湿気の侵入による短絡を回避するために接続を密にすることが重要である。移植可能な電子身体補助器具の場合はさらに、体液と一緒に有害物質が身体に漏れ出ないことが重要である。とりわけこの用途では、挿入体が少なくとも部分的に導電性または半導電性である。
【0018】
挿入体が少なくとも部分的に導電性または半導電性である場合、本発明の特に有利な実施形態において、挿入体は、電流を印加することによって抵抗および/または誘導加熱されてもよい。このようにすることで、とりわけ永続的に密な接続のために重要であるモノマーとの挿入体の接触面を特に迅速に温度Tにし、同様に迅速に再び冷却することができる。挿入体は、特に、銅、銅スズ合金、スズ、アルミニウム、鉄、または鉄合金を含んでもよい。このような金属の化学ポテンシャルは非常に異なっており、したがってイオン活動度も非常に異なっている。それにもかかわらず、Tへの温度上昇は、このようなイオン活動度とモノマーとの妨害的な相互作用が阻止されることをもたらす。
【0019】
本発明のさらに別の特に有利な一実施形態において、挿入体をモノマーに浸漬し、ポリマーにより取り囲まれるべきでない挿入体の表面の少なくとも1つの領域を防護具(Abweiser)によって覆う。挿入体は、特に、温度Tに加熱された状態でモノマーに浸漬してもよい。その場合、モノマーとの挿入体の接触面の、防護具で覆われていない至るところでモノマーがポリマーへと重合される。それによりその場所では挿入体がポリマーからなる層で被覆され、その際、層厚は、挿入体の温度と浸漬時間とに依存する。挿入体は、特に、数回にわたって浸漬されてもよい。挿入体は、モノマーが入った槽から引き上げられた後に重合を終了させるために引き続き加熱されてもよい。
【0020】
ポリマーの付着を支援するために、有利には、挿入体を、特にアンダーカットを設けて構造化してもよい。モノマーがこのアンダーカットに入り込み、続いて重合されると、挿入体とのポリマーの形状結合的な接続が作製される。
【0021】
本発明は、さらに、挿入体とポリマーとの間の接続を作製する上記の方法が少なくとも1つの特定箇所で適用されることによって、それぞれ従来技術に対して改善されている、部材に挿入体を封止一体化するいくつかの方法に関する。
【0022】
部材に挿入体を封止一体化する第1の方法は、挿入体が、上記の方法でポリマーにより取り囲まれ、続いて部材に打ち込まれることを特徴とする。部材への要素の打ち込みは、製造技術において「スティッチング(Stitching)」として知られており、変えずにそのまま用いることもできる。単に、挿入体が打ち込みの前にポリマーにより取り囲まれ、その限りで半製品へと価値が引き上げられる。
【0023】
例えば、打ち込み時にポリマーが運動力学によって、もしくは弾性応力によって変形されるだけでも挿入体と部材との間の封止作用を生成することができる。例えば、続いてポリマーを部分的に溶かし、このようにして、例えばレーザ溶接などによって部材と封止接続することによって、封止作用をさらに支援することができる。
【0024】
しかし、封止作用とは無関係に、挿入体とポリマーとの接続は打ち込みの再現性を高めることもできる。このために、有利には、部材がポリマーのための特定のストッパを備えていてもよい。その場合、挿入体と部材との間で働く変形力の種類とは無関係に、挿入体は、いつも同じ深さで部材に入り込む。
【0025】
部材に挿入体を封止一体化する第2の方法では、挿入体は、部材を製造するための成形型に入れられ、射出成形によりプラスチックで取り囲むことと冒頭で述べた方法によりポリマーで取り囲むこととを組み合わせることによって、プラスチックから作られた部材と封止接続される。その際、これらのステップを行う順序に関していくつかの実施形態が可能である。射出成形による取り囲みは、特に、射出成形型内に注入することによって行うことができる。この場合、プラスチックはポリマーと同一物質であってもよい。
【0026】
冒頭で述べたように、挿入体は、成形型に入れられる前にポリマーにより取り囲まれてもよい。続いて、このように価値が高められた挿入体が射出成形により取り囲まれたときに高温のプラスチックと接触すると、ポリマーが部分的に溶け始める。溶融物は凝固した後にプラスチックとともに、プラスチックから作られた部材との永続的に密な接続を作製する。プラスチックは、挿入体を取り囲むためのポリマーよりもいくらか高い融点を有することが有利である。
【0027】
しかしこれに代えて、挿入体は、成形型に入れられる前に、単に、まだ重合されていないモノマーにより取り囲まれてもよい。方法のこの実施形態において、射出成形により取り囲むためのプラスチックの供給時または供給後に、モノマーをポリマーへと重合するために挿入体の温度を少なくともTに上昇させる。その際、特に、挿入体を加熱するための熱源としてプラスチックの温度を使用することができる。この場合、部材を製造するためのプラスチックの種類に応じて流し込み成形、特に射出成形のために必要な温度は、同時に挿入体を冷却して挿入体もモノマーも過熱されないようにするのに有利な、または必要な高さであることさえが可能である。
【0028】
部材に挿入体を封止一体化する第3の方法では、挿入体が部材と接合され、続いて冒頭で述べた方法でポリマーと接続される。部材は、例えば射出成形によって、または3D印刷によって公知の仕方で製造されてもよい。部材との挿入体の接合も、例えば打ち込み(「スティッチング」)によって公知の仕方で行うことができる。挿入体をモノマーと接触させ、続いてこのモノマーを、封止接続を作製するために冒頭で述べたように重合することは革新である。このようにすることで既存の設備を装備変更するためのコストが最小化される。
【0029】
この方法の特に有利な一実施形態において、モノマーを、部材の内部を通る通路を介して挿入体と接触させる。この通路は、特に、すでに部材の製造時に設けられてもよい。このようにすることで、本発明による方法に向けた装備変更を実質的に部材自体に移すことができる。
【0030】
挿入体を部材と接合することは、部材がこの時点ですでに完成されていることを前提条件としない。挿入体は、部材の製造中にも部材と接合されてもよい。
【0031】
方法の特に有利な一実施形態において、例えば、部材は3D印刷により挿入体の周りに作製される。その際、モノマーを収容するための空間が挿入体の周りにあけられ、この空間にモノマーが導入される。その場合、3D印刷の終了後に初めてモノマーを挿入体と接触させるのかどうか、または、例えばポリマーへのモノマーの重合中に部材の3D印刷が続けられるのかどうかということは基本的に自由である。
【0032】
本発明は、挿入体をポリマーと接続する方法を実施する装置にも関する。この装置は、複数の挿入体を供給可能な打抜き格子のための移送装置と、少なくともツーピースの型とを備え、該型は、個別の挿入体を囲んで閉じることができ、かつ型と挿入体との間の空間にモノマーのための供給路を有する。本発明によれば、型により取り囲まれた挿入体の抵抗および/または誘導加熱のための電力供給部が設けられている。
【0033】
このようにすることで、単に電力供給部を追加することによって、モノマーの変換によって生じたポリマーを、これまで可能であったよりはるかに堅固に、特に金属の挿入体と接続することができる。
【0034】
とりわけ誘導加熱装置のための電力供給は、特に、直接接触することなしに行うことができる。誘導加熱装置は、例えば少なくとも1つのコイルを含んでもよい。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1a】方法100および方法を実施する装置50の実施例を示す図である。
図1b方法100および方法を実施する装置50の実施例を示す図である。
図1c方法100および方法を実施する装置50の実施例を示す図である。
図2a】挿入体1の領域1bを防護具4により覆うこと112を包含する方法100の実施例を示す図である。
図2b挿入体1の領域1bを防護具4により覆うこと112を包含する方法100の実施例を示す図である。
図2c挿入体1の領域1bを防護具4により覆うこと112を包含する方法100の実施例を示す図である。
図3a】挿入体1を打ち込むこと210を包含する方法200の実施例を示す図である。
図3b挿入体1を打ち込むこと210を包含する方法200の実施例を示す図である。
図4a】方法100と方法300の射出成形との組み合わせを示す図である。
図4b方法100と方法300の射出成形との組み合わせを示す図である。
図5】モノマー2のための通路5cを有する部材5を使用した方法400の実施例を示す図である。
図6a】部材5の3D印刷411を用いる図5に示された方法400の変形形態を示す図である。
図6b部材5の3D印刷411を用いる図5に示された方法400の変形形態を示す図である。
図7】ポリマー3との形状結合的接続を作製するための挿入体1における構造1fの作製を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明をより良くする他の措置について、本発明の好ましい実施例の記載とともに図をもとにして詳しく説明する。
【0037】
図1aによると、方法100を実施する装置50が移送装置51を備え、移送装置は、ここでは金属のピンとして形成された複数の挿入体1、1’、1’’を有する打抜き格子11を上から下へ送り、挿入体の引渡し後に巻き取る(aufwickeln)。図1aにおいて、装置50の現在作業サイクルにおいて加工される挿入体1と、装置50の次の作業サイクルにおいて加工される予定の別の挿入体1’とが描かれている。
【0038】
挿入体1は、2つの部品52aおよび52bからなる型52に入れられる。型52の両方の部品52a、52bが挿入体の周りで閉じられると、これらの部品間にモノマー2を収容するための空間54が形成される。この空間54は、挿入体1の周囲を取り囲み、それと同時に、モノマー2との接触面をなす挿入体1の表面1cの部分1aを区画する。空間54の左側において、挿入体1は、型52の部品52aに属するジョー(Backe)52cと型52の部品52bに属するジョー52dとの間に挟み込まれている。空間54の右側において、挿入体1は、型52の部品52aに属するジョー52eと型52の部品52bに属するジョー52fとの間に挟み込まれている。
【0039】
この位置にあるとき、挿入体1は、制御可能な電圧源55aと共同で電力供給部55をなす電極55b、55cと接触する。電極55b、55cの代わりに誘導電力供給部55を使用することもできる。
【0040】
方法100のステップ110において、モノマー2が供給路53によって供給された後に、ステップ131において、適当な電圧Uを印加することにより挿入体1が抵抗加熱される。挿入体1の温度Tを、Tを超えて上昇させ、それにより方法100のステップ130が果たされる。それによって再び、方法100のステップ120においてモノマー2がポリマー3へと重合することがもたらされる。
【0041】
図1bは、得られた結果を示す。挿入体1の表面1cの一部をなす接触面1aに沿って、挿入体1がモノマー2から生じたポリマー3と堅固に接続されている。
【0042】
図1cは、時間t上に挿入体1の温度Tの例示的プロファイルを示す。方法100のステップ110においてモノマー2が供給される間、Tは周囲温度に相当する。ステップ130において、温度Tを、Tを超えて上昇させる。温度TがTより高い間に重合120が進行する。ステップ140によると、方法100のこの実施例において、温度Tは、モノマー2がポリマー3へと完全に重合されるまでの間、このレベルに保たれる。続いてステップ150において、温度Tが再び周囲温度に戻される。
【0043】
これに代えて、ステップ150によると、挿入体1の熱負荷が最小化されるべき場合、モノマー2がまだ完全に重合されていず、生じたポリマー3が挿入体1との接触面1aを完全に覆ったばかりのときにすでに温度を低減してもよい。その場合、温度Tを周囲温度まで低減するのではなく、重合120を完了するために必要な温度まで低減する。
【0044】
図2は、方法100の別の実施例を示す。図2aによると、まずステップ112において、防護具4が挿入体1に装着される。続いて、図2bによると、挿入体1を、加熱可能なグリッパ57によって、加熱装置58により温度調節可能であるモノマー2が入った槽56に浸漬した場合(ステップ111)、挿入体1の表面1cの部分1bがモノマー2との接触から守られる。
【0045】
モノマー2と挿入体1との接触面1aにおいて、モノマー2がポリマー3へと重合し、そこで堅固な被覆を形成する。ステップ113における防護具4の引き抜きによって、覆われていた領域1bが再び露出される。このように前処理された挿入体1は、ポリマー3が被せられた領域1aの上と下でそれぞれ電気的に接触可能であり、したがってポリマー3によって密封される、例えば電気ブッシングとして用いることができる。
【0046】
図3aは、部材5に挿入体1を封止一体化する方法200の一実施例を模式的に示す。部材5は、ストッパ5aによって制限される挿入体1のために用意された開口部5bを有する。挿入体1は、まず上記の方法100でポリマー3と接続され、続いて、方法200のステップ210において、開口部5bに打ち込まれる。
【0047】
図3bは、得られた結果を示す。ポリマー3は、部材5の開口部5bにおけるストッパ5aに打ち当たると、挿入体1を部材5に対して密封するシール3aへと変形する。それにより挿入体1を、例えば部材5を通る電気ブッシングとして用いることができる。
【0048】
図4は、3つの挿入体1、1’、1’’をポリマー3と接続する方法100が射出成形と組み合わせられる方法300の一実施例を示す。図4は、わかりやすくするために、部材5をなすプラスチック6の凝固および射出成形型の除去後の状態を示す。
【0049】
図4aは、第1変形形態を示す。この変形形態では、方法300のステップ310において、まず方法100でそれぞれポリマー3と接続された挿入体1、1’、1’’が部材5のための成形型に入れられた。続いて、方法300のステップ320において、プラスチック6が成形型に導入された。プラスチック6が凝固すると部材5ができ、この部材は、それぞれ挿入体1、1’、1’’と接続されたポリマー3を密に包囲する。その際、それぞれポリマー3の表面が少し溶けたことによって封止作用が強化された。
【0050】
図4bは、第2変形形態を示す。この変形形態では、挿入体1、1’、1’’は、モノマー2を被せただけの状態で入れられた。挿入体は、すでに成形型の中に入れたときに、約80℃の成形型の温度によってモノマーが溶融することを阻止するために冷却装置59によって0から50℃の温度に保たれた。
【0051】
この変形形態では、高温のプラスチック6による入熱が、図4bに見て取れるポリマー3へのモノマー2の重合ももたらした。モノマー2を挿入体1、1’、1’’によって、または高温のプラスチック6によって全面包囲し、それにより至る所でポリマー3に変換するために、図4bにおいて6aで示された箇所にもプラスチック6が位置するように成形型が変更された。
【0052】
冷却装置59は非常に動的である。高温のプラスチック6の注入直後に挿入体1、1’、1’’の温度TがTを超えて約30〜50Kに達する。射出成形による部材5の製造中に初めてモノマー2がポリマー3へと重合することには密封がさらに向上するという利点がある。
【0053】
図5は、まずステップ410において、3つの挿入体1、1’、1’’が射出成形された部材5と接合され、続いて方法100でポリマー3と接続される方法400の一実施例を示す。図5は、モノマー2が供給路53を介して通路5cへ導入される時点の瞬間図を示す。続いて、図5に図示されない挿入体1、1’、1’’の温度Tを上昇させる手段により重合を開始することができる。
【0054】
図6は、方法400の一変形形態を示す。図5とは異なり、部材5は、ベースプレート7上に3D印刷による積層構造411によって製造される。この場合、部材5にはモノマー2を収容するための空間5eがあけられている。挿入体1は、適当な時点に加熱可能なグリッパ57によって追加され、続いて部材5の材料が転写される(umdruckt)。空間5eが完全に閉鎖される前に、モノマー2が供給路53を介して空間5eに導入される。
【0055】
図6aは、モノマー2の供給110がまさに進行中の時点の瞬間図を示す。この場合、適当な時点に、挿入体1の温度Tを少なくともTまで上昇させる130ことによって、ポリマー3へのモノマー2の重合120を開始することができる。重合120が進行まだしている間は、部材5の3D印刷411を続けることができる。
【0056】
図6bは、得られた最終結果を示す。挿入体1は、周りを囲むポリマー3からなる環状リングによって取り囲まれている。このリングは、挿入体1に対して永続的に封止されている。ポリマー3は、この場合も部材5の材料が転写されたことにより、この場合も部材5に対して永続的に封止されている。したがって、挿入体1は、全体が部材5の壁に永続的に密に挿通されている。
【0057】
図7は、ポリマー3の付着を改善するために挿入体1に、構造1fを設けることができる態様を模式的に示す。ポリマー3の厚さと構造1fの大きさとはかなり誇張して示されている。ポリマー3は構造1fに係合し、それにより形状結合的な接続が形成される。すなわちポリマー3を挿入体1からもはや外すことができなくなる。
【符号の説明】
【0058】
1、1’、1’’ 挿入体
1a 接触面
1b 領域
1c 表面
1f 構造
2 モノマー
3 ポリマー
3a シール
4 防護具
5 部材
5a ストッパ
5b 開口部
5c 通路
5e 空間
6 プラスチック
6a 箇所
7 ベースプレート
11 打抜き格子
50 装置
51 移送装置
52 型
52a、52b 部品
52c、52d、52e、52f ジョー
53 供給路
54 空間
55 電力供給部
55a 電圧源
55b、55c 電極
56 槽
57 グリッパ
58 加熱装置
59 冷却装置
411 積層構造 3D印刷
100、200、300、400 方法
110、111、112、120、130、131、140、150、210、310、320、410 ステップ
、T 温度
U 電圧
図1a
図1b
図1c
図2a
図2b
図2c
図3a
図3b
図4a
図4b
図5
図6a
図6b
図7