特許第6872616号(P6872616)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6872616耐水素誘起割れ性に優れた圧力容器用鋼材及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6872616
(24)【登録日】2021年4月21日
(45)【発行日】2021年5月19日
(54)【発明の名称】耐水素誘起割れ性に優れた圧力容器用鋼材及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C22C 38/00 20060101AFI20210510BHJP
   C21D 8/02 20060101ALI20210510BHJP
   C21D 9/00 20060101ALI20210510BHJP
   C22C 38/58 20060101ALI20210510BHJP
   C21C 7/04 20060101ALI20210510BHJP
   C21C 7/072 20060101ALI20210510BHJP
   C21D 9/50 20060101ALI20210510BHJP
【FI】
   C22C38/00 301F
   C21D8/02 C
   C21D9/00 L
   C22C38/58
   C21C7/04 C
   C21C7/072 Z
   C21D9/50 101B
【請求項の数】11
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2019-533435(P2019-533435)
(86)(22)【出願日】2017年12月15日
(65)【公表番号】特表2020-509197(P2020-509197A)
(43)【公表日】2020年3月26日
(86)【国際出願番号】KR2017014847
(87)【国際公開番号】WO2018117545
(87)【国際公開日】20180628
【審査請求日】2019年8月19日
(31)【優先権主張番号】10-2016-0178221
(32)【優先日】2016年12月23日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】592000691
【氏名又は名称】ポスコ
【氏名又は名称原語表記】POSCO
(74)【代理人】
【識別番号】110000051
【氏名又は名称】特許業務法人共生国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】チャ,ウ ヨル
(72)【発明者】
【氏名】キム,デ ウ
【審査官】 瀧澤 佳世
(56)【参考文献】
【文献】 韓国公開特許第10−2013−0076570(KR,A)
【文献】 特開2014−005534(JP,A)
【文献】 特開平08−260092(JP,A)
【文献】 特開2015−178647(JP,A)
【文献】 特開平09−227989(JP,A)
【文献】 特開2003−293028(JP,A)
【文献】 国際公開第2015/005023(WO,A1)
【文献】 特開2015−205338(JP,A)
【文献】 中国特許第103451366(CN,B)
【文献】 韓国公開特許第10−2016−0075925(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C22C 38/00
C21C 7/04
C21C 7/072
C21D 8/02
C21D 9/00
C21D 9/50
C22C 38/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
質量%で、炭素(C):0.06〜0.25%、シリコン(Si):0.05〜0.50%、マンガン(Mn):1.0〜2.0%、アルミニウム(Al):0.005〜0.40%、リン(P):0.010%以下、硫黄(S):0.0015%以下、ニオブ(Nb):0.001〜0.03%、バナジウム(V):0.001〜0.03%、チタン(Ti):0.001〜0.03%、クロム(Cr):0.01〜0.20%、モリブデン(Mo):0.05〜0.15%、銅(Cu):0.01〜0.50%、ニッケル(Ni):0.05〜0.50%、カルシウム(Ca):0.0005〜0.0040%、酸素(O):0.0010%以下を含み、残部がFe及びその他の不可避不純物からなり、
微細組織は、面積分率で、30%以下のパーライト及び70%以上のフェライトを含み、
Ca−Al−O複合介在物を数1を満たすように含み、
前記Ca−Al−O複合介在物は破砕されていないものであり、
溶接後熱処理(Post Weld Heat Treatment、PWHT)後の引張強度が485MPa以上であることを特徴とする耐水素誘起割れ性に優れた圧力容器用鋼材。
数1:S1/S2≦0.1
S1は円相当直径で測定したサイズが6μm以上のCa−Al−O複合介在物の面積合計であり、S2はすべてのCa−Al−O複合介在物の面積合計である。
【請求項2】
前記鋼材はN:20〜60質量ppmをさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の耐水素誘起割れ性に優れた圧力容器用鋼材。
【請求項3】
前記鋼材は、溶接後熱処理(Post Weld Heat Treatment、PWHT)後の(Nb,V)(C,N)析出物を0.01〜0.02面積%含み、前記(Nb,V)(C,N)析出物の平均サイズは5〜41nmであることを特徴とする請求項1に記載の耐水素誘起割れ性に優れた圧力容器用鋼材。
【請求項4】
前記鋼材は、溶接後熱処理(Post Weld Heat Treatment、PWHT)後のCLR(Crack Length Ratio、水素誘起割れの長さ比率)が10%以下であることを特徴とする請求項1に記載の耐水素誘起割れ性に優れた圧力容器用鋼材。
【請求項5】
質量%で、炭素(C):0.06〜0.25%、シリコン(Si):0.05〜0.50%、マンガン(Mn):1.0〜2.0%、アルミニウム(Al):0.005〜0.40%、リン(P):0.010%以下、硫黄(S):0.0015%以下、ニオブ(Nb):0.001〜0.03%、バナジウム(V):0.001〜0.03%、チタン(Ti):0.001〜0.03%、クロム(Cr):0.01〜0.20%、モリブデン(Mo):0.05〜0.15%、銅(Cu):0.01〜0.50%、ニッケル(Ni):0.05〜0.50%、カルシウム(Ca):0.0005〜0.0040%、酸素(O):0.0010%以下を含み、残部がFe及びその他の不可避不純物からなるスラブを設ける段階と、
前記スラブを1150〜1300℃に加熱する段階と、
前記加熱されたスラブを950〜1200℃の温度範囲でサイジング圧延した後、冷却して、厚さが80〜180mmであるバー(bar)を得る段階と、
前記バーを1100〜1200℃に加熱する段階と、
前記加熱されたバーを(Ar3+30℃)〜(Ar3+300℃)の温度範囲で仕上げ熱間圧延した後、冷却して、厚さが5〜65mmである熱延鋼板を得る段階と、
前記熱延鋼板を850〜950℃に加熱し、10〜60分間維持した後、常温まで空冷する焼きならし熱処理段階と、を含み、
前記スラブを設ける段階は、
2次精錬後の溶鋼にMetal Ca Wireを100〜250m/分の投入速度で投入する段階と、
前記Metal Ca Wireが投入された溶鋼に不活性ガスを10〜50L/分の吹込量で5〜20分間吹き込む清浄バブリング段階と、を含むことを特徴とする請求項1に記載の耐水素誘起割れ性に優れた圧力容器用鋼材の製造方法。
【請求項6】
前記スラブはN:20〜60質量ppmをさらに含むことを特徴とする請求項に記載の耐水素誘起割れ性に優れた圧力容器用鋼材の製造方法。
【請求項7】
前記Metal Ca Wireは、Ca合金、及びCa合金を包む鋼材で構成され、前記鋼材の厚さは1.2〜1.4mmであることを特徴とする請求項に記載の耐水素誘起割れ性に優れた圧力容器用鋼材の製造方法。
【請求項8】
前記不活性ガスの吹き込みは、取鍋内の不活性ガス吹込箇所を介して行われ、前記不活性ガス吹込箇所は2個であることを特徴とする請求項に記載の耐水素誘起割れ性に優れた圧力容器用鋼材の製造方法。
【請求項9】
前記スラブは、Ca−Al−O複合介在物を数1を満たすように含むことを特徴とする請求項に記載の耐水素誘起割れ性に優れた圧力容器用鋼材の製造方法。
数1:S1/S2≦0.1
S1は円相当直径で測定したサイズが6μm以上のCa−Al−O複合介在物の面積合計であり、S2はすべてのCa−Al−O複合介在物の面積合計である。
【請求項10】
前記サイジング圧延した後のバーのオーステナイト結晶粒サイズは100μm以上であることを特徴とする請求項に記載の耐水素誘起割れ性に優れた圧力容器用鋼材の製造方法。
【請求項11】
前記熱延鋼板を常温まで冷却する段階は、200℃以上の温度において、室温に冷却されるまで多段積置して行うことを特徴とする請求項に記載の耐水素誘起割れ性に優れた圧力容器用鋼材の製造方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐水素誘起割れ性に優れた圧力容器用鋼材及びその製造方法に係り、より詳しくは、硫化水素雰囲気で用いられる圧力容器用鋼材に関し、鋼の合金組成及び製造条件を最適化して、溶接後熱処理(PWHT)後の550MPa級の強度が得られる耐水素誘起割れ性(Hydrogen Induced Cracking、HIC)に優れた圧力容器用鋼材及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、石油化学製造設備、貯蔵タンクなどに用いられる圧力容器鋼材は、使用時間が増加するに伴い、設備の大型化及び鋼材の厚物化が進んでおり、大型構造物を製造するにあたり、母材と共に溶接部の構造的安定性を確保するために、炭素当量(Ceq)を下げ、不純物を最大限に制御している傾向にある。
【0003】
また、HSが大量に含有されている原油生産の増大により、耐水素誘起割れ(HIC)性に対する品質確保が一層厳しくなっている。
【0004】
特に、低品質の原油を採掘、処理、輸送、貯蔵するすべてのプラント設備で用いられる鋼材についても、原油中の湿潤硫化水素によるクラックの発生を抑制する特性が必須なものとして求められている状況である。
【0005】
さらに、プラント設備の事故による環境汚染が全地球的な問題となっており、これを復旧するのに莫大なコストがかかることから、エネルギー産業に用いられる鉄鋼材に要求される耐HIC特性の水準は益々厳しくなる傾向にある。
【0006】
鋼材の水素誘起割れ(HIC)は、次のような原理で発生する。
鋼板が原油に含有されている湿潤硫化水素と接触することによって腐食が起こり、この腐食によって発生した水素原子は、鋼の内部に侵入及び拡散して鋼の内部に原子状態で存在するようになる。以後、上記水素原子が鋼の内部で水素ガスの形態で分子化してガス圧力が発生し、その圧力によって鋼の内部の脆弱な組織(例えば、介在物、偏析帯、内部空隙など)で脆性割れが生成される。かかる割れ(クラック)が次第に成長して材料が耐えられる強度を超えた場合は破壊が起こる。
【0007】
そこで、硫化水素雰囲気で用いられる鋼材の耐水素誘起割れ性を向上させるための方法として、次のような技術が提案された。
【0008】
第一に、銅(Cu)などの元素を添加する方法、第二に、クラックが容易に発生及び伝播する硬化組織(例えば、パーライト相など)を最小限に抑えるか、その形状を制御する方法、第三に、加工工程を変えて、NACT(Normalizing Accelerated Cooling Tempering)、QT、DQTなどの水処理を介して、基地組織を焼戻しマルテンサイト、焼戻しベイナイトなどの硬質組織に形成することでクラック開始に対する抵抗性を増大させる方法、第四に、水素の集積及びクラックの開始点として作用し得る鋼内部の介在物及び空隙などの内部欠陥を制御する方法がある。
【0009】
上記Cuを添加する技術によると、弱酸性雰囲気で材料の表面に安定したCuS皮膜が形成され、水素が材料内部に浸透することを低減する効果があるため、耐水素誘起割れ性を向上させる。しかし、強酸性雰囲気では、かかるCuの添加による効果が大きくないことが知られており、また、Cuの添加によって高温割れが引き起こされ、鋼板の表面にクラックが発生するため、表面研磨などの工程コストが増加するという問題がある。
【0010】
上記硬化組織を最小限に抑えるか、形状を制御する方法は、主に焼きならし(Normalizing)熱処理後に基地相に発生する帯状組織のB.I(Band Index)値を下げることでクラックの伝播速度を遅延させる方法である。
【0011】
これに関する特許文献1には、合金組成を制御したスラブを加熱し、熱間圧延した後に室温で空冷し、Ac1〜Ac3変態点で加熱した後に徐冷する工程により、Banding Indexが0.25以下であるフェライト+パーライトの微細組織が得られ、かかる工程により、引張強度500MPa級の耐HIC特性に優れた鋼が得られる方法が開示されている。
【0012】
しかし、厚さ25mmt以下の薄物材の場合、スラブから最終製品の厚さを得るまで圧延量が大きく増加し、これにより、スラブ状態で存在していたMn濃化層が熱間圧延後に圧延方向に平行且つ帯状に並ぶようになる。また、焼きならし温度での組織は、オーステナイト単相で構成されるが、Mn濃化層の形態と濃度は変わらないため、熱処理後の空冷過程において、再び硬質相の帯状組織(Banded Structure)が生成されるという問題がある。
【0013】
第三の方法は、TMCPなどのような水処理工程を介して基地相の構成をフェライト+パーライトではなく、アシキュラーフェライト(AcicularFerrite)またはベイナイト、マルテンサイトなどの硬質相で構成する方法である。
【0014】
これに関する特許文献2には、合金組成を制御したスラブを加熱し、700〜850℃の温度で仕上げ圧延した後、Ar3−30℃以上の温度で加速冷却を開始して350〜550℃の温度で仕上げる過程により、耐HIC特性を向上させることができる方法が開示されている。
【0015】
また、上記特許文献2には、未再結晶域の圧延時に圧下量を増大させ、加速冷却を介してベイナイトやアシキュラーフェライト組織を得る一般的なTMCP工程により製造される方法が開示されており、基地相の強度を増大させ、帯状組織のようなクラック伝播に弱い組織を回避することにより、耐HIC性を向上させる方法が開示されている。
【0016】
しかし、特許文献2で提示する合金組成ならびに制御圧延及び冷却条件を適用する場合、圧力容器用鋼材に一般的に適用される溶接後熱処理(Post Weld Heat Treatment)後に適切な強度を確保することが難しくなる。また、低温相が生成されるときに発生した高密度の転位によって、逆にPWHTが適用される前の部位やPWHTが適用されていない部位ではクラック開始に対して脆弱となり、特に、圧力容器の造管時に発生した加工硬化率を高めて造管材のHIC特性をさらに悪化させるという問題がある。
【0017】
したがって、上述の従来の方法は、PWHT適用後の引張強度が550MPa級であり、耐水素誘起割れ性(耐HIC特性)を有する圧力容器用鋼材を製作するには限界がある。
【0018】
第四の方法は、スラブ内の介在物を最小限に抑えて清浄度を高めることで、耐HIC特性を増大させる方法である。
【0019】
一例として、特許文献3には、溶鋼中にCaを添加するとき、0.1≦(T.[Ca]−(17/18)×T.[O]−1.25×S)/T[O]≦0.5)の式を満たす範囲となるようにCa含有量を調節することにより、耐HIC特性に優れた鋼材を製造することができる方法が開示されている。
【0020】
上記Caは、HIC割れの開始点となりうるMnS介在物の形状を球状化させ、鋼中のSと反応してCaSを形成させることで耐HIC特性を一部改善させることはできるが、Caが過剰に投入されるか、Alとの割合が適切でない場合、特に、CaOの割合が高い場合には、耐HIC特性が悪化する。また、薄物材の場合、高い累積圧下量によって、粗大となった酸化介在物が圧延過程で介在物の組成と形態に応じて破砕され、最終的には圧延方向に長く分散された形態となる。このとき、分散された介在物の先端は、水素分圧によって応力集中度が非常に高い部分であるため、耐HIC特性に劣るという問題がある。
【0021】
これまで、耐水素誘起割れ性を向上させるために、特許文献3のように、MnSの形成抑制のために鋼材内の硫黄成分を0.001wt%以下の極限に低減するとともに、残留したSが凝固中にMnSを形成しないようにするCa処理技術が開発されてきた。硫化物であるMnSは圧延過程中に、圧延方向に延伸する特徴を有しており、延伸が完了したMnSの開始及び終了の先端部位に水素が集積されて亀裂を生じさせるため、その形成を抑制するためにCaSに変化させることでMnSによる水素誘起割れを抑制した。CaSの場合、圧延過程で延伸せず、球状を維持するようになり、水素が集積される位置が分散され、水素誘起割れの発生が抑制される。しかし、鋼材内の硫黄成分を0.001wt%以下に制御する際に、必ず発生するようになるAl介在物及びCa処理による副作用としてCa酸化によって発生するCaOとの反応によるCa及びAlをともに含有するCa−Al−O複合酸化物を形成するようになる。
【0022】
一方、Ca−Al−O複合酸化物内のCaO組成を制御し、耐水素誘起割れ性能を向上させる技術としては、特許文献4が挙げられる。特許文献4には、介在物のCaO組成制御を介して耐水素誘起割れ性を向上させる製造方法が開示されている。
【0023】
しかし、上述した従来のCa処理技術には以下の課題があり、母材の高強度化の要求性能に対応した耐水素誘起割れ鋼を安定的に製造することが困難であった。
【0024】
最も重要な課題は、溶鋼中に残留したCa及びAlをともに含有するCa−Al−O複合酸化物の破砕を抑制することである。Ca処理の結果、溶鋼中に生成された球状のCa−Al−O複合酸化物の一部が溶鋼中に残留し、鋳造されたスラブの中でもその形態は球状を維持する。
【0025】
しかし、このスラブを圧延すると、球状のCa−Alの同時含有複合酸化物は破砕され、点状に延長された酸化物になり、この破砕された微細空孔に水素が沈積される。これが原因となって、製品に水素誘起割れが発生する。したがって、Ca−Alの同時含有複合酸化物を最大限に除去し、母材内に残存するCa−Alの同時含有複合酸化物は、小さく制御し、球状化することで、Ca−Alの同時含有複合酸化物の破砕を抑制することが重要であったが、従来の技術では、これを十分に抑制することができなかった。
【0026】
さらに、重要な課題は、全体の酸化物が最大限に除去された母材の清浄度の向上である。Ca処理前の大型Al酸化物の効果的な除去方法、及びCa処理後の母材内に残存するCa−Alの同時含有複合酸化物の除去についてはまったく対応方法がなかった。すなわち、従来の技術は、積極的且つ効果的に介在物除去を図ることができず、高い清浄度を安定的に得ることができなかった。
【0027】
上述のように、従来のCa処理技術は、Ca添加時の実收率増大及びS濃度の低減に主に対応してMnSの生成を抑制することができたが、このときの母材に残存するようになる粗大なCa−Alの同時含有複合酸化物の破砕抑制が可能でなく、最近行われている水素誘起割れ加速化テストであるNACEなどの過酷な性能評価試験に対応した従来以上の高強度の耐水素誘起割れ鋼を製造することができなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0028】
【特許文献1】韓国公開特許第2010−0076727号公報
【特許文献2】特開平15−013175号公報
【特許文献3】特開平26−005534号公報
【特許文献4】韓国登録特許第10−1150141号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0029】
本発明が目的とするところは、鋼の合金組成及び製造条件を最適化して、溶接後熱処理(PWHT)後の550MPa級の強度を得るとともに、耐水素誘起割れ性に優れた鋼材及びその製造方法を提供することである。
【0030】
一方、本発明の課題は、上述した内容に限定しない。本発明の課題は、本明細書の内容全体から理解することができるものであり、本発明が属する技術分野で通常の知識を有する者であれば、本発明の付加的な課題を理解するのに何の難しさがない。
【課題を解決するための手段】
【0031】
本発明は、質量%で、炭素(C):0.06〜0.25%、シリコン(Si):0.05〜0.50%、マンガン(Mn):1.0〜2.0%、アルミニウム(Al):0.005〜0.40%、リン(P):0.010%以下、硫黄(S):0.0015%以下、ニオブ(Nb):0.001〜0.03%、バナジウム(V):0.001〜0.03%、チタン(Ti):0.001〜0.03%、クロム(Cr):0.01〜0.20%、モリブデン(Mo):0.05〜0.15%、銅(Cu):0.01〜0.50%、ニッケル(Ni):0.05〜0.50%、カルシウム(Ca):0.0005〜0.0040%、酸素(O):0.0010%以下を含み、残部がFe及びその他の不可避不純物からなり、微細組織は、面積分率で、30%以下のパーライト及び70%以上のフェライトを含み、Ca−Al−O複合介在物を数1を満たすように含むことを特徴とする。
数1:S1/S2≦0.1
S1は円相当直径で測定したサイズが6μm以上のCa−Al−O複合介在物の面積合計であり、S2はすべてのCa−Al−O複合介在物の面積合計である。
【0032】
また、本発明は、質量%で、炭素(C):0.06〜0.25%、シリコン(Si):0.05〜0.50%、マンガン(Mn):1.0〜2.0%、アルミニウム(Al):0.005〜0.40%、リン(P):0.010%以下、硫黄(S):0.0015%以下、ニオブ(Nb):0.001〜0.03%、バナジウム(V):0.001〜0.03%、チタン(Ti):0.001〜0.03%、クロム(Cr):0.01〜0.20%、モリブデン(Mo):0.05〜0.15%、銅(Cu):0.01〜0.50%、ニッケル(Ni):0.05〜0.50%、カルシウム(Ca):0.0005〜0.0040%、酸素(O):0.0010%以下を含み、残部がFe及びその他の不可避不純物からなるスラブを設ける段階と、上記スラブを1150〜1300℃に加熱する段階と、上記加熱されたスラブを950〜1200℃の温度範囲でサイジング圧延した後、冷却して、厚さが80〜180mmであるバー(bar)を得る段階と、上記バーを1150〜1200℃に加熱する段階と、上記加熱されたバーを(Ar3+30℃)〜(Ar3+300℃)の温度範囲で仕上げ熱間圧延した後、冷却して、厚さが5〜65mmである熱延鋼板を得る段階と、上記熱延鋼板を850〜950℃に加熱し、10〜60分間維持した後、常温まで空冷する焼きならし熱処理段階と、を含むことを特徴とする。
【0033】
なお、上記課題の解決手段は、本発明の特徴を列挙したものではない。本発明の様々な特徴とそれに伴う利点及び効果は、以下の具体的な実施形態を参照して、より詳細に理解することができる。
【発明の効果】
【0034】
本発明によると、耐水素誘起割れ性に優れるだけでなく、PWHT後にも550MPa級の引張強度を確保することができるため、圧力容器用素材として適した鋼材を提供することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】Ca−Al−O複合介在物の破砕された写真を走査電子顕微鏡で撮影した写真である。
図2】比較例11のCa−Al−O複合介在物を走査電子顕微鏡で撮影した写真である。
図3】発明例1のCa−Al−O複合介在物を走査電子顕微鏡で撮影した写真である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明の好ましい実施形態を説明する。しかし、本発明の実施の形態は、いくつかの他の形態に変形することができ、本発明の範囲が以下説明する実施形態に限定されるものではない。また、本発明の実施の形態は、当該技術分野で平均的な知識を有する者に本発明をさらに完全に説明するために提供されるものである。
【0037】
本発明者らは、引張強度が550MPa級でありながら、耐水素誘起割れ(HYDROGEN INDUCED CRACKING、HIC)性に優れ、原油などの精製、輸送及び貯蔵などの目的で好適に用いることができる鋼材を提供するために深く研究した。その結果、スラブの製造時のCa投入工程及び清浄バブリング工程を精密に制御して粗大なCa−Al−O複合介在物の形成を抑制し、合金組成及び製造条件を最適化することにより、PWHT後の強度の低下がなく、耐HIC特性に優れた圧力容器用鋼材を提供することができることを確認し、本発明を完成するに至った。
【0038】
耐水素誘起割れ性に優れた圧力容器用鋼材
以下、本発明の耐水素誘起割れ性に優れた圧力容器用鋼材について詳細に説明する。
【0039】
本発明の耐水素誘起割れ性に優れた圧力容器用鋼材は、質量%で、炭素(C):0.06〜0.25%、シリコン(Si):0.05〜0.50%、マンガン(Mn):1.0〜2.0%、アルミニウム(Al):0.005〜0.40%、リン(P):0.010%以下、硫黄(S):0.0015%以下、ニオブ(Nb):0.001〜0.03%、バナジウム(V):0.001〜0.03%、チタン(Ti):0.001〜0.03%、クロム(Cr):0.01〜0.20%、モリブデン(Mo):0.05〜0.15%、銅(Cu):0.01〜0.50%、ニッケル(Ni):0.05〜0.50%、カルシウム(Ca):0.0005〜0.0040%、酸素(O):0.0010%以下を含み、残部がFe及びその他の不可避不純物からなり、微細組織は、面積分率で、30%以下のパーライト及び70%以上のフェライトを含み、Ca−Al−O複合介在物を数1を満たすように含む。
数1:S1/S2≦0.1
S1は円相当直径で測定したサイズが6μm以上のCa−Al−O複合介在物の面積合計であり、S2はすべてのCa−Al−O複合介在物の面積合計である。
【0040】
まず、本発明の合金組成について詳細に説明する。以下、各元素の含有量の単位は、特別な記載がない限り質量%を意味する。
【0041】
C:0.06〜0.25%
炭素(C)は、鋼の強度確保において最も重要な元素であるため、適切な範囲内で鋼中に含有されることが好ましい。
【0042】
本発明の場合、炭素(C)が0.06%以上添加されると、目標とする水準の強度を確保することができる。但し、その含有量が0.25%を超えると、中心部の偏析度が高くなり、焼きならし熱処理後にフェライト及びパーライト組織ではなく、マルテンサイトやMA相などが形成されて強度や硬度が上昇しすぎるおそれがある。特に、MA相の形成される場合にはHIC特性が阻害されるという問題がある。
【0043】
したがって、本発明では、Cの含有量を0.06〜0.25%に制限することが好ましく、より好ましくは0.10〜0.20%、さらに好ましくは0.10〜0.15%に制限する。
【0044】
Si:0.05〜0.50%
シリコン(Si)は、置換型元素として固溶強化を通じて鋼材の強度を向上させ、強力な脱酸効果を有しているため、清浄鋼の製造に必須の元素である。そのために、Siを0.05%以上添加することが好ましいが、大量に添加する場合には、MA相を生成させ、フェライト基地の強度を過度に増大させ、耐HIC特性及び衝撃靭性などの劣化をもたらす可能性がある。したがって、シリコン(Si)含有量の上限を0.50%に制限することが好ましい。
【0045】
したがって、本発明では、Si含有量を0.05〜0.50%に制限することが好ましく、より好ましくは0.05〜0.40%、さらに好ましくは0.20〜0.35%に制限する。
【0046】
Mn:1.0〜2.0%
マンガン(Mn)は、固溶強化により強度を向上させるのに有用な元素である。そのために、Mnを1.0%以上添加することが好ましいが、その含有量が2.0%を超えると、中心偏析が増大し、Sとともに形成されたMnS介在物の分率が増大し、介在物によって耐水素誘起割れ性が低下する。また、硬化能が過度に増大し、遅い冷却速度でも20t以下の薄物材では、低温変態相を生成させ、靭性を劣化させる可能性がある。
【0047】
したがって、本発明では、Mn含有量を1.0〜2.0%に制限することが好ましく、より好ましくは1.0〜1.7%、さらに好ましくは1.0〜1.5%に制限する。
【0048】
Al:0.005〜0.40%
アルミニウム(Al)は、上記Siとともに製鋼工程における強力な脱酸剤の一つであって、そのためには0.005%以上添加することが好ましい。しかし、その含有量が0.40%を超えると、脱酸の結果物として生成される酸化性介在物のうちAlの分率が過度に増大してサイズが粗大化し、精錬中に除去が難しくなるという問題があり、酸化性介在物によって耐水素誘起割れ性が低下するという問題がある。
【0049】
したがって、本発明では、Al含有量を0.005〜0.40%に制限することが好ましく、より好ましくは0.1〜0.4%、さらに好ましくは0.1〜0.35%に制限する。
【0050】
P及びS:それぞれ0.010%以下、0.0015%以下
リン(P)及び硫黄(S)は、結晶粒界に脆性を誘発するか、粗大な介在物を形成して脆性を誘発する元素であって、鋼の脆性亀裂伝播抵抗性の向上のために、上記P及びSの含有量をそれぞれ0.010%以下、0.0015%以下に制限することが好ましい。
【0051】
P及びSの下限は特に制限する必要がないが、0%で制御するために、過度なコストがかかることがあるため、0%は除外される。
【0052】
Nb:0.001〜0.03%
ニオブ(Nb)は、NbCまたはNbCNの形で析出し、母材の強度を向上させるとともに、再結晶温度を上昇させ、未再結晶圧下量を増大させることで、初期オーステナイト結晶粒度を微細化するという効果がある。
【0053】
そのために、上記Nb含有量を0.001%以上添加することが好ましいが、その含有量が多すぎると、未溶解のNbがTiNb(C,N)の形で生成され、UT不良及び衝撃靭性の劣化、そして、耐水素誘起割れ性を阻害する要因となるため、その含有量を0.03%以下に制限することが好ましい。
【0054】
したがって、本発明では、Nb含有量を0.001〜0.03%に制限することが好ましく、より好ましくは0.005〜0.02%、さらに好ましくは0.007〜0.015%に制限する。
【0055】
V:0.001〜0.03%
バナジウム(V)は、スラブ再加熱時にほぼすべて再固溶され、後続する圧延過程で析出や固溶による強化効果は不十分であるが、PWHTなどの熱処理過程で非常に微細な炭窒化物として析出し、強度を向上させるという効果がある。
【0056】
そのために、上記Vを0.001%以上添加する必要があるが、その含有量が0.03%を超えると、溶接部の強度及び硬度を過度に増大させ、圧力容器加工中に表面クラックなどの要因として作用する可能性がある。また、製造コストが急激に上昇し、経済的に不利になるという問題がある。
【0057】
したがって、本発明は、V含有量を0.001〜0.03%に制限することが好ましく、より好ましくは0.005〜0.02%、さらに好ましくは0.007〜0.015%に制限することが好ましい。
【0058】
Ti:0.001〜0.03%
チタン(Ti)は、スラブ再加熱時にTiNとして析出し、母材及び溶接熱影響部の結晶粒成長を抑制し、低温靭性を大幅に向上させる元素である。
【0059】
そのためには0.001%以上添加されることが好ましいが、その含有量が0.03%を超えると、連続鋳造ノズルの詰まりが発生したり、中心部晶出による低温靭性が低下する可能性がある。また、Nと結合して厚さ中心部に粗大なTiN析出物が形成される場合、水素誘起割れの開始点として作用することがあるため好ましくない。
【0060】
したがって、本発明では、Ti含有量を0.001〜0.03%に制限することが好ましく、より好ましくは0.010〜0.025%、さらに好ましくは0.010〜0.018%に制限する。
【0061】
Cr:0.01〜0.20%
クロム(Cr)は、固溶による降伏強度及び引張強度を増大させるという効果は不十分であるが、焼戻しやPWHT熱処理中にセメンタイトの分解速度を遅らせることで強度低下を防止するという効果がある。
【0062】
上述の効果を得るためには、Crを0.01%以上添加することが好ましいが、その含有量が0.20%を超えると、M23などのようなクロムリッチ(Cr−Rich)な粗大炭化物のサイズ及び分率が増大して衝撃靭性が大きく低下し、製造コストが上昇し、溶接性が低下するという問題がある。
【0063】
したがって、本発明では、Cr含有量を0.01〜0.20%に制限することが好ましい。
【0064】
Mo:0.05〜0.15%
モリブデン(Mo)は、上記Crのように焼戻しまたはPWHT熱処理中に発生する強度低下を防止するのに有効な元素であって、Pなどの不純物の粒界偏析による靭性の低下を防止するという効果もある。また、フェライト中の固溶強化元素であって、基地相の強度を増大させるという効果がある。
【0065】
上述の効果を得るためには、Moを0.05%以上添加することが好ましい。しかし、Moも高価な元素であって、過度に添加する場合には、製造コストが大きく上昇する可能性があるため、その上限を0.15%に制限することが好ましい。
【0066】
Cu:0.01〜0.50%
銅(Cu)は、フェライト内の固溶強化により基地相の強度を大幅に向上させることができるだけでなく、湿潤硫化水素雰囲気での腐食を抑制するという効果があるため、本発明では有利な元素である。
【0067】
上述した効果を十分に得るためには、Cuを0.01%以上添加することが好ましい。しかし、その含有量が0.50%を超えると、鋼の表面にスタークラックを誘発する可能性が大きくなる。また、Cuは高価な元素であるため、製造コストが大きく上昇するおそれがある。
【0068】
したがって、本発明では、Cu含有量を0.01〜0.50%に制限することが好ましい。
【0069】
Ni:0.05〜0.50%
ニッケル(Ni)は、低温で積層欠陥を増大させて転位の交差すべり(Cross Slip)を容易に形成して衝撃靭性を向上させ、硬化能を向上させて強度を上昇させるのに重要な元素である。
【0070】
上述の効果を得るためには、Niを0.05%以上添加することが好ましい。しかし、その含有量が0.50%を超えると、硬化能が過度に上昇し、Niが他の硬化能向上元素に比べて高価であることから、製造コストを上昇させるおそれがあるため好ましくない。
【0071】
したがって、本発明では、Ni含有量を0.05〜0.50%に制限することが好ましく、より好ましくは0.10〜0.40%、さらに好ましくは0.10〜0.30%に制限する。
【0072】
Ca:0.0005〜0.0040%
Alによる脱酸後にカルシウム(Ca)を添加すると、MnS介在物を形成するSと結合してMnSの生成を抑制するとともに、球状のCaSを形成し、水素誘起割れによるクラックの発生を抑制するという効果がある。
【0073】
本発明では、不純物として含有されるSからCaSを十分に形成させるために、Caを0.0005%以上添加することが好ましい。しかし、その添加量が多すぎると、CaSを形成した後に残ったCaがOと結合して粗大な酸化性介在物を生成し、これが圧延時に延伸、破壊されて水素誘起割れを助長するという問題があるため、その上限を0.0040%に制限することが好ましい。
【0074】
したがって、本発明では、Ca含有量を0.0005〜0.0040%に制限することが好ましい。
【0075】
0:0.0010%以下
本発明では、MnSの生成を抑制するためにS含有量を最大限に抑えなければならず、脱硫工程が効率的に行われるように、溶鋼中に溶解される酸素濃度を最大限に抑える。したがって、介在物に含有された酸素の総量が鋼材内の酸素の総量とほぼ一致する。
【0076】
優れたHIC特性を確保するためには、介在物のサイズに加えて、介在物の総量も制限することが好ましいため、O含有量は0.0010%以下に制限することが好ましい。
【0077】
本発明の残りの成分は鉄(Fe)である。但し、通常の製造過程では、原料や周囲の環境から意図されない不純物が必然的に混入することがあるため、これを排除することはできない。これら不純物は、通常の製造過程における技術者であれば誰でも分かることができるものであるため、そのすべての内容を具体的に本明細書に記載しない。
【0078】
このとき、上述した成分の他に、N:20〜60質量ppmをさらに含む。
【0079】
上記Nは、鋼(板材)のEGW(Electro Gas Welding)のような1パスの大入熱溶接時に上記Tiと結合して析出物を形成して、CGHAZ靭性を向上させるという効果がある。上述の効果を得るためには、窒素(N)を20〜60質量ppm含むことが好ましい。
【0080】
以下、本発明による鋼材の微細組織について詳細に説明する。
【0081】
本発明による鋼材の微細組織は、面積分率で、30%以下のパーライト及び70%以上のフェライトを含む。但し、面積分率を計算するとき、介在物及び析出物は除いて測定した値を意味する。
【0082】
パーライトが30%を超えると、低温衝撃靭性が劣化する可能性があり、パーライト帯状組織により耐HIC特性も低下する。フェライト分率が70%未満の場合には、本発明で提示する適切な引張強度を確保することができない。
また、Ca−Al−O複合介在物を数1を満たすように含む。
数1:S1/S2≦0.1
S1は円相当直径で測定したサイズが6μm以上のCa−Al−O複合介在物の面積合計であり、S2はすべてのCa−Al−O複合介在物の面積合計である。
【0083】
数1が0.1を超えると、圧延前に6μm以上のCa−Al−O複合介在物が多く存在したことを意味し、この場合、一部粗大なCa−Al−O複合介在物が圧延時に破砕され、水素吸着原として作用するため、耐水素誘起割れ性が劣化する。
【0084】
このとき、上記Ca−Al−O複合介在物は破砕されないものであってもよい。
【0085】
Ca−Al−O複合介在物が破砕される場合には、図1のように点状に延長された酸化物となって微細空孔が形成され、かかる微細空孔に水素が沈積され、水素誘起割れが発生するおそれがある。
【0086】
数1を満たす場合であっても、本発明で提示したAr3+30℃未満で仕上げ熱間圧延された場合には、破砕されたCa−Al−O複合介在物が存在し、耐水素誘起割れ性が劣化する可能性がある。
【0087】
このとき、本発明の鋼材は、溶接後熱処理(Post Weld Heat Treatment、PWHT)後の(Nb,V)(C,N)析出物を0.01〜0.02面積%含み、上記(Nb,V)(C,N)析出物の平均サイズは5〜30nmである。
【0088】
これにより、溶接後熱処理(Post Weld Heat Treatment、PWHT)後の引張強度を485MPa以上確保することができる。
【0089】
また、溶接後熱処理(Post Weld Heat Treatment、PWHT)後のCLRは10%以下である。より好ましくは5%以下、さらに好ましくは1%以下である。このとき、板の長さ方向への水素誘起割れの長さ比率であるCLRは、関連国際規格であるNACE TM0284に準じて1気圧のHSガスで飽和された5%NaCl+0.5%CHCOOH溶液に試験片を96時間浸漬した後、超音波探傷法により亀裂の長さを測定し、試験片の長さ方向にそれぞれの亀裂の長さ合計を試験片全体の長さで割った値である。
【0090】
一方、上記溶接後熱処理は、鋼材を425℃まで加熱した後、595〜630℃の温度範囲まで55〜100℃/hrの昇温速度で昇温させ、60〜180分間維持し、55〜100℃/hrの冷却速度で425℃まで冷却した後、常温まで空冷して行うものである。
【0091】
耐水素誘起割れ性に優れた圧力容器用鋼材の製造方法
以下、本発明の耐水素誘起割れ性に優れた圧力容器用鋼材の製造方法について詳細に説明する。
【0092】
簡単に説明すると、本発明の圧力容器用鋼材は、上述した合金組成を有するスラブを設ける段階と、そして、これを[サイジング圧延−仕上げ熱間圧延−焼きならし熱処理]の工程を経て目標とする物性を有する鋼材を製造する段階に分けられる。
【0093】
スラブ準備段階
上述した合金組成を満たすスラブを設ける。
【0094】
このとき、上記スラブを設ける段階は、2次精錬後の溶鋼にMetal Ca Wireを100〜250m/分の投入速度でCa投入量が0.00005〜0.00050kg/tonとなるように投入する段階と、上記Metal Ca Wireが投入された溶鋼に不活性ガスを10〜50L/分の吹込量で5〜20分間吹き込む清浄バブリング段階と、を含む。
【0095】
これは、スラブのCa及びOの含有量を制御してMnSの生成を抑制し、介在物総量を制御するためである。また、Ca−Al−O複合介在物を上述した関係式1を満たすように制御するためである。Ca及びAlをともに含有する複合介在物が多く生成されるか、粗大化が進むと圧延時に破砕される介在物が増大し、耐水素誘起割れ性を確保することができない。
【0096】
2次精錬前の工程は、一般の工程と同じであるため、特に限定しない。かかる一般の工程に従う場合、Ca投入前の溶鋼内介在物の総量は2〜5ppmである。
【0097】
(Ca投入段階)
Metal Ca Wireの投入速度が100m/分未満の場合には、Caが取鍋(Ladle)の上部で溶融し、鉄静圧の効果が少なくなるため、Caの実收率が劣化し、投入量が増加するためである。これに対し、250m/分を超えると、取鍋の底部までMetal Ca Wireが接触し、取鍋の耐火物が溶損されるという問題が発生するため、操業の安定性を確保することができないという問題点がある。したがって、Metal Ca Wireの投入速度は、100〜250m/分であることが好ましく、より好ましくは120〜200m/分、さらに好ましくは140〜180m/分である。
【0098】
Ca投入量が0.00005kg/ton未満の場合には、凝固時の中心部にMnSが発生し、耐水素誘起割れ性が劣化し、Ca投入量が0.00050kg/tonを超えると、耐火物のAl成分と反応し、耐火物の溶損が加速化し、生産性の確保が難しく、操業の安定性を確保することができない。したがって、Ca投入量は0.00005〜0.00050kg/tonであることが好ましく、より好ましくは0.00010〜0.00040kg/ton、さらに好ましくは0.00015〜0.00030kg/tonである。
【0099】
このとき、上記Meatal Ca Wireは、Ca合金、及びCa合金を包む鋼材で構成され、上記鋼材の厚さは1.2〜1.4mmである。
【0100】
上記鋼材の厚さが1.2mm未満の場合には、Caが取鍋上部で溶融し、鉄静圧の効果が少なくなるため、Caの実收率が劣化し、投入量が増加するようになる。これに対し、上記鋼材の厚さが1.4mmを超えると、取鍋の底部までMetal Ca Wireが接触し、取鍋の耐火物が溶損されるという問題が発生するため、操業の安定性を確保することができないという問題点がある。
【0101】
(清浄バブリング段階)
吹込量が10L/分未満の場合には、不活性ガスに付着して除去されるAlCluster、及びCaとAlの同時含有複合介在物の量が少なくなり、清浄度が劣化し、耐水素誘起割れ性を確保することができない。吹込量が50L/分を超えると、撹拌力が強くなり、溶鋼表面の裸湯が発生するとともに、スラグ混入が発生して清浄度が劣化し、同様に耐水素誘起割れ性を確保することができなくなる。したがって、不活性ガスの吹込量は10〜50L/分であることが好ましく、より好ましくは15〜40L/分、さらに好ましくは20〜30L/分である。
【0102】
吹込時間が5分未満の場合には、不活性ガスに付着して除去されるAlCluster、及びCaとAlの同時含有複合介在物の量が少なくなり、清浄度が劣化し、耐水素誘起割れ性を確保することができない。吹込時間が20分を超えると、溶鋼内の温度の低下が大きくなり、取鍋内の温度勾配が発生して清浄度が劣化し、同様に耐水素誘起割れ性を確保することができなくなる。したがって、吹込時間は5〜20分であることが好ましく、より好ましくは7〜17分、さらに好ましくは10〜14分である。
【0103】
ここで、上記不活性ガスの吹込は、取鍋内の不活性ガス吹込箇所を介して行われ、上記不活性ガス吹込箇所は2個存在する。
【0104】
ガス吹込箇所が1個である場合には、溶鋼内に不均一領域が存在し、 AlCluster、及びCaとAlの同時含有複合介在物の除去能が劣化し、3個以上である場合には、ガス吹込時に重なる部分が発生して撹拌力が強くなり、溶鋼表面の裸湯が発生するとともに、スラグ混入が発生して清浄度が劣化するようになる。
【0105】
一方、上述したCa投入段階及び清浄バブリング段階の制御を介して製造されたスラブは、Ca−Al−O複合介在物を数1を満たすように含む。
数1:S1/S2≦0.1
S1は円相当直径で測定したサイズが6μm以上のCa−Al−O複合介在物の面積合計であり、S2はすべてのCa−Al−O複合介在物の面積合計である。
【0106】
スラブ加熱段階
上記スラブを1150〜1300℃に加熱する。
1150℃以上に加熱することは、鋳造中に形成されたTiやNbの炭窒化物またはTiNb(C,N)の粗大な晶出物などを再固溶させるためである。
【0107】
また、サイジング圧延前のオーステナイト(Austenite)を再結晶温度以上まで加熱させて維持することにより、組織を均質化し、サイジング圧延終了温度を十分に高く確保して介在物の破砕を最小限に抑えるためである。
【0108】
但し、高すぎる温度でスラブを加熱する場合には、高温における酸化スケールにより、問題が発生する可能性があり、加熱及び維持に伴うコストの増大により製造コストが過度に増大することがあるため、スラブ加熱温度の上限は1300℃であることが好ましい。
【0109】
サイジング圧延段階
上記加熱されたスラブを950〜1200℃の温度範囲でサイジング圧延した後、冷却して、厚さが80〜180mmであるバー(bar)を得る。上記サイジング圧延は、仕上げ熱間圧延時に圧下比の増大に伴う帯状組織の生成を悪化させ、仕上げ熱間圧延段階における総圧下量を減らし、介在物の破砕を最小限に抑える。
【0110】
サイジング圧延を行わずに熱間圧延する場合には、未再結晶領域における累積圧下量により、酸化性介在物が破砕され、水素誘起割れの開始点として作用する可能性があるため、サイジング圧延の圧延終了温度は950℃以上とすることが好ましい。但し、中間圧延の目標厚さの80〜180mmであるバーを得る段階で空気中の冷却速度や圧延間の通板速度などを考慮すると、サイジング圧延温度は950℃〜1200℃であることが好ましい。
【0111】
サイジング圧延終了後のバー厚さが180mmを超えると、仕上げ圧延時のバー厚さに比べて最終鋼板の厚さの比が増大するため、圧延圧下比が大きくなり、未再結晶領域で仕上げ圧延される可能性が増大する。未再結晶圧下量の増大時に、焼きならし前のオーステナイト内部酸化介在物の破砕によって耐水素誘起割れ性が低下する可能性がある。したがって、上記サイジング圧延終了後のバー厚さは80〜180mmであることが好ましく、100〜160mmであることがより好ましく、120〜140mmであることがさらに好ましい。
【0112】
このとき、上記サイジング圧延後のバーのオーステナイト結晶粒サイズは100μm以上、好ましくは130μm以上、より好ましくには150μm以上であってもよく、目標とする強度及びHIC特性に応じて適切に調節することができる。
【0113】
バー加熱段階
上記バーを1100〜1200℃に加熱する。
【0114】
1100℃以上に加熱することは、仕上げ圧延時の再結晶温度以上で圧延が行われるようにするためである。
【0115】
但し、加熱温度が高すぎる場合には、高温で生成されたTiNなどの析出相の成長速度が速くなる可能性があるため、再加熱温度は1200℃以下であることが好ましい。
【0116】
仕上げ熱間圧延段階
上記加熱されたバーを(Ar3+30℃)〜(Ar3+300℃)の温度範囲で仕上げ熱間圧延した後、冷却して、厚さが5〜65mmである熱延鋼板を得る。これは、介在物の破砕を防止し、再結晶による結晶粒微細化が同時に起こる温度で仕上げ熱間圧延するためである。
【0117】
仕上げ熱間圧延温度がAr3+30℃未満の場合には、粗大な複合介在物が破砕されたり、MnS介在物が延伸して、水素誘起クラックの発生及び伝播の直接的原因となる。したがって、上記仕上げ熱間圧延は、AR3+30℃以上で終了することが好ましく、より好ましくはAR3+50℃以上、さらに好ましくはAR3+60℃以上で終了することができる。
【0118】
これに対し、Ar3+300℃を超えると、オーステナイト結晶粒が過度に粗大になるため、強度及び衝撃靭性が劣化するおそれがある。
【0119】
このとき、スラブを製造する製鋼工程で溶鋼内の溶存水素量が1.3ppm以上の場合には、焼きならし熱処理前仕上げ圧延後、200℃以上の温度において室温に冷却されるまで多段積置して冷却することができる。
【0120】
上記のように多段積置冷却を行う場合には、鋼材内に溶存した水素を放出することにより、水素による内部微細割れをさらに効果的に抑制することができ、最終的には耐水素誘起割れ性を向上させることができる。
【0121】
焼きならし熱処理段階
上記熱延鋼板を850〜950℃に加熱し、10〜60分間維持した後、常温まで空冷して焼きならし熱処理する。
【0122】
上記焼きならし熱処理時における温度が850℃未満であるか、維持時間が10分未満の場合には、圧延後の冷却中に生成された炭化物や粒界に偏析された不純物元素の再固溶が円滑に行われず、熱処理後の鋼材の低温靭性が大きく低下するという問題が発生する。これに対し、その温度が950℃を超えるか、維持時間が60分を超えると、オーステナイト(Austenite)の粗大化、Nb(C,N)、V(C,N)などの析出相の粗大化により、靭性が低下する可能性がある。
【実施例】
【0123】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明する。但し、下記の実施例は、本発明を例示してより詳細に説明するためのものであり、本発明の権利範囲を限定するためのものではないという点に留意する必要がある。本発明の権利範囲は、特許請求の範囲に記載された事項とそれから合理的に類推される事項によって決定されるものである。
【0124】
(実施例)
表2のスラブ製造工程を適用し、表1の組成を有する厚さ300mmのスラブを設けた。このとき、Metal Ca wireのCa合金を包む鋼材外皮の厚さは1.3mmであり、清浄バブル工程の取鍋内の不活性ガス吹込箇所は2個として固定した。
【0125】
上記スラブを表2の熱延鋼板の製造工程を適用し、厚さ65mmの熱延鋼板を得た後、冷却時の製品内に残留する水素の放出のために、200℃以上の温度において保温カバーを用いて多段積置し、890℃で下記表2の焼きならし時間に応じて熱処理をし、最終鋼材を得た。
Ar3は下記関係式を用いて計算した値を用いた。
Ar3=910−310C−80Mn−20Cu−15Cr−55Ni−80Mo+0.35(Plate Thickness−8)
【0126】
上記鋼材の微細組織及びCa−Al−O介在物を観察して表3に記載した。
【0127】
微細組織の分率は、光学顕微鏡を用いて倍率100倍及び200倍で画像を測定した後、画像解析(Image Analyzer)を用いてフェライト(F)とパーライト(P)の面積分率を測定した。
【0128】
Ca−Al−O複合介在物は、EDSにより組成分析し、介在物の組成がCa及びAlをともに含有した複合酸化物でありながら、円相当直径で測定したサイズが6μm以上の介在物の面積合計をS1とし、Ca及びAlをともに含有したすべての複合介在物の全体の面積合計をS2とした。
【0129】
また、破砕されたCa−Al−O介在物を観察できるか否かを示した。
【0130】
また、PWHT(溶接後熱処理)前後の引張強度の変化を測定し、PWHT後の析出物を観察して表3に記載した。このとき、PWHT工程を模擬するために、上記鋼材を425℃まで加熱した後、上記温度から610℃まで80℃/hrの昇温速度で昇温させた後、その温度において100分間維持し、上記昇温速度と同一の速度で425℃まで冷却した後、常温まで空冷した。
【0131】
炭窒化物の場合、Nb(C,N)析出物は、Carbon Extraction Replica及びTEM(Transmission Electron Microscopy)を介して分率及びサイズを測定し、V(C,N)の場合、TEMの回折分析を通じて析出物の結晶構造を確認し、APM(Atom Probe Tomography)の分率及びサイズを測定して(Nb,V)(C,N)析出物の分率及びサイズを計算した。
【0132】
一方、HIC評価は、PWHT後の鋼材を対象に行い、CLR(Crack Length Ratio、水素誘起割れの長さ比率)及びCTR(Crack Thickness Ratio、水素誘起割れの厚さ比率)を測定した。
【0133】
CLRは、関連国際規格であるNACE TM0284に準じて1気圧のHSガスで飽和された5%NaCl+0.5%CHCOOH溶液に試験片を96時間浸漬した後、超音波探傷法により亀裂の長さを測定し、試験片の長さ方向にそれぞれの亀裂長さの合計を試験片全体の長さで割った値で計算して評価した。CTRは、同一の条件で長さの代わりに厚さを測定して評価したものである。
【0134】
【表1】
【0135】
【表2】
【0136】
【表3】
【0137】
比較例1の場合、本発明で提示する炭素(C)含有量の範囲を超えた場合であって、パーライト分率が高すぎるため、焼きならし後の引張強度が625.3MPaと非常に高いことが確認された。また、高い炭素含有量により、中心偏析度が増大し、結果的に耐HIC(水素誘起割れ)特性が劣化することが確認できる。
【0138】
比較例2、3の場合にはそれぞれ、マンガン(Mn)含有量及び硫黄(S)含有量の範囲を超えた場合であって、フェライト/パーライト分率、(Nb,V)(C,N)析出物などは基準条件をすべて満たしたが、鋼板中心部のMnS延伸介在物の生成により、耐HIC特性が劣化することが確認できる。
【0139】
比較例4の場合には、Ca処理及び清浄バブリング工程、熱間圧延及び熱処理のすべての工程条件は満たしたが、Nb及びVの含有量が本発明で提示する含有量範囲に達しない場合であって、(Nb,V)(C,N)析出物の分率が小さく、PWHT後の引張強度値が482.4MPaと低かった。
【0140】
比較例5及び6の場合には、Ca投入量が本発明で提示する範囲に達していない場合であって、鋼の清浄度、すなわち、総酸素含有量は低く制御されたがMnS粗大化による中心偏析欠陥が過大となり、耐HIC特性が劣化することが確認できる。
【0141】
比較例7の場合には、バブリングガス吹込量が本発明で提示した範囲に達していない場合であって、粗大なCa−Al−O複合介在物が多く形成され、S1/S2が0.1を超え、耐HIC特性が劣化することが確認できる。
【0142】
比較例8の場合には、バブリングガス吹込量が本発明で提示した範囲を超えた場合であって、バブリング過程における裸湯による再酸化のために、粗大なCa−Al−O複合介在物が多く形成され、S1/S2が0.1を超え、耐HIC特性が劣化することが確認できる。
【0143】
比較例9及び10の場合には、Metal Ca wireの投入速度が、本発明で提示した範囲に達していない場合であって、Caの実收率が劣化し、その結果、耐HIC特性が劣化することが確認できる。
【0144】
比較例11及び12の場合には、バブリング時間が本発明で提示した範囲を満たすことができず、非常に短時間の間だけ行われた場合であり、介在物の浮上分離時間が十分でなく、耐HIC特性が劣化することが確認できる。
【0145】
比較例13及び14の場合には、サイジング圧延時のバー厚さを十分に小さい厚さで圧延できず高温終了するため、後の仕上げ熱間圧延における圧延終了温度が非常に低く制御された場合であって、鋼の清浄度は確保されたが、二相域圧延による酸化介在物の破砕により、耐HIC特性が劣化することが確認できる。
【0146】
比較例15及び16の場合には、サイジング圧延が本発明で提示した条件を満たしたが、仕上げ熱間圧延における圧延終了温度が非常に低く制御された場合であって、耐HIC特性が劣化することが確認できる。
【0147】
比較鋼17及び18の場合には、焼きならし熱処理時間が本発明で提示した範囲を超えた場合であって、炭窒化物のサイズが長時間熱処理区間で粗大化し、PWHT後の強度が非常に低くなることを示している。
【0148】
これに対し、本発明で提案する合金組成及び製造条件をすべて満たす発明例1〜6の場合には、微細組織の分率及びPWHT後の炭窒化物が十分に形成されたため、PWHT前後の引張強度値が490〜670MPaであり、表面状態が良好であり、鋼の高い清浄性が確保されて、耐水素誘起割れ性に非常に優れる。
【0149】
図1及び図2はそれぞれ比較例11及び発明例1の介在物電解抽出後の走査電子顕微鏡で観察した写真である。
【0150】
比較例11の場合には、バブリング時間が本発明で提示した範囲を満たすことができず、非常に短時間の間だけ行われた場合であって、不足する浮上分離時間により直径52.5μmの粗大酸化介在物が鋼中に存在することが確認できる。これに対し、発明例1の場合には、本発明で提案する合金組成及び製造条件をすべて満たし、介在物の直径が4.3μmと非常に小さく制御されたことを確認できる。
【0151】
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明の権利範囲はこれに限定されず、特許請求の範囲に記載された本発明の技術的思想から外れない範囲内で多様な修正及び変形が可能であるということは、当技術分野の通常の知識を有する者には明らかである。
図1
図2
図3