【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、ターボマシンの駆動軸用の改良されたベアリング装置を提供することであり、このベアリング装置は、従来の遠心ターボ圧縮機で遭遇する欠点を少なくとも部分的に克服することができる。
【0008】
本発明の他の目的は、丈夫で、信頼性が高く、製造および組立てが容易なベアリング装置を提供することであり、このベアリング装置は、製造コストを低減することができる。
【0009】
本発明によれば、このようなベアリング装置は、駆動軸を回転可能に支持するように構成されたラジアルガスベアリングを含み、ラジアルガスベアリングは、駆動軸を取り囲むように構成されたラジアルベアリング面を有するガスベアリングスリーブを含み、ガスベアリングスリーブはモリブデンまたはモリブデン合金で形成されることを特徴とする。
【0010】
モリブデンは、以前に使用された硬質材料よりも機械加工が容易であり、ガスベアリングスリーブ、したがってベアリング装置を機械加工するために必要とする予防策および専門知識が少なくて済む。
【0011】
したがって、本発明によるベアリング装置は、従来のベアリング装置よりも、より信頼性が高く、製造が簡単で、製造コストが低い。
【0012】
さらにモリブデンの主な利点は、ガスベアリング(非常に緊密で一貫した作動間隙を必要とする)の高い信頼性を保証するための重要な基準である低い熱膨張係数を有し、ターボ圧縮機の作動中の焼き付きのいかなる危険性をも回避できるということである。また、モリブデンの高い熱伝導率は、駆動軸の回転中にベアリング内で生成される熱を排気することを可能にするので、ガスベアリングスリーブにとって適切な材料となる。
【0013】
モリブデンはまた、高速でシステムに対するより高い安定性を可能にする比(ヤング率/Rho)によって規定される高いロータ動的周波数を有するという利点を有する。さらに、モリブデンは高い弾性率を有する。
【0014】
モリブデンはまた、本技術で現在使用されている材料であるセラミックまたは炭化タングステンよりも、より耐久性のある材料(より良好な破壊強度を有する)である。
【0015】
ベアリング装置はまた、単独でまたは組み合わせて、以下の特徴の1つまたは複数を含んでいても良い。
【0016】
本発明の一実施形態によれば、ベアリング装置は、ラジアルベアリング面に対して実質的に垂直に延在し、駆動軸のラジアルスラストベアリング部材と協働するように構成されたアキシアルベアリング面をさらに含む。
【0017】
本発明の一実施形態によれば、ガスベアリングスリーブはチタン−ジルコニウム−モリブデン合金で形成される。
【0018】
本発明の一実施形態によれば、ガスベアリングスリーブを形成するモリブデンまたはモリブデン合金は、500HV未満のビッカース硬度を有する。
【0019】
本発明の一実施形態によれば、ベアリング装置はさらに、
環状ディスク形状を有し、第1の面と、アキシアルベアリングプレートの第1の面とは反対側の第2の面とを有するアキシアルベアリングプレートと、
アキシアルベアリングプレートの第1の面とアキシアルベアリング表面との間の、有利にはアキシアルベアリングプレートとアキシアルベアリング面の径方向外側部分においてクランプされ、アキシアルベアリングプレートとアキシアルベアリング面との間の軸方向の距離を規定するスペーサリングとを含む。
【0020】
本発明の一実施形態によれば、ガスベアリングスリーブは、アキシアルベアリング面を含む。ガスベアリングスリーブのこのような構成、特にラジアルベアリング面およびアキシアルベアリング面を含むことにより、ベアリング装置が簡易に製造できるようになるとともに、それを製造するために必要な加工精度のレベルが軽減し、一方、モリブデンは炭化タングステンのような従来使用された硬質材料よりも安価であるので、製造コストが実質的に低減される。
【0021】
本発明の別の実施形態によれば、ベアリング装置は、環状ディスク形状を有する追加のアキシアルベアリングプレートをさらに含み、追加のアキシアルベアリングプレートは、アキシアルベアリング面を含み、アキシアルベアリング面と反対側の当接面を有し、ラジアルガスベアリング、例えば、ガスベアリングスリーブに当接する。
【0022】
本発明の一実施形態によれば、アキシアルベアリングプレートはモリブデンまたはモリブデン合金で形成される。
【0023】
本発明の一実施形態によれば、追加のアキシアルベアリングプレートはモリブデンまたはモリブデン合金で形成される。
【0024】
本発明の一実施形態によれば、ラジアルガスベアリングは、ラジアルガスベアリングから熱を放散するように構成された冷却部分を含む。ガスベアリングスリーブは、冷却部分を含んでいてもよい。
【0025】
本発明の一実施形態によれば、冷却部分は、複数の環状冷却リブを含む。
【0026】
本発明の一実施形態によれば、環状冷却リブは、ガスベアリングスリーブの外面上に設けられる。
【0027】
本発明の一実施形態によれば、ガスベアリングスリーブの外面は、全体的に円筒形である。
【0028】
本発明の実施形態によれば、補強コーティングは、アキシアルベアリング面の少なくとも一部上および/またはラジアルベアリング面の少なくとも一部上に設けられる。
【0029】
本発明の一実施形態によれば、補強コーティングは、DLC(ダイヤモンドライクカーボン)補強コーティングである。
【0030】
本発明の一実施形態によれば、ラジアルガスベアリングは、一体のラジアルガスベアリングである。
【0031】
本発明の別の実施形態によれば、ラジアルガスベアリングは、駆動軸を取り囲むように構成されたベアリング本体をさらに含み、ガスベアリングスリーブは、ベアリング本体の径方向内側表面に固定される。
【0032】
本発明の一実施形態によれば、ベアリング本体は、冷却部分を含む。
【0033】
本発明の一実施形態によれば、追加のアキシアルベアリングプレートの当接面は、ベアリング本体に当接する。
【0034】
本発明の一実施形態によれば、ラジアルガスベアリングは、軸方向にオフセットされた複数のガスベアリングスリーブ、例えば2つのガスベアリングスリーブを含む。有利なことに、ガスベアリングスリーブは、ベアリング本体の径方向内面に固定されており、ベアリング本体の軸方向の長さに沿って広がっている。
【0035】
本発明の別の実施形態によれば、ラジアルガスベアリングは、ベアリング本体の径方向内面に固定され、ベアリング本体の軸方向の長さに沿って延在する、1つのガスベアリングスリーブのみを含んでいてもよい。
【0036】
本発明は、また、ラジアルスラストベアリング部材を有する駆動軸と、本発明によるベアリング装置とを含むターボマシンに関する。
【0037】
本発明の一実施形態によれば、ターボマシンは、ターボ圧縮機であり、例えば、二段ターボ圧縮機である。
【0038】
本発明の一実施形態によれば、駆動軸は、ガスベアリングスリーブによって取り囲まれたベアリング部を含み、ガスベアリングスリーブは、駆動軸のベアリング部の外径よりも大きい内径を有し、ベアリング部およびガスベアリングスリーブは、駆動軸が回転するときに環状のガスチャンバを規定する。
【0039】
本発明の一実施形態によれば、駆動軸のラジアルスラストベアリング部材は、アキシアルベアリングプレートの径方向内側部分とアキシアルベアリング面との間、および例えばアキシアルベアリングプレートの径方向内側部分とガスベアリングスリーブとの間、またはアキシアルベアリングプレートの径方向内側部分と追加のアキシアルベアリングプレートとの間の空間内まで延在する。
【0040】
本発明の一実施形態によれば、ラジアルスラストベアリング部材は、アキシアルベアリング面に当接する。
【0041】
本発明の一実施形態によれば、駆動軸は、モリブデンまたはモリブデン合金で形成される。
【0042】
本発明の一実施形態によれば、ラジアルスラストベアリング部材は、環状ディスク形状を有し、第1の軸方向面と第1の軸方向面の反対側の第2の軸方向面とを含み、アキシアルベアリング面は、ラジアルスラストベアリング部材の第2の軸方向面と協働するように構成され、アキシアルベアリングプレートは、ラジアルスラストベアリング部材の第1の軸方向面と協働するように構成される。
【0043】
本発明の一実施形態によれば、ターボマシンは、回転軸線を中心に駆動軸を回転駆動するように構成された電気モータをさらに含み、電気モータは、ステータおよびロータを含み、ロータは、駆動軸の駆動部に接続される。
【0044】
本発明の一実施形態によれば、駆動部分は、ロータが受容される軸方向の孔を有する。例えば、軸方向の孔は、駆動部の端面に形成されている。
【0045】
本発明の一実施形態によれば、アキシアルベアリングプレートおよびガスベアリングスリーブは、作動中の駆動軸の軸方向移動を制限するように構成されている。
【0046】
本発明の別の実施形態によれば、アキシアルベアリングプレートおよび追加のアキシアルベアリングプレートは、作動中の駆動軸の軸方向移動を制限するように構成される。
【0047】
本発明の一実施形態によれば、アキシアルベアリングプレート、スペーサリングおよびアキシアルベアリング面は、アキシアルベアリング、特にアキシアルガスベアリングを形成する。
【0048】
本発明の一実施形態によれば、ターボマシンは、冷媒を圧縮するように構成された第1および第2の圧縮段をさらに含む。有利なことに、第1および第2の圧縮段はそれぞれ、第1および第2のインペラを含み、第1および第2のインペラのそれぞれは、前側および後側を有し、第1および第2のインペラは、駆動軸に接続され、背中合わせの構成で配置される。
【0049】
これらおよび他の利点は、本発明に係るターボマシンの実施形態を、限定しない例として表す添付図面を参照して以下の説明を読むことにより明らかになるであろう。